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大曲市角間川商店街の変遷 と商業活動

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Academic year: 2021

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(1)

大曲市角間川商店街の変遷 と商業活動

道 浩

キーワー ド:大曲市角間川町 商店街 業種構成 商業地理学

Ⅰ は じめに

日本 における商業地域 は

、1 9 6 0

年代 以降のモータ リゼー ションの進展 と

、1 9 7 0

年代以降の郊外立地 を 志向す る大型小売店の急増 によって大 きく変化 した。

大型店 の集客力が中心商店街 の離心 を招 き、零細 な 個人経営店舗 は大幅に減少 した (岩間 ほか

,2 0 0 4 )

大曲市角間川 町 は、雄物川 と横手川 の合流地点 を 有 し、雄物川最大 の河港 と して江戸末期か ら明治後 期にかけて非常 に繁栄 した町である (大曲市

,1 9 9 9 )

そ こで本研究では、大曲市角間川町の中心商店街 を 対象 として、商店街 の業種 の変遷 について検討 した 上で、商店経営が続 け られている理 由を明 らかにす ることを目的 とす る。

角間川町の中心商店街 (以降、角問川商店街 とす る) は、角間川町北端部 に位置 し、北か ら東本町、

西本町、東中上町、西中上町、 中町頭の一部、西上 町の一部か ら構成 され る。米や物資を貯蔵す るため に作 られた倉庫である浜蔵や、雄物川 の舟運で財 を 蓄えた地主 の旧家が現存 し、歴史的な街並 みを残 し ている。角間川商店街 に面す る住宅、店舗 のほとん どが間口の狭 い短冊状 の敷地 を有 している。

Ⅱ 角間川商店街の変遷

1図によって角間川商店街 の業種構成 の変遷を 検討す る。

1 . 1 9 4 4

年頃の業種構成

1 9 4 4

年頃の角間川商店街には、小売業

6 0

店舗、サー ビス業

1

1店舗、飲食

店 5

店舗が立地 していた。小売 業の内訳 は、最寄品小売業

4 7

店舗、買回品小売業

1 2

店舗、 その他小売業

1

店舗であ った。街路全域 にわ たって店舗が連担 し、賑わいをみせていた様子が う かがわれ る。かつての河港 に近接す る商店街北部 に は旅館、 クラブ、飲食店 などが立 ち並んでお り、歓

楽街 の様相 を呈 していた。

2 . 1 9 6 4

年頃の業種構成

1 9 6 4

年頃の角間川商店街には、小売業

6 1

店舗、サー ビス業

1 3

店舗、飲食業

3

店舗が立地 していた。小売 業 の内訳 は、最寄品小売業

5 1

店舗、買回品小売業

9

店舗、 その他小売業

1

店舗であ った

。1 9 4 4

年頃の業 種構成 と比較す ると、最寄品小売業が増加 した一方 で、買回品小売業が減少 している。町丁別 にみると、

店舗が減少 した町丁 と増加 した町丁が混在 していた。

店舗数 に大 きな変化 はないが、店舗 の廃業 と新規 の 出店が多 くみ られた。 また、既存 の店舗 における業 種 の変化 もみ られた。 したが って

、1 9 4 4

年か ら

1 9 6 4

年の期間 は、店舗 の交替が多 くみ られた時期 といえ

る。

3. 1 9 8 4

年頃の業種構成

1 9 8 4

年頃の角間川商店街 には、小売業

4 9

店舗、サー ビス業

1

1店舗、飲食業

2

店舗が立地 していた。小売 業の内訳 は、最寄品小売業

4 0

店舗、買回品小売業

8

店舗、その他小売業

1

店舗であった

。1 9 6 4

年頃の業 種構成 と比較す ると、店舗数 は

1 5

店舗が減少 した。

すべての町丁 において店舗 の減少がみ られ、 とくに 商店街北部 における店舗の減少が顕著である。また、

提灯店、豆腐店、下駄店 など製造販売専門店 の廃業 Jlji多 くみ られた。

J. 2 0 0 4

年の業種構成

2 0 0

!牢の角間川商店街 には、小売業

2 9

店舗、サー ビス業

6

店舗、飲食業

1

店舗が立地 している。小売 菜の内訳 ;ま、最寄品小売業

2 4

店舗、買回品小売業

2

貰葉、 その他小売業

3

店舗 である

。1 9 8 4

年頃 と比較 す ると、店舗数 は

2 4

店舗減少 してお り

、1 9 6 4

年頃か

ら1 9 8

1年項の期間 と同様 に、商店街北部 における店 蕪=)滅 少が顕著である。

Ljつの年次 における業種構成 の変遷か ら、以

‑7‑

Akita University

(2)

a)

1

944年頃

Akita University

(3)

下のことがわか った

。1 9 4 4

年頃 と

2 0 0 4

年の店舗数を 比較す ると、最寄品小売業は

4 7

店舗か ら

2 4

店舗 に 少 した。買回品小売業 は

1 2

店舗か ら

2

店舗に減少 し た。店舗数でみると最寄品店の減少が激 しいが、比 率でみると買回品店の減少率が大 きい。 また、廃業 した店舗 の多 くは住宅 に変化 してお り、街路 には

"しもた屋"が立 ち並んでいる。限 られた商品を扱 う専門店の減少が多 くみ られるのに対 し、雑貨店な ど比較的多様 な商品を扱 う店舗、および和洋菓子店 や鮮魚店など特殊な技術や免許を必要 とする業種 は 残存 している。

河港 に近接 した商店街北部が歓楽街 と飲食店街、

さらには商店街の中心 としての機能を果た していた が、年を経 るにつれてその地位 は失われて しまった。

角間川商店街における商業活動

2

図は角間川商店街 における小売店の商業活動 を示 した図である。

1

. 職住関係 と家族 ・従業者数

角問川商店街 における小売店 は

、2

店舗 を除いた

2 7

店舗が職住一致である。店舗の多 くが建物の一階 街路側 に店舗を構え、一階奥あるいは二階に居住 ス ペースが存在する。 またほとんどの店舗が家族経営 であ り

、1 ‑3

名 の ごく少人数で経営が行 われてい る。

2 .

後継者問題 と経営者の意識

後継者がいると答えた店舗 は

6

店舗のみで、それ 以外の店舗 はいない、 または不明 と答えた。後継者 がいると答えた店舗 は、経営 に積極的に取 り組んで いる傾向がみ られた。経営者の年齢をみると全体的 に高齢化が進んだ状態 にあ り、 自らの代で廃業を考 えている経営者 も存在す る。商店経営 における収入 のみでは生計を維持で きない店舗 も存在 し、年金収 入 に頼 っているという現状 もみ られた。

たとえば、店舗番号

2 6

番の経営者 は農家 に育 った ため、商店経営の知識や経験が全 くない状態か ら、

1 9 6 4

年 に駄菓子店を開業 した。現在、商店経営にお

.

#種分類! 主な甲奴品 開 業 年 次 p権営肴の年齢 家 庭 .徒 費 者 数

1 8 6 l 0 1 8 l 8 0 1

各店舗の開集 .

9 . 0

0

1 9 l 2 0

菜種の変化 .

1 9 4 l 0

移転の鮮細

1 9 6 l 9 1 9 L 8 0 2 0 l

0

年)

0

1

膏 果

1 860? 7 0

【◎ 】 鮮魚

甘具

2

鮮 魚 .加 工 食 品

1 868 65 [

◎ ○ ]

ー 3

食 料 品 、雑 誌

1 8 7 0 ‑8 0 90 ◎/

[● ○ 】/ 0 0 【■ ■Ⅰ ■】 鍛冶屋

酒△一一一一一

‑ CVS 4

ー 8 7 0‑8 0 75 【 ◎○

】/ ● 0/ ●

5

. クリーニ ング

1 8 7 0‑80 60 ○/●

◎ 】/ ● 栄 .撫料 ▲ クリーニング

6

鮮 魚 、加 工 食 品

ー 885

J>

【 ◎0/○

7

ギフト

1 89 0? 7 0代 ◎0/ 【 ◎○

】/ ● 雑貨

̀

ギフ ト

8

̲ イ 和 洋 嘉 子

1 8○27 8ー [ ◎○/●○】/0 9

和 黒 子 1 907 ? 74 ◎0]

1 0

婦 人 服 1 91 0? 87 ◎0/ [ ●○】/0

雑貨 .燃料▲‑ 衣料品

ll

介 護 用 品

1 920? 5 0 【 ○/◎】●

雑貨

̀

介護用品

1 2

精 肉

1 925 67

◎ ○ ]/ ●

1 3

エ+ ー‑ ‑ヽ■‑ユ′

柑3 0 50

【◎

0

1/ ○ El

1 4

洋嘉子

1 940? 89

◎ / 【● ○ / ● ] 菓子 ̀

1 5

FEf=)

1 9 41 59 r O/○】◎

稚苗

1 8

1 9 48 63 ○/【 ◎○】 /●●●

1 7 オ

ソリン

1 9 48 36 ○ 【 ◎/●】○ 【■■■

■■ ■ ■】 燃料▲ガソリン

1 8 ウ + オ 1 9 49 7 0 ○/【 ◎01

̀

1 9 オ 1 9 49 6 0

● ○/ 【◎ ○ 】/ ● 【暮 】 電化製品▲‑叫

2 0 ウ

駄 美 子 、

1 952 5 0

0

/

0

1◎ / ● ● 駄菓子 ̀

21 ■

オ ̀ JZE物

1 95 5? 68

[◎ ○ ] 履物 ▲

2 2

青 果

1 95 9 66 ●[ ◎/●0]/0

青臭 ▲

23

金 物

1 96 0

?

[ ◎○/●】

金物▲

2 4

雑 貨 、生 花

1 9 61 73 [ ◎○】/

##

2 5

金 物

1 96 S 71 ◎【 ○]

金物 ▲

26

駄嘉子

1 96 4 68 [ ◎1

0 駄菓子 ̀.

27

自転 車 、バ イク

1 97 2 5 0代 【 ◎

/ ● 】 自転車 ̀

28

電 化 製 品

ー 97 2 55

[◎ / ● ] 電化氷晶▲

ア :生鮮食料品小売業 エ :衣料品小売業 ◎ ;経営者

イ :菓子小売業 オ :その他小売業 ● :男性

ウ :飲食料品小売業 カ :その他 :女性

■ :従業員

▲ 二言書の開業 こ :美星の変化 T :芸事の移転

クリーニング

2

角間川商店街 における小売店の商業活動

( 2 0 0 4

年) 注 1

)5

、2 9

番 は以前小売店であったため、調査対象 とした=

2 ) [

]内は経営 に携わる人物、/ は世代の違 いを表す

( 2 0 0 4

年聞き取 り調査 より作成)

‑ 9‑

Akita University

(4)

ける収入のみでは生計を維持できないため、年金収 入 に頼 っている状態である。 しか し、 まれに来店す る顧客のため、 また

、4 0

年以上続 けてきた商店経営 に強い愛着 を もっているため、「体が動 くうちは廃 業す るつ もりはない」 とい う。

店舗番号

1 3

番の店舗 は

、1 9 8 7

年 に当時の経営者が 死去 したため、 その妻が経営者 とな り青果店 に業種 を変えた。現在、子 どもは実家を離れて働 いている ため、経営者 は店舗奥の居住 スペースに一人で暮 ら している。 聞 き取 りによれば、「成 り行 きで経営 を 続 けている」状態 にあるが、来店 した顧客 と会話を す ることによって、「生活 に張 りが出るとともに、 ボケ防止 にもなる」 とい う。

3 .

周辺住民 とのつなが り

角間川商店街 における店舗では、新規の客が来店 して商品を購入 してい くことはごくまれで、近隣に 居住する顔 な じみの顧客が大部分を占める。そのた め商店経営以外の普段の交流が非常 に重要である。

来店 した顧客 との会話や、修理などで訪れたお宅で の会話を楽 しむ経営者 も多 くいることがわか った。

また、周辺住民 との会話を楽 しむためのスペースを 設置 している店舗 も存在 し、商店経営以外 における 人 と人 との強い結 びっさが感 じられた。

たとえば、店舗番号6番の経営者 は、以前 には関 東地方のデパー トに勤務 していたが、実家 に戻 りギ フ トショップを継 いでいる。 しか し、デパー ト勤務 時に培 った経営戦略やノウ‑ ウが、角間川商店街で はまった く役 に立 たず、「いかに日常的な人 とのつ なが りを大事 にす るかということが重要である」 と いう。

店舗番号

2 8

番の店舗の経営者 は、以前 には秋田市 の電器店 に勤務 していたが

、1 9 7

2年 に実家のある角 間川町 に戻 り電器店 を開業 した。 経営者 の長男 は

2 0 0 0

年 に横浜市か ら実家 に戻 り、電器店を手伝 って いる。現在では販売よりも修理が大 きな割合を占め、

顧客の多 くは角間川町内の住民である。 また、修理 の依頼を受 けて訪問 したお宅で、お茶を飲みなが ら 会話することを楽 しいと感 じている。

店舗番号

1 8

番の店舗 は

、1 9 4 9

年 に雑貨店 として開 業 した。現在 は雑貨以外 に同一 メーカーの健康食品 および化粧品を扱 っている。聞 き取 りに訪れた際に、

店舗の端 に椅子 とテーブルが設置 されてお り、そ こ

で会話を交わす年配の女性たちの姿が見受けられた。

おわ リに

角問川商店街 において廃業 した店舗の多 くは、住 宅に変化 している。 したが って商店街の店舗数 は大 きく減少 しているものの、世帯数 は維持 されてきた。

角間川商店街 における店舗 は、 ほとんどが自己所有 地で経営 を行 っている。そのため家賃などの固定経 費を捻出する必要がな く、商店収入のみで生計を維 持できない場合で も、年金収入 などによって廃業を 免れ経営を続 けている事例が多 い。 また何十年 と続 けて きた商店 に対 して、強い愛着を感 じている経営 者の意識 も明 らかになった。

角間川商店街 は伝統的商店街であるため、 とくに 高齢者世代 において住民同士のつなが りが強い。同 商店街においてはほとんどが顔な じみの顧客である。

そのような顧客 との会話やふれあいが大 きな楽 しみ となっている経営者が多 く存在 した。廃業す ること によって、その関係が絶 たれて しまうのではないか という不安 も、商店経営を続けることに大 きく関わっ ている。

角問川町には、観光資源 とな り得 る旧家の黒壁や 浜蔵が現存 している。商店経営者の中には角間川町 を歴史の町 として再生 しようという動 きがあり、今 後の課題 となっている。

本稿の作成 にあた り、秋田大学教育文化学部の松 村公明先生か ら終始貴重なご助言 とご指導を頂 きま した。資料収集および聞 き取 り調査では、大曲市商 工会議所南部地区協議会の方々、角間川商店街各商 店の皆様か ら温かいご協力を頂 きま した。末筆なが

らここに深 く感謝申 し上 げます。

岩間信之 ・佐々木縁 ・大橋智美 ・駒木伸比古 ・米滞 郁人

・F.

ア マ デ ィ ネ ジ ャ ド

( 2 0 0 4 )

:古河市 に おける商業構造の再編 とその要因.地域調査報告,

2 6

,41 ‑ 7 4.

大曲市

( 1 9 9 9 ):

『大曲市史 第二巻 通史編』大曲

,9 6 2 P.

‑ 1 0‑

Akita University

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