家(上)
その他のタイトル Lengthening of Treasury Debt Maturities and New Investors in Long‑Term Bonds (I)
著者 池島 正興
雑誌名 關西大學商學論集
巻 54
号 1
ページ 1‑13
発行年 2009‑04‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/788
関西大学商学論集 第54巻第1号 (2009年4月)
累積国債の満期構成の長期化と新たな 長期国債投資家(上)
はじめに
目 次 はじめに
I 長期国債投資と「その他」投資家 I
I 「その他」投資家の検証 皿 長期国債投資家としての年金基金
w ミューチュアル・ファンドと長期国債投資
池 島 正 興
v ミューチュアル・ファンドの成長と年金基金(以下,次号)
VI 年金基金の成長とポートフォリオの変化 VIl 年金基金と長期国債投資
おわりに
アメリカでは財務省は1976年から累積市場性国債の満期構成の長期化政策を遂行し,その結 果,それの長期化は80年代を通しても進展した。ようや<,50年代からの財務省の国債管理政 策の主要課題が達成されることとなったのである。
しかし.そうした課題の達成の起点が財務省のその長期化政策の採用にあるとしても.その 政策に基づき.より大規模に発行される長期国債はその大規模発行に照応する需要が存在して こそ安定的に一般投資家により消化されえるのである。それゆえにまた,そうした需要=安定 的消化があってこそ.累積市場性国債の満期構成の長期化も現実には可能にされた.と言える。
そして.たとえば.長期国債の大規模発行が一因となり長期信用市場でクラウデイング・ア ウトが顕在化した1979 82年の時期でも,国債の需要側たる投資家からのその政策,すなわち.
大規模な長期国債の発行への支持や要求が存在した.ことは既に考察した通りであるI)o
そもそも, 1976年からの財務省の,その長期化政策の採用や継続的展開は.以前に比しての 長期国債への需要の増大を前提とするのであり.その前提条件が存在してこそ,累積市場性国 債の満期構成の長期化も現実には進展できたと考えることができるのである。
1)池島正興「累積国債の満期構成の長期化とクラウデイング・アウト」『関西大学商学論集』第53巻第6号, 2009年2月, 25‑40ページを参照。
それでは,そうした長期国債への需要の増大はなぜ生じたのであろうか,また, どのような 投資家が長期国債への増大した需要の担い手として登場してきたのであろうか。
これらの問題を,累積市場性国債の満期構成が短期化から長期化に反転し,その長期化が進 展した,すなわち,その満期構成の視点からの,累積市場性国債の現代保有構造の形成期とも 言える, 1970年代後半から80年代に焦点を合わせつつ,考察するのが小論の課題である。
I.長期国債投資と「その他」投資家
累積市場性国債の満期構成が長期化へ反転していくのは1976年からであり,その長期化は80 年代を通して進展していった。また, FederalReserve Bulletinでの市場性国債の残存満期・保 有者別データからは82年7月までの.その区分に基づく市場性国債の累積状況を把握すること が可能である。そこでそのデータを利用しつつ. 1975年末〜82年7月の長期国債の保有構造を 考察し.長期国債発行の受け皿となった投資家をまずは析出していくことにする。
表ー 1はその期間での残存満期の5年超〜10年と10年超の領域での市場性国債の保有者別の 増減を示している。
表ー1 市場性国債保有の増減, 1975年末〜82年7月 (単位:百万ドル.%)
全保有者 連邦政府 連邦準備 一般投資 商業銀行 相互貯蓄 保険会社 非金融 貯蓄貸付 州・地方 その他 機関・信銀行 家 銀行 法人 組合 政府
託勘定
満期5年超 48,195 ‑2,504 4,367 46,332 ‑910 ‑249 1,287 105 39 2,103 43,958 10年 (100.0) (‑5.2) (9.1) (96.1) (‑1.9) (‑0.5) (2.7) (0.2) (0.1) (4.4) (91.2) 満期10年超 67,421 ‑991 12,725 55,636 2,183 ‑12 572 714 21 6,423 45,639 (100.0) (‑1.5) (18.9) (82.5) (3.2) (0.0) (0.8) (1.1) (0.0) (9.5) (67.7)
(出所) FederalReserve Bulletin, December 1976, p.A35; October 1982, p.A33より作成。
その表からまず確認できるのは,その期間において,全保有者レベルでは残存満期の5年超 10年の国債は481億9,500万ドル,その10年超の国債は674億2,100万 ド ル 増 大 し て い る が そ れらの増大は連邦政府機関・信託勘定や連邦準備銀行の公的機関ではなく, もっぱら一般投資 家の保有の増大分を反映していることである。全保有者レベルでの,残存満期5年超〜10年の 国債の増大分の96.1%が,また残存満期10年超の国債の増大分の82.5%が一般投資家の保有の 増大分により説明される。
長期国債の発行の大規模化は残存満期の5年超〜10年の領域で,そしてさらに大きな規模で,
10年超の領域で国債の残高を増大させているが,一般投資家はその増大分の圧倒的大部分を吸 収しているのである。
それでは同上期間において一般投資家の中でも,一体どのような投資家が残存満期の5年超 10年および10年超の国債の保有を増大させたのであろうか。
累積国債の満期構成の長期化と新たな長期国債投資家(上) (池島) 3
表ー 1を見てみよう。残存満期5年超〜10年の国債では,それの全保有者レベルの増大分の 91.2%は「その他」投資家の439億5,800万ドルの保有増大分によって説明されるのが分かる。「そ の他」投資家に次ぐ規模で.その国債の保有を増大させた投資家は州・地方政府である。州・
地方政府は全体のその国債の増大分の4.4%に相当する21億300万ドルの規模で保有を増大させ ている。
残存満期10年超の国債でも.「その他」投資家が最大規模で保有を増大させているのが分かる。
「その他」投資家は残存満期5年超〜10年の国債の保有増を上回る, 456億ドル3,900万ドルの 規模で保有を増大させている。その増大分は全保有者レベルの増大分の67.7%を説明する。「そ の他」投資家に次ぐ規模で.その国債の保有を増大させたのは,これまた,残存満期5年超〜
10年の国債の場合と同様に.州・地方政府である。州・地方政府は残存満期10年超の国債の保 有を64億ドル2,300万ドルと.残存満期5年超〜10年の国債のそれを3倍ほど上回る規模で増 大させている。それは全保有者レベルでの増大分の9.5%を説明する。「その他」投資家と州・
地方政府とを併せれば,それらの保有増大分は全保有者レベルの増大分の8割近くを説明する ことになる。
1976年からの累積市場性国債の満期構成の長期化に照応しつつ,長期の国債への投資を積極 的に拡大してきたのは「その他」投資家であり.それに次ぐのは州・地方政府であることが確 認できた。
II. 「その他」投資家の検証
その「その他」投資家については. FederalReserve Bulletinの注記では「『その他全て』とは.
財務省のサーベイでは報告されていない全ての人々の保有物を含む.表では個々には記載され ていない残余の投資家グループである」2)としか記されていない。また表ー 1に見るように.
市場性国債の残存満期・保有者別データで保有者=投資家としてピックアップされているのは.
「連邦政府機関・信託勘定」,「連邦準備銀行」,「商業銀行」,「相互貯蓄銀行」.「保険会社」.「非 金融法人」.「貯蓄貸付組合」.「州・地方政府」である。
そもそもそこに保有者としてピックアップされていない以上,それら以外の保有者が保有す る市場性国債の状況を残存満期区分を加味して把握することは極めて困難であることが予測さ れる。このことを前提とした上で,表ー 1での「その他」投資家に含まれるであろう,主要な 長期国債保有者は具体的にどのような投資家であるのか.できる限りの検討を加えつつその析 出を試みよう。
まずは.その国債保有額(財務省が発行する市場性および非市場性の国債)の大きさからし
2) Federal Reserve Bulletin, October 1982, p.A33.
て,取り上げ検討しなければならないのは国債投資家としての個人と外国・国際機関であろ う。以下,検討していこう。
個人について見てみるならば,それはたとえば1975年では総計913億ドルの国債を保有して いる。しかし表ー 2に 示 さ れ る よ う に そ の 中 の673億ドルは貯蓄債券の保有分であり,残余 の240億ドルが「その他国債」の保有分である。原資料でそのように「その他国債」で表現さ れている国債は財務省が発行する証券であり,かつ個人向けに発行される非市場性国債である 貯蓄債券以外のものとして個人が保有する国債であるから,具体的には市場性国債を意味する
と考えることができる。
表ー2 個人と外国・国際機関の国債保有, 1975 85年 (単位:10億ドル,%)
1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 個人 貯蓄債券 67.3 72.0 76.7 80.7 79.9 72.5 68.0 68.3 71.5 74.5 79.8
その他国債(A) 24.0 28.8 28.6 30.0 36.2 56.7 75.6 48.2 61.9 69.3 75.0 外国・国際機関 非市場性国債 21.6 22.3 22.2 29.6 28.8 24.0 19.0 14.7 10.4 9.1 7.5 その他国債(B) 44,9 55.8 87.4 108.2 95.6 103.7 122.4 134.7 155.9 183.8 207.1 市場性国債総残高 (C) 363.2 421.3 459.9 487.5 530.7 623.2 720.3 881.5 1,050.9 1,247.4 1,437.7 AIC 6,6 6.8 6.2 6.2 6.8 9.1 10.5 5.5 5.9 5.6 5.2 B/C 12.4 13.2 19.0 22.2 18.0 16.6 17.0 15.3 14.8 14.7 14.4
(出所) FederalReserve Bulleガn,December 1976, p.A32; December 1983, p.A30; April 1987, p.A30より作成。
そのような理解に立つならば,個人は1975年では市場性国債の総残高の6.6%を保有する計 算となる。
「その他国債」が市場性国債を意味すると理解するならば, 1975 85年の期間を見ると,個 人が保有する国債に占める市場性国債の比重は増大している。 75年では貯蓄債券の保有額は 673億ドル,「その他国債」=市場性国債の保有額は240億ドルであるから,個人が保有する国債 全体に占める市場性国債の比重は26.3%であったが,その比重は85年では48.4%となっている。
こうした状況は,基本的には,貯蓄債券に付与される利回りやその引き上げ幅には上限が課さ れているので, 1970年代後半からの市場金利の高騰のもとで,市場性国債との貯蓄債券の利回
り格差が拡大し,貯蓄債券の投資魅力が減退したことに起因すると考えられる又
このように,個人は1970年代後半からは貯蓄債券に比べて市場性国債の保有を強めてきてい るという傾向を読み取ることができるが,それが果たして長期国債への投資の拡大を内包する ものであるのか否かについての,判断を可能とする資料を,私が探索する限りにおいては,残 念ながら見いだせなかった。
さて次に検討すべきは,外国・国際機関である。表ー 2に見るように,外国・国際機関が保
3)この点に関する詳細およぴ関連する1979年からの財務省による貯蓄債券の利回り設定の一連の改革につ いては,たとえば U.S. Cong, Facilitating Management of Public Debt, Report Senate, 96th Cong., 2nd Sess., August 22, 1980; U.S. Cong., Management of the Public Debt, Hearing before the Committee on Ways and Means, House of Representatives, 97th Cong., 2nd Sess., April 27, 1982を参照。
累積国債の溝期構成の長期化と新たな長期国債投資家(上) (池島) 5
有する国債は,外国・国際機関向けに発行される非市場性国債と「その他国債」から構成され る。個人の場合と同じように,その「その他国債」は市場性国債を意味すると理解できる。
そのような理解に立つならば, 1975年の段階で外国・国際機関は市場性国債総残高の12.4%
に相当する, 449億、ドルという巨額の市場性国債を保有することとなる。その保有額はその後 も順調に増大しており,それが市場性国債の総残高に占める比率も78年には22.2%の高さにま で達し, 79年から徐々に低下したものの, 85年でも14.4%の高さを保持している。
外国・国際機関は個人をはるかに上回る規模で市場性国債を有し,少なくとも1970年代後半 から80年代の時期にあっては,市場性国債の巨大保有者=投資家としての位置を占めていると 言える。
この外国・国際機関が保有する市場性国債について残存満期区分した時系列データは見いだ せないのであるが,ただ, TreasuryBulletinは,それが保有する市場性国債の中の中期国債と 長期国債の合計の見積額を1973年1月号から82年4月号までの間は掲載しておりしたがって,
69 81年の各年でのそれを把握できる。
表ー 3で示すように,外国・国際機関が保有する市場性国債に占める中期国債と長期国債の 比重は財務省が累積国債の満期構成の長期化の方針を採用・実行し始めた1976年には大きく上 昇し,さらに長期国債の大規模発行が開始された77年からはその比重は一段と上昇している。
それは81年では54.1%の比重を占めている。また,中期国債と長期国債の総残高の合計額に占 める,外国・国際機関が保有する中期国債と長期国債の合計額の比重も76年に大きく上昇し,
77年からはさらに一段と上昇するという,同じ推移をたどっているのが分かる(表ー 3を参照)。
こうした傾向からは,外国・国際機関が1976年から,その保有する市場性国債の満期構成を 長期化させてきている高い可能性を見いだすことができる。ただ,そうであるとしても少な
表ー3 外国・国際機関の国債保有, 1969 81年(単位: 10偲ドル,%)
総額 市場性国債 中・長期国債 BIA 中・長期国債 B/C (A) (B) 総残高 (C)
1969 11.4 7.6 0.921 12.1 155.3 0.6 70 20.6 14.6 0.977 6.7 159.8 0.6 71 46.9 30.1 2.558 8,5 164.6 1.6 72 55.3 34.7 5.874 16.9 165.6 3.5 73 55.6 29.6 6.179 20.9 162.4 3.8 74 58.4 35.6 5.708 16.0 163.2 3.5 75 66.5 44.9 7.702 17.2 205.7 3.7 76 78.1 55.8 15.798 28.3 257.3 6.1 77 109.6 87.4 38.641 44.2 298.8 12.9 78 137.8 108.2 43.343 40.1 325.8 13.3 79 124.4 95,6 46.074 48.2 358.1 12.9 80 127.7 103.7 50.977 49.2 407.0 12.5 81 141.4 122.4 66.261 54.1 475.2 13.9
(出所) FederalReserve Bulletin,およびTreasuryBulletin,各号より作成。
くとも80年前後の時期にあって,外国・国際機関が新発長期国債や残存満期のかなり長い既発 国債への投資を積極的に行ってきたとまでは言い難い。
というのは,その時期では外国・国際機関を公的機関と民間に区分するならば,たとえば,
80年では公的機関の国債保有額が1,170億ドルに対し,民間は161億ドルというように,公的機 関が外国・国際機関の国債保有額の大部分を保有している4)。表ー 4は,その公的機関が1980 年2月29日現在で保有する国債の構成を示す。
表ー4 外国公的機関の国債保有, 1980年2月29日
(単位:百万ドル.%)
残存満期 市場性国債 非市場性国債 総 計
1年以下 48,996 (67.1) 10,085 59,051 1年超〜5年 23,024 (31.5) 9,595 32,619 5年超〜10年 1,001 (1.4) 5,001 6,002 10年超 3 (0.0) ...... 3
総 計 72,994 (100.0) 24,681 97,675
(出所) U.S. Cong. Extension of the Temporary Limit on Public Debt, Hearings before the Subcommittee on Taxation and Debt Management Generally of the Committee on Finance, Senate, 96th Cong., 2nd Sess., April 2 and 16, 1980, p.134より作成。
そこに見るように,外国公的機関は1980年2月29日現在で,総計976億7,500万ドルの国債を 保有するが,その中,それの約75%に相当する729億9,400万ドルを市場性国債で保有している。
さらにその市場性国債を残存満期で区分するならば残存満期の1年以下および1年超〜5 年の国債がその圧倒的大部分を構成する。残存満期5年超〜10年の国債は全体のわずか, 1.4
%しか構成せず,残存満期10年超の国債の規模は無きに等しいほどの少額に留まっているのが 分かる。
そうした外国公的機関の市場性国債の保有状況から判断するならば 1980年前後の時期にあ って,外国・国際機関は市場性国債の巨大投資家としての位置をしめていたものの,それが70 年代後半から相対的に大規模に発行され始めた長期国債の,需要側での主要な受け1II1として投 資行動を展開したとは考えにくい。
個人および外国・国際機関はその保有規模からして1970年代後半や80年代前半では市場性国 債の主要投資家と言える。しかし,以上に考察したようにその時期にあって,個人や外国・
国際機関が主要な長期国債投資家として行動したとは明確には析出できない。
4)この数字はBoardof Govenors of the Federal Reserve System, Flow of Funds Accounts of the United States, 1975‑1984, December 11, 2008, p.59を参照。
累積国債の満期構成の長期化と新たな長期国債投資家(上) (池島) 7
III. 長期国債投資家としての年金基金
さて,市場性国債の残存満期・保有者別データで「その他」投資家に含まれ, しかも1970年 代後半から長期国債への投資を積極化した投資家として,前述の個人や外国・国際機関以外に,
どのような投資家が考えられるであろうか。
このことと関連するのであるが, 1982年 3月開催の連邦議会下院銀行・ファイナンス・都市 問題委員会国内金融政策小委員会の「国債管理の諸問題」公聴会で,財務省から提出された一 般投資家の国債保有状況に関する資料について,議員から,そこに記されている「その他」投 資家とは一体誰であるのか, との質問がなされている。すなわち,その資料では一般投資家と して,「商業銀行」,「個人」,「保険会社」,「相互貯蓄銀行」,「企業」,「州・地方政府」,「外国・
国際機関」,それに「その他」投資家があげられて区分されているのであるが,その「その他」
投資家の具体的内容について質問がなされたのである。
その質問に対し,財務省当局者は次のように答えている。
「その他投資家は,財務省の所有サーベイではカバーされていない,年金基金, ミューチュ アル・ファンド(財務省の証券に投資しているかもしれない,特にマネーマーケット・ファン
ドおよび長期のミューチュアル・ファンド)や種々の他の投資家を表す。」5)
この財務省の指摘に従うならば,一般投資家の国債保有状況に関する資料では「その他」投 資家に区分されているが,その中で,その時期に一定規模の国債を保有し,それゆえ無視でき ない投資家としては年金基金とミューチュアル・ファンドがある, と言うことになる。その年 金基金もミューチュアル・ファンドもともに,前出の市場性国債の残存満期・保有者データで は投資家としてピックアップされていないのであり,それゆえ,そのデータでも「その他」投 資家に含まれる可能性がある。
したがって,次には, 1980年前後には,その国債保有規模から国債投資家として無視できな い存在となっていたと考えられる,年金基金とミューチュアル・ファンドを取り上げ,それの 長期国債投資・保有について検討していきたい。
さてまずは,年金基金の長期国債への投資・保有について考察していこう。
Treasury Bulletin は市場性国債の残存満期•投資家別の保有構造を示すデータを月次レベル で掲載してきたが (1982年10月号からはそのデータは記載されていない),幸いにも1981年2
5) H. M. E.ス タ ル ネ ッ カ ー 財 務 次 官 補 の 証 言 (U.S. Cong., Problems Associated with Federal Debt Management, Hearings before the Subcommittee on Domestic Monetary Policy of the Committee on Banking, Finances and Urban Affairs, House of Representatives, 97th Cong., 2nd Sess., March 23 and 24, 1982, p.26.以下.引用・参照の場合にはProblemsAssociated with Federal Debt Management, Hearingsと 記す)。
月号〜82年8月号において,従来の投資家区分に加えて.メモと付記して,企業年金基金をも 投資家として取り上げ.その保有データを示している。わずか1年 半 (1980年12月31日現在〜
82年6月30日現在)という短い期間での企業年金基金の市場性国債の保有状況を示すものであ るが,そのように取り上げられるようになったこと自体.既に80年頃には国債投資家として.
かなりの規模の国債を保有するに至っていたことの証左である,と思われる。
そこに示された企業年金基金の国債保有状況を見ておこう。表ー 5は1980年12月31日〜82年 6月30日の市場性国債の保有状況の変化を示したものである。今.企業年金基金に注目するな らば,それは残存満期の5年超〜10年および10年超の国債の領域で,同上期間に,それぞれ40 億4,900万 ド ル お よ び31億4,700万ドルの規模で保有国債を増大させている。それらは全保有者
レベルでの残存満期 5年超〜10年 の 国 債 の 増 大 分110億7,100万ドルの36.6%.同10年超の国債 の増大分199億200万ドルの15.8%を占める。
表ー5 市場性国債の保有の増減, 1980年12月31日〜82年6月30日
(単位:百万ドル,%)
全保有者 連邦政府 商業銀行 相互貯蓄 保険会社 貯蓄貸付 企業 州・地方政府 その他 企業年金 励定・連 銀行 生保 損保 親合 一般基金 年金・退 基金
邦準備銀 職基金
残存満期 行
5年超〜10年 11,071 ‑3,524 ‑1,815 ‑235 ‑105 ‑251 ‑75 ‑80 42 534 16,580 4,049 (100.0) (‑31.8) (‑16.4) (‑2.1) (‑0.9) (‑2.3) (‑0.7) (‑0.7) (0.4) (4.8) (149.8) (36.6) 10年超 19,902 1,537 663 47 ‑358 95 70 ‑96 73 952 16,948 3,147 (100.0) (7.7) (3.2) (0.2) (‑1.8) (0.5) (0.4) (‑0.5) (0.4) (4.8) (85.2) (15.8) 全体 346,185 48,960 4,563 1,212 557 967 1,235 ‑2,632 1,808 12,972 131,755 31,560 (100.0) (14.1) (1.3) (0.4) (0.2) (0.3) (0.4) (‑0.8) (0.5) (3.7) (38.1) (9.1)
(出所) TreasuryBulletin, February 1981. p.61; August 1982, p.53より作成。
「その他」に分類された投資家の保有増大分の,残存満期5年超〜10年の国債の領域では,
その約4分の1が,また同10年超の国債の領域では,それの6分の 1強が企業年金基金の保有 増大分に当たるわけである。
同上の国債の残存満期区分のそれぞれにおいて,企業年金基金は「その他」投資家を除けば,
他のいずれの投資家をも極めて大きく上回る規模で保有を増大させているのである。
また, TreasuryBulletinのデータでは州・地方政府が一般基金と年金・退職基金に細分され ている。そこからは,総体としての州・地方政府の残存満期の5年超〜10年および10年超の国 債領域での保有増大分の圧倒的大部分がその年金・退職基金の増大分から構成されているのが 分かる。
残存満期5年超〜10年および10年超の領域での,総体としての州・地方政府の国債保有増の 中の, 92.7%および92.9%はそれぞれ州・地方政府の年金・退職基金の保有増大分を表すので ある。
そして,そうした州・地方政府の年金・退職基金の保有増大分と企業年金基金のそれを併せ