l ヨ 大学教育の質保証 1 0 竃
文系学部に設置された情報専門学科 における情報システム分野の人材育成
岸野 清孝 新潟国際情報大学
文系学部に設置された情報専門学科の 位置づけ
● 本学の理念と目的
新潟国際情報大学の基本理念は
′「日本文化 と異 文化との違いを理解 し,国や地域を越えて情報文化 に貢献できる人材を育成する.情報社会を先導 し.
国 ・地域 ・人間の文化を尊重 しつつ.国や地域を越 えて人類の福祉向上に貢献する」である.本字は
1994年
4月に関学 し
, 1学部 ( 情報文化学部
).2学科 ( 情報文化学科と情報システム学科)が設置さ れた.本学の目的は.次の 2つである
1 ) 新潟の地が中E i ) .朝鮮半島′極東ロシアに近接 し.
米国やカナダと関係が深いことから.我が国とこ れらの国々との社会 ・文化交流の中で活躍できる 人物を育成する.
2)
グローバルに構築され 利用されつつある,進歩 の目覚 しい情報システムの知識と技術を習得 し.こ の能力を社会のために役立たせ得る人物を育成する.
本学は在学生が
1.200‑ 1.300人の小規模校であ り.毎年
300‑ 320人の卒業生を輩出するが.地 元新潟県か らの入学生 が
95%を超 え.卒業生の
70%は新潟県の企業に就職 しているきわめて地域 に根ざした大学である.
■ 情報システム学科の目的と教育カリキュラム 情報システム学科の目的は
.「 情報システムの企 画 ・設計 ・運用に携わ り′あるいは情報システムを 活用することによって.あるべき情報社会の建設に 貢献できる人材を育成すること」である これに基
694JT+確処理VoI53No7Jury20.2
づき.文系学部に設置された情報専門学科というこ とから.情報システム学科の育成する人材像は,大 きく次の
2つに分けて設定 している.
1
) 情報技術が企業や.社会に及ぼす影響を考察し,広 い視野から情報システム企画.設計.開発.運用 できる情報システム技術者となる人材を育成する.
2)
情報技術を理解 し.利用者の視点から有効な情 報システムを考え.問題解決に利活用できる人材 を育成する
本学の授業科目は基礎科目群.共通科目群.専門 科目群に分けられている.基礎科目は大学の理念に 関連 したもので
.「英語」.「 保健体育
」.「 経済学
」.「政治学
」.「 歴史学
」.「 科学と技術
」,「 地球環境論」な どの人文科学.社会科学関連の一般教養を含む基本 的な科目である 共通科目は情報文化学部の目標に 関連 したもので,国際関連科目と 「 情報システム」 ,
「 コンピュータシステム」などの情報関連科目である 専門科目の編成に関 しては,図 ‑ 1 に示す情報シ ステム字の体系 ‑ )を基盤として一情報技術の進展 と企業などの組織体のさまざまな変化を関連付けて 学習できるように配置 している すなわち.情報シ ステムの概念的枠組みを明確に捉え一その社会的側 面の考察を深めて.情報システムの企画,開発およ び運用 ・評価に関する実践的な知識 ・技術を修得す る.ただし.学部教育の開始時点において.学生が この体系を自分で理解 して学習を進めるのは困難で あるので.専門科 目の講義科 目を下記の
5つの分 野に区分 して提示 している.
A 分野 ( 情報とシステム)'
r情報システム設計
」.「 情
報システム開発」などの
10科目.
■ 文系学部 に設置 された情報専門学科 における
情報システム分野の人材育成
社会の しくみ
人間の
if確システム
付確システム
の放念 の社会的碩gL
経営の しく 人間と
情報機械
I ?細
\
の運営 ..人間組鮒
什 篭窟
ム 人間の文化とft相数理と論理 管理科学
Tt稚 処 理の 技 術図 II 情報システム学の体系 11
B ヵ野 ( 人間と社会): 「 人間情報工学
」.「認知科学」.
「 地域情報システム」などの
10科目′
⊂分野 ( 経営と組織)
●「 経営と情報
」.「ビジネスモデル
」.「生産情報システム」などの
10科目.
D
ヵ野 ( コンピュータと通信). 「 アルゴリズム」.「 テ レコミュニケーション」などの
10科目,
E 分野 ( 論理と数理):「 システム数学
」.「 モデリン グ数学
」.「情報論理」などの
10科目
これらの分野の科目を選択 してバランスよく学ぶ ことにより.情報システムにかかわる基礎知識の獲 得を指導する方針を取 り.すべての科 目を選択科 目にしている点が特徴である 3年次からは A‑ D の分野のいずれかを選択 し.より深 く勉強するとと もに卒業研究と卒業論文を作成する.また.専門科 目の演習科目として.学習に不可欠な文章作成能力 やプレゼンテーション能力を身に付ける「 基礎演習」
と基本的な専門技術を学ぶ 「 情報システム演習」を 必修科E L Wor d, E x ⊂ eI , SQL , VB, A⊂ ( es s ′ C言語など を学ぶ 「 情報処理演習
F,Ul,U2,⊂
l,(
2,W」を選択 必修科目として配置 している
■ 卒業生の就職状況
情報システム学科の卒業生は毎年約 1 60‑ 1 90 人であるが.文系宇部における情報専門学科である
ことから,情報システムをつ くる
S[・プログラマ としての情報 ・通信関連企業への就職者が約
30%.情報システムをつかう人材としての製造り」 \ 亮・ サー ビス ・その他企業への就職者が約
70%である.特色ある取り組みと効果
t J ABEE 認定取得の動機
文系学部に設置された情報専門学科であることか ら,育成する人材像が情報システム技術者から情報 システムを活用することのできる人材まで幅広いた め.すべての講義専門科目を選択科目にして学生に 自由に履修させていた そのため,情報システム技 術者を目指す学生が必要な科 目を履修 していない ケースが散見され.確実な指導が課題となっていた.
また.学習 ・教育到達目標と達成度評価基準の設 定や教育の計画
(P) .実施
(D) ′評価 (
⊂)
一改善 (A)は大学独自の視点から行っていた.そのため.国内 外の標準に対応 した教育品質の確保ができていない ことが課題であった.
これらの課題への対応が認定取得の動機である.
■ 文系学部であるための制約における取り組み 文系学部のため学科の全員が情報 ・通信関連企 業への就職を目指 しているわけではない ことが.
」 ABEE 認定取得における制約となった
当初.学科単位で 」 ABEE 認定プログラムを設定 し.卒業と同時に修了証を授与するために.J ABEE 修了要件と卒業要件を一致させることを考えた.し
かし.」 ABE E 認定プログラムの修了要件では必修科 目が
18科目に対 して.学科の卒業要件では必修科 目が 1 2 科目となった また.」 ABE E 認定プログラ ムの修了要件では選択必修科 目が 1 0 系列の 1 0 科 目に対 して.学科の卒業要件では選択科 目となり一 両者を一致させることができなかった.その理由は.
学科のカリキュラム構成が,情報システムを 「 つく る人材」と 「 つかう人材」を育成するという幅を持 たせた編成方針のために,学科の必修科目を最小限 にし.選択科目を幅広く設定 していたためである.
このことから.J ABE E 認定プログラムを修了しな くても.卒業要件を満たせば卒業ができるようにす るために.次の
2つのプログラムを設定 した 1 日ABEE 認定プログラムを.主として情報システ
ムの開発技術者を育成する 「 情報システム技術プ ログラム」とした
什報処理V
o 1 5 3 No7
」u l y2 0 1 2I6 9 5
2)
それ以外のプログラムを.主として情報システ ムを理解 した利 ・活用者を育成する 「 情報システ ム一般プログラム」とした.
■ JABEE
修了者の質を保証 するための工夫
「 情報システム技術プログラム」修了要件の必修 科目や選択必修科目は 「 情報システム一般プログラ ム」の学生も受講する.そこで′本学卒業生を情報 システム技術者として採用している企業から.卒業 生の活躍状況とその評価をヒヤリングした内容から.
主要科目で平均的に B評価 ( A .B.⊂の 3段階評価 で単位認定)を受けている学生は.学習 ・教育到達 目標を十分に達成しており.情報産業界でシステム 技術者として十分活躍できる水準にあると経験的に 判断した.したがって.学習 ・教育到達目標の達成 度評価基準を B評価 と厳 しく設定 し.修了生の質 を内外に保証する方針とした.
● 企業や行政での実務経験を有する教員の配置 情報システム学科では. 情報システムの開発や利・
活用状況などの教育において実際に即した教育を行 うため.企業や行政での実務経顔を有する教員を計 画的に採用 している これにより.実務経験を有す る教員を専任教員
23人中
17人配置できている.
■ 情報 システムの運用 を実地 で学ぶ学外実習
「 学外実習」は.実務経験のない学生に現実の情 報システムを知る機会を与えるため一商工会議所等 を通 じ企業.団体からあらかじめ情報システムに関 連 した研修内容の内諾を得て
.3年次の夏休みに実 施している.特に情報システムの運用を実地で学ぶ ことにより′その後のより専門的な学習に繋げるた めの大きな役割を担っている.就業体験を目的とす る 「 インターンシップ」 とは異な り
′「 学外実習」
では情報システムにかかわる業務の‑端を体験する ことによって.情報システムの役割を具体的に把握 し.大学での授業の理解を一層深めることができる という成果をあげている
I lデザイン古巨力育成 ・クループ学習の取 り組み デザイン能九 チームで仕事をする能九 計画的
696
It 一刺
さ甥 Vo153No7July2012 12
年
3年
4年
前期 後那 節期 後期 前期 後期(能力e)デザイン 国 園
什 確
ムPI発シろ7(事をする能力(ih))チームで仕制約の下 TIや
ム ;
シろ7 辛■研究1 柄卒辛究2 卒■;3 卒■!事をする能力
図 12 T‑サイン能力育成 ・グルーブ学習の取 り組み
に仕事をする能九 自主的 ・継続的に仕事をする能 力を育成するために.図 ‑ 2 に示すように8科目を組 み合わせて
2‑ 3年次に配当した.前半の
4科目で 習得した知識と能力を 「 卒業研究
」「 卒業論文」で集 大成するようにカリキュラム設計において工夫 した.
デザイン能力では 「ソフ トウェアエンジニアリン グ」でソフ トウェア開発の手法.工程.生産性.品 質の知識を
.「 情報システム設計」でシステム分析 やモデル化の知識を獲得する.「 情報システム開発」
で
Rド
P( 提案要求者)を課題と して提示 し
.PBL (ProblemBasedLearnlng)にてハー ド・ ソフ ト構成.
見積りなどの提案暮の作成を指導 している.
チームで仕事をする能力では「 情報システム持論」
で情報関連のテーマを提示 し.プロジェクト活動に より問題点分析.好決策の提案を指導 している.
■ 卒業研究におけるデザイン能力育成の取り組み
」ABEE
取得を目指す学生には.卒業研究では企 画.設計′製作による具体的な成果物の作成を指導 している.その成果の 1つとして一新潟のディジタ ルコンテンツ制作者の人材育成.地域の活性化.也 域文化への貢献を目的として開催されている 「 にい がたデジコングランプリ
2011」で本学学生が入選 することができた.この中のスマー トフォンアプ
リ部門において入選 したのは.本学情報システム学科
4年の星 希美が作成 した「 にいがた日帰り温泉ナビ
」アプリケーションである ( 図 一
3参照).
』 文 系 学 部 に設 置 さ れ た情 報 専 門 学 科 に お け る
情 報 シ ス テ ム分 野 の 人 材 育 成
● + ● +
図
一3 rにいがた日汁 リIX泉ナビ
Jの画面
また.卒業研究をさらに発展させた研究成果の発 表を情報処理学会第
74回全国大会学生セッシ ョン において行 うという成果をあげている
2).● 学生の自己学習時間を確保するための取り組み
「 卒業論文」は授業時間以外の自己学習時間に執 筆させることとし.1 20 時間以上を卒業論文執筆日 誌に記録させ一論文と一緒に提出させている.
また.主要科目においては レポー ト課題と自己学 習成果を加味 した成耕評価の制度化.
P⊂教室と図 書館の夜間開館などに組織的に取 り組んでいる.
1 クロー J Uレ化 に対応 した短期海外 留学制 度 グローバル化に対応できる技術者を育成するため.
カナダのアルバータ大学において
2年次の夏に
5週 間にわたる 「 短期海外留学」を実施している.この留 学は単なる語学学習のためだけの留学ではなく,請 学と情報システムとの関連性を強く意識させるために.
現地での英語によるプログラミング実習とカナダ国内 の先進的な
IT企業訪問を併せて実施しており.グロI Jで ル化に対応できる技術者への契機となっている.
T J ABEE 認 定取得 の効果 と課題
J ABE E 認定取得により.情報システム技術者を目 指す学生にとって′学習 ・教育到達目標と達成度評 価基準が明確となり,必要十分な科目の履修と学力 の向上を図ることができた.また
.PDCAによる国 内外における標準に対応 した教育により.教育晶質
が保証できるようになった.
J ABEE 認定取得における課題は.情報 ・通信関連 企業において認知度が低 く,J ABEE 認定プログラム 修了者が就職において必ず しも評価されるとは言え ないことである 修了者の認知度の向上を J ABEE と大学が連携 して進めていく必要がある.
現 状 の 課 題 と今 後 の 取 り組 み 方 針
■ J ABEE 認 定 プログラム修了人数 の低 迷 認定取得後
5年間が経過 したが.卒業人数に対す る 」 ABEE 登録人数の割合は 1 5‑ 25 %′J ABEE 修 了人数の割合は 8‑ 1 5 % と低迷 している.この原 因は.質を保証するために達成度評価基準を B評 価 と設定 したために.結果として 」 ABEE 必修科 目 の
1科目でも ⊂評価となると.3 年開始時の登録を 行わないためであると考えられる.
■ 修了人数の確保に向けた今後の取 り組み方針 J ABE 【認定プログラム修了者の質を低下させるこ となく修了人数の確保を図るため一以下の取り組み を検討 している.
1 )コース制の導入
コース制では
.「 情報システム技術 プログラム
」の J ABEE 修了要件は情報システム開発者側の視点 に基づ く必須科目および選択必須科目を設定 し.辛 業要件 と一致させることによ り.卒業 と J AB [E認 定プログラム修了を一致させることを検討 している
2)達成度評価基準の見直 し
達成度評価基準を B評価 としたことが修了人数 の低迷の原因と考えられるため.達成度評価基準を B 評価から⊂評価へ変更 し一同時に単位取得の難易 度を上げることを検討 している.
参考文
献
l ) 浦 昭=.神沼叫子.内木哲也 '基礎f f確システム韻.共立 出版
(1999)
2 )星 希美 オ フライ ン型友達探索 アプ リケーシ ョンの開発.
f 一報処理学会第
74E] 全国大会学生セ ッシ ョン
(2012)
(2012年3月31日受付)
#ZlfI事 Ik.sh.no@nursacJP