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3 一0 〓 0 ■ 一一一一一勧 ■ 一〇 〓 D個体発生・形態形成システムの制御 に基づ く
難治癌予防・治療法の確立
中村 雅史、久保
真、中島
洋、野村 政壽
*、黒木 祥司
**、田中 雅夫
**、片野 光男
九州大学腫瘍制御学、*同病態制御内科、料 同臨床・腫瘍外科1.は
じめ に 発癌 と組織修復 。再生過程の類似性が、癌治療 お よび再生医療の副作用 とい う面か らも注 目をあ つめて きつつある。 ところで、組織修復・再生過 程 で は、発生 に関わる多 くの情報伝達系 が再活 性化 される。L Walpertは、 この ような発生 に関 わる情報伝達系 の内、3次元軸 の もととなる位
置情報 をもた らす分泌系情報系 の存在 を予言 し、 その分泌物質をモルフォゲ ンと呼んだ1)。 以前 よ り我 々は、現在明 らかにされているモルフォゲ ン3種
(Hh,Wnt,BMP)の
内2種
にあた るWnt、 お よびBMPと
ス ーパ ー フ ァ ミリー を形成 す る TGF‐β,Activinに よる、形態形成・発癌 ・癌の進 展 に関す る役割 を明 らかに して きた。今回、第3 のモ ル フ ォゲ ンHedgehog(Hh)が
乳癌 で果 た す働 きを明 らかにし、治療標的 としての可能性 を 探索 した。 以前 よ り、Hhシ
グナルは発生学の分野で胎生 期の形態形成 に必須の分泌型 シグナルであること が明 らか にされていた。 リガ ン ドであるHh蛋
白 は、膜蛋 白Patchedl(Ptchl)に
結合す ることで Ptchlが示す シグナルに対す る抑制効果 を阻害 し、 結果的 に膜蛋 白Sm00thened(Smo)が
活性化 さ れ る。活性型SmOは
転写 因子Gli3の核 内移行 を 促 し転 写 因子Gllが
発 現 す る。Glilは下流 の標 的遺伝子 を転写す ることで、Hhシ
グナルの様 々 な機能が あ らわ される13)。 この ように、GllはHhシ
グナルの最終転写因子 であるとともに標 的 遺伝子で もあ り、シグナル活性化のよい指標であ る4,5)。 近 年 、Hhシ
グナル の恒 常 的 な活性 化 と発癌 の 関連 性 が指摘 され て きて い る6,7)。Hhシ
グナ ル の構 成 因子 であ るPtchlやSmoの
変異 に伴 う活 性化 は、脳、皮膚お よび筋 肉由来の腫瘍の一部 に 認め られ る8,9)。 ところで、最近Hhリ
ガ ン ドで あ るSonic Hedgehog(Shh)の
過剰発 現 に依存 す るシグナルの恒常的な活性化が小細胞肺癌、お よび食道、胃、膵 といった消化器癌で報告 された。 この ようにHhシ
グナルは多部位の癌で活性化 し ているため、癌 の よい治療標的 として想定で きる。 現時点では、ユ リ科植物の根 よ り精製 されたアル カロイ ドであ るシクロパ ミンがSmoの
阻害剤 と して知 られてお りЮ'lD、 上記腫瘍 由来の細胞株 の 増殖抑制作用 が証明 されている12,1の。Hhシ
グナルは、乳腺 の発達 に も重要 であるこ とが報告 されて きたИ'151。 Ptchlや Gli2を欠失 し たマ ウスでは乳管の形態形成 に障害が発生 し、 ヒ ト乳管の過形成 に似た乳管異形成等が認め られる ようになる161。 また、少数の乳癌細胞株 で これ ら の遺伝子異常が発見 されている°。以上の ように、Hhシ
グナルは乳腺 における発癌過程 に何 らかの 関係 を持つ と思われるが、その詳細 は明 らかにな っていなかった。今 回我 々は、九州大学第一外科 における乳癌切 除標本 を用 いて、Hhシ
グナルが 大部分 の乳癌組織 で恒常 的 に活性化 されてい る ことを証明 した。 また、Hhシ
グナルの活′性化が 乳癌細胞の増殖 に必要であ り、 シクロパ ミンによ り細胞増殖が抑制 され ることを証明 し、Hhシ
グ ″アリl″レυθs ttλ II No.1 2りり5鸞
椰
当
:計「薫
りⅢⅢ
: 01111111111111111‐││: ナルが乳癌の有効 な治療標的である可能性 を示 し た。 この報告 はCancer Res.64(17):6071‐ 4,2004 よ り改編 した ものである。2.材
料 と方 法 臨床検体 2002年か ら2003年に、九州大学病院 臨床・腫 瘍外科 にて原発性乳癌 の切 除術 を受 けた患者52名 を対象 とした。全症例が術前 に説明を受け同意 し た上で、本研究 に登録 された。手術摘 出標本 は10%ホ
ルマ リンで固定、パ ラフイン包埋 された後、 組織病理学的に解析 され、TNM分
類 に従い分類 された。組織病理学的解析 によ り、標本47例の う ち46例が浸潤性乳管癌、5例
が非浸潤性乳管癌、 1例が浸潤性小葉癌であった。 免疫組織染色 抗体検 出法 は以前報告 されてい る方法 に沿 っ て行われた181。 ここでは、以下の改変 プロ トコー ルに従 った。内因性ペルオキシダーゼ活性 は、3
%H202 メ
タノールを用い室温で30分 問処理 し不 活性化 した。抗原賦活化 は0.01 mo1/Lク エ ン酸ナ トリウム溶液 (pH6.0)を用いて5分
間煮沸 し行 った。1次
抗体 はすべ て4度
で一昼夜反応 させ た。1次
抗体 は以下 の ものが使用 された。Sonic hedgehog(Shh)(N‐19,sc…1194)、 Ptchl(H-267, sG9016)、 Glil(N‐16,so6153)(す べ て250倍 希釈 にて使用。Santa Cruz Biotechnologyp Santa Cruz,CA)。
2次
抗 体 (Shh、 Glilに対 して は抗 ヤ ギIgGポ
リクローナル抗体。Ptchlに対 しては抗 ウ サギIgGポ
リクローナル抗体。ニチ レイ、東京) は室温 で1時
間反応 させ た。 目的蛋 白の存在 はDABを
用 いて茶褐色 に発色 させ ることで同定 し た。 また、核 を同定するためにヘマ トキシリンに て軽 く染色 した。それぞれの切片 において、癌細 胞 お よび周 囲の正常乳腺上皮細胞 を各 々100個観 察 した。 これ らの細胞の うち、50%以
上が染色 さ れている場合 を陽性 と判定 した。 また、Glilによ り核が染色 された癌細胞の全癌細胞 に対する割合 22レ '│:,=壺藤 を Glilの 核染色率 として表 した。 細胞株 の免疫 染 色4種
類 の ヒ ト乳 癌 細 胞 株 (BT¨474,SK―BR-3, MDA―MB231,MCF‐7)とヒ ト大腸癌細胞株(DLD…1) は、10%ウ
シ胎児 血清 (FBS;Sigma Chemical,St。Louis,MO)を
含 むRPMIを
培 養 液 と し、培 養 フ ラス コ内で単層培 養 した。 これ らの細胞 を、8穴の培 養 ス ライ ド (BIOCOAT① ,Becton Dickinson,
San JOSe,CAlを 用 いて
2-4×
105個/穴
の細胞 密 度 で37度4時
間培養 した。 その後 、 ス ライ ドを ドライ アで乾燥 し、100%メ タノー ルで-30度
5 分 問処 理 し、以 降 は免疫組織 染色 に準 じた。 ウェス タ ン ブロ ッテ ィング法 ウェス タンブ ロ ッテ イ ング法 は、以前報告 され て い る方法 に沿 っ て行 われたl① 。培 養細胞 を62.5 mmo1/L Tris― HCl(pH 6.8)、100 mm01/LD冨
、2%SDS、 10%グ
リセ ロー ルか らな る bufferに て処理 し、蛋 白成 分 をニ トロセル ロース膜 に移 し た。 移 した 蛋 白 は抗 Glil抗 体 (N‐16,so6153)、 つ いで ホース ラデ イシユ・ペ ルオキ シダーゼ標識 抗 ヤ ギ抗 体(KPL,Gaithersburg,MD)と
反 応 さ せ 、Molecular lmager Ⅸ (Bio‐Rad Laboratones,Hercules,CA)を
用 いて確認 した。 増 殖活性測定法 シ ク ロパ ミン と トマ チ ジ ンは、 そ れ ぞ れ トロ ン ト・ リサ ー チ 。ケ ミカル社 (North York,ON,Canada)と
シ グマ・ ケ ミカル社 よ り購 入 した。 これ らの試 薬 は、100%メ タノー ル に溶解 させ濃 度 を調 整 した。細 胞増殖 活性 に対 す る シクロパ ミ ンの影響 を調べ るため に、 ヒ ト乳癌 細胞 は シクロ パ ミンを含 む培 養 液で4日間培 養 した。対 照 とし て、トマチ ジ ンお よびメ タノー ル を用 い た。細胞 増殖活性 はMTrを
用 いて測 定 した。 統 計解 析 統 計 学 的解 析 はすべ てSAS統
計 ソ フ トを用 い 7θ ″′助 υθs 乃′.II 助.1 2005約1% 寺│^│で■│ 雨IMIlrl l・・1痙│ザ │■●11・ て行 った。
3.結
果 (1)乳癌組織 にお けるHhシ
グナルの恒常的 な活 性化 手術摘 出乳癌のパ ラフイン包埋組織切片 を用い て、Hhシ
グナルの構 成 因子 であ るShh、 Ptchl お よびGlilの免疫染色 を行 った。全52症例の うち 47例が浸潤癌、5例
が非浸潤癌であった。 これ ら 52例の切除標本には、いずれ も癌組織 の周辺部に 隣接 して正常乳腺上皮の一部が認め られた。52症 例 の癌 組織 の うち、Shhは
52例、Ptchlは 50例、 Glilは52例に強発現 を認 めた (図 1、 下段)。 こ れに対 し、周 囲の正常乳腺 上皮 では これ らの蛋 白発現 は認め られなかった (図 1、 上段)。 Ptchl とGllはHhシ
グナルの構成因子であるとともに 標的遺伝子で もあるため、両者が多 くの乳癌組織 内で強発現 しているとい う結果 は、乳癌 でHhシ
グナルが一般的に活性化 していることを示 してい る。 Glilは転写因子としてのみ働き
Gli2,3でのよう
な repressor機 能 を持 たない4)。 また、マ ウスで はGlilを表皮 に過剰発現 させ ると基底細胞癌 を誘 導 しうる ことが報告 されている2の 。以上の ことよ り、Glilの核染色率 はHhシ
グナルの直接 的な指 標 になる と考察 し、全癌細胞 に対す るGlilの核染 色 を示す癌細胞の割合 (Glilの核染色率%)を
更 に調べ た。Glilの核染色 を示す腫瘍細胞 は52症例 のすべての標本中で認め られたが、周辺の正常乳 腺組織 には染色 される乳管上皮 は存在 しなかった (図 1)。 Glilの核 染色率 の分布 は 2-95%、 平均 は40。87%で
あった。次 に、Glil核染色率 と病理組 織学的所見 との関係 を検討 した。Glilの核染色率 は、Estrogen receptorの 発 現 との 間 に正 の相 関 を認めた。 これは、乳癌のホルモ ン依存性発育にHhシ
グナルが関与 している とい う以前 なされた 報告 と一致す る結果である2め 。 また、組織型別で は浸潤型 に有為 に高いことが明 らかになった。(2)Hhシ
グナル抑制 による乳癌細胞増殖阻害4種
の ヒ ト乳癌細胞株 (M‐474,SK―BR-3,MDA―MB231,MCF-7)を
用 い て、Hhシ
グナルの制御 Gl11 Normal C瞭義駐鼎 図1
ヒ ト乳癌組織におけるHhシグナルの活性化 52症例の ヒ ト乳癌組織標本 は、Shh、 Ptch]、 GII]それぞれの蛋 白に対する抗体 を用いて免疫組織染色さ れた (茶褐色)。 核染色 にはヘマ トキ シ リンを用いた (紫色)。 平L癌組織で は、Shh、 Ptchl、 GII]いずれ も強発現 している (下段)のに対 し、周囲の正常乳腺組織での発現は認め られなか つた (上段)。 さ ら に、癌細胞では強い核染色を示 した (矢印)。 図は代表例である (倍率400倍)。 Barは10μmを
示す。 Cancer Res 64(17):6071-4,2004よ り改編 ″ア′″Zυθs ИフムII助
.I」Zη5 77
による乳癌の増殖抑制効果 を検討 した。
4種
の ヒ ト乳癌細胞株すべてにおいて、免疫染色上Shh、 Ptchl、 Glilの発現増強 を認めた。 また、Hhシ
グ ナルが活性化 してい ない大腸癌細胞株DLD… 1で は2)いず れ も陰性 であ った (図 2)。Hhシ
グナ ル活性化 の指標 となるGlilの核染色像 は、MDA‐MB231を
除 く他 の3種
の乳癌細胞株 で強 く認 め られた。 また、MDA―MB231の
Gll核染色性 は弱 いが、negative controlと なるDLD…1と の比較 で は明 らかに染色 されてお り、Hhシ
グナルの活性 化が存在す ることが示唆 された。 これ らの乳癌細胞株 をHhシ
グナルの阻害剤 で あるシクロパ ミンとともに培養す る と、MCF-7を 除 く乳癌細胞株 で有意な細胞増殖の抑制が見 られ た (図 3A)。 シクロパ ミンとは明 らかに異 な り、 非活性型のシクロパ ミンアナログである トマチジ ンでは、癌細胞の増殖抑制は認め られなかった。 シ クロパ ミン存 在 下 で はBT¨474お よびSK―BR-3 のGlilの細胞質発現 と核染色性 は減少 してお り、 シ クロパ ミンは、増殖 阻害 を示 した癌細胞株のHhシ
グナルを不活性化 していた ことを確認で き た (図3B)。 シクロパ ミンによるHhシ
グナルの 不活性化 は、 ウェス タンプロッテ ィング法 により 再確認 された (図3C)。 この ように、BT‐474およびSK―BR-3で はシクロ パ ミンにより核 内のGlil蛋白量が減弱 し増殖抑制 BT-474 SK‐BR‐3 1圧E"亀』配日B231MCr-7
DD-1
図2
ヒ ト乳癌細胞株 におけるHhシグナルの活性化 ヒ ト乳癌細胞株BT-474、 SK― BR-3、 MDA―MB231、 MCF-7とヒ ト大腸癌細胞株DLD-1を、Shh、 Ptch]、 GI11それぞれの蛋 白に対する抗体 を用 い て免疫組織染色 した (茶褐色)。 核染色 には ヘ マ トキ シ リンを用 いた (紫色)。 乳癌細胞 株 で は、Shh、 Ptchl、 GI11いずれも強発現 して いるの に対 し、DLD-1での発現は認め られなか つた (倍率400倍)。 Barは10μmを
示す。 Cancer Res 64(17):6071-4,2004よ り改編SHh
Rdhl
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讚
・M
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Й″I″aυθs 乃 洗II S、.1 2θθ5響謗
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∫
∫
L
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∫
∫
ぎ
臓 け474∫ ∫
SK‐BR‐3
図3 A:シ
クロパミンによる乳癌細胞の増殖抑制B手474、 SK―BR-3、 MDA―MB231、 MCF-7、 DLD-1の各 細 胞 株 を10μmovLの トマ チ ジ ン あ る い は10μmoνLのシ ク ロ
パミンとともに37度 で4日間培養 した。細胞の増殖活性 は、Ml「法を用いて570nmにおける吸光度 を測定 し(A5Юnmヽ
trlp面cate)、 メタノーリレ単独の コン ト□一ル培養液を用いた場合の細胞増殖活性を100とした割合 ± 標準偏差 (%)
で表 した。同様の実験 を3回繰 り返 し、代表データを示す。
*│まP<0.01、
**は
P<0001を示す。B:シクロパミンはBT-474と SK―BR-3の GI11の発現 を抑制する (免疫染色)
B千474、 SK― BR…3、 MDA―MB231、 MCF-7と DLD-1は、10μmovLのトマ チ ジ ンあ る い は10μmoVLのシ クロ パ ミ ン
ととも に37度 で24時 間培養 した。その後、細胞 は抗Gli]抗体 を用 いて免疫染色 (B)とウェスタンブロ ッテ イング (C)を行 つた。核染色 にはヘ マ トキ シ リンを用いた (紫 色)。 B手474とSK―BR-3は トマチジン処理
(B
上段)に比 べ、シクロパ ミン処理(B
下段)でGI11の発 現が抑制 された。MCF-7と DLD-1では、シクロパミン処 理の有無 に よる差 は認め られなか つた (倍率400倍)。 Barは10μmを
示す。C:シ
クロパミンはB手474と SK―BR-3の GI11の発現を抑制する (ウェスタ ンブロ ッテ イング) ウェスタンブロ ッテ イングでも免疫染色 とほぼ同様の結果であ つた。 Cancer Res 64(17):6071-412004よ り改編 が認め られることが明 らかになった。 ところで、 同濃 度(10,M)の
シクロパ ミンは、染色 上Glil が過剰発 現 し核 内染色性 も高 いMCF‐ 7に対 して は、Glilシ グナルの減弱や増殖抑制 を引 き起 こさ なかった。 しか しなが ら、20-100,Mの
範囲で シ クロパ ミンは濃度依存性 に MCF‐7の増殖 と核染色 を抑制 してお り (data not showll)、
MCF-7に
おlJID盪ヽ 「1口[ヨロE諄二
MCユ
サ E‖ED卜二 いて もHhシ
グナルが細胞増殖 に寄与 しているこ とが示唆 された。以上の結果 は、Hhシ
グナルが 乳癌治療の標的 となる可能性 を示 した。4.考
察Hhシ
グナルは様 々な癌種 で活性化 しているこ とが報告 されているが6,7)、 ヒ ト癌組織標本 を用 7'I″♭υ′s 乃 ′.II ハb.1 2θ り5iO雪拒 `矛 華│││デ
鱚莉
ITll鵞
是
儡
mlT辟
O i いてHhシ
グナルの活性化 を示 した報告 はほ とん どない。我 々の知 る限 りでは、比較的多 くの組織 標本でHhシ
グナルの恒常的な活性化が報告 され ているのは、膵癌1の と胃癌21)におい てのみであ る。 我 々は、手術摘 出乳癌組織52例を用いて、乳癌 においてHhシ
グナルが恒常的に活性化 している ことをは じめて明 らかに した。 また、Hhシ
グナ ルが乳癌の新 しい治療標的のひとつの候補である 可能性 も示 した (図3)。 乳癌組織 内では標的遺伝子であるPtchlと Glil が2例を除 きともに高発現 してお り、 これ らの結 果は乳癌 におけるHhシ
グナルの活性化 を示唆 し ている。 ところで、Ptchlを発現 していなか った2例
の組織型はいずれ も浸潤癌であ り、Shh染
色 強度 はPtchlの強発現 を認めた他の50例に くらべ 弱 い ものであるが、 この ような違いはGlil発現では明 らかではなかった (data nOt showll)。
RttI遺
伝 子 とG′′I遺伝 子 はHhシ
グナルの標 的遺伝子であるが、勤力遺伝子 は標的遺伝子では ない14)。RttI遺
伝子 の変異 は ヒ ト乳癌 で報告 されてお り、 これ らPtchlを発現 していなかった2例
はRttI遺
伝子 に変異があ り、 この研究で使 用 されている抗体が変異 Ptchl蛋 白を認識で きな かった可能性がある。 この場合、高濃度のHhリ
ガン ド(Shh)がシグナルの活性化 に必要でな く、 弱 いShhの
染色性 も説明で きる。 いずれの場合 で も、最終転写因子 としてHhシ
グナル活性化の 指標 となるGlilの発現 が全乳癌症例 に認め られ ることよ り1'4,5)、 乳癌 にお ける恒常 的なHhシ
グナルの活性化 は一般的な現象である と考 えられ る。 癌細胞 におけるHhシ
グナル活性化 には主 にふ たつの機序が提案 されている。 ひ とつ はHhリ
ガ ン ド依存性機序であ り、Shhの
ようなHhリ
ガ ン ドがPtchlに結合す るこ とでPtchlの機能 を抑制 してSmoを
活性化 し、その結果Hhシ
グナルが 活性化 され る とい う機序 であ る。 もうひ とつ はHhリ
ガ ン ド非依存性機序であ り、 リガン ド以下 の因子 をコー ドす る遺伝子の変異 に由来 してお り、上 述 の よ うにPtchl遺伝 子 やSmO遺
伝 子の 変異が この タイプのHhシ
グナル活性化機序 とし て存在することが報告 されている。 シクロパ ミン はSmoと
の直接 的 な関与 を通 じてHhシ
グナル を阻害するので11'°、 リガン ド依存性 お よび非依 存性 のHhシ
グナル活性化 を阻害で きると考えら れてい る。本研 究で も、 シクロパ ミンはHhシ
グ ナルが活性化 している乳癌細胞株の増殖 を容量お よび時間依存性 に抑制 したが (data nOt shown)、MCF-7に
関 して は、染色上Hhシ
グナルが活性化 しているにも関わ らず他の乳癌細胞 よ りもシクロ パ ミンに耐性 であった。その理 由 として、ABC トランスポー ター等の多剤耐性遺伝子産物の影響 も想定 されるが、最近、Shhに
対するモノクロー ナル抗体がMCP7の
増殖 を抑制 で きなか ったこ とが報告 されてお り20、shhの
下流 に存在す る因 子の変異が存在す る可能性 も考 え られる。 結論 として、Hhシ
グナルは多 くの乳癌 で恒常 的に活性化 してお り、乳癌 における強力な治療標 的 とな りうる と考 え られ る。今後 は、様 々な レ ベルでのHhシ
グナルの制御法 を開発 し、 また、Hhシ
グナル抑制が標的臓器以外 に与 える影響 を 検証 してい く必要があると思われる2り 。 謝辞 野見 山 香、寅 田 信博、真鍋 深雪 各氏 に多大 な協力 を提供 していただいた こ とを深 く感謝す る。 参考文献1)Ingham,Rヽ
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