リレー式マイクロティーチングの試み
著者 太田 静樹
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 32
号 1
ページ 181‑199
発行年 1983‑11‑25
その他のタイトル A Study of Relayed Microteaching URL http://hdl.handle.net/10105/2302
EMMmmmz頂mma担問 m a M5?m問冒)迦inwsil Bull. Nara Univ. Educ, Vol.32, No.1 (cult.&soc), 1983
リレ‑式マイクロティーチングの試み
太 田 静 樹 (奈良教育大学教育方法学教室)
(昭和58年4月22日受理)
I 問題 と 目 的
この数年問、マイクロティーチング(以下MT)の実験的研究を継続してあれこれと模索して いる現状であるが、今回の研究の狙いは次の通りである。
従来MTを実践し再MTを行うのに、2つの方法があり、その1つは、スタンフォード大学の 開発した方式のようにMTをやれば直後に反省評価、立案修正して、引続き第2回目のMTを実 施する方法である。他の1つば、G・ブラウンが主張するように、直後の再MTは余り効果がない 故に少し時期をおいて行う方法である(1)
。これに対してわれわれが実施してきた方法は、やや異
なり、MT授業の直後に反省評価はするけれども再MTをやらないで翌日本番授業で試してみた り、或いはMTのあと期間をおいて別の内容のMTを第2回目として行うなどである。どの方法 が望ましいかは、その評価にかかわっているわけであるが、前にも筆者が指摘したようにMTの 評価法には、2つのサイクルコースがあって、1つは小サイクルとしてMT授業と評価をくり返 す過程と、他の1つは大サイクルとしてMTと本番授業と評価をくり返す過程であるMTの 評価にはこの2つが常に必要であるが、今回は前者の小サイクルコースに従って、効果と評価法 を実託しようとするものである。但しスタンフォード大学の方式のようにMT直後に同内容で再 MTを実施するのでなく、しばらく期間をおいて前回者の内容を引き継ぐ方法で行った。この方 式をとる理由は次の通りである。
1.同じ内容の授業のくり返しは多少の修正はあっても、授業者も子ども役の学生にとっても 緊張と興味の新鮮さを欠くであろう。子ども役をMTの授業毎に変えることは望ましいが、
われわれには出来ない。われわれのMTは同じ学生の子ども役であることを前提にしている。
2.子ども役の学生は一度MT授業を受ければ、2回目の時には内容がよく分っているために より批判的となるか、より傍観的となり、その授業にふさわしい子ども役にならなくなるo むしろ学生としての立場が強くなるであろう。
3.従って教師役の学生にとっても前の授業を修正しても、その授業にふさわしい子どもの反 応は得られないことになる。
4.しかし反面、MT授業の内容、方法に関して学生としての評価は前回に関連さして、より 明確になるであろう。
以上の理由から、わがわれは同一人が同じ内容について再MTをすぐしないで、少し期間をお いて他者のMTの内容を関連的に引きつぐ形で行うことにした。即ち前回者が社会科の戎概念に ついてやれば、次回者は同じ題材であるが他の概念についてやるのであるo(例えば前回者が北 181
海道の地理について十勝平野の気候のことをやれば、次回者は同じくその農業のことについてや るなどである。)それによって子ども役の学生は前からの関連から間一学年児としての立場をよ り明瞭にしていくことが出来るし、又、教師役の学生も子ども役をした時の経験から、引きつい だ内容を修正発展せしめうるし、前回者との比較もし易いことになる。このようにMT授業を間 をおいてくり返すが内容は前回者の内容を引きついで発展させる方がより効果的であろうと期待 した。これを仮にリレー式MTと称した。このような方式で同一人がMTを3回行うことにした が、筆者としては始めての試みでもあり、他に余り事例を見ないのでその過程の変化と問題点を 明らかにしようとした。
I 方 法
対象人数は教育学専攻生(3回生) 6人。このうち1人は教師役、 4人は子ども役、 1人はカ メラ操作役とし、これを順次交代して1人それぞれ3回宛MTを行った。これらの学生は教育実 習前の者であり、 MT実施後(2カ月後)に教育実習に参加している。いわばこのMTが教育実 習の事前指導の放能をもつことになるし、始めからその狙いをもっていた。
実施日程
第1回目 昭和57年5月14日〜5月28日 第2回目 6月4日〜6月18日 第3回目 6月25日〜7月9日 実施方法
過1回の実施時間(100分)内で2人の学生が教師役として、それぞれ1回MTを行った。
先ず1人の学生が教師役となり、戎教科の1つの概念について約10分前後のMTを行う。そ の題材の選択は学生の自由とした。その方が学生の実践意欲をもたせられると考えたからで ある。 MT直後ビデオを再生しながら全員が評価表に記入し、そのあと約20‑30分間批評会 をもつ。 (MT授業は録画、録音とりをして事後に指導教官が内容分析に用いた。)次にもう 1人の学生が交代してMT授業を同様に行う。かくして1過に1回2人、 3週間で6人がM Tをやる。第4過からは第2回目を同じ要缶で、但し題材は前回者のを引きついで行った。
第3回目も同様である。
MT授業の事前指導として学生達は2回の講義を受け、前年度に制作せられたビデオのM T例を数例視聴した程度で、この点の不充分さの問題はあり対策を考えねばならない。
第1回実施 月 日 教師(学生) 題 材
5 ・14 A
B
5 ・21
D
5 ・28
F
算 数(小1)長さくらべ 算 数(小1)良さくらべ 理 科(小4)重さくらべ 理 科(小4)てんびん 社会科(小4)十勝平野の農業 社会科(小4) +勝平野の寒さ
所要時間(分)
CT5 00 tO CM i‑H T‑t T‑H r‑t C^ CV]
リレー式マイクロティーチングの試み
第2回実施
第3回実施
6 ・ 4
6 ・11
7 ・ 2
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< CQ O Q W fc
理 科(小4)物の重さとてんびん 社会科(小4)北海道の酪農 社会科(小4)北海道の牧場 算 数(小4)広さくらべ 算 数(小1)広さくらべ 理 科(小4)重さくらベ
社会科(小4) 理 科(小4) 算 数(小1) 社会科(小4) 理 科(小4) 算 数(小1)
沖縄の住居 重さくらべ 液量しらべ 沖縄の作物 てんびん 時計ゲーム
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以上で分るように教師役の学生は各人とも古と第1回目のあと3週間後に第2回目をやり、頁に 3週間後に第3回目をやったことになる。これは学生の人数が6人であったために、そうなった のであり意図的ではない。この間隔が適当であるかどうかよりかは、計3回のくり返し過程での MTの効果の問題を重視した。個人相互の授業関係については表1参照。
教師(学生) 第1 回
表l M T の 個 人 相 互 関 係
罪 2 回
A 算 数(長さくらべ)B 算 数(長さくらべ) C 理 科(重さくらべ) D 理 科(てんびん) E 社会科(十勝の農業) F 社会科(十勝の気候)
理 科(重さとてんびん) 社会科(北海道の酪農) 社会科(北海道の牧場) 算 数(広さ く らべ) 算 数(広さ く らべ) 理 科(重さ く らべ)
第 3 回
>‑<霊会芸
>く芸会慧
>く芸芸
(沖縄の住居) (重さしらべ) (液量しらべ) (沖縄の作物) (てんびん) (時計ゲーム)
実施場所は教育工学センター・スタジオ。ここで録画、録音とりをした。
Ⅱ 評価表について
MT授業直後の評価に次のような評価表を用いた く表2)。教師役及び子ども役の学生に5段 階評価及びメモを記入させた。その間ビデオを再生しておき自由に視聴させながら記憶をより確 実なものにした。評価表の形式は従来用いていたものを改善したものである。
この評価表の主な特徴は次の通りである。
(1)評価の項目を、より簡単にした。 MT直後に評価記入し、短時間の批評会に間に合わせるた めには項目数は少ない方がよい。そのために教師の指導法の評価に重点をおいて、子どもにつ いての項目を省いたのが特徴である。普通この種の評価表においては子どもの反応についても 設けるものであるが、 MTは授業分析法のように詳細に授業内の教師や子どもの行動を捉える 必要はない。子どもの反応も捉えようとすると、かなり多くの項目になる。フランダース(N.
M T授業評価
衷2 M T 授 業 評 価 表 (昭和 年 月 日)
授業者:
評価者;
評 価 項 目
1.説明の仕方(1)分り易さ (2)早 さ (3)量 (4)声・身振り 2.教材・教具の使い方 3.発問の仕方(1)単純・高次
(2)景 4.指名の仕方 5.指示・助言の仕方
6.対応の仕方(1)うけ答え (2)態 度 7.全体的に指導法として
(1)考えさす (2)話し合い (3)盛り上り 8.内容として
(1)展開の仕方 (2)まとま り (3)量 (4)質
9.そ の 他
1 2 3 4 5
A.Flanders)は10項目を設けて、その中に教師と子どもの両方の行動を含ませたが、これでは MTの項目として粗すぎる(3)
。われわれの今回の評価表は教師の指導法に限って、3つのgpf"」
に分けた。即ち教師の指導技術、全休的な授業指導法、授業内容展開についてである。合計9 項目、18細目、これを5段階評価にした。(但し最後の「その他」のみは文章表現)
教師の指導法に限られているとはいえ、細目にして18あることは、まだ多すぎるのである。
というのは将来マイコンを利用して、より速くデータ処理を可能にする方法を構想しているか らであるoマイコンに入れるデータとしては10項目前後が適当であろうと検討中であるoこの 点については本学の重松氏の研究に注目している。̀4'
従来試行してきた評価表の項目として、例えば
1.認め(受容、励まし、確認)2.単純質問3.高次質問4.説明(批判、評価を 含む)5.指示6・行動1(巡視、個別指導)7・行動2(作業、機械操作、準備) 8.静か(思考、驚き)9.ざわめき(私語、笑声)10.応答11.質問(子どもから の)12.話し合い(子ども同士の)13.行動(作業その他)
リレ‑式マイクロティ‑チングの試み
185以上はフランダースのものを参考に、やや詳しく授業分析的手法をMTに応用したものであ る。次のような例を用いたこともある。
1.説明 2.低次の質問 3.高次の質問 4.認容 5.指示 6.作業 7.静か 8.ざわつき 9.子どもの応答10.子どもの作業
これは前例を少し省略したものであるが、いずれも教師と子どもの両方の行動を含んでいる。
後者は行動内容としては単純、粗雑であるが、データ処理として例えば、教師の発言率、説明 率、発問率、認容率、指示率、作業率などすぐ提示される。子どもの応答率、作業率なども同 様である。数量的処理としてはよいのであるが、授業の内容、経過の面が脱落してしまう。こ れを何らかの方法で補う必要がある。
(2)今回の評価表は5段階評価にしたのであるが、問題は上述のように授業過程における評価 (形成的評価)が出来ないことである。集積的、形成的評価の両方を同時に同一の表で行なう ことは困難であるが、授業の評価としては必要な望ましいことである。技術的訓練といえども 内容にかかわっての評価が必要で単に量的評価に止まることは出来ない。そのために今までも 5段階評価の他に、展開過程(始、中、柊の3つに分ける)欄を設け、メモできるようにした こともあるが充分な成果は得られなかったO今回も補充的に、メモできる欄を設け自由に記述 できるようにしたが、指導としては、教師の技術、子どもの反応、行動目標の二、三にしぼっ て記入するようにしたのである。
以上評価表について詳述したのは今回のわれわれの研究は対象数が少人数であるため結果とし て充分信頼しうるデータを得難いので、むしろ方法論としての問題の追求に重点をおいたためで ある。
Ⅳ 目 標の 観点
いままでのMT研究に共通してみられることは、教師の教授技術及び行動の評価が出来るよう に、やや網羅的に評価項目を設けて評価表を作ってきていることである。授業全休に関して問題 点を把握するのには適しているが、 MT授業においてはそれらすべての達成を狙っているわけで はないし、短かい時間にそのようなことは出来る筈がない。むしろその授業における主目標の達 成度を評価しなければならない。いろいろな授業に対応できるために評価項目は多くあってもよ いが、ひとつひとつの授業においては主要目標を定めればよいのであるO
その目標には2つあって、
1. MTとしての教授技術訓練目標である。このMTによってどんな技術の向上を目指してい るかである。例えば、説明のし方、発問のし方、子どもの討議指導などでMT授業の内容如何に かかわらず必要とせられる、いわば形式(陶冶)的目標である。 MT授業は短時間であってもい くつかの教授技術が用いられることは普通であるが、訓練としての目標は1つの授業に1つが適 当であろう。
2.授業内容としての目標である。 MTは短時間といえども1つの内容をもったものとして (例えば1つの概念を)授業をする。とすればその目標なり、教材、方法がある。従ってその冒 標達成度、適否等を評価することになる。,子どもの学習行動も評価の対象になってくる。
故にMT授業の評価としては形式、内容の異なるが関連ある2つの目標を考えねばならない。
いままでややもするとこれらを無意識に混同するか、無視していた傾向がある。どちらに重点を
おくかによって評価の方法も、結果も異なってくる。例えば技術については良好であったけれど も授業全体としては好ましくなかったとか、逆に技術は拙かったけれども授業内容、方法、展開 は努力して効果的であったとかである。要は授業者がどんな目標を目指していたかである。
MTの本来からいえば教師の技術訓練が目標であろうけれども、それは内容を無視した機械的 な訓練ではない。授業においては他の要因との関連において機能しなければならないものであっ て技術のみ単独に抽出して評価しても余り意味はない。わが国の場合MTを単に技術訓練の場と 割り切れない観念が強い。常に内容の展開を伴ったものとして考えられ、それは当然であると思 う。何故なら教育観として教育を個人的、技術的なものとしてよりかは、集団的、人格的なもの として考える傾向が強いからである。とすればMT授業は常に2つの授業観点から考えられ、評 価されねばならないということになる。そのための評価表も考えねばならない。例えばG.ブラ ウンは次のような形式をとっている(授業立案記録としている¥(5)
/。
・検討される技術
・生徒の知識についての記録
・明白な目標
・話題・方法
a)導入b)展開C)まとめd)資料e)生徒の活動 (以下省略)
以上は授業の立案記録であって評価表ではないが、その用紙に事後、授業者及び視聴者(ビデ オによる)は、それぞれ印象を書くようになっている。従って経験的な叙述しか出来ないが、M Tの評価としては前述のように、1つには技術中心の評価と、もう1つは授業内容に関する評価 を客観的にしたいわけで、そのような形式の評価表を必要とする。われわれの今回の評価表は技 術中心のもので、それに内容的なものを付加したが、どのような項目、形式がよいかは今後検討 されねばならない。
Ⅴ指導案について
以上に述べたMTの目標の観点について事前に学生たちと換討し理解し合っていない。又その 時間的余裕もなかった。しかも学生には比較的自由に教材を選択させてMT授業を実習させたた めに目標を正確に技術目標と教科内容目標とに、しぼり切れなかった。彼等は教育実習以前であ るから授業の観察も余りなく従って理解もないわけで、MTを急速に実施することには無理があ ったといえる。それを承知で行ったわけである。それは今後とも恐らくMTのための訓練過程を 設ける余裕は余り望めないという状況を前提に考えていたのである。しかしMTを教育実習の事 前指導の一方法として将来、その課程に組み入れることを考えるとき、それを適切に実施しうる ような方法として、例えばガイドブックに当るようなビデオ教材を準備しておくことが必要であ ろう(6)
。
MT授業実施の第1段階は指導案の立案である。その項目は次のように定めた。
1.単元の目標2.本時の目標3.授業展開(導入、展開、まとめ) 指導案の実例
授業者Aの場合 小1算数「長さくらべ」
リレ‑式マイクロティーチングの試み 187
1単元の目標:大きさなどの比較を通して、良さ、広さ、かさ、などの量の概念や 測定について基礎的なことを理解させる。
Ⅱ本時の目標:直接比較法による「長さくらべ」から少し発展させて間接比較法に ついて理解させる。
まとめの意味で少し遊びの要素を加えて子どもの理解をより確かな ものにする。
Ⅲ展開:
1.導入: 「ゲーム」で子どもの注意をひく。 2チームに分れて竹ひごの長さ くらべを競わせる。
2.展開:竹ひごの長さをくらべる方法を考えさせる(テープ使用)。
どの位長いかも調べる方法を考えさせる(カード使用)。
:前回の授業(ビデオで視聴)のことを加えて「長さくらべ」の方法 についてまとめる。
Ⅳ.その他:子どもの注意を持続させるための表の使用を考える。
ゲームをスムースに学習に移すことが出来るようにする。
授業者Bの場合
小1算数 「長さくらべ」
I単元の目標:大きさの比較などを通して長さ、広さ、かさ などの量の概念や測 定について基礎的なことを理解させる。
Ⅱ本時の目標:直観による比較や直接比較ではなく、ひもなどを使う工夫した比較 方法を理解させ測定についての基礎力をつける。
Ⅲ展開
1.導入:鉛筆の長さくらべ、ひもの長さくらべ(前時‑ビデオで視聴‑の復 習)
2.展開:紙や机などのたてと桟の長さくらべをする。
(1)ハガキ(長方形の紙)たてと桟の長さをくらべる(目でみてよく分 る大きさ)
直観による比較をさせる。
(2)正方形に近い紙のたてと桟の長さをくらべる。
直観による比較をさせる。できない。ではどうしたらよいか。
折って調べる方法をやらしてみる。
(3)机のたてと櫨をくらべる。
机は折ることができない。ではどうしたらよいか。ひも(他のもの でもよい)で比較して調べる方法を教える。
ひもを全員にくぼり、やらせる。
3.まとめ:ものによって、いろいろの測り方があることを分らせる。
上掲の2指導案は共に第1回目のものであり、同じ単元「長さくらべ」を取り上げ、題材が異 なるものである。両方共にその本時目標は本番授業の指導案に近いもので、 「長さの間接的比較
方法を理解させる」とあるが、これは子どもの学習すべき内容でもあって、教師の教授技術を目 標としたものではない。第1回目から自己の教授技術にどういう問題があるか分らないわけで
(教育実習後のMTならば明瞭であるが)、一応やってみて始めて分るものである。故に教授技 術目標がなくても当然である。第1回目はその問題を見出すことを目的としている。そこでは包 括的な技術評価が必要であるといえる。その中から、どういう技術訓練を目的としてやらねばな
らないかを見出し次の回から試みることになる。 MT授業にも比較すれば個人差、個性が現れて おり、従ってどういう目的を立てるかも授業者によって異なってくるであろう。
MT授業直後の批評会においては、主に教材に関する問題か討議されて技術的な面については 学生からは、ほとんどなかった。教材の取扱い方も指導法の1つであるが、教授技術目的として 意識されていない。上掲の指導案による授業においても、方法技術として、ゲ‑ムの行い方、カ ードの用い方、表の作り方、紙の折り方などが問題として出てくるのであるが、それは実践の結 果として意識されてくるのである。これは従来の教育実習の授業においても同様で、実習生は教 材研究には非常に熟を入れてやるけれども、技術面については、やってみて拙劣さを痛感するけ れども目的意識には上ってこない。それ故にこそMTによって訓練しなければならないといえる。
教育実習時と同じような授業法では意味がない。以下今回の実施結果について述べよう。
Ⅵ MTの実施時間
MTの実施時間は開始前に一応10分前後とのみ指示したが、結果的には(表3参照)、平均は 表3 M T 要 時 間(分)
学 生 A 平 均 算 数 算 数 理 科 理 科
19 18 16 12
理 科 社会科 社会科 算 数
11 14 16 11
社会科 理 科 算 数 社会科
13 18 19
社会科 社会科
20 25
算 数 理 科
20 25理 科 算 数
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明らかに回数を重ねるにつれて短縮されている。第1回目と第3回目とには約5分の差があり、
これはMTに馴れてくるにつれて始めに意図されていた10分に近づいており、 3回でも練習の効 果があったといえよう。始めから10分に制限することには学生らには、かなり抵抗があり、困難 であることは以前の研究でも明らかであったが、練習すれば短縮しうることを示したものである。
但し教科によって時間は多少異なっている。各教科とも6人の平均は 算 数 14.7分
理 科 15.2分 社会科 18. 0分
算数、理科はいずれも15分前後になっているのに対して社会科は平均しても18分を要している ことは、やはり社会科の内容は省略しにくいということであろう。授業者(学生)の反省にも、
「社会科は説明や問答をしているうちに内容が科学や政治的なことにまで次々と広がって難しい
リレー式マイクロティーチングの試み 189
と感じた」といっている例がある。教科の特性、題材にもよるであろうが、MTを一律に時間制 限することは難しく、好ましいとはいえない。むしろ教科によって適当な時間を設定するのが望 ましいであろうOスタンフォード大学例のように、MTを5分に制約することは困難であるとは 他の研究でも、いわれている。又余りこれを拡大するとMTの性格がうすれてきて模疑授業(シ ュミレーションと称した実験例もあるが)になってくる。(7)かつて筆者はMTの授業内容から、
MTを3類型に分けて、縮小型、普通型、拡大型としたが、本番授業の内容を出来るだけ多く MTに取りこんで試みようとする縮小型は、どうしても時間が多くかかる傾向があり、MTとは いえなくなってくるのである(8)
。しかし学生はこれに走りがちであり、MTはそれを是正するの に有効な方法であろう。
Ⅶ 事例の比較(平均点による)
実施の結果を以下の学生(A、 B)を事例にして先ず検討してみよう。両者は常に同じ回でや っていたからである。但し両者間教科でやった場合もあり、異教科もあるし、又同教科でも題材 が異なるので厳密には比較しにくいのであるが、一応評価点数で比較してみるQ
実施教科は次の通りである。
A B
第1回目 算 数 算 数 第2回目 理 科 社会科 第3回目 社会科 理 科
評価は前掲(表2)の評価表により、各項目を5段階評価に従って1‑5点を配し、子ども役 の5人の学生の評価点を平均したのが表4である。学生の評価状況を知るために指導教官の評価 は入れていない。 1つの項目について評価者5人が皆3点と評価すれば、平均は3点であり、総 点は15点である。各回の各項目の総点の平均は次の通りである。
A B
第1回目 15.9 16.7 第2回目 16.1 17.3 第3回目 14.3 15.9
「Tl一一人が3回MTを試みて、どのように変化するかは興味ある点であるが、第1回目よりかは 第2回目、第3回目とより向上しているかといえば必ずしもそうではない。平均点を比較してみ ると図1、 2でも分るように両者とも第2回目は微少ではあるが上り、第3回目は第1回目より も下っている。このような傾向は他の4名の学生の中2名にもみられる。その理由は恐らく、
(1)第2回目は第1回目の教師役と5回の子ども役を経験しているから、 MTのイメージも出来 上り、第1回目よりかは落ちつき教材の取扱いにも馴れてきたといえる。それが向上につながっ ているのではないか(2)第3回目になると評価者(学生)も馴れてきて採点が厳しくなってき
評 価 点(平均) 第1回目第2回目
第3回目
1.説明の仕方(1)分り易さ (2)早 さ (3)量 (4)声・身振り 2.教材・教具の使い方 3.発問のし方(1)単純・高次
(2) it
4.指名の仕方 5.指示・助言の仕方
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6.対応の仕方(1)受け答え (2)態
7.全体的な
指導法(1)考えさす (2)話し合い (3)盛り上げ 8.内容として(1)展開の仕方 (2)ま とま り (3)量 (4)質
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図1 A の 評 価 点(1‑3回)
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たこと、授業者は前回までの失敗の反省、批判から欠点の是正に務めていることから各項目とも 平均化してきたことがあげられる。総点の平均が前回より低くなったから下手になったというよ
りかは相対的に欠点が是正きれたが、高い点も少なくなったのではないかと考えられる。ブラウ ンのあげる例証(ウルスター大学)によればMT直後の再授業の得点は始めのより低くなってい
リレー式マイクロティ‑チングの試み
図2 B の 評 価 点(1‑3回)
窒Bfll lK Bs5flHiH9‑ B‑‑kfi
S寡l
(I) (2) (3) (4)
図3 1 回 別 評 価 点 図
(2) (3) (4)
I 2ー
2 3
(I) (2)(I) (2) (3) 4 5 6 7
,N= 価 項 目
191
るのが普通であるとしているし、又MT授業が平均化することについても批判があることを述べ ている。(9'われわれの場合はMT直後でなくて3週間後に第2回目を行って条件が異なるのであ るが、そのために第2回目の評価が上っている者が多いといえるかどうか、これだけでは言えな い。むしろ授業者自身の反省記録によれば自己批判が厳しくなる傾向があり、そのことは自分が 子ども役になった場合、授業者に対しても評価が厳しくなるであろうと予想される。
項目についてみた場合、第1回目においてAは1、 2、 8について高く評価され、 3、 4、 5、
6、 7については低い結果が出ている。即ち、説明のし方、教材の使い方、内容の展開、まとま りなどはよかったが、発問のし方、指名、指示、助言のし方、応答のし方、思考、話し合いなど は劣っていたということになる。特に6、 7は悪い。 Bの第1回目と比較しても、かなり異なっ た様相を示している。そこにAの特徴が現れているといえるかどうか。それをみるために、 1‑
3回までの各項目の平均でみると、 3教科の結果であるから、平均化されるとはいえ、尚、特徴 が残るであろうと考えた。その結果は依然として、 1、 2、 8は高く、 4、 5、 6、 7は低いの である。このことは第1回目のMTで授業者の個性が示されているといえる。 (図3、 4参照)
図4 A、 B の 算 数 の 評 価 点
( IL生し旦Uj ) (ユリ三)
I 2 3
(I)(2) (I) (2) (3) 4 5 6 7 評 価 項 目
(I) (2) 0)
これをBについてみる。 Bも第1回目はAと同じく算数である。高い評価は1、 2、 4、 5、
6、 8で、低いのは、 1の4、 3. 7である、〕それは説明のし方、教材の使い方、指名、指示、
助言のし方、対応のし方、内容の展開、まとまりなどがよくて、声、身振り、発問のし方、思考、
話し合いなどが拙いということであるI Aと比較して、 4、 5、 6、 8の項目がかなり高いこと が目立っている。 Bは総点においてAより高いが、それは指名、指示、助言、対応、内容の展開、
まとまりにおいて授業がうまかったということである。,それは実際の授業観察からもより確から しさをもって授業を進めていたことが感ぜられた(,学生の評価にもそれが現れているといえる。、
A、 B両者に共通の欠点は7の項目に弱いこと、即ち、思考、話し合いが不充分であることであ るが、授業指導としても難しい技術であり、これをMTの始めに要求するのは無理であり、悪い のは当然であるといってよい。このように項目によってAとBとの普しい差はあるが、 Bも7が 最も低くて1及び8が高くなっている傾向はAと同じ型であるといってよい,。しかも1‑3回の 平均の項目別に調べても同じ傾向を示すところから、 BはAを改良した同類の型と特徴づけるこ
とが出来るり他の学生C、 D、 E、 Fについてもいえば、 CはAに近い型であるが、 D、 E、 F は評価点及び点差が大体一定している型であるJ 6人とも3教科を行っているので、その特徴づ けは半半に2つの類型に分けられるといえるo それが何に起因するのか、前半の者と後半の者と に分れたが、実施の前半と後半によるのか、分らないo
以L、個人について回数による変化を探ってみたが、まとめると(1)2回、 3恒は行う過程で項 目別の評価が平均化してくること(2)第1回目のMT授業には偶然性があると思われるのに、そ の特徴は3回のまとめをしても同じ様に現れること、である。,そのことから第1回目のMTから、
授業者の個性、問題点(MT上の)を指摘されるといえるし、それを第2回目にどう生かしてい くかである。
1Ⅷ 同教科の比較
第1回目は2人が対になって、それぞれ同教科でMTを試みており、その分析はⅥlで上述した 通りであるO第2回目、第3回目は対の者が異教科でやっているので、教科の特性を考慮して同 教科で回数は異なるが比較してみた。例えばAの2回目とBの3回目は同じ理科であり、 Aの3
リレー式マイクロティーチングの試み
193回目とBの2回目は同じ社会科である。,教科は同じでも回数に差があることは個人の変化の差を 無視することになり問題であるが、一応同教科という点での比較である。
1.理科の場合 (図5)
Aは第2回目の授業で第1回目のCの理科(重さくらべ)を引き継ぎ、 Bは第3回目で第2 回目のAの理科を引き継いでいる。 C第1回目‑A第2回目‑B第3回目
その時の指導案は次の通りであるO 授業者Aの場合
小4理科「ものの重さとてんびん」 ‑ばねとものの重さ‑
I本時の目標: 1.ばねに物をつり下げると、その重さにつれて、ばねののびが変 わるO
2.ばねののびた長さは物の重さに関係することに気づかせる。
3.物の重さはばねののびによっても測れることを理解させる。
11展開:
1.ばねについての基礎知識の確認
(1)実験 ・始めのばねの長さを確認 ・おもりをつけたばねの長さを確認
・おもりをとったばねの長さを確認 ・同じ重さの他のおもりを つけたばねの長さを確認
(2)考察・ばねK'ぉもりをつけるとのびるo ・おもりをとると元の長さ になる ・同じ重さのおもりをつけると同じだけばねはのびる 2. ばねの長さとおもりの重さとの関係に気づかせる
(1)実験・重さの違うおもりをつるしてみる。 ・のびた長さに印をつけ させる。
(2)考察 ・おもりの重さが変わると、ばねがのびる長さも変わる。 ・ばね がのびた長さを測れば、つるしたものの重さが分るL‑,
3. まとめ ・ばねの性質を確認する
Ⅲ備考:実際に小学校4年生に教えるならば、 1.だけに10分くらいかかると思うが、
子ども役が大学生であることを考慮して、 2.まで用意した。
授業者Bの場合
小4理科「重さ調べ」
1本時の目標:物の重さは物の形を変えても、置き方を変えても変わらないことが 分ったうえで、水に浮く物、沈む物、溶ける物の3つの実験を行い、
どんな状態でも重さが変わらないことを分らせるQ ll展開:
1 導入:計量‑カリを見せる。これは何? どこで使っている
ピーマン、ジャガイモ、砂糖を見せるo水の中に入れるとどうなる?
では重さは?
2.予想:全員に予想させる。ではどうして?
ピーマ ン(浮 く) ジャガイモ(沈 む) 砂 糖(溶ける)
初めの重さ F 重くなる F 変わらないI 軽くなる
3.実験:子どもに目盛りを読みとらせる
4.まとめ:物の状態(水に浮く、沈む、溶ける)がいろいろ変わっても物の 重さは変わらないことを理解させる。
両指導案ともに教師中心の実験に子どもを参加させる形になっているが、所要時間は、 A ll 分、 B 18分 でBの方が7分も多く時間をかけているo評価点からみれば、全平均で A
図5 A、 B の 理 科 の 評 価 点
16.1、 B 15.9 でほとんど差がない。しかしAは2回目で総体的には第1回目(算数)と大体 同じ類型になっており、上下差が大きいのに対して、 Bは第3回目でもあり、かなり平均化して
いる。その中で項目別にみれば両者の点差が大きく開いて、それぞれ優劣がある。例えばAは項 目1の(3) (説明の量)、 8の(2) (内容のまとまり)、 8の(3) (内容の質)で高いし、 Bは項目2 (教材の使い方)、 3の(2) (発問の量)、 6の(2) (対応のし方)等に高い。即ちAはより内容的な 両で高く、 Bはより方法的な面で高いという相違があり、両者の特徴もそこにみられる。 Bが比 較的低いのは1と7と8である。しかしこの現象は第3回目に限ったことであって第1、 2回目 においては、かなり良い点であることから考えて理科としての題材の取扱いに問題があったと思 われる。即ち題材として3種類の物を用い、物の重さの恒常性を水との関連から理解させるもの であるが、実験に時間がかかり過ぎて子どもを考えさせ、話し合わせる余裕が不足したこと、説
明や展開がやや混乱したことがあげられる。,
このように新しい教科、題材に取組めば、新しい問題の出てくることは当然考えられるが、 B の場合、それ程大きい差ではなく今後は問題中心に追究していくことが可能であろう。
Aについていえば問題点は1及び8以外の項目が低調であることであるO即ち教材提示、発問 対応等に弱いことである。これは前回にもその傾向が現れているが今回の題材は、バネを使って 物の重さを測れることを学習させるもので、指導案はかなりプログラム学習的な手順を入れたも
リレ‑式マイクロティーチングの試み 195
のである。しかしそれが、教師中心の説明が先行しがちであったこと、一方子ども役の方も余り 基礎的な内容であるために対応がしにくかったこともあって、この授業は簡単なようで、やりに くかったというのが授業者の反省にあって、教師の指導法を試みるのに充分でなかったといえる。
2.社会科の場合 (図6)
Aは第3回目の授業でBの第2回目の社会科を引き継ぎ、 Bは第2回目でEの第1回目の社 会科を引き継いでいる。 E第1回目→B第2回目→A第3回目
その時の指導案は次の通りである。
授業者のA場合
小4社会科「沖縄の住居」
1本時の目標:沖縄の住居が自分たちの住居と違うことに注目して沖縄の気候の特 色(気温、台風)を学習する。
Ⅱ展開
1.導入:沖縄の住居の屋根の写真を見せる。
2.展開:沖縄の住居と自分の家の屋根を比べさせる。
沖縄の住居の屋根の作り方を説明する。何故このような作り方をす るのか。
沖縄の気候の特色(暑い、風が強い)に気付かせる。
3. まとめ:暑さや風を防ぐために石垣、樹木などもあることもつけ加え、沖 縄の気候の特色を確認するO
授業者Bの場合
小4社会科「北海道の酪農」
I単元の目標:気候や地形の条件からみて国内の特色ある地域を取り上げ、人々の 生活の様子を理解させるとともに、人々が様々な地域において自然環 境に適応しながら生活している様子に関心をもたせる。
Il本時の目標:家畜とペットの違いを分らせた上で、北海道の酪農についての知識 図6 A、 B の 社 会 科 の 評 価 点
を深めさせる。
Ⅲ展開
1.導入:家で飼っている動物をあげさせる0
2.展開:ペットと家畜の2グループに分け、違いを考えさせる。
家畜とペットの違いを説明するO
写真を見せて北海道の酪農の大体の実態をつかませる。
3. まとめ:これから酪農について学習することについて
実際の授業の所要時間は A 13分、 B 14分と余り変りないo 総平均点においては A 14. 、 B 17.3 とこれはかなりの差であるといえる。全体の傾向をみると今度はAが平均化し ており、 Bの方がかなり上下差のある評価を受けている。理科の場合と逆になっている。これは 恐らくAは3回目であり、 Bは2回目であるということかもしれない。唯Bがどの項目において もAと比較して高く評価されているのは、今までにも、又他の学生例においてもみない例であ。
これは多分、社会科授業に対するAとBとの対応のし方の差であろうと思われる(授業者の反省 記録から主 特にBの高い項目は、 1、 2、 6、 8であることは第1回目の算数の時と変りなく その特徴を示していることは既述の通りであるが、この社会科で弱いところは4、 5、 7の2で、
これは子どもに話し合いさせるようにする、又指示、助言することに問題があるということにな る′,題材は家畜とペットの区分が中心になっていたのであるが、いろいろ実例があげられてくる と、その区分が明瞭にIll来なくなって混乱したが、それを子どもの話し合に移して(まだ単元の 導入の段階という想定であるから)、ゆっくり問題をあげさせ、次の時間に発展させる構えをと ればよいのであるが、それはまだ難しい技術であり、 MTの2回目で期待することは出来ないO 授業者は授業を構成、展開することに精一杯で、これは他の学生にも言えることである。
Aについていえば第3回目であり平均化しているといったが、それが低い点で平均化している ところに問題があるといえよう。今まで評価の高かった項目1、 2、 8など説明や内容に関する ものが、この社会科では発揮されていないわけである。題材として沖縄の住居、気候を取り上げ その密接な関係を理解させようとして写責を提示して説明したが、いろいろ質問されると対応し
きれなくなったという状況で、それが評価にも反映しているといえよう。
以上A、 Bの実際の授業及びその評価(義)に即して、それぞれの状況と問題点を指摘してき たが、それは内容目標の達成ということよりも主に方法技術の点から問題にしたといえよう。し かし授業者は授業する時には本時の目標として(指導案に示しているように)方法技術よりも、
内容を掲げており(授業としては当然であるが)、技術目標は前回の反省から意識にはあっても 具体化していない。そこに授業者と評価者(厳密には評価表)との間にくい違いがあるわけで、
このMT研究の問題点でもある。授業者が毎回指摘されている指導上の問題点について、修正の ための授業計画、実践をし、そのための評価をすれば‑賞しているわけである。これがMTの本 来でもあるが、といってMTが技術主義に陥入ってはならない。本時の内容目標をどの程度実現 できたかを求めるのは授業本来の姿である。方法技術はあくまでその手段であることに変わりな い。いままでMT授業と称してはきているけれども、われわれは方法としてのMTと本来の授業 とを接合させたものとしてのMT授業を求めてきている。唯従来の教育実習指導がややもすれば 内容研究に重点をおいているだけにMTの方法を強謁せざるをえないのである。
リレー式マイクロティーチングの試み
197闇 v^mz^MsA
研究事例6人のうちA、 B2人の学生のMT授業を中心に取り上げ、計3回の授業がどう展開 したかと共に問題点を分析した。その資料になったものは評価表による評価であり、併記させた メモで、かなりキメの細かい資料が得られたLl しかしあくまで少数の事例であって推論の域を出 ないが、次の研究のための示唆を種々得ることが出来た(,
1.所要時間 MT練習の成果としていえることは、 3回の実践によってMT授業の時間が 短縮できたことである。始めに指導者の意図した10分にはならなかったが、平均18分から13分に まで短縮して授業をまとめられるようになったことである。但し教科によって差があり、算数教 科は縮小し易いが、社会科は時間のかかることが納得された。およそ教科として適当な時間を設 定して行うことであるが、それと共に授業目標を重点的にしぼることである。それによって内容 の過多になる傾向を防止することも出来る。
2.リレー式MTについて MTを同一内容でくり返すのでなく新しい試みとして前の授業 者の行った内容に関連させて引き継ぐ形で行うようにした。つ しかも直後でなく3週間の期間をお いてやることにした。結果は予想されたように
(1)前の授業者と関連はあるが、その都度新しい題材であったので授業に緊張感と興味を持 たせることが出来た。
(2)授業者は前の同教科の授業を子ども役として受けているから、その授業の改善を意図し た計画を立て実践し、結果を比較できた。
(3)子ども役の学生も同教科の授業を比較検討することが出来た。
しかし結果からいえば、回を迫って漸次、授業方法技術が改善されたとは必ずしもいえず、平 均化する問題のあることを指摘した。 MT授業を正確に評価するには、同一人が同教科、同題材 でくり返すことであるが、それには子ども役をその都度、変えることが望ましい。われわれとし ては、それが出来ない現在であり、同じ学生が常に子ども役をするとすれば、やはり今回のよう なリレー式の方法でやらざるをえない。特にこの方法の利点となったことは、 1つの授業を次回 に改善実施するのに、それまで検討の余裕(3週間)が充分あり、しかもその間に子ども役をし て関係授業を何回か観察、評価できることである。それが充分に今回は生かされたとは、いえな いが指導によって改善の可能性は期待できるといえる。
3.評価の平均化について 第1回目は誰しも不安であり評価も項目によって上下差が大き いのは当然であろうが、 2回、 3回と重ねる過程で馴れとともに取組みに意図的になり、評価が 平均化する現象が判明した。この現象はよくいえば授業者の弱点が改善せられたことになるが、
逆にいえば授業が平板化(余りよくもないが悪くもない)したことでもある(平均点も低くな る)。第4回以後どうするかが問題である。余り失敗しないようにと授業に消極的になると授業 改善のための問題は解決しない。むしろ積極的に目標を技術及び内容の1つ又は2つにしぼって 重点主義のMTを行い、評価もそれに応じて行うことである。網絶的に行う必要はない。今回は 個人的に毎回の授業について授業の問題点を抽出したが、それは学生自身の授業能力の弱さ、拙 さを指摘するためではなくて、問題状況を明らかにし、その訓練指導法としてのMTを、より単 純化(多目的でなく重点的に) Tjうことを主張するためである0
4.評価表について 今回用いた評価表について項目自身について若干の修正の必要を認め
たし、項目数の検討とともに、教科の特性に応じた項目も付加することを考えねばならない。
注
(1) George Brown, Microteaching, 1975, p. 15
(2)太田静樹、マイクロティーチングの授業の分析について、 1981、奈良教育大学紀要 30巻1号 p. 164
(3) Ned A. Flanders, Analyzing Teaching Behavior, 1970, pp. 33‑34
(4)重松敬一、数学教育におけるマイクロティーチングについて、 1983、奈良教育大学教育研究所紀要19号
(5) George Brown, ibid, p. 36
(6)渋沢文隆、教育実習のためのオ))エンテーションとミニティーチング、 1982、筑波大学附属中学校研究紀 要 34号、 pp. 1‑31
(7)近藤勲・片山嘉雄、教授スキル習得の一方式、 1979、岡山大学教育学部研究集録 50号1集 pp. 157‑
il*
(8)太田静樹、上掲書
(9) George Brown, ibid, pp. 15‑‑17
本稿は昭和56、 57年度文部省科学研究助成費(共同)による研究の一部で筆者の分担研究から一部をまと め直したものである。
199
A Study of Relayed Microteaching
Shizuki Ohta
Department of Education, Nara University of Education, Nara, Japan (Received April 30, 1983)
The purpose of this paper is to discuss and elucidate the changing processes of
Microteaching (M′I) and their problems ai一 to improve the method of practicing MT in
order to carry out student teaching more effectively. As a case study, several students tried MT three times that the subject matters were passed relatively to other MT. The results
were analyzed by the evaluation table each time.
1, The time spent on MT was clearly shortened from 18 to 13 minutes on an average, although it was a few more minutes than the required time (10 minutes). The practice time of MT differed from subject to subject, suggested the necessity to decide a specific
period of time for each subject.
Our experiment this time did not continuously repeat M′r of the same content by the
same instructor (student) just after the previous MT, but tried the new type of MT which took over the content similar to the previous MT after intervals of three weeks. The
results were as follows:
(1) Our new type of MT gave pupils (students) a tense situation and aroused in them
more interest in different contents of subject than before.
(2) Instructors could plan their improved MT and compare the results with other MTs, for they had participated many times as pupils in MT before.
(3) Students playing pupils role, could evaluate many MTs likewise, considering the characteristics of subjects. But they did not always succeed in improving MT.
Strictly speaking for exact evaluation, the same student must practice MT repeatedly, using the same content and his MT should be evaluated comparatively, However, in order to attain this, it is desirable for pupils (students) to be changed each time, which is impossible for us to do under the present circumstances. On the contrary, our relayed MT method can always utilize the same students as pupils and can have enough time to improve MT by their role‑playing by turns and these are advantages to this type of MT.
3. Every student feels unfamiliar and uneasy about MT at first, and so it is natural that the fluctuation of each category in evaluation is large. The evaluation which reduced to a mean in the process of repeating MT means the improvement of students̀ weak points on MT on one side, and also means the monolonousness of MT on the other side. The problems of MT will not be solved by a negative attitude, but MT should be positively