愛知淑徳短期大学研究紀要 第34号 1995 159
家族のコミュニケーション環境要因と ファミリー・マップの関係について
永 田 忠 夫
Correlational Analysis of Family Communication arid Family−Map
Tadao Nagata
1.問 題
Olson, D. H.ら(1979,1980)が家族研究に用いた家族システム論的考えに基づく円環モデ ル(Circumplex Model)は,適応性,凝集性の2次元と両者の望ましい状態を保ちシステムと しての安全性を促進する働きをもつコミュニケーション次元で構築されている。適応性とは「状 況的・発達的なストレスに対応して勢力構造・役割関係・人間関係のルールを変化させること のできる家族システムの能力」,凝集性とは「家族成員がお互いにもっている情緒的な絆と成 員である個人が家族システムで経験する自律性の程度」と定義される。このオコルソンの円環 モデルに基づいて測定された家族システムの状況を判定・類型化し図示したものをファミ リー・マップという。
本研究は,家族のコミュニケーション環境と適応性・凝集性の2次元で作成されるファミ リー・マップの状況がどのように相互関連しているかを明らかにすることを目的としている。
家族システム状態を把握するための適応性次元,凝集性次元あるいはこの2次元から類型化さ れるファミリー・マップ状態と家族のコミュニケーション環境は一方が原因で他方が結果であ るととらえるのではなく循環的にかかわりをもっている循環的関係としてとらえることが必要 である。そこで,一方向的な因果関係的ではなく,また単なる相関関係の強さをみるのではな く,独立変数を家族システム状況,従属変数を家族のコミュニケーション環境要因とした場合 と,独立変数を家族のコミュニケーション環境要因,従属変数を家族システム状況とした場合 の両方から検討した。
家族システムの状況を測定する方法として,カーンズJ.(1981)が,オルソンの円環モデル に基づき家族システムの判定・図示できるファミリー・マップを開発したものを使用した。適 応性尺度の下位項目は,①リーダーシップ;家族の目標設定と方向づけがどのように決定され るか(専制的・権威主義的か,民主的・リーダー無しか),②規律(しつけ);親が子どもに対
一159一
してどのような許容範囲を設定するか(厳しいか,甘いか),③話し合い;家族の問題を解決 したり計画を立てるための話し合いや相談をする形式はどうか(話し合いが制限されるか,皆 の意見が尊重されるか),④まとまり;家族が重大な問題に直面したとき,いかに家族がまと
まりを整え組織的に対処していくか(まとまりがありすぎるか,まとまりがないか),⑤価値 観;家庭がもっている価値体系が,家族の問題が生じている状況や世の中の変化にあわせて再 構築していけるか(家族におけるさまざまなきまりが不変であるか,その時々によってよく変 わるか)であり,凝集性尺度の下位項目は,⑥親密性;家族成員間に感情的交流があり,相互 に関心を示し合い,情緒的な絆が結ばれているか(親密であるか,親密でないか),⑦相互援 助;家族成員がお互いに援助したり援助されたりする交流があるか(全くないか,・多すぎるか),
⑧決断(意志決定);家族成員の個人的問題や家族の意志決定をする際に,家族全員で相談し 合意の上で決められるのか,あるいは成員個人の決断で決定されるのか(決断は個人でするの か,家族全員でするのか),⑨共有性;時間・空間・興味の対象・活動・友などが家族が共有 できることがあるのか(全く共有するものがないのか,全てのことを共有しようとするのか),
⑩統一性;家族の一員であることの誇りや帰属意識によって保たれる統一性があるか(全くな いのか,統一性があるのか)である。
このファミリー・マップについては,女子短大生のデータによる2次元の尺度構成の検討を 永田(1991)が試みている。それによれば,凝集性尺度は,尺度構成として妥当性信頼性の高 いものであったが,適応性尺度は,「④まとまり」が尺度構成上問題があり,その原因が被調 査者に情緒的な関係でまとまっていることと解釈されてしまった(凝集性次元の因子負荷量が 高かった)ためと推測された。したがって今回は,本来の主旨が理解されるように「④組織的 に行動するための役割分担(家族としての機能を円滑に運用させる役割分担が明確で固定的か,
不明確で流動的か)」と変更して調査した。
家族のコミュニケーション環境の測定は,オルソンらが開発した臨床評定尺度(Clinical Rating Sca[e)をさらに発展させて作成したCAP(Circumplex Assessment Package)[家族シ
ステム査定用のパッケージの3内容:FACES III(Family Adaptability and Cohesion
Evaluation), Family Communication, Family Satisfaction]のうちFamily Communicationの尺 度項目を参考にし家族のコミュニケーション環境として新たな尺度を構成し作成した。
家族内でコミュニケーション行動が交わされる場としての家族のコミュニケーション環境 は,家族コミュニケーション環境の醸し出した結果としての雰囲気や家族内の相互交流の中で つくられてきたコミュニケーションに関するルールといったより具体的な要因(家族のコミュ ニケーション風土)あるいは家族を構成している家族成員個々人のコミュニケーション技能に よって構成されると考えられる。
家族のコミュニケーション風土は,被調査者(家族成員の1人)が家族のコミュニケーショ ンに関するルールや雰囲気として認知している心理的な風土で,現実に家族という場でのコ ミュニケーション行動をコントロールしている要因として位置づけられる。
一160一
家族のコミュニケーション環境要因とファミリー・マフブの関係について 161
家族コミュニケーション風土を測定する項目は,①話題の連続と一貫性(家族で会話してい るとき話題があちらこちらに飛びまとまらないのか,皆が話題に沿った会話が続けることがで きるのか),②他者の尊重・他者への関心(各成員が他者の感情やメッセージに対して配慮が 欠け,相手を軽視した態度をとるのか,お互いにいつも他者の感情やメッセージに関心を示し ているか),③メッセージの明瞭性(成員の発言内容はあいまいなことが多いのか,非常に明 瞭であるのか),④表現の自由度(家族内で自分についてや自分の気持ちを素直に表現できな いのか,率直に話し合うことができるのか)である。
家族成員個々人のコミュニケーシ・ン技能に関しては,(1)聞き手としての技能(①共感的理 解ができる程度,②傾聴的態度をとることができる程度)と(2)話し手としての技能(①自己表 現量;自己についての話や自己主張をする量,②他人の話をしない量;他者についての話題を
よくするのか,うわさ話や他人のプライバシーについてほとんど話題にしないか,③話の支配 をしない量;でしゃばったり,他者の話の腰を折るような発言をしたり,他者が話していると その話をすぐに終わらせようとする数量の多少)が考えられた。なお,コミュニケーション技 能について測定した家族成員は,青年(自分),父親,母親に限定した。
予想される結果として,ファミリー・マップの2次元(適応性,凝集性)およびそれによっ て類型化された領域のうち,均衡的で中庸的な領域にある家族は,家族のコミュニケーション 環境が望ましい状態にあるであろうし,また家族のコミュニケーション環境の望ましさが家族 システム状況の望ましさに影響を与えていることが推測される。
H.方 法
1.調査対象者及びその家族の特徴(両親健在者のみ)
調査対象者:名古屋市内M大学,名古屋市内A短期大学の学生441名
(1)調査対象者の性別および年齢:男子251名(平均年齢19.25歳)
女子190名(平均年齢18.27歳)
(2)家族の人数:平均4.64人(範囲;3〜9)
(3)父親の年齢:平均49.34歳(範囲;41〜68)
(4)母親の年齢:平均46.04歳(範囲;38〜59)
2.調査期間:1993年5月〜1994年7月 3.質問紙の構成(資料参照)
(1) フェースシート
(2)ファミリー・マップ 1)適応性尺度
(下位項目:①リーダーシップ,②規律(しつけ),③個人の意見の尊重,④役割分担,
⑤価値観)
一161一
2)凝集性尺度
(下位項目:①親密性,②相互援助,③家族の意志決定,④共有性,⑤われわれ意識)
(3)家族のコミュニケーション環境 1)家族のコミュニケーション風土
(項目:①話題の連続性・一貫性,②他者の尊重・他者への関心,③メッセージの明瞭性,
④表現の自由度)
2)家族成員(自分・父親・母親)のコミュニケーション技能 a.聞き手としての技能(項目:①共感的理解,②傾聴的態度)
b.話し手としての技能(項目:①自己表現量,②他人の話をしない量,③話を支配しな い量)
4.分析方法
尺度構成の検討には,主成分分折,信頼性係数を用いた。
家族の適応性と家族のコミュニケーション環境との関連性を検討するために,第1にファミ リー・マップの尺度を3類型化し,家族コミュニケーション環境要因(コミュニケーション風 土・家族成員個々人のコミュニケーション技能)の量的データの平均値が3類型間で有意な差 がみられるかを一元配置分散分析で検討した。第2にファミリー・マップの3類型を従属変数
とし,家族コミュニケーション環境要因の量的データを独立変数とした判別分析をおこなった。
その後,ファミリー・マップの2次元構造を5類型化し,同じように分散分析と判別分析を 行った。
統計的処理は,アプリケーションソフトHALBAU, Ver3。3を使用した。
m.結果及び考察
1.ファミリー・マップ尺度の検討
ファミリー・マップにおける適応性尺度および凝集性尺度の妥当性に関する検討をおこなう ために,各尺度の下位項目評定点(6段階評定得点)をもとに平均値の算出,主成分分析およ び尺度得点(合計得点)と各項目間の単相関係数から尺度項目としての内部的一致性を調べ,
採用項目を用いてのCronbachの信頼性係数を算出した。
(1)適応性尺度の基礎統計資料とその検討
適応性尺度の内部整合性を検討するために,5項目[リーダーシップの強一弱,規律(しつ け)の厳しい一甘い,話し合いにおける個人の意見の尊重の制限のある一なし,組織的に行動 するための役割分担の明確一不明確,価値観(約束ごと)の不変性一可変性]の主成分分析を 行った(表1)。第3主成分の固有値は.778であった。第1主成分の固有値と第2・3主成分 の固有値の間に段差がみられ,単相関係数の最低値も価値観の.53であり,しかも5項目から 算出されたCronbachαの信頼性係数が.56であったので,適応性尺度の下位項目として5項
一162一
家族のコミュニケーション環境要因とファミリー・マップの関係について 163 目で構成することが妥当であると判断した。しかし,これまでの日本の適応性尺度の検討結果 と同じようにあまり内部整合性の高い尺度とすることはできなかった。
表1 適応性尺度の検討資料
尺度項目 平均値(S.D.):第1主成分 第2主成分:単相関係数 リーダーシップ
オつけ ツ人の尊重
ェ担 ソ値観
3.17(0.98)
R.19(1.03)
S.07(1.14)
R.28(1.06)
Q.89(0.93)
: .745 F: ・691
堰@.554
F .509:: .495
.166 :
@ :.284 :
D503 :
@ :一.620 :
D.572 i
.63 D65 D59 D56 D53 合計得点 16.60(3.10) 1固有値二1.84F︐寄与率=36.90% 1.07 :
Q1.47%i ,
Cronbachのα信頼性係数=.56
この尺度を構成する5項目の合計得点を適応性尺度得点とした。そのヒストグラムは,図1 のようである。
相対度数(%)
20
5 10 15 20 25
適応性
図1 適応性尺度のヒストグラム
30
(2)凝集性尺度の基礎統計資料とその検討
凝集性尺度も適応性尺度の検討と同じように検討した(表2)。下位尺度に用いた5項目の 内容は,親密性(家族との感情的交流)の程度,家族成員間の相互援助の量,個々人の問題に おける決断を個人がするのか家族全員であるのかの程度,時間・空間・興味などの共有性の多 少,「われわれ家族意識」(帰属意識)の強さである。主成分分析の結果,第2主成分の固有値 一163一
は.869であった。第1主成分の固有値と第2主成分の固有値の間に段差がみられ, T項目から 算出されたCronbachのα信頼性係数が.73であった。凝集性尺度の下位項目として5項目で 構成することは妥当であると判断した。これまでの結果のように凝集性尺度は適応性尺度より
も内部整合性の高い尺度であった。
表2 凝集性尺度の検討資料
尺度項目 1 平均値(S.D.);第1主成分 第2主成分1単相関係数
一63(0.98)
相互援助 1・.・・(・.84・家族の意志決定12.82(1.02)
期性 13.11(。.97)
われわれ醐/、.59(。.98)
_________⊥___一
合計得点
.823
.705
.512
.735
.707
.099
−.185
−.787
.252
.378
.79
.68
.59
.73
.70
已96(3 34) :固有{直= 2.48 0.87 1寄与Σ客=49.52% 17.37X
Cronbachのα信頼性係数=.73
凝集性尺度得点のヒストグラムは,図2のようであった。
相対度数(%)
20
5 10 15 20 25
凝集性
図2 凝集性尺度のヒストグラム
30
2.家族のコミュニケーション環境の良さを測定する尺度の検討
家族のコミュニケーション環境の良さを測定する尺度として,家族のコミュニケーション風 土および家族成員のコミュニケーション技能(聞き手の技能,話し手の技能)を用いた。それ ぞれの尺度の検討をおこなうために,各尺度の下位項目評定点(6段階評定得点)をもとに平
一164一
家族のコミュニケーション環境要因とファミリー・マップの関係について 165
均値の算出,主成分分析および尺度得点(合計得点)と各項目間の単相関係数から尺度項目と しての内部的一致性を調べた。
(1)家族のコミュニケーション風土
家族のコミュニケーション風土を測定する下位項目として,家族の会話場面における話題の 連続性と話題の一貫性が保たれる程度,家族成員間での他者の尊重・他人への関心の程度,家 族成員のメッセージの明瞭性の程度,家族成員間における自己表現量が用いられた。
主成分分析の結果,第1主成分の負荷量が4項目とも高く,第1主成分と第2主成分の固有 値に開きがみられ,第1主成分の4項目によるCronbachのα信頼係数も.69みられ,4項目 が家族のコミュニケーション風土尺度構成として妥当であることが明らかになった。したがっ て,4項目の合計得点を「家族のコミュニケーション風土」尺度得点とした。得点の高さは,
家族のコミュニケーション風土の良さ(望ましさ)の程度を表す。
表3 家族のコミュニケーション風土尺度の検討資料
尺度項目 平均値(S.D.)1第1主成分 第2主成分1単相関係数 話題の連続性
シ者の尊重
<bセージの明瞭性
¥現の自由度
3.67(1.00)
R.96(1.01)
S.04(0.91)
R.69(1.06)
.737
F .746:1 .707:1 .699 .298 1
@ :㍉249 1
D50g l
@ :一.563 :
.73 D74 D68 D74 合計得点 15.36(2.95) :固有値=2.091寄与率=52.20% 0.73 :
P8.16xi Cronbachのα信頼性係数=.69
(2)家族成員のコミュニケーション技能
家族成員の個々人のコミュニケーション技能は,「聞き手としての技能」と「話し手として の技能」の2種類の技能によって調べられた。
①聞き手としての技能
「聞き手としての技能」は,家族成員個々人の共感的な理解力と傾聴的態度の量によって測 定した。主な家族成員である「自分(青年期の子ども)」「父親」「母親」について調べた。
表4に示すように,いずれの家族成員についても,2項目による聞き手としての技能能力を 測定する尺度構成は妥当であると考えられる。2項目の合計得点を「自分/父親/母親の聞き 手技能力」尺度得点とした。得点が高いほど「聞き手としての技能」が優れている。
②話し手としての技能
「話し手としての技能」は,自己表現(自己についての話や自己主張をする)の程度,他人 の話をしない(他人.C:ついて話題にしない)程度,話を支配しない(でしゃばる,話の腰を折 る,話をすぐ終わらせようとすることがない)程度の3項目を「自分」「父親」「母親」につい てそれぞれ測定した。
一165一
表4 聞き手としての技能尺度
尺度項目 平均値(S.D.)1第1,・li成分 第2主成分↓単相関係数 共感的理解 3.75(0.89)
自 傾聴的態度 3.75(0.98)
分合計得点 7.50(1.71)
Cronbachのα信頼性係数=.80
.914
.914
一.407
.407
.90
.92
1固有f直= 1.67 : 0.33 1寄与E9=83.48× 16.52髭
共感的理解
傾聴的態度{3.55(1.17)i.9
父親
一舗得点
@17・°°(2・21)iL珂棚Cronbachのα信頼性係数二.87 1寄与率
母 共感的理解 X聴的態度
4◆15(1.06) : .9
p4.22(1.04)i.91 ___■」_
−L m
3.45(1.17) : .941
.941
親 合計得点 1 8.37(1.90)
l
Cronbachのα信頼性係数二.78
1寄与a争{ニ88.55X .904
個有値=1.64
:
,寄与率二81.77駕
i
一3.338 3.338 0.23 11.45X
㍉427 .427 0.36 18.23X
.94
.94
.91
.90
表5 話し手としての技能尺度
尺度項目 平均値(S.D.): 第1主成分 第2主成分: 単相関係数
自分 *自己表現量轤フ蔽しな暗
bを支配しな暗
3.07(1.23)
R.39(1.07)
R.81(1.20)
i ・315
P .699 F: .772
.908 1
D.421i :.010 :
.61
D58 D68 (合計得点)
bronbachのα信頼性係数二.21
1 :固有値=1.18,:寄与率=39.47% 1.00 :
R3.41xi
父親 *自己表現量轤フ能しな暗
bを支配しな{ほ
3.22(1.34)
R.76(1.22)
R.97(1.33)
1 .566
堰@.605:: ・747
一.726 :
@ :.653 :
D021 : 1
.64
D59 D69 (合計得点)
bronbachのα信頼性係数=.29
1
:固有倣=1.241:寄与率=41.47% 0.95 :
R1.82xi
母親
*自己表現副
E臥の話をしない量 1 |
Wを繊・Rl
3.24(1.13)1 3.49(1.22)
@ 4.13(1.18)
: .431
堰@.531:: .802
.763 :
@ 1−.677 1
D03g i
.55
D60 D66 (合計得点)
Cronbachのα信頼性係数二.12
:固イ了f直二 1.11 1.04
︐
:寄与ξ争≦=37◆02鶉 34.73%
*は評定尺度得点を逆転させた項目
なお,主成分分析の結果,自己表現量の項目が第1主成分でマイナスの負荷量を示した。成 分負荷量の正負が混在する尺度構成は,問題であるので,自己表現量の項目の評価点を逆転さ せて再度以下の検討をした。
表5に示すように,主成分分析の結果,3項目の内部整合性があまりなく,第1主成分は「他
一166一
家族のコミュニケーション環境要因とファミリー・マフプの関係について 167
者とのおしゃべり」の量を測定する尺度と推測され,第2主成分は,「自己表現はするが,他 人についての話をすることを控える」という「話題にする内容の選択マナー(話し手のスキル)」
を2項目で測定する尺度と考えられる。また,3項目による尺度構成の信頼性の分析の結果,
「自分」「父親」「母親」のいずれのCronbachのα信頼性係数が低かった(表5)ので,今回 の結果を分析するための変数としては,尺度を構成せず各項目すべてを変数として用いること
にした。
元の項目における評定尺度得点が高いほど「自分/父親/母親の話し手技能力」が優れてい
る。
3.適応性に関与する家族のコミュニケーション環境
適応性尺度で測定された得点の平均値は16.60,標準偏差は3.10であった。ファミリー・マッ プの適応性尺度得点の中点は17.5であるので,青年期(大学生)の子どもを含む分析対象者の 家族の平均はほんのわずか構造的なシステムである。本研究の分析にあたっては,ファミリー・
マップの意味づけを重視し,比較する群を分析対象家族の平均値を基準とした相対的得点によ る分割ではなく,適応性尺度の絶対尺度得点を3分割し,5 −13点の範囲にある家族を硬直化 家族,14・・一 21点の範囲にある家族を均衡家族,22〜30点の範囲にある家族を無秩序家族とした。
硬直化家族はさまざまな家族機能を円滑に働かせるために親が実権を握り整然とした秩序や組 織化を強調する家族構造であり,それに対して無秩序家族は家族内で生じるさまざまな課題に 対して柔軟に対処しすぎ,ややもすると計画性がなく行き当たりばったりで無責任でけじめの ない家族構造である。均衡家族は状況の変化に適応ができる家族構造を持つ。
家族の適応性と家族のコミュニケーション環境との関連性を検討するために,まず,適応性 尺度に基づく3類型(硬直化家族・均衡家族・無秩序家族)間で家族コミュニケーション環境 要因(家族のコミュニケーション風土・家族成員個々人のコミュニケーション技能)の量的デー
タに相違があるかを分散分析で検討した(3類型を独立変数とし家族コミュニケーション環境 を構成する要因の量的データを従属変数とする分析)。さらに,硬直化家族・均衡家族・無秩 序家族の3類型を従属変数とし,家族コミュニケーション環境要因の量的データを独立変数と
した判別分析をし,各家族コミュニケーション環境要因が家族の適応性のあり方(類型)に影 響をもたらす大きさと方向を明らかにした。
(1)家族の適応性の類型と家族のコミュニケーション環境の良さ
家族のコミュニケーション環境要因の尺度及び各項目の平均値を適応性尺度の得点に基づい て分けられた3類型(硬直化家族・均衡家族・無秩序家族)間で比較するために一元配置の分 散分析をおこなった。その結果を表6に示した。
1)家族のコミュニケーション風土
家族のコミュニケーション環境要因のうち,家族のコミュニケーション風土得点の平均値は,
3類型間で有意水準0.1%以下で差がみられた。さらにScheffeの方法で多重比較をした結果,
一167一
表6 適応性の3類型と家族のコミュニケーション環境(3群の分散分析結果)
【適応性】[群名] 1:硬直化家族 2:均衡家族 3:無秩序家族
変数 [標本数] 64 350 27 分散分析 対比較
1.家族のコミエケーション風土 14.81(3.28) 15.61(2.76) 13.48(3.56) 8.051°°° 2>3°°
①話題の連続性・一貫性 3.53(LO9) 3.74(0.98) 3.11(0.92) 5.694⇔ 2>3°°
②他者の尊重・他者への関心 3.80(1.21) 4.01(0.95) 3・59(1・10)i 3.132°
③メ姉一ゾの明瞭性 4.06(1.03) 4.08(0.85) 3・48(1・13)1 5.608°° 1>3 ,2>3
④表現の自由度 3.42(1.31) 3.77(1.09) 3.30(1.36)1 4.266°
一 一 一 ≡ 一 一 ← … 一 ≡ 一 一 ■ 一 一 一 一 一 一 , 一 一 ,一一,.一一一.一.一一,_, ,←,,,,_一一一一一L−一←一一一.一_._一._
II.家族成員のコミエケーション技能 1
1.聞き手としての技能
1|
(1)自分の聞き手技能力 7.38(2.01) 7.56(1.61) 7.04(2.05)! 1.376ns
①共感的理解(自分)〔②傾聴的態度(自分)
3.73(1.09)
R.64(1.05)
3.76(0.82)
R.80(0.96)
3.63(1.16)1
R.41(1.03)i 0.292ns Q.458ns
(2)父親の聞き手技能力 ①共感的理解(父親)
︹
②傾聴的態度(父親)
(3)母親の聞き手技能力 ①共感的理解(母親)
〔
②傾聴的態度(母親)
、.話し手としての技能1
(1)自分の話し手技能力 ①自己表現力(自分)
②他人の話をしない(自分)
③話を支配しない(自分)
(2)父親の話し手技能力 ①自己表現力(父親)
②他人の話をしない(父親)
③話を支配しな1、(父親)
(3)母親の話し手技能力 ①自己表現力(母親)
②他人の話をしな (母親)
③話を支配し如(母親)
5.98(2.68) 7.23(2.01)
2.88(1.41) 3.57(1.07)
3.1正(1.40) 3.65(1.08)
7.92(2.47) 8.42(1.70)
3.94(1.34) 4.17(0.97)
3.98(1.28) 4,24(0吟96)
3.86(1.37) 3.90(1.18)
3.39(1.34) 3.38(1.01)
3.83(1.23) 3.83(1.16)
4.27(1.58) 3.72(1.24)
3.52(1.35) 3.83(1.15)
3.44(1.60) 4.09(1.20)
3.52(1.36) 3.79(1・03)
3.23(1.35) 3.52(1.17)
4.06(1.40) 4.12(1.12)
I
6.41(2.6。)}9.983…1、2…
13.22(1.34) 110.574... 1〈2.・.
3.19(1.39) 1 7.389... 1〈2..
1
8.85(2.46) 1 2・781 ns 4.37(1.25)i 1.976ns 4.48(1.26) } 2.590 ns
i l
4.41(1.37) 2.250ns 3.48(1.10) 0.119 ns 3.41(1.42) 1 1.614 ns
I f 1
3.37(1.68)1 5.869.¢ 1>2/3.
3.33(1.54)i 3.603.
3・63(1・68)17・749 1く2
、.。。、1.52、1
3.59(1.42)
4.41(1.39)
2.260ns 1.635ns O.851ns
均衡家族の家族のコミュニケーション風土尺度得点の平均は,無秩序家族の平均より有意に高 かった(P<.01)。すなわち,無秩序家族は均衡家族に比べてコミュニケーション風土が悪い 状態にあるといえる。
下位項目のレベルでみると①話題の連続性・一貫性と③メッセージの明瞭性は有意水準 0.1%以下,②他者への尊重・他者への関心と④表現の自由度は有意水準5%以下で,いずれ
も3類型間に有意な差がみられた。多重比較の結果は,無秩序家族は均衡家族より,①話題の 連続性・一貫性の平均値が低く(P〈.01),家族内での話が途切れがちでまとまった話ができ ない家族風土といえる。また,③メッセージの明瞭性については,無秩序家族は,均衡家族や 硬直化家族と比べて平均値が有意に低く(前者:P<.01,後者:P<.05),家族の人々はあ いまいな発言内容を交わす家族状況である。④表現の自由度は,硬直化家族が均衡家族に比べ
一168一
家族のコミュニケーション環境要因とファミリー・マフプの関係について 169
て自由でない傾向がみられた(P<.1)。②他者の尊重・他者への関心は,多重比較では有意 な差がみられた対はなかった。
2)家族成員のコミュニケーション技能
家族成員のコミュニケーション技能については,聞き手としての技能と話し手としての技能 に分けて測定した。
①聞き手としての技能
家族成員個々人の聞き手としてのコミュニケーション技能力では,自分および母親には,3 類型間に有意な差がみられなかった。父親については尺度化した父親の聞き手技能力,下位項
目である①共感的理解および②傾聴的態度のいずれも3類型間に有意な差がみられた(P<
.001)。多重比較では硬直化家族が均衡家族より有意に平均値が低く(尺度:P<.001,①:
P<.001,②:P<.01),硬直化家族における父親は均衡家族の父親に比べて聞き手としての 技能力がない。循環的に考えれば,…→父親の聞き手としての技能力のなさ→硬直化家族→父 親の聞き手としての技能力の低下→さらに家族の硬直化→…の悪循環になった結果と考えられ
る。
②話し手としての技能
家族成員個々人の話し手としてのコミュニケーション技能力では,自分および母親には,3 類型間に有意な差がみられなかった。父親の話し手としての技能力のうち,①自己表現量(自 分についての話や自己主張)は,硬直化家族が均衡家族や無秩序家族に比べて有意に高い平均 値を示した(P<.05)。また,③話を支配しない量は,均衡家族が硬直化家族に比べて有意に 多い平均値であった(P<.01)。硬直化家族の父親は,均衡家族に比べて家族内でよく自己表 現・自己主張をし,他の家族成員に話をあまりさせないような発言をする話し手のようである。
以上の適応性の類型と家族のコミュニケーション環境の関係をまとめると,望ましい均衡家 族に比べて,無秩序家族は家族のコミュニケーション風土そのものが悪い,硬直化家族は父親 のコミュニケーション技能が悪く他の家族成員のメッセージに耳を聴けずに他の家族成員の話 をさせないようにして自己表現・自己主張するという特徴がある。
(2)適応性の3類型を判別するのに影響力のある家族のコミュニケーション環境
家族のコミュニケーション環境要因が適応性の3類型におよぼしている影響力と方向性を明 らかにするために判別分析をおこなった。
基準変数(従属変数)を適応性の3類型(硬直化家族・均衡家族・無秩序家族)とし,説明 変数(独立変数)を13の家族のコミュニケーション環境要因(コミュニケーション風土・自分
/父親/母親の聞き手としての技能力・自分/父親/母親の話し手としての技能;自己表現 量,他人の話をしない量,話を支配しない量)とした。判別分析をおこなうにあたっては,変 数増加法(変数の最も説明力のあるものから順次取り入れていく方法)を用いた。変数の選択 にあたってはウィルクスのA統計量変化についてのF検定を用い,有意水準10%の臨界値(F
=2.31,(2,500))以上を選択の基準とした。その結果が表7である。
一169一
表7 適応性の3類型に影響力をもつ家族コミュニケーション環境要因(判別分析)
3群の判別 1 標準化正準判別係数 正準判別係数 選択変数 判別関数1 判別関数2 判別関数1 判別関数2 父親の聞き手技能力 0,010 一〇.725 0,005 一〇.335
父親の自己表現量 一〇,400 0,608 一〇.301 0,457
家族のコミュニケーション風土 一〇.928 一〇,180 一〇.319 一〇.062
自分の自己表現量 0,591 0,092 0,482 0,075
母親の聞・手技能パ
0,593 一〇.183 0,314 一〇,097 定数 1.487
解1蛮邑の有皇6億事 .000
2.085
.000
2つの判別関数がどの群を他の群から区別するものであるかを明らかにするために,判別空 間における各群の重心(各群の判別得点平均値)を図3に示した。判別関数1は無秩序家族と 均衡家族・硬直化家族とを判別するものであり,判別関数2は硬直化家族・無秩序家族と均衡 家族を判別するであることがわかる。
判別関数2
!i・・
硬直化家族
(−0.15, 0.63)
0.50
無秩序家族
(1.10, 0,12)
判
一〇.50 0.50 LOO 判別関数1
均衡家族
(一一〇.06,−0.12)
1−⁝
図3 判別空間における適応性3類型の重心
他の変数の影響を取り除いたときに家族コミュニケーション環境要因が適応性の3類型にお よぼしている影響力(寄与の程度)を知るために標準化正準判別係数を比較してみると,判別 関数1(無秩序家族と他の群を判別する)では,家族のコミュニケーション風土が最も寄与す る程度が強く ←O.928),ついで母親の聞き手技能力(0.593)と自分の自己表現量(0.591),
さらに父親の自己表現量(−0.400)が若干影響している。判別空間における各群の重心の正 負と標準化正準判別係数の正負の関係から方向性をみると,無秩序家族の方向は,家族のコミュ
一170一
家族のコミュニケーション環境要因とファミリー・マフプの関係について 171
ニケーション風土が悪く,母親の聞き手能力が優れているし,自分(青年)の自己表現量も多 い。それに父親の自己表現量の少なさが取り上げられる。
また,均衡家族と他の2群を区別する(判別関係2による)要因から,均衡家族は父親の聞 き手技能能力が良く(−0.725),父親の自己表現・自己主張が少ない(0.608)ことが明らか になった。
判別の的中状況(見かけの的中率)は,表8のようである。無秩序家族の判別力が優れてい るといえる。
表8 判別の的中状況
調査結果
判別結果
硬直化家族 均衡家族 無秩序家族 合計 硬直化家族
均衡家族 無秩序家族
36(56.3) 16(25.0) 12(18.8)
87(24.9) 188(53.7) 75(21.4)
3(11.1) 4(14.8) 20(74.1)
64 350 27 的中率 55.33X
4.凝集性に関与する家族のコミュニケーション環境
凝集性尺度で測定された得点の平均値は,16.96,標準偏差は3.34であった。ファミリー・マッ プの適応性尺度得点の中点は17.5であるので,分析対象者の家族の平均は中点とほぼ同じであ る。分析にあたっては,適応性尺度と同様,絶対尺度得点を3分割し,5−一 13点の範囲にある 家族を離散家族,14〜21点の範囲にある家族を均衡家族,22 一一 30点の範囲にある家族を密着家 族とした。離散家族は,家族の情緒的つながりが少なくバラバラでありプライバシーを重視し た家族。密着家族は互いに依存しあい家族が一体化して心理的に離れられない家族。均衡家族 は適度な心理的距離を保ちながら家族としてかかわっていける家族である。
3.適応性に関与する家族のコミュニケーション環境と同様な手続きで,凝集性尺度に基づ く3類型(離散家族・均衡家族・密着家族)間で家族コミュニケーション環境要因の量的デー タに相違があるかを分散分析で検討し,さらに3類型を従属変数とし,家族コミュニケーショ ン環境要因の量的データを独立変数とした判別分析をおこなって各家族コミュニケーション環 境要因が家族の凝集性のあり方に影響をもたらす大きさと方向を検討した。
(1)家族の凝集性の類型と家族のコミュニケーション環境の良さ
家族のコミュニケーション環境要因の尺度及び各項目の平均値を凝集性の3類型間で比較す るために一元配置の分散分析をおこなった。その結果を表9に示した。
1)家族のコミュニケーション風土
家族のコミュニケーション風土得点および各項目の平均値は,3類型間で有意水準0.1%以 下で差がみられた。さらにScheffeの方法で多重比較をした結果,凝集性3類型の家族のコミュ ニケーション風土尺度得点の平均値は,離散家族く均衡家族く密着家族の関係で有意差がみら
一171一
表9 凝集性の3類型と家族のコミュニケーション環境(3群の分散分析結果)
【凝集性】[群名]
マ数 [標本数]
1:離散家族
@ 64
2:均衡家族
@ 333
3:密着家族
@ 44
分散分析 iF㈹
対比較 rcheffeの方法
1.家族のコミエケーション風土 12.94(3.04) 15.54(2.61) 17.52(2.28) 39.991°°° 1<2〈3°°°
①話題の連続性・一貫性
3.02(1.05) 3.73(0.94) 4.16(0.93)
﹇
②他者の尊重・他者への関心
3.22(1.08) 4.03(0.93) 4.50(0.94)
③kft一ジの明瞭性
3.73(1.19) 4.05(0.85) 4.43(0.65)
④表現の自山度
2.97(1.49) 3.74(1.Ol) 4.43(t.03)
II.家族成員のコミェケーション技能 1.聞き手としての技能
(1)自分の聞き手技能力 ①共感的理解(自分)
︹
②傾聴的態度(自分)
(2)父親の聞き手技能力 ①共感的理解(父親)
︹
②傾聴的態度(父親)
(3)母親の聞き手技能力 ①共感的理解(母親)
︹
②傾聴的態度(母親)
6.95(2.18) 7.48(1・58)
3.52(1.10) 3.73(0.84)
3.44(1・20) 3.75(0.92)
5.50(2.57) 7.17(1.98)
2.70(1.30) 3.54(1.08)
2.80(1.37) 3.63(1.05)
7.75(2.34) 8.34(1.73)
3.78(1.24) 4◆14(0.99)
3.97(1.22) 4.20(0.97)
21.176° ° 1く2/3⇔°,2〈3 26.913... 1〈2!3...,2く3.・
7.958.◎・ 1〈2〈3.,1く3.・・
23.980... 1〈2〈3.・.
8.45(1.42)110.578...
4.23(0.70) 8.917 . 4.23(0.93) 8,729...
1く3°°°,2く3°°
1〈3°°°,2〈3°°
1〈3⇔ ,2く3⇔
7.84(2.33) 20.634..◎ 1〈2/3.°・
3.86(1.20) 17.933.・. 1〈2/3.・.
3.98(1.29) 層18.225... 1〈2/3...
9.50(1.89) 11.785・.⑨ 4白77(1・00) 12.093...
4.73(1.09) 7.335...
1!2く3㈹゜
1〈2°,1/2<3⇔°
1く3⇔°,2く3⇔
2.話し手としての技能
(1)自分の話し手技能力 ①自己表現力(自分)
②他人の話をしない(自分)
③話を支配し⑳(自分)
3.63(1.36) 3.92(1.19)
3.28(1.22) 3.39(1.04)
3.45(1.72) 4.06(1.21)
4.43(1.18) 5.763.. 1<3・.,2〈3・
3.48(1.10) 0.471 ns 4.02(1.34) 5.789.. 1〈2令.
(2)父親の話し手技能力 ①自己表現力(父親)
②他人の話をしない(父親)
③話を支配し紬(父親)
3.70(1.67) 3.73(1.27)
3●78(1.49) 3.74(1.15)
3.78(1.43) 3.77(1.15)
4.27(1.21) 3・326. 2く3.
3.82(1.21) 0.094ns 4.14(1.10) 1.863ns
(3)母親の話し手技能力 ①自己表現力(母親)
②他人の話をしない(母親)
③話を支配し㊨(母親)
3.69(1・25) 3.70(1.08)
3.38(1・29) 3.48(1.16)
3.80(1.43) 4.17(1.12)
4.36(1.13) 7●101... 1!2〈3..
1:1;6:雛巴Cns
れた(P〈.Ol)。また,各項目のレベルでもほぼ同様の関係がみられた。すなわち,密着家族 はもっとも家族のコミュニケーション風土がよく,ついで均衡家族,離散家族は他の類型に比 べてコミュニケーション風土が悪い状態にあるといえる。
2)家族成員のコミュニケーション技能
①聞き手としての技能力
密着家族は,他の2類型(均衡家族,離散家族)と比較して自分の聞き手技能力および母親 の聞き手技能力の平均値が有意に高い(P<.01)。
離散家族は,他の2類型と比較して父親の聞き手技能力および下位2項目の平均値が有意に
{氏し、 (P<.001)。
②話し手としての技能力
一172一
家族のコミュニケーション環境要因とファミリー・マフプの関係について 173
話し手としての技能力のうち家族成員すべて(自分/父親/母親)の自己表現量は,3類型 間に有意な差がみられた。密着家族では,自分と母親の自己表現量の平均値が他の2類型より
も多い。密着家族の父親の自己表現の平均値は,均衡家族の父親の自己表現量よりも有意に多 い(P<.05)。密着家族の家族成員は全員自己表現する量が多い。
離散家族の父親が話を支配しない量の平均値は,均衡家族のそれに比べて有意に低かった(P
<.05)。すなわち,離散家族の父親は,会話に割り込んだり他のメンバーの発言を阻止して会 話の場を支配することが多い。
以上,凝集性の離散家族・均衡家族・密着家族と家族のiiミュニケーション環境の関係をま とめると均衡家族を中心として密着家族は家族のコミュニケーション風土も良好で聞き手とし ても話し手としての自己表現量も家族全員がコミュニケーション技能力が高い。それに比して 離散家族は,家族のコミュニケーション風土が悪く,自分(青年)と母親の聞き手としての技 能力や話し手としての技能力は均衡家族のそれとそれほど劣らないのに対して父親の聞き手と しての技能力が劣り,さらに父親の話し手としての技能のうち話を支配したがる悪い癖が目立 つo
(2)凝集性の3類型を判別するのに影響力のある家族のコミュニケーション環境
家族のコミュニケーション環境要因が凝集性の3類型におよぼしている影響力と方向性を明 らかにするために判別分析をおこなった。適応性の類型と家族のコミュニケーション環境要因 の検討における判別分析の同様の手続きで分析した。その結果が表10である。
表10 凝集性の3類型に影響力をもつ家族コミュニケーション環境要因(判別分析)
鑛蒜芸㌶チ
母親の自己表現量 母親の聞き手技能力
標準化iE準判別係数 判別関数1 判別関数2
1:;:l l:;::
0.049 − 0.779 0.085 − 0.563
定数
正準判別係数 判別関数1 判別関数2
宥駐ま量の盲意控8率
0.281 0.168 0.044 0.046
−6.045 .000
0.039 0.253
−0.700
−0.303 2.811 .001
判別空間における各群の重心(各群の判別得点平均値)を図4に示した。判別関数1は離散 家族と均衡家族・密着家族の類型を判別するものであり,判別関数2は均衡家族と離散家族・
密着家族を判別することがわかる。
図4と標準化正準判別係数を比較してみると,判別関数1(離散家族と他の2群の判別)か ら,離散家族の家族はコミュニケーション風土の悪さの得点が最も寄与する程度が強く
(0.765),またやや父親の聞き手技能力が劣っていること(0.356)が影響している。また,
一173一
判別関数2
均衡家族
(0.08,0.12)
離散家族
(−0.97,−0.23)
密着家族
(0.83, −1.47)
判別関数1
図4 判別空間における凝集性3類型の重心
判別関数2(均衡家族も他の2群の判別)は,均衡家族が母親の自己表現量に優れ(−0.779),
母親の聞き手能力が優れ(−0.563),父親の聞き手技能力の劣っていること(0.535)の寄与 が大きい。
判別の的中状況(見かけの的中率)は,表11のようである。離散家族と密着家族の判別力が ある程度できているといえる。
表11判別の的中状況
離散家族 均衡家族 密着家族
43(67.2) 12(18.8) 9(14・1)
81(24.3) 161(48.3) 91(27.3)
5(11.4) 10(22◆7) 29(65.9)
64 333 44 的中率 52.83%
5.ファミリー・マップの5類型を判別するのに影響する家族のコミュニケーション環境
(1) 5類型の分類法
ファミリー・マップの適応性・凝集性の二次元構造を基に家族を5類型に分類した。
X軸を凝集性尺度得点とし,Y軸を適応性尺度得点としたとき,以下の計算式・関数式にあ てはめて5類型に分類した(図5)。
5:均衡的な家族 [(x−17.5)2+(y−17.5)2<42にあてはまる家族]対象家族数 =245 家族システムとしてバランスのとれた健康な家族。
1:硬直化した離散家族 [5:を除き,x<17.5AND y<17.5である家族] =75 家族とは名ばかりで,お互いの感情的交流より世間体を気にする家族。
一174一
家族のコミュニケーション環境要因とファミリー・マップの関係について 175
適応性
無秩序な 離散家族 40人
硬直化した
離散家族 75人
無秩序な 密着家族 23人
凝集性30
た族い家人面着58硬密
図5 ファミリー・マップの5分類
(2)
家族のコミュニケーション環境要因の尺度及び各項目の平均値をファミリー・マップの5類 型間で比較するために一元配置の分散分析をおこなった。その結果を表12に示した。
1)家族のコミュニケーション風土
家族のコミュニケーション風土の平均値は,5類型間で有意な差がみられた(P〈.001)。
多重比較の検定の結果,硬直化した離散家族および無秩序な離散家族の家族のコミュニケー ション風土得点の平均値は,硬直化した密着家族,無秩序な密着家族および均衡的な家族のそ れより も有意に低い(P<.001)。すなわち,家族の適応性の類型とは関係なく離散家族は密 着家族,均衡的な家族よりも家族のコミュニケーション風土は悪いといえる。また,硬直化し た密着家族は均衡的な家族に比べて家族のコミュニケーション風土は良い(P<.01)。下位項 目の多重比較の結果を有意水準5%以下の基準でみてみると,②他者の尊重・他者への関心は 家族のコミュニケーション風土の結果と同じで,①話題の連続性・一貫性,③メッセージの明
2:無秩序な離散家族 [5:を除き,x<17.5AND y>17.5である家族] =40 家族としての組織化や秩序が弱く,家族成員相互の感情的つながりも薄い家族。
家族成員が家族から飛び出していく(遠心的性格)傾向のある家族。
3:硬直化した密着家族 [5:を除き,x>17.5AND y<17.5である家族] ニ58 「家をまもる」といった厳格,拘束的で団結を強調する家族。
4:無秩序な密着家族 [5:を除き,x>17.5AND y>17.5である家族] =23 お互いのプライバシーにも干渉しあい,相手の中に深く立ち入らずに入られない 絡み合いすぎる家族。
家族の5類型と家族のコミュニケーション環境の良さ
一175一