2004 年度 修士論文
色・エッジ情報を用いた汎用性のある 障害物回避
提出日: 2005 年 2 月 2 日
指導: 村岡洋一教授
早稲田大学大学院 理工学研究科 情報・ネットワーク専攻 学籍番号: 3603U024-4
大木 敦夫
目 次
第1章 序論 1
1.1 研究の背景 . . . . 1
1.2 研究の目的 . . . . 2
1.3 研究の実装 . . . . 3
1.4 Papero . . . . 3
1.5 本論文の構成 . . . . 4
第2章 従来の関連研究 5 2.1 従来の関連研究 . . . . 5
2.1.1 エッジ情報を用いた障害物検出 . . . . 5
2.1.2 ステレオ視による距離マップの生成 . . . . 7
2.1.3 無限遠線を用いた障害物検出 . . . . 7
2.2 従来の関連研究の問題点 . . . . 9
2.2.1 エッジ情報を用いた障害物検出における問題点 . . . . 9
2.2.2 ステレオ視による距離マップの生成における問題点 . . . . 12
2.2.3 無限遠線を用いた障害物検出における問題点 . . . . 12
2.3 従来の関連研究との相違点 . . . . 13
第3章 提案する障害物回避システム 14 3.1 システムの概要 . . . . 14
3.2 システムにおける処理 . . . . 15
3.2.1 床色情報取得 . . . . 16
3.2.2 エッジ情報による補助 . . . . 19
3.2.3 障害物マップ作成 . . . . 22
第4章 実現方法 24 4.1 床色情報の取得 . . . . 24
4.2 色情報による障害物検出 . . . . 25
4.3 障害物マップの生成 . . . . 27
4.4 エッジ情報による障害物検出 . . . . 29
4.5 エッジ情報による補助 . . . . 31
第5章 評価と考察 35 5.1 評価 . . . . 35
5.1.1 様々な床パターンにおける障害物検出 . . . . 35
5.1.2 下部領域に障害物があった場合の信頼性 . . . . 72
5.1.3 障害物回避 . . . . 76
5.2 考察 . . . . 79
第6章 結論 81 6.1 まとめ . . . . 81
図 目 次
1.1 収集する写真のイメージ . . . . 2
1.2 PaPeRoの詳細 . . . . 3
2.1 取得画像1 . . . . 6
2.2 エッジ検出 . . . . 6
2.3 左右カメラにおける視差 . . . . 7
2.4 障害物検出 . . . . 8
2.5 障害物形状抽出 . . . . 8
2.6 障害物マップ . . . . 9
2.7 取得画像2 . . . . 10
2.8 エッジ検出の失敗 . . . . 10
2.9 取得画像-床状態が均一でない場合. . . . 11
2.10 床状態が均一でない場合の検出結果 . . . . 11
3.1 床領域 . . . . 15
3.2 障害物検出(色) . . . . 16
3.3 下部領域の細分化 . . . . 17
3.4 複数色の床 . . . . 17
3.5 調査領域内に障害物がある場合 . . . . 18
3.6 細分化した領域への番号の割り当て . . . . 18
3.7 検出ミスが起きる場合 . . . . 19
3.8 類似色の障害物による検出ミス . . . . 20
3.9 エッジによる検出結果 . . . . 20
3.10 検出結果の走査(色) . . . . 21
3.11 エッジによる補助の付加 . . . . 22
3.12 取得画像の走査 . . . . 23
3.13 障害物マップ . . . . 23
4.1 取得画像の下部領域細分化 . . . . 24
4.2 取得画像3 . . . . 25
4.3 床色基準値のみの障害物検出 . . . . 26
4.4 床色基準値に幅を持たせた障害物検出 . . . . 27
4.5 障害物マップ(ゴミ処理前) . . . . 28
4.6 障害物マップ(ゴミ処理後) . . . . 29
4.7 エッジの検出(Prewitt) . . . . 30
4.8 取得画像4 . . . . 31
4.9 色情報障害物検出 . . . . 32
4.10 生成される障害物マップ(色情報のみ) . . . . 32
4.11 付加エッジ情報 . . . . 33
4.12 補助を加えた障害物検出結果 . . . . 33
4.13 生成される障害物マップ(補助付加) . . . . 34
5.1 床:カーペット(単色) . . . . 36
5.2 床状態:単色−取得画像 . . . . 36
5.3 床状態:単色−提案手法による障害物検出 . . . . 37
5.4 床状態:単色−生成される障害物マップ . . . . 37
5.5 床状態:単色−エッジ情報による障害物検出 . . . . 38
5.6 床:カーペット(二色) . . . . 39
5.7 床状態:二色−取得画像 . . . . 39
5.8 床状態:二色−提案手法による障害物検出 . . . . 40
5.9 床状態:二色−生成される障害物マップ . . . . 40
5.10 床状態:二色−エッジ情報による障害物検出 . . . . 41
5.11 床:カーペット(三色) . . . . 42
5.12 床状態:三色−取得画像 . . . . 42
5.13 床状態:三色−提案手法による障害物検出 . . . . 43
5.14 床状態:三色−生成される障害物マップ . . . . 43
5.15 床状態:三色−エッジ情報による障害物検出 . . . . 44
5.16 床:木製(単色) . . . . 45
5.17 床状態:単色−取得画像 . . . . 45
5.18 床状態:単色−提案手法による障害物検出 . . . . 46
5.19 床状態:単色−生成される障害物マップ . . . . 46
5.20 床状態:単色−エッジ情報による障害物検出 . . . . 47
5.21 床:木製(二色) . . . . 48
5.22 床状態:二色−取得画像 . . . . 49
5.23 床状態:二色−提案手法による障害物検出 . . . . 49
5.24 床状態:二色−付加されたエッジ情報 . . . . 50
5.25 床状態:二色−提案手法による障害物検出(補助情報無). . . . 50
5.26 床状態:二色−生成される障害物マップ . . . . 51
5.27 床状態:二色−エッジ情報による障害物検出 . . . . 51
5.28 子供の遊び場として利用されているマット . . . . 52
5.29 床:EVA樹脂 . . . . 53
5.30 床状態:二色−取得画像 . . . . 53
5.31 床状態:二色−提案手法による障害物検出 . . . . 54
5.32 床状態:二色−生成される障害物マップ . . . . 54
5.33 床状態:二色−エッジ情報による障害物検出 . . . . 55
5.34 床状態:三色−取得画像 . . . . 56
5.35 床状態:三色−提案手法による障害物検出 . . . . 56
5.36 床状態:三色−生成される障害物マップ . . . . 57
5.37 床状態:三色−エッジ情報による障害物検出 . . . . 57
5.38 床状態:四色−取得画像 . . . . 58
5.39 床状態:四色−提案手法による障害物検出 . . . . 59
5.40 床状態:四色−生成される障害物マップ . . . . 59
5.41 床状態:四色−エッジ情報による障害物検出 . . . . 60
5.42 床:石製(単色格子状) . . . . 61
5.43 床状態:単色格子状−取得画像 . . . . 61
5.44 床状態:単色格子状−提案手法による障害物検出 . . . . 62
5.45 床状態:単色格子状−生成される障害物マップ. . . . 62
5.46 床状態:単色格子状−エッジ情報による障害物検出 . . . . 63
5.47 床状態:光の反射による影響無−取得画像 . . . . 64
5.48 床状態:光の反射による影響無−提案手法による障害物検出 . . . . . 64
5.49 床状態:光の反射による影響無−生成される障害物マップ . . . . 65
5.50 床状態:光の反射による影響無−エッジ情報による障害物検出 . . . . 65
5.51 床状態:光の反射による影響小−取得画像 . . . . 66
5.52 床状態:光の反射による影響小−提案手法による障害物検出 . . . . . 66
5.53 床状態:光の反射による影響小−生成される障害物マップ . . . . 67
5.54 床状態:光の反射による影響小−エッジ情報による障害物検出 . . . . 67
5.55 床状態:光の反射による影響大−取得画像 . . . . 68
5.56 床状態:光の反射による影響大−提案手法による障害物検出 . . . . . 68
5.57 床状態:光の反射による影響大−生成される障害物マップ . . . . 69
5.58 床状態:光の反射による影響大−エッジ情報による障害物検出 . . . . 69
5.59 床状態:障害物の床への映り込みが激しい−取得画像 . . . . 70 5.60 床状態:障害物の床への映り込みが激しい−提案手法による障害物検出 70 5.61 床状態:障害物の床への映り込みが激しい−生成される障害物マップ 71
5.62 床状態:障害物の床への映り込みが激しい−エッジ情報による障害物
検出 . . . . 71
5.63 床状態:下部領域における障害物の存在(小)−取得画像 . . . . 73
5.64 床状態:下部領域における障害物の存在(小)−提案手法による障害物 検出 . . . . 73
5.65 床状態:下部領域における障害物の存在(小)−エッジ情報による障害 物検出 . . . . 74
5.66 床状態:下部領域における障害物の存在(大)−取得画像 . . . . 75
5.67 床状態:下部領域における障害物の存在(大)−提案手法による障害物 検出 . . . . 75
5.68 障害物状況Case1 . . . . 76
5.69 Case1における回避ルート . . . . 77
5.70 障害物状況Case2 . . . . 78
5.71 Case2における回避ルート . . . . 78
表 目 次
4.1 Prewittオペレータ-1 . . . . 30 4.2 Prewittオペレータ-2 . . . . 31 5.1 対応表 . . . . 72
第 1 章 序論
本論文では、PaPeRoプロジェクトにおいて作成している「報道記者ロボットシス テム」に、色、及びエッジ情報に基づいた障害物回避の機能を付加することを提案 する。
「報道記者ロボットシステム」は、その目的上、的確にスピーディに目的地への 移動を行わなければならない。このため、移動中における障害物回避や、その後の 経路制御を正確に行うことが重要になってくる。しかし、現在のPaPeRoの障害物 回避の仕様上、スピード、及び経路制御の的確性の不足感が否めない状況にある。そ こで、本研究では、色・エッジ情報を用いた障害物回避を提案し、これを用いるこ とで、スピード、及び経路制御の的確性を補うことを目指した。
1.1 研究の背景
PaPeRoプロジェクトでは、現在「報道記者ロボットシステム」の開発に取り組ん
でいる。近年、核家族化や共稼ぎ、シングルマザーの増加などにより、託児所に子 供を預けるケースが増えている。これにより、親と子供のコミュニケーションの時 間が減少している。このようなこともあり、ウインワンズウエイ株式会社では、二 年ほど前からライブカメラを託児所に設置するASP事業を開始し、子供を託児所 に預ける父母に託児所内での子供達の映像をリアルタイムに届けている[1]。しかし、
このようなシステムでは、自分の子供だけにスポットライトを当てることが出来ず、
子供の様子を伺うことは難しい。そこで、本プロジェクトでは、パーソナルロボット
PaPeRo[2]を用いて、仕事の合間などの、限られた時間でしか利用できないユーザー
が多くを占めることが予想されるシステムにおいて、ロボットの移動することがで きるという特性を考慮し、ロボットに他のPaPeRoと遊ぶ子供達の画像を自律的に 収集させ、この取得した画像を、Web上において閲覧可能にする「報道記者ロボッ トシステム」を提案している。このシステムの実現は、ライブカメラの短所である、
自分の子供にスポットライトを当てた画像の取得が出来ないことを補完し、子供の 様子を伝える別の方法として期待できると思われる。収集する写真のイメージとし ては、以下のような、PaPeRoと遊んでいる様子のものとしている。
図 1.1: 収集する写真のイメージ
この「報道記者ロボットシステム」において、重要な要素のひとつとなるのが、障 害物回避機能である。本システムでは、子供がPaPeRoと遊んでいる瞬間をシャッ ターチャンスとして、子供の相手をする役割のPaPeRoにおいて、子供と触れ合って いることがわかるイベントが発生した場合に、カメラマンの役割をするPaPeRoに、
写真の撮影を要求する。この時、カメラマンの役割を担ったPaPeRoは、的確にス ピーディに写真撮影の要求をしたPaPeRoの元に移動しなければならない。ゆえに、
カメラマンの役割のPaPeRoは、障害物への遭遇などによる、目的地への到達の失 敗は避けなければならない。そこで、本研究では、PaPeRoに障害物回避機能を付加 することで、目的地への到達を、的確かつスピーディにすることを目指している。
1.2 研究の目的
本研究の目的は、写真撮影を要求したロボットのもとに向かう過程で、障害物に 遭遇する可能性がある環境において、これらを回避し、安定して目的の場所に到達 させることにある。そこで、本研究では、障害物の検出に、色・エッジ情報を用いる ことにより、床の状態による影響にとらわれることなく障害物を回避し、目的地へ
到達させることを目指す。
1.3 研究の実装
本研究では、起動時に取得した画像の下部領域において検出した色を床色とし、こ れをもとに障害物の検出を行い、移動可能領域を表す障害物マップを作成すること で、床の状態による影響を軽減した障害物検出を狙う。しかし、これだけでは画像 の下部領域に障害物がある場合などによる、床色情報の検出ミスが発生することや、
床色との類似色の障害物を検出できない場合がある。そこで、画像の下部領域にお ける重み付けや、エッジ情報による障害物の検出を補助として用いることで、これ らのようなものを除去し、最良の移動方向を検出できる。
1.4 Papero
本研究で利用しているPaPeRoとは、パートナー型パーソナルロボット(Partner- type Personal Robot)の頭文字をとったもので、家庭で一緒に過ごしながら、人と やりとりをすることができるロボットを目指して、NEC中央研究所が開発した試作 機である。
図 1.2: PaPeRoの詳細
1.5 本論文の構成
本論文は以下の6章からなる。
第 1 章 序章
本論文の概要、目的、構成について述べる。
第 2 章 従来の関連研究
従来の関連研究を紹介し、本研究との相違点を述べる。
第 3 章 本研究の手法
提案する障害物回避について述べる。
第 4 章 実現方法
提案する障害物回避における、その処理について述べる。
第 5 章 評価と考察
提案する障害物回避の評価を行い、その結果を考察する。
第 6 章 結論
本論文のまとめ、今後の課題を述べる。
第 2 章 従来の関連研究
本章では、これまでに提案されてきた障害物検出方法をいくつか紹介し、その問 題点、及び本研究との相違点について述べる。
2.1 従来の関連研究
これまでに提案されてきた画像処理による障害物の検出方法として、以下のよう なものがある。
2.1.1 エッジ情報を用いた障害物検出
エッジ情報とは、取得画像中の輪郭を抽出する手法である。例えば、図2.1のよう な画像の場合、図2.2のようなエッジ情報が得られる。
図 2.1: 取得画像1
図 2.2: エッジ検出
これを用いて、床の色が均一である時、取得した輪郭情報を画像の下から走査し、
抽出された輪郭を障害物として扱い、その輪郭情報までが移動可能な領域、つまり
床であると考えることができる。このようにして、画像中の輪郭情報を用いて移動 可能領域を割り出すのが、この手法である。
2.1.2 ステレオ視による距離マップの生成
ステレオ視とは、左右のカメラから取得した右画像、及び左画像において撮影さ れた同一の物体のその視差から、その物体までの距離を求める方法である(図2.3)。
図 2.3: 左右カメラにおける視差
これを用いて、画像中における距離関係を表した距離マップを作成し、移動可能 領域を算出する方法が、この方法である。
2.1.3 無限遠線を用いた障害物検出
床が平面であると仮定した時、地平線よりも上にある物は、障害物であるという原 理から、障害物の検出を行っている。まず、図2.4のようにカメラの3次元位置・角 度の情報から、床平面を無限にのばしていき、地平線に相当する無限遠線を求める。
図 2.4: 障害物検出
この無限遠線よりも上部にある画素を取得し、図2.5この無限遠線から下に向って 走査する。そして、輝度値を調べ、その差が小さかった場合、それは同一の物体の ものとして判断し、画素を融合していく[3]。
図 2.5: 障害物形状抽出
これにより、図2.6のような障害物マップを得ることが出来る。このようにして移 動可能領域を割り出し、障害物回避を行う。現在のPaPeRoに実装されている手法
である。
図 2.6: 障害物マップ
2.2 従来の関連研究の問題点
2.2.1 エッジ情報を用いた障害物検出における問題点
エッジ情報を用いた障害物検出における問題点として、照明環境に著しく左右さ れることがあげられる。取得画像におけるエッジ情報、つまり輪郭情報の抽出は、あ る画素とその周辺画素の濃淡値の変化量から求められる。ゆえに、障害物と床との 濃淡値の変化量が少ない場合や、障害物から伸びる影などの影響により、輪郭が抽 出できない場合があるのである(例:元の画像図2.7から図2.8のようなエッジ情報 が得られた。このようにバスケットボールや右の棚の輪郭情報の取得に失敗してい る。これでは、バスケットボールや、棚がある領域を、移動可能領域として扱って しまうため、ロボットを障害物に激突させてしまう恐れがある)。
図 2.7: 取得画像2
図 2.8: エッジ検出の失敗
また、この手法は、床の状態が均一であることが条件となる。例えば、図2.9のよ うに、床がチェック柄の模様の床の場合、図2.10のようなエッジの検出結果が得ら れる。
図 2.9: 取得画像-床状態が均一でない場合
図 2.10: 床状態が均一でない場合の検出結果
この検出結果では、障害物によるエッジ情報と、床によるエッジ情報を区別する ことができない。ゆえに障害物領域を特定することができないため、ロボットを移 動させることができないのである。このため、エッジ情報を用いた障害物検出は、汎
用性、及び安定性に欠けてしまう。ゆえに、実環境での利用に適した手法とは言え ないのである。
2.2.2 ステレオ視による距離マップの生成における問題点
ステレオ視における問題点として、基準画像の領域と同じパタ−ンが比較画像で 見出せないことによるミスマッチが発生することがあげられる。この原因には大き く2つある。一つは物体の陰になって一方のカメラでは見えているが、もう一方のカ メラでは見えない場合(オクル−ジョン)があること。もう一つは、見る方向によっ て明るさが変化することや、2つのカメラの特性が異なるなどして、同一の物体が、
別の物体に見えてしまう場合である。前者については、比較カメラを2台にして基 準カメラの両側に置くことで解決する方法が提案されている。しかし、後者に関し ては、カメラの特性を合わせること、補正することや、マッチング領域の大きさを 工夫、マッチングに正規化相関を使うなど、様々な方法が提案されているが[5]決定 打はない。また、この他にも、両カメラのパラメータの違い、位置や角度のずれな どによって、必ずしも正しい視差を得ることができないことがあるという点。そし て、カメラから得られる画像は、カメラのレンズの影響をうけ、画像中心から離れ るほど歪み量が大きくなるため、間違った視差を求めてしまう点などの問題もある。
これらに対しての解決案も提案されているが[6]、計算量が膨大になるなど、理想的 な手法とは言い難い。ゆえに、ステレオ視による距離マップを利用した障害物回避 は、安定性に欠け、実環境での利用に適した方法とは言えないのである。
2.2.3 無限遠線を用いた障害物検出における問題点
無限遠線、つまり地平線を用いた障害物検出における問題点として、輝度値をも とに無限遠線から下に向かい走査していることがあげられる。この手法は、無限遠 線上部の物体を障害物とし、輝度値をもとに無限遠線から下に向かい走査し、障害 物の検出を行っている。しかし、障害物全体の輝度値がほぼ一定であることが条件 なため、障害物において輝度値に大幅な変化があった場合、その時点で走査が終了 してしまい、障害物の最下端まで走査が行かないのである。このような場合により 算出される障害物マップは、障害物領域までを移動可能領域として扱ってしまうた め、障害物の回避に失敗する恐れがあるのである。また、無限遠線より上部にある もののみを障害物として扱うので、無限遠線より下部にある小さな障害物は検出さ れないという問題点もある。
2.3 従来の関連研究との相違点
従来の手法は、床の状態に大きく左右され、障害物検出の汎用性に欠けたもので あった。そこで、本システムでは、システム起動時において取得した画像の下部領 域から、床色情報を取得する。この床色情報を用いて障害物検出を行うことで、床 の状態に対し汎用的な障害物検出を行うことが出来る。
第 3 章 提案する障害物回避システム
本章では、提案する障害物回避システムについて述べる。3.1ではシステムの概要 を、3.2ではシステムにおける、障害物検出方法、及び移動可能領域マップ作成の処 理の流れについて述べる。
3.1 システムの概要
提案する障害物回避システムにおける障害物の検出は、色情報をベースに行って いる。はじめに取得した画像の下部領域から、床色の情報を取得し、この床色以外 の色が取得画像中に現れた場合、それを障害物としてみなしている。この時、取得 する床色情報は、画像の下部領域を一定領域毎に細分化し、それぞれから床色情報 を割り出す。これにより取得した床色情報から、障害物の検出を行う。この方法でな らば、床色情報以外の色を、全て障害物として扱っているので、エッジ情報による 障害物検出などに見られた、床の色が均一でない場合において、床の模様のエッジ 情報を抽出してしまい、障害物の誤検出が発生することや、濃淡値の変化量の少な さによる障害物の検出ミスなどは起こらず、汎用性のある障害物の検出を行うこと が出来る。しかし、これだけでは、床色情報取得時に用いる取得画像の下部領域に おいて、床以外の物、つまり障害物が存在した場合、これも床色情報として扱って しまう場合がある。そこで、一定領域毎に細分化した画像の下部領域から割り出し たそれぞれの床色情報を床色候補とし、これらの床色候補をそれぞれ比較し、類似 床色候補の出現頻度や、その位置関係から重み付けを行う。その結果より、床色候 補を絞込み、床色情報を確定させる。ただし、複数の床色情報をもとに障害物検出 を行うことは、床色と類似した色の障害物の検出ミスを招く危険性がある。そこで、
エッジ情報による障害物検出を補助として用いることで、より安定した障害物検出 を行うことができる。そして、これをもとに移動可能領域を表した障害物マップを 作成する。これにより、床の状態に対して汎用的で、かつ安定して的確な移動可能 領域を割り出すことができる障害物マップを生成することができる。
3.2 システムにおける処理
本システムでは、画像中における床色情報を取得する。図3.1のように、取得画像 中の下部領域において、最も多く検出された色を、床の色と捉えることが出来る。
図 3.1: 床領域
床の色は同一であると仮定すると、図3.2のように色情報から推定される床領域に おいて、床の色以外の色が検出された時、これを障害物と捉えることが出来る。
図 3.2: 障害物検出(色) この考えをもとに障害物の検出を行う。
3.2.1 床色情報取得
床色情報の取得は、取得した画像の下部領域を図3.3のように、一定領域毎に細分 化し、それぞれの領域内において最も多く現れた色情報、つまりY成分、U成分、V 成分の組を床色情報として割り出す。
図 3.3: 下部領域の細分化
このように、画像の下部領域において複数の床色情報を取得することにより、図 3.4のような色が複数ある床にも対応することが出来る。
図 3.4: 複数色の床
ただし、この取得した床色情報を、そのまま使うのでは、図3.5のように、取得し た画像における下部領域内において床ではない物、つまり障害物が存在した場合、こ の物体の色情報も床色として取得してしまい、障害物の検出ミスを招いてしまう。
図 3.5: 調査領域内に障害物がある場合
そこで、各領域から割り出した床色情報を、床色候補とし、これらの類似色出現 頻度、及びその位置関係に重み付けを行うことで、床色候補の絞込みを行う。まず、
それぞれの領域毎に、図3.6のように番号をふる。
図 3.6: 細分化した領域への番号の割り当て
そして、ある床色候補に対して、類似している床色候補があるかどうかを調べる。
もし該当する床色候補があった場合には、それぞれの領域の番号を調べ、その床色
候補が割り出された領域との位置関係を調べる。その結果、それぞれの領域が一定 以上の離れがあった場合には、それに応じたポイントを加算し、それぞれの位置関 係が近い場合には、例え類似色であったとしてもポイントを加算しない。そして、一 定以上のポイントを獲得した床色候補を、床色情報として扱う。これにより、先程の 図3.5のような場合の画像中の下部領域において、一定領域のみに存在するような障 害物の色を除去することが出来る。
3.2.2 エッジ情報による補助
本手法において、最も懸念されるのが、複数の床色情報を取得することによる、床 色と類似色の障害物の検出ミスである。これは、床色が均一の状態であるならば、取 得する床色情報も均一なものになるため、床色と類似色の障害物が現れる可能性が 低くなるが、床色が複数の場合、取得する床色情報もそれに応じて多くなるため、類 似色の障害物が現れる可能性が高まってくる。そこで、エッジ情報による障害物検 出を用いることで、この問題への対応を試みている。前章でも述べたように、エッ ジ情報による障害物検出は、床の状態が均一でない場合、その輪郭も抽出してしま うため、汎用性に欠けるものであった。そこで、このエッジ情報を部分的に用いる ことで、本手法の補助として利用する。床色と類似色の障害物の検出ミスは、図3.7 のような場合が考えられる。この場合、抽出される床色情報と類似色を持つ障害物 を床領域と判定してしまい、図3.8のような障害物の検出ミスが発生する。
図 3.7: 検出ミスが起きる場合
図 3.8: 類似色の障害物による検出ミス
この時、エッジ情報による障害物検出では、図3.9のような検出結果を得ることが 出来る。
図 3.9: エッジによる検出結果
これを部分的に用いる方法として、まず色情報による障害物検出結果を図3.10の ように上から下へと走査する。
図 3.10: 検出結果の走査(色)
そして、色情報による障害物検出結果において、障害物と判断された最も底辺に 近い座標を取得する。次に取得したX座標と、移動可能な理論的距離を用いて、そ の地点に対するY座標を次のように求める。まず、次式から、X座標における水平 角度を求める。
水平角度=45×arctan
Ãχ−画像の幅÷2 カメラパラメータ
!
÷arctan (1) この水平角度を用いて、次式により、Y座標における垂直角度を求める。
垂直角度=90−arctan
Ã移動可能限界距離×cos (水平角度×π÷180) パペロの高さ
!
× 180 π
これを用いて次式により、Y座標を求める。
y=画像の高さ
2 −tan
Ã垂直角度
45 ×arctan (1)
!
×カメラパラメータ
このY座標と、先程取得した障害物と判断された最も底辺に近い座標のY座標を 比較し、最も底辺に近い地点の座標を求める。この地点より下において検出された エッジ情報の、最も近いものを色情報における障害物検出結果に付加していく。こ れにより、移動可能限界領域、またはそれより近い地点のエッジ情報を取得するこ とができる。この方法により、例えば図3.8のような障害物検出ミスがあった場合で も、図3.11のような補助を得ることができるため、安定性を高めることができる。
図 3.11: エッジによる補助の付加 この障害物検出結果をもとに障害物マップを作成する。
3.2.3 障害物マップ作成
色情報により検出した障害物領域をもとに、移動可能領域を表す障害物マップを 作成する。障害物が検知された場合、その迂回路を探す上でも、移動可能領域を調べ ることが必要となってくる。ただし、この場合、最もオープンなスペースを見つける ことが重要であり、障害物領域を細部までマップに反映させる必要はない。そこで、
障害物が検知された時、図3.12のように、その取得画像を下から上へと走査する。
図 3.12: 取得画像の走査
そして、障害物領域を検出した場合、その地点より上は移動不能領域として扱う。
これにより、上記のような障害物領域が検出された場合、図3.13のような障害物マッ プが作成される。
図 3.13: 障害物マップ
この作成したマップより、迂回路を選定し、障害物を回避する。
第 4 章 実現方法
本章では、提案する障害物回避システムの実現方法について述べる。
4.1 床色情報の取得
取得画像の下部領域を床と仮定し、その領域を図4.1のように2×10の領域に細 分化する。
図 4.1: 取得画像の下部領域細分化
そして、それぞれの領域において最も多く現れた色情報、つまりY成分、U成分、
V成分のパターンを床色候補として取得する。この床色候補を、領域の番号順に調 べていき、調査している領域の持つ床色候補と、その他の領域の床色候補の類似性 を調べる。なお、調査領域の番号よりも前の番号を持つ領域の床色候補は、比較対 象として扱わない。この調査領域の床色候補と類似した床色候補を持つ領域があっ た場合、それらの番号の差が、4未満、つまりヒットした床色候補を持つ領域が、調 査領域の周辺のものであったならば、ポイントを加算しない。もし、それらの差が5 であったならば1ポイント、6または7であったならば2ポイント、それ以上であっ たならば3ポイントを加算する。この処理を行い、調査領域の床色候補が、3ポイン ト以上獲得した場合にのみ、その床色候補を床色基準値として扱う。この床色基準 値をもとにこの後の処理を行う。なお、本システムでは、Y成分が±30、U成分が
±15、V成分が±15の範囲内であった場合、それらの色を類似しているとみなして いる。
4.2 色情報による障害物検出
取得した床色基準値から、障害物の検出を行う。しかし、現実的には床色が均一 の色であることはありえない。これは、照明などにより、明るい領域や、暗い領域 などが出来てしまうためである。例えば、図4.2のような場合において、床色基準値 のみで判定を行うと図4.3のような結果となってしまう。
図 4.2: 取得画像3
図 4.3: 床色基準値のみの障害物検出
そこで、この床色基準値にある程度の幅を持たせることで、判定を行っている。こ のような方法では、床色以外の色も、床色として扱われてしまい、障害物の検出ミス が起こる可能性がある。しかし、物体は床との接触部分周辺に影を生成するが、この 影が防波堤となり、障害物を検出することが出来る。また、床色が黒、またはそれに 近い色であったとしても、今度は、物体そのものの色から障害物を検出することが出 来る。この方法において、先程の図4.2において障害物の検出を行うと、図4.4のよ うな検出結果を得ることが出来る。なお、本システムでは、Y成分が±30、U成分 が±30、V成分が±30の範囲内であった場合、それらの色を床色とみなしている。
図 4.4: 床色基準値に幅を持たせた障害物検出
4.3 障害物マップの生成
前章でも述べた通り、得られた障害物検出情報から、移動可能領域を表す障害物 マップを作成する。障害物検出情報を、下から上へと走査し、障害物領域に到達す るまでを移動可能領域、そしてその障害物領域以降を移動不能領域とみなし、障害 物マップを作成する。これにより図4.5のような障害物マップが得られる。
図 4.5: 障害物マップ(ゴミ処理前)
見ての通り、非常に多くの細い線が入ってしまっている。これは、障害物検出を 行った際に生じた微細なゴミを障害物として検出してしまったためである。このま までは、移動可能領域の割り出しの妨げになるので、一定以上の太さがない部分を 誤検出として、修正を行った。これにより図4.6のような障害物マップを得ることが 出来た。
図 4.6: 障害物マップ(ゴミ処理後)
これにより、的確な移動可能領域を割り出すことができる。なお、移動可能距離 は、次のように求めることができる。まず、移動する先の座標から、その位置の水 平角度、及び垂直角度を次式より求める。
水平角度=45×arctan
ÃX座標−画像の幅÷2 カメラパラメータ
!
÷arctan (1)
垂直角度=45×arctan
ÃY 座標−画像の高さ÷2 カメラパラメータ
!
÷arctan (1)
そして、これを用いて、次式より移動する先の座標における、ロボットからの距 離を算出する。
移動可能距離=パペロの高 さ×tan
µ
(90 +垂直角度)× π 180
¶
÷cos
µ
水平角度× π 180
¶
このようにして、移動可能距離を算出することができる。
4.4 エッジ情報による障害物検出
エッジ、つまり輪郭情報を取得する方法として、Prewitt法を用いる。Prewitt法 では、以下の表のような、エッジの方向に対応する8種類のマスクを用いる。そし
て、入力画像の画素とその周囲の画素にマスクの値を乗じて和をとることで、一致 の度合いを計算して比較を行う。8つのマスクごとにこの計算を行い、その中で最大 の値を示すマスクの向きがエッジの方向、そして、その計算値がエッジの強さとな る。閾値を、画像中においてエッジの最も大きかった値の八分の一とし、それ以上 の値をマークした画素をエッジとする。これにより、先程の図4.2からは、図4.7の ようなエッジ情報を得ることが出来る[4]。
図 4.7: エッジの検出(Prewitt)
表 4.1: Prewittオペレータ-1
マスクパターン
1 1 1
1 −2 1
−1 −1 −1
1 1 1
1 −2 −1 1 −1 −1
1 1 −1
1 −2 −1
1 1 −1
1 −1 −1 1 −2 −1
1 1 1
対応するエッジ 上方向 左上方向 左方向 左下方向
表 4.2: Prewittオペレータ-2
マスクパターン
−1 −1 −1
1 −2 1
1 1 1
−1 −1 1
−1 −2 1
1 1 1
−1 1 1
−1 −2 1
−1 1 1
1 1 1
−1 −2 1
−1 −1 1
対応するエッジ 下方向 右下方向 右方向 右上方向
4.5 エッジ情報による補助
色情報による障害物検出に、エッジ情報による障害物検出を部分的に加える。加 えるエッジ情報は、移動可能限界距離における座標、または、それよりも底辺に近 いところで、色情報により検出された障害物の座標より、底辺に近い位置で検出さ れた、エッジ情報の中で、最も対象座標に近い二つエッジ情報を付加していく。例え ば、図4.8のような取得画像からは、図4.9のような色情報による障害物検出が得ら れる。この時生成される障害物マップは図4.10のようになる。
図 4.8: 取得画像4
図 4.9: 色情報障害物検出
図 4.10: 生成される障害物マップ(色情報のみ)
この時、付加する障害物情報として、図4.11のようなエッジ情報が抽出される。
図 4.11: 付加エッジ情報
よって、図4.12のような障害物検出結果を得ることができる。
図 4.12: 補助を加えた障害物検出結果
これにより、図4.13のような障害物マップが生成される。
図 4.13: 生成される障害物マップ(補助付加)
双方の障害物検出や、それから生成される障害物マップを見ての通り、補助障害 物情報を加えることで、障害物検出が色情報のみの場合より、より安定したものと なっていることがわかる。この方法により、色情報による障害物検出ミスを補う。な お、本システムでは、ロボットの一度の動作における移動可能限界距離が約5メー トルのため、移動可能限界距離をこれに設定している。
第 5 章 評価と考察
本章では、提案する障害物回避システムの評価と考察を行う。5.1では、システム の評価を行い、5.2では、評価結果を考察する。
5.1 評価
提案する障害物回避システムの評価を行う。障害物回避システムにおいて、最も 重要となるのが、移動可能領域を割り出す障害物検出部である。よって、提案する 色・エッジ情報を用いた障害物回避システムの、障害物検出部の評価を行うことで、
本システムの評価を行う。
5.1.1 様々な床パターンにおける障害物検出
本システムの障害物検出は、色情報により、床の色と障害物の色を区別すること で行っている。そこで、本項では、様々な床のパターンにおいて、その色情報を取 得し、床と障害物の差別化が行えるか否かで、本システムの汎用性を評価する。
床:カーペット(単色)
図5.1のような、ほぼ単色のカーペットにおいて検証を行った。
図 5.1: 床:カーペット(単色)
図5.2の取得画像からは、図5.3の障害物検出結果が得られ、図5.4の障害物マッ プが生成される。また、エッジ情報による障害物検出では図5.5のような検出結果が 得られる。
図 5.2: 床状態:単色−取得画像
図 5.3: 床状態:単色−提案手法による障害物検出
図 5.4: 床状態:単色−生成される障害物マップ
図 5.5: 床状態:単色−エッジ情報による障害物検出
このように、どちらの障害物検出方法においても、移動可能領域の検出に成功し ている。
床:カーペット(二色)
図5.6のような、二色のカーペット(チェック柄)において検証を行った。
図 5.6: 床:カーペット(二色)
図5.7の取得画像からは、図5.8の障害物検出結果が得られ、図5.9の障害物マッ プが生成される。また、エッジ情報による障害物検出では図5.10のような検出結果 が得られる。
図 5.7: 床状態:二色−取得画像
図 5.8: 床状態:二色−提案手法による障害物検出
図 5.9: 床状態:二色−生成される障害物マップ
図 5.10: 床状態:二色−エッジ情報による障害物検出
このように、提案手法においては、障害物の検出に成功しているが、エッジ情報 による障害物検出では、床の柄の輪郭情報を抽出してしまうため、移動可能領域の 割り出しに失敗している。
床:カーペット(三色)
図5.11のような、三色のカーペットにおいて検証を行った。
図 5.11: 床:カーペット(三色)
図5.12の取得画像からは、図5.13の障害物検出結果が得られ、図5.14の障害物 マップが生成される。また、エッジ情報による障害物検出では図5.15のような検出 結果が得られる。
図 5.12: 床状態:三色−取得画像
図 5.13: 床状態:三色−提案手法による障害物検出
図 5.14: 床状態:三色−生成される障害物マップ
図 5.15: 床状態:三色−エッジ情報による障害物検出
先程のように、提案手法においては、障害物の検出に成功しているが、エッジ情 報による障害物検出では、床の柄の輪郭情報を抽出してしまうため、移動可能領域 の割り出しに失敗している。
床:木製(単色)
図5.16のような、ほぼ単色の木製の床において検証を行った。
図 5.16: 床:木製(単色)
図5.17の取得画像からは、図5.18の障害物検出結果が得られ、図5.19の障害物 マップが生成される。また、エッジ情報による障害物検出では図5.20のような検出 結果が得られる。
図 5.17: 床状態:単色−取得画像
図 5.18: 床状態:単色−提案手法による障害物検出
図 5.19: 床状態:単色−生成される障害物マップ
図 5.20: 床状態:単色−エッジ情報による障害物検出
このように、どちらの方法も木の部分を床領域とした時、障害物の検出に成功し ている。
床:木製(二色)
図5.21のような、二色の木製の床において検証を行った。
図 5.21: 床:木製(二色)
図5.22の取得画像からは、図5.23の障害物検出結果が得られる。一見すると、検 出ミスが発生しているように見えるが、これは、図5.24のような補助情報が付加さ れているためである。色情報のみによる障害物検出結果は、図5.25のようになり、図 5.26の障害物マップが生成される。また、エッジ情報による障害物検出では図5.27 のような検出結果が得られる。
図 5.22: 床状態:二色−取得画像
図 5.23: 床状態:二色−提案手法による障害物検出
図 5.24: 床状態:二色−付加されたエッジ情報
図 5.25: 床状態:二色−提案手法による障害物検出(補助情報無)
図 5.26: 床状態:二色−生成される障害物マップ
図 5.27: 床状態:二色−エッジ情報による障害物検出
このように、提案手法は、付加情報の影響により、障害物の検出ミスが発生して いるように見える。しかし、付加情報は、もともと安定性を得る代わりに、このよう な床状態の場合の、1タイル分のエッジ情報が余分に付加されることを前提としたも
のである。よって、図5.23における1タイル分の検出ミスには問題はない。よって、
本手法は、二色の木製の床において、障害物の検出に成功していると言える。なお、
エッジ情報による障害物検出では、床の柄の輪郭情報を抽出してしまうため、移動 可能領域の割り出しに失敗している。
床:子供用マット(二色)
「報道記者システム」は、図5.28のような子供の遊び場においても利用されるこ とが考えれる。
図 5.28: 子供の遊び場として利用されているマット
そこで、図5.29のようなジョイントマットを用いて、子供の遊び場として良く用 いられるEVA樹脂の床において検証を行った。
図 5.29: 床:EVA樹脂
図5.30のような、床が二色のEVA樹脂である取得画像からは、図5.31の障害物 検出結果が得られ、図5.32の障害物マップが生成される。また、エッジ情報による 障害物検出では図5.33のような検出結果が得られる。
図 5.30: 床状態:二色−取得画像
図 5.31: 床状態:二色−提案手法による障害物検出
図 5.32: 床状態:二色−生成される障害物マップ
図 5.33: 床状態:二色−エッジ情報による障害物検出
このように、どちらの方法もEVA樹脂の部分を床領域とした時、障害物の検出に 成功している。
床:子供用マット(三色)
図5.34のような、床が三色のEVA樹脂である取得画像からは、図5.35の障害物 検出結果が得られ、図5.36の障害物マップが生成される。また、エッジ情報による 障害物検出では図5.37のような検出結果が得られる。
図 5.34: 床状態:三色−取得画像
図 5.35: 床状態:三色−提案手法による障害物検出
図 5.36: 床状態:三色−生成される障害物マップ
図 5.37: 床状態:三色−エッジ情報による障害物検出
このように、どちらの方法もEVA樹脂の部分を床領域とした時、障害物の検出に 成功している。
床:子供用マット(四色)
図5.38のような、床が三色のEVA樹脂である取得画像からは、図5.39の障害物 検出結果が得られ、図5.40の障害物マップが生成される。また、エッジ情報による 障害物検出では図5.41のような検出結果が得られる。
図 5.38: 床状態:四色−取得画像
図 5.39: 床状態:四色−提案手法による障害物検出
図 5.40: 床状態:四色−生成される障害物マップ
図 5.41: 床状態:四色−エッジ情報による障害物検出
このように、どちらの方法もEVA樹脂の部分を床領域とした時、障害物の検出に 成功している。
床:石製
図5.42のような、格子状の石製の床において検証を行った。
図 5.42: 床:石製(単色格子状)
図5.43のような、床が単色格子状の石製である取得画像からは、図5.44の障害物 検出結果が得られ、図5.45の障害物マップが生成される。また、エッジ情報による 障害物検出では図5.46のような検出結果が得られる。
図 5.43: 床状態:単色格子状−取得画像
図 5.44: 床状態:単色格子状−提案手法による障害物検出
図 5.45: 床状態:単色格子状−生成される障害物マップ
図 5.46: 床状態:単色格子状−エッジ情報による障害物検出
このように、どちらの方法も床領域の割り出しに成功している。なお、どちらも 壁領域が床領域として含まれてしまっている部分があるが、これは、検証に用いた 場の床と壁の色差、及び濃淡値の変化量が小さいためである。
床:ビニール製
光の反射などが最も大きく現れるビニール製の床において検証を行った。図5.47 のような、光の反射による影響がほとんど無い状態の取得画像からは、図5.48の障 害物検出結果が得られ、図5.49の障害物マップが生成される。また、エッジ情報に よる障害物検出では図5.50のような検出結果が得られる。
図 5.47: 床状態:光の反射による影響無−取得画像
図 5.48: 床状態:光の反射による影響無−提案手法による障害物検出
図 5.49: 床状態:光の反射による影響無−生成される障害物マップ
図 5.50: 床状態:光の反射による影響無−エッジ情報による障害物検出
このように、どちらの方法も、障害物の検出に成功している。
次に図5.51のような、光の反射による影響が小さい状態の取得画像からは、図5.52 の障害物検出結果が得られ、図5.53の障害物マップが生成される。また、エッジ情
報による障害物検出では図5.54のような検出結果が得られる。
図 5.51: 床状態:光の反射による影響小−取得画像
図 5.52: 床状態:光の反射による影響小−提案手法による障害物検出
図 5.53: 床状態:光の反射による影響小−生成される障害物マップ
図 5.54: 床状態:光の反射による影響小−エッジ情報による障害物検出
このように、どちらの方法も、光の反射により、移動可能領域が狭められてしまっ てはいるが、致命的なほどには至っていない。
次に図5.55のような、光の反射による影響が大きい状態の取得画像からは、図5.56
の障害物検出結果が得られ、図5.57の障害物マップが生成される。また、エッジ情 報による障害物検出では図5.58のような検出結果が得られる。
図 5.55: 床状態:光の反射による影響大−取得画像
図 5.56: 床状態:光の反射による影響大−提案手法による障害物検出
図 5.57: 床状態:光の反射による影響大−生成される障害物マップ
図 5.58: 床状態:光の反射による影響大−エッジ情報による障害物検出
このように、どちらの方法も、光の反射により、移動可能領域がほとんど消され てしまっている。
次に図5.59のような、障害物の床への映り込みが激しい状態の取得画像からは、図
5.60の障害物検出結果が得られ、図5.61の障害物マップが生成される。また、エッ ジ情報による障害物検出では図5.62のような検出結果が得られる。
図 5.59: 床状態:障害物の床への映り込みが激しい−取得画像
図 5.60: 床状態:障害物の床への映り込みが激しい−提案手法による障害物検出
図 5.61: 床状態:障害物の床への映り込みが激しい−生成される障害物マップ
図 5.62: 床状態:障害物の床への映り込みが激しい−エッジ情報による障害物検出
このように、どちらの方法も、壁などが床に映りこんでしまい、壁と床の色差、及 び濃淡値の変化量が小さくなってしまっているため、床と壁の判別が出来なくなって しまっている。
結果
表 5.1: 対応表
提案手法 エッジ カーペット(単色) ○ ○ カーペット(二色) ○ ×※1 カーペット(三色) ○ ×※1 木製(単色) ○※2 ○※2 木製(二色) ○※2 ×※1
EVA樹脂(二色) ○ ○※3
EVA樹脂(三色) ○ ○※3
EVA樹脂(四色) ○ ○※3
石製 ○ ○
ビニール製 × ×
※1:濃淡値の変化量が小さい場合であれば、利用できる。
※2:ニスが塗られ、ビニール製のように光の反射が強い状態の場合利用できない。
※3:濃淡値の変化量が大きい場合、利用できない。
5.1.2 下部領域に障害物があった場合の信頼性
本システムでは、床色情報を、取得画像の下部領域より求めている。そして、色 情報取得時に、下部領域において障害物が存在した場合における色情報取得ミスを 防ぐために、細分化した調査領域に対して重み付けを行なった。そこで、本項では 画像の下部領域に障害物を配置し、その信頼性を検証した。なお、本手法は、重み 付けの設定などにより、画像底辺の四分の一、およそ20cmまでが障害物を除去でき る許容範囲となる。
20cm幅の障害物を配置した場合
図5.63のように、およそ20センチ幅のカバンを画像の下部領域に配置した場合、
図5.64のような障害物検出結果が得られた。この時、エッジ情報では図5.65のよう になる。
図 5.63: 床状態:下部領域における障害物の存在(小)−取得画像
図 5.64: 床状態:下部領域における障害物の存在(小)−提案手法による障害物検出
図5.65: 床状態:下部領域における障害物の存在(小)−エッジ情報による障害物検出 このように、提案手法では、床色情報を的確に取得し、障害物の検出に成功して いる。しかし、エッジ情報では、障害物底部が画像からはみ出してしまっているた め、これを検出できなかった。
20cm幅よりも大きい障害物を配置した場合
図5.66のように、20センチ幅を越えるダンボールを画像の下部領域に配置した場 合、図5.67のような障害物検出結果が得られた。
図 5.66: 床状態:下部領域における障害物の存在(大)−取得画像
図 5.67: 床状態:下部領域における障害物の存在(大)−提案手法による障害物検出
このように、障害物の色情報を、床色情報として取得してしまったために、障害 物の検出ミスが発生してしまっている。
5.1.3 障害物回避
本項では、実際に障害物の回避を行った。図5.68のような、単色のカーペットにお いて、前方にバスケットボールが存在した場合、図5.69のようなルートを通り、障 害物の回避に成功した。
図 5.68: 障害物状況Case1
図 5.69: Case1における回避ルート
また、図5.70のような、二色のカーペット(チェック柄)において、前方にバスケッ トボールが存在した場合、図5.71のようなルートを通り、障害物の回避に成功した。
図 5.70: 障害物状況Case2
図 5.71: Case2における回避ルート
5.2 考察
まず、5.1.1において、様々な床パターンにおいて障害物の検出ができるかどうか を、提案手法、及びエッジ情報による障害物検出において検証した。その結果、表 5.1のようになった。ほとんどの場合において、障害物の検出ミスが発生する、ある いは条件がつきまとうエッジ情報による障害物検出方法に対して、提案手法は、様々 な床の状態に対応することが出来ている。その本手法において、障害物の検出が困 難となっているのが、ビニール製の床などのような、光の反射、及び障害物が非常 にはっきりと映りこんでしまう床においてである。まず、光の反射の映り込みだが、
床に映るこの光の反射を床色情報ではない、つまり障害物として扱ってしまうため、
移動可能領域が狭められてしまうのである。図5.51のような、光の反射の映り込み による影響が小さい場合は、移動可能領域が狭められてしまうものの、移動可能領 域がなくなってしまうまでにはいたらない。しかし、図5.55のような光の反射の映 り込みによる影響が大きい場合、移動可能領域が大幅に狭められてしまい、移動す ることができなくなってしまうのである。次に、障害物の映り込みだが、床に映る この障害物は、先程と同様に障害物として扱われ、移動可能領域を狭めるものとな る。また、この障害物の映り込みは、色情報の取得時に大きな妨げとなることもあ るのである。例えば、図5.59のように、障害物が床色取得時の調査領域おいて、広 範囲にわたって映りこんでしまうと、この映り込みから床色情報を取得してしまい、
図5.60の障害物検出結果のように、床と障害物との区別がつかなくなってしまうの である。その結果、障害物までを移動可能領域として扱った図5.61のような障害物 マップが生成されてしまうのである。なお、木製の床において、ニスなどが塗られ ている場合、光の反射や、障害物が良く映りこんでしまうため、移動可能領域が割 り出せなくなる場合がある。
次に、5.1.2において、提案手法の色情報取得時における、信頼性を検証した。本 手法は、3.2において説明した通り、調査領域を細分化し、それぞれの領域の位置関 係から重み付けを行うことで、部分的にしか出現しない障害物の色を、床色情報と して取得することを妨げている。よって、図5.63のような場合においても、障害物 の色を床色情報として取得することなく、床色情報を取得し、図5.64のように障害 物の検出を行うことができた。しかし、本手法では、図5.66のように、許容範囲以 上の大きさの障害物が存在した場合は、図5.67のように、障害物の色を床色情報と して取得してしまい、障害物の検出ミスが発生してしまっている。重み付けの条件 を厳しくすることで、信頼性の向上を図ることも可能だが、その場合、床色情報の 取得にも影響が出てしまうため、得策ではない。また、床と障害物を、ステレオ視 による実測値と、その領域を床と仮定した場合の、その領域までの理論値を比較す ることで、取得する床色情報の信頼性の向上も図ったが、チェック柄のような床の場 合であっても、対応点を見つけることができず、信頼出来る数値を得ることが出来
なかった。
今回の評価によって、本手法は、エッジ情報に比べ、汎用性の高い障害物回避シ ステムであることが言える。なお、パペロには超音波センサーが内臓されているた め、上述の障害物の映り込みによる、床と壁の判別ができなくなってしまうことに よる、障害物への衝突は避けることができる。しかし、これはあくまで応急処置的 な方法であり、解決案とは言えない。この光の反射や、障害物の映りこみへの対策 が、今後の課題となる。
第 6 章 結論
本章では、本論文のまとめについて述べる。
6.1 まとめ
本論文では、様々な床の状態に対応できる汎用的な障害物回避システムを提案し た。取得画像の下部領域を細分化し、それぞれから床色候補を抽出し、それぞれの 領域から抽出された床色情報の類似性を検査する。そして、類似した床色情報が抽 出された領域のそれぞれの位置関係、及びヒット数から、その床色候補を、床色基 準値として扱うかを判別する。また、エッジ情報を補助情報として部分的に用いた。
これにより、ある程度のサイズの障害物が調査領域内にあっても、影響を受けるこ となく、様々な床のパターンにおいて障害物の検出を行うことが出来た。
第3章では、提案する障害物回避システムの概要について説明し、その処理の流 れを説明した。
第4章では、提案する障害物回避システムの、その実現方法について説明した。
第5章では、提案する障害物回避システムの評価と考察を行い、その有用性や問 題点を分析した。
参考文献
[1] ウインワンズウエイ株式会社 http://www.wownet.co.jp/
[2] パーソナルロボット パペロ http://www.incx.nec.co.jp/robot/
[3] 船田純一 山下信行 井上晃 大中慎一(2002)
「パーソナルロボットPaPeRoにおける画像認識」
[4] C言語で学ぶ実践画像処理 オーム社
[5] 高信頼ステレオ視による三次元情報の獲得
http://www-cv.mech.eng.osaka-u.ac.jp/research/stereo_group/index-j.html [6] 立体画像認識(ステレオカメラ)の研究
http://www.ric.titech.ac.jp/saneken/stereocamera.htm
謝辞
本修士論文の作成にあたって、日頃より御指導・御助言を頂いている村岡洋一教 授に深く感謝致します。
また、数々の御助言・御意見を下さった西村啓氏をはじめとする村岡研究室の皆 様に感謝致します。どうもありがとうございました。