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【研究ノート】

資金計算書の変遷に関する再考察

中  村  信  博

1.はじめに

20世紀初頭以来,資金計算書(注 1)は,とりわけ米国において,資金概念 を中心に盛んに議論が展開され , 様々な内容および形式により作成されてき たが , 今日では,「キャッシュ・フロー計算書」としての作成実務がグロー バルに定着している。世界的にも緻密な資金管理技法が展開されている我が 国においても,まず,1953年以降の有価証券報告書での開示が始まった「資 金繰表」,次に,19893月期以降「資金収支表」の開示を経て,金融Big Bang宣言に端を発し実行された会計Big Bang により,20003月期決算情 報から基本財務諸表として「キャッシュ・フロー計算書」の開示がスタート し,その作成実務が定着している。したがって,現時点においては,同計算 書に関する基本課題,とくに資金概念および基本的な表示形式を巡る問題は,

次のように収束したといえる。

1.「現金および現金同等物」を中心とした狭義資金概念の採用 2.「営業・投資・財務」を中心とした活動別区分形式の採用

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とはいえ,同計算書に関する問題のすべてが解決しているわけではない。

とりわけ,活動別区分の中で最も重要な「営業活動からのキャッシュ」の表 示に関して,直接法および間接法のいずれを用いるべきかという点は,いま だ解決を見ていない古くて新しい重要な問題である。

以上のことを踏まえ,本稿では,かつて筆者が行った米国を中心とした資 金計算書変遷に関する考察(注 2)の範囲を拡大し,改めて辿ることを通じて,

ある程度の時代区分を試み,同計算書に関するこれまで議論されてきた問題 点を整理するものである。そして,それら問題点の中でもとりわけ,直接法・

間接法が未だに多くの国で選択適用となっていることを重視し,それに対す

1 つの結論を導きたい。

2.米国における資金計算書の発展史

Ⅰ.資金計算書の生成期(18631920)

1863年のThe North Central Railroadを嚆矢として,その後鉄道会社を中心 に,19世紀後半から,貸借対照表勘定全体,流動資産,現金といった様々 な項目に関する変動要約表という性格の財務表が実務主導型で作成されるよ うになっていった。さらに,資金計算書の原型として知られるコール(W.M.

Cole)の「Where got, where gone statement」もこの時期(1908年)に提唱さ れている。しかし,この時代においては,とくに資金計算書の目的および内 容を規定することになる資金概念を明確に意識することがないままに,単に 実務上の必要性から作成されており,したがって,資金フローの表示といっ た計算書の目的などはほとんど意識されていなかったと考えられるが,少な くともその後の「資金計算書」に関する問題意識は芽生え始めた時期として 位置づけられる時代である。

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Ⅱ.資金計算書の発展期(19211948)

資金概念を明確に意識した議論が展開されるようになり,とくに,フィニー

(H.A.Finney)が1921年に米国公認会計士協会(以下,AICPA)が出題した 会計士試験の模範解答として,はじめて「資金(funds)」という用語を用い て「Statement of application of funds」を示した。このことに端を発して,実 務界に大きな影響を与えるようになった流動資産から流動負債を差し引いた

「正味運転資本(net working capital)」に基づいて作成される資金計算書が定 着していった時代である。

このタイプの資金計算書の普及に関しては,当時,貸借対照表を中心とし て行われていた信用分析に用いられる主要財務指標でbanker's ratioとも呼ば れる「流動比率」の影響があったと考える。すなわち,静態的比率分析の限 界が認識されるようになり,運転資本概念に基づく資金フローを表示する計 算書が評価されるようになったと考えられる(注 3)

Ⅲ.「財政状態変動表」の生成期(19491960)

1920年代から年代まで多くの支持を受けた「正味運転資本」資金概念は,

その内容が流動資産から流動負債を差し引いたプール概念であるために作成 された計算書が理解しにくく,そのために必要とされる様々な意思決定を妨 げる可能性があるといった批判が生じ,資金概念の見直しに関する議論が展 開されるようになった。さらに,株式の発行による設備資産の取得や転換社 債の株式への転換といった,資金の変動はもたらさないが財政状態には重大 な変動をもたらす取引が増大し,それらを資金計算書を活用して表示可能に する必要性も生じた。このような企業経営手法の変化を受けて,資金概念を

「総資産」や「総財務資源」といった内容に拡張すべきという主張が積極的 に展開された時代である。

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Ⅳ.「財政状態変動表」の制度化期(19611971)

AICPAが積極的に見解を公表するようになり,資金計算書の制度化を強

く意識するようになった時代である。すなわち,米国において,まず1961 年にAICPA会計調査研究報告書(Accounting Research Studies)第2 号Cash Flow Analysis and the Funds Statement が公表され,続いて1961年に会計原 則審議会意見書(Accounting Standard Board Opinion ,以下,APBO)第3 Statement of Source and Application of Funds(1963年)の公表により,資金概 念の広義化が提言され,補助財務表としての位置づけではあったが資金計 算書の制度化への動きがはじまった。この制度化に向けた動向は,最終的に 1971APBO19号に結実し,その公表によって広義の資金概念に基づく 資金計算書が「財政状態変動表(Statement of Changes in Financial Position)」

なる名称で基本財務諸表としての作成が義務づけられ,資金計算書の制度化 が実現する時代である。

Ⅴ.「財政状態変動表」の発展期(19721977)

APBO 第19号の公表により,「財政状態変動表」の作成実務が米国内に定

着することになるとともに,1つの計算書にできるだけ多くの開示事項を盛 り込もうとした内容に対する批判も生じ始め,様々な議論が展開されるよう になるが,その内容は,広義の資金概念に基づく資金計算書の1つといえる

「財政状態変動表」の内容を基本的には尊重した上で,一層包括的な情報を 提供可能となるようにするものであり,財政状態変動表の内容を更に発展さ せようとする時代である。

Ⅵ.「キャッシュ・フロー計算書」への移行期(19781986)

米国内のインフレ率・失業率・企業倒産件数の上昇に伴い,資金計算書に おいては支払能力の表示という目的が強く認識されるべきである,との考え

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が主流を占めるようになり,表示内容を明確にするために財政状態変動表を

(ⅰ)現金収支計算書,(ⅱ)財務活動計算書,(ⅲ)投資活動計算書に3分 割すべきであることを強く主張したヒース(L.C. Heath)による提案を中心 とした「分割説」が主張されるようになる。この「分割説」を中心に,財政 状態変動表の制度化以降,さらに包括的な情報内容に発展させる方向で展開 されていた議論が,一転,資金概念の狭義化に収束していった時代である。

Ⅶ.「キャッシュ・フロー計算書」の制度化(1987)

米 国 財 務 会 計 基 準 審 議 会(Financial Accounting Standards Boards, 以 下,

FASB)による財務会計基準書(Financial Accounting Standard,以下,FAS)

95号の公表により,狭義資金概念に基づき活動別区分により作成される 点を特徴とする「キャッシュ・フロー計算書(Statement of Cash Flow)」の 作成が義務づけられた。本基準公表により,狭義の資金概念に基づいた資金 計算書の作成実務が米国において急速に定着することになる。

以上,米国における資金計算書の変遷に関する概説を通じて,1800年代 後半から各時代背景に応じて採用された「正味運転資本」や「総財務資源」

といった様々な資金概念に関する議論の過程を経て,FASB1987年に公 表したFAS95号により資金計算書の基本構成内容を規定する資金概念が,

「現金および現金同等物(cash and cash equivalents)」にほぼ落ち着いたこと が明らかとなった。その後,「キャッシュ・フロー計算書」は程なくカナダ,

イギリス,オーストラリア,ニュージーランドなどの英語圏諸国にも波及し ていくことになる(注 4)

したがって,1987年以降は,考察対象を米国に限定せず,グローバルな 視点に拡張することにより,さらに,Ⅷ . キャッシュ・フロー計算書の国際 的浸透期,Ⅸ.キャッシュ・フロー計算書の再検討期,の 2 つの時代区分 を加えることができると考えるが,この点に関しては,節を改めて考察を加

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えることにする。

3.「キャッシュ・フロー計算書」制度化以降の展開

Ⅷ.キャッシュ・フロー計算書の国際的浸透期(19872006)

1987年に米国で制度化されたキャッシュ・フロー計算書は,その後も国 際会計基準の公表により,グローバルに普及のスピードを速めていくことに なる。

具体的には,まず,前述したAPBO19号の影響を受け,1977年に国際 会計基準委員会(International Accounting Standards Committee,IASC)が公 表していた国際会計基準(International Accounting Standards ,以下,IAS)第 7号「財政状態変動表(Statement of Changes in Financial Position)」を,1992 年に改定し,基準タイトルおよび内容をFAS95号とほぼ同じ「キャッシュ・

フロー計算書(Cash Flow Statements)」に改めた(注5)。この改訂されたIAS 7号により規定された内容が,とくに会計基準開発に関する歴史の浅い国 を中心としてほぼそのままグローバルに承認されるようになり,キャッシュ・

フロー計算書の国際的浸透が進み現在に至っている(注 6)

したがって,比較的スムーズに世界中に定着していったように思える

「キャッシュ・フロー計算書」であるが,そこには古くて新しい未解決課題 ともいえる,営業活動からのキャッシュに関する表示方法である「直接法」

および「間接法」に関する選択適用の問題がある。何故ならば,選択適用に すると,比較的作成しやすいという作成実務的観点から,間接法に基づいて ほとんどの「キャッシュ・フロー計算書」が作成されることになるからである。

その中で,基準制定時から直接法による作成を要求している国として,オー ストラリアおよびニュージーランドがある。

オーストラリアは,199112月に公表したAAS28号「Statement of

(7)

Cash Flows」により,直接法に基づいた営業活動からのキャッシュの部の作 成を要求し,さらに,「利益とキャッシュ・フローとの調整表」の作成を義 務づけている。また,ニュージーランドも19923月に公表したFRS10 号「Statement of Cash Flows」により直接法による作成を義務づけているが,

調整表の作成は義務づけていない。ただし,両国共に2004年以降はIAS 7号をアドプションしたため,直接法および間接法に関しては選択適用に なっているが,実質的には直接法による作成実務が根付いているといえよう。

Ⅸ.キャッシュ・フロー計算書の再検討期(2007~ )

こ の よ う な 状 況 の 中, 国 際 会 計 基 準 審 議 会(International Accounting Standards Boards,以下,IASB)は,FASB2004年から共同体制を立ち上 げているMOU(Memorandum of Understanding:相互理解メモ)に示された

「財務諸表の表示再検討プロジェクト」において,国際会計基準(International Accounting Standards,以下,IAS)第1号「財務諸表の表示」の内容見直し に関する具体的検討を2007年から始めている。

当該プロジェクトにおいて,IASB・FASB(以下,「両審議会」)で財務諸 表の表示に関する様々なアプローチが検討され,200810月に「財務諸 表の表示に関する予備的見解」と称する討議資料(Discussion Paper,以下,

DP)が公表された。その後DPは,201071日に両審議会により公表

された「財務諸表の表示に関する新基準の公開草案(Exposure Draft,以下,

ED)」のスタッフ・ドラフトとして纏められた(注 7)

そこでは,「一体性」と「分解」という二つの基本原則に基づいた基本財務 諸表に関する多くの提案がなされている。その中でも特筆すべきは,キャッ シュ・フロー計算書に関しては,大半の企業が現在行っているような,純利 益を正味営業キャッシュ・フローに調整する「間接法」ではなく,顧客から 回収された現金や,棚卸資産を取得するために仕入先に支払う現金など,営

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業活動に関する現金収支の主なカテゴリー別に区分して「直接法」で表示し なければならない,という提案を行っている点である。両審議会は,直接法 のほうが間接法よりも財務諸表の表示に関して提案されている目的に,より 整合すると考えている。すなわち,直接法により作成されるキャッシュ・フ ロー計算書は , 営業カテゴリーにおける入金および支払項目を表示するため,

キャッシュ・フローのより有用な分解情報が提供され,さらに,営業資産と 負債および営業収益と費用に関する情報を営業活動による現金収支に関連付 けるのにも役立つ,としている(注 8)

なお,DPによる提案を正式EDに纏めるために設定されている27の質問 の中で,キャッシュ・フロー計算書に関する具体的質問内容は下記の通りで ある。

⑲ 営業キャッシュ・フローの表示に関する直接法は

(a)意思決定に有用な情報を提供するか。

(b)間接法に比べ,提案されている「一体性(注 9)」と「分解」目的に,よ り整合するか。

(c) 営業キャッシュ・フローを表示するために現在の間接法で提供されて いる情報は,提案されている調整表で提供されうるか。

この質問に対して提出された入手可能なコメントに関しては,米国・日本 を含めて直接法による作成に対する反対意見が多く,散見される賛成意見に 関しては,概念的に考えれば同意できるといった内容であり,実際の作成コ ストなどその実行可能性を考えると直接法への一本化は難しいとするものが 多い(注 10)

なお,反対意見が多かった影響もあってか,その後現在に至るまで,明確 な公開草案は公表されていないが,その後,IASBは,20135月に,財務 情報開示の利便性と透明性の促進について議論するため同年1月に開催され たフォーラムでの議論をまとめ,今後の開示改善のための短期・中期的戦

(9)

略をフィードバック文書にて公表している。そして,この中期戦略の中に,

「キャッシュ・フロー計算書」の根本的見直しを図る調査研究プロジェクト を開始させるとあり,この点に関してIASBは,20141218日に,ED

「開示イニシアティブ(IAS7号の修正案)」を公表している(注 11)。これは,

201310月に立ち上げた開示イニシアティブに基づき,具体的にIAS7 号「キャッシュ・フロー計算書」の見直しがワ-クプランに追加されたこと によるものであると考えられる。いずれにしても,同公開草案の主な内容は,

IAS7号「キャッシュ・フロー計算書」における,財務活動および現金・

現金同等物に関する開示を投資家の要請に対応して改善を図るものであり,

直接法および間接法の選択適用問題に直接かかわる内容ではないものの,同 EDに対するコメント内容を含めて,今後もIASBの動向を注意深く見守る 必要がある。

これまでの資金計算書変遷史の大まかな整理により,現時点でも直接法・

間接法に関しては結論が出ていないものの , 直接法一本化に向けた明確な動 きが出ていることは確認できた。われわれは,そのような制度化の動向を視 野に入れながらも決してそれに縛られることなく,計算書の目的といった基 本概念に基づいて結論を導くことが重要であるとの前提に基づき,節を改め て,直接法および間接法の選択適用に対する私見を述べたい。

4.おわりに(直接法の優位性)

資金計算書の変遷を通じた基本的考察を改めて行ってみると,計算書の内 容を規定する基礎概念である資金概念に関しては,まず,米国において正味 運転資本資金概念が作成実務として定着し,その後,広義の資金概念と位置 づけられる総財務あるいは総財務概念が主張され,最終的には狭義の資金概 念である「現金および現金同等物(cash and cash equivalents)」に落ち着き,

(10)

資金計算書は「キャッシュ・フロー計算書」として制度化が浸透していった。

次に,資金計算書の目的に関しては,1. 支払能力の表示,2. 利益の質に関 する情報の表示,3. 財政状態の変動情報の表示という3つに纏められる。こ の中で,目的3. に関しては,まず米国において1971年にAPBO19号に よって実現した「財政状態変動表」の制度化が,1987年にFAS95号によっ て「キャッシュ・フロー計算書」に置き換えられ,その後同計算書がグロー バルに定着していることからして,現在では資金計算書の第一義的目的とは 考えられない。したがって,ひとまず,その目的として考えられるのは1. お

よび2. ということになる。

そこで,企業経営活動の実質を出来るだけ忠実に表現する,という観点か ら考えてみることにする。発生主義に基づく企業会計において実際に存在す るフローとしては,いうまでもなく損益フローおよびキャッシュ・フローの 2つであり,これらのフローを過不足なく忠実に表示することによって実質 の表現が可能となるわけである。したがって,同計算書の第一義の目的は上 1.支払能力の表示,すなわちキャッシュ・フローの表示にあると考える ものである。この目的を達成するためには,いうまでもなくキャッシュ・フ ロー計算書は,直接法に基づいて作成される必要があり , そのことにより,

はじめて真のフロー計算書となるのである。

ここで今一度,両者を比較してみると,直接法により作成されるキャッ シュ・フロー計算書は,3つの活動区分の中で最も重要と考えられる営業活 動におけるキャッシュの動きを,営業活動による収入および支出として捉え る,すなわちキャッシュ・フローを直接表示する方法であり,文字通りのフ ロー計算書となるのに対して,間接法は,営業活動からのキャッシュ・フロー を発生主義に基づき算定された利益から逆算して表示する方法であり,純利 益およびキャッシュ・フローとの食い違いを明らかにするための修正過程を 表すに過ぎないものである。ここで特に重要なのは,間接法に基いて表示さ

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れるキャッシュ・フロー計算書は損益計算書および貸借対照表のデータがあ れば作成出来る,という点である。伝統的な基本財務諸表に表示されている 数値に基づいて作成出来てしまう財務報告書を,はたして基本財務諸表と呼 ぶことができるだろうか。このように考えると,直接法および間接法に関す る課題は,単なる表示に関わる問題ではなく作成に関わる重要な問題である ということになる(注 12)

たしかに,資金会計には,伝統的会計を補完する,という役割(注 13)も一 概に否定できないが,1つの計算書に過度の期待をしてしまい,その結果,

本来シンプルなはずのキャッシュ・フローが見えにくくなってしまった,と いう過去の反省を踏まえると,やはりそこに積極的な存在意義を見いだすべ きである。第3の基本財務諸表たる地位を確立するためには,新たな情報を 提供するものでなければならず,したがって,キャッシュ・フロー計算書は,

既存の会計情報をもとに作成出来てしまう間接法ではなく,直接法で作成さ れるべきである。

われわれは,キャッシュ・フロー計算書に求められてきた様々な目的を整 理する必要があると考えるが,その第一義的目的は,キャッシュ・フローを ありのままに表示し,そのことを通じて支払能力を表示することにあると認 識すべきである。そして,そこから導かれる当然の帰結として,「キャッシュ・

フロー計算書」は直接法に基づいて作成すべきであり,そのことによって,

財務諸表の体系として,基本財務諸表たる地位が与えられると考える。

[注]

1)本稿では,資金フローを表示するために,何らかの資金概念に基づい

て作成される計算書を総称して「資金計算書(‘Funds’ Statement)」という。

2)拙稿「米国における資金計算書の変遷(1)~(3)」『広島経済大学経

済研究論集』Vol.10,No.3,Vol.11,No.1,Vol.11,No.3。

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3)「流動比率が有効だった時代はおよそ3・40年間と推定される。1890 年頃から,1920年代末ごろまでであろう。」との指摘がある。藤森三男「財 務諸表分析―その展開と問題点―」『三田商学研究』225号,p.38.

4)カナダ:1998,CICA,Handbook Section1540 Cash Flow Statement,

英 国:1975,SSAP10 : Statements of Source and Application of Funds, FRS1 Cash Flow Statements,1991, (Revised 1996)

オーストラリア:1991, Australian Accounting Standard AAS28,Statement of Cash Flows,the Australian Accounting Standards Board

ニュージーランド:1992, FRS 10, Statement of Cash Flows, the Financial Reporting Standards Board Institute of Chartered Accountants of New Zealand

5)正確には後述するように,2004年から立ち上がった「財務諸表の表

示」に関する国際会計審議会(IASB)とFASBとの共同プロジェクトの議 論を受けた20076月に改訂されたIAS1号「Presentation of Financial Statements」 で 示 さ れ た「 完 全 な 財 務 諸 表 一 式(complete set of financial statements)」に合わせて,同年9月に「Statement of Cash Flow」へと変更さ れているが,この変更によりFAS95号と同一のタイトルになったわけで あり,ここにも米国会計基準による影響が現れているといえよう。

6)たとえば,韓国は1994年,中国は1998年以降,それぞれキャッシュ・

フロー計算書を制度化している。

7)なお,本スタッフ・ドラフトは,正式なEDではなく,その公表が待

たれるが,その後の環境の変化が大きいこともあってか,残念ながらED 公表されていない。

 また,20079月のIFRS基準IAS1号「財務諸表の表示」の改定に伴 い,従来の貸借対照表は「財政状態計算書」に名称が変更されたが,財政状 態計算書に計上される資産および負債については,原則として従来通り流動

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項目と非流動項目に区分するとしている。

 しかし,200810月に公表されたDPによれば,財政状態計算書の資産 および負債を営業,投資,財務(廃止事業を除く)の各カテゴリーに分類し,

更に短期および長期のサブカテゴリーに原則として分類することを提案して いる。

8)辻山栄子「IFRSディスカッションペーパー「財務諸表の表示」の解説」,

日本証券アナリスト協会,2008,p.8.

なお,営業活動と営業キャッシュ・フローとの「調整表」は,注記ではな く計算書本体の一部として表示すべきとしている。

9)「一体性(cohesive)」とは,財務諸表の表示に関して,事業活動に関

する情報(事業活動についてはさらに営業活動に関する情報と投資活動に関 する情報に区分)と財務活動に関する情報を区分するとともに,その表示区 分を財政状態計算書,包括利益計算書,キャッシュ・フロー計算書において 統一して採用する一体性の原則をいう。したがって,今後は,財務諸表の体 系を意識した検討が強く求められる。

10)なお,我が国ASBJ(企業会計基準委員会)のコメントの大部分は,

米国FASBのコメントとほとんど同じ内容である。この点には,今後の重要 な検討課題が潜んでいると考えられる。

11)本修正は , 財務諸表利用者に提供される企業の財務活動および流動性

に関する情報を改善するために,IAS7号の明確化を図るものである。

注 12)佐藤靖「現金フロー計算書に関する若干の考察―直接法と間接法―」

『名城商学』第37 巻 第4号, p.214.

注 13)佐藤倫正『資金会計論』白桃書房,1993,p.2.

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[参考文献]

Australian Accounting Standards Board (AASB), 1991.AAS28 : Statement of Cash Flows.

Financial Accounting Standards Board(FASB), 1987. FAS95, Statement of Cash Flows.

藤森三男「財務諸表分析―その展開と問題点―」『三田商学研究』225号,

1979.

International Accounting Standards Board(IASB), 1992.IAS7, Cash Flow Statements.

International Accounting Standards Board(IASB), 2008.Discussion Paper : Preliminary Views on Financial Statement Presentation.

企業会計基準委員会『財務諸表の表示に関する論点の整理』2009710 日(https ://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/summary_issue/hyouji-ronten/)

中村信博「米国における資金計算書の変遷(1)~(3)」『広島経済大学経済 研究論集』Vol.10,No.3,Vol.11,No.1,Vol.11,No.3,1987.

New Zealand Society of Accountants(NZSA), 1994. Financial Reporting Standard No.10 : Statement of Cash Flows.

Rosen L.S. and DeCoster D.T.,“Funds” Statement; A Historical Perspective, Accounting Review, Jan.1969.

佐藤靖「現金フロー計算書に関する若干の考察―直接法と間接法―」『名城 商学』第37 巻 第4 号,1988.

佐藤倫正『資金会計論』白桃書房,1993.

染谷恭次郎「資金会計の変遷と新しい論点」番場嘉一郎編著『企業会計の変 化と拡大』中央経済社,1979.

辻山栄子『IFRS ディスカッションペーパー「財務諸表の表示」の解説』,日 本証券アナリスト協会,2008.

参照

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