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韓国都市化過程における儒教的家族規範 —居住環境及び家族関係の視点から [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)韓国都市化過程における儒教的家族規範 ―居住環境及び家族関係の視点から キーワード:都市化、儒教的家族規範、居住環境、家族関係、利用形態. 発達・社会システム専攻 尹 星華 目次. しかし、近代社会では、家族が制度的家族から友愛家. 序論. 族へと変化するにつれて、夫婦関係はもちろん、父母子 一、研究目的. 女の関係も大きく変わった。長い間、韓国社会の家族関. 二、研究方法. 係は儒教的規範を基盤としていた。父母、特に父親は尊. 第一章 韓国農村伝統家屋と儒教的家族規範. 厳の対象であり、権威の対象でもあった。家長と家族成. 第一節 伝統家族形態. 員の間には相当な距離があったのも事実である。 しかし、. 第二節 農村伝統家屋と家族関係. 都市化、高齢化、核家族化などの社会変化に伴い、家族. 第三節 伝統的村落社会環境 第二章 現代都市家族形態と家族関係 第一節. 制度自体が変化しており、父母と子女の距離は随分近付. 家族形態. いてきた。また、こうした変化には、韓国の独特な家屋. 第二節 家族関係. の変容も一つの関連する要因として考えられる。家族は. 第三章 都市家族の居住形態及び団地環境. 家族周期によって異なった形態を取る時間的次元を持つ. 第一節 家庭生活の形態. 一方で、ある時点における家族の構造には、それにふさ. 第二節 住宅団地環境. わしい生活の場、 すなわち一定の居住空間を必要とする。. 第四章 要約及び結語. つまり、家屋は家族関係を内包する具体的居住空間であ る。. 参考文献. 家屋は家族生活の舞台であり、そこで個人が生まれ、 育ち、成長した後、多くの場合、生命の終末を迎える場 所である。そこでは二世代、三世代が共同で居住するこ. 【概要】. とにより、上の世代の経験と知恵が下の世代に対して意. 韓国の社会は現在、急激な都市化と産業化の過程の中. 図的、無意図的に伝達される。短期的視点からみると、. にある。その中で家族観や家族制度も伝統的制度から新. 個人の成長・発達、あるいは年老いていく場であるとも. しい家族制度に変化していることは認めなければならな. に、 濃密な家族間の相互作用が食事の間、 娯楽慰安の間、. いであろう。これは、家族構成の面においては拡大家族. 寝室などにおいて展開される場所であり、またそこで、. や、直系家族の制度下の夫婦家族あるいは核家族の変化. 緊密な家族関係が形成される。. も指し、同時に家族集団での人間関係の変化も意味して. 韓国では、先祖崇拝、男女有別、長幼有序などの儒教. いる。. 文化が家族の生活空間の隅々までに影響を及ぼしてきた. 伝統的家族制度では、夫婦関係も父母子女の関係も女. のである。しかしながら、社会の変化に伴いこうした儒. 性や子どもにとっては従属的な関係であった。これは、. 教社会の影響力は減少しつつある。したがって、家族関. 家父長制において男子が家庭内のすべての権限を集中的. 係とりわけ父母と子女との関係も変化しつつある。. に所有していることから生じる、 不可避の現象でもある。. 本研究は、韓国の伝統社会で生活空間、家族関係・親 1.

(2) 族関係を厳しく制約してきた儒教的家族規範が、社会の. 場合、1962年に軍事政権のもとで第一次経済開発計. 近代化により、都市化された居住環境と、家族関係・近. 画が開始され、それ以降経済成長が進行するが、60年. 隣関係においてどのように持続し、あるいはどのように. 代までは基本的には第一次産業にあたる農業を中心とし. 変容しているのかを吟味することを目的とした。以上の. た産業構造を持っていた。 農林漁業従業者の比率は 1970. ことから、本論では、文献調査とともに韓国のソウル市. 年でも 50%を超えるものとなっている。第二次産業にあ. と京幾道住宅団地に住んでいる三世帯を対象として生活. たる鉱工業従業者は 60 年代の後半から 70 年代、80 年. 空間と家族関係、近隣関係について調査を行った。. 代に増加しているが、90 年代になると少しずつ減少傾向. 韓国の家族が伝統的形態からの近代化を志向している. を示している。それに対して社会間接資本やサービスな. とは言うが、実際、具体的になにが伝統か、なにが儒教. どを中心とした第三次産業従事者は一貫して増加してい. 的家族規範かよく分からない場合も多い。近代化の方向. た。. と程度を正しく把握しようとすれば、まずその前提とす. このことから韓国人口は全体として農村から都市への. る内容から明らかにしなければならない。そのため第一. 移動、とりわけ首都圏への集中という現象、いわゆる過. 章の一節では伝統的家族形態について述べて、二節で伝. 疎過密現象が顕薯にあらわれている。また近年の出生率. 統的家族規範:家父長制(祖先崇拝) 、親子関係(長幼有. の減少、死亡率の減少、平均寿命の延長は韓国における. 序) 、夫婦関係(男女有別)のついて述べた。三節では儒. 少子化と高齢化をもたらしている。家族形態として大き. 教的家族制度や規範に基づいて成立した空間形成である. く核家族(夫婦あるいは夫婦と未婚のその子どもで構成. 伝統家屋の構造と家族関係について説明した。また、伝. される一世代あるいは二世代同居家族)と直系家族(夫. 統的住居で空間はすでに日常生活の場所でありながら、. 婦と子ども及び夫婦の両親で構成される三世代以上同居. 冠婚喪祭などの儀礼を行う場所で、文化伝承機能をする. 家族)とに区分された。. 場所である。家で生まれて、父母の教育を受けながら育. 二節では現代都市家族関係つまり、夫婦関係と親子関. ち、通過儀礼を通して大人に成熟していく過程で家屋は. 係及びその役割分担について述べた。現代社会では一夫. 日常生活の場であり、教育空間としての機能も果たして. 一妻制が制度化され、男女平等の理念が夫婦関係の相互. いた。ここでは韓国伝統的家屋構造及びその利用形態に. 的誠実性を正当化している。基本的には男女は家族の内. よって家庭規範教育に対しての機能と意味を分析してみ. と外で役割を分担し、これを男女の役割構造とみなされ. た。. ている。しかし、近年は女性が家事以外に経済活動に参. 第二章では、近代化にともなう家族形態の変容につい. 与する場合が増えている。女性の幸福が主人の職位と家. て述べながら、現代社会での家族関係、親族関係に儒教. 庭生活の安定だけであるとは思わなくなり、職業を通じ. 的家族規範がどのように持続、あるいは変容しているの. て自分の素質を発揮して自我発展を実験する方向に変化. かについて文献を中心に分析した。. しつつある。家庭と職業を兼ねようとする女性の出現の. まず一節、現代都市家族形態について述べた。近年の. 背景には、都市での核家族の生活が女性たちの生活を単. 韓国の産業化、及び都市化を伴う少子化、高齢化及び核. 調化し、社会的に疎外していることが指摘されている。. 家族化の進展により、現代では伝統的な家族の形態を維. 実は、結婚後も仕事を続けている女性の増加は、夫婦関. 持することはできなくなってきていることも事実である。. 係にいろいろ影響を及ぼしている。 長点:a,生活費. ここでは家族の変容をまず人口論から検討し、その上で. に役に立つ b,生活水準を高める c,知識と教養の. 現代家族のいくつかの問題を指摘することにする。 なお、. レベルを高める d,自分の才能を発揮できる e,社. これまで韓国社会のなかで家族がどのように捉えられて. 会に役に立つ f,社会的地位を持つので満足感を得る. きたかについてもあわせて検討することにした。韓国の. g, 寂しさをなくす h,主人の出世に手伝える i, 2.

(3) 職業自体で満足を感じる j,体が健康的になるなどで. 三節では、都市という新しい条件下で、自然発生的に. ある。短点:a,家庭生活に疎忽になる b,家庭生活. 生じている親族関係が、 伝統的父系中心の性格から離れ、. の時間が短くなる c,子女教育に専念できない。d,. 妻系を含む親族的性格を持つことについて述べた。これ. 家庭娯楽が減る e,主人の無能を象徴する f,夫婦間. を微視的次元の親族的特性として、これとは異なった次. に小さい葛藤が増える。g,社会的に非難される h,主. 元で新しく都市で形成された宗族組織にも触れた。. 人職場出世に支障がある i,職業活動に専念できない. 四節では伝統的な祖先祭祀:まず人が死に際して複雑. などである。. な「葬礼」が執り行われ、喪を脱してから「葬礼」に転. また、親子関係と役割について検討してみた。現代、. 化していく。この段階から、核家において祭主から数え. 大部分の家族の子女たちは消費生活のなかでもっと活発. て四代祖までの祖先に対して、いわば故人の忌日(命日). 的で、健康に育っている。現代文化の発展とマスコミの. にそれぞれの「忌祭」が挙げられ、また名節には「茶礼」. 影響のなかで、知能の発達が小さいときから早く形成さ. といい、各家で「忌祭」に祀られるべきすべての祖先が. れ、したがって個性的な主張と表現がもっと早くから現. 祀られる。そして、五代祖からは次の段階になり、 「時祭」. われ、男の子と女の子教育に対する差別は消えている。. といい、普通年に一度日を定めて墓において祭祀をあげ. 息子・娘に競争的な社会に合う現実的で、積極的な性格. ることと、現代社会で簡素化された祖先祭祀:高祖・曽. を強調し、期待する。子女に対するこのような期待と支. 祖を父の祭祀時に合わせて祀ったり、母の祭祀を父のそ. えは家庭生活がかつての老父母や年長者の中心から子女. れと一緒に夫婦合祀すること、しだいにより生活に便利. 中心に変わった。そして、父母が子女に対する期待と子. な時間に祭祀を行うもの、むしろ故人が好んだものを供. 女が父母に対する期待も変わっていることを先行調査文. えたほうが良いという考えもあること、故人を偲ぶうえ. 献に基づいて詳しく分析した。結局、父母と子女の関係. に写真に代置されていくことについて述べた。. に対して、父母は尊敬の対象になりながら、距離感が少. 第三章では、一章で述べた伝統的家屋の生活空間と利. ない友愛的な側面が明らかにされた。このような父母子. 用形態、及びその中で展開される伝統的人家族関係が、. 女間関係においても新しい問題が現れている。. 近代化によって登場した都市集合住宅団地の生活空間、. その一つは、子女に対しての高い期待と物質的支えに. 利用形態、また居住空間の周辺の環境と近隣関係におい. よって子どもが父母にたくさんの要求をするようになる。. てどのように持続、変容しているのかを現地調査に基づ. 消費文化の急激な成長がかれらの要求をもっと刺激する. いて述べた。. ので、一般家庭では子女の要求と父母の役割に葛藤と緊. 一節でまず、都市化による住居構造の持続と変容:マ. 張が発生するのである。物質的要求だけではなく、人格. ルからコシルへの変容、アンバンの存続、プオクと食事. 的待遇と自律を早くから主張し、要求してくる。また父. 場の変容、接客様式の変容について詳しく分析した。次. 母の過保護と高い期待に反発し、個人の自由と独立を追. は一章で述べた伝統的な居住空間とその利用形態が都市. 求する。. 化によってどのように持続され、あるいは変容している. もう一つは、子女が性的にもっと早熟するのである。. のかを確かめるため三世帯の居住空間配置と利用形態を. 肉体的発達の早熟とともに、異性交際の要求が早めにな. 一日の日常生活を通じた調査によって明らかにした。空. って、家庭と社会がこれにたいしての積極的な対策が今. 間利用形態は家族によってそれぞれ違うが、特に家族の. までなかった。近年に、学校で性教育を始めたが、子女. 種類とともに差があると思われ、世代別を選んでいる。. たちが性問題を起こす年齢層が徐徐に早めになっている。. 調査対象はソウル市と京幾道の集合住宅団地に住んでい. その頻繁さの程度は大部分の父母と学校当局を当惑させ. る三世代、二世代、一世代の家族である。調査結果、居. ているのである。. 住者の意見としては金氏の家族(三世代)はプオクとタ 3.

(4) ヨンドシルが狭いということ、崔氏家族(二世代)は長. と、近くにあって生活に必要なものが大抵揃うという便. 女次女の部屋が狭い、作り付けの収納空間がもっとほし. 利さにより多くの人がそこへ訪れることからコミュニケ. いということ、李氏家族(一世代)コシルを狭くしても. ーションが生じていた。つまり、商店街付近と移動市が. 衣類だけ保管する部屋がほしいということである。. 人が集まる場と捉えることができ、団地内の住人のコミ. 調査結果をみると、儒教規範による伝統的な間取りは. ュニケーションに大きな影響を与えていることが分かっ. 多く変わっている。しかし、アンバンはオンドルにして. た。. 主婦の部屋になっているのはそのまま存続している。た. 研究結果、韓国の現代の家族は形態面でも、家族価値. だし、伝統家屋で主人の領域であるサランバンとマルが. 意識面でも、旧から新に移っていくつまり、新旧転換の. コシルになり、今は夫婦が一緒にアンバンに就寝するよ. 過度的段階に置かれているといえる。ここで、われわれ. うになっている。プオクと食堂の近代化は男性も台所の. は新旧、二つの家族意識を問題にするとき、新の西欧か. 仕事を手伝えるようになる。また、韓国特有のタヨンド. ら韓国に導入されたいわば近代的家族意識が必ずしも正. シルは洗濯場、物干し場、キムチを漬ける場、普段使わ. 確、或は、旧の世世代代伝達だれてきた伝統的家族意識. ない食器の置き場としてマダンと倉庫の役割を果たして. が必ずしも明確とはいえない。二つともそれぞれいい面. いる。バルコニーはコシルの前室かチャンドクテになっ. と悪い面がある。. ている。. 以上の論究から、居住生活において現代韓国家族は伝. このように、かつての利用形態がそのまま持続してい. 統的文化要素と近代的文化要素との混在状況の中に生き. るのもありながら、形を変えて昔の役割を果たすように. ていると言えるだろう。韓国は、21世期の情報化やグ. 変容しているのもあるし、トイレと浴場みたいに新しく. ローバル化を含む新しい社会潮流の中で、さらに急激な. 取り入れたのもある。現代住宅団地の間取りでは男女有. 社会変化を迎えていくだろう。このような変化が家族生. 別、長幼有序の儒教的家族規範を守り難くなっていると. 活や社会規範に具体的にどのような影響を与えていくの. いえる。. かは、簡単には予測できない。しかし、一つだけ明確に. 二節では伝統的社会での近隣関係とお祭りなどの非日. いえることは、 様々な家族意識の矛盾に苦しみながらも、. 常的に行われる行事が現在の集合住宅団地ではどのよう. 韓国人はそのような社会変化に対応しながら依然として. に行われているかを確かめるため調査を行った。ここで. 家族を中心に据えた生活を送らなければならないという. は一週間の調査を通じて住宅団地内の各地点における住. ことである。. 人間のコミュニケーションの関係を中心に考察した。福. また、様々な国の文化に触れながら、韓国固有の文化. 利施設に関する基準に照らして子どもの遊び場、 老人亭、. 要素を再評価する機会も増えるとも言える。このような. 団地内の商店、住民用運動施設、住民共同施設などが設. 傾向が家族生活や家族関係の基盤に直接な影響を与え、. 置されているのが一般住宅団地の配置である。韓国集合. 家族観がさらに複雑になるのであろう。要するに、家族. 住宅内でのコミュニケーションの特徴は:韓国人は友人. を中心に据えた韓国人の生活と家族観のこのような複雑. をよく家に招くという習慣、韓国の集合住宅に存在する. さとは、様々な新しい社会傾向それらを受け入れ統合し. 商業施設や集合住宅内で開かれる市場などのイベントが. ながら、不断に新しいタイプの家族関係と家族規範を生. 行われことである。調査結果、韓国の集合住宅の外部空. み出していく事が予想される。. 間において、定期的に開かれる移動市ではそのイベント 性、特別性から賑わいが生じ、コミュニケーションが生. 【参考文献】. まれていた。集合住宅内に設置された商業施設では、主. 1、ハウジング・スタディ・グループ 『韓国現代住居. にそのまとまりの中の住人が利用しているという連帯感. 学』 (株)建築知識、 1990年。 4.

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