栄養摂取と食意識に関する調査
松 永 知 恵
Investigation about nutrition and meal consciousness Tomoe Matsunaga
Summary
In a recent young generation, a dietary habit has some problems. For example, they do not often eat breakfast, and only some vegetables eat. Most of young women want to become the thin figure and suffer from malnutrition. It is important the individual dietary behavior is understood.
This study examined the nutrient intake of women college students. The quantity of their meal was very small amount, and they were a shortage of energy. In addition, they lacked the necessary nutri- ent. Vitamin C was not filling the quantity of standards and calcium was a half of the quantity of standards. This study carried out for the purpose of investigation of situation grasp a subject’s eating habits.
Key words: dietary habits, nutrition, young women, energy shortage, malnutrition
1.緒 言
平成16〜19年度の国民健康栄養調査の結果1−4)の分析を行ったところ,特に20歳代で様々な問題 点がみられた。朝食欠食率は男女ともに20歳代が最も高く(男性30.6%,女性22.5%),野菜の摂 取量も一日の摂取目標量である350!以上に達しておらず不足が目立った3)。また,エネルギー摂取 量の平均値は男女共に減少傾向が見られたが,脂肪エネルギー比率が30%以上の者の割合(男性 18.1%,女性27.2%)が増加していた3)。中でも若い女性については問題が多く,上記に挙げた問 題のほかにも,エネルギー摂取量不足,各種ビタミン摂取量不足,複数欠食,やせなどが挙げられ ている。「健康日本21」の目標にも「脂肪エネルギー比率の減少」「野菜の摂取量の増加」「朝食を 欠食する人の減少」などがあげられている5)。近年の若い女性の傾向としてやせ願望が強いことが 以前から問題視されているが,20〜40歳代女性においては低体重(やせ)の増加傾向はいまだ続い ている。健康日本21には20代女性のやせの改善も目標値に上がっているが,目標値である15%以下 には依然達しておらず,現状は23.3%となっている5)。このような背景から,実際の女子学生の食 生活にはどのような問題点があるのかを把握することは重要と考え,継続的に食事調査を行うこと とした。前回の報告6)では食物摂取頻度調査により日常的な摂取状況を調査したが,本研究ではさ らに詳しく把握する目的で秤量記録法にて摂取量を調査した。
活水論文集 第53集 1
2.方 法
調査日は平成21年4月〜5月のある一日(春調査)と,11月〜12月のある一日(冬調査)の2日 間とした。被験者は本学管理栄養士課程の女子学生(20〜21歳)73名とした。調査方法は秤量記録 法を用いた。被験者が自ら,ある一日の食事内容を測定し記録を行った。記録項目は,食事した時 間,食事内容:料理名,食品名,食品ごとの重さ,使用した調味料,調理法〔焼く・茹でる・煮る・
蒸す・生・そのまま・その他〕,加工方法〔手作り・外食・惣菜・加工品〕,菓子・加工食品などの 商品名・メーカー名・栄養成分の8項目であった。さらに,食事内容の写真も撮影してもらった。
被験者には春調査の結果を周知した後,冬調査を実施した。記録内容の栄養価計算はエクセル栄養 君Ver.4.5(建帛社)を用いて行った。結果は全て平均値±標準偏差で表した。
3.結 果
調査した2日間の栄養摂取状況の結果を表1に示す。日本人の食事摂取基準2005年版の18〜29歳 女性,身体活動レベルⅡを基準とした。結果を見ると,多くの栄養素において不足が見られた。ま ず,エネルギー摂取量が1503.7±461.2$/day(春),1553.8±372.9$/day(冬)と基準値の約7 割であった。ごく数名であるが,1000$/day未満の被験者が春調査では10名(図1A),冬調査で は2名存在した(図1B)。
ビタミン類の摂取量では,ビタミンA,B1,B2,Cと主要なビタミンが不足傾向にあった。特に ビタミンCに注目すると,66.0±68.1"/day(春),80.8±70.8"/day(冬)と基準の100#に達 していなかった(表1)。ビタミンC摂取量の度数分布では,30"程度しか摂取していない被験者 が春調査では25.8%(図2A),冬調査では18.2%(図2B)も存在した。また,ビタミンC摂取
量が100"を満たしていない被験者は全体の約7割にも達した(図2A,B)。
ミネラル類の摂取量でも各栄養素とも基準を満たしていなかった。ナトリウムに関しては食塩量
表1 栄養摂取状況の変化
春調査 冬調査 食事摂取基準 2005年版 平均値 SD 平均値 SD
エネルギー($) たんぱく質(#) 脂質(#) 炭水化物(#)
ナトリウム(") カルシウム(") リン(") 鉄(") 亜鉛(")
ビタミンA(!RE)
ビタミンB1(")
ビタミンB2(")
葉酸(!) ビタミンC(") コレステロール(#) 食物繊維(#) 食塩(#)
1503.7±461.2 56.0±20.1 44.2±18.6 212.9±71.2 2567.1±872.8
345.2±251.1 804.6±325.4
7.0±5.4 6.8±3.0 462.8±721.2
0.70±0.34 0.91±0.60 268.3±428.5
66.0±68.1 306.9±224.9
12.4±18.1 6.6±2.2
1553.8±372.9 53.7±15.1 43.6±18.7 228.6±64.4 2574.0±946.2
329.1±155.6 784.7±228.8
6.1±2.2 6.7±2.3 360.8±213.2
0.69±0.37 0.89±0.33 243.7±172.3
80.8±70.8 272.7±189.7
10.6±5.9 6.6±2.4
2050 50 20〜30%
50〜70%
− 700 900 11
7 600 1.1 1.2 240 100 600 21 8未満 松 永 知 恵
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に換算して8"未満とされているので基準内であった。基準を満たさないミネラル類の中でもカル シウム摂取量の不足は特に目立った。345.2±251.1!/day(春),329.1±155.6!/day(冬)と基
準700!を大幅に下回った(表1)。カルシウム摂取量の度数分布では,詳細に分けてみたところ,
多くの被験者が基準の半分以下に集中した(図3A,B)。
4.考 察
秤量記録法は詳細な記録法であるため被験者にとっては難しく,かつ,面倒な作業である。その ため被験者は,しばしば食事内容の記録もれがあったり,過少・過剰報告したりする。しかし,今 回の被験者は管理栄養士養成課程3年次の学生であったので,ある一定の基礎知識を持っており,
図1 摂取エネルギー量の度数分布 A:春調査結果,B:冬調査結果
図2 摂取ビタミン C 量の度数分布 A:春調査結果,B:冬調査結果
図3 摂取カルシウム量の度数分布 A:春調査結果,B:冬調査結果
栄養摂取と食意識に関する調査 3
詳細な記録ができると判断した。秤量記録法による食事調査の重要性,記録法の利点と欠点につい ては授業の中で説明をしていたが,中には負担度が高い場合は詳細な記録をしていないこともあっ た。明らかに真実ではない報告と見られるデータにおいては削除して分析を行った。だが,ほとん どの被験者は自分の栄養摂取状況に興味があり,熱心に取り組む姿勢が見られたので,調査記録の 信頼性もあると考えた。
今回の調査結果で特に気になったのが,全体的に食事量が少ない傾向にあるということである。
図1A,Bを見ると,度数分布のピークが左に偏っていた。しかも,基礎代謝量にも満たない1000
"/day未満の被験者が,春調査では10名(図1A),冬調査では2名存在した(図1B)。また,約
半数の被験者は1600"/day未満の食事で済ませていることがわかった。被験者の体格は概ね「や せ〜普通体型」であるが,多くの被験者が体型のことを気にしており,しばしば「やせたい」「ス タイルがよくなりたい」と訴える。体格指数との関連を分析しなかったが,もしかすると相関が出 るかもしれない。
ビタミン類やミネラル類の摂取量不足も食事量自体が少ない為に起きたことと推測する。ビタミ ン類の多くは野菜・果物類に含まれている。表に載せていないが,野菜類の摂取量は推奨されてい る1日350!以上には全く届いていなかった。また,カルシウム摂取量の少なさも,乳・乳製品お よび小魚をほとんど摂取しない食生活から生じていると考えられる。高校生までは牛乳が給食とし て出る学校が多い。さらに成長期ということもあり,家庭内も本人も「カルシウム摂取をしなけれ ば」という意識が強いようにも推測する。その意識も高校を卒業すると同時に薄れ,成長すること よりも他の事に目が向くようである。しかし,骨密度は20代をピークに年齢とともに低下する8)。 若い時期におけるカルシウムの摂取量は,更年期以降問題となる骨粗鬆症の予防に大きく影響する。
したがって,青年期から積極的に摂取する必要性は大いにあるのだが,本結果を見た限りでも骨粗 鬆症予備軍がかなり存在することがわかった。
毎年,実施されている国民健康・栄養調査の結果1〜4)にも青年期の問題は取り上げられているが,
実際に本学科学生の食行動上には多くの問題点が生じていた。偏った栄養摂取状態や,好ましくな い食生活習慣の継続から引き起こされる生活習慣病等についての危険性はあらゆる場面で警告され ている。健康維持,生活習慣病を予防する観点からも20代の食生活の見直し,規則正しい生活を送 ることは重要であると周知の事実である。しかしながら,栄養に関する知識のある女子大学生にお いても,微量ミネラル等の摂取量は不足状態であり,栄養摂取に対する姿勢もまた消極的との報告 がある9)。今回の調査でも,本学科の学生もまた,栄養摂取に対する姿勢は消極的のようであった。
しかし,いずれ傷病者のために栄養管理を行う立場になる。問題視されている一般の青年期女性と 同じような行動をするのではなく,健康的な食生活を実践して,良い影響を周りに与えて欲しい。
よく知られているように,長年の習慣となっている食生活を変容させるのは容易ではない。このま までは管理栄養士を目指す学生であっても,現状の悪い食生活を習慣化させる可能性がある。もう 一度,大学に入学してきた頃の初心に戻って,まずは自己の食生活を見直し,卒業する頃には栄養 管理をしっかりと行えるようになって欲しいと切望する。
松 永 知 恵 4
参考文献 1)平成16年度国民健康・栄養調査.厚生労働省,
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/05/h0508-1.html 2006.5.8 2)平成17年度国民健康・栄養調査.厚生労働省,
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou07/index.html 2007.5.16 3)平成18年度国民健康・栄養調査.厚生労働省,
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/04/h0430-2.html 2008.4.30 4)平成19年度国民健康・栄養調査.厚生労働省,
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/h1225-5a.html 2008.1.25
5)健康日本21.財団法人健康・体力づくり事業財団,http://www.kenkounippon21.gr.jp/ 2007 6)松永知恵:女子大学生に対する栄養教育の効果.活水論文集,第52集,77‐82,2009 7)日本人の食事摂取基準(2005年版)
8)杉浦令子,里和スミエ,湊久美子:第六次改定日本人の栄養所要量から見た女子大生および鉄欠乏性貧血学生 の栄養摂取状況.和洋女子大学紀要,Vol.41,55‐69,2001.
9)石突正文:骨粗しょう症防ぎ方・治し方.社団法人家の光協会,28‐29,1996.
(2010年2月12日受理)
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