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累積国債の満期構成の長期化とクラウディング・ア ウト

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(1)

ウト

その他のタイトル Lengthening of National Debt Maturities and Crowding Out

著者 池島 正興

雑誌名 關西大學商學論集

53

6

ページ 25‑40

発行年 2009‑02‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/783

(2)

累積国債の満期構成の長期化とクラウディング・アウト

池 島 正 興

はじめに

アメリカでは累積市場性国債の満期構成は197512月を境に短期化から長期化へと反転し,

その後80年代においても長期化は進展した。その結果,一般投資家により保有される市場性国 債の残存平均満期は197512月の25ヶ月から,たとえば198912月の60ヶ月へと着実 かつ顕著な長期化を遂げてきたのである。ここに, 1950年代から財務省が国債管理政策の主要 課題としてきた,それの長期化もようやく進展することとなったのである。

1953年の経験から財務省は50年代や60年代では累積市場性国債の満期構成の長期化を課題に 掲げつつも,長期国債の発行が企業や州・地方政府などの長期資金調達を制約すること,すな わち,いわゆるクラウデイング・アウトが長期信用市場で現出すること,の回避こそを優先課 題とした。それゆえ,その満期構成が長期化に転じるほどの比較的大きな規模で長期国債が発 行される時期はほとんどなかった。他の時期に比べて長期国債が比較的大規模に発行され,一 時的であれ,その満期構成が長期化に転じたのは1960 65年の時期に限定された。

しかし,その時期では,緩やかではあるが持続的に景気が拡張している経済状況下で比較的 大規模に長期国債が発行されたものの,種々の政策的措置が取られたこともあり,結果的には 長期信用市場でのクラウデイング・アウトの現出はなかった。

それでは, 1977年からは累積市場性国債の満期構成の長期化が顕著に進展するほどの大きな 規模で長期国債は継続的に発行されたのであるが,長期信用市場でクラウデイング・アウトは

•現出しなかったのであろうか。結論的に言えば,その満期構成の長期化への反転が始まってか ら数年後の, 1979 82年には実はそれは現出しているのである。

とすれば,たとえば,同じようにその長期化が進展した1960 65年の期間と比べて,長期国 債の消化の態様をも含めた,いかなる条件の差異により,それは現出したのであろうか。また,

長期信用市場でのクラウデイング・アウトの現出にもかかわらず,なぜ財務省は累積市場性国 債の満期構成の長期化の政策を,すなわち,比較的大きな規模での長期国債の発行を継続した のであろうか。

これらの点を明らかにすることに力点を置きつつ, 1979 82年の長期信用市場でのクラウデ

(3)

ィング・アウトの現出とそれを惹起した諸要因を考察するのが小論の課題である。

I. ク ラ ウ デ イ ン グ ・ ア ウ ト の 現 出

それでは, 1979 82年を中心とする長期信用市場の状況とそこでの各経済主体の特徴的な資 金調達行動を考察していくことにしよう。

アメリカ経済は1970年代にはスタグフレーションに突入したが,インフレーション高進の下 で金利は60年代に比べて高止まりし,さらに,その後半からは騰勢を強めることとなった。そ 1978年には長期金利が, 79年には短期金利も過去最高の金利を記録するに至った。そし て,その後も金利の全般的な高騰は続いた。

10年もの国債の利回りを取りあげて見た場合,それは1978年末の8.41%から79年末に9.44%, 80年末に11.46%, 81年末に13.91%へと急騰した。その利回りは82年末には13.00%となり.依 然として極めて高水準にあるものの.ようやく低下へと転じたのである。

こうした金利動向を踏まえつつ,まずは企業の資金調達行動を見ていこう。企業は1974 75 年の深刻なリセッションを経て76年からは資金調達を活発化させるようになったものの, 70 代後半では長期資金の調達を抑制する傾向を示した。企業が金融市場から調達するネットの資 金は76年607億ドル, 77年799億ドル, 78年947億ドル. 79年1,143億ドルと増加する一方で,中 期および長期の社債の発行によるネットの資金調達額は76年253億ドル. 77年245億ドル, 78 233億ドル, 79年248億ドルと減少もしくは停滞傾向を示した。

1978年からは歴史的高金利局面に入ったのであるが.「多くの非金融法人は1978年および79 年の期間中,未層有の高金利水準の下で一部分はリセッションの予想の広まりゆえに.中期お よび長期の社債の発行をしようとはしなかった。」!)その結果,企業のネットの資金調達に占 める中・長期社債によるそれの比率も76年の41.7%から79年の21.7%へと急落したのである叫

こうした企業の資金調達行動は1980年代にはさらに顕著となった。たとえば, 1980年第4 半期の企業の資金調達行動を取り上げれば,長期金利のさらなる高騰の下で,「企業が市場で 発行する証券の相対的に大きな部分は5年から10年までという比較的短期の満期ものであった

(これは借り手が長期の満期の高クーポン債の発行を嫌う. という債券利回りの高い時期での 典型的な展開なのである)。」3)

そして.こうした長期資金の調達の制約は企業の設備投資をも抑制するよう作用した。「1980 年には企業の設備投資活動の幾分かがおそらく長期金利の上昇により削減された」°という事

1)  "Recent Corporate Financing Pattern", Federal Reserve Bulletin, September 1980, p.689.  2) Ibid., p.685を参照。

3)  "Domestic Financial Developments in the Fourth Quarter of 1980", Federal Reserve Bulletin, February  1981, p.131. 

4)  "The Economy in 1980", Federal Reserve Bulletin, January 1981, p.7. 

(4)

態が招来されたのである。

長期金利の急騰は企業のみならず.家計や州・地方政府の長期資金調達をも厳しく制約した。

そのことは1979年から顕在化した。「テネシーあたりの都市やカウンティは重要なプロジェク トのための債券発行を高金利がそのコストをあまりにも大きくするがゆえに延期してきた。

家庭は住宅モーゲージヘの金利負担が月々の家計支出の支払限度を超えるので.住宅の購入を 延期するよう強いられてきたのである。」5)

それらは実体経済をも冷え込ませた。たとえば,「民間住宅の着工件数は1979年の170万件か ら. 80年の 130万件 (1975年以降の最低水準)にまで下落した。·… ••4 月にモーゲージ金利が 16%にまで達し.いくつかの借り手がモーゲージ証券の発行を取り止めた後に5月までに住宅 着工件数は906千件(年率換算)という記録的な低水準に落ち込んだのである。」6)住宅モ ーゲージ金利と住宅着工数の反比例関係は図ー 1からも明瞭である。

図ー1 住宅着工数と住宅モーゲージ金利

百万件 % 

2.4  22 

総住宅着工数

2.0  18 

1.6  14 

1.2  10 

0.8 

1978 1979 1980

(出所) FederalReserve Bulletin, January 1981, p.6. 

また州・地方政府のレベルにおいても,「記録的な高金利が多くの自治体債の発行を延期さ せる,あるいは取り消させて,実質投資支出は 1980年の第 4 四半期では 8½ %下落した」”とい う一例からもわかるように,自治体債の発行の困難は州・地方政府の公共事業の縮小をもたら したのである。

歴史的な高金利に直面して, 1970年代末から80年代初頭には,企業,家計.州・地方政府は 長期資金の調達を大きく制約されたが,それは実体経済にも悪影響を及ぽしたのである。

それでは,歴史的な高金利の形成をも含めて,そうした事態がなぜ引き起こされたのか,そ の基本的原因を把握しておこう。

5) U.S. Cong., Crisis in the Bond Market, Hearing before the Joint Economic Committee, 96th Cong. 2nd  Sess., March 12, 1980, p.3. 

6)  "The Economy in 1980", op.  cit., p.6.  7) Ibid.. pp.910. 

(5)

その基本的原因の一つとして,多くの論者から指摘されたのは,持続的な連邦財政赤字=国 債発行とその巨大化であった。

一般的に言えば,連邦政府の資金調達=国債発行は,それがなされない場合に比べて実質金 利を上昇させるし,その規模が大きいほど,上昇を強めさせることは言うまでもない。そして また,連邦政府の場合,金利の高騰はその資金需要を減少させるようには作用しない。したが って,金利が高騰する局面で「もし連邦政府が資金需要を増大させるとしても,財務省は入札 で確定される, どのような利回りをも喜んで受け入れようとするので,連邦の債券が全て売却 されるよう保証することできる。このことは財務省の証券のみならず,投資家からの資金獲得 をめぐり財務省の証券発行と競合する他の借り手の金利をも引き上げる効果を有する。」8)

おりしも1970年代後半に見られた,高インフレーションの慢性化で人々のインフレ期待も大 きいという条件下では国債入札では国債デイーラーや投資家は高いインフレ・リスク・プレ ミムを加味した金利で応札することになるであろうから,そうした金利部分をも含む落札金利 で連邦政府が国債をしかも大規模に発行するならば,名目金利のさらなる高騰を促進すること になる, と言うことができる。

こうした国債発行の金利への一般的作用を踏まえた上で, 1970年代後半からの国内の非金融 セクターの資金調達の動向を見ていこう。

さて,表ー 1に示されるように,民間非金融セクター(原資料に準拠し,州・地方政府を含 む)の資金調達の規模を対名目GDP比率で見れば,それは1975年6.8%,76年10.0%,77年13.2%, 78年13.7%となっている。ちなみに, 60年代の各年のそれは6.4%9.3%の範囲にあったから,

76年から民間非金融セクターは高水準の資金調達活動を行ってきたのが分かる。

そこに,連邦政府の資金調達が加わることとなる。連邦政府の資金調達の規模は対名目GDP 比率で76年3.8%, 77年2.8%, 78年2.3%となっている。 76年から経年的に減少傾向にあるが,

60年代の各年のそれは一0.4% 1.6%の範囲にあったことを考えると,これまた極めて高水準 の資金調達を連邦政府も行ってきたことが分かる。

1976年からは民間非金融センターに加えて連邦政府も大規模に資金調達を行っているのであ り,そうした国内での総体としての資金需要の強まりによる実質金利の上昇と高いインフレ・

リスク・プレミアムが結合して, 78年に長期金利は過去最高を記録するにまで高騰したと考え ることができる。

しかし, 1979 82年の状況はそれとは異なる。対名目GDP比率で見た連邦政府の資金調達

8) U.S. Cong., Survey of the Federal Reserve System's Supervision of the Treasury Securities, A Discussion  Paper prepared by the General Accounting Office for the Subcommittee on Domestic Monetary Policy of  the Committee on Banking, Finance and Urban Affairs, House of Representatives. 99th Cong., 1st Sess..  May 1985, p.21.以下.引用・参照の場合にはSurveyof the Federal Reserve System's Supervision of the  Treasury Securitiesと記す。

(6)

表ー1 信用市場でのネットの資金調達, 1975 85 (単位:10億ドル.%)

1975  1976  1977  1978  1979  1980  1981  1982  1983  1984  1985  国内非金巖セクターの借入総額 (A) 197.5  251.0  324.7  368.1  373.8  344.9  375.8  387.4  548.8  756.3  859.1 

連邦政府 (B) 85.4  69.0  56.8  53.7  37.4  79.2  87.4  161.3  186.6  198.8  223.6  財務省証券 85.8  69.1  57.6  55.1  38.8  79.8  87.8  162.1  186.7  199.0  223.7 

民間非金融セクター (C) 112.1  182.0  267.9  314.4  336.4  265.7  288.5  226.2  362.2  557.5  635.5  資本債務証書 98.4  123.5  175.6  196.6  199.9  189.1  155.5  148.3  252.8  314.0  462.4  州・地方政府債務 16.1  15.7  23.7  28.3  18.9  30.3  23.4  44.2  53.7  50.4  152.4  社債 27.2  22.8  21.0  20.1  21.2  27.7  22.8  18.7  16.0  46.1  73.9  モーゲージ 55.1  85.0  131.0  148.2  159.9  131.2  109.3  85.4  183.0  217.5  236.2 

その他債務証書 3.8  48.0  89.5  115.2  133.0  76.6  133.0  77.9  109.5  243.5  173.1  A/名目GDP 12.1  13.8  16.0  16.0  14.6  12.4  12.1  11.9  15.6  19.4  20.5  B/名目GDP 5.2  3.8  2.8  2.3  1.5  2.9  2.8  5.0  5.3  5.1  5.4  C/名目GDP 6.8  10.0  13.2  13.7  13.1  9.5  9.3  7.0  10.3  14.3  15.2 

(注)原資料の関係上, 1979年と80年の数字の連続性は若干ではあれ欠ける。

(出所) FederalReserve Bulletin, December 1981, p.A45; December 1986, p.A42より作成。

の規模は791.5%, 802.9%, 812.8%, 825.0%と増大傾向を辿る一方で.それとは対照 的に民間非金融セクターのそれは7913.1%,  809.5%, 819.3%, 827.0%へと減少に転 じているのである。そしてまた.連邦政府と民間非金融セクターを合わせた国内非金融セクタ ーの資金調達額も対名目GDP比率で見れば, 78年の16.0%から79年には14.6%へ.さらに80 12.4%, 81年の12.1%,  82年の11.9%へと明確に減少しているのである。

この1979 82年は,既に見たように,長期金利の高騰が持続し,史上最高の金利水準が形成 され.それゆえ,企業の設備投資公共事業.住宅着工を抑制するほどに.企業.州・地方政 府家計の長期資金調達が大きく制約された時期である。表ー 1に示されるように,絶対額で 見ても,モーゲージでの資金調達額は1979年以降82年まで激減し続け.社債発行によるそれも 81年と82年に.州・地方政府債のそれも81年に大幅な減少に転じているのが分かる。

そうした民間非金融セクターの長期資金調達を制約するほどの長期金利の持続高騰をもたら した要因の一つは,その期間に長期金利の高騰にもかかわらず.連邦政府が長期国債を大規模 かつ持続的に発行したことにある. と考えることができる。

国債発行の金利への作用については. 1982年に開備された連邦下院銀行・ファイナンス・都 市問題委員会国内金融政策小委員会の「国債管理の諸問題」公聴会で.国債発行の在り方につ いて財務省に勧告する責務を負う公共債協会国債・連邦政府機関債委員会の.その当時の議長 であり,国債プライマリー・デイーラーであるContinentalIllinois National Bank副社長の D.G.テーラー (DavidG.Taylor)氏は次のように述べている。

「市場での財務省の資金需要が金利への上昇圧力を加えるということは一般的に支持されて いる見解であり.正しい見解である。また財務省の借入期間や満期も金利の期間構造に影響を

(7)

及ぽすと信じている。」9)

この見解に従うならば,長期国債の比重を高めつつ総体としての国債が巨額に発行されるな らば,それは長期金利への上昇圧力をそれだけ強めることとなる。

表ー 21975 85年の,定期毎週発行ビル以外の市場性国債の発行規模とその構成比率を示 している。 1960 65年は累積市場性国債の満期構成が長期化に転じた数少ない時期であるが,

その時期では定期毎週発行ビル以外の市場性国債の発行総額において,満期10年超の国債のそ れが占める比率は5.0%であった(したがってまた, 60 65年の各年での,満期10年超の国債 のその発行比率の平均を取れば5.0%ということになる)。

表ー2 定期毎週発行ビル以外の市場性国債の発行, 1975 85年(単位:百万ドル,%)

1975  1976  1977  1978  1979  1980  1981  1982  1983  1984  1985  ビル 93,968  106,378  113,772  123,973  151,072  88,225  100,545  110,978  141,772  146,041  156,299 

(83.5)  (76.0)  (79.7)  (79.1)  (85.4)  (45.6)  (44.1)  (36.6)  (36.9)  (33.0)  (32.8)  中期国債 12,497  29,619  21,734  18,956  10,372  91,840  112,514  182,070  215,301  259,820  276,075  (11.1)  (21.1)  (15.2)  (12.1)  (5.9)  (47.4)  (49.3)  (60.0)  (56.0)  (58.7)  (57.9)  長期国債 6,018  4,060  7,247  13,733  15,426  13,506  15,005  10,251  27,389  36,912  44,535  (5.4)  (2.9)  (5.1)  (8.8)  (8.7)  (7.0)  (6.6)  (3.4)  (7.1)  (8.3)  (9.3)  総 計 112,483  140,057  142,753  156,662  176,870  193,571  228,064  303,299  384,462  442,773  476,909  (100.0)  (100.0)  (100.0)  (100.0)  (100.0)  (100.0)  (100.0)  (100.0)  (100.0)  (100.0)  (100.0) 

TreasuryBulletin,各号より作成。

表ー 2を見れば, 1976年では満期10年の中期国債が大規模に発行されたこともあって,長期 国債の発行比率は2.9%と低くなっているが,それは77年では5.1%,  78年では8.8%, 79年では 8.7%,  80年では7.0%, 81年では6.6%, 82年では3.4%となっている。未曾有の金利高騰下での 長期国債発行が20年さらには30年の長き将来にわたり,過度の国債利子負担をもたらすのを財 務省ではできる限り回避しようとしたのか,79年から82年にかけて,長期国債の発行比率は徐々 に低められ, 82年には長期国債の発行額は前年を下回っている。

とは言え, 1977年から81年までは過去に例のない高い比重で長期国債が発行されてきたので ある。 77 82年の長期国債の発行比率の年当たり平均は6.6%であり,企業,州・地方政府,

家計などの長期資金調達が困難となった79 82年に限定した場合でも,その平均は6.4%とな るのである。

1977年から民間非金融セクターの資金需要が強いもとで,国債が対名目GDP比率で見ても 大きな規模で,かつ長期国債の比重を高めつつ発行されたのである。そのような連邦政府の大 規模かつ継続的な長期資金の調達=長期国債発行が82年までに至る長期金利の持続的高騰を促

9) U. S.  Cong., Problems Associated with Federal Debt Management, Hearings before the Subcommittee  on Domestic Monetary Policy of the Committee on Banking, Finances and Urban Affairs, House of  Representatives,97th Cong., 2nd Sess.. March 23 and 24, 1982, p89.以下.引用・参照の場合にはProblems Associated with Federal Debt Management, Hearingsと記す。

(8)

進してきたと言える10)

クラウデイング・アウトとは一般的には「国債の増大から結実する金利の上昇による,州・

地方政府や民間セクターの支出の削減」11)として定義されている。 1977年からの比較的大規模 な長期国債の持続的発行が長期金利の高騰を促進したのであり,その限りでは79 82年の州・

地方政府や民間セクターの長期資金調達の制約とそれと結合した企業の設備投資,公共事業.

住宅着工などの縮減という事態をクラウデイング・アウトの定義に合致するものとして把握す ることも可能である。

しかしまた,そのような197982年の事態をクラウデイング・アウトと規定する,あるいは,

そのように表現するとしても,その時期の長期金利の歴史的高騰をもたらした基本的要因を,

高いインフレーション期待の存在はさておき,単に長期国債の比重を高めた巨額の国債発行,

あるいは,大規模な長期国債発行のみに求めることはできない。

II.  ク ラ ウ デ イ ン グ ・ ア ウ ト と 長 期 国 債 の 発 行 ・ 消 化

実は197982年の期間は厳しい金融引き締め政策が展開された時期でもあった。 7910月か 8210月までの期間,連邦準備制度はインフレーションを効果的に抑止するという理由から,

金利よりもマネーサプライのコントロールを重視する新たな公開市場操作を採用しつつ,イン フレーションの抑止を主眼に厳しいマネーサプライ・コントロールを実施したのである。

それでは,そうした厳しい金融引き締め政策は信用市場にどのように作用したのであろうか。

連邦財政赤字の金利や民間の資金調達へのインパクトに関する諸問題を取り上げた, 1981 10月に開催された連邦議会下院銀行・ファイナンス・都市問題委員会国内金融政策小委員会の

「信用市場の現在及び将来の状況:連邦赤字のインパクト」公聴会で,連邦準備制度理事会の L.Eグランムリー (LyleE. Gramley)理事は,その点について次のように証言している。

「連邦準備がインフレーションを鈍化させるために現在,行っているように,マネーや信 用の増大を抑制する場合には,連邦政府の信用需要は金利や民間の資金獲得能力に絶大な意味 を有する。実際には連邦政府は信用を求めるラインの先頭に立ち,そして信用供給総量は制約 されているので,民間の借り手は締め出されるであろう。」12)

10)  B.  M.フリードマン (BenjaminM. Friedman)は「財務省が長期国債を大規模に発行する場合それは そのコストを上昇させ.さらには企業や他の民間セクターの長期ファイナンスのアベイラビリティを減少 させる」(U.S.Cong., Management of the Public Debt. Hearing before the Committee on Ways and Means.  House of Representatives, 97th Cong., 2nd Sess., April 27,  1982, p.26)と主張し. 1975年以降の財務省の累 積市場性国債の満期構成の長期化という国債管理政策の展開が民間セクターの固定資本形成のための長期 資金調達を阻害してきた、と指摘している (/bid.pp.2528を参照)。

11)  Survey of the Federal Reserve System's Supervision of the Treasury Securities, note 7,  p.21. 

12)  U. S.  Cong., Present and Future Conditions of Credit Market.The Impact of Federal Deficits,  Hearings  before the Subcommittee on Domestic Monetary Policy of the Committee on Banking, Finance and  Urban Affairs, House of Representatives, 97th Cong., 1st Sess., Part 1,  October 27, 28, and 29, 1981, p.69. 

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