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民法改正・夫婦別姓に関する意識動向

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Academic year: 2022

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(1)

, —_-_—-———_-_-_-_—-—-—_-_—-—_-_—-—• 一_-_―—―-―-―

灼 論 説 , ;

_-_—_-_-_—-—_-_—---—-———-—_-_—-——-_—-—_-_-_—-

民法改正・夫婦別姓に関する意識動向

地域・地方の視点で

松 本

I

  1 2 3 4  

はじめに

地域からみた夫婦別姓に関する意識動向 高松を中心にみた意識動向

おわりに

1.  は じ め に

法律改正が問題になるとき,国民のもつ問題意識は,大都市,中・小都 市を問わず, どこででも同じような認識のレベルにあるのであろうか。所 によって異なる認識がみられ,特異な行動を呈するものであろうか。経済・

社会活動の中心的地域とそこから遠く離れた地域とでは,

(1) 

あろうか。

いかがなもので

夫婦の氏に関する国民の意識については,「夫婦の氏(姓)に関する意識

(2) 

動向」で世論調査データを時系列的・計量的に分析することから, その形 状的変化を大ざっぱにみた。夫婦の氏に関する国民の意識動向を探るとき,

三八八

地域的な環境状況の差違が意識の上に反映されているのか。

社会環境の相違が際だっところでの国民の意識状況はどうなっているか。

また,経済・

~-·95   16~3•4~716 (香法'97)

(2)

日本のあらゆる地域で,同じような意識状態がみられるのであろうか。本 稿では,先の論文で分析しえなかった,地域間の意識について,差異の有 無,時系列的差異などを同様な手法で分析してみたい。なお,資料として

は,前出論文で利用したデータを中心に行う。

(3) 

2 .  

地域からみた夫婦別姓に関する意識動向

(4

①読売新聞 実施時期 91 /05/25‑26  夫婦別姓についての全国世論調査

結婚した後も,仕事などで結婚前の姓をそのまま使い,夫婦で別々の姓 を名乗る,いわゆる夫婦別姓の問題についてお聞きします。 Q9で未婚と 答えた人に (309人)。

Q9SQ2  あなたが結婚するとしたら,夫婦でどの姓を名乗りたいと思

(6) 

いますか。次の中から,一つだけあげて下さい。

I. 二人とも 2. 二人とも 3.  どちらでもよ 4. 夫婦で 5. その他 6. 答えない 夫の姓 妻の姓 いが夫婦で同じ姓 別々の姓

total  309  58.9  1.6  31.1  4.2  1.3  2.9  大都市 93  62.4  1.1  29  3.2  3.2  .1  中都市112 60.7 

29.5  5.4  0.9  3.6 

小都市 46  65.2  2.2  23.5  4.3 

4,3 

町村 58  44.8  5.2  43.1  3.4 

゜ ゜

八七

未婚者に対して,婚氏の選択のカテゴリーに「夫婦別姓」という類型が 提示されている。ここでは,「同氏」を選択する際,「夫」,「妻」,「何れ」

の氏を問わず,の 3タイプのうち,「夫」の氏とするものが,町村地域を除 いて 60%を超えている。町村地域では,「夫」,「何れ」を問わずが似たよ うな割合で選択されいる。この点は注目されよう。なお,別姓選択率には 地域差異がみられない。

Q 10  あなたは,仕事などで夫婦が別々の姓を名乗る最近の傾向に,抵抗 がありますか,ありませんか。

16---3•4-715 (香法'97) ~96~

(3)

1. 非常に抵 2. 多少は抵 3. あまり抵抗は 4. 全く抵抗 5. 答えない 柑.があス 柑.があス

total  2179  22.7  32.2  28.8  13.4  2.9  大都市 430  19.5  28.1  30.7  19.3  2.3 

中都市 797  22.1  31  29.9  13.4 

小都市 419  28.4  32.9  26  11  1.7 

町村 533  21.6  35.8  28  10  4.3 

別姓に対する抵抗感は結構高いものを窺わせる。大都市を除いて過半数 のものが抵抗感をもっている。大都会では逆に過半数のものが抵抗感をも たない。しかし,地方に行くほど抵抗感は強くなる。とりわけ小都市の抵 抗感はかなり強力であることを窺わせる。

ここで興味を引くことは,別姓を名乗る人は自分ではなく,他人である。

他人のする行動についてどのように感じているか, ということでもある。

この結果からすると,都会ほど他人のすることに感心が向けられていない ことを語るのであろうか。

Q 11  あなたは,いまの法律のまま,夫婦は必ず同じ姓を名乗る方がよい と思いますか,法律を改正をして,夫婦が同じ姓を名乗るか,別々の姓を 名乗るかを選べるようにする方がよいと思いますか,それとも,必ず別々

の姓を名乗る方がよいと思いますか。

1. 必ず同じ姓を 2. 同じ姓か、別々の 3. 必ず別々の姓を名景 4. 答えない 名秦る方がよい 姓を選ぺる方がよい る方がよい

total  2179  59.5  36.7  0.5  3.3 

大都市 430  51.2  44.9  0.9 

中都市 797  55.8  39.9  0.5  3.8 

,

1遺 市 419  64.7  32.2 

3.1 

町村 533  67.7  28.9  0.6 

夫婦別姓制の導入に関しては,明白に地域差を示している。「必ず同姓」

を選択する率は大よりは中,中よりは小,小よりは町と高くなり,選択制 容認率は,逆に,町よりは小,小よりは中,中よりは大が高くなる。大都 市では,別姓選択制の認容率が 4割を超えているが,町村地域では, 3割 にもみたず,しかも選択制についても「必ず同姓」の半数以下の率である。

八六

‑・97 ‑ 16-3•4~714 (香法'97)

(4)

Q 11で夫婦は必ず同じ姓を名乗る方がよいと答えた人に 0297人)

QllSQl  夫婦は必ず同じ姓を名乗る方がよいと思う理由を,次の中か ら,いくつでもあげて下さい。

I. 夫蝙の 2. 夫鱒の姓 3. 子どもと 4. 夫蝙の姓 夫蝙 6. 伝統的な 7. その 8. 答え 姓が違う が違うと、他 親、子ども同 が違うと、子 同姓はす 家についての 他 9

と、夫蝿や の人がみて、 士で姓が異な どもの姓や相 でに定着 考え方や家名 家康の一体 夫蝙だとわか ると、子ども 練などでトラ した鯛度 を守る上で、

感が弱まる りにくいから がかわいそう プル生じかね だから 夫蝙同姓は必

から だから ないから 璽だから

total 1297  48.7  36  48.8  34.3  44.1  26.2  0.4  1.4 

大都市220 50  33.6  51.4  39.1  48.2  19.5  0.9  0.5 

中都市445 48.3  33  42.9  32.6  40.7  26.1 

0.7 

小都市271 49.4  34.7  62.4  31.7  45.7  26.2  0.4  .1 

町村 381  47.9  42.1  44.3  35.5  44.6  30.5  0.6 

total 1297  632  467  633  445  572  340  18 

大都市220 110  74  113  86  106  43 

中都市445 215  147  191  145  181  116 

小都市271 134  94  169  86  124  71 

町村 361  173  152  160  128  161  110  11 

「必ず同姓」を選ぶ理由として,選択肢 1.一体感,選択肢 2.こどもの問 題,選択肢 3.制度としての定着性,が主要因としてあがる。しかし,地域 的な差異がその選択の偏りからよみとれる。選択肢 1.の一体感が重要な理 由であることは変わりないが,選択肢 2.こどもの問題が最大理由となる場

700 

600 

500 

400 

300 

200 

100 

/¥ 

゜ , 

2

, 

必 ず 同 姓 で あ る ぺ き と す る 理 由

■ l. 夫婦の姓‑ヵ5、豆、夫蝿や家族の一体感が弱まる から

■ 2. 夫蝿の姓が遍うと、他の人がみて、夫蝿だとわか

■ 5

. 夫婦同姓はすでに定着した制度だから

: 二 : ; ;:  ロ

■ 6. 伝統的な家についての考え方や家名を守る上で、

] 夫蠣同姓は必賽だから

■ 7. その他

s. 答えない

  ―.. ---一~~—. 一・・・一‑‑‑

2 2 0  

4 4 5  

2 7 1  

3 6  

16-3•4-713 (香法'97) ‑ 98  ‑

(5)

合や,選択肢 5.制度としての定着性よりも,選択肢 2.外見からの識別,選 択肢4.家族問題発生のおそれの事由の選択が相当急増している。地域によ

ってかなり見解の相違がみられることを窺わせる。

Q 11で「姓を選べる方がよい」「必ず別々の姓を名乗る方がよい」と答え た人に (810人)

QllSQ2  そう思う理由を,次の中から,いくつでもあげて下さい。

姓が変 2. 姓が変 姓の変 一方の 一方の姓 結婚、 7. 女性 その 答え わると、違 わると、そ 更届などの 姓を名乗る を名乗るの 離婚という でも家名 和感や自分 れまでの仕 わずらわし と、夫婦が は、家制度の プライパ を継ぐこ

が失われた 事や交際な い事務手続 不平等だと 名残であり、 シーを知ら とができ 感じをもつ どで支障の をしなくて 感じる人が 家への従属感 れたくない るから 人もいるか ある人もい よし、から いるから を感じる人が 人もいるか

るから しヽるから

total  81 O  19.5  53.3  14.4  16.9  24.4  22.5  26.9  4.1  6.7 

大都市 197 18.3  55.8  17.3  16.8  20.8  23.9  28.4  6.6  6.1 

中都市 322 23.3  53.1  14.9  17.1  29.5  24.2  23.9  2.8 

小都市 135 15.6  48.9  12.6  20.7  22.2  14.8  28.9  5.2  5.9 

町村 156  16.7  54.5  11 .5  13.5  20  23.7  29.5  2.6  11.5 

total  81  158  432  117  137  198  182  218  33  54 

大都市 197 36  110  34  33  41  47  56  13  12 

中都市 322 75  171  48  55  95  78  77 

, 

16  ,

1都 市 135 21  66  17  28  30  30  39 

町村 156  26  85  18  21  32  37  46  18 

別姓制導入に積極的態度を採る理由については,前問とは異なり地域差 はみられない。別姓導入支持の理由付けにはどこででも同じ傾向がみられ るということであろうか。ここで選択された最大の理由は,選択肢 2• 更後の不便・不都合で,個人の生活に着目していることである。夫婦別姓 は少数派で,その根拠付けには地域的事情はみられず, もっと基本的普遍 的理由であると言えようか。

Q 12  将来,もし,法律上,夫婦が別々の姓を名乗ることを選べるように なったとしたら,あなた自身は,どうしたいと思いますか。次の中から,

一つだけあげて下さい。

八四

~- 99 ‑ 16-3•4-712 (香法'97)

(6)

/¥ 

1.  二人とも夫 2. 二人とも妻 3. 夫蠣で別々 4. その他 5. 答えない

の姓 の姓 の姓

total  2179  81.3  1.3  7.6  4.1  5.6 

大都市 430  77.7  0.9  9.8  5.8  5.8 

中都市 797  80.1  1.5  7.4  4.6  6.4  1

J噌 市 419  83.3  1.7  6.4  2.6 

町村 533  84.6  1.1  6.9  3.2  4.1 

夫婦別姓の選択の意思をきく。夫婦同姓志向が 80%以上を占める。ただ,

大都市での別姓志向が 10%近くを示し,夫の姓を選択する率が 80%を割 っていることは注目されよう。

この世論調査から,夫婦の姓についての国民の意識は,基本的に夫の姓 を考えており,妻の姓を選択することは極めて例外的な場合であることを 物語る。夫婦別姓については,その認識に地域的偏りを示すものの,その 理由付けについては異なることはない。

未婚者に尋ねた結果の夫婦別姓選択率と,仮定的な話として尋ねた,法 律が成立した場合の夫婦別姓選択率を比較すると,かなりの飛躍がみられ る。この点は法律の制定が国民の意識に大きく影響することを窺わせる。

②読売新聞 96/03/23‑24 (7X8) 

Q 14  政府の法制審議会が,民法改正案をまとめました。この中で,夫婦 が希望すればそれぞれ結婚前の姓を名乗ることができる「夫婦別姓」の導 入が提案されています。あなたは,「夫婦別姓」の導入に,賛成ですか,反 対ですか。

⑧賛成 ⑭どちらかとい cどちらかと @反対 @答えない

:lH讐 岱 L ヽ -¾I~后 ホ

total  2039  17.7  19.4  28.7  30  8.2  大都市 394  22.6  18.8  23.8  29.4  5.6  中都市 788  17.8  21.8  28.1  25.1  7.5  ,1渾 市 386 17.4  18.7  28  31.6  4.4  町 村 473 14  18.7  25.8  37.4  8.1 

16-3•4-711 (香法'97) ‑ 100  ‑

(7)

時期的にはいよいよ改正法案が国会で取り沙汰されようとしているころ である。夫婦別姓導入に賛成するか,反対するか,を二分すれば,過半数 は反対するけれど, 1/3以上は賛成している。国民の 1/3はこの別姓導入 に賛成している。反対率は都会よりも地方の方が高い。

とりわけ,大都市では賛成層がかなり多く,明白に賛成の立場を示す層 も 20%を超える。反対に積極反対は地方の方が高く,都会に行くほど減少 している。

Q 14 S Q  1 賛成と答えた人だけに あなたが賛成する理由を,次の中か ら,あれば,いくつでもあげて下さい。 (756人)

⑧結婚前の ⑭姓が変わ c旧姓と新 ⑥家族で ⑥実家の姓 ①外国では Rとくに反 ⑭その他 ①答えな 姓を変える ると仕事や しい姓を使 姓が違っ を継ぐこと 夫婦別姓を 対する理由 ことに連莉 付き合いに い分けるわ ていても ができるか 認めている はなしヽから

感があるカ 支障がある ずらわしさ 不都合は 国が多いか

から がないから なしヽから

total  756  15.3  28  16  16.7  17.9  7.7  50.7  2.1  0.5 

大都市 163  16  31.9  13.5  16  16  5.5  50.9  2.5 

中都市 309  15.5  27.8  18  13.9  17.2  8.1  50.8  2.3  0.3  小都市 139  10.8  28.1  20.9  21.6  13.7  6.5  53.2  2.9 

町 村 145  18.6  24.1  97  18,6  25.5  10.3  47.6  0.7  2.1 

夫婦別姓支持理由を明らかにする。どの地域でも賛成者の過半数が選択 肢⑧を選択した。ついで,約 3割近い人が選択肢⑤,選択肢Rと続いてい る。ここで地域差をみるのは,町村群では選択肢⑤よりも選択肢Rが高率 を示していることである。他の 3地域が選択肢⑤と選択肢Rの間にかなり の差をもって, しかも選択肢但項)が並んで選択されているのに対して,町 村では選択肢①より選択肢Rの方が高率を示している。姓が変わることで の不都合さを個人の社会的活動と結びつけて判断するか,個人的嗜好で判 断するか,さらには,「家」意識を考慮に入れて判断するか,地域における 人間関係が影響をもたらすことを推測させる。

なお,選択肢⑧が過半数を超えたことは,価値観の多様性容認傾向の発 露といえ,わが社会における意識変化を顕彰する事項と言えよう。

‑ 101  ‑ 16  3•4-710 (香法'97)

J¥ 

(8)

Q 14 S Q  2 反対と答えた人だけに あなたが反対する理由を,次の中か ら,あれば,いくつでもあげて下さい。 (1,156人)

@夫婦や家 ⑥夫婦や家族 c子供の姓を決 ⑭簡単に離 ⑥夫婦同姓 ①とくに必 ②その他 R答えない 族の一体感 であることが めるときにトラ 婚する夫婦 はすでに定 要とは感じ

が薄れるカ 他の人にわか プルが起こりや が増えそう 着した制度 なしヽから りにくいから すいから だから だから

total  1158  58.6  27  43.3  20.8  28.5  23  0.9  大都市 209  52.6  26.8  46.4  17.7  25.4  31.1  0.5 

中都市 418  59.3  28.2  43.3  17.2  31.1  24.4  0.5  1.4  小都市 230  59.6  27.8  42.2  22.2  30.4  21.7  1.3  1.3  町 村 299 60.9  28.1  42.1  26.8  25,8  16.4  1.3  0.7 

夫婦別姓導入反対理由を明らかにする。反対の強力理由は,選択肢R廷)

である。選択肢④では,氏の同一性を家族・夫婦の一体感の表れとして意 識していることを窺わせる。地域差をみせるのは選択肢R廷)の増減が前者 は都会から地方に行くにつれ増え,後者は減少している。また,選択肢① については大都市と町村では大きく異なっている。

Q 15  夫婦別姓が認められた場合,あなたは,夫婦で別々の姓にしたいと 思いますか,そうは思いませんか。未婚の方は仮に結婚するとしたらどう

したいかでお答え下さい。

⑧そう思う ⑭そうは思わない cどちらとも言えない ⑭答えない total  2039  7.9  78.1  12.4  1.6  大都市 394  7.6  83  8.9  0.5 

中都市 788  9.7  76.2  12.3  1.8 

小都市 388  75.4  15  3,6 

町 村 473 79.3  13.1  0.6 

現実問題として考えるとしたら,夫婦別姓の選択はどうであろうか。選 択すると答えた選択肢Rは中都市の 9.7%を最高に小都市の 6 %と幅があ 八 る。どちらともいえない層がかなりあることを考慮しても,現実の利用者 層は 1割を超えない程度であろうことを予測させる。別姓を選択しないと するものは 75%以上で,大都市がもっとも高くなっている。

5年前の世論調査と比較すると,同姓選択率が 78.6%から 85.7%の間

16--3•4-709 (香法'97) ‑ 102  ‑

(9)

にあったことから,同姓志向は減少していることがわかる。しかし,別姓 選択者が増加しているわけではない。

(10) 

3 .  

高松を中心にみた意識動向

(11)(12) 

①高松市「結婚の意識と実態」 88/9 /15‑30 

問9 最近,結婚・夫婦のあり方の変化が話題になっています。これらに ついてお尋ねします。(あてはまる番号に 1つだけ〇をつけて下さい)

問9‑ 2  夫婦は別姓でもよいという考え方について

1. 共鳴できる 2. ある程度共鳴で3. あまり共鳴でき 4. まった<共鳴 5. 薫回答

きる ない できない

total  1214  8.3  16.8  38.1  29.2  7.5 

448  6.5  14.5  38.8  34.6  7.6 

714  9.7  17.3  39.4  28.3 

同棲, DINKS,有責配偶者の離婚請求など結婚の形態に関連する社会問

(13) 

題が話題になりはじめていた頃である。

高松市の女性問題に関連する基礎資料に資するための調査として実施報 告されたものから抽出したものである。

高松市民として,夫婦別姓について共鳴できる割合は約 25%で,反対に 共鳴できないとする率は 67.3%となっている。市民の 2/3は否定的とい うことであろう。性差については,女性の方が男性よりもはるかに共鳴す る度合いが高い。

(14)(15) 

②高松市「高松の女性の意識と生活に関する調査」 93/9 /14‑30  問5 最近,結婚・夫婦のあり方が話題になっています。それぞれについ て1つだけ〇をつけて下さい。

問 5‑ 2 夫婦は別姓(氏)でもよいという考え方

1共鳴できる 2. ある程度共鳴で3. あまり共鳴でき 4まった<共鳴 5. 無回答

きる できない

total  1359  24.5  13.9  37.9  19.4  4.3  496  24.2  10.9  38.1  23.1  3.4 

837  25  15.8  38  17  4.3 

八〇

‑ 103  ‑ 16-3•4-708 (香法'97)

(10)

前述の女性問題基礎資料として同じ質問が 5年後にされている。時代的 な背景もかなり動いてきていることは言うまでもない。

高松市民の夫婦別姓に関する見解は, 共鳴できる層がずいぶんと増えた ことである。この調査では 38.4%が共鳴しており,共鳴できないとする率 は56.3%に減少している。さらに,前回の共鳴の程度は確信的なものより 消極的肯定の見解としての共鳴度が大勢であった。が,今回の調査で,市 民の 1/4は確信的に共鳴度をしめしており,確信的否定意見が減少してい

る。性差については前回と変わるものはみられない。

時代的背景,社会環境の変化の中でこれらの調査が実施されたものであ るが, この質問は夫婦別姓に関する認識度について中都市高松での状況を 物語る。高松市民がどの程度夫婦別姓の実現を求め, どの程度の実用化と したいかは不明である。同時期の世論調査と比較するとき, 高松市民の意 識が特段に進んでるということでもないし,遅れているということでもな

(16) 

X

R香川県豊浜町, 白鳥町教育委員会「女性の生涯学習に関する

(17XI8) 

アンケート」 95/12

Q 14  夫婦別姓を認める最近の民法改正の方向をどのようにお考えでし

豊浜 499  自鳥 548 

①時代的要~

で守 的にr~~,④紅的に□ 1⑤わからな:~~1無効::

三七 九

ょうか。 (1つだけ〇をつけてください。)

最今の社会的な関心事である夫婦別姓をめぐる法改正のとらえかた,選 択的夫婦別姓制導入への関心度を量る。夫婦別姓に関する意識は,選択肢

④ 「基本的には反対」と回答するものが 30%を超えた。選択肢①「時代的 要求」,選択肢② 「一部の意見」と答える無関心層が40%を超える。選択 肢③「基本的に賛成」と答え関心を持つ層はわずかに

10%

を超える程度で 16~3•4--707 (香法'97) ‑ 104  ‑

(11)

ある。全体的傾向としては,夫婦別姓について,自分とは無関係のできご とと認識し,積極意見を明白に表す層は 1割程度ということになる。

香川県の西地区と東地区とでは,認識に若干の相違がみられる。豊浜町 は, 1/3の町民が積極的反対派で, 40%以上の者が自分の問題として考え ているわけではなく, 1割程度の町民が別姓に賛意を顕している。一方,

白鳥町では,反対層は 3割を割り, 1/4程度を占める。一番多い層は「時 代的要求」と考える層である。賛成意見は 1割を超える。地域により意識 が異なることが明らかになる。

Q 15  夫婦別姓の議論は子どもの氏についても影響します。あなたは子ど もの氏についてどのようにお考えでしょうか。 (1つだけ〇をつけてくださ

①父の氏と同じで1②母の氏と同じで1③父母いずれ 1④父母が称して 1⑤父母の氏と1⑥わから I無効 なくてはならないなくてはならないの氏でもよい いる氏と同じ氏 は繁関係の氏ない

豊浜 499  白鳥 548 

""",,,,̲,,,

16.6  16.2 

0.8 

0.7 

19.4  27.9 

54.1 

41.1  11.3 

8  0.8 

し%)

この質問では氏(姓)一ーとりわけこどもの氏について親はどのように 考えているかを尋ねる。親には父と母があり,彼らは生来異なった氏(姓)

を持っていた。どの親の氏(姓)を受け継ぐか,それをどのように考える か,である。多数意見の選択肢④ 「父母の氏」と同じものが約半数をしめ る。次いで親の氏と同じだけれど,それは父でもよければ,母でもよいと する見解が約 1/4を占める。 70%は親と同じであればよいという意識を 窺わせる。しかし, 17%は選択肢① 「父の氏」と同じでなければと折えて いる。が,逆の選択肢②「母の氏」と同じという意見は

1%

にも満たない。

子の氏決定に大きく作用するのは,父方の氏(姓)という意識であろう。

豊浜町,白鳥町のそれぞれの意識については,構図的には差違はみられ ないが,その選択率に僅かであるが意識差をみる。白鳥町では選択肢③「い ずれか」でとする割合は 1/4を超えるが,豊浜では 20%を割る。また,

選択肢② 「母の氏」を選択する者もいない。そこで,白鳥町の方が氏につ 七八

‑ 105  ‑ 16-3•4-706 (香法'97)

(12)

いての意識に柔軟性を窺うことができる。

④学生の意識調査

96年度前期学期末試験に際し,担当した授業で,主として 1'

対象とし教養教育科目,学部 2年次開講科目家族法とで,簡単なアンケー 96/ 9 /24, 10/ 3 

2年次を

トを実施した。試験時間に受験生全員に配布し,無記名で,答案提出時に

回答数 137  男子学生 82  女子学生 55 

夫婦別性に賛成する夫婦別性に反対する 鶯効 67.9  32.1 

57.3  42.7 

83.6  16.4 

10 10  

(I9X20) 

随意提出してもらった。

あなたは夫婦別性に

これは教養教育で実施したものである。民法改正が見送られた時点で,

若い世代の近い将来の当事者たちの意識を探る。学生たちの 2/3は夫婦別

Q 2   1賛成 2反対 ですか。

回答数 275  男子学生 188 女子学生 108

夫婦別性に賛成する夫婦別性に反対する ●効

76.0  22.6 

66.1  32.1  91.5  7.6 

1.5  1.8  0.9 

姓に賛成する。とりわけ,女子学生は 80%以上である。これに対して男子 学生は過半数を超える程度である。性差を明白に示している。

これは家族法で実施したものである。学生の 3/4は夫婦別姓に賛成す る。とりわけ,女子学生は 90%超えるものが賛成している。これに対して 男子学生は 2/3が賛成している。性差が明白に示されている。

三七

七 2つの授業科目における学生の夫婦別姓に関する意識であるが,男子学 生よりも女子学生が賛成し,年齢的には 1年次学生よりは 2, 3,  4年次 学生がいる家族法受講生の方が賛成率が高くなっている。学生の属性によ

る影響か否かは不明である。

16-3•4-705 (香法'97) 106  ‑

(13)

夫婦別姓を選択するI夫婦別姓を選択しない 1薫効

回答数 137  男子学生 82 女子学生 55

28.5  23.2  38.4 

69.3  73.2  63.6 

0.7  3.7 

Q3  あなたは結婚したら夫婦別性を 1選択する 2選択しない。

教養教育科目での結果である。将来的な質問である。学生の 28.5%が夫 婦別姓を選択するという。逆に 7割の学生は別姓を選択しないとした。男 女別にみると,男子学生では 1/4弱が,女子学生では 1/3強が別姓を選

夫婦別姓を選択するI夫婦別姓を選択しない I薫効 回答数 275 

男子学生 188 女子学生 106

26.2  25.6  27.4 

67.3  67.9  66.0 

6.6  6.6 

択するとした。

家族法では, 26%が選択するといい, 67%は選択しないとした。ここで は男女の性差は余りみられない。女子学生の選択するとした率が僅かに高

し)

学生たちは将来的に夫婦別姓を選択するか,どうかについて,約 25%の ものは別姓を選択するかもしれないが, 2/3以上のものは別姓を選択しな いかもしれない,とする。学生たちの夫婦別姓についての意識はその導入 については 2/3以上が肯定的であるが,こと自分が別姓を選択するかにつ いてはかなり消極的であることがわかる。

ところで,これらの結果と他の調査と比較してみると,夫婦別姓の選択 率が20%を超えていることが判る。このことは,法改正が婚姻をするであ ろう次世代の当事者のニーズに沿って進められなければならないことを強

(ZD 

力に顕すものと言えよう。

4 .  

お わ り に

選択的夫婦別姓制の導入がかなり確かなものになってきた昨今,地域的

七六

‑ 107  ‑ 16~3.4~704 (香法'97)

(14)

分析に主眼をおき,過去の世論調査データの時系列的分析でもって,夫婦 の氏(姓)に関する意識の分析を試みた。古いデータを入手し得ないこと は,

えられ,それゆえ,

そもそも夫婦別姓をめぐる問題意識がみられなかったためであると考 これらの検討は 80年代後半,とりわけ, 90年代の意識 動向に限られた。

夫婦の氏(姓)をめぐる意識が都会と地方によって異なることは頷ける。

地方の意識がどのような背景の下に築かれているか,推測することはそれ なりに可能であろう。夫婦の氏(姓)に対して「夫の氏」, 「妻の氏」を同 等に評価する社会でなかったことは先の稿で述べたとおりで, このことが

より強く意識されていることに他ならないことは言うまでもない。

法改正へと動く波と旧慣を維持しようとする意識とのギャップがどのよ うに埋められるかは,将来的な分析で明らかにされるであろう。変革に対 して,誰もが同じように率直に受け入れているわけではないし,周囲の情 報その他の諸状況によっても軌跡は異なる。今日的環境では,夫婦の氏(姓)

選択においても,婚姻しようとする当事者の社会的活動との関わり度合い,

出自など「個」に視座をおくことが求められ, これまでの「夫婦単位」の ユニット処理法理以外の途が当然に期待され,模索される。もっと多様性・

多元性が求められ, その方向に波が動いていることを実感することができ る。つまり,婚姻の氏についてのたとえ話,「大きいリンゴと小さいリンゴ を並べてどちらかを選択する自由がある」から, 「リンゴとみかんとを並べ て好きな方を各当事者の意思で選べ,

にしているものを持ち続けてもよい」

どちらにしても, そのまま, 今,手 ということである。

三七

(1)  例えば,徳島県議会の対応(朝日新聞96323日朝刊)

(2)  拙稿「夫婦の氏(姓)に関する意識動向一法改正・夫婦別姓と国民意識ー」『21 紀の民法』(法学書院1996 371頁以降参照。

(3)  ここで分析資料とした世論調査に関しては,世論調査実施機関からデータ提供が なされたものについてのみ検討したことをお断りしたい。

(4)  199168日夕刊。この調査については関連データを新聞社から提供された。

16-3•4-703 (香法'97) ‑ 108  ‑

(15)

詳細なデータを記事とともに参考にしている。

(5)  対象は全国の有権者から 3,000人を層化多段無作為抽出法で選出。有効回答2, 179人,回答率は 73%, 男性46%, 女性54%である。

(6)  以下調査の質問は新聞等に掲載された番号記号をそのまま使用する。続いて掲載 する表は,とくにお断りしない限り,その質問に対する回答率を%で示している。

(7)  19963月。この調査については関連データを新聞社から提供された。詳細なデ ータを記事とともに参考にしている。

(8)  対象は全国の有権者から 3,000人を層化二段無作為抽出法で選出。有効数2,039 人,回答率は 68%, 内訳男性46%, 女性54%である。

(9)  拙稿392

(10)  地方で実施された調査データに着目して意識動向を探る。極めてローカルなデー タを取り扱う。

(11)  高松市『女性問題総合調査報告書』 19893月刊。

(12)  高松市民20‑69歳,選挙人名簿より等間隔抽出法 3,000人郵送法。男448, 714  , 回答者 1,214人,回答率40%

(13)  拙稿373頁参照。

(14)  高松市『女性問題総合調査報告書V19943月刊。

(15)  高松市民 20‑69歳,選挙人名簿より等間隔抽出法3,000人郵送法。男496,837, 回答者 1,359人,回答率45.6%

(16)  拙稿383, 384頁参照。

(17)  香川県教育委員会「女性の生涯教育プロデュース事業」平成83月刊。

(18)  豊浜町,臼烏町が実施したアンケート。地域の事情に通じた担当者が年齢構成を 考慮に入れて回答者を選出し,回答者に直接手渡すと同時に回収をはかる。通常の 回答者の摘出方法が採られていないことに注意されたい。

(19)  教養教育科目は登録学生 157名,受験学生138名,回答者 137名である。

家族法は登録学生357名,受験学生300名,回答者275名である。

(20)  受講生の年齢構成は,教養教育は主として 1年次学生,家族法は主として 2年次 学生である。いずれにしても 10代後半と 20代前半である。

(21)  拙稿396頁参照。

(1997 .01) 

三七四

··~109 16-3•4-702 (香法'97)

参照

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