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内分泌からみた小児の成長障害

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(1)

(甕女麟莚12箆47巻昭籍1隼謂)

〔小 説〕

内分泌からみた小児の成長障害

東京女子医科大学第二病院小児科(主任:草川三治教授)

     助教授村田光範

      ムラ    タ      ミツ    ノリ

(受付 昭和52年7月14日)

Growtb 1)is加rbances due to Endoαi皿e Disorders in Children        Mits覗mri MURATA, M.D.

bepartment of Pediatrics, The Second H:ospiもal of Tokyo.Women s Mcdical College

  Height, weight and sex.are the three main phys三cal charactcristics. Height problems are tallness

(gigantism)and shortness(dwar丘sm). Weight problcms are overweight(obes三ty)and uHderweight

(cachexia). Sexual problems are precocious development, delayed develop皿e且t and ambiguous sex。

How endocrine disorders in children are concerned with these皿ain physical problems are discussed.

End6cline disorders arc not main cause of these growth disturbances. However, it is important to have enough knowledge about some endocrine diseases which cause these physical problems, espedally growth retardation alld sexual problems。 The reasoII is that almost of these cndocrine diseases are able to be chred諦ith rational approach. In order to丘nd what the main physical problem of a patient is and make

rational approach to it,孟t is one of the best way to chcck the growth curve. ≠獅?assess the developmental age.(bone age)・

      はじめに

 小児の特徴が.成長発育することにあるとすれ ぽ,成長発育障害は小児にとって最も重大な問題 の1つといえよう.一般に成長は形態的な変化に ついて.,発育は機能的な変化について述べるζき に用いられるが,この2つの用語は必ずしも厳密 に区別して用いられてはいない.ここでは成長を 形態的な変化に限って用いることにする.

 小児に成長障害がある場合,しばしば内分泌疾 患が原因ではないかと疑われる1)が,内分泌疾患 に由来する成長障害の頻度の少ないことは,小人 症に例をとった表12)をみてもわかる.しかし,

内分泌疾患による成長障害の多くは適切な治療に

表1 頻度の高い小人症*

1,.思春期遅発症 2.重症慢性疾患によるもの 3.原発性小人症 4,1surner s syndrome 5.診断不確定群 6.甲状腺機能低下症

7,下垂体機能低下症(頻度の高い順)

*Watson&Lowreyによる

より治癒あるいは症状の軽減をはかることができ るものであるから,たとえ頻度が少なくても十分 な知識をもつている必要があると考え,以下,内 分泌学的な立場からみた小児の成長障害について 私見をのべてみたい。

(2)

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       図1 成長曲線作製用標準チャート

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!型ε甲状腺機能鱈下症.  H型3下垂体性小人症  皿型婁思春期遅発症 w型3原発性小人症(狭義) v型2性早熟症

    図2 特異な成長曲線を示す疾患(模式図)

一1207一

(3)

 1 成長障害の診療に必要な基礎的資料につい

1.視診所見

 成長障害をきたす内分泌疾患の典型的なものは 視診所見のみでも診断するζとができる.その概 票は表2に示した.実際には典型例は少なく,視 診のみで確定的な診断を下すのはむつかしい.

 2.身体計測

 身長,体重,胸囲,頭囲などを正確に計測する ことは,成長障害の診療に大切である.これら計 測値を図1に示すような成長曲線チャートに経時 的にプロットし,成長曲線を作製すると,およそ の疾患単位に分類することができる,これを模式 的に示したのが図2である.このとき注意すべき 点は,身体計測は意外に誤りをおかしやすいこと で,殊に身長の計測はそうである.熟練した同一 人が身体計測を行うことが不可能な日常診療など では,できるだけ頻回に計測して,成長曲線チャ ートにプロットし,計測点を結ぶと計測の誤りが 発見しやすく,より正確な計測を心がける最も良 い方法だと思っている.

 3.性発達の評価

 成長発育の結果成熟に達するわけだが,成熟の

表3 性発達の判定

表2 視診所見と主な内分泌疾患

特  徴 内分泌機能異常

顔 付 蒼白で鼻鞍が広く,

痰ュ舌が厚い痴呆状

甲状腺機能低下症(特にクレチニスム)

年齢より幼い感じで

ツ愛らしい童顔 下垂体性小人症,思春咊x発症 いわゆる満月様顔付,

ス毛 クッシング症候群

年齢よりも成人型の 逡tに近く,第二次 ォ徴を認ある

性早熟症,副腎性器症

体 格 正 常

下垂体性小人症,思春期遅発症

上節下節比 .年齢をコ回る 甲状腺機能低下症 年齢を

性早熟症,副腎性器症

中心性肥満,皮膚伸展線,多毛

クッシング症候群

外性器 小児型 下垂体小人症,思春期

x発症 高度促進(しばしば

謫 次性徴あり) 性早熟症

男性化促進 副腎性器症候群

男性外陰部

 1度 睾丸(T),陰嚢.(S),陰茎(P)共に幼児期のものと同じ    大きさおよび割合である.

 2度 TとSは大きくなるが,Pは大きさが変わらない,

 3度 Pは長さを増す.TとSも大きくなる.

 4度 Pは太く大きくなり,亀頭も大となる.Sは色素を増し    濃くなる.

 5度 成人型 陰 毛  1度 陰毛なし

 2度 陰茎基部または陰唇周囲に長いやや着色したやわらかい    毛がまばらに生える.

 3度毛はかなり濃く密となり,ちぢれの度を増し,まばらな    がら恥骨結合のところまで拡がる.

 4度成人型に近いが,大腿内側に拡がることはない、

 5度 成人型 乳 房

 1度 乳頭のみが隆起している.

 2度 乳房と乳頭が小さな隆起を作り,乳頭輪も大きさを増す.

 3度 乳房と乳頭輪はさらに大きくなるが,それらは同一面上    にある.

 4度 乳房のうえに乳頭と乳頭輪がさらに隆まって,第2の隆    起を作る.

 5度 乳頭だけが隆起して,乳頭輪は乳房と同一面を作る、

本質的意味は「種の保存に役立つ個体になる」こ とだとすれば,性発達が正常か否かは成長障害の 診断にとって重要な意味をもつている.性発達の 評価はTannerの基準3)がよく用いられている.

これを表3にあげておいた.=わが国にはMarshall らのような系統だつた性発達の研究4)5)が少ない のが残念である.

 4.発達年令の評価

 成長障害の診療にあたっては,暦年齢のみでな く発達年齢も考慮しなくてはならない.発達年齢 の評価に最もよく用いられるのが,骨年齢であ る.骨年齢を評価する方法はいくつかあるが,

最も一般的なものは手部x線写真を用いた手部骨 年齢である.これは手部がx線被爆の影響も少な く,X線写真撮影の技術的な面でも容易なためで あろう.日常診療ではアトラス方式によるのが最 も簡便で実用的である.これは骨年齢を判定した いと思っている手部X線写真と標準アトラスとを 見比べて,最も似通っているアトラスに記されて いる年齢をもつてそのX線写真の骨年齢とするも のである.筆者らの用いているアトラスを図3に

(4)

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1.年 1年6ヵ月

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2年6ヵ月

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①:distal phalanx HI

②ldistal phalanx H

③:middle phalanx H

④:os capitatum

⑤:os trapezoideum

⑥:os trapez1um

⑦:os spaphoideum

⑧:distal radius A.男子

3年 9嬰  昼

11年

4年

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⑨:middle phalanx V

⑩:proximal phalanx V

⑲:皿etacarpa1 V

⑫:os hamatum

⑬:os triquetrUm

⑭:os pisiform

⑮;OS lunatum

⑯:distal ulna

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軸勝

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9年 B.女子

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含臼 11年

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4年

ロロ盛α

⇔膏 12年

13年

 図3 骨年齢のatla3(以前のatlasを多少変更した.多忙な日常診療でも手軽に参考にできるよう,

  きわめて簡略化してある. したがって,およその判定に役だてるものである.13年までであるが,

  実用上ほとんど支障はない.)

一1209一

(5)

あげておいた.実際に使用するといろいろな問題 があるが,簡便さがそれを補って余りあると考え ている.暦年齢と±20%以上の差があれぽ異常と するが,大まかに言えば,4〜5歳以降で暦年齢 と骨年齢の間に2年以上の開きがあれぽ異常と考 えてよい.骨年齢についての詳細は別の論文を参

照されたい6)η.

   皿 成長障害の基本症状について

 成長障害の診療にあたって,精密検査を進める 必要があるか否かをきめるには,先にのべた視診 所見,身体計測,性発達評価,発達年齢の評価の 基礎資料があれぽ十分である.この中から更に臨 床的に有用な指標をとりあげると,身長,体重,

性発達の3つになる.この3つの指標の示す臨床 症状,すなわち,身長については高身長(巨人 症)と低身長(小人症),体重については肥満とや せ,性発達については促進(性早熟症)と遅延お

よび性器異常(主に半陰陽)を成長障害の3大項 目,7基本症状と考えている.

 これらの成長障害の基本症状と内分泌疾患との 関係を検討すれば,自ずと成長障害の原因として の内分泌疾患の位置づけが行われるであろう.筆 者らとほぼ同じ考え方で小児内分泌学を論じたも のにStei皿er8)の著書がある.

  皿1成長障害の基本症状と内分泌疾患  1.身長の異常

 a.高身長 (巨人症)高身長の原因を内分泌疾 患と非内分泌疾患にわけ,表4に示した.高身長

の原因と Z(は,内分泌痴言の頻度は少なく,む しろ人種単寧ものとか体質的なもの:ρ方が多い門1 また社会的たは高身長のものは歓迎される傾向に あり,高身長を主訴として来院することはほとん どない.筆者らの15年間の経験では,女子1例の みである.そこで臨床的にはあまり重要な成長障 害ではないと言えるが,2・3注意すべき点をあ げてみる.

 i)生理学的成長促準現象・第字次世界大戦後 の社会情勢の変化,経済の高度成長などに伴い1 小児の体位が著しく向上したことは周知の事実で ある.しかし,体位の向上することの本質的意味

表4 巨人症の原因

脳性巨人症   →視床下部

内分 下垂体性巨人症 →下垂体

@       松果体

性早

泌性 甲状腺機能充進症→甲状腺

@       副  腎

jline艶iter症候群→性 腺引 遺伝的あるいは人種的

.町 体質的

サの他

巨人症+肥満=生理的下垂体機能充進.

泌性 Marfan症候群 gomocystinuria Y染色体異常(XYYなど)

巨人症の大部分は非内分泌性である

についての検討は少ない.この点についての筆者 の考えは別の論文でのべた9).いずれにしても身 長や体重の標準値はできるだけ新しいものを用い る必要がある.具体的には,厚生省の乳幼児身体 発育値10),文部省の学校保健統計調査報告書11)な

どを参照するのがよい.

 i三)生理的高身長と病的なものとを鑑別するに は,成長曲線をかくのが最:もよい.この際,成長 速度曲線を検討すると異常の発見が容易である が,わが国にはよい基準値がない.成長曲線が異 常を示す場合は精査が必要である.このような疾 患としては次のようなものがある.

 ① 脳性巨人症(Sotos症候群),② 下垂体 性巨人症,③ 性早熟症(放置すれば,最終的 には小人症になる)シ④甲状腺機能歯噛症,⑤ Klinefelter症候群, XYY症候群,このうち③以 下は別項でのべる機会があるので,ここでは①,

②について簡単にふれておく.

 脳性巨人症12》13)はSotos12)によってはじめてま とめられた症候群で,生下時の身長,体重が共に 大きく,3〜4歳頃までの成長が著1しく,10歳頃 には15歳相当に達すが,その後の成長速度は鈍く なり,最終的にはさほど大きくならない。顔つき は額が突出し,顎が出張っていて頭囲が大きい.

端的には末端肥大症ド似た顔?きである・.非進行 性の神経系障害があり,知能障害,痙孚を伴うこ

とが多く,時に攻撃的な行動様式をもつている.

骨年齢は進んでいるが,身長年齢に相当し,手根

(6)

骨より指節骨の方が成熟度が促進する.原因はま だ不明で,内分泌学的にも」この成長異常を説明 するに足るものは証明されていない..

 下垂体性巨人症は,下垂体の腫瘍(主に好酸性 細胞腫)や好酸性細胞増生.による成長ホルモン

(以下GH)・の過剰分泌によるが,小児期には極 めて希である.有名なWilkinsの小児内分泌ク リニックで.も27年間3,.190名の患者のうち僅かに 2名にすぎなかったと報告されているM).した がって詳細は省略す.るが,目立つ症状は高身長の 他,頭痛,視力障害などの下垂体.腫瘍のそれで,

しばしば頭部X線写真でトル.コ鞍の拡大を認め

.る.GHの基礎値の異常上昇があれば診断が確定

する.

 内分泌疾患では、・ないが,Marfan症候群ユ5)や Homocystinuria16)も高身長の原因としてよく知

られている.

 b.低身長(小人症):高身長と異なり,内分 泌クリニックに来院する主訴としては最も多いも のである.しかし,低身長の原因としての内分泌 疾患の占める割合の少ないことはすでにのべた

(表1).にもかかわらず,低身長の原因として内 分泌疾患が重要視されるのは,的確な診療により 治癒ないしは症状の軽減をはかることができると

いう理由によるのであろう.

 小人症の原因を内分泌疾患と非内分泌疾患にわ け表5に示した.このうち重要と思われる2,3 の内分泌疾患についてのべる.

 i)甲状腺機能低下症.この疾患が成長障害の 申に占める位置は大き.い..昭和47年度の厚生省小 児慢性疾患実態調査による..と..,把握された1}708 名の内分泌患者のうち実に39.6%がこの疾患であ

る17).

 甲状腺機能低下症(以下低下症)、の原因を表6 にまとめた..

 低下症の臨床的ポイントは早期発見,早期治療 にある.・となれば,新生児期う幼若乳児期の低下 症について検討することが重要であろう..この時 期の低下症はクレチン症として有名だが,実は教 科書に記載されているよ.うな典.型的な症状を呈す

表5.小人症の原因

無下垂体症,中枢神経疾患 rimmonds病,尿崩症 →視床下部

内分泌性

下垂体機能低下症候群.

ceprivation.dwarfism b状腺機能低下症 寫b状腺機能冗進症 U性副甲状腺機能低下症

→下垂体

@松果体

@甲状腺

ィ副甲状腺

性早熟症

糖尿病 →膵  臓

Addison病 →副  腎

Turner症候群 →性  腺 骨疾患

栄養障害

口内 .代謝異常

n統疾患

子宮内発育不全

泌.性

医原性

D原発性あるいは遺伝性 体質性あるいは家族性

その他

小人症の大部分は内分泌性ではない

表6 甲状腺機能低下症の原因

1 一次性(原発性)

 1)先天性..

 a)甲状腺形成異常   .i).欠損または形成不全   ii)異所性

 b) 甲状腺腫性

  .i) 甲状腺ホルモン合成障害   ii)地方性

 2)後天性

 a)医原性(!311投与,手術など)

 b)慢性甲状腺炎によるもの  c)その他

∬ 二次性(下垂体性)

 下垂体機能低下症候群  TSH単独欠損症

皿 三次性く視床下部姓)

るものはむしろ希である.最近この時期の低下症 の症状についてまとめたものが報告されている が19)、,特異的なものよ、り非特異的なものが多く皇 表7にあげたよ.うに,他の疾患とまぎらわしい.

こ.の時.期の低下症り診断の要点は.表7にあげた ような症状の確定的な診断がつかないときゴ先ず 疑ってみるこ.とである..幸い,甲状腺機能検査法 の進歩19)により低下症の診断は容易になった.

この時期に,膝部X線写真で大腿部遠位骨核の出 現がなければ低下症の疑いが強いとする意見があ

…江2ユ1・一

(7)

表7 新生児,乳児期初期の甲状腺機能   低下症の非特異的症状

遷延性黄匿 傾 眠

哺乳障害→擬幽門狭窄 便秘→擬Hirschsprung病 呼吸障害→擬RDS

チアノーゼ,心雑音→擬CHD おとなしい,手のかからぬ子

る2。).また,新生児期の大泉門の拡大が診断の手 掛りになるともいう2ユ).治療が遅れると成長障害 のみでなく,知能の発達にも悪影響があるといわ れており22)23),その早期診断は大切である.現 在,新生児期のスクリーニングが行われつつあ

り,それによると4,000〜7,000の出産に1例がみ

られている24)25)。

 治療は甲状腺ホルモンの経口投与により容易に 行うことができる.

 低下症のうち,先天性の甲状腺ホルモン合成障 害によるものは,その障害部位や程度が様々で,

臨床症状も一定しないが,甲状腺腫を伴うのが特 徴である。前頚部に比較的軟らかい腫瘤をみた場 合,成長障害がなくとも一応本症を考えに入れて おくとよい.血中TSHの上昇があれば診断は確 定する.甲状腺ホルモン投与により腫瘤は消失す

るはずである.

 若年性の低下症の原因は,先天的な甲状腺機能 障害がある年齢以降代償しきれなくなった場合 と,後天的な原因により正常な甲状腺組織が破壊 された場合とがある.前者には甲状腺ホルモン合 成障害,異所性甲状腺など,後者には慢性甲状腺 炎や放射性ヨード投与などがある.これらのい わゆる後天性の低 下症にみられる成長障害は,

身長の伸びの悪化と同時に体重の増加がみられる

(myxedema)ことで,この点が単純性肥満と異な っている。単純性肥満では体重の増加と共に身長 も正常を上まわって伸びるのが普通である.この 時期の子供では,かなり正確に身長,体重の経過 を追って検討ことができるので,成長曲線の異常 の有無を検討するのが臨床的には大切なことであ る26).骨年齢は大なり小なり遅れを示し,その遅

れの程度により,発症の時期や重さを推測するこ とができる.化骨点にepiphyseal dysgenesisを みるのが特徴だというが27),筆者の経験では典型 的な所見として認めることは少ないように思われ

る.この若年性低下症は割に見逃がされているも のが多いので注意が必要であるTSH単独欠損に

よる低下症も報告されている28).

 ii)下垂体性小人症.下垂体機能検査の進歩に より,以前に比べれば容易に正確な診断ができる ようになった.しかし,同時に病態生理の理解も 進み,単に下垂体からのGH分泌障害のみを原 因とすることができなくなった.また,遺伝的背 景をもつたものも多数報告されている29).最近 では,somatomedinについての知見の拡大30)や somatostatinの発見31)が加わり,更に問題が複雑

視床下部

Somq†os†σtin   Depriv9†ion dwqrfiSm

  Anorexig 下垂体

Somo↑o寸ゆphin

(成長ホルモン) ←一一コ垂体性小人症

  成長ホルモン単独欠損症

Somo↑omedin Loron型小人症

体組織X   −Pygmies

図4 成長ホルモン(GH)欠損症状を呈する障害  部位(文献32)より改変)

になっている.これらの点を考慮して,GH欠 損症状を示す場合の障害部位を図4に示した.

図4について簡単に説明しておく.Deprivation dwar且smは主に生活環境の破綻から下垂体性小 人症に似た成長障害を示すもので,この原因とし

てGHの分泌不全があげられているが,この患 児に外来性GHを投与.しても効果が悪い。そこ で,somatostatinの関与が推定されつつある32).

 Laron型小人症は,下垂体性小人症に似た症 状を呈する小人症で,血中GHが異常高値を示 すもので,最初GHのアミノ酸配列が一部異常

(8)

で,このため抗GH抗体とは反応する(radioi−

mmunoassay)が,生物学的活性のないものとさ れていた33).しかしその後,この型の小人症は somatomedinの産生がうまくできないことが判明

した34).

 Pygmiesは, GHに対する末梢組織の不応性が 原因とされている35).

 GH単独欠損症なども報告されているが,これ らの問題の詳細は別の論文36,や成書37)を参照して 欲しい.ここでは厚生省の研究班の定義する下垂 体性小人症38)についてのべることにする,それ は,ここ数年来ヒトGHによる下垂体性小人症 の治療がわが国でも行われるようになり,その治 療の対象になるのが,厚生省の研究班の定義をみ たすものとされているからである.

.表8に厚生省特定疾患,下垂体機能障害研究班

(班長鎮目和夫)の下垂体性小人症め診断基準を

あげた38).

 表8の記載以外で2,3注意すべき点をのべ る.ただし以下は特発性のものに限る,性差は男 児に多く,』女児の3〜5.8倍だという39) 41).その

成因として,周産期障害による中枢神経系の損 傷,ことに骨盤位分娩との関係が注目されてお り,病歴をとる際に留意しておく必要がある41).

体つきの富合をみるには上庄下節比がよいといわ れるが,実際には測定が困難なので,筆者らは坐 高を上節長,身長から坐高を引いたものを下節長 として,上面長を下節長で割り上節下節比として いる.正常値を表9にあげた.

 以上が低身長を主訴とする内分泌疾患の代表的 なものである.その他性早熟症(副腎性器症候群 を含む)では初期高身長だが,骨端の早期癒合の ため最終的には低身長になるし,糖尿病,尿崩症 でも,治療が適確でないと低身長になる.しかしこ れらの疾患は低身長が第一の主訴にはならない.

 iii)思春期遅発症(delayed adolescence)423年 春は本質的には病気ではない.幼少時小柄で,第

2次性徴の出現が正常より遅く,このため低身長 が÷層目立うが,最終的には正常あるいはそれ以 上の身長に達する.家族性発生の傾向が強い.

表8 下垂体機能障害診断の手引 下垂体性小人症

1 主症状

 1.身長のつりあいは正常であるが,平均身長(別紙参照)が   一3.0シグマ以下であること,(10歳未満では一2.5シグマ   以下とする)

 2.10歳以下で,年間成長が3cm以下であること.

 3.骨年齢(注1を参照のこと)が暦年齢の75%以下であること.

皿 検査所見

 2つ以上の成長ホルモン刺激試験(インスリン負荷,アルギ  ニン負荷,1−DOPA負荷,グルカゴン負荷等)に対する血  漿成長ホルモンの反応がいずれも5ng/m1以下であること   (注2を参照のこと)

皿 除外規定

 ターナー症候群,肥満などのような成長率及び成長ホルモン  の反応に影響を与える他の疾患や薬物投与(副腎皮質ホルモ  ンなど)がないこと.

注1.骨年齢の判定はGreulich&Pyleの規準による.その他    の場合は準拠規準を記入すること.

 注2,

  ①甲状腺機能低下の存在する場合には,甲状腺ホルモン     による補充療法を行なって甲状腺機能が正常化した後     に,成長ホルモン刺激試験を行なう.

  ② さらに,成長ホルモン分泌に影響を与える薬物の投与,

    及び精神的因子があれば,それを除いた後に負荷試験     を行なうこと.

〔診断の基準〕

 確実例 1の各項のうち1つ以上,及び皿,皿の事項をみた     すもの.

 疑い例 1の各項のうち1つ以上,及び皿の事項をみたすも     の.

表 9 上酒下節比*

男子 年齢 女子 男子. 年齢 女子

1.70 0 1.82 1.25 8 1.27

i.62 1 1.62 1.25 9 1.25

1.50 2 1.51 1.21 10 1.22

1.41 3 1.39 1.20 11 1.21

1.37 4 1.37 1.18 12 1.22

1.32 1.30 1.17 13 1.21

1.29 6 1.29 1.17 14 1.23

1.26 7 1.27  1.17 15 1.22

*変法なので本文参照のこと

男子に多いというが,性差はないとする意見もあ

る42).

 下垂体性小人症とまぎらわしいが,下垂体性小 人症に比べて骨年齢がそれほど極端に遅れておら ず,低身長ながら成長曲線のパターンは正常であ

一1213一一

(9)

 .現在ではGH分泌能検査により比較的容易

に両者を区別できるようになった.

 2.体重の異常と内分泌疾患

 a・.肥満:成人のみなら.ず小児の肥満が注目を 集めており,小児肥満に関する単行本が何冊も出

版される程である43)鯉45、.

 肥満をきたす原因を内分泌疾患と非内分泌疾患 とにわけ℃表10に示した.ここでも内分泌疾患の 占める割合は少なく,ほとんどがカロリー過剰摂 取あるいは体質的な要因によるもの(単純性肥

満)である.

表10 肥満の原因 内又

分は 泌医 語原

(性 稀)

Fr61ich症候群

      →?視床下部Laurence・Moon−Bied1症候群

      →?下垂体Prader・Willi症候群 甲状腺機能低下症      ブ?甲状腺

Cushing症候群  →副腎

カロリー摂取量〉エネルギー消費量 過食および運動不足

家族性または遺伝性 環境因子

代謝因子 精神的因子

肥満の大部分は内分泌性ではない

るいは過大な身長の伸びを示す肥満は,Cushlng 症候群を否定する資料であ.る.男性ホルモンの過 剰分泌のため身長の伸びの悪化がさほど目立たな いことがあっても,この場合は男性化症状がある ので問題はない.臨床症状はよく知られている し,その代表的なものはネフ戸一幅に対するステ ロイド治療による医原性Cushing症候群として馴 染み深いので省略する.

 ii)甲状腺機能低下症についてはすでにのべた が,myxedemaのために著明な肥満になることは、

少なく,肥満になるのは代謝が低下したのに対し てカ.ロリー摂取:量が多くなるためだといつ47).

 iii)大脳,、視床下部系が関与して肥満をきたす ものにFr61ich症候群18), Laurence・Moon−Biedi 症候群4 ),Prader−Wilh症候群50)などがあるが,

これらり症候群は性発達障害や知能障害,その他 の身体症状をもつており,単純性肥満と混同され ることは先ずない.偽性副甲状腺機能低下症51)に 著明な肥満を伴うことがある..

 .b,やせ:.表11にやせの原因を内分泌疾患と非 内分泌疾患にわけてあげておいた.ここでも小児

表1.1 やせの原因

 病的な肥満と単純性肥満の区別は,成長曲線を かいて判断するのがよい.身長の伸びの悪化に対

して体重が増加している場合は病的で,単純性肥 満の場合は体重の増加と同時に身長の伸びも増加 の傾向を示す.また,病的肥満の多くは知能障害 やその他の身体的異常を伴っている.

 i)内分泌疾患の代表的なものはCushing症 候群であるが,その頻度は極めて少ない.単純性 肥満との鑑別が困難なことがあるといわれている が,尿中遊離コルチゾールの排泄量をみると,

Cushing症候群は異常に高く,これをデキサメサ ゾン抑制試験に応用すると,単純性肥満との区別 がは》?きりするという46).小児期では癌腫による ことが多いので,尿中17−KSの高い場合や男性化 症状を伴っている場合には注意を要する.

 小児期にCus恥g症候群を疑.う最大の要点は,

肥満の進行に伴う身長の伸びの悪化で,正常かあ

.泌

Simmonds病,間脳症候群?視床下部 頭蓋咽頭管発頭,脳腫瘍

         →下垂体

ano肥xia nerVosa;尿崩症 甲状腺機能二進症、   →甲状.腺 糖尿病       →膵  臓 Addison病       →副  腎 食餌の摂取あるいは吸収の障害 食餌あるいはその代謝物の過剰喪失 心血管あるいは血液疾患 感染あるいは寄生虫疾患 膠原病あるいは変性疾患 先天性代謝異常あるいは代謝障害

.新生物

Deprivation. syndrome やせの大部分は内分泌性ではない

のやせの原因の大部分は内分泌疾患によるもので はない.そこで2,3の疾患にふれるにとどめた

い.

 i)甲状腺機能充進症;病状が著しく進行すれ ぽ身長の伸びも悪化するが,門般には身長の伸び があって体重の減少が目立つ..小児期には甲状腺

(10)

腫や眼球突出が著明でないのと,主訴が疲れやす い,落着きがない,「などといった不定愁訴のよう なものが多いので,よく自律神経失調症などと誤 診される.多食の割にやせてくるというのは本症 を疑う1つの手掛りである.1女児に多いことはよ く知られている.この疾患を疑えば甲状腺機能検 査により診断は容易である.時に慢性甲状腺炎と 区別できないことがある52).

 ii)糖尿病:若年性糖尿病が体重の減少を伴う ことはよく知られているが,主訴がやせというよ うより多飲,多尿,昏睡発作などの方が多い.そ れに,若年性糖尿病と診断したら,成長障害の管 理の問題ではなくて,急に発症する危険のある昏 睡発作を防ぐ意味での急救的管理が必要だと思わ なくてはならない.

 iii)やせを伴う間脳症候群(Russel症候群)53):

間脳の腫瘍によって極端なやせの生ずることがあ る.身長はむしろ高いことが多く.多食の傾向が ある.X線写真による皮下脂肪の完全な消失が,

特異的な所見だという54).やせのくる原因とし て,GHの過剰分泌による脂肪動員をあげるもの

もある55).

 iv)anorexia nervosa:思春期以後の若い女子 に多い.やせと無月経を特徴としている.内分泌 学的にはGH,コルチゾール,性腺刺激ホルモン の分泌異常が報告されている.発症には心理的 要因が大きいと思われる.Simmonds病との鑑別 は,Simmonds病が小児期には極めて希なこと,

anorexia nervosa』 ナは心・理療法が有効.なこと,

GHの基礎値が異常に高いこと56)などの所見を考 慮すれば,むつかしくない.

 v)Addisoh病:小児期には極めて希である.

症状としては疲れやすいこと,食欲不振,体重 減少などである.原因として昔は結核が多かった が,現在では自己免疫疾患としての位置づけがな されている57)戸8).また,副甲状腺機能低下症や悪 性貧血などとの合併が報告されており,これらの 疾患と自己免疫の関係にも興味がもたれている.

 vi)尿崩症が成長異常と関連するのは,新生 児,乳幼児期の自性尿崩症のことが多い. この疾

患は伴性遺伝をするといわれるが1遺伝形式には まだ議論がある.発症が生後まもないので,.原因 不明の発熱,高張性脱水,体重増加不良などが1目 立ち,的確な診断のつかないことがある.』年長児 では,多飲,多尿ことに夜尿を主訴にすることが 多い.最:近,特発性のものに対して,副作用が少 なく,経鼻的に用いても効果の持続時間の長い,

新しい合成ADH(DDAVP)が出現し,治療しや

すくなった.

 3.性発達異常と内分泌疾患

 a.第2次性徴の早期出現(性早熟症)

 男子では9歳,女子では8歳以前に第2次性微

が出現すれば,異常と考えられる59).

 性早熟症の分類は必ずしも容易でない.それは 原因が同じでも性の違いにより外性器症状が異な るためである.一般にはisosexualとheterosexual に2大別し,更にisosexua1をtrue(生殖能力を 有するもの)とpseudo(生殖:能力のないもの)に わけている.heterosexualな性早熟はanlb三guous sex(半陰陽)と重なり合って分類上やや混乱を きたす60).ここでは内分泌性と非内分泌性とにわ けて表12に性早熟症の原因をあげておいた.この うち重要だと思われる2,3の疾患についてのべ

る.

 i)先天性副腎性器症候群(congenitabdreno−

genital syndrome,以下AGS):現在では、この病名 は概念的に古く,先天性副腎過形成(congenital       表12 性早熟症の原因

中枢神経疾患

lcCune−Albright症候群 .→視床下部

.Cushing病 →下垂体

内分泌 松果体腫瘍 b状腺機能低下症

寳t皮質ホルモン生合成障害→副

→松果体 ィ甲状腺

副腎腫瘍

ォ腺腫瘍 →性

Premature thelarche →  ?

Pre血ature adrenarqhe →  ? Male gynecomastia →  ?

体質的性早熟症

内分泌 乳房腫瘍

シ側性乳瘤

医原性

一1215一

(11)

.adrenal hyperplasia・以下CAH)61)という病名の 中に含まれる.この疾患の本態は副腎皮質での副 腎皮質ホルモン合成障害なので,正確にはinborn

errons of cortisol and aldosterone biosynthesisと いうべきだとする意見もある61).それは合成が阻

害される部位と程度によって,外性器症状が全く なかったり,逆に男子の外性器が女性化したりす ることがあって,病名と症状が統一的に理解でき ないことによる.参考までに,副腎皮質ステロイ ドの生合成過程を図5、に,主な副腎皮質ホルモン

Cholo5Poro1

5id。. ㎞in cleovoo6

【.9

伽g騰n。b哺 1ん璽トγdro民γρr8gn●mlo励。 o Dεhydro1500ndro〜短ro【o

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11β・Hγ6ro麗γ・ ム4一。凶。、,榊db。。

婁8−hγdro瓦ylo,io丹

Agdo5雪e「on6

図5 副腎皮質ホルモン生合成経路 表13 先天性副腎過形成の酵素障害部位と臨床症状 Deficiency V{r11i・

嘯≠狽奄盾

Sexual

≠高b奄№浮奄狽

Dominant precursor

@    steroids Salt loss Blood

垂窒?唐唐?re

Miscellaneous

Desmolase 0 Male Co血mon Low Rare;may be some

?獅狽奄狽?as lipQid hype−

窒垂撃≠唐奄

i乞製鑑露譲謁齪曹. Female Male Pregnenobne

р?窒奄魔≠狽奄魔? Common Low Rare;enzyme probab一・

hy also deficient in ニtal testes 17−hydroxyIase of

≠р窒?獅≠ 0 0 Deoxyco就icosterone,   ■cortlcosterone

0 Elevated Patients have hypera−

Pdostemnism decreas一      「ed plasma renin

17・hydroxylase of

≠р窒?獅≠?and gonad 0 Male DeoxycQrticosterone,

bOrtiCOStemne 0 Elevated Females a皿enorrheic;

高≠撃??have ambiguo−

浮?genitalia

11−hydroxy!ase Present Fセmale PeoxycortisO1,deoxycorticosterone

0 Elevated

濫y瀦8翻盟not

高?ltiple defbcts pos−

唐奄b撃

.21−hydroxylase Present Female Progesterone

р?窒奄魔≠?ives, u rinary

o1鴇gnanetrioI

50〜80% LOW

At璽east two types

翌奄?h partia王and 唐?魔?窒?enzyme de艶。−

18−hydroxyla曲 0 0 Deoxycorticosterて)nε,   噛cortlcosterone

Common,

?≠窒撃 Low

Initia夏picture of adr・

?獅≠?insufficiency but

р??Uct apParentlytransient

18−dehydrogenase 0 @  0 DeoxycortiCos止erone,

bOrtiCOst.erOne CQmmon,

?≠窒撃 Low Salt−IQsing tendencydecreases wit h age

(12)

合成障害の部位とその臨床症状をまとめて表13 に示した.大部分が210H−1ase欠損によるもの で,他の型は希で,ここではこまかい議論はおく として,いわゆるAGSについて簡単にのべる.

AGSは糖質ステロイドであるコルチゾールの合成 が障害され,代謝されない前駆物質が男性ホルモ ン合成にまわって,その結果過剰に産生された男 性ホルモンの影響で女子に男性化症状,男子に外 性器早期発達の症状をきたす.このうち3β一〇H−

steroid dehydrogenase欠損は女児に男性化,男子 に女性化の症状を示す.これは女子では弱い男性 ホルモンであるdehydroep互androsterone(DHEA)

が過剰産生されているが,男子では睾丸でも3β一

〇H−steroid dehydrogenaseが欠損しtestosterone が産生されないためとされる.

 外性器異常の他にみられる特徴的症状から単純 型,塩喪失型,高血圧型にわけられている.中で 最も注意を要するのは塩喪失型で,見逃すと急死 する可能性がある.女児では外性器の異常,すな わち半陰陽を呈するため生直後より注意をひいて おり,これが食欲不振,嘔吐,脱水,体重増加が 不良などの異常を示すので,臨床的に診断がつき やすい.男児では,2・3歳になってはじめて目 立つた外性器の異常(macrogenitosomia precox)

を示すので,新生児期に診断がつかぬまま死亡す ることがある.

 血液化学検査では,低Na血症,高K血症,代 謝性アシドーシスを呈するのが特徴である.女児 は半陰陽になるが,X染色質は陽性である.

 単純型,高血圧型は乳幼時期に致命的な症状を 呈することはないが,外性器異常に加えて身長の 伸びがよく,高身長を呈する.このとき成長曲線 の異常と骨年齢の促進をみれば,本症に間違いな い.治療は副腎皮質ホルモンの投与と十分な食塩 の補給である.治療経過中成長曲線を作製して,

成長が正常なパターンで行われているかどうかを チェックすることが大切である。

 ii)部分的性早熟症:これにはpremature the−

1archeとpremature adrenarche(pubarche)とが ある.前者は女児にみられるもので,乳房のみが

発達する.6ヵ月〜2歳に多く,4歳以後は希で ある.後者は性毛のみが発達するもので,男児に もみられるが女児に多く,5〜8歳頃発症する.

 premature thelarcheは注意して観察すると割 に多いものであるが,成長曲線のパターンおよび 骨年齢が正常であり,この点が他の性早熟症と異 なる.かつては乳腺組織の感受性に原因があると されたが,現在ではエストロゲンの分泌増加がみ られるという62).多くは一過性で数年のうちに自 然消退する.

 premature adrenarcheをよ身長,骨年齢共に標準 を上まわっている.原因は副腎由来の男性ホルモ

ンが僅かに増量するためといわれる63).筆者には 経験がなく,premature thelacheに上ヒベて錬れだ

と思われる.

 premature thelarcheやpremature adrenarche と診断した場合場合でも,成長曲線,骨年齢の推 移を3ヵ月毎ぐらいに注意して観察し,性早熟症 や性ホルモン分泌性腫瘍との鑑別に留意する.成 長曲線が正常のパターンならぽ,経過観察のみで

よい.

 iii)McCune−Albright症候群64);特徴的な皮膚 の色素沈着と骨病変(丘brous bone dysplasia)が あり,真性性早熟症を伴うのは女児である.性早 熟をきたす真の原因ははっきりしない.

 量v)本態性性早熟症は女子に多くみられ,頻度 としても最も多い.次いで中枢神経系の病変に合 併するもので,この両者で小児期の性早熟症の75

%を占める59).診断は容易だが治療はなかなか困 難である.

 v)若年性甲状腺機能低下症に合併する性早熟 症が知られており,原因としてはTSHの過剰分 泌機構に追従して性腺刺激ホルモンが過剰分泌さ れるという説65>など種々の仮説が出されている.

 b,性発達遅延

 小児期に性発達遅延が主訴になることは少な い.一般に男子17歳,女子15歳で第2次性徴をみ ないと遅延とみなされている66,.その原因を内分 泌性と非内分泌性にわけて表14にあげた.このう ち臨床的に重要と思われるもの2・3についての 一1217一

(13)

表14 性発達遅延の原因 無下垂体症,中枢神経疾患 Fr61ich症候群         →視床下部 Laurence−Moon・Bied1症候群 Prader−Willi症候群

下垂体性巨人症 →下垂体

分泌 下垂体機能低下症候群 b状腺機能低下症

b状腺機能充進症 →甲状腺

糖尿病 →膵

Addi釦n病 →副

無睾丸症

Tumer症候群, Kline飼ter症候群→性 真性半陰陽

体質性(家族性)

非内

系統疾患 Anorexia nervosa 牲腺奇形

柾ス組織不応症

べる.

 三)思春期遅発症42):これについては小人症の 項ですでにのべたが,第2次性徴の発達が遅れる ことは男子にとって心理的に重大な問題である.

LH, FSHの血中濃度は暦年齢でみると低いが,

骨年齢でみた年齢に相当しているという.経時的 に性腺刺激ホルモンの分泌能をみれば,次第に正 常成人のそれに近づく.原則として治療の必要は ないが,心理的影響が大ききいと考えられる場合 はゴhCGやテストステロンによる短;期間の治療 をすすめる人もある42).

 ii)Turner症候群とKlinefelter症候群=これ らの症候群は生殖細胞の減数分裂異常(不分離)

に起因するものである.性腺の形成障害(gonadal dysgenes三s, testicular dγsgenes三s).があり,したが

って思春期年齢以後では高性腺刺激ホルモン性の 性腺機能低下症となる.

 小児期の症状として,Turner症候群は低身 長,翼状頚,外反肘,耳介異常などの外表奇形や 大動脈縮窄があるζとなどから注意をひくが,

K:linefelter症候群は外性器の低形成(小児期には 目立たない)以外に特徴的な所見がない.性発達 の異常としては,Turner症候群は原発性無月経 であり,Klinefelter症候群では男子第2次性徴の

欠如,女性乳房などである.根本的な治療法はな いが,心理的,社会的な面を考慮して性ホルモン 療法が行われる.Turner症候群の低身長に対し て蛋白同化ホルモンの投与が試みられている67).

Klinefelter症候群の身長はむしろ高いこ・とが多

い.

 これらの症候群を疑った時は,X染色質検査が 役立つ.すなわち,Turner症候群の表現型は女 性であってX染色質が陰性,Klinefelter症候群の 表現型は男性であるが,X線色質が陽性である.

しかし,・この両者共染色体構成はすべてがXO あるいはXXYではなく,もっと複雑で,その臨 床症状も様々である.詳しくは成書を参照された

い68).

 c。外性器異常(半陰陽)

 ここでは主に半陰陽の鑑別診断についてのべた い.それは,日本の法律が新生児を14日以内に性 別を男女にわけた上で戸籍に登録するように定め ており,半陰陽の場合,医学的にも社会的にも早 期に正確な診断が要求されるからである.

 半陰陽の生ずる原因と新生児期での鑑別診断を フローチャートとして図6にあげた.

 性腺や染色体分析からいって男性とはつきりし ても,女児に比べ男児の半陰陽め方が外陰部の修 複がむつかしい.

 図6にあげた疾患の中で,内分泌学的に重要な ものはCAHである。・これについては先にのべた が,新生児期の問題点を2・3のべておく調  CAHはX染色質陽性の半陰陽の最も一般的な

原因である.女児の仮性半陰陽をみたときは先ず CAHを考えねぽならないが, CAHが原因で男児 に仮性半陰陽が生ずることもあるので注意が必要 である(表13参照).

 ,生後1週以内に塩喪失による重篤な症状がおこ ることは先ずないので,この間に確定診断をす る努力が必要とされる.24時間尿の17KSが3鵡ほg をこえればCAHが疑わしい.

 最近では血中ACTH,王7−hydroxyprogester。ne,

11−deoxycortisa1などの測定が可能になったので,

近い将来生化学的な診断が容易になると思われ

(14)

XY XX.

不分離(モザイク)

wXY/XY, XY/XOなど

一受精→

@ 発生初期 不分離(モザイク)wX/XO, X××/XOなど 奇形

カ殖器官の欠損 原基形成

奇形 カ殖器の欠損

攣鞠鵬

睾丸 性の分化 卵巣

1つのXは生存に必要

PつのYは睾丸に必要 1つのXは生存に必要

烽、1つのXは卵巣に必要 ミユレル氏管に対する

リ丸の作用 子宮θ

相ヌ㊦.

子宮㊦

相ヌ①

子宮㊦

相ヌ①

testicular

@  feminization 增Xの程度の尿道下裂

テストステロン㊤

 テストステロンの影響

剔S勇鋒状

@    ルモン不な避示増禽碧挫着    4剤

テストステロンe

卑挫着  准さふ    扮    や

診前

副腎性器症候群

体側のprogesterohe過剰

性外性器 陰 陽 性外性器

         X染色質

/  \㊦

  24日寺間尿中17KS

    \

家族歴\

)       ㊦  ↓

色体分折 ストステロン測定 験開腹

β一〇Hステロイド ehydrogenase 欠損(稀れ)

族性男性仮性半陰陽

      ↓

    24時間尿中17KS

  /\

増加       正常       ↓

天性副腎過形成   母体からの男性ホルモン       の影響(投薬,腫限陽など)

       e/へ\、

性半陰陽

ixed.gonadal dysgenesis 性仮性半陰陽

性腺刺激ホルモン.性ォ機能低下症

 ↓ 色体分折 腔鏡検査 験開腹

旨 1」    i生

性仮性 陰陽 性半陰陽

発性女性仮性半陰陽 ixed塞onadal dysgen弓sis

6 半陰陽の成因と鑑別診断

1219一

Hallらの原案を改変,追加)

参照

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