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人とつながっていく −3年1組『おはりがきれいなのは……』の実践より−

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Academic year: 2021

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人とつながっていく

−3年1組『おはりがきれいなのは……』の実践より−

1.教材に込めたもの

学校の目の前に広がる駿府公園は、子どもたちにとって思い切り遊ぶことができる大好きな場所で ある。公園には、自然がたくさんあり、歴史を感じさせる公園として、多くの人が利用している。

4月、そんな駿府公園の魅力にふれ、親しみを深めることを願い、

『駿府公園の秘密をさぐろう』を設定した。子どもたちは、公園の 中にある遊具で遊んだり、銅像や石碑を調べたりした。児童会館で は、時間を忘れて活動する子どもたちも数多く見られた。中には、

駿府公園の前に広がるお堀に興味をもち、市役所の人に、「どうし てお堀を作ったのか」と尋ねる子や、中にいる生き物を眺める子も 見られた。きっとその子たちは、自分の家の近くにある公園と比べ、

くお堀の様子〉    趣が少し異なるお堀に興味をもっているのだろうと私は思った。こ のように子どもたちは、駿府公園で遊んだり調べたりしながら、駿府公園の魅力にふれ、子どもたち なりに駿府公園への親しみを深めていった。R男君もそのひとりであ′る。

また、駿府公園の中を掃除している人たちに興味を示す子もいた。その人たちが集めたごみの量の 多さに驚いている子どもたちの姿から、自分たちにとって愛着のある公園が、きれいに保たれてほし いと考えているのではないかと思った。そんな子どもたちに私は、駿府公園の周りにあるお堀をきれ いにするため、一人で仕事をしているSさんに出会わせたいと考えた。Sさんは、小舟に乗り、落ち 葉やごみを一つ一つ集めながら、1日6時間かけて毎日お堀を掃除している。そんな姿から、私はS さんのひたむきさや情熱を感じている。

子どもたちは、Sさんに出会い、卓の働きぶりに心を寄せていくだろう。しかし一人では、お堀全 体をきれいにすることは難しいという現実を目にする。子どもたちは、Sさんに思いを寄せ、どうす ればお堀がきれいになるのか考えていく。そこには、その子なりのお堀をどう考えているかが表れ、

お堀から駿府公園までもその子なりに見っめていく姿が期待できる。このように、私は駿府公園を子 どもたちが利用者の立場だけでなく、「お堀をきれいにするために、自分も何とかしたい」という思 いをもち、駿府公園や興味あるお堀への愛着を深めてほしいと願い、『おはりがきれいなのは……』

を設定した。

2.R男君のとらえと願い

R男君は、前教材『わたしたちの静岡茶』で、「静岡茶が全国で一番の生産高を誇っているのは、

農家の人の苦労や工夫があったから」という発言をした。この発言から私は、人に響いていく彼がい るのではないかと感じた。しかし彼は、インターネットを使いお茶についての事実を蓄え、静岡茶の よさを感じていった。私は彼が人に響いていくと思っていたので意外に感じた。一方で、蓄えてきた 事実を根拠としたことから、彼の事実をもとに考えを作り出そうとする姿に成長の芽をとらえた。

そんな彼が、この教材に出会うと、お堀についての事実を熱心に蓄えていく。特に彼は、Sさんが お堀を掃除しても、全てはきれいにすることができないという事実に出会うだろう。駿府公園に親し みをもっ彼は、Sさんにもっと頑張ってほしいという思いと、これ以上頑張ってもきれいにならない という現実との間で思い悩むに違いない。そんな彼に、Sさんが頑張っている姿を思い起こさせるこ とで、Sさんの思いを感じながら、お堀がきれいになってほしいかどうか彼なりに判断する姿を期待 した。期待することで、自分が蓄えセきた事実を大切にする彼が、利用者及びSさんの思いにふれる ことによって、事実をもとに考えを作り出そうとする彼らしさを強めていくことを私は願った。

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3.Sさんに響いていくR男君

(1)Sさんとの出会い

子ど.もたちに、学校の前に見えるお堀について知っていることを尋ねた。多くの子どもたちは、生 き物がいることを口にした。R男君も、実際にお堀に出かけ、生き物が多くいることを見つけてきた。

また、R男君も含め、Sさんが串堀のごみを集めていることに気づいた子もいた。そこで私は、Sさ んの仕事ぶりやその苦労にふれることで、働いている人の立場でお城の様子を見てはしいと思い、S

さんに出会わせることにした。

R男君が、「何人で掃除をしているのか」とSさんに尋ねると、

「一人でやっている」という答えが返ってきた。その後、数多くの 子どもたちの質問に対し、一つ一つていねいに答えるSさんの姿が あった。彼は話を聞き終えた感想として、次のように記した。

〈R男君のノート〉

1日にコンテナ7杯分のごみが取れる。Sさんは、生き物が好き。

くお堀を掃除するSさん〉

Sさんの話の中で生き物が好きという言葉はなかったのだが、彼はSさんは生き物が好きと記した。

友達からも、「好きとは言っていない」と言われるが、彼は、「嫌いではないから、僕は好きなんだと 思う」と反論した。私はこの時の強い彼の口調から、彼がSさんの働きぶりに共感しつつあるのでは ないかと感じた。彼がSさんへの思いとともに、これからお堀の調査をしていく中で蓄えていく事実 をもとにして、お堀や駿府公園がきれいに保たれていくために、どんなことを考えていくのかとらえ ていきたいという気持ちを私は強くした。

(2)「Sさんは、この仕事も好きなんだ」

友達の、「Sさんは、雨の日にも掃除をしている」という発言を耳にするとすかさず、「雨の日には 特に疲れる。風邪をひかないのかな」と口にする彼の姿があった。そんな彼は、「Sさんは、生き物 も好きだし、この仕事も好き」と発言した。クラスの中で、「Sさんがこの仕事が好き」と一番初め に言い出した彼。Sさんの仕事ぶりを次々と語る彼の姿は、少しでもお堀をきれいにしてほしい、そ のために頑張ってほしいという、彼のSさんへの思いが疹み出ていた。

その後、「お堀にたくさんのごみがある」という発言から、お堀がきれいかどうか調査に出かけた。

そこで彼は、お堀に浮いているごみを見つけた。事実を大切にする彼なので、私はお堀をSさん一人 で掃除するには広すぎると考えるのではないかと思い、「お堀はこんなに広いんだよね」と関わった。

しかし彼は、「このお堀を1周するって凄いね」と改めて、Sさんの仕事の大変さを感じていた。「こ の広さだから汚れるのも仕方ない」と彼が蓄えた事実から考えると思っていた私は、彼がSさんの仕 事ぶりを見っめ、Sさんに響いていくのを強く感じた。

この後、子どもたちから、「お堀をSさんにもっときれいにしてほしい」という意見が出された。

Sさんの頑張りを感じている子どもたちもいることをとらえていた私は、「今より、お堀がもっとき れいになってほしいか」と尋ねた。そうすることで子どもたちは、「お堀がきれいであってほしい」

という思いと「Sさんにこれ以上頑張ってほしいとは言えない」という思いの間で揺れるだろうと考 えた。彼はこの間題に対し、こうノートに書き留めた。

〈R男君のノート〉

お堀がきれいになれば、生き物もSさんも嬉しい

このノートを見て、私は、彼自身がきれいにしたいという気持ちを、Sさんからも感じていたのだ ろうと思った。さらに、彼の中では、「こんなにSさんも頑張っている」という思いが強まっている ことを感じた。それとともに、彼の書いた「嬉しい」という言葉に込められた彼の思いを、詳しく探っ ていきたいと考えた。

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4.お堀への思いを強めていくR男君

(1)Sさんとのつながりを感じていく

R男君を含む多くの子が、お堀がきれいになってほしいと考えていった。その理由として、「生き 物を見てみたい」「きれいになれば泳げるかも・しれない」と現実にこうあってほしいと口にする子が 多い申、私はD子さんの発言をきっかけに、R男君のお堀とSさんへの思いをとらえようとした。

Cl(D子)せっかくSさんがきれいにしているのだから、もっときれいになってほしい。

Tl 誰がきれいにするの?

C2 (D子)Sさんとか周りの人。

C3 きれいになれば、Sさんも喜ぶ。

T2 R男君は、どんな気持ちになるの?

C4 嬉しい。

彼が「嬉しい」と言った表情や言葉には、Sさんだけでなく自分も嬉しいという気持ちが込められ ていると感じた。私は、今までSさんの仕事の大変さを語っできている彼だからこその思いであった

と考えた。彼のSさんに対する思いを、私は強く感じたのである。これまで、私の心の中には、彼が なかなかきれいにならないという目に見える事実を蓄えながら、お堀の様子を見ていくだろうという 思いがあった。その上で軍際にあれだけ広いお堀を、全てきれいにするのは無理であることに、彼は

目を向けていくのではないかと思った。しかし、彼は追究が進むにつれ、.お堀が汚れていることを不 安に思いながらも、一生懸命きれいにしているSさんの仕事ぶりに響いていったのだろう。

彼は、「お堀1周3時間で、それを2周で6時間占それって本当に大変」とも発言した。この時私 は、R男君がSさんのことをどう感じているのか話してほしいと思っていた。しかし、彼の口から何 度となく、「Sさんの仕事は大変だ」「Sさんは頑張っている」という思いは語られている。すでに彼 の中では、これ以上、Sさんに頑張ってほしいと言えなかったのではないか。まだ頑張ってほしいと

ロにする友達とは少し異なり、Sさんの仕事の大変さに目を向けている事実をもとに彼が、彼らしく Sさんを感じていったのである。それでも彼は、Sさんが頑張ってきれいに保とうとしているお堀に 対しても、当然きれいであってはしいという思いを強めていくことになる。

(2)「自分たちが汚すから意味がない」

Sさんの頑張りがあるにもかかわらず、きれいになっていないお堀の現実を見た子どもたちは、・お 堀をきれいにしたいという強い思いをもった。そんな子どもたちの中には、Sさんに任せるのではな

く、自分たちにできそうなことを考え始めていく子もいた。

C5 (P男)僕たちで掃除すればいい。このクラスでごみを取ればいい。

C6(E男)僕たちが協力すればごみも減る。ごみを捨てないのも協力。協力した方がいい。

C7 自分たちがきれいにしても、自分たちが汚すから意味がない。

この話をきっかけとし、自分たちでもきれいにしたいという思いがクラスに広がっていったo R男 君も、なかなかきれいにならないという現実を感じていると思った。それとともに、自分を含めた駿 府公園を利用する人が、お堀を汚していることを振り返っているとも感じた。私は彼なら、自分がで きることを考え、Sさんに共感しながら、お堀をきれいにしたいという思いを強めてほしいと思った。

この時間の最後には、下のように記した。

〈R男君のノート〉

自分たちがごみを拾う。子どものつり場は汚かった。

自分たちができることを考えた子どもたちは、「ご今を捨てないようにする」「ごみを自分で拾う」

などと発言した。彼は、Sさんがきれいにしているお堀の周りにある子どものつり場が、汚れている ことを話した。お堀の中だけではなく、その周りまで目を向けていく彼を見て、自分たちが実現でき ることを考えていると感じた。その後も、ボートを作りたい、立て札を作りたい、ちらしを配りたい

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などという意見が出された。このような意見を聞いて、私は子どもたちの考えに実現できることがあ ればと思い、市役所の人に出会わせる機会を設けた。きっとこの子どもたちなら、例え実現できるこ

とが少なくても、お堀をきれいにしたいという気持ちが変わることはないと考えたからである。

市役所の人に直接、自分たちが考えていることを直接告げた。しかし、実現できるものは、ごみを 拾うこととちらしで呼びかけることだけであった。さすがにこの話を聞いた後は、子どもたちはがっ かりしていたが、それでも何とか自分たちができることを、もう一度模索し始めた。

(3)「僕たちにできることはある」

R男君は、「僕たちにできることはある」と強い口調で言い放った。何とか自分たちでお堀をきれ いにしたいという強い気持ちが、この言葉の中には込められていると思った。ここでR男君がこだわっ たのが、「ごみを捨てないで」というちらしを配ることであった。私は、何とかしてきれいにしたい と考える彼を遥しく感じた。一方では、ちらしを配ることを否定する意見も出された。「ちらしをそ のまま捨ててしまう人もいるのではないか」という考えである。確かに、このような問題も起こって くるだろう。きっと、子どもたちは、思っていても実現できないこともあることを感じていたに違い ない。私は改めて、ここまで真剣に考える子どもたちを素敵に感じた。

それでも、R男君は、まだちらしにこだわっていた。「もらいたい人はもらってくれる。だから、

やってもいいんじゃないか」と考えたのである。この発言を聞いて、N男君やP男君が、ちらしがか えってごみを増やすことになりかねないと切り返した。もうR男君からの反論はなかった。考え込ん でしまった彼は、きれいにするための手だてを彼なりに考えながらも、ノートにこう結論を書いた。

〈R男君のノート〉

きれいにすればSさんも喜ぶと思う。やっぱり、ちらしは 風で飛んでごみになるかもしれないので、やめた方がいい。

「Sさんも喜ぶ」と書いた彼にとってのSさんは、単にごみ を取り除いてくれる存在だけではなく、共にきれいにしていこ うとする存在だった。自分たちができることを考えながらも、

彼はSさんのことを考えていたのだ。このように彼は、Sさん くお堀への思いを強めるR男君〉

への思いを強めていった。それとともに、自分が考えてきたちらしを諦めた彼は、「何とかきれいに してはしい」という今までの思いを見っめ、「きれいにしたい」という気持ちだけでももっていたい と感じていたのだろう。私は、これほどまでに彼がSさんに響いていくとは思っていなかった。

彼は、Sさんの仕事ぶりをもとにSさんに思いをよせながら、お堀をきれいにするために自分にも できることはないかと考え、駿府公園のお堀に対する愛着を深めていった。このことは彼の、事実を もとに考えを作り出そうとする彼らしさを強めたと考えている。そこに、彼ならではの学びがある。

5.人とつながっていく

この追究で彼は、Sさんを含め友達とのつながりも感じたのではないかと考える。それぞれがお堀 をきれいにするために自分ができることを考える中で、「自分たちには、まだできることがある」と 強く反論していった。自分の考えにこだわり続けたいと悩みながらも、友達にもお堀をきれいにした いという同じ思いを感じ、受け入れたからこそ、彼も自分自身を見つめ直したと考える。きっとお堀 をきれいにしたいという思いを、友達とつながりながら彼は強めていったのだろう。

また、Sさんに響いている私も、彼のSさんへの思いやお堀への思いをとらえたいと考えていた。

広いお堀に目を向けさせようと関わったが、彼はSさんの仕事の大変さを口にするなど、私の関わり は適切ではなかったように感じた。一方で、私が考えていた以上に人に響いていく彼をとらえること ができた。このように、Sさんに思いを寄せながら考えていく彼を頼もしく思いながら、私は彼への

とらえを豊かにしたように感じている。

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参照

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