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累積国債の満期構成の長期化と新たな長期国債投資 家(下)

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(1)

累積国債の満期構成の長期化と新たな長期国債投資 家(下)

その他のタイトル Lengthening of Treasury Debt Maturities and New Investors in Long‑Term Bonds (II)

著者 池島 正興

雑誌名 關西大學商學論集

巻 54

号 2

ページ 1‑12

発行年 2009‑06‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/792

(2)

累積国債の満期構成の長期化と新たな 長期国債投資家(下)

目 次 はじめに

長期国債投資と「その他」投資家

I

I

 

「その他」投資家の検証 皿 長期国債投資家としての年金基金

池 島 正 興

ミューチュアル・ファンドと長期国債投資(以上,前号)

ミューチュアル・ファンドの成長と年金基金 V I   年金基金の成長とポートフォリオの変化 V l 1   年金基金と長期国債投資

おわりに

V. 

ミ ュ ー チ ュ ア ル ・ フ ァ ン ド の 成 長 と 年 金 基 金

そして,この長期ミューチュアル・ファンドを含めたミューチュアル・ファンドの成長につ いて少し言及しておきたいのは,それと退職・年金プランとの関連である。

前述した企業年金基金もミューチュアル・ファンド株に投資している。表ー

10

を見てみよう。

ミューチュアル・ファンドのネットの資産総額が

1980

年の

1,347

億ドルから

89

年の

9,820

億ドル へ約

7.29

倍に増大していることに示されるように, ミューチュアル・ファンドは

80

年代に順調 に成長している。

そのミューチュアル・ファンドでの企業年金基金勘定で保有されるネットの資産額は

80

年の

51

億ドルから

89

年の

370

億ドルヘと, ミューチュアル・ファンドのネットの資産総額の増大テ ンポとほぽ等しく,約

7.25

倍に増大している。そうした企業年金基金勘定で保有されるネット の資産額の増大は,企業年金基金が

80

年代の各年ではミューチュアル・ファンドのネットの資 産総額の 4%前後に相当する規模でコンスタントにミューチュアル・ファンド株に投資してき た結果でもある。

また,企業年金基金勘定が保有するネットの資産の内訳を見れば,

1980

年代の前半ではエク イティ・ボンド・インカム・ファンドでの保有資産額よりもマネーマーケット・短期自治体債・

ファンドでのそれの規模が大きいが,その後半では逆のケースが増大し,長期ミューチュアル・

(3)

2  関 西 大 学 商 学 論 集 第

54

巻第

2

(2009

6

月 )

表ー

10

ミューチュアル・ファンドで保有される企業年金基金資産,

1980 89

年 ネットの資産総額 企業年金基金勘定のネットの資産 企業年金基金のシェア

(10

億ドル)

(10

億ドル) (%)  エクイティ・ マネーマーケ エクイティ・ マネーマーケ エクイティ・ マネーマーケ ポンド・イン ット・短期自治 総計 ボンド・イン ット・短期自治 総計 ポンド・イン ット・短期自治 総計 カム・ファンド 体債・ファンド カム・ファンド 体債・ファンド カム・ファンド 体債・ファンド

1980  58.4  76.3  134.7  2.2  2.9  5.1  3.8  3.8  3.8 

81  55.2  186.1  241.3  3.2  4.5  7.7  5.8  2.4  3.2  82  76.8  219.8  268.6  4.5  5.8  10,3  5.9  2.6  3.5  83  113.6  179.3  292.9  4.6  3.2  7.8  4.0  1.6  2.7  84  137.1  233.5  370.6  5.9  6.5  12.4  4.3  2.8  3.3  85  251.7  243.8  495.5  7.3  13.4  20.7  2.9  5.5  4.2  86  424.2  292.1  716.3  18.7  10.5  29.2.  4.4  3.6  4.1  87  453,8  316.1  769.9  20.7  7.9  28.6  4.6  2.5  3.7  88  472.3  338.0  810.3  20.2  8.6  28.8  4.3  2.5  3.6  89  553.9  428.1  982.0  12.5  24.5  37.0  2.3  5.7  3.8 

(出所)

U.S. Department of Labour, Trends in Pensions 1992, 1992, U.S.Government Printing Office, p.447. 

ファンドヘの投資を強めているのが分かる。

ミューチュアル・ファンドに関係する退職・年金プランは企業年金だけではない。

1974

年に 成立した従業員退職所得保障法

(EmployeeRetirement Income Security Act : ERISA,

エリ サ法)は企業年金の適用を受けない個人に対して,税制優遇措置を付与し退職プランのための 貯蓄を奨励する個人退職勘定

(IndividualRetirement Account : IRA)

の創設を認めた。さら に

1981

年には

IRA

70.5

歳以下の全ての賃金稼得者にも適用されるようになった。企業年金に 加入する従業員もそれを利用できるようになったのである。

この

IRA

がミューチュアル・ファンドで保有するネットの資産額は

1981

年ではミューチュア ル・ファンドのネットの資産総額のわずか

1

%を構成するに過ぎなかった。しかし,

81

年の

IRA

の,いわば自由化の後

IRA

はミューチュアル・ファンドヘの投資を急速に増大させ,

89

年では, ミューチュアル・ファンドでの

IRA

勘定のネットの保有資産額は

1,118

億ドルの規模

となり, ミューチュアル・ファンドのネットの資産総額の

11.4

%を構成するようになったので ある

8)

さらに自営業者を対象とする退職プラン

(RetirementPlans for the Self‑Employed : Keogh  Plan,

ケオ・プラン)もミューチュアル・ファンドで

81

年には

36

億ドルのネットの資産を保有

したが,それは

89

年では

129

億ドルにまで増大している。その資産額は

89

年でのミューチュアル・

ファンドのネットの資産総額の

1.3

%を構成する計算となる八

8)

以上の IRA のミューチュアル・ファンド投資に関する数字については,

InvestmentCompany Institute,  Mutual Fund Fact Book, Industry Trends and Statistics for 1989, p.52

(以下,引用・参照の場合には

Mutual Fund Fact Book, 1989

と記す)を参照。

9)

以上のケオ・プランのミューチュアル・ファンド投資に関する数字については,

MutualFund Fact  Book, 1989, p.55

を参照。

(4)

このように企業年金,

IRA

,ケオ・プランをあわせれば,それらは

1981

年ではミューチュアル・

ファンドのネットの資産総額の5

.7

%に相当する資産を保有したが,

89

年にはその1

6.5

%を保有 するまでになっている。

企業年金,

IRA

,ケオ・プランなどの退職・年金プランの積立金による, ミューチュアル・

ファンド株投資の拡大はミューチュアル・ファンドの成長を促進してきたのである。そしてま た,企業年金基金が1

980

年代後半に入り短期ミューチュアル・ファンドよりも長期ミューチュ アル・ファンドであるエクイティ・ボンド・インカム・ファンドヘの投資を強めてきたことは 既に見た通りであるが同様の傾向は,

80

年代末現在で企業年金基金やケオ・プランを遥かに 上回る規模でミューチュアル・ファンド資産を保有する

IRA

にも見ることができる。

1982

年末では,

IRA

が保有するミューチュアル・ファンドの資産をファンドタイプで区分す れば,その全資産の中の

50.6

%をマネーマーケット・ファンドが,

31.7

%をエクイティ・ファ ンドが,

17.7

%をボンド・インカム・ファンドが構成した。

89

年末では,その構成比率は,マ ネーマーケット・ファンドが22.9% ,エクイティ・ファンドが46.7% ,ボンド・インカム・フ ァンドが3

0.4

%となっている

10)

1982

年末に比べて8

9

年末では短期ファンドの構成比率がほぽ半減する一方で長期ファンドの 構成比率が大きく増大し8

0

%弱にも達するようになっているのである。そして,長期ファンド の中のボンド・インカム・ファンドの構成比率は8

2

年末に比べてほぽ

2

倍弱に増大しているの である。また,

89

年末でのIRA のミューチュアル・ファンドの全保有資産の

11.0

%は長期国債 を主要組み入れ資産とする

U.S.

ガバメント・インカム・ファンドから構成されるのであるから.

U.S.

ガバメント・インカム・ファンドはボンド・インカム・ファンドのほぼ

3

分の

1

を占め る計算となる

11)

このような

IRA

のミューチュアル・ファンド投資の態様に典型的に見られるように退職・

年金プランの積立金の増大は

1980

年代においてミューチュアル・ファンド, とりわけ長期ミュ ーチュアル・ファンドの成長を促進するとともに,その長期ミューチュアル・ファンドが長期 国債への投資を拡大するのをも促進してきたと言える。

VI.

年金基金の成長とポートフォリオの変化

これまでの考察を通して,

1977

年以降の長期国債の大規模な発行=供給に対するいわば需要 側での受け皿として,企業年金基金や州・地方政府年金基金などの,年金基金や長期ミューチ ュアル・ファンドが長期国債に比較的大きな規模で投資し,長期国債の消化にも重要な役割を 果たしてきたことを示してきた。

10)  Mutual Fund Fact Book, 1986, p.39; Mutual Fund Fact Book, 1989, p.51

を参照。

11)  Mutual Fund Fact Book, 1989, p.53

を参照。

(5)

4  関西大学商学論集 第

54

巻第

2

(2009

6

月 )

また,年金基金や

IRA

などの退職・年金プランの積立金の長期ミューチュアル・ファンドへ の投資が,これまた長期ミューチュアル・ファンドの長期国債への投資を促進する側面を有し てきたことも示してきた。

総じて,退職・年金プランの積立金を運用する機関投資家が

1977

年からの長期国債の大規模 発行に照応する,主要な長期国債投資家としての役割を果たしてきたわけであるが,そもそも それらが長期国債市場に大きな影響力を有する主要投資家として現出してくる条件はいかにし て形成されたのであろうか。

次には,その点を私的退職・年金プランで大きな比重を占める企業年金プランに焦点を合わ せつつ,考察していこう。

まず確認しておかなければならないのは,戦後における機関投資家としての企業年金基金の 成長と

1970

年代後半あたりでのそれの位置である。

アメリカでの私的退職・年金プランの歴史は,

1875

年に鉄道会社であるアメリカン・エキス プレスが雇用すべき労働者の確保のために企業年金プランを創出したことに始まるが,現代の 企業年金制度の本格的な拡大は第二次大戦後の

1950

年代に開始されることとなった。その期に は企業年金プランの適用範囲は単に労働組合での年金プランのレベルにとどまらず,労働組合 のない産業にまでも急速に広まった。企業年金プランの成長は

60

年代にも,既に年金プランを 導入している企業での雇用の拡大を主たる要因として,継続されていった。それらの結果,

80

年までには,およそ

3,600

万人の賃金稼得者やサラリーマンが雇用主のみで,あるいは雇用主

と非雇用者との共同で拠出される企業退職年金によってカバーされた。企業年金プランの適用 範囲は

50

年と

80

年の間に,民間非農業労働力の

25

%からその

48

%にまでと,ほぽ

2

倍となった。

企業年金への年当たりの拠出金は

50

年の

20

億ドルから

80

年の

690

億ドルヘとほぽ

35

倍となった のである

12)0

そのような企業年金の加入者や拠出金の順調な拡大の下で,その年金基金残高は

1950

年の

121

億ドルから

80

年の

4,227

億ドルヘと

40

倍弱に増大したのである。インフレーションによる貨 幣価値の減価を差し引いた実質価値のレベルで計算しても

10

倍強に増大したのである

13)0

こうした基金残高の顕著な増大を基礎に,企業年金基金は機関投資家として金融資本市場で の比重をも高めるようになった。表ー

11

は民間金融機関の資産の保有状況の推移を示したもの である。企業年金制度(プラン)はその拠出金の積立機関の相異などから,信託(非生命保険)

型年金制度と生命保険型年金制度に細分される。したがって,表ー 1 1での企業年金基金と生命 保険会社の分離年金基金の保有金融資産の合計が企業年金基金総体のそれを表すこととなる。

同表を見れば,既に

1960

年の段階で民間金融機関全体の金融資産保有額に対する企業年金基 金総体のそれの保有比率は

9.7

%となっているのが分かる。これに私的年金制度に近い性格を

12)  Alicia H. Munnel, The Economics of Private Pensions, The Brookings Institutions, 1982, pp.813

を参照。

13)

高齢者雇用開発協会『アメリカにおける企業年金制度の現状

J1982

年,表

4‑1,  68

ページを参照。

(6)

表ー

11

民間金融機関の金融資産,

196082

(10

億ドル.%)

1960  1970  1975  1976  1977  1978  1979  1980  1981  1982  1

金 融 資 産 総 計

597.2  100.0 1,327.8  100.0 2,112.3  100.0 2,364.0  100.0 2,633.0  100.0 2,990.3  100.0 3,356.4  100.0 3,757.4  100.0 4.159.1  100.0 4,529.8  100.0 

商 業 銀 行 "

228.3  38.2  504,9  38,0  834.6  39.5  906.0  38.3 1,003.5  38,J  1,147.7  38.4 1,277.4  38.l  1,390.5  37.0 1,525.0  36,7 1,608.2  35.5 

非 銀 行 金 融 機 関 計

368.9  61.8  822.9  62.0 1,277.7  60.5 1,458.0  61.7 1.629.5  61.9 1,842.6  61.6 2,079.0  61.9 2,366,9  63,0 2,634.1  63.3 2,921.6  64.5 

貯 蓄 諸 機 関

117.6  19.7  270,4  20.4  491.2  23.3  563.2  23.8  648.1  24.6  729.4  24.4  795.9  23.7  865.1  23.0  908.2  21.8  967.2  21.4 

生 命 保 険 会 社

115.8  19.4  200.9  15.1  279.7  13.2  311.1  13.2  339,8  12.9  378.3  12.7  419.6  12.5  464.2  12.4  507.5  12.2  567.5  12.5 

うち.分離年金基金

3) 18.9  3.2  41.2  3.1  72.2  3.4  89.0  3.8  101.5  3.9  119.1  4.0  139.2  41  165.8  4.4  192.7  4.6  228.9  5.1 

企 業 年 金 基 金

38.1  6.4  110.4  8,3  146.8  6.9  171.9  7.3  178,3  6,8  198.3  6.6  222.0  6.6  286.8  7.6  293.1  7.0  341.6  7.5 

州 ・ 地 方 年 金 基 金

19.7  3.3  60.3  4.5  104.8  5.0  120.4  5.1  132.5  5,0  153.9  5.1  169.7  5.1  198.1  5.3  224.2  5.4  264.25.8 

,  そ の 他 保 険 会 社

26.2  4.4  49.9  3.8  77.3  3.7  93.9  4.0  113.2  4.3  133.9  4.5  154.9  4.6  174.3  4.6  185.5  4.5  204.5  4.5  10 

金 融

27.6  4.6  64,0  4.8  98.6  4.7  110.7  4.7  133.4  5.1  157.5  5.3  184.8  5.5  198.7  5.3  224.9  5.4  229.6  5.1  11 

M  M  F ' )  

3,7  0.2  3.7  0.2  3,9  0.1  10.8  0.4  42.2  1.3  74.4  2.0  181.9  4.4  206.6  4.6 

12 

その他証券・不動産

5) 23.7  4.0  63,9  4.8  68.8  3.3  82.2  3.5  81.7  3.1  81.3  2.7  87.4  2.6  105.9  2.8  108.3  2.6  137.0  3.0  13

参考:

6+7+8 76.5  12.l  211.9  16.0  323.8  15.3  381.3  16.2  412.3  15.7  417.3  15.8  530.9  15.8  650.7  17.3  710,0  17.1  834.7  18.4 

1)

小切手振出可能預金

(NOW

勘定など)を含む.

2) 貯蓄貸付組合+相互貯蓄銀行+信用組合

3)

保険型企業年金(分離勘定).

4) Money Market Fund. 

5)

オープン・エンド投資信託会社,証券プローカー,デイーラーなど.

(出所)安保哲夫「アメリカの企業年金と金融市場」東京大学社会科学研究所編『福祉国家の展開〔

2

j東京

大学出版会,

1985

年 ,

208209

ページ.

有する州・地方(政府)年金基金のその保有比率

3.3

%を加えるならば.それらの合計は

12.8%

となる。

1970

年には企業年金基金総体の保有比率は

11.4

%に,それに州・地方政府年金基金を加えた 保有比率は

16.0

%にまで.それぞれ上昇し.その後

70

年代を通して一進一退しながら,

80

年には.

それらは

12.0

%および

17.3

%に達している。

82

年には前者は

12.6%

.後者は

18.4

%となり,それ らの年金基金の保有資産は民間金融機関の保有金融資産全体の

2

割弱を占めるような状況とな っているのである。

このように.企業年金基金および州・地方政府年金基金はその保有資産の規模から見て.機 関投資家として金融資本市場で

1960

年代以降ではますます.その比重を高め.

70

年代からは生 命保険会社をも凌駕する.民間の最大の金融機関たる商業銀行に次ぐ巨大な資産を保有する機 関投資家として成長してきたのである。換言すれば.それら年金基金は既に

1970

年代後半にあ っても.その動向が金融資本市場の需給に大きなインパクトを与えうる巨大機関投資家として 成長してきているのである。

それでは,戦後に機関投資家として著しい成長を遂げてきた.それらの年金基金は国債には どのような投資行動を取ってきたのであろうか。その点を表ー

12

に基づき見てみることにしよ う 。

まずは

1950

年での年金基金のポートフォリオを見てみよう。全年金基金の総資産額

168

億ド

ルの中.保有国債額は

59

億ドルであり.総資産に対する国債の保有比率は

35.1

%であり.他の

金融資産を上回る最大の保有比率となっている。年金基金を区分して見ると,企業年金基金の

国債保有率は

28.6

%に過ぎず,州・地方政府年金基金のそれが

51.0

%と比較的高い数字を示し

参照

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