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体育 沖縄県立総合教育センター後期長期研修員第 57 集研究集録 2015 年 3 月 ボールを投げる力の向上を目指した授業の工夫ーフォームの定着を目指したボール遊びとゲーム ( 第 2 学年 ) ー 沖縄市立室川小学校教諭平良広美 Ⅰ テーマ設定の理由全国体力 運動能力 運動習慣等調査 ( 以下

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沖縄県立総合教育センター 後期長期研修員 第57集 研究集録 2015年3月

〈体育〉

ボールを投げる力の向上を目指した授業の工夫

ーフォームの定着を目指したボール遊びとゲーム(第2学年)ー

沖縄市立室川小学校教諭

テーマ設定の理由

全国体力・運動能力・運動習慣等調査(以下「新体力テスト」)の結果として児童・生徒の体力の低下 に対する懸念があるが、沖縄県でも、体力や運動能力が落ち込んできている。「学習指導要領解説体育編」 (以下「解説体育編」)の運動の内容では、「低・中学年においては,発達の段階を踏まえると,体力を 高めることを学習の直接の目的とすることは難しいが,将来の体力向上につなげていくためには,この 時期に様々な体の基本的な動きを培っておくことが重要である」と示されており、児童の体力向上への 手立てが大きな課題となっている。また、解説体育編のなかに、「小学校,中学校及び高等学校を通じて, 生涯にわたって健康を保持増進し,豊かなスポーツライフを実現することを重視し改善を図る」とあり、 生涯スポーツの必要性があげられていることから、運動に親しむ資質や能力の基礎力を測ることを目的 とした新体力テストの結果を活用することによって、児童の体力向上を図るための実践に取り組むこと にした。 平成26年度実施の「新体力テスト」の結果では、ボール投げの記録の低下が全国的な話題となり大きく 報道された。ボール投げに関して沖縄県は、全国平均よりも高い傾向になっているが、本校は全国平均に も及ばない結果となっている。本校は住宅密集地に囲まれているという立地環境から日常的な運動量や運 動経験が少ないことも、投げる力の動作が未熟な児童が多い要因のひとつとして考えられる。これまでの 授業では投力の向上のために、ボールゲームの学習の中で近くや遠くへのボールパスの練習やボールの大 きさに合わせた持ち方、フォームに着目した指導などを行ってきた。しかし、的当てゲームの中で狙いを 定めて投げるという運動遊びや、キャッチボールなどの相手とのボールのやりとりだけでは、ボールを目 標の位置に運ぶという目的に意識が集中し、投げるフォームの定着と距離を伸ばすという投力の向上には つながらなかった。以上の経験から、投げる動作を取り入れた遊びの工夫と、ボールゲームを通して投げ る動作が継続的にできる授業の研究を行うこととした。 平成25年度の「新体力テスト」の報告書の中に「運動が苦手・運動しない女子をつくらないために」が 掲載されており、女子生徒に対して運動時間を増やす取り組みのポイントが紹介されている。女子におい ての投げる力の低下は男女の運動体験の差にあらわれている。小学校の低学年期において投げる力をつけ ることにより、男女の性差が縮まりさまざまなスポーツに触れる機会が多くなると考えられる。運動の経 験量が男女ともにあがることで、体力の向上につながるのではないかと考えた。つまり、さまざまなスポ ーツに関連する動作、「投げる力」は総合的な体力の向上への手立てとなるのではないだろうか。 ここでは、投げる動作を「オーバーハンドスロー」とし、上半身(腕の振り方)と下半身(足の動かし 方・重心移動)に着目して指導を行うこととした。また「投げる」経験を増やすとともに、投力に関する 動作と距離の獲得を目指す教材としてボールゲームを取り扱うことにした。投げる力は、低学年で習熟を 図ることが望ましいと考えられているが、ボール運動の領域においてはその機会は少ない。そこでフォー ムの定着を図る手立てとして遊びを取り入れた指導も行う。投げる動作の入った準備体操を取り入れたり、 投げる動作の習得のために関連する遊びを児童に実践させる。またゲームの中で投げる動作の経験が増え ることにより、フォームが定着するものと考えているので、児童が均等にボールを投げる機会を多くつく ることが必要と考える。そのためにボールゲームの中でのルールの工夫も行う。 そこで本研究では、「投げる」といった基本的な動きを身に付けるためのボール遊びと、ボールゲーム の工夫により投げる経験を増やすことで、正しいフォームの定着が図られ、ボールを投げる力(投動作 の獲得と距離の獲得)が向上するであろうと考え、本テーマを設定した。 〈研究仮説〉 ゲームの場において、ボール遊びとボールゲームの工夫をすることによりフォームの定着が図られ、 ボールを投げる力(投動作の獲得と距離の獲得)が向上するであろう。

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研究内容

1 「投げる力」について 解説体育編において「低学年においても各種の運動を通じて体の基本的な動きや各種の運動の基礎 となる動きを身に付けることが求められている」とある。宮崎明世(2014)は、「生涯にわたって豊 かな生活を送るためにはスポーツという文化を楽しむ力を身に付けることは重要である。投動作を身 に付けることはその他のスポーツの基礎ともなる」と記している。このことからも、ボールゲームを 楽しく行うためにはその運動の基礎となる投動作の習得が必要であり、実施する運動の動作の習得が できていないと児童が運動の楽しさを味わえず、意欲的に運動をする態度が育たないと考える。解説 体育編のボール運動の学習や生涯スポーツとして運動に関わる機会を増やすためにも、投げる力の向 上は必要であると考える。 投げる力は測定の結果を数字で表すことができ、児童へのはたらきかけが提示しやすいということ がある。ボール投げの記録に関しては、フォームの改善によってその結果が大きく変わるものと予想 でき、児童自身が変化に気づきやすい。その変化を通じて「やればできる」という達成感を児童に味 わわせることができ、同時に自己肯定感を高めることが期待できる。宮城政也(2014)は「身体的活 動における自己効力感(できるという見込み感)は,生涯の身体的活動継続の重要な因子となる」と 示しており、達成感の獲得が継続的な活動への一因となると考えられる。生涯スポーツとして一般的 に広まっているものとしては、バレーボール、野球、バスケットボール等があげられるが、投能力を 向上するための動きは、これらの運動の中でリズム感やバランス感覚への働きかけなど広い範囲での 効果が期待されるため、生涯にわたって運動に親しむためにも投能力の向上は大きな効果があると考 える。 練習効果の適時性については、ボールを投げる運 動の学習の適時期に関する研究の中で奥野暢通・後 藤幸弘・辻野昭(1989)は「投距離について男子で は7歳から8歳にかけての増大が著しく、女子では 7歳から10歳で著しい伸びを示す傾向が認められた」 (図1)と述べており、小学校の低学年での「投げ る」ことへのはたらきかけは、有効であると考える。 学年が上がるほど体のコントロールが難しくなった り、動作の未熟な児童のフォームの改善が困難にな るため低学年だからこそ、フォームの習得と定着が 必要だと考える。 2 投能力向上の工夫 (1) フォームの定着を図る遊び フォームに関しては言葉だけの説明では、児童 に伝わりにくいと考える。手本となる動画の提供 や児童自身の動画の振り返りなどICTの活用を通して、低学年ということを踏まえ、遊びの中で フォームの定着を図りたいと考える。ここでは、ボールゲームに入る前に投げる動作の練習を行う。 前述で宮崎が示したように「楽しむ力を身に付ける」ために、フォームの習得は必要であると考え る。低学年で投げる動作を習得するためにはその動き自体が楽しくないと児童の興味を引き出すこ とはできない。そこで投げるフォームに類似した遊びをアナロゴンとして取り扱う。実際にボール を持って投げる前に遊びを通して投げる動作の習得を図ることで、ボールを持ったときのフォーム の定着につながると考える。よって、本研究では投能力向上のために、動作の定着と距離の確保を 目指したゲームの工夫が必要であることから、ゲームの中でボールを投げる動作を繰り返し行う方 法や、投動作の習得を図るための遊びや練習方法、取り扱うボールの形態の工夫を授業の中に取り 入れていくこととする。 アナロゴンとは「新しい運動に出会い、その運動技能を身につけようとする場合に、その運動と よく似た運動経験が事前にあると、新しい運動技能の習得に大変効果的であり、こうした役に立つ 類似の運動経験のことを言う」と、池田延行・戸田芳雄(2000)は著書の基本用語辞典のなかで、 このように定義している。ここでは、ゲームを実践することでフォームの定着を図るが、フォーム 図1 投距離の練習効果(伸び率)の 年齢別平均値(奥野・後藤・辻野) 0 5 10 15 20 25

7 8 9 10 11 12 13 14

(%) (才)

男子

女子

適時期

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の習得やゲームの効果を上げるための準備運動として、当て鬼やキャッチボール、以下(図2)の 遊びをアナロゴンとして扱うこととする。 リボンエクササイズは、投げるフォームを意識させるための教材として取り扱う(図2.A)。こ れはボールを投げるときの腕の軌道を児童に理解させるためにとても有効である。さらに、屈伸時 のリズムや肩関節の可動域へのはたらきかけなどが目に見える形で行える。リボンエクササイズは 「実際に投げる活動と併用することにより投動作の改善に良い影響を与える」(埼玉県立教育セン ター研究報告書第368号)ということから授業を通して継続的に取り組んでいくこととする。 紙鉄砲遊びは、フォームの良さと、大きく振り下ろすことにより音が出る仕組みである(図2. B)。また腕を振り下ろす早さによって音の大きさが変わるため、児童自身がフォームの工夫に取 り組みやすいと考える。 授業ではアナロゴンのひとつとして、ロケット型のスポンジを目標の位置まで飛ばす練習を行う (図2.C)。また、どの遊びにも共通して言えるのは、ボールを持つ手と反対の手の動きや、体の ひねりと連動した足の動かし方も投動作にとって重要だということを児童に伝え、認識させた上で 実践させる必要がある。 タッチスローイングとは、遊びではないがフォームの改善を図るものとしてとても重要なもので ある。運動場でボールを投げるときに、肘を肩の高さから下げないことを意識させるため、ボール を握った手の甲を自分の背中に1度タッチさせてから投げさせることをポイントとして実践させる (図2.D)。これは肘の故障を回避するための動作として有効と思われる。 それ以外にも、メンコ遊びによる腕の振りおろしの早さや、下ろした腕の角度、また手首のスナ ップによりメンコが裏返る・裏返らないという結果は、目に見える投動作の改善に役立つ効果があ ると考える。紙飛行機を飛ばす動作もボールが飛ぶ方向に影響を与えるもので、目標に向かってボ ールを投げるための手立てとして活用できる。なお、このような遊びは、授業での活動の中では時 間の制限もあるため、生活科の中で昔遊びや特別活動の時間などで取り組ませることとする。 A リボンエクササイズ B 紙鉄砲遊び ・ 8 の 字 を 描 く こ ・腕の振り下ろし と に よ り 肩 の 可 のスピードを上 動 域 を 広 げ ら れ げる効果 る ・フォームの定着 ・ 投 げ る フ ォ ー ム ・手首のスナップ を 児 童 が 認 識 し やすい C ソフトロケット D タッチスローイング ・ ひ じ を 肩 の 高 さ ・肘を肩の高さよ まで上げる り下げないこと ・フォームの定着 により、故障を ・ コ ン ト ロ ー ル の 回避する 精度を上げる ・フォームの定着 図2 ゲームに入る前のアナロゴンとして行う活動 (2) 投げる距離の向上を図る遊び フォームの獲得ができていない児童は、投げる必要性を与えるとフォームの改善を図るであろう と考える。児童が好きな遊び「鬼ごっこ」をボールを使った遊びに変えるとうまく相手に当てよう とし、児童自らが投げることを工夫するであろうと考える。鬼は目標、距離を測りながら相手を追 いかけるが、目標物が動くことにより「投げる」精度を上げる必要が出てくるため、結果として投

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動作の改善が図られ距離も伸びると考えられる。他にも距離を伸ばす練習として、リレーのバトン を活用した遊びも有効である。バトンの穴に通したロープを高低差をつけて固定し、児童がバトン を持って高い目標に向けて投げることで、投げる動作のポイントを押さえた練習ができると考える。 距離によってロープに色をつけると目標を設定しやすく、児童の興味・関心も高めることができる (写真1)。また、この練習教具は児童の身長に合わせて立ち位置を移動することにより個に対応 できる教具である。投動作の獲得ができたら距離の獲得につなげら れるため、フォーム定着の遊びに次いで実践させると、大きな効果 が期待できるものと考える。 3 児童が楽しめるゲームの工夫 小学校低学年の目標としては、機能的特性(楽しい体育)を目的に しているが、本研究では構造的特性(技術中心)からはたらきかけて いくこととする。ゲームの中で遊びを通して技能を発揮させることで フォームの定着を図る工夫を行いたいと考える。ボール投げのおもし ろさは「思い通りの場所にボールを投げることができるかどうか」で ある。ふだんの生活ではあまり味わうことのできない感覚を味わえる ため、狙い通りにボールを投げたり、投げる距離が長くなったり、またおもいっきり投げること自体 がおもしろいと感じる運動である。児童が楽しいと感じる中で、必然的にその技能を発揮しようと促 すゲームを取り入れることとする。また図3のように児童が楽しめるよう、ゲームの中に4つの工夫 を取り入れることとする。 A 効果的なルール B ボール C 場 D ヘルプカード 図3 児童が楽しめるゲームの工夫 効果的なルールとして、ドッヂボールとソフトバレーボールのルールを工夫してオリジナルのゲー ムを実施する(以下T.Hゲーム【ティーエイチゲーム】と名付ける)。また捕球によってボールに対 する恐怖心や苦手意識を持たせないために、直接ボールに当たらないようにネットを挟んで相手と対 峙する方法で行う。対峙することにより児童がお互いに相手の動作を確かめることができ、それを伝 え合うことによりフォームの改善、定着が図られると考える。フォームについてのアドバイスの視点 を書いたヘルプカードを活用しながら、児童が投げることに意識できる授業を目指すために表1のよ うな工夫を行う。 表1 ルールの工夫 チームの構成と ・1チーム3人で構成。 コートの大きさ ・コートはバドミントンコートを使用、それぞれに守るエリアがある。 ・サーブをする人以外はエリア内を自由に移動できる。 試合開始時の ・試合を始めるにはコートのサーブラインより後方から、オーバーハンドスローでの サーブ 投球が必要となる。(児童の投球数を増やすためにも、サーブ権は得点に関わらず 交互に行う。) ・2セット目は1セットの敗者から行う。 得 点 ・相手コート内にボールが落ちると1点。相手がキャッチしてもコート外に出ていた ならアウトで相手に1点。 チェンジコート ・コートは1セット毎に交換する。 写真1 ロケットパンチ ・ ル ー ル カ ー ド ・ ポ イ ン ト カ ー ド ・タッチスローイング 教 師 の 立 ち 位 置 ⑤ ・リボンエクサイズ ・紙鉄砲 道具 置場 ⑤ ④ ③ ② ① ★ ★ ★ ★ ★ ★ ポイントカード ボールを持っ た手が肩につ いたかな ひじが肩より 上がっている かな リズムに合わせて 動いているかな ボールを 持っていな い方の手が 指さしがで きたかな 腕の交代は できたかな

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勝 敗 ・ラリーポイント制で時間に制限をつける。めやすとして5分の実施とする。 (前半2分、話し合い1分、後半2分) ・児童の興味・関心を持続させる意味と、チームの試合数を増やすために5分が適当 であろうと考える。 ・セット終了後に点数の高い方が勝者とする。2セット実施する場合には試合終了後 の総合得点で点数の多い方が勝者となる。 試合の進め方 ・ボールを投げる前には、必ず投げたい相手を指で指し名前を呼ぶ。 ・ボールをキャッチするのは指名された人でなくても良いが、キャッチして5秒以内 にパスをするか、相手コートに投げ返さないといけない。 ・5秒のカウントダウンは審判や係りで行う。チーム内のパスは3回まで(合計15秒) とする。(呼名後の投球がタイムオーバーになったり、ボールをコート内に落とす と相手に1点入る。) ・同じ人に続けてパスをしたり、同じ人が続けてボールを取らないようにする。カウ ントダウンが進んでいるという中で5秒の間に呼名をしないといけないため、児童 の思考が刺激されゲームの楽しさをより味わうことができる。 ・呼名に関しては、姓にしたり、名前にしたり、不規則な番号をつけたりすることで 変化が生まれるため、より高いゲームの刺激を与えることも可能となり、ゲーム自 体を楽しむことができる。 フォームを定着させ、投能力を上げるためには距離を伸ばす必要があり、そのためにも児童が思い きり投げる動作を繰り返すことが必要である。ただし、授業の初めの段階で投げ方の指導は必要とな る。しかし、思い切り投げたボールが他の児童に当たったとき痛いと感じてしまうと、ゲームに参加 する意欲を失ってしまうため、ボールは思い切り投げられるが当たっても痛くないという工夫が必要 である(図3.B)。また、思い切り投げても遠くまで飛ばないという工夫も必要である。腕の振りや、 スピードを上げるためには簡単に飛ぶボールでは効果が上がらないと考えた。このボールの特徴とし て、握りやすさが必要であるためボールを梱包材で包み、ふろしきでくるんだものを使用する。シッ ポのようなものがあり、そこを握って投げることもできる。 場の工夫としては、児童が主体的に活動するために試合を行う場と、試合に参加していないときに 技能を高める練習の場を設定する。特に練習の場は、フォームの定着を図るための場と投げる距離を 伸ばすための練習の場を設定する必要がある。それぞれが安全に活動できるように練習場所の確保を する。練習の場は、ゲーム前のアナロゴンを行う場としても活用する。 児童が主体的に動くことや、児童間の交流を目的としたヘルプカードを活用する。ヘルプカードは、 ポイントカード・ルールカード・話し合いカードの機能を有しており、児童が直感的に動作やフォー ムを理解できるように工夫を行う。まず、ボールを投げる動作に意識を集中させながら遊ぶ児童は少 ないと考えるため、ここでは投げる動作の写真や投げるときのポイントをおさえたキーワード、また 児童がお互いにアドバイスするときに役立つような、見る視点が書かれたものをポイントカードとし て準備する。また、初めて実践するオリジナルのゲームなので、ルールや戦い方、攻防のポイントな どを載せたルールカードを準備する。ルールカードはルールを覚えるまで必要なので第4時までコー ト近くに掲示しておく。話し合いカードは作戦タイムの場で使うことができるように話し合いのポイ ントをのせる。ワークシートとしての学習カードは、めあてや授業の振り返りが記入できるようにす る。

指導の実際

1 単元名 オリジナルのボール遊び(T.Hゲーム) 2 単元目標 (1) 学習のねらい いろいろなボール遊びをする。 (2) 道 筋 やってみる……みんなで仲良くボール遊びをしよう。 ひ ろ げ る……ねらった目標の位置までボールを投げる(T.Hゲームをしよう)。

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4 本時の指導 (1) ねらい ルールを覚えながらT.Hゲームをしよう。 (2) 授業仮説 ゲームのルールを覚えながら、相手のコートに向かって投げることで、投げ方の工夫をするこ とができるであろう。 (3) テーマに迫る児童の姿 ① 投げる動作を活用するために、友達と身体活動や言語を通して試行錯誤する姿。 ② 自分や友達のフォームに目を向け、動きの共通点や相違点に気づく姿。 ③ お互いの思いや考えを伝え合い、フォームの改善について高め合う姿。 (4) 本時の展開(6/10時) ☆指導上の留意点 主な学習活動 T:教師の発問 評 価 S:予想される児童の反応 は 1 はじめの挨拶。 ☆児童の様子を観察する。 じ め 2 体操をする。 5 分 3 前時のふりかえりをする。 ☆児童の声から想起させる。 4 やってみる (アナロゴンサーキット) ☆アナロゴンサーキットを実施する (1)リボンエクササイズ 場合に、それぞれの活動範囲が広 (8の字を大きく描く) いため、室内では児童の安全を考 中 (2)紙鉄砲 慮して設置場所を確保する。 (頭の高さから腕を素早く ☆各活動は音楽を流して目安を設定 振り下ろす) し,確実な時間を確保する。 (3)サーブ&キャッチ T投げるときに気をつけることは 15 (ネットを超えて相手コートに入れる) 何かな。 ★キーワードが言える 分 (相手からのボールは落とさないよ Sひじを肩より上げる。 ★友達にアドバイスできる うにする) タッチスローイングする。 (4)ソフトロケット 指さし。腕のこうたい。 (かごの中にソフトロケットを入れる) 足をリズムよく。 (5)空までシュート 体をひねる。 (ネットを超えるようになげる)Tお友達の手が下がってないか、み (6)かべなげ てあげてね。 (かべのマークを狙ってなげる) T投げるときにリズムを言いながら ※ 時間を決めて練習場所を移 投げてね。 動する。チームの中でお互 T目標に届くようにおもいっきりな いにフォームを見ながら、 げてね。 教えあう。 T肩は大きく回してね。 ★児童が何のための練習を T投げるときのポイントをキーワー してるのか理解し、動い ドで友達に教えてあげてね。 ている 5 今日の学習とめあてを確認す ☆全員に合図が聞こえるようにす る。 る。 6 ひろげる (チーム対抗のゲームをする) ☆ルールを把握できていない子へ声 (1)ゲームをするチーム かけをする。 (チームで話し合いながら Tカードを見て上手に投げるポイン ゲームをする) トをたしかめてね。 ・フォームのポイントカードを Tお互いにアドバイスするといい ★話し合いに参加している 見ながらゲームを進める。 よ。 ・試合は時間制(5分)にする。 (2分→1分→2分) ・1セット終了後に作戦タイム (試合→作戦→試合) 20 で話し合いの時間を持つ。 分 (2)係をするチーム Tサーブの合図を忘れないようにし (ゲームをスムーズに進めるた てね。 めに審判《1人ネット近くの Tコートから出てキャッチしてもア 台の上》、その向かい側に得 ウトだよ。 点係2人) (3)練習をするチーム Tお友達の手が下がってないか、み めあて「ルールをおぼえながらT.Hゲームをしよう。」

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(フォームの確認、技能の向上) てあげてね。 ・ポイントをお互いに見ながら T投げるときにリズムを言いながら ★係活動ができている 練習させる。 投げてね。 ・手足のリズムを取ると投げや T目標に届くようにおもいっきりな すいことに気づかせる。 げてね。 (4)見学するチーム T肩は大きく回してね。 (ルールの確かめをする) ・フォームのポイントがあって いるかどうか、しっかり見る。 ・ルールは審判と一緒に確かめ る。 終 7 今日のヒーローとその理由を ☆話す姿勢、聞く姿勢の重視 ★ 友 だ ち の 良 い 動 き に 気 わ グループで発表する。(2分) づ く こ と が で き た 。 り (めあてに戻り、良い動きを (思・判) 5 していた人を発表する) (授業後ワークシートに 分 時間を見て、全体でヒーロー 記入) を共有する。 8 次時の予告をする。 5 仮説の検証 本研究では、ゲームの学習においてボールを投げる力の向上(投動作の獲得と距離の獲得)として、 フォームの定着を目指し、ボール遊びを取り入れた指導の工夫を検証した。以下、児童の様子やワー クシート、授業実施前後の測定結果、アンケート集計等から総合的に検証する。 (1) フォームの定着が図れたか リボンエクササイズはボールを投げるときの腕の上げ方、その後の腕の軌跡が低学年の児童でも 理解しやすく、投げる動作が未熟な児童にとってはとても有効な遊びとなった。投げる動作を説明 する際、言葉だけでは理解が難しい。また、映像を見せて同じようにやらせてみようとしても、細 かい動きは伝わりにくい。動きについて理解できないことをするのはとても難しいことだが、リボ ンを8の字になるように動かすという具体的なイメージを与えることで投げる動作が容易にでき た。その動きを繰り返し行うことで、フォームの定着につながった(写真2)。 紙鉄砲遊びはボール投げを行うときに、紙鉄砲のように早く腕を振るという指示が児童へのアド バイスとして有効であった。授業の始めに紙鉄砲を遊びとして取り入れることは、その後の授業の 展開に大きく影響を与える。投げる動作の未熟な児童にとっては、紙鉄砲を振り下ろすだけという 単純な動作のため,取り組みやすい。上手にできると大きな音がなり新聞が破れる、ということに 気づくと動作を繰り返し行い、遊びとしての要素を保ちつつ積極的に練習に取り組むことができた。 また、振り下ろしのスピードを上げるための工夫として、自分の体の前に手を振り下ろすのではな 写真2 リボンエクササイズの実施によるフォームの変化 写真上は、ボール を右手で投げようと しているが、右足が 前に来ている。 写 真 下 は 、 左 足 が 前 に な り 、 目 標 に 向 け た 目 線 も 上 方 向 に な っ て い る 。 体 の 屈 伸 も 行 わ れ て お り 、 徐 々 に 投 げ る と き の リ ズ ム が体得できている。

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く、体の側面を腕が通り過ぎるように振り下ろすという指示をすると、振り下ろすスピードが上が った。しかし、この状態で運動を続けると腕の故障につながるので、スピードの感覚がつかめたら 腕を体の前でクロスさせるように指導を入れる必要がある。 オリジナルのボールにはつかみやすいようにシッポがついて いるが、シッポをつかんでのタッチスローイングでは、手では なくボールを肩に当てると投げる動作のイメージがわかりやす いという効果があった。また、投げる時には必ず投げる方向(相 手)を指さすことで目標に向かって投げる姿勢が意識でき、よ りよいフォームへと改善できた(写真3)。 学習の中の「やってみよう」ではアナロゴンとしていろいろ な遊びを取り入れたが、室内外ともにさまざまな工夫ができ、 学級の児童の実態に合わせて組み合わせることができる。この 遊びを繰り返すことによりフォームが改善され 定着したと考える(写真4)。 (2) 投げる距離の向上につながったか ① 遊びを通して ロケットパンチでは高低差をつけたロープ に通してあるバトンを投げることで距離を伸 ばす練習ができた。ロープの高さを変えるこ とで、低学年から高学年で幅広く活用できた。 ロープには1mごとに着色をしてあり児童が 記録を認識でき目標を設定できた。他者と競 い合うことで、向上心も出てくるため距離の 向上をはかるための遊びとしてとても有効なものと なった。投げるためのバトンと目標のためのバトン を2つ準備したことにより、児童の距離目標が設定 しやすくなった(写真5)。 鬼遊びは2種類実践した。「ねことねずみの当て鬼 バージョン」は二人ともボールを持って背中合わせ に座ってのスタートとなる。声がかかると振り向き ざまにボールを投げるので初めは、的外れな方向へ とボールが飛んだりしていたが、相手に当てたいと いう欲求がコントロールの精度を上げていくため、 児童が楽しんで行う活動となった。 枠を設定して行った当て鬼は、鬼の動ける範囲を設定したり、当てると鬼が交代するだけで人 数が変わらないパターンと、当てると枠の外に出ていく、人数が減るパターンなどルールを工夫 しながら楽しむことができた。いずれの場合においてもボールを素早く、強く、遠くに投げる必 要が出てくるため、投げる力の向上に有効であった。 ② ゲームの効果 ボールの工夫では、シッポ状のものがついていると初めての児童でも投げやすいことがわかっ た。ゴムボールを梱包材で包み風呂敷でくるむので、厚手の布をしっかり握ることになり、ボー ルが持ちやすい(写真3)。シッポをつかんで投げるので遠心力も加わり、前方へと投げること が容易にできる。児童が投げることに慣れてきたら、次の段階へ進めボールの形態を変える。ボ ールを一回り大きくし、ボールに直接リボンを巻く。シッポが細く薄くなるため、ボールを直接 持つように移行していく。この段階では投げることだけを考えるならシッポはいらなくなるのだ が、ゲームを行うとこのシッポの必要性が出てくる。もともと、投げる動作の未熟な児童はキャ ッチボールの経験が少ないため、捕球に関しても苦手とする場合が多い。本来捕球することによ ってゲームの楽しみを感じることができるのだが、捕球の苦手な児童は、ボールの到着点を予想 できないためゲームとして成立しない。しかしボールにシッポがついているとつかむことが容易 にできるため、ボールを落とさずに済む。ゲームが進むことにより投げる動作の経験が増え、フ 写真3 タッチスローイング 写真5 ロケットパンチ 写真4 遊びの実施によるフォームの変化

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ォームの定着につながり、投げやすさや当たっても痛くない工夫に加え、捕球しやすいことでも シッポ付きのボールがとても有効なものとなった。 場の工夫として、授業ではゲームを行うコートの周りにアナロゴン遊びをする場を設定した。 今回は7チーム設定のため移動する場所を7ヶ所設置し、時間を決めて運動を変えるサーキット 方式で行った。2分ごとの移動だが準備・運動・片付けに十分であった。チーム数にあわせて増 減が可能なので、体育館内でもゆとりある設置ができる。ゲームを行うときには、係の立ち位置 や道具の設置場所を決めておくことで、児童が安全に活動でき、係活動もスムーズに行えた。 ヘルプカードの工夫は、試合の際に使う係分担のひとつとして取 り入れた。審判、得点係の他にコートサイドで試合に出ている友達 へのアドバイスを行う係が使用した。投げ方のポイントが書かれた カードを見せながら応援を行った(写真6)。ゲームに夢中になっ ている時でも周りからの声かけによりフォームの修正を行おうとす るので、フォームが改善され定着へとつながっていった。授業の前 半は掲示資料でポイントを押さえ、後半は児童がもって使える形で 活用した。また話し合いカードでは、話す視点をあらかじめカード に書いて準備してあると、1~2分の活動でもスムーズに話し合う ことができた。いくつかの項目の中から、児童が選んで話し合いの テーマを決めることができるので、2年生でも試合に必要な内容の話し合うことができた。 距離を伸ばすための工夫として、山なりになるように投げることが必要となる。これは目標の 設定時に高さを調節することにより可能となった。壁に投げる的当ての高さと壁までの距離を調 整することにより距離の成果が現れ た。またネットをはさんでのキャッ チボールにおいてもネットの高さを 上げることで、山なりに投げること が実践できた。山なりに投げること が可能となった児童は、結果として 距離が伸びた。測定記録に関しては、 検証前の平均値と比べると検証後は 男子が4.9m、女子が3.7m伸びる結 果となり、沖縄県の平均値と比べて も男子が3.91m、女子が2.49m上回 る結果となった。(図4) 以上のように、遊びを取り入れた り、ゲームの工夫を行うことで児童 は友達と関わりながら、投動作のフォームを獲得し、実際にフォームが改善されることで投げる 力が向上し、ボール投げの距離を伸ばすことにつながったと考える。

成果と課題

1 成果 (1) ボールゲームを取り扱う場において、投げることを意識した遊びを通して、投げるための動作が 改善され、フォームの習得につながった。また投げる動作をゲームの中で繰り返し経験することに より、フォームの定着を図ることができた。 (2) ゲームの工夫を行うことにより動作の定着ができ、距離も伸びる結果となり、ボールを投げる力 が向上した。 2 課題 (1) 児童にとってフォームの変化がわかり、授業の振り返りがしやすいワークシートの作成と活用に ついての工夫が必要である。 (2) 担任が一人でも実践できる、データ収集の仕方や記録、分析、活用の工夫について検討が必要で ある。 写真6 ポイントカード 図4 アナロゴン遊びとゲーム実施による距離の変化

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〈参考文献〉 文部科学省 2014 『全国体力・運動能力・運動習慣等調査』 宮崎明世 2014 『体育科教育~ボール操作技能を高める~』 宮城政也 2014 『ヘルスプロモーションから見る体力と学力』 沖縄県立総合教育センター教育講演会 文部科学省 2014 『平成25年度体力・運動能力調査の結果について』 文部科学省 2010 『小学校学習指導要領解説 体育編』 細井誠 他 2004 『めんこ投げ遊びや紙てっぽう遊びが児童の投動作に及ぼす効果』 奈良教育大学紀要 奥野暢通他 1989 『投運動学習の適時期に関する研究』 兵庫教育大学 〈参考URL〉 埼玉県立総合教育センター 2012 『埼玉県の体力課題“投力”の向上のために』 http://www.center.spec.ed.jp/d/h24/368_H24_kenkyu_throwing.pdf 文部科学省 2008 施策目標11-1『子どもの体力の向上』長期的に低下傾向にある子どもの体力を、スポーツの振興を 通じ、上昇傾向に転じさせることを目指す。 http://www.mext.go.jp/a_menu/hyouka/kekka/1285840.htm 文部科学省 2008 文部科学白書2008『スポーツの振興と心身の健やかな発達に向けて』 http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa200901/detail/1284272.htm

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