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Academic year: 2021

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(1)

公共経済分析I

講義ノート

13

佐藤主光(もとひろ)

一橋大学政策大学院

(2)
(3)

出所:財務省資料

日本財政の不都合な事実

• 一般政府(=国+地方+社会保障基 金)債務の対GDP比は増加の一途 ⇒主要先進諸国の中でも最悪  債務残高増=財政赤字の累積 財政は持続可能か?  財政破たん(危機)は起きるのか? 脱デフレ・成長で財政再建は実現可 能?  財政再建に秘策はあるか?  財政が破たんすれば何が起きる? 3 ギリシャ 176.7%

(4)

成長は財政問題を解決するか?

アベノミクス=高い経済成長+消費税増税が実現しても2020年度、財政赤字は解 消しない 経済再生ケースでも8兆3千円程度(対GDP比1.4%)の赤字  名目成長率=3% 4 出所:内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(平成29年1月)

(5)

何故赤字は増えるのか?

• 国(一般会計)の歳出は

96兆円規模

• 歳出増を巡る誤解

誤解=歳出増は公共事業=無駄な支

出増による

実態=増加の主要因は社会保障

 高齢化の進む我が国では構造的課題 5 出所:財務省資料

(6)

参考:社会の高齢化

(7)
(8)

社会保障と税の一体改革

8

スキマ=財政赤字要因 • 忘れられた「一体改革」⇒

(9)
(10)
(11)

アベノミクスとは何か?

(12)

アベノミクス

12

(13)

アベノミクスの三つの顔

経済学的思想

現状認識・狙い

1の矢=異次

元の金融緩和

マネタリスト

デフレは金融的現象?

2の矢=機動

的財政政策

ケインジアン

総需要管理政策

 公共子支出の拡大・減税

による景気の浮揚

3の矢=構造

改革

サプライサイド?

規制緩和等による生産性(T

FP)の拡大

 女性の就労促進等

13

(14)

有効需要管理政策

• 公共支出(=

G)の乗数効果=派生需要による経済活動の喚起

1

Y

0 Y 1 A B 産出量=Y 総支出 ΔG ΔG/(1-c) AE=cY+I+G+X-M 0 派生需要=cΔG 14

(15)

金融・財政政策のポリシーミックス

2

r

2 Y 0

r

1

Y

0 利子率 産出量 IS=財市場均衡 :Y=C+I+G+X-M LM=貨幣市場均衡 :M/P=L(Y,r) F G E 0 Y 財政出動 金融緩和 金利上昇 ⇒クラウ ディング アウト 15

(16)

総需要・総供給分析

1

P

1

Y

0 P 0 Y 総需要AD 総供給AS =労働市場の均衡 を反映 「不完全雇用」 =右上がりのAS 景気対策で有 効需要を喚起 産出量 物価水準 0 経済活動の底上げ デフレの 克服 E F 16

(17)

アベノミクスの長期と短期

• 財政政策面では①短期はケインジアン的有効需要政策、②中長期的に

はサプライサイド(新古典派)的な生産(供給)サイド主導の成長戦略

17

)

(

X

M

G

I

C

Y

=

+

+

+

円安 短期 中長期 楽観的期待 成長戦略 

短期の景気対策から中長期の成長戦略(構造改革)への「ギアチェン

ジ」は可能か?

機動的財政政策

(18)

景気対策と成長戦略

景気対策 成長戦略 財政の機能 経済安定化 資源配分機能 手段 金融政策 有効需要管理政策 など 規制緩和 競争力・生産性の促進など ⇒経済の効率化 働きかけ 需要サイド サプライ(供給)サイド 目的 経済の変動を抑制 経済の「潜在的」(長期的)成長 力の向上 ヒトの体に例え ると 体調管理 体力増進 病気に例えると 急性疾患の治療 慢性疾患への対処 制度改革 概ね現行制度を前提 規制緩和等の構造改革が不可 欠 視点 短期 長期 (マクロ)経済学 景気循環論 経済成長論 18

(19)
(20)

財政再建の奇策?

主張 前提 ドーマー条件 成長率が金利を上回れば、基礎的財 政収支が赤字でも財政は持続(=公 債残高対GDP比安定的) 成長>金利が長期にわたって持続? ・ピケティの格差論  成長=賃金上昇率<金利が常態化 ヘリコプターマネー 中央銀行が公債を引き受け永久国債 化(恒久的に保有)すれば民間に対す る国の借金は解消 統合予算(連結)ベースでは債務の内訳 がシフト(公債⇒貨幣)しただけ  通貨の信認は? 物価の財政理論 財政再建=増税等をしないことで民間 消費・投資が喚起されれば物価は上 昇=脱デフレ 財政再建自体が必要なくなる=財政 収支は均衡 財政破綻(将来的に厳しい財政再建)しな いことを家計・投資家が信認していること が前提  財政再建しない国の財政への信認? 20

(21)

財政が持続する条件

Y

S

B

Y

r

B

G

T

rB

B

B

Y

Y

g

=

(

)

=

21 • 財政の持続可能性=公債残高÷GDPが発散しない ドーマー条件:公債の増加率<経済の成長率 ⇒①基礎的財政収支の対GDP比、②金利-成長率と③公債残高(対GDP比)の関係に依存

)

(

r

g

Y

B

s

基礎的 財政収支 対GDP比 金利・成長率 ギャップ ドーマー条件 公債残高 対GDP比

(22)

出所:「歳出・歳入一体改革」中間とりまとめ参考資料(平成18年4月7日)

経済成長と金利

• 財政再建に必要な収支改善努力

(=基礎的財政収支GDP比)

(23)

財政再建の切り札か?

物価の財政理論(FTPL)はシムズ教授のジャクソンホール会議(2016年8月)における講演で注目  浜田内閣官房参与「目からうろこ」・・・ 我が国におけるFTPLに対する理解  脱デフレ=物価上昇には金融政策に留まらず、財政政策が必要 • 現状=質的・量的金融緩和でも進まない脱デフレ • 期待=あえて財政規律を弛緩させる(財政再建を行わないことにコミットする)ことで脱デフレが実現・・・ ⇒「コントロールされた無責任」 ポイント • 景気対策=財政出動と財政再建が両立? ⇔経済財政一体改革=財政再建と構造改革(成長戦略)を両立 23

(24)

パラダイムシフト?

従前 物価の財政理論 デフレ(物価水準) 「デフレは貨幣的現象」 財政=公債残高が影響 脱デフレの担い手 金融政策  金利・マネタリーベースを操作 財政政策  基礎的財政収支を決定 金融政策 積極的  財政当局から独立  物価の変化に果敢に対応(テイラー・ ルール) 能動的  財政政策に追従的  ゼロ金利制約に直面=物価の低迷に有効 な手段を打ち出せない 財政政策 リカード型=長期の財政収支均衡を「制約」 として認識 非リカード型=長期の財政収支均衡に縛られ ない 予算制約 政府単独 政府+中央銀行の「統合予算」 脱デフレのカギ インフレ期待 ⇒実質金利=名目ーインフレ期待の低下 財政再建=増税はないという期待 ⇒消費・投資の拡大 24

(25)

FTPL=物価水準が調整

統合予算制約

+

+

+

=

+

+

+ + ∞ = −

1 1 1 1 1 0 1 0 1

1

)

1

(

1

)

1

(

t t t t t t t t t

R

R

P

M

P

G

T

r

P

M

P

B

R

実質金利=実体経済で決定 通貨発行益 基礎的財政収支 公債残高(中央銀行 保有分を除く) 統合債務 リカード型=財政収支を均衡させるよう基礎的財政収支が決定 25

(26)

ヘリコプターマネー?

財政ファイナンス=日銀が国債を(直接)引き受けた上、永久国債(コンソル)化 ⇒国債の「塩づけ」  市場(民間)に対する国の借金は帳消し? 統合政府=日銀と政府の統合化⇒日銀の債務(現金+日銀預け金)を継承  例:企業の連結バランスシート マネタリー ベース 日銀保有 国債 民間保有 の国債 日銀保有 国債 民間保有 の国債 マネタリー べース 日銀 中央政府. 資産 債務 統合政府 統合政府の債務 国の債務 26

(27)

FTPLのポイント

従前 物価の財政理論 公債 リカード型=公債保有は将来の増税への 備え(原資)⇒消費に「資産効果」なし 非リカード型=公債は資産として認識⇒ 消費に「資産効果」 調整変数=帳尻合わ せ 基礎的財政収支=税収ー支出 もしくは通貨発行益 物価水準 財政インフレ? 中央銀行が公債を購入  貨幣発行益で財政収入を補てん =「マネタリストの不愉快な算術」 物価水準=財政収支を均衡させるように 調整  貨幣発行益は必ずも必要としない  貨幣のないモデルでも成立 フィッシャー方程式の 解釈 実質金利=名目金利ーインフレ期待  金融政策=名目金利を決定するととも に、インフレ期待に「働きかける」 インフレ期待=名目金利ー実質金利  実質金利=実体経済で決定  名目金利=金融政策が決定(ゼロ金 利を含む) 27

(28)

金融政策と財政政策

財政政策 受動的=リカード型 能動的=非リカード型 金融政策 政策変数=貨幣供給 過剰決定 政策変数=金利 受動的 不決定 FTPLの世界 能動的 過剰決定 28

(29)

FTPLへの誤解?

その1:物価の財政理論は物価「水準」の決定するモデルであり、物価「変化率」(=インフレ率)を決定する モデルではない • (期待)インフレ率(将来物価÷現在物価)=名目金利ー実質金利 • 問題意識=将来の物価水準は「フィッシャー方程式」に従って決まるとして、初期(現在)の物価水準の決 定要因は何か?  テイラー・ルール=金融政策は名目金利(≠貨幣供給)を決定 その2:FTPLは景気対策のモデルではない! • FTPLモデルでは完全雇用(産出量一定)が仮定≠ケインズモデル ⇒民間需要(消費・投資)の増加は雇用(産出量)ではなく、物価上昇に直結 その3:FTPLは中央銀行の独立性を否定しない • 財政インフレ=貨幣発行益による財政収入補てんを求めていない • 中央銀行は(統合)予算制約の収支に責任を負っているわけではない≠「マネタリストの不快な算術」 29

(30)

FTPLと期待

質的・量的金融緩和 • 人々の将来期待インフレに直接働きかけ 物価の財政理論 • 家計=将来の増税はないという期待⇒消費の拡大 • 投資家=「質への逃避」(公債への収益期待?)の是正⇒不動産を含む他の資産の購入  物価の上昇圧力 ポイント • 家計も投資家も財政は悪化しても財政破綻はないと期待  財政破綻・財政再建を期待したら?  財政政策は期待はコントロールできるのか?(金融政策では出来なかった・・) • 柔軟な価格調整⇒「財政収支」均衡が実現  価格が硬直的であれば? ⇒収支の不均衡=財政破たん(横断性条件が満たされない) 30

(31)

どのように破たんするのか?

• 構造的財政破たんの帰結は様々: t t t t t t t t t t t

r

B

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P

M

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G

T

P

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1

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+

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+

+

=

=

= 横断条件=0 ゼロでなければ、現行制度は 持続可能ではない ⇒持続可能になるには政策 変数が調整されなければならない 通貨鋳造益 基礎的 財政収支 ③マネタリストの不愉快 な算術(財政インフレ)= 金融緩和で 財政の埋め合わせ ②将来的に厳しい財 政再建 ⇒世代間格差  リカードモデル ①デフォルト =債務圧縮 ④物価水準の財政 理論=インフレ  非リカードモデル 31

(32)

参考:増税の先送りの「機会コスト」

32 (消費)税率 時間 2015年10月 現行水準 (8%) 増税の先送り 将来的に大幅な増税 ⇒将来の経済に悪影響 税率の平準化 10%

(

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=

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+

=

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(

t t t t

r

G

T

G

T

P

B

現在の基礎的財政赤字は 将来の基礎的財政黒字で 補てん

(33)

経済財政一体改革

(34)

経済・財政一体改革」の取組:

「経済財政運営と改革の基本方針

2015」より

34

(35)

一体改革の工程表

35 出所:経済財政諮問会議「経済財政一体改革推進委員会」 一体改革 マクロ ・2020年度までにPB赤字の解消 ・年間歳出伸びを抑制(5千億円 程度) ミクロ ・歳出構造・地域差の「見える化」 ・ワイズスペンディング ボトムアップ=当事者(自治体等)に よる効率化への誘因付け・創意工夫 (優良モデル)の喚起

(36)

経済・財政再生アクション・プログラム

―“見える化”と“ワイズ・スペンディング”による「工夫の

改革」

平成 27 年 12 月 24 日 経済財政諮問会議 • (「見える」から「分かる」、「変えていく」へ)  各府省庁において順次「見える化」に着手する検討が進められているが、様々 な生 の情報、データの単なる情報公開にとどまらないように注意しなければな らない。標 準化、簡素化を旨とし、専門家でなくても「見える」ようにしていく。集 中改革期間 では、内閣府が、このような「見える化」に関する分析やファクト・ ファインディン グの中心となって、ワイズ・スペンディングのベースとなるデータ 作りを行い、改革 に向けた気付きや動機付けを広げていく 本プログラムは、経済再生と財政健全化を相対立するのではなく両立させるべ き関係と位 置付ける(①)とともに、その進め方についても、トップダウンではな く、個々の改革の取組 と関係者・現場の創意工夫を重んじるボトムアップによ る(②)ものである。こうした①の 両立する目標を②のボトムアップで実現しよう という際のアプローチが、 (ⅰ)公的サービス の産業化、 (ⅱ)インセンティブ改 革、 (ⅲ)公共サービスのイノベーションである。また、こ れらのアプローチに実 効性を与える鍵となるのが「見える化」である。 36

(37)

歳出管理=マクロと構造改革=ミクロ

マクロ=量 歳出管理 ・歳出目標の設定 例:社会保障費の増額を年間5千億円に抑制 ミクロ=質 財政の構造 改革 ・歳出の効率化  民間資金・経営の活用=PPP  政策評価の徹底=PDCAサイクル  コストの見える化  構造=赤字を作らない体質への転換  効率化の成果(歳出効果)=各地域の新たなニーズ(子 育て・活性化等)に浮いた財源を充当可 ⇒財政再建=マクロ目標と両立 37

(38)

一体改革の特徴

典型的な財政再建 経済財政一体改革 改革のイニシアティブ ・トップダウン=国主導 ・ボトムアップ=現場の創意工夫 歳出抑制 ・全分野で一律カット  ニーズの高い分野が疲弊・・・ ⇒改革の痛み ・歳出にメリハリ  見える化=課題発見(気づき)  PDCAの徹底=事業の継続的な見直し 財政再建の仕方 ・マクロ=数値目標ありき  あとは気合と根性・・・ ⇒現場はやらされ感・・・ ・ミクロ=インセンティブ改革(見える化を含む)  現場の「頑張り」を引き出す  優良事例の横展開 改革の狙い ・数値目標の達成 ・数値目標の達成 プラス ・ワイズスペンディング=歳出を効率化させる体 質作り(制度・環境整備) 38 成長か財政再建か? 成長と財政再建の両立

(39)
(40)
(41)
(42)

見える化=比較

• 自治体間のコスト・サービス水準の違いの見える化 公共サービス水準が同じでも、コストに相違⇒相対的に コストの高い地域は「非効率」?  業務改革(民間委託等)の必要性 サービス水準の代理変数  教育=学力テスト・いじめ件数等 財政運営に無駄のあるとの情報⇒効率化への圧力  留意:経済環境の近い地域間=類似団体間での比較が 有効 地域A 地域B コスト・成果 地域Aの財政運営 の非効率? 財政力指数 (平成19年度~平成21年度) Ⅰ 0.500以上~1.000未満 神奈川県、大阪府、千葉県、埼玉県、静岡県、茨城県、 栃木県、京都府、兵庫県、福岡県、広島県、滋賀県、三 重県、群馬県、岐阜県、岡山県、宮城県 17 Ⅱ 0.400以上~0.500未満 石川県、香川県、長野県、富山県、山口県、福島県、奈 良県、山梨県、福井県、新潟県、愛媛県 11 Ⅲ 0.300以上~0.400未満 北海道、熊本県、大分県、和歌山県、佐賀県、山形県、 青森県、徳島県、岩手県、宮崎県、鹿児島県 11 Ⅳ 0.300未満 長崎県、沖縄県、秋田県、鳥取県、高知県、島根県 6 都道府県類型区分一覧 グループ 団体名 団体数 42

(43)
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(45)
(46)
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47

(48)

参考:優良事例

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