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CAI * ドイツ語 教材の一つの試み

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Academic year: 2021

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ドイツ語CAI教材の一つの試み*

人 間 科 学 講 座 人 間 科 学 講 座 知能情報工学科 知能情報工学科 電子情報工学科

0.はじめに

教科書と辞書に依拠して、文法事項を中心に授業を進めていくという、旧来 の大学における外国語の教育手法が批判されるようになって久しい。それに替 わる様々な新しい教育上の試みも行われてきた。最近では、コンピュータを利 用した教材を授業に取り入れることも行われている。我々のグループも、学部 におけるドイツ語教育を活性化させるため、WWW上で利用するドイツ語CAI 教材の開発に取り組んでいる。

CAI 教材は、ドイツ語教育においては開拓途上の分野だけに、その教育上の 効果が十分に明らかにされていない。また、現時点では、学習者のほうも、単 なる目新しさから、こうした教材に引き付けられているという可能性も否定で きない。

そこで、我々のグループでは、自分たちが開発した教材による学習効果を見 極めて、今後の教育実践に反映させるためと、教材自体の改善のため、実際に 我々の教材を学生に利用させてみた。その際、ドイツ語を担当している中川と 栗山のクラスにおいて、教材の利用期間の前後で、同じ内容のドイツ語での口 頭試問を行い、学生の進歩の度合いを調べてみた。また、利用期間の終了後、

教材にかんするアンケート調査も行った。以下は、その口頭試問とアンケート

(2)

調査の結果の報告である。

1.口頭試問

1.1.目

我々の教材は、ドイツ語の初級レベルの学習者を対象とし、全体で十課から 構成される予定である。しかし、現時点ではまだ、十課すべてが完成している わけではない。それぞれの課は、ドイツ語会話のビデオ・練習するドイツ語表 現の提示・練習問題・テストの四つの部分から構成されている。練習問題でも テストでも、設問のタイプは三通りある。

日本語をドイツ語に訳す問題

音声を聞いて、そのドイツ語を書き取る問題

絵を見て、それに対応するドイツ語を書く問題 解答は、いずれもキーボードからの入力によって行う。

この教材の趣旨は、授業時間内では十分に練習ができない会話表現を、受講 者各自がそれぞれ自由な時間にコンピュータを使って学習し、授業の不足分を 補ってもらうことにある。

そこで、口頭試問の主要な目的は、我々が意図する補助教材としての機能が 実際に果たされているかを検証することと、どのようなタイプの授業と組み合 わせれば、その学習効果を最大限に引き出すことができるかを明らかにするこ とであった。

1.2.概

今回は、平成10年6月までに完成していた第一課から第三課までを、栗山と 中川のドイツ語のクラスの学生(履修総数80人)に、同年6月25日から7月8 日までの期間、利用させた。対象となった学生は、同年4月からドイツ語を始

めたばかりの一年生である。補助教材として利用させるという前提から、第一 課から第三課までの内容は、少なくとも一度は授業で説明をしておいた。

なお、教材の利用は、学生の自発的な意志に任せたのではなく、期間内に第 三課までのテストを終わらせることを課題として与える形とした。

口頭試問は、教材の利用期間を間にはさんで6月23日(第一回)と7月9日

(第二回)に、同一内容のドイツ語で行った。人数は、中川のクラスが39人、

栗山のクラスが37人、一人当たり3分程度の時間をかけた。

1.3.内

質問は、教材で扱われている内容に限って行った。その内容は大きく三つに 区分される。

1)挨拶 1点

2)自己紹介 5点 3)絵を見て答える 4点

全体で10点満点とし、中川のクラスと栗山のクラスでそれぞれ集計した。

1.4.結

まず各学生について第一回と第二回の得点を計算し、教材の利用後の第二回 において、第一回と比べてどれだけ得点が増えているかを、その学生の教材利 用時間と相関させて集計した。その結果をグラフにしたものを下に掲げる。

下のグラフから見て取れるのは、中川のクラスでは、教材の利用時間に応じ て得点の伸びが大きくなっているのが比較的明らかなのに対して、栗山のクラ スではそうした相関関係がほとんど見られないことである。

このような相違が出た原因はいろいろ考えられるし、実際一つの原因だけに 還元することは不可能であろうが、想定される一つの要因について触れておき

(3)

たい。それは、それぞれのクラスでの授業の進め方の相違である。中川のクラ スでは、毎回新しい文法事項や会話表現について説明し、同じ時間の内にその 事項に関する練習を行う。そして、それ以降は、授業中には改めて反復練習は 行わない。これに対して栗山のクラスでは、新しい事柄を次々に教えるのでは なく、クラスの全員がある一つの事柄を身につけるまで何度も反復練習を行う という授業が行われている。したがって、中川のクラスの受講生のほうが、授 業時間外での反復練習の成果が、明確に現れやすい状態にあったといえる。そ れまで完全には定着していなかった知識が、CAI教材を使って練習することで、

その反復練習の時間に応じて身についていったものと考えられる。

もし、この考察が正しいならば、少なくとも我々のCAI教材に関しては、教 師は授業においては説明に重点を置き、それに関する練習は教材を通して行わ せるのが、効果的な教育方法と言うことができる。

1.5.中川クラスの口頭試問の詳細

ここで、中川のクラスを例に挙げ、口頭試問に関して、もう少し詳しく報告 する。以下の、1.5.1.から1.5.4.までは、中川のクラスの学生39人に関する事 柄である。

1.5.1.挨

ドイツ語で「お元気ですか?」と尋ねられて、正確に答えられるかを試した。

この場合、自分が元気であると答えるだけでなく、尋ねられたことに対して礼 を述べ、相手にも同様の質問を返すことではじめて正確な答えとなる。

第一回目で正確に答えられた者は、39人中3人だけであった。第二回目では15 人になった。

挨拶のような完全に定型化した表現で、授業中にはなかなか練習の時間が割 けないようなものは、補助教材に盛り込んで学ばせるには適していると思われ る。しかし、長い表現を最後まで言い切らなければならないためか、教材利用 後も正当率は低かった。

1.5.2.自己紹介

30秒の持ち時間でドイツ語で自己紹介をさせ、正しいドイツ語の文が幾つ言 えるかをカウントした。第一回目では、一人当たり平均2.9文だったのに対し、

第二回目では4.1文となった。学習者が使った文は、主に、名前、出身地、職 業等を述べる定型的な文であった。

第一回目で5文以上正しいドイツ語を言えたものは3人であった。それに対し て、第二回目で5文以上言えた者は18人になった。決まりきった表現ではあっ ても、使えるようになった表現が増えたのは確かなようである。

1.5.3.絵を見て答える

我々のCAI教材では、すべてのドイツ語の表現に対して、そのドイツ語表現 が使われている場面を再現した絵が付けられているが、この教材の中で使われ ているのと同じ絵を提示しながら、次の質問をした。

「あなたは何を買いますか?」

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「彼(彼女)はどこの出身ですか?」

「彼(彼女)の職業は何ですか?」

「彼(彼女)はどこで働いていますか?」

解答に際して提示する絵は複数枚用意し、学生毎に解答が異なるようにした。

ただし、それぞれの学生で、第一回目と第二回目で同じ解答になるようにした。

四問全てに解答した場合を正当率100%とすると、第一回目では、一人当た り平均15%であった。これに対し、第二回目では、60%となった。第一回目で は全問正解が0人、第二回目では6人であった。

絵の中の人物の出身地を尋ねる質問では、国名が直ぐにわかるように国旗と 地図が描かれているが、第一回目では、それがどこの国なのかわからないとい う場合が何度かあった。第二回目では、当然のことながら、そのような事はな かった。学習者は、我々の教材を通して、ある国のドイツ語名、国旗、地理上 の位置を合わせて学んだものと考えられる。

外国語の学習とは、自国語で学んだ観念と外国語の音声を単純に結び付ける ことではない。その外国語の音声と現実世界とを結びつけることである。この 例は、その意味で、付帯的な知識も同時に盛り込むことができるマルチメディ ア教材の利点が発揮された事例と言えるであろう。

1.5.4.結果に関する考察

第一回目と第二回目を比べると学習者のドイツ語能力はかなり改善されてい る。しかし、これはその間に、ある程度集中的にドイツ語に接していたのだか ら当然の結果であると言える。

また、これは主観的な印象の域を出ないが、第一回目と第二回目を比べて学 習者のドイツ語の発音が顕著に改善されたわけではなかった。学習者は、正確 な発音を聞く機会は増えたが、それはあくまで受動的なものに留まる。

1.ドイツ語の入力方法は簡単でし たか?

2.クリックする場所やそこをク リックする意味はすぐにわかりま したか?

その点では、現在の教材は授業に対して補助的な役割しか果たすことができ ず、発音の矯正などは教師が授業中に行っていくしかないことになる。

2.アンケート

2.1.概要と目的

アンケートは利用期間終了後の7月9日に実施し、74人から回答を得た。そ の目的は、我々の教材が補助教材として機能する上で、それを有効かつ持続的 に果たすことができるシステムや構成を備えているかを検証することであった。

アンケートは、以下に示す13項目からなる。

2.2.結

2.2.1.操作のしやすさ

操作のしやすさという点に関しては、3.の問いで「面倒くさく感じたとこ ろがある」という回答が半数近くあった。どんな点が面倒くさく感じたかを具

1.ドイツ語の入力方法は簡単でし たか?

2.クリックする場所やそこをク リックする意味はすぐにわかりま したか?

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体的に書いてもらったが、その内容は 様々で、問いに対応した答えになって いないものも多かった。操作に関する ものとしては、「マウスとキーボード を交互に操作しなければならないとこ ろ」、「カーソルを移動しなければなら ないところ」等の指摘があった。これ らの点に関しては改善の余地があるか もしれない。

また、1.のドイツ語の入力方法に

関しては、ドイツ語特有の文字である ä,ö,ü,Ä,Ö,Ü,ß が、基本となる文字の キーに加えて Control キーを押すだけで入力できるので、特に問題はなかった ようである。

2.2.2.課の構成

この教材は課毎に、まず、その課で 学習する重要な会話表現を含む場面 が、ビデオで提示される。次に、その 課で学習する全てのドイツ語表現が音 声とイラストと共に一覧表示される。

そして、このドイツ語表現から練習問 題とテストが作られる。各課の構成は このようになっている。

4.に対する解答は、こうした学習 の流れが、学習者にも理解され、受け

3.画面上の操作で面倒くさく感じ たところがありましたか?

4.この教材の構成は学びやすかっ たですか?

7.テストは自分一人で解答しまし たか?

入れられやすいものであることを示している。

2.2.3.マルチメディアの利用度

この教材のメリットの一つが、ビデ オと音声を好きなだけ反復して利用で きるという点にあるが、その利用回数 は1回から3回の間に集中している。

今回は利用期間が限られていたことも あるだろうが、外国語の学習という観 点からは、学習者にもっと多く音声を 聞かせる工夫が必要かもしれない。

2.2.4.テストの信頼度

学習者は各課の最後にテストを受 5.ビデオは、一つの課につき何回

くらい見ましたか?

6.それぞれの音声は何回くらい聞 きましたか?

7.テストは自分一人で解答しまし たか?

3.画面上の操作で面倒くさく感じ たところがありましたか?

4.この教材の構成は学びやすかっ たですか?

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け、自分の結果が学習者全体の中でどのような位置を占めているかが表示され る。そのため、テストがどのくらい公正に行われているか尋ねてみた。

「一人で解答した」という回答が大多数を占めてはいるが、実際に一人で解 答している場合であっても、ノートなどを参照しながらテストを受けている可 能性があり、テストの結果をそのまま成績評価に利用することには問題がある。

2.2.5.持続的な利用可能性

8.は、補助教材という性質からして、当然自宅でも使えるものでなければ ならないわけだが、少なくとも学習者の側からはそれを受け入れる可能性があ ることを示している。

9.に関しては、現在のような教材の形態で十分学習者の興味を引き得るも のであることが窺える。

8.この教材を自宅でも使ってみた いと思いますか?

9.四課以降も引き続き使ってみた いと思いますか?

2.2.6.今回の利用環境

10.と11.は、今回の利用環境とそこに設置されているパソコンに関するもの である。

端末演習室2は、パソコンの絶対数がそれほど多くないうえ、他の目的でパ ソコンを利用している学生も出入りしている。そのため、我々の教材で学習し たくても、必ずしも思うようにパソコンを利用できなかったこともあり、不満 が残ったようである。

また、そこに置かれているパソコンの動作速度も高速とは言えず、多量の音 声と画像を含む我々の教材を利用するには、十分なものではなかった。

2.2.7.そ の 他

12.の [良いと感じた点] については、「発音が学べる」という意見が19人か 10.端末演習室2は、この教材を使

うのに適した環境でしたか?

11.PCを立ち上げ、教材を表示す るまでの時間を長いと感じました か?

12.この教材に関して、良いと感じた点・改善して欲しいと思う点を教えてください。

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らあげられていた。これは、授業中であれば、わからない発音をいちいち教師 に確認することは難しいが、この教材であれば、自分の好きな時に当該表現を 再生して聞くことができるという利点を反映したものと言える。

その他には、自分でドイツ語をキー入力するため「つづりが覚えられる」(7 人)という意見や、「自分のペースでできる」(4人)という意見があった。

[改善して欲しい点]については、画像や音声を使った練習問題やテストが出 される場合に、「画面の表示がおかしくなる」ことがあるが、それについての 意見が13人からあげられた。再読み込みすることで正しく表示される場合もあ るので、利用に大きな支障をきたすほどではなかったが、これは改善を要する 点である。現在のところまだ原因は不明である。

その他、「動作が遅い」(8人)という意見があった。これは、使用したパソ コン自体の問題もあるが、ドイツ語表

現を一覧表示するページに関するもの と思われる。ここには、多数の音声と 画像が含まれているからである。ペー ジの構成等の点で工夫が必要かもしれ ない。

13.は、同じシステムで他の外国語 を学ぶ可能性について尋ねてみた。

これについては、概ね好意的な受け 止め方がされていると言える。

3.ま と め

我々は、この教材を授業の補助として意図し、現在作成中である。口頭試問 とアンケート調査の結果は、我々の期待を大きく裏切るようなものではなかっ

13.この教材のシステムは、他の外 国語の習得にも役立つと思います か?

た。これは、少なくとも、補助教材としてデザインされた現在の形態が正しい 方向性を持っていることを示している。

今後は、この結果を教材の作成に反映させ、さらに良いものにしていく事が 必要であろう。

この教材のシステム構築と管理に当たってくれた、知能情報工学科・卒業生 の丸岡宏君と4年生の辛島智教君に謝意を表します。

*本稿は、平成10年10月24日に開催された情報処理教育研究集会(九州工業大 学・工学部)における口頭発表「ドイツ語CAI教材の効果と問題点」の内 容に加筆して、まとめたものである。

13.この教材のシステムは、他の外 国語の習得にも役立つと思います か?

参照

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