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15 章原爆被爆者の健康管理と大学

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15

原爆被爆者の健康管理 と大学

朝 長方左 男 、 三根 真 理子 、 近藤 久 義 、本 田 純 久 、横 田 賢一

1 被爆者健康診断の しくみ

被爆者健康診断は原爆被爆者の健康 を守るため、定期的に健康診断が実施 さ れている ここでは健康診断の実施状況を示 し、デー タベース として医学部に 登録 された膨大な健康診断の結果 を、被爆者の健康管理に役立てているシステ

ムを紹介する。

(1)長崎市の被爆者

長崎市 には19983月末現在で57,174人の被爆者が居住 してお り、被爆者健 康手帳が交付 されている。1998年度末の年齢構成は図1のようになっている

7000 60005000 4000 3000 2000 1000 0 年齢

90+

85189 4 75・79 70・74 65‑69 60・64 55・59 50154

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

1 被爆者の年齢構成 (19983月末現在)

(2)被爆者健康手帳の交付

被爆者には 「原子爆弾被爆者に対する援護 に関す る法律」に基づ き被爆者健 康手帳が交付 される。手帳を持っていると、健康診断を年 2回無料で受診で き、

また指定 された疾病の医療が無料で受けられる 被爆者健康手帳は3年に1 更新することになっている

‑ 187‑

(2)

(3)被爆者健康診断の実施

被爆者の健康診断は1957年原爆医療法の施行により開始 された。健康診断に は一般検査 と精密検査がある 一般検査 は毎年春秋の2回、定期健康診断 とし て実施 される。精密検査は一般検査の結果、必要があると認め られた場合 に実 施 される。

2節 被爆者健康管理の支援システム

(1) システム開発の背景

現在、定期健診は被爆者健康管理セ ンターをは じめ、多 くの医療機関で実施 されている。健診受診者の うち約9割 は被爆者健康管理セ ンターの健診 を受診 している。1965年以降の被爆者健康管理セ ンターで実施 された健診の結果が医 学部の被爆者 デー タベースl言登録 されている‑現在の登録件数早ま延べ260万件 となっている。 これ らの情報 を被爆者の健康管理 に利用す るため1986年に 「 爆者健診デー タ表示 システムを開発 した1)。 このシステムは医学部の被爆者 デー タベース用 コンピュー タと被爆者健康管理セ ンターの診察室に設置 された パ ソコンとを専用回線 により接続 し検査結果の照会を行 うものである。検査結 果 は数億表示のほか、 グラフ表示が可能である これによって受診者 に対 して パ ソコン画面 に表示 される検査結果の変化 を示 しなが ら検査結果の説明や健康 指導 を行 うことが可能 になった。受診者 も自分の 目で健康状態 を確認で きる

1997年 には被爆者デー タベ一女システムの更新 に併せ、本 システムをより使い やすい システムに全面的に改修 した。

(2) システムの構成 と操作

医学部 にUNIX並列処理サーバ (IBMRS/6000SP)を設置 し、被爆者健康管 理 セ ンターの診察室 な どに検索用端末 として6台のパ ソコン (IBM PC350 Windows95)が設置 されてい る 各装置 はそれぞれの建物 内のLAN (Local AreaNetwork)に接続 され、 これ らのLAN間はNTTのデー タ通信専用 回線

(3.4kHz区分) によ り相互 に接続 されている。 この システムはインターネ ッ ト で使用 されているWWW ‑(WorldWideWeb)技術 を利用 してお り、操作が非 常 に簡単で視覚的に も見やすい。 また、検索端末のパ ソコンの増設 も容易であ

ー 188‑

(3)

15 原爆被爆者の健康管理 と大学

2は検査結果の一覧表お よびグラフの表示例 であ る 一覧表では12回分 の検査が最初 に表示 される 検査項 目は21項 目が一画面 に表示 される。残 りの 部分はスクロール して見 ることがで きる また、一つの検査項 目について一度 に全部の結果 を表示す ることもで きる 検査結果はあ らか じめ設定 した基準値 の範囲内は緑色、上限を超 えるものは赤色、下限に満たない ものについては青 色で表示す る グラフ表示 は血液検査、血圧、尿検査、肝機能検査、血清蛋 白 検査などの結果 をグラフ表示で きる 2の血液検査の グラフ表示では検査 日

手牡番号 :XXXXXXX 長崎 太郎 佃̀柑 ) 男 昭和0309月01日 生 69.1才

頼壬 日付 1S0」6215. 05.S6124. 1 06D4S60. 日.559. 07JS59.,)2 1S58.0.30 06JS58.)1 1S52.17.8 07.S57.一一 判 定 Jt常あり Jt常bIJ ★ あり Jt*bIJ 井♯あり Jt常あり **QL, A禽あり Jt常か) 要岩挿 会 4 センター センター セ タ‑ センター センター センター センター センター センター センター

■大血圧 ITIlTI 40 110 2 162 180 160 164 1SK) 166 160 JL小血圧 nnルlq 74 60 88 84 108 0 ) 108 96 104 赤血球赦 /nn13 382 383 418 358 380 3) 405 386 368 384 白血球故 /nm3 5!) 5600 6303 5600 6100 50∝) 7 5903 59X) 67

血色素Jt !● 9 93 ll 13 3 14^ l3B 133 152 血沈 mm 2 23 25 28 5 13 5 8 t5 5

± ± 手帳番号 :XXXXXXX 長嶋 太郎 廿一舛 タD) 男 昭和0309月01日 生 69.1才

尿蛋白定位 ± +′

尿地定性

血汁強生白/G a/dI 血液検査 アルブミン I

α1‑グロブリン I 13000 7000000 6007000 500〇MBC E)C1815ー2A暮 α2‑グロブリン I

β‑グロブリン I γ‑グロブリン I

4000 400 9

1000 10r) 6

78 79 80 81 82 83 84 85 86 87

2 表示画面の例 (検査成績、血液検査のグラフ)

を横軸 として白血球数 (WBC)、赤血球数 (RBC)、血色素量 (HB)などの経 時的変化が色 とマー カーによって区別 されて表示 される これによって検査値 の変動 をより明確 に知ることがで きる 一覧表お よびグラフはプリンタによ り 印刷することがで き、受診者に過去の検査結果 を印刷 して渡す ことがで きる。

(3) システムの特長 と効果

本 システムは以下の特長 を持 っている

(∋検査値の色分け表示、グラフ表示な ど表示が医師や受診者 に分か りやすい。

‑ 189‑

(4)

(参WWWの採用によ り操作が非常に簡単で表示が見やすい。

(参高性能データベースの採用により照会の応答時間は7秒程度である

④パスワー ドにより端末操作員のチェックを行ってお り、プライバ シー保護の 考慮がなされている。

(9専用回線 を使用するため∴通信回線 を通 じで情報が漏洩す るおそれがない。

この ような特長を持つ本 システムを活用すること・により、経時的に検査結果 を分析することがで きる ひいては被爆者の健康管理、医療の支援 を行 うこと が可能である。具体的には次の ような利点が考えられる。

①過去の検査結果を受診者に示 しなが ら、説明や健康指導が行える。

(参受診者が 自分の 目で健康状態 を確認で きる。 これにより定期健診 に対す る意 識向上が期待で きる

(彰治療や入院の際に過去の検査結果等 を医療機関に対 し提示で き、早期治療 に 役立てることがで きる

高齢化が進む被爆者の健康管理は今後 ます ます重要になる。医療機関相互の 情報共有や連携が必要になると考えられる 本 システムがそれ らの一助 になる

ことが期待 される。

3節 生活習慣 と寿命

(1)健康診断 と寿命

健康診断受診の 目的は異常の早期発見 と適切 な健康指導である。被爆者の健 康診断は効果があるのか ?とい う問いに答 えるために受診状況 と寿命の関係 を 分析 した2)。受診状況により年 1回以上受診 している人 と全 く受けない人の2 つ にわけた。 この 2群の死亡率 を比較すると全 く受けない群の死亡率が高かっ た。 この結果か らすると健康診断を受けた人は、受けない人 より長 く生 きられ ることになる その理由 として考え られることは、 まず第一に、「病気が早 く みつかる」 ことである。毎年、健康診断を受けることで早期の段階の異常がみ つか りやす く、 また治療 も早 くおこなえ、病気が早 く泊 りやすい という事であ る。第二に、健康診断を受けている人は、健康 に関心 を持ち、 自分 自身の健康 に留意 している事である。

‑ 190

(5)

15 原爆被爆者 の健康管理 と大学

(2)受診者の特徴

健康診断をよく受ける人はどんな生活習慣 を持つのか、アンケー ト調査で調 べ た3・4・5)。受診者 と非受診者 をあわせて4,954人の回答があった。項 目は趣味、

運動、飲酒、喫煙の有無、食生活 に注意するかである 3は受診者 と非受診

あ りと回答 した人の割合 %

0 10 20 30 40 50 60 70 80 趣 味あ り

運動する

飲 漕する

喫煙 する

3 受診者 と非受診者の生活習慣の比較 (男性)

者の生活習慣の割合 を比較 したものである 受診者には 「趣味あ り」、「運動す る」 と回答 した者が多かった。非受診者 には 「喫煙する」 と回答 した者が多か った。健康診断をよく受ける人は趣味をもち、運動 をするなど健康保持に気 を 使 っているようである

4 被爆者検診成績 に関連する研究

高齢者における死亡の高危険群 を早期 に把握 し、適切 な助言 ・指導 をおこな うことにより、被爆者の健康 を保持することは有用である

当施設の コンピュータに登録 されている約260万件の原爆被爆者定期健康診 断成績 を用いて、個人内での検査値の変動 と予後について調べ ることによ り、

高齢者における死亡の リスク要因を推測 した。

(1)検査値の変動係数 と死亡率の関連 1 191‑

(6)

50‑54歳の間に被爆者検診 を5回以上受診 していた男性7,124名、女性15,759 名 を対象 に、赤血球数、 白血球数、血色素量、収縮期血圧、拡張期血圧の5

目について、各検査値の個人別平均値 と個人別変動係数 と死亡 との関連 を多変 量比例ハザー ドモデルを用いて解析 した。 当てはま りが最 も良いモデル と各要 因の十分位値 の分位 当た りのハザー ド比の推定値 を表 1に示す。個 人内の検査

1 最適比例 ハ ザ ー ドモデル にお ける各変数 の分位 当た りのハザ ー ド比 と 95%信頼 区間

ハザー ド比 95%信頼 区間 (男 性)

赤血球数M 0.931 0.903‑0.959' 収縮期血圧M 1.109 1.077‑1.142 白血球数CV 1.032 1.0011.065 血色素量CV 1.077 1.0431.113 収縮期血圧CV 1.030 1.0011.060

(女 性)

白血球数M Jl.015 0.991‑1.041 拡張期血圧M 1.051 1.0261.077 赤血球数CV 1.061 1.0321.090 白血球数CV 1.018 0.992‑1,044 収締期血圧CV 1.030 1.005‑1.054

M:個 人別平均値,CV:個 人別変動係数

値 の生理的変動の指標 の一つである個人別変動係数は、個人別平均値 とともに、

死亡の予測 因子 として有効である。 また、個人別変動係数のハザー ド比がいず れの項 目において も1よ り大 きいことか ら、個人別変動係数が大 きい (検査値 の変動が大 きい) と死亡率が高 くなると思 われる。

(2)検査値 の変動 と死因

5年 間に被爆者検診 を5回以上受診 していた60‑79歳の男性4,263名、女性 9,143名 をその後5年 間追跡 し、悪性腫壕 、脳血管疾患 、心疾患、肺炎 ・気管 支炎 による死亡 を観察 した。血色素量、 白血球数、収縮期血圧の3項 目の各検 査値の個人別平均値 と個人別変動係数 と各死因 との関連 を多変量比例ハザ」 ド

モデルを用いて解析 した。死 因別の各要因のハザー ド比の推定値 を表2に示す。

3項 目の検査すべ てにおいて、検査値 の個 人内での変動の指標である個人別変

‑ 192‑

(7)

15 原爆被爆者の健康管理 と大学

2 死 亡原 因別 の各 要 因 のハ ザ ー ド比

悪性腫癌 心疾患 脳血管疾患 肺炎・気管支炎

1 1 1 1

0.42(O.35‑0.51) 0.58(0.46‑0.73) 0.73(0.56‑0.95) 0.27(0.19‑0.38) 1.51(1.40‑I.63) 2.20(1.99‑2.43) 2.22(1.99‑2.49) 2.78(2.36‑3.29)

0.97(0.90‑1.04) 0.98(0.90‑1.07) 1.05(0.95‑1.17) 77(0.67‑0.89) 1,78(1.33‑2.38) 2.61(1.82‑3.74) 1.58(1.04‑2.40) 2,67(1.68‑5.01) 0.98(0.93‑1.02) 1.01(0.96‑1.07) 1.10(1.0311.18) 1.00(0.90‑1.08)

1.24(1・13‑1.36) 1.25(1.12‑1.39) 1.16(I.0011.34) 1.29(1.08‑1.56) 1.16(0.64 2.12) 2.31(1.19‑4.48) 2.64(1.26‑5.53) 3.08(1.13‑8.41) 1.10(1.03‑I.18) 1.14(1.07‑1.22) 1.10(1.02‑1.18) 1.05(0.87‑1.27)

性 別

年齢 (5歳の増加に対 し)

個人別平均値

血色素桑 (1g/dlの増加に対 し)

白血球数(100%の増加に対 し)

収縮期血圧(10mmHgの増加に対 し)

個人別変動係数(5%の増加に対 し)

血色素量白血球数 収緒期血圧

( ) :ハザ‑ ド比の95%信頼 区間

動 係 数が 大 き くな る と、す べ て の死 因 に対 す る死 亡 の リス クが 増 大 して い た。

また、 白血球 数 の個 人別平 均値 が 高 い場合 に も、すべ て の死 因 に対 す る死 亡 の リス クが増大 して い た。 これ らの こ とか ら、検 査値 の個 人別変動係 数 が大 きい こ とお よび 白血 球 数 の個 人 別平 均 値 が 高 い こ とは 、高齢 者 にお け る悪性 腫 癌 、 脳 血管疾 患 、心 疾患 、肺 炎 ・気 管 支炎 に よる死亡 に対 す る共通 の リス ク要 因で あ る と考 え られ る 同一個 人の検 査値 が変動 す る とい うこ とは、生体 の内部 環 境 が一定 に保 たれ て い ない、即 ちホ メオス タシスが破綻 して い る と考 え られ る

ホ メオス タシス は 自律 神 経 系 を は じめ とす る多 くの調 節 系 の働 きに よ り発 現 し、 これ らの調 節系 は視床 下部 を中心 とす る脳 幹に よ り支 配 され てい る 生体 に肉体 的 お よび精神 的 ス トレッサ ‑が加 わ る と、視 床 下 部 が興 奮 し、前述 の調 節 系 を変化 させ る また、 近 年 、脳 と免 疫 系 との 間の 関連 を示 唆 す る知 見= )

が 集 ま りつ つ あ り、 情 動 ス トレ ッサ ‑ が ヒ トの免 疫 能 を低 下 させ る とす る報 告 1011)もあ る これ らの こ とか ら、個 人 の 中で検 査 値 が大 き く変動 して い る場 合 、種 々の ス トレ ッサ 一 に よ りホ メオス タシスが破 綻 して い る と同時 に、 ス ト

レ ッサ 一 に よ り各種 の調 節 系 や免 疫系 に変調 を きた し、種 々の疾患 に よる死 亡 の危 険が 高 くな って い る可 能性 が あ る と考 え られ る

5 被爆高齢者の満足感 に関連 する研究

(1)調査 の方 法

1965年 と1998年 の年齢構 成 を図4に示す。 この33年 間で原爆 被爆 者 の高齢 化

‑193‑

(8)

はすすみ、彼 らの健康管理 を考 える上で、健康の実態について検討す る必要が

% . 1965 年齢 1998 %

60 50 40 30 20 10 0 0 10 20 30 40 50 60

80+ 70・79 60Ji9 5069

408

20m

4 被爆者の年齢構成の変化 (1965年 と1998年)

ある また、身体的健康のみな らず精神的健康 も重要である 高齢者の 日常生 活での満足感 に関連する要因を検討 した。

65才以上の高齢者 を1,500人無作為抽出 し郵送法 によるア ンケー ト調査 を実 施 した。回収数は1,329人 (回収率88.6%)であった。今 回の解析 は80才未満 を 対象 とした。解析 に用いることので きた総数は937人 (男性456人、女性481人) であ り、非被爆者 に対す る被爆者の比 は男性 (127/329)よ り女性 (283/198) の方が大 きかった。調査項 目は住宅状況、生活状況、就労状況、健康状況及び 家族状況に関する137項 目であった。

(2)被爆者 と非被爆者の健康状態意識の比較

健康状態意識は 「大変健康」、「まあ まあ健康」、「あま り健康でない3 階の 自己評価 である 非被爆者の方が 「大変健康と回答 した者が多か った占 被爆者 は被爆 したことによ り、健康状態 を心配 していることをうかがわせ る。

(3) 日常生活の満足度

被爆者の方が満足度は高 く、個人的な楽 しみ よ.り集団的な楽 しみ を持 ってい た。個人的な楽 しみ とは 「テ レビ ・ラジオ」、「新聞 ・読書であ り、、集団的な 楽 しみ と■は 「子 ・孫の訪問」、「家族団 らん」、「友人つ きあい」、「親戚づ きあい」、

‑ 194‑

(9)

15 原爆被爆者の健康管理 と大学

表 3 満足度 と関連 する項 目

判別指数 :値が大きい程、強 く関連 している。

項 目 判別指数

(1)住宅状況

住宅の満足度 間借 り 和式便所 で不便

社宅 に居住 社宅が老朽化

(2)生活状況

収入が少ない 着脱衣 外 出が困難 食事の支度 が困難 老人クラブに参加 千 ・孫の訪問 自治会 に参加 掃除が困難 植木の手入れ 倍仰 家族団らんの楽 しみ 仕事をもつ テレビ ・ラジオで過 ごす 会合 に参加

(3)就労状況

仕事 に不満 仕事に心配あ り

(4)健康状況

脳 軟化症 耳が聞こえない

ぜんそく 脳 血栓症 健康意故 目がみえない

(5)家族状況

子供がない

6607705792815 4075565461235055253820281121603996513日H 065363101107114211

「クラブ」である

(4)満足度 と関連す る要因

「日常生活 に満足 してい ますか」 との間に 「満足」 と回答 した者 は被爆者、

‑ 195‑

(10)

非被爆者共に約95%をしめてお り満足度は高かった。男女共、同様な結果であ った。 また、被爆者 と非被爆者の間には有意 な差はなかった。満足度 と関連す る要因 として選択 されたのは28項 目であった。被爆者であることは要因になら なかった。要因 として選ばれた28項 目を住宅状涙、生活状況、就労状況、健康 状況及び家族状況の5つに分類 し表3に示 した。住宅状況では 「住宅に満足 し ていない」 ことと、「間借 りしていることが不満の大 きな要因であった。生 活状況では 「収入が少ない」、「着脱衣が不 自由」及び 「外出が困難」の3項 目 が不満の要因であった。就労状況では 「仕事に不満がある」 ことが不満の要因 であった。健康状況 も不満の要因があ り、「脳軟化症」 と 「耳が聞 こえない」

ことが大 きな要因であった。間借 り住いを解決することと、収入 を保障するこ とが 日常生活の不満 を解決することになろう 項 目を整理 して分析 を行った結 果、 日常生活の満足 を決定する要因 として男性では入浴の程度、検診受診、就 業、生計 のバ ランスの4項 目が選択 された。̲また、女性では専用居室の有無、

聴力の程度、移動の程度、生計のバ ランス、団体参加の5項 目が選択 された。

高齢者の 日常生活の満足感も=関連す る要因について、住宅状況、生活状況、

就労状況、健康状況、家族状況に分類 して解析 した。住宅状況が最 も大 きく日I 常生活の満足感に関連 していた。 このことより不満足 を満足 にさせ るには住宅 環境 と経済状態 を整備す ることが必要である。 きた、満足 を決定す る要因は男 女間で異なることがわかった12,13)0

6節 被曝線量の推定

(1)線量推定の必要性

原子爆弾か ら放出された放射線は被爆者の健康 に多 くの被害を与 えた。被爆 直後には熱傷や脱毛などの急性影響 を引 き起 こした。 また被爆か ら数十年が経 過 した後にも、放射線の影響により、がんや白血病 といった後障害が被爆者に 多 くみ られる。被爆者が受けた放射線の線量 を正確 に知ることは、放射線障害 に関す る医学的研究のみならず、被爆者医療の面か らも重要である。長崎大学 医学部では被爆者の被曝線量の推定 に、ABS93D (AtomicBombSurvivor 1993Dose)を用いている1415)」ここではABS93D線量推定方式の概要 と、長崎

‑ 196

(11)

15 原爆被爆者 の健康管理 と大学

市在住の被爆者集団に適用 し被曝線量の推定 を行 なった結果について述べ る (2)ABS93D線量推定方式

ABS93Dは、放射線影響研究所 で開発 されたDs86(DosimetrySystem 1986) 線量推定方式16'をもとに、広島大学原爆放射能医学研究所で考案 された線量推 定方式である Ds86FinalReportに掲載 されている表の値か ら求めたパ ラメ ー タを用いて、 1)爆心か らの被爆距離 による自由空気 カーマ、2)家屋等の 遮蔽物 による透過係数を掛 けた遮蔽 カーマ、3)臓器 に到達す るまでの人体 に

よる吸収の透過係数 を掛 けた臓器 カーマ、を計算す る (3)対象集団

当施設の被爆者デー タベース17'に登録 されている長崎被爆者集団の うち、被 爆距離が明 らかで、被爆時の遮蔽状況が野外 の 「無遮蔽」、屋外の 「木造建築 の陰」及 び 「樹 木の陰」、屋 内の 「木造建築」の11,910人 (4,550人、女7,360 人) について、ABS93Dによる線量推定 を行 なった。

(4)被曝線量推定の結果

対象集団の被爆距離の分布 を表4に示す。 2km以内の近距離被爆者 は全体 36.8%であった。対象集 団の被曝線量 (遮蔽 カーマ) の分布 を図5に示す。

4 被爆距離の分布

被爆距離 (km) 人数 %

1.0 1.11.5 1.6‑2.0 2.1‑2.5 2.6‑3.0

3.1

167 1.4 1,564 13.1 2,646 22.2 2,789 23.4 4,409 37.0 335 2.8

合計 11,910 100.0

6Gy以上の放射線被曝 を受 ければ、100%致死 となると考 え られるので、生存 者 は6Gy以上の放射線被曝 を受けているとは考え られない。従 って、被曝線量 の推定値が6Gyを越 える人については、全て6Gyとした。被曝線量が0.005Gy 満 と推定 された被爆者は全体の16.1%、0.005‑1Gyの範囲 と推定 された被爆者

‑197‑

(12)

3500 3000 2500

; ?ooo 1500 1000 500 0

〜0.005‑0.01‑0.05 ‑0.1 ‑0.5 ‑1.0 ‑2.0 ‑3.0 ‑6.OGy 被曝線量

5 ABS93Dによる線量の分布

75.8%、lGy以上 と推定 された被爆者は8.1%であった。

(5)被曝線量の利用

長崎大学医学部ではABS93Dによる推定被曝線量 を用いて被爆者の健康 に関 する研究を行なっている18)。被曝線量 と死亡の関連を解析 した結果、がんでは

1Gy以上の被曝群の死亡 リスクが高からた。

参考文献

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2)三根真理子、中村剛 :定期健康診断の計量的評価のための研究、 日本公 衛誌、35、327、1986.

3)三根真理子、中村剛 :定期健康診査の延命効果 と未受診者のプロフィー ル、 日健診誌、13、150、1985.

4)原爆被爆者健康診断調査研究会 :原爆被爆者健康診断に関す る調査第1 、1985.

5)原爆被爆者健康診断調査研究会 :原爆被爆者健康診断に関する調査第2

‑198‑

(13)

15 原爆被爆者の健康管理 と大学

、1986.

6)Ader,R.,Cohen,N.;Behaviorallyconditionedimmunosuppressionsand murinesystemiclupuserythematosus.ScienceVo1.215:1534,1982. 7)Ghnta,V.K.,Hiramoto,R.N.,etal.;Neuralandenvironmentalinfluences

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9)plataSalaman,C.R.,Oomura,Y.,etal.;Tumornecrosisfactorand interleukin‑1beta:suppresionoffoodintakebydirectactioninthe centralnervoussystem.BrainResearchVol.454:361,1988.

10)Schleifer,S..,Keller,S.E.,etal.;Lymphocytefunctioninmajor depressivedisorder.Arch.GeneralPsychiatryVo1.41:484,1984.

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参照

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