若手技術者育成型シーケンス制御教育システムの開発
西川弘太郎
津山工業高等専門学校 教育研究支援センター
1.はじめに
現在,企業では“団塊世代”と呼ばれる人々が一斉に定年退職される時 期を迎え,特に産業界では若手技術者の技術力向上のための教育が急務と されている.世の中の産業製品の約 70%はシーケンス制御が使われてお り,企業では設計職,生産職問わず技術者はシーケンス制御技術の習得が 必要である.現在最新のシーケンス制御の形態は,工数削減や複雑で高度 な制御に対応するため,有接点リレーやタイマー等を用いたリレーシーケ ンス制御からコンピュータでシーケンスプログラムを作成し,制御を実行 するプログラマブルコントローラ(PLC;内蔵のコンピュータで演算処理 をしながら要求する動きを実現する)を用いた制御へ変わりつつある.そ の様な中で最新のシーケンス制御技術を習得する上での教育システムと しては,将来若手技術者となる学生が対象の実務を模擬した教育システム はないのが現状である.
本校では,国立工業高等専門学校機構に対して, (株)オムロンから寄 付金事業により校内各 4 学科にシーケンス制御実験装置が寄贈されてい る.有効に寄付寄贈されたシーケンス制御装置を実験に対応させるため,
毎年,オムロン制御技術セミナー研修がオムロン主催で開催され,各高専
より教職員が受講している.本稿では,筆者が平成 21 年度オムロン制御技術セミナー研修を受講し,得られ た技術・知識を基に,最新のシーケンス制御技術を使った若手技術者育成を観点としたシーケンス制御教育 システムの構築・現状実験装置の改良について報告する.オムロンから寄贈された PLC およびコンベア機材 実験装置を図 1 ,2(写真提供:オムロン)に示す.
2.実験装置の現状
筆者は電子制御工学科実験Ⅱにおいて,プログラマブルコントローラと位置決め制御のテーマを担当して いる.その実験装置をそれぞれ図 3,4 に示す.現状は,複雑なシーケンス制御に不向きなことから,現在で はあまり使用されていないステッププログラム入力方式の PLC にてプログラムを作成し比較的簡単なシーケ ンス制御実験を行っている.前者の制御対象は LED である.トグルスイッチの入力信号に対し,LED の点灯 で動作を確認する.一方,後者の制御対象は,位置決め制御実験装置に付属の各種センサ(フォトインタラ プタ,リードスイッチ,ホール素子)の入力信号に対し,モータの回転運動によってボールねじ上を直線運 動する移動ベンチの位置制御を行う.しかし,企業ではコンピュータと専用ソフトを使用し,シーケンスプ ログラムはリレー回路を記号化したラダー図方式で作成されるのが一般的である.制御対象に関しても現状 の実験のようにトグルスイッチの入力信号で LED のみをシーケンス制御する場合は少なく,実際には押しボ タンスイッチと赤,緑,黄色といったランプ類が制御盤に設置され,各アクチュエータが複雑に制御される.
よって,現状の実験装置のままでは実務と大きく異なるために実践的なシーケンス制御技術の習得が難しい 図 1. PLC
図 2. コンベア機材実験装置
3.実験装置の改良
この実験で,現状の実験装置を活かしつつ,現在主流の PLC を 用いた最新システムへ変更する.現状の実験で使用しているステ ッププログラム入力方式の PLC からラダー図方式の PLC(図 1:オ ムロン CP1L)へ変更する.これにより,企業のようにコンピュー タを使用しシーケンスプログラムがラダー図方式で設計可能にな る.また,プログラムの確認や修正ならびにシミュレーションも コンピュータ上で可能であり,ステッププログラム入力方式 では困難だった比較的複雑なシーケンス制御へも対応出来る
ようになる.そこで,それに応じた演習も取り入れ,学生には複雑なシーケンス制御に慣れてもらう.
制御対象に関しては,LED+トグルスイッチに代わるものとして,オムロンのコンベア機材実験装置(図 2)
を使用する.本体には押しボタンスイッチとランプが付属しているので,それらを制御する(図 5) .また,
コンベア装置本体にはその名の通り,ベルトコンベアが装備されているので,付属の各種センサ類やランプ 類と組み合わせて複雑なシーケンス制御を行う.一方,位置決め制御に関しては,実務でも行う制御である ため,現状の位置決め制御実験装置を使用し,同様にシーケンスプログラムをラダー図方式にて作成しシー ケンス制御(図 6)を行い,ステッププログラム入力方式と同様の運転モード(図 7)を実現し,ラダー図方 式に慣れてもらう.このように,制御部にラダー図方式の PLC とコンピュータを使用し,押しボタンスイッ チ,ランプ,そして各種センサ類を制御対象として,実務に近いシーケンス制御を実験で行うことで学生の 理解もより深まり,社会で活躍する即戦力を養うことができるものと考えられる.
4.おわりに
本稿では若手技術者育成を観点に現状のシーケンス制御実験を改良し,シーケンス制御教育システムの開 発を行った.今後の展開は,より良い教育システムとするために,制御対象の拡充を図る.
図 3. PLC と LED+トグルスイッチ(現状) 図 4. PLC と位置決め制御実験装置(現状)
図 5. コンベア機材のランプ類(改良)
図 6. PLC+コンピュータと位置決め制御実験装置(改良) 図 7. 移動ベンチの運転モード
若手技術者育成型シーケンス制御教育システムの開発
若手技術者育成型 若手技術者育成型 シーケンス制御教育システムの開発 シーケンス制御教育システムの開発
津山工業高等専門学校 津山工業高等専門学校 教育研究支援センター
西川 弘太郎
発表内容
1.
はじめに
2.
実験装置の現状
3.実験装置の改良
4.
おわりに
1.はじめに
現在,企業では“団塊世代”と呼ば れる人々が一斉に定年退職される 時期を迎えている.
若手技術者の技術力向上のための教育が急務
設計職,生産職問わず技術者はシーケンス制御技術の習得が必要 産業製品の約70%はシーケンス制御
・ シーケンス制御実験装置の寄贈 (本校では校内各4学科分)
・ オムロン制御技術セミナー研修の開催
1.はじめに
(株)オムロン寄付金事業
(株)オムロン寄付金事業
国立高等専門学校機構 国立高等専門学校機構 技術者育成・社会貢献 技術者育成・社会貢献
制御技術 制御ノウハウ
図2.研修の様子 図1.実験装置
1.はじめに
寄贈された制御実験装置 寄贈された制御実験装置
図3.実験装置一式
特にプログラマブルコントローラに着目 特にプログラマブルコントローラに着目
• 複雑で高度な制御に対応
• 工数削減
• シーケンスはラダープログラム
• 省スペース
図4.PLC
★将来若手技術者となる学生が対象★
実務を模擬したシーケンス制御教育システムの開発
(平成21年度校長裁量経費)
2.実験装置の現状
電子制御工学科実験Ⅱ(プログラマブルシーケンサ)
図5.PLC(現状)とLED
ステッププログラム入力方式
• 複雑で高度な制御に不向き
• コントローラとプログラマで構成
• 高価(20万円/台)
• 現在ではあまり使用されない
LEDの点灯制御
2.実験装置の現状
電子制御工学科実験Ⅱ(位置決め制御)
図6.PLC(現状)と位置決め制御実験装置
移動ベンチの位置決め制御
2.実験装置の現状
実務と大きく異なるため,実践的なシーケンス制御技 術の習得が困難である.
現状の実験装置では‥
2.実験装置の改良 2.実験装置の改良
プログラマブルシーケンサ(PLC オムロンCP1L)
• 複雑で高度なシーケンス制御実験が可能
(シーケンス制御技術の向上)
• プログラムはラダー方式にて構築 (現在主流のラダー方式の習得)
• 制御用コンピュータでのシミュレーション
図7.PLC(現状)とPLC(改良)
図8. 制御用コンピュータ
2.実験装置の改良
プログラマブルシーケンサ(制御対象 コンベア機材)
• シーケンス制御技術の基本を理解
(広く用いられる押しボタンスイッチ,表示灯,各種センサを制御)
• 実践的なシーケンス制御実験により応用力向上 (制御対象の充実化)
図9.LED+トグルスイッチ(現状)
2.実験装置の改良
• 基本から応用まで実務的な実験内容 (並列/直列/新入力優先回路,エスカレータ,
駐車場表示板,工場ライン,信号機など)
•電気回路の理解
(PLCから制御対象への配線)
図9-1.PLC+コンベア機材実験装置
(改良)
若手技術者育成型シーケンス制御教育システムの開発
2.実験装置の改良
• 視覚的にシーケンス制御を理解 (導通ラインは緑色→モニターモードで確認)
•時間短縮
(プログラムの変更/修正が容易)
図9-2. 制御用コンピュータ画面(改良)
[OMRON CX-Programmer]
位置決め制御
2.実験装置の改良
• 実践的なシーケンス制御実験により応用力向上 (様々な制御対象に慣れる)
• インターフェース回路への結線
図10.PLC(現状)と実験装置 図11.PLC(改良)と実験装置
位置決め制御
2.実験装置の改良
図13. 移動ベンチの運転モード 図12. 移動ベンチおよびセンサ
位置決め制御シーケンスプログラム(ステッププログラム入力方式)
2.実験装置の改良
図14. シーケンスプログラム(現状)
• 複雑で理解しづらい
• シーケンスの基本技術の習得が困難
• プログラムの入力/修正に時間を要す
2.実験装置の改良
位置決め制御シーケンスプログラム(ラダー方式)
図15. シーケンスプログラム(改良)
• シンプルなシーケンスプログラムで理解しやすい
(ステッププログラム入力方式と比較)
• 自己保持,インターロックが理解しやすい (他の実験との関連性)
2.実験装置の改良
図16. 位置決め制御の実現(ラダー方式)
3.おわりに
若手技術者育成を観点に教育システムを開発
社会で活躍する即戦力を養成
ご静聴いただき,ありがとうございました.
今後について
・ ・ H22H22年度電子制御工学科実験年度電子制御工学科実験ⅡⅡへ適用へ適用
・ 制御対象の拡充化
・ 制御対象の拡充化
・ 個人の技術力アップ(技術セミナー等への参加)
・ 個人の技術力アップ(技術セミナー等への参加)
コンベア機材実験装置 PLC+コンベア機材実験装置
工場のライン①
スタートスイッチ(0.01)を押すとコンベア(100.03)が起動する。
コンベア起動中にビンがセンサ(0.00)を通過すると、ビンの数をカウントする。
5個に達するとコンベアは停止し、表示灯(100.01)が5秒間点灯後自動的に消灯する。
コンベアと表示灯を途中で止める場合は停止スイッチ(0.02)で停止させる。