新潟県の郷土食に関する研究(第4報)*
行事と行事食(その3)
本間伸夫,渋谷歌子,目黒香代,佐藤恵美子,石原和夫
(1979年1月16日 受理) p
Foods and Meals in Niigata Prefecture (IV)
Year's Regular Functions and Foods Prepared for the Functions (3)
Nobuo Honma, Utako Shibuya, Kayo Meguro, Emiko Sato, Kazuo Ishihara
緒 言
前報1・2)において新潟県下における年間行事とその行事に伴なう特別食(行事食)について報告し たが,その特別食の入手方法についても同時に調査したので,結果をまとめて報告する。
調 査 方 法
1)調 査事項
前報1・2)において調査した年間行事,冠婚葬祭とそれに供する食品 (特別食・行事食……穀類食品 に限定)の種類に加えて,それら食品の入手方法を調査した。調査内容は第1表に示した。
2) 調査方法,その他
すぺて前報1・2)と同時に行なったもので,その詳細は前報1)に記載。
結 果 お よ び 考 察
調査結果をまとめて,第2,3,4表に示した。
第2表に食品別の入手方法を示したが,ほとんどの食品は大部分が自家製である。市販されていな いもの,或いはかなり特殊なもの,例えば粥類,たいごろう,けんさん焼きは100%自家製である。
その他の食品(食品番号28)も特殊なものばかりであるためか100%自家製である。
逆に購入が普通であるのが菓子類であって,その行事との関連をみるとデコレーションケーキが主
*前報は文献2)
一138一 県立新潟女子短期大学研究紀要 第16集 1979
第1表アンケート調査カード.
特別食の欄に該当するものがありましたら,下記の特別食の番号と入手方法についての記号を記入 して下さい。
行 事・祭 り 匿別酬 行 事・祭 り 1特別食
1/1〜3 正 1/7 七
月草
運 動 会
例1/1〜3 正
月 9一イ
19一ロ
特 別 食
笹だんご(だんごまき)
ちまき(まきを含む)
よもぎ(草)だんご
菓子(ケーキなど)
そ の 他 入 手方 法
イロハ 家で作る
市販品を買う 人から貰う
以前作ったが今は買う
ホヘト 家で作る場合と買う場合とがある
依託する
そ の 他
体であるが手造り派もかなりいる。まんじゅうも市販品購入が多い。これはまんじゅうが主として冠 婚葬祭に用いられ2),接客用である㊧めと考えられる。
市販品購入がかなり多いのは菓子類の他に生ずし,そば,うどん・素麺である。生ずしについて は,上越地方ではかなり多いが,自家製の割合もまた高い。押しずしも大部分が上越地方であり・そ のほとんどが自家製である。上越地方は魚を用いるすしについての高い技術の伝承を窺い知る事がで
きる。
だんご類は圧倒的に自家製であるものの,食する習慣が強く,かつ市販もされているものは市販品 購入に一部の家庭が移り変わるものと考えられる。笹だんご,ちまきにその傾向をみることができる。
特殊なだんごでは当然の事ながら自家製が大部分である。白玉だんごの市販品は不思議であるが・何 でも売られている時代であるので,売られているのかも知れない。
餅類も圧倒的に自家製であるが,このかなりの道具や技術を必要とする餅造りに自家製の割合が依 然として高いのは,家庭用餅つき機が普及したためと考えられる。しかし餅類の場合も市販品購入や 依託加工がかなりあり,今後この方法に移り変わるものと考えられる。特に都市部ではこの傾向示強 いものと推察されるが,現に白餅についての新潟地区のデータを抜き出してみると,自家製31・6%・
市販品購入36.8%,貰う31.6%,他はなし,となっている。さらに正月の餅について・新潟地耳の場
合をみると,自家製33、 3%,市販品購入25.O%,貰う41.7%となっており,何処から貰うのであろう
第2表 特別食入手方法とその割合*一特別食別
\入手方法
.品
1 笹 だ ん ご 2 ち ま き 3 よもぎだんご 4 あんだんご 5 かやくだんご 6 白玉だんご
7 白 だ ん ご
8 たいごろう
9 白 餅 10 あ ん 餅 11 あられ・かた餅 12J草 餅 13 笹 、 餅 14 まんじゅ,う 15 赤 飯
ω自 家 製 回市販品購入
88 71.0 105 84.7 23 92.0 50 100
4 80.
7
96.
0 6 2
131
97. 8
4 100 600 89.2 185
93.
37
84.1
52
89.
49
98.0
2 38.
47
96.
{ノ9
貰 bつ 囚依託加工 困ωまたは回 同 以前ω︑現在回
01占 −凸 ゜ 8 7・7・10 ﹁0 4 681810 4 0 4 −占ハδ −凸ΩU −占 ハU
36 5.4 4 02.0 4 9.1 1 71.7
6 41 861.2 8 8 01.6
13 10.5
8 6.5
1 20.0 7
5.7
3
2,4
96PO9=b
りβ −占 ω自 家 製
93151325 1 0 2 3 703513 1 1 2 93601332 1° 3 2 5 9一4 α 9翻4 α 8のO L
16 17 18 19 20 21 22 23
24 12
1,8
25 26 27 28
わ飯餅しりしき粥粥ば麺類他 た な 焼 素 こり魍ず響轡見草函子の お変油生の押け小七そう菓そ 全 回市販品購入 囚依託加工 ㈱ωまたは回 同 以前ω︑現在回 ㈲貰 bつ
87 90.6 120 99.2 327 95.6
40
63.5 246 96,1 44 93.6
9 100 73
9臼−占 2 り臼ρ0 0 2U4 4ρ0噌⊥−占 −轟 2
り自−凸 2 nδQσ−占ρ0 0 1凸 001 3
9釦−占 2 の00︾ 0 ワ●1 2 −轟−← 2
−占只U O ρ04 1占 ゜ 5 2 ρ00δ −占−占 9醒 9臼
100 54 100 62 46.6 44 65.7 22 11.1 25・
100
3.061
84.6 61 45.9 20 29.9 153 77.3
371 10,3
PO81凸PO ∩0 1 Qげρ0 1凸 ゜ 9
﹃08 1凸FO
亀δ −凸
■−PO 40 L
2
り800 1占 ゜ 0
0﹃0り ρ0 ° 1
7嗣∩6 4 ° 1
n6ρ0 ︻0 ° 1
*上段:特別食数,下段特別食数×100/特別食数合計(特別食ごと),空欄は数値0。
か。一般に特別食の場合,貰うという場合がかなりあり,お互い贈り合って年中行事を祝い合うとい う意味で楽しい習慣かも知れない。
おはぎ・ぼた餅も市販品購入がかなり認められる。日常生活で食べるのではなく,行事のために食 べるのであり,真の餅と違って比較的容易に作れるのであるから,あまり手作りが減らない事が期待
される。
赤飯,おこわについても同様の傾向が認められるので,おはぎ・ぼた餅と同じ事が期待される。生
活にリズムをつけるために季節おりおりの行事を行い,その行事を手作りの特別食で祝うという事は
人間生活を豊かにするのではなかろうか。
一140一 県立新潟女子短期大学研究紀要 第16集 1979
第3表特別食入手方法の割合*一行事別
入手方法 1イ1 回 の
←} 困 囚 入手方法
{イ1 {・)
伺 国 ㈲ 囚
自
市 貰
以
{イ1依 自
市 貰
以 ω 依
一M一 幽層●
販
勘 ま 託 販
嵩 ま
家 品 託
、
た
家 品
、
た
行 事 製 購入 う 現在回 は︷・︸ 加工
行 事 製
購入 う 現在1ロ︸ は回 加工 ーム﹁占 ﹂
9一ハ6ウ一7°ームハ0 1占 −占 0 7664 ︒313538 1轟゜ ° ° ° ° 0 5 2 3 2
1
りβ0ソ エ
噌よハリ﹁占の0 0 4 1 ームリ0
5
4624 1911261335 3 1 0 1 1 1 3 4凸FO 3ワ. 2︑ L QU4の
a
1151 492338 2 3 2 2 2 −占ハδ α 講6︒聞6鯛4如5纏囎㎜遜23脳6恥 超鵡轟轟6嘱鷲鷺蜥超轟3︒囎鷲鰯噸枷76騙蟹m潰99踊蜘 7.ハリΩUρ075Qり ー° °
°
0 のり 3
1
噌⊥−占 工
蜘盆朋禦りげ飛え講信りりり祝祝式事会他 州ら磁飢送上び迎師財晦祭祭祭婚産 動の はう十彼か神刈え神大ク大春夏秋結出葬法運そ
22 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7 Q8 Q9 R0 R1 R2 R3 R4 R5 R6 R7 R8 R9 S0 S1 S2
4ワ8
L
37 工 −占0 工 −占4
1︐ ρ〇一b噸←0げ 4鼻のδ 2︒0. 2. り臼ワ8
4
nδ0りnδPO
噌⊥ 哩← 0000
L
37191018 8Qり2114 ︐轟δ −凸 −凸 1
−占ρ0 α −ゐ4U9臼0 ハU 噌⊥
噌よ農U ¶よ゜
4
−凸ΩU
1. ρ0ワ.り臼噌1 1°
°
7屡 ーム ー 53196507296769 185610 1 1 4 1 40 3928 2︐ 2・15・ ユ よ 60︒755︐5n 2ρ035 1占゜
°
ワ● − ﹂ーハUハ6PO 1よ ¶← 鵡超義鵡訂兜96脳謡8鷲竪鰯蜘B響蜘講謂調㎜蜘罷u架囎ユ ーム0り
2
12345678910U1213141516171819⑳班
*上段二特劉食貌下段下段;特別食数×100/特別食数合計(各特別食ごと),空欄は数値0
そば,うどん・素麺は市販品購入の割合がかなり高い方である。うどん・素麺の市販品購入の割合 が高いのは若干不思議であり・材料としての麺そのもPの購入の数値が一部混じたのではないかと考 えられる。
行事別についての検討はあまり意味はないが,第3表の如くまとめる事ができる。特徴あるのは年 中行事ではクリスマス,大晦日であり,ともに市販品購入の割合がとび抜けて高い。これは市販品購 入率の高いデコレーションケーキとそばが主要なる行事食であるためである。
また冠婚葬祭のうち前三者の市販品購入率が高いが,これはまんじゅうの割合が高いためと考えら
れる。
地域別についてみると,新潟地区が特異的であり,自家製以外の項が多くなっている(第4表)。
この事から農家,非農家の違いがでるものと予想されるが,調査対象家庭の職業を調査してないの で,それにより分ける事はできない。幸いにして生活改善普及員による調査では,対象が農家(専 業, 兼業は別にして)と考えられるので,それにより二群にわけて算出し第5表に示した。農家とそ れ以外の職業家庭を含む一般よりも,農家を主とする生改の方が自家製の割合が高い。原料その他が 身近かにある事からすれば当然の事と考えられるが,時間的余裕のある限り,この自家製を維持して
行ってもらいたいものである。
第4表特別食入手方法とその割合*一地域別
地 域
入手方法
上
越
中
越 西
中 東 魚
メ U 長 南
計 計
頸 頸 頸
召〜
羽 岡
﹂し﹂著薪 ω自 家
製
回市販品購入
{ノ9貰 ﹂つ 囚依託加 工 ㈲ωまたは回 国 以前ω︑現在回 9842383842437186 ° °1° °1° ° °2° 50 57828543 1占 0 り臼 00
ームハUO9 り臼゜
1
−占09
1
11凸 ρ0ハり 0
り釦46000り ゜噌⊥° 2
0
706133695661205581 °4°1°6°3°1°2°2°9° 0リ ワ● ワ. 4 0σ 6δ 0リ ウ曝 ∩6 1凸
−凸627014448936656134 4°4°6°5°1°8°8°3°2° 54810683610201995 RU nO O﹃ ワ● ΩU 8 8 0り R︾
1
0.2
1
0.1
2
0.5
2
0.2
下
越
佐
粟
西 蒲
中 束 蒲 北
岩 新 言十
蒲 船 潟 度 ︑≧ 島
{イ1
自 家 製
100 62.9 296 77.3 277 85.5 158 88.8 100 62,1 931 77.3
431 94.1 122 91.0
回市販品購入
45 28.3 51 13.3 30
9.3
18
10.1
28 17.4 172 14.3
24
5. 2
11 8.2
{・9
貰 ﹂つ
3 1.9
16
4.2
5 1.5
2 1.1
20 12.4 46
3.8
囚依託加 工 困ωまたは回
同 以前ω︑現在回
2 6 1.3 3,8 9 11
2.4 2.9 6 1.9 6009 1 ρ00り ー 09ワ■ 0 4﹃0 2 ワ■9日 9θ ゜ 2
Qリハリ 5 0ワ● り幽 ゜ 1 −占り白 α り畠﹂q O
ーニワ● 0
*上段:特別食数,下段:特別食数×100/特別食数合計(地域ごと),空欄は数値0。
一142・一 県立新潟女子短期大学研究紀要 第16集 1979
第5表 特別食入手方法とその割合※一調査対象別
入手方法
︵イ1
{司
{ノ9←) 困
自 囚
市 貰 竪
(イ1