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経鼻免疫によるサーファクチンのアジュバント効果の検討

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Academic year: 2021

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授与番号 甲第 1638 号

論文内容の要旨

経鼻免疫によるサーファクチンのアジュバント効果の検討

(竹下亮輔,吉野直人,佐々木裕,松川直美,利部正裕,佐藤成大,杉山 徹)

岩手医学雑誌 66巻,2号,2014年

6

月掲載予定

Ⅰ.研究目的

粘膜ワクチンの強力なアジュバント(免疫増強物質)にはコレラ毒素(CT)や大腸菌易 熱性毒素(LT)などがある.しかし,インフルエンザワクチンの粘膜アジュバントとして LT を用いた臨床試験において顔面神経麻痺が報告されたため,その使用が中止された.こ のため,有効で安全な新規粘膜アジュバントの開発が期待されている.

我々は抗菌薬のポリミキシン B (PMB)とコリスチン(CL)が粘膜免疫と全身性免疫の獲 得に有効な粘膜アジュバンドであることを報告した.これらのアジュバント活性には,疎 水性の脂肪鎖と親水性の環状ポリペプチドからなる両親媒性構造が関与していることが 明らかになっている.

今回我々は PMB に類似した分子構造を持ち, Bacillus subtilis が産生するサーファク チン(SF)に着目した. SF は医薬品や化粧品に使用され,臨床応用するうえで抗菌薬より も優位と考えられるため,本研究では SF の粘膜アジュバント活性を検討した.

Ⅱ.研究対象および方法

C57BL/6 マウスに卵白アルブミン(OVA)と種々の濃度の SF (各 n=8)とを1週間隔で 3 回経鼻投与し,最終投与から 1 週後に検体を採取した.検体のうち,粘膜分泌液(鼻腔洗 浄液,唾液,便抽出液,腟洗浄液)と血漿では OVA 特異的 IgG および IgA 抗体を ELISA 法 で測定し,粘膜関連組織(鼻咽頭粘膜関連組織,鼻腔粘膜固有層,腸管粘膜固有層,腸間 膜リンパ節, 唾液腺など) と脾臓では OVA 特異的抗体産生細胞数を ELISPOT 法で計測した.

PMB が肥満細胞の脱顆粒作用を有することから,マウス肥満細胞株(MC/9)を用いて SF 添加後に脱顆粒の指標である β-hexosaminidase の放出試験を行い,放出されたケミカル メディエーター(ヒスタミン,LTB

4

,PGD

2

)を ELISA 法で測定した.肥満細胞と他の免疫 細胞との関係を評価するために, MC/9 を用いて SF 添加後にサイトカイン(TNF-α, IL-4,

CCL5)の遺伝子発現をリアルタイム RT-PCR 法で測定した.ワクチンアジュバントの副反

応は血中 IgE 抗体を測定して検討した.

Ⅲ.研究結果

SF 投与群では OVA 単独投与群に比べて,粘膜分泌液中と血漿中の OVA 特異的抗体価が用 量依存的に上昇した. 粘膜関連組織と脾臓でも OVA 特異的抗体産生細胞が誘導された. MC/9 では SF 添加により β-hexosaminidase の放出が確認され,培養上清中にケミカルメディ エーター(ヒスタミン, LTB

4

, PGD

2

)が SF の用量に依存して検出された.また,サイトカ イン遺伝子(TNF-α,IL-4,CCL5)は SF 添加により有意な高発現を示した.血中 IgE 抗

1

(2)

体は,SF 投与群,OVA 単独投与群とも有意な上昇を認めなかった.

Ⅳ.結 語

本研究により SF の粘膜アジュバント活性が確認され,その機序として肥満細胞の活性 化による可能性が示唆された.また,種々のケミカルメディエーターの放出とサイトカイ ン遺伝子の高発現が確認されたことで,アジュバント作用は肥満細胞と自然免疫細胞やリ ンパ球とが関わって発揮されたものと考えられた.さらに, SF 投与による IgE 抗体の上昇 が認められなかったことから,有効で安全な粘膜ワクチンの新規アジュバントとして,SF による粘膜免疫法の開発が期待される.

2

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論文審査の結果の要旨

論文診査担当者

主査 教 授 千田 勝一(小児科学講座)

副査 准教授 竹内 聡(産婦人科学講座)

副査 教 授 菅井 有(病理学講座:分子診断病理学分野)

感染症・アレルギー・癌の主要発生部位は呼吸器や消化器などの粘膜組織であることか ら,粘膜免疫システムを制御する「粘膜ワクチン」の開発が行われている.しかし,粘膜 ワクチンを臨床応用するには,有効で安全なアジュバントの導入が欠かせない.本研究で は,枯草菌が産生する表面活性物質のサーファクチンに着目し,これをアジュバントとし て卵白アルブミンに対する免疫誘導能をマウスに経鼻投与することで検証した.この結果,

サーファクチン投与群では粘膜免疫と全身性免疫が誘導された.一方,IgE抗体の上昇は 認められなかった.これはサーファクチンのアジュバント効果を示した初めての論文であ る.

本論文は,粘膜ワクチンの新規アジュバントとして,サーファクチンの応用が有望であ ることを示しており,学位に値する.

試験・試問の結果の要旨

サーファクチンに着目した理由,サーファクチンの構造と機能,免疫系の発達と分化,

対象とする粘膜ワクチンなどについて試問し,いずれも適切な解答を得た.学位に値する 学識があることを認めた.

参考論文

1)Polymyxins as novel and safe mucosal adjuvants to induce humoral immune responses in mice

(新規粘膜アジュバントとしてのポリミキシンの検討)

(吉野直人,他 6 名と共著)

PLoS ONE 8 巻,4 号(2013) :e61643.

2)婦人科がんに対する新規腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス治療の検証

(三浦雄吉,他 7 名と共著)

岩手医学雑誌 65 巻,5 号(2013) :p293-305.

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参照

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