第74巻 第 3号 2001年 12月 259-282
わが国における政府支出と
政府収入の因果関係*
し は じ め に
平 井 健 之
野 村 益 夫
わが国も含めて世界の多くの国々において,これまで,あるいは現在におい ても,財政赤字の抑制は政府の重要な政策課題となっている。このような状況 を背景に,近年,各国における政府支出と政府収入との因果関係に関する実証 研究に多くの関心が寄せられている。その理由は,政府支出と政府収入の因果 関係の解明が,財政の不均衡を回復させる政策を考慮する上で有益な情報を提 供すると期待されるからである。例えば,もし増税が政府支出の増大をもたら すという政府収入から政府支出への因果関係があるとすれば,財政赤字を削減 する政策として減税が有効であると考えられる。一方,政府支出に応じて租税 収入が調整されるという逆の因果関係があるとすれば,今度は支出の削減が有 効な政策になるであろう。さらに,政府支出と政府収入との間で相互に因果関 係が存在するとすれば,支出と租税のうち,他方を無視していずれか一方のみ を操作しでも政府の政策は財政赤字の削減をもたらさないかもしれない。 このような政府支出と政府収入の因果関係に関する実証研究は当初,アメリ カ合衆国の時系列データを使用した分析が中心であった。そのような一連の研 究として,例えば, Anderson, Wallace and Wamer (1986), Blackley (1986),*
共著者の平井健之(香川│大学経済学部)は, 1999年度香川大学経済学部経済学科プロジェ クト費による助成を受けている。また,野村益夫(名古屋学院大学経済学部)は, 1999年度名 古屋学院大学経済学部研究奨励金による助成を受けている。本稿は,これらの研究助成によ る研究成果の一部として公表したものである。-260ー 香川大学経済論叢 644
Manage and Marlow (1986), von Furstenberg, Green and J eong (1986),
Ram (1988)等がある。これらの分析結果は,ベクトル自己回帰(VAR)モデノレ
の枠組みで, Grangerの因果性検定に基づいている。しかし,そこでは時系列 データが定常であることを仮定しているため,それらの分析結果が見せかけの 回帰であるかもしれないという問題点が指摘されている。そこで,その後の研 究では, Miller and Russek (1990), Bohn (1991), Jones and Joulfaian (1991),
Hoover and Sheffrin (1992)
,
Baghestani and McN own (1994),
Payne (1998)等のように,政府支出と政府収入について共和分の検定を行い,両者が長期的 な均衡関係にあるかどうかを検討し,これに基づき誤差修正モデルを適用して 因果関係を検証している。また,特に最近では,アメリカ合衆国以外の他の先 進諸国や,財政赤字の問題を抱えている発展途上国のデータを用いた同様の分 析も行われている。 わが国においては現在,政府の財政赤字が深刻な問題となっている。 1990年 代前半以降,景気後退に伴い税収が伸び悩むなか,国の一般会計における公債 依存度は急上昇している。1999年度には,当初予算における公債発行額が30兆 円を超え,公債依存度が実績で42.1%に達するという戦後最高水準を記録して いる。しかし,わが国における政府支出と政府収入の因果関係に関する実証研 究は, Owoye (1995)を除いて,非常に数少ない状態である。 そこで,本稿の目的は, 1956年度から1999年度までを分析期間として,わが 国における政府支出と政府収入の因果関係を検討することである。これにより, わが国における財政赤字を抑制する代替的な政策の中から,どのような政策が 望ましいのかについても検討したい。すでに述べたように,従来の実証研究の 多くは,地方分権的な財政制度をもっアメリカ合衆国の経済を対象にしていた。 これに対して,中央集権的な財政制度をもっわが国のように,財政制度が異な る固についても,政府支出と政府収入の因果関係を分析することはまた,興味 深い研究と思われる。 (1) アメリカ合衆国以外の他の先進諸国や発展途上国のデータを用いた分析については, 第II節で概観する。
645 わが国における政府支出と政府収入の因果関係 261 本稿における実証分析は,先行研究の分析方法を踏襲して,おおむね次のよ うな手順で行われる。まず,政府支出と政府収入の時系列データについてそれ ぞれ単位根の検定を行い,それら2つの変数がともに1階の和分過程1(1)であ るかどうかを分析する。次に,政府支出と政府収入の
2
つの変数に関して共和 分の検定を行う。すなわち,政府支出と政府収入が長期的な均衡関係にあるか どうかを分析する。そして,もし2変数聞で共和分の関係が存在するならば, 誤差修正モデルを推定することによって,長期における政府支出と政府収入と の因果関係を分析する。一方, 2変数聞で共和分の関係が存在しない場合には, 各変数について1
回の階差をとり,VAR
モデルを推定することによってG
r
a
n
-g
e
r
の因果性検定を行う。これにより,短期における両者の因果関係を調べるこ とにする。 本稿の構成は,以下の通りである。まず第II節では,政府支出と政府収入の 因果関係に関する仮説やこれまでの実証研究について簡単に概観する。次に第I
I
I
節では,実証分析の方法や使用するデータについて説明する。そして第I
V
節 において,実証分析の結果について議論する。最後に,第V
節で結論を述べる。I
I
.
支出と収入の因果関係に関する先行研究
1 因果関係をめぐる 3つの仮説 政府支出と政府収入との聞に何らかの因果関係があるとすれば,そのような 関係をめぐっては,次のような3つの基本的な仮説が挙げられる。まず第1の 仮説は,政府支出と政府収入が同時に決定されるという仮説である。例えば,Musgrave (
1
9
6
6
)
やM
e
l
t
z
e
rand R
i
c
h
a
r
d
(
1
9
8
1
)
は,そのような理論を提示し ている。この仮説は,投票者が政府サービスの限界便益と限界費用を比較する ことによって,政府支出と租税の最適水準を決定するような場合に成立するで あろう。 さらに,第 2の仮説は支出一租税仮説であり,政府支出の規模が税収の変化 をもたらすというものである。Peacockand Wiseman (
1
9
6
1
)
によって提案さ れた転位効果の仮説は,そのような見解を示している。それによれば,政府支262一一 香川大学経済論叢 646
出は戦争のような社会的混乱期を契機に新しい水準に増加し,それに伴い租税 負担の水準も永続的に増加すると考えられている。 Peacock and Wiseman (1979)は,このような転位効果がさまざまな要因によって引き起こされる構造 変化として解釈されることを指摘している。またその他に,支出一租税仮説は, Barro (1974, 1978)によって議論されたリカードの等価命題(Ricardianequiv -alence)においても認められる。 Barro(1974, 1978)によれば,今日公債発行で 資金調達された政府支出の増加は,将来における増税として納税者に認識され ることになる。 そして,第3の仮説は,租税収入によって政府支出の規模が調整されるとい う租税一支出仮説である。 Friedman(1978)や Buchananand Wagner (1977,
1978)の議論は,そのような見解に基づいている。Friedman(1978)においては, 増税は政府支出の増大をまねくため,財政赤字を削減させないことが主張され ている。そのため, Friedman (1978)は,財政赤字を削減するための手段として 減税を提案している。一方,それとは逆にBuchananand Wagner (1977, 1978) では,財政赤字の下での減税は納税者にとって公共サービスの費用の低下をも たらすため,政府支出の増大をまねく傾向にあることが議論されている。 そこで,もし政府支出と政府収入との閣で双方向の因果関係が認められると すれば,支出と収入の決定が同時に行われるという第
1
の仮説の成立が考えら れるであろう。一方,政府支出から政府収入への一方的な因果関係が存在する 場合には支出一租税仮説が有力であり,逆に政府収入から政府支出への一方的 な因果関係が認められる場合には租税一支出仮説が有力となるであろう。しか し,もし両者の聞に因果関係がまったく認められないとすれば,政府支出と政 府収入はそれぞれ独立に決定されていると考えられる。 2.. 因果関係をめぐる実証研究 政府支出と政府収入の因果関係をめぐる当初の実証研究の多くは,ベクトル 自己回帰(VAR)モデルの枠組みを用いて, Grangerの因果性検定に基づいて いる。これらの一連の研究は,アメリカ合衆国における政府支出と政府収入の647 わが国における政府支出と政府収入の因果関係 263
時系列データを使用した分析が中心である。しかし,それらの分析結果は必ず しも一致した結論を示していない。
例えば,連邦政府における 1946年から1983年までの年次データを使用した
Anderson, Wallace and Warner (1986)や 1954年から 1982年までの四半期 データを使用したvonFurstenberg. Green and J eong (1986)の分析結果はそ れぞれ,支出一租税仮説を支持している。一方, Blackley(1986)は, 1929年か ら1982年までの連邦政府の年次データを用いて,租税一支出仮説を支持する分 析結果を導き,政府収入の増加が政府支出の増加をもたらすことを示している。 また, Manage and Marlow (1986)は, 1929年から 1982年までの年次データ による分析結果より,因果性検定におけるラグ数に依存して,政府支出と政府 収入の間で双方向の因果関係が存在するか,あるいは政府収入から政府支出へ の一方的な因果関係が存在することを示している。さらに,Ram(1988)は,1929 年から 1983年までの年次データと 1947年から 1983年までの四半期データを 使用して,連邦政府については,収入から支出への困果関係があり,ナ│、!と地方 政府については逆に,支出から収入への因果関係があるという結果を得ている。 このようにアメリカ合衆国における分析の結果はさまざまであるが,上記の 研究を含めて当初の実証研究は,使用される時系列データが定常であることを 仮定している。そのため,それらの分析結果が見せかけの回帰であるかもしれ ないという問題が発生する。そこで,その後の実証研究では,政府支出と政府 収入について共和分の検定を行い,両者が長期的な均衡関係にあるかどうかを 検討している。これに基づき, Miller and Russek (1990), Bohn (1991), Jones and Joulfaian (1991)
,
Hoover and Sheffrin (1992),
Baghestani and McNown (1994), Payne (1998)は,誤差修正モデノレを用いてアメリカ合衆国における政府 支出と政府収入の因果関係を検証している。 Miller and Russek (1990)は, 1946年から 1986年までの年次データと 1946 年第1四半期から 1987年第2四半期までの四半期データを使用して,政府支出 と租税収入との間で双方向の因果関係があることを示している。また, Bohn (1991)は, 1792年から 1988年までの年次データを検討し,誤差修正モデノレの推264ー 香川大学経済論議 648 定において通時的な予算制約を課すことによって,支出一租税仮説と租税 支 出仮説をともに支持するという結果を導いている。これにより,政府の財政赤 字が,支出の減少と増税の組み合わせによって削減されることが指摘されてい る。さらに, Jones and Joulfaian (1991)は, 1792年から 1860年までの年次デー タに基づき,短期においては政府支出から政府収入への因果関係が存在し,長 期においては両者の間で双方向の因果関係が存在することを示している。 一方, Hoover and Sheffrin (1992)は第2次世界大戦後の因果関係を検討し, 1960年代半ば以前では租税 支出仮説が支持されるようであるが,1960年代後 半以降においては,政府支出と租税収入との聞で因果関係がみられないという 結果を導いている。また, Baghestani and McN own (1994)では, 1955年から 1989年までの四半期データを用いてGNPを新たな変数として加えた誤差修正 モデノレの推定結果から,長期においては支出 租税仮説も租税一支出仮説も支 持されないという結論が得られている。同様の分析は,アメリカ合衆国の連邦 政府だけではなく州政府についても行われている。 Payne(1998)は, 1942年か ら1992年までの年次データを使用して,各州における政府支出と政府収入の因 果関係を検討している。その分析結果からは,政府支出と政府収入が同時に決 定されるという仮説は11の州で,支出一租税仮説は8つの州で,そして租税一 支出仮説は24の州で支持されることが示されている。 さらに,このような誤差修正モデルを用いた実証研究は,他国のデータを用 いても行われている。 uwoye(1995)は, 1961年から1990年までの年次データ を使用して,G 7諸国における政府支出と租税収入の因果関係を検討している。 Baffes and Shah (1994)は,ラテンアメリカ諸国(アルゼンチン,ブラジ1,レ メキシコ)について同様の分析を行っている。とりわけ, uwoye (1995)は,日 本とイタリアを除いたすべての国において双方向の因果関係があることを示し ている。そして,日本とイタリアについては,租税収入から政府支出への因果 関係,すなわち租税一支出仮説を支持する結果が得られている。
また, Hondroyiannis and Papapetrou (1996)とVamvoukas(1997)は,そ れぞれギリシャにおける政府支出と政府収入の因果関係を検討している。
Hon-649 わが国における政府支出と政府収入の因果関係 -265
d
r
o
y
i
a
n
n
i
s
a
n
d
P
a
p
a
p
e
t
r
o
u
(1996)は 1957年から 1993年までの年次データを 使用し,Vamvoukas
(1997)は 1948年から 1993年までの年次データを用いて, ともに長期において支出一租税仮説を支持する結論を得ている。一方, トルコ における 1967年から 1994年までの年次データを使用したD
a
r
r
a
t
(1998)の分 析結果は,租税一支出仮説を支持するとともに増税が政府支出の減少をもたら す と い う 負 の 因 果 関 係 の 存 在 を 示 し て い る 。 こ の 関 係 はB
u
c
h
a
n
a
n a
n
d
Wagner
(1977, 1978)の見解に相当し,D
a
r
r
a
t
(1998)はトルコにおける財政赤 字問題に対する解決策として増税が有効であることを示唆している。さらに, Li (2001)は,中国における 1950年から 1997年までの年次データに基づき,政 府支出と政府収入をそれぞれ公債費を除いた支出と含めた支出,公債発行によ る借り入れを除いた収入と含めた収入に分類し,それらの支出と収入の組み合 わせについて因果関係を検討している。その分析結果からは,ほとんどの組み 合わせにおいて,支出と収入との聞で双方向の因果関係の存在が示されている。 Li (2001)は,このような双方向の因果関係が中国における財政赤字を抑制する 試みを複雑なものにしていることを指摘している。 このように,近年,財政制度や経済発展の水準が異なるさまざまな国におい ても,政府支出と政府収入の因果関係に関する実証研究が進められている。そ こで,次節以降では,本節で概観した従来の実証分析の方法を踏襲して,わが 国における政府支出と政府収入の因果関係について検討しよう。I
I
I
.
分析方法とデータ
単位根の検定 変 数 め がd階の和分過程であることを ,Xt~1(d) で表す o Xt~1(d) は,変 数X
t
をd
回階差をとると定常になることを意味する。以下では,t
=
1
,2
,“, nとする。 1(0)である変数は定常である。変数が l階の和分過程 1(1)であると き,変数は単位根をもっ。変数が 1(1)である帰無仮説,変数が 1(0)である対立 仮説に対して,DF (
D
i
c
k
e
y
-F
u
l
l
e
r
)
,ADF (
A
u
g
m
e
n
t
e
d
D
i
c
k
e
y
-F
u
l
l
e
r
)
,PP
(
P
h
i
l
l
i
p
s
-P
e
r
r
o
n
)
検定等の多くの単位根の検定が考案されている。ADF
検定-266'ー 香川大学経済論叢 650 では,次の3つの回帰式を考える。 モデル A (定数項とタイムトレンドなし): h
ム
Xt=
QXt-l+
L
:
ム
ム
Xt-,+Ut, モデルB
(定数項を含む)..u
+
x
ム
,A YK
2
M
+
χ れ A U+
μ
一 一
x
ム
モデノレC (定数項とタイムトレンドを含む) :ム
Xtμ
+
γ
t
+
OXt-l+
L
:
r
t
J
:
,!.Xt-,
+
Ut ここで,ムを階差演算子とする。上記の式でムXt-,のラグ多項式を無視すると,δ=0
の単位根(階差定常モデル)を帰無仮説, O<
0
を対立仮説とするDF
(
D
i
c
k
e
y
and F
u
l
l
e
r
, 1979)検定は, Oの回帰係数のt
値とF
u
l
l
e
r
(1996)で報告 された値を比較すればよい。また,誤差項に系列相関がある場合に,上記の式 のようにムXt-iのラグ多項式を加えることにより,Dickey and F
u
l
l
e
r
(1981)はADF (Augmented D
i
c
k
e
y
-
F
u
l
l
e
r
)
検定を提案した。第I
V
節では,モデJレBとC
を用いて分析する。ADF
検定のラグ数の選択については,本稿では,AIC
(
A
k
a
i
k
e
I
n
f
o
r
m
a
t
i
o
n
C
r
i
t
e
r
i
o
n
)
の基準を用いて選択する。 さらに,その他の方法として,P
h
i
l
l
i
p
s
a
n
d
P
e
r
r
o
n
(1988)は,モデノレA
,B,C
におけるムXt→のラグ多項式を無視するモデノレで,ADF
検定を修正して単位 根を帰無仮説とするPP
検定を提案した。モデノレA
,B
,C
においてムXt-iのラ グ多項式を無視すると,次の回帰式になる。 モデルA'(定数項とタイムトレンドなし):ム
Xt=
QX't-l+
Ut,
モデルB'(定数項を含む):ム
Xt=μ+OXト l+Ut, モデノレC'(定数項とタイムトレンドを含む)..i
i
i
651 わが国における政府支出と政府収入の悶果関係 267-ム
X't
μ+yt+dXt-l+Ut
P
h
i
l
l
i
p
s
and P
e
r
r
o
n
(
1
9
8
8
)
では,誤差項については,誤差項に系列相関がある 等,一般的な仮定が想定されている。第I
V
節では,モデノレB
'
とc'を用いて分析 する。本稿では,TSP
を用いて分析するため,PP
検定のラグ数は,ADF
検定 で選択されたラグ数である。 以下の分析において,ADF
検定とPP
検定の2
つの方法を用いることにする が,モンテ・カノレロ実験等で単位根の検定方法の小標本の特性を分析すること が可能である。DeJong
,N
a
n
k
e
r
v
i
s
,S
a
v
i
n
and Whiteman (
1
9
9
2
)
は,モンテ・ カルロ実験で自己回帰的な誤差項の場合にはPP
検定よりADF
検定の方がサ イズと検出力の点から良いという結果を得ている。一方,C
h
o
i
(
1
9
9
2
)
とC
h
o
i
and Chung
(19
9
5
)
は,年次データ等,データ数が少ない場合にはPP
検定の方 が検出力の点でADF
検定よりも良いという実験結果を得ている。 2れ 共和分の検定1
個 の 被 説 明 変 数 % と m個 の 説 明 変 数X,t(
i
=1
,2
,… , m)はそれぞれ 1(1)であると仮定する。このm+1
個のデータの回帰分析は,これらの変数が 共和分の関係にある場合を除いて,見せかけの回帰になる。E
n
g
l
eand G
r
a
n
g
e
r
(
1
9
8
7
)
は,共和分の検定として,共和分回帰におけるCIRDW(
C
o
-
I
n
t
e
g
r
a
t
i
n
g
R
e
g
r
e
s
s
i
o
n
D
u
r
b
i
n
-Watson S
t
a
t
i
s
t
i
c
)
検定や共和分回帰の残差に対するADF
(Augmented D
i
c
k
e
y
-
F
u
l
l
e
r
)
検定の適用を提案した。共和分回帰の残差に関す るADF(Augmented D
i
c
k
e
y
-F
u
l
l
e
r
)
検定は,E
n
g
l
e
-
G
r
a
n
g
e
r
(
E
G
)
検定とも 呼ばれる。ここで,共和分の検定において,帰無仮説は,これらのm+1
個の変 数の1次結合のすべてが1(1)になることである。一方,対立仮説は,少なくと もI
つの1
次結合が定常的(
1
(0))になることである。E
n
g
l
e and Granger
(
1
9
8
7
)
の検定では,共和分回帰におけるOLS
の残差を計算して,この残差に対 して単位根の検定としてADF
検定を実行する。また,J
o
h
a
n
s
e
n(
1
9
8
8
,1
9
9
1
)
とJ
o
h
a
n
s
e
n
and J
u
s
e
l
i
u
s
(
1
9
9
0
)
は,共和分の検定としてトレース検定等を提案し268 香川大学経済論叢 652 ている。
Haug(
1
9
9
6
)
は,ADF
検定とJ
o
h
a
n
s
e
n
の検定を含む多数の検定方法 を,モンテ・カルロ実験で検出力やサイズを比較している。Zhou(
2
0
0
1
)
も,デー タ数とサンプル期間の効果を考慮して,ADF
検定とJ
o
h
a
n
s
e
n
の検定を含む3
つの検定方法を,モンテ・カルロ実験で検出力やサイズを比較している。Zhou
(
2
0
0
1
)
の結果では,年次データ等でデータ数が少ない場合には,E
n
g
l
e
and
Granger (
1
9
8
7
)
のADF
検定の方がJ
o
h
a
n
s
e
n
の検定よりも良い。そこで,第
I
V
節では,E
n
g
l
e
and Granger (
1
9
8
7
)
のADF
検定を適用するom = 1の共和分回帰において ,.Ytを被説明変数とし ,Xtを説明変数とする。こ のとき,共和分回帰は次式で示される。 .Yt = α十bXt+Zt, ここで,
α
とb
はOLS
推定量であり Zは残差である。E
n
g
l
e and G
r
a
n
g
e
r
(
1
9
8
7
)
の共和分検定は,次のADF
回帰,ム
Zt=ρZt-1+呂ムム
Zt-;+Ut, におけるρ
についてADF
検定を行う。 3" 因果関係の分析 まず, 2変数xとyの聞に共和分が存在しない場合に,短期的な因果関係の 分析について説明する。2
変数ムXtとム.Ytに関するρ
次のベクトル自己回帰モ デルVAR(ρ)は,ムXt= ax+(
α
x1ムZト1
+
川"十axpムXt-p)+(aY1ムYt-1十.
.
+
α
ypムYt-ρ)+Uxt,(
ω
1日
) ムy
仇t = bι
y
十(bx叫1
ムx
幻t-1+'一“川い..+bx岬.pムx
幻t-ρ
ρ
)+(bι
y
1
ムy
釣tト司→1
+
川い1 わ+ bん
'ypムy
仇tト-pρ
)+U川y
阿lt (2) である。ここで UxtとU,ytは誤差項である。第I
V
節では,ρ
をAIC(
A
k
a
i
k
e
I
n
f
o
r
m
a
t
i
o
n
C
r
i
t
e
r
i
o
n
)
とSBIC(
S
c
h
w
a
r
z
B
a
y
e
s
i
a
n
I
n
f
o
r
m
a
t
i
o
n
C
r
i
t
e
r
i
o
n
)
の基準で選び,さらにρ=5
の場合にも分析結果を示す。また,因果関係の分 析はF
検定で行われる。F
検定の帰無仮説は,Granger
の意味でムy
からムz
653 わが国における政府支出と政府収入の因果関係 -269-(または,ムxからム
y
)
への因果関係がないということである。 次に2
変数xとyの聞に共和分が存在する場合における因果関係の分析 は,以下の通りである。いま, 2変数χとyの共和分回帰,Yt=
a + b.Xt十Ztと Xt α'+b'Yt+Wtを定式化する。ここで,a, b, a', グはOLS
推定量であり,z
とWは残差である。このとき,残差z
とω
の1
期前のラグっき変数Ztー1とω
ト Iを誤差修正項とする。Owoye(
1
9
9
5
)
に従って2
変数x
とy
の聞に共和 分が存在する場合には,E
n
g
l
e
and Granger
(
1
9
8
7
)
の表現定理より,次の誤差 修正モデル, ムXt=αx+(αXlムXt-l+..い十αxpムエt-p)+(αylムYt-l+...+αゅムYt-p) 十8Wt-l+U叫(
3
)
ムYt= by十(bXlムXt-l+…+ bxρムXt-P)+(bYlムYt-l+・...十bypムYt-p) +.ilZt-l+Uyt, (4) を用いる。Granger
の意味でムyからムx
への因果関係がある場合は, (1)ムyの 回帰係数に関して有意な F 検定で捉えられる短期的な因果関係, (2)誤差修正項 削→の回帰係数に関して有意な t検定で捉えられる長期的な因果関係,の2
つ
チャンネノレがある。第I
V
節では,Vamvoukas
(
1
9
9
7
)
に従って,ムyからムx
へ の短期の因果関係を個々のムyの回帰係数に関する t値が t分布に従うと仮定 して分析され,ムyからムχへの長期の因果関係を誤差修正項Wt-lの回帰係数 の t値が t分布に従うと仮定して分析される。G
r
a
n
g
e
r
の意味でムx
からムy
への因果関係がある場合も同様である。 4. デ ー タ 本稿の分析で使用する政府支出と政府収入のデータは,それぞれ各年度にお ける政府(国)の一般会計歳出決算額および歳入決算額とする。さらに,L
i
(
2
0
0
1
)
と同様に,政府支出と政府収入をそれぞれ次のように分類する。G
1=
歳出総額G
二歳出総額一国債費R
1=
歳入総額27{}-- 香川大学経済論叢 654
R
z二歳入総額一公債金収入 以下において政府支出と政府収入の因果関係を検討する際に,支出と収入の組 み合わせとしてそれぞれ,GlとRl' G1とRz,Gzと RhGzと Rzの4つを考 えることにする。これにより,公債発行による借り入れを政府収入に含めた場 合と除いた場合,さらに国債費を政府支出に含めた場合と除いた場合において, 政府支出と政府収入との因果関係がどのように異なるかを分析したい。 上記のすべてのデータ(名目値)は『財政統計~ (大蔵省主計局調査課)の各年 度版から求められ,使用されるデータの期間は1
9
5
5
年度から1
9
9
9
年度までで ある。また,上記の政府支出と政府収入はすべて実質値で表示されるものとし, それぞれのデータをGDP
デフレータで実質化す2
。GDP
デフレーク(19
9
0
暦 年基準)は国民経済計算年報~(経済企画庁)より取られている。したがって, 以下では,G
hG
z
, RhR
zの各変数は実質値で表される。ここで,これら4
つ の変数について ,1
9
5
5
年度から1
9
9
9
年度までの期間のデータが用いられるが, 第1
階差変数についてはそれぞれ,1
9
5
6
年度から1
9
9
9
年度までのデータが利 用可能となる。そのため,本稿における分析期間は,1
9
5
6
年度から1
9
9
9
年度ま でとする。 図1
には,上記のように分類した政府支出と政府収入の動向がそれぞれ示さ れている。図1より,第1次石油危機以降,政府支出 G1と政府収入品との諦 離が顕著になり,特に近年その傾向が増大していることがわかる。また,これ に伴い国債費がほぼ増加傾向にあることも明らかである。 ( 2) 政府支出と政府収入の各変数に名目値と実質値のいずれを採用するかの判断は,先行 研究においてもさまざまである。MiJ1erand Russek (1990)が指摘するように,予算の決 定が大部分は名目値に基づいて行われ,名目変数が公債残高を決定することになるが,実 質変数もまた経済における総需要に影響を及ぼしている。そのため,名目変数と実質変数 に関するいずれの情報も重要である。例えば, Jones and Joulfaian (1991), Baghestani and McNown (1994), Payne (1998)等の分析は,名目変数を用いている。これに対して, Vamvoukas (1997), Darrat (1998)等の分析では,実質変数が採用されている。またさら に, MiIIer and Russek (1990)やLi(2001)等は,名目変数の場合と実質変数の場合の両 方についてそれぞれ分析している。655 わが国における政府支出と政府収入の悶果関係 271 図1 政府支出と政府収入(実質値) 同 + 間 十 肌 十 肌 十 1000ρ00 9回000 800,,000 700000 600,000
量棚田
O 400000 300,,000 200000 100,,000 。I
持u嘗l伊u唱 II II ,fð~fb ....~φ 中f,f:(Jfb'" ....~~ ....f:ð~~申争,~中申や 4や・ ,~や中やや1á>や&>'"や~や宇中宇や1á>や,,'" 争~中や+宇 年度1
V
.
分 析 結 果
単位根および共和分の検定結果 表1
は,政府支出と政府収入の各変数についての単位根検定の結果を示して いる。ここで, ADF検 定 お よ びpp
検定における最大のラグ数は10である。ま ず, ADF検定の結果をみると,レベル変数では,定数項・トレンドモデノレCの G1変数を除いて ,10%の有意水準でレベル変数における単位根の帰無仮説を棄 却できない。G
l
変数の結果については,選択されたラグ数が大きいことが原因 であるかもしれない。さらに,第1階差変数のADF検定では,定数項モデ/レB (トレンドなし)におけるR
l
' Rz
, Gz変数と定数項・トレンドモデlレCにお けるR
z変数に関して ,10%の有意水準で単位根の帰無仮説を棄却できる。 次に,pp
検定の結果をみると,レベル変数では,定数項モデノレ B'(トレンド なし)と定数項・トレンドモデルc'におけるすべての変数について, 10%の有 意水準でレベル変数における単位根の帰無仮説を棄却できない。しかし,第1
階差変数のpp
検定では,定数項モデlレB'と定数項・トレンドモデ、Jレc'におけ るすべての変数について, 10%の有意水準で単位根の帰無仮説を棄却できる。272 香川大学経済論叢 656 表 1 単位根検定, 1956-1999年度 ADF検定 PP検定 変 数 レ ベ ル 第1階差 レ ベ ル 第1階差 定数項あり,タイムトレンドなし
R
1 0..95557 (2) 266780 (2)本o
77164 39..04859***R
2 -O. 95554 (2) -3 19921 (2) ** -0..78433 -30..99115*料 G1o
90451(10) -1 60150 (10)o
61505 -31 91706料* Gzo
07041(2) 3 71283(2)*ホ*o
l3983 35..09791 *** II 定数項とタイムトレンドありR
1 -243867(2) -2 87637(2) -9.28990 -40 96384***R
2 191374(3) 3..18356 (2) * -6..64443 30..60849*** G1 360291(10)** L50937(10) 一735523 -33..67083料* G -2.83141 (10) -2 00700 (10) -8 53563 -30.81454*** 注 :ADF (Augmented Dickey-Fuller)検定は,次の回帰式を用いて行われる。 ムXt= μ+&.t-1+写
16ムト'+Ut, (5) ムXt= μ+rt+dXt-1+ ~世 εムXt-i 十 Ut (6) ここで,ムxはxの1回の階差である。 kはラグ数であり ,tは時間を表す。(5)式は定数項 あり,タイムトレンドなしのケース, (6)式は定数項とタイムトレンドありのケースである。 ラグ数 hはAICに基づいて選択される。括弧内の数値は,検定において選択されたラグ数 である。また, PP (Phillips-Penon)検定は,次の回帰式を用いて行われる。 ムXt= μ+dXt-1十Ut, (7) ムXt=
μ+rt+dxトl+Ut. (8) (7)式は定数項あり,タイムトレンドなしのケース, (8)式は定数項とタイムトレンドありの ケースである。 PP検定でのラグ数は, ADF検定で選択されたラグ数である。 ***は 1%水準で有意**は 5 %水準で有意*は10%水準で有意であることを示す。 pp検 定 の 結 果 で は,G!, cn"R!, R2の4
変 数 は す べ て1
(
1)であると判断でき る。 こ れ よ り , 表1に お け る ADF検 定 の 結 果 と pp検 定 の 結 果 は 異 な っ て い る ことがわかる。ところで, Choi(1992)とChoiand Chung (1995)は , 年 次 デ ー タ の よ う に デ ー タ 数 が 少 な い 場 合 に はpp検 定 の 方 が 検 出 力 の 点 でADF検 定 よ り も 良 い と い う 実 験 結 果 を 得 て い る 。 そ の た め , 彼 ら の 結 果 を 考 慮 し て , pp 検 定 の 分 析 結 果 に 基 づ い て 次 の 共 和 分 の 分 析 に 進 む こ と に し よ う 。 し た が っ て , 以下の分析では,G
h cn" R hR
2の4
変 数 は す べ て1
(
1
)
で あ る と 仮 定 し て 分657 析する。 わが国における政府支出と政府収入の因果関係 表2 共和分検定, 1956-1999年度 共和分回帰 ADF検定 被説明変数y 説明変数 x Rl Gl 255878(2) G1 Rl -2 56722(2) Rl G2 1..01190 (2) G2 Rl 1 19014(2) R2 Gl -3 52218(10) ** Gl R2 3..18154(7)* R2 G2 2..95173 (7) G2 R2 -301013(7)* 注:共和分検定では, Engel and Granger (1987)の検 定方法を適用する。 Ytを被説明変数,,Xtを説明変数 として,共和分回帰は次式で示される。 Yt= a+bxt+zt ここ、で,aとbはOLS推定量であり ,Zは残差であ る。Engle-Granger(EG)検定は,次のADF回帰, ムZt
=
ρZt-l+~8jムZt-J+Ut , におけるρについてADF検定を行う。括弧内の数 値は,検定において選択されたラグ数hである。ラ グ数kはAICに基づいて選択される。 料は5%水準で有意*は10%水準で有意であるこ とを示す。 -273-そこで,表2は,政府支出と政府収入に関する Engeland Granger (1987)の 共和分検定の結果を示している。ここでも, ADF検定における最大のラグ数は 10とする。検定結果より,まず政府支出と政府収入の組み合わせ, GlとR
zに ついては,R
zから G1への回帰と GlからR
zへの回帰を用いた検定の両方で, 10%の有意水準で共和分関係がないという帰無仮説を棄却できた。したがって, これより,政府支出 Glと政府収入品との聞には共和分関係があると判断す る。 一方, G1とRlの組み合わせについては, Rlから G1への回帰と GlからRl-274- 香川大学経済論叢 658 への回帰を用いた検定の両方で, 10%の有意水準で共和分関係がないという帰 無仮説を棄却できないことがわかる。同様の結果は,
G
2
とRlの組み合わせにつ いても当てはまる。さらに,G
2
と品の組み合わせでは,G2
をR
2で説明する回 帰式に基づく検定においては,共和分関係がないという帰無仮説が10%の有意 水準で棄却される。ところが,もとの回帰式の変数G
2とR
2の入れ替えを行う と,今度は同じ帰無仮説が棄却されないという結果が得られた。この点につい て,例えば,Owoye (
1
9
9
5
)
は,収入から支出への回帰と支出から収入への回帰 の両方において,共和分関係がないという帰無仮説がともに棄却されたならば, 支出と収入との間で共和分関係があるとみなして因果関係の分析を進めてい る。そのため,ここ‘では, G2とR
2との間で共和分関係が存在するかもしれない が,Owoye (
1
9
9
5
)
に従って,GzとR
2の組み合わせを次の誤差修正モデ/レによ る因果関係の分析から除外することにした。2
誤差修正モデルによる長期的な因果関係の分析 表2
における共和分検定の結果より,政府支出G
1と 政 府 収 入 品 と の 聞 で は,共和分の関係がないという帰無仮説を棄却できた。そこで以下では,G
1とR
2の組み合わせについて,誤差修正モデルによる因果関係の分析をVamvou-k
a
s
(
1
9
9
7
)
に従って行うことにする。 表 3は, (3)式と(4)式で表示される誤差修正モデルの推定結果を示している。 モデノレの推定では,共和分回帰(G
1から品への回帰とR
2からG
l
への回帰) より,残差z
とω
が計算されている。そして,ムR
2とムG
l
の回帰式で,共和分 回帰の残差zとωの1期前のラグっき変数である誤差修正項Zト IとWt-lが 用いられている。ここで,回帰係数の t値について ,t
分布を用いることができ ることを仮定して分析する。回帰式の説明変数ムR
2とムG
1のラグの長さは,5
期である。誤差修正項ZトlとWトIは長期の動学を表しており,長期均衡(共和 分関係)からの講離である。また,説明変数ムR
2とムG
l
のラグっき変数の回帰 (3 ) 表 3は,(3)式と(4)式における2変数χとyをそれぞれG,と R2に置き換えた誤差修正 モデルの推定結果を示している。659 変 数 定数項 ムG1,t-l ム
G
1ト2 ムGlt-3 ムG1,t-. ムG1t-5 ムR2t-1 ムR2t-2 ムR2t-3 ムR
2ト4 ムR
2.t-5 わが国における政府支出と政府収入の因果関係 表 3 誤差修正モデルの推定 ムR2t 0.21029 (2.62011) 0.01661(0.06625)o
07259 (0 25765)o
74393 ( -2 43707)o
06052 (0 18643) -1 13056 ( -3 40082)o
47108 (2 78778)o
06657(032500) 047749(2 10696)o
01751 (0 07528)o
74269 (3 09173) ムG1,to
20023 (2 77155)o
19679 (0 87938) O. 17128 (0 69733)o
17117 (0 63286) -0 45924(ー159951)o
06248 ( -0 20709)o
19373 (-1 27595)o
19667(1“10366)o
17100(-0 84430) -0.00969 (-0..04754)o
14648(0 68118) Zt-l -0 51848(-4 12870) Wt-l 0 10172(L06505)R
2 0.36552o
07861 D W 1 83679 2 01076 SER 0 20789 0“18114 JB 0 80377[0 669J 2. 37757[0. 305J RESET(2) 0 05097[0 823J L78189[0 193J ARCH(l) 0 11108[0 739J 3 02979[0 082J BG(l) 0 58076[0 446J 0 00099[0 975J BG(2) 120391 [0 548J 0 27669[0 871J BG(3) 5 02491[0 170J 2 58406[0 460J 注 : 括 弧 ( )内には,t値が示されている。J
宇は自由度修正済み決定 係数,D WはDurbin-Watson統計量,SERは回婦の標準誤差である。 JBはJarque-Beraの統計量で,誤差項が正規分布であるという帰無 仮説のもとで漸近的に自由度2のカイニ乗分布に従う。 RESET(2)は 次数が2である RamseyのRESET検定における統計量で,脱落変数 に関する検定を行う。この統計量は,モデ1レの定式化が間違っていな いという帰無仮説のもとで自由度(1, 26)のF分布に従う。 BG(ρ) はβ次の自己相関についてのBreusch-GodfreyのLM検定における 統計量で,自己相関がないという帰無仮説のもとで漸近的に自由度ρ のカイニ乗分布に従う。 ARCH(l)は自己回帰条件付き分散不均一モ デルにおける検定統計量で,均一分散の帰無仮説のもとで漸近的に自 由度のlのカイニ乗分布に従う。また,それぞれの統計廷における括 弧 [J
内の数値は,p-値を表している。 275ー-276'-- 香川大学経済論叢 660 係数は,被説明変数への短期的効果を測定する短期的なパラメーターである。 これより,現在のR2と
G
,の変動(ム品とムG,)は2
つの要因で決まる。第 1は過去のムR
2とムG,であれ第2は長期均衡関係からの希離である。以下で は,短期的な効果は,Vamvoukas
(19
9
7
)
に従って,ムR
2とムG
,のラグっき変 数の回帰係数の t値で判断する。長期的な効果は,誤差修正項Zト 1と 叫 lの t 値で判断する。 まず,表3におけるムR
2の欄の回帰式では,ムG,の3期前のラグっき変数の 回帰係数が5 %の有意、水準で有意でトあり,ムG,の5期前のラグっき変数の回帰 係数が1%
の有意水準で有意であるので,G
r
a
n
g
e
r
の意味でムG
,からム品へ の短期的な因果関係がある。さらに,誤差修正項Zt-'の回帰係数は1%
の有意 水準で有意であるので,G
r
a
n
g
e
r
の意味でムG
,からムR
2への長期的な因果関 係がある。次に,表 3におけるム G,の欄の回帰式では, 5つのムR
2のラグっき 変数の回帰係数と誤差修正項 Wtー1の回帰係数は10%の有意水準で有意でな い。 t検定で判断すると,G
r
a
n
g
e
r
の意味でムR
2からムG
,への短期的な因果関 係がないと判断できるし,ム品からムG,への長期的な因果関係もないと判断で きる。 しかしここで,短期的な因果関係については,t
検定による分析がやや不正確 であることから ,F
検定でも分析を行った。そこでまず,G
r
a
n
g
e
r
の意味でムG
, からム品への短期的な因果関係があるという結果は,帰無仮説がムG,の1期 前から5
期前までのすべての回帰係数がO
であるというF
検定においても確 かめられる。このとき ,F検定統計量の値4.44066は,自由度5と2
7
のF
分 布を参照することにより,1%
の有意水準で有意である。これに対して,その 逆の因果関係については,F
検定においても確認できなかった。帰無仮説が ム品のl期前から5期前までのすべての回帰係数がOであるという F検定に おいて ,F検定統計量の値0
.
.
9
0
9
5
3
は,自由度5
と2
7
のF
分布を参照するこ とにより, 10%の有意水準で有意でないことがわかる。 また,表3では,さまざまな検定や診断検定の結果が示されている。まず, 5%の有意水準を用いて,ムR2の欄の回帰式について解釈する。脱落変数に関す661 わが国における政府支出と政府収入の因果関係 277 -る
Ramsey
のRESET(
R
e
g
r
e
s
s
i
o
n
S
p
e
c
i
f
i
c
a
t
i
o
n
E
r
r
o
r
T
e
s
t
)
統計量は,有意 でなく,脱落変数がないという適切なモデルを示している。ARCH(1)
統計量は, 誤差項分散の均一性を帰無仮説,ARCH(1)
の誤差項を対立仮説としているが,ARCH
効果がないと判断できる。次数がρ
次の自己相関のB
r
e
u
s
c
h
-
G
o
d
f
r
e
y
のLM
検定統計量BG(ρ)
については,自己相関がないという帰無仮説に対し て,対立仮説は次数ρ
の自己相関が存在することである。BG(ρ)
は,ρ=1
,2, 3に対して自己相関がないと判断できる。誤差項の正規性に関する.JB
(Ja
r
q
u
e
B
e
r
a
)
の検定では,帰無仮説は誤差項が正規分布に従うということである。.JB
検定統計量の値は,誤差項の正規性を示している。以上の検定結果で,モデル の適切性を確認できた。ただし,自由度修正済み決定係数R
Zの値は小さい。 ムG
!
の欄の回帰式についても同様に解釈できる。 3 短期における因果関係 政府支出と政府収入の組み合わせ,G
!
とRhG
zと R!については,共和分の 関係が存在しないという結果が得られた。また,G
z
とR
zの組み合わせは,Owoye (
1
9
9
5
)
に従って,誤差修正モデルによる因果関係の分析から除外され た。そこで,これらの組み合わせにおける支出と収入の2変数について,それ ぞれ1
回の階差をとり,(1)式と(
2
)
式で表示されるVAR
モ デ ル を 推 定 し てG
r
a
n
g
e
r
の因果関係を検定する。これにより,短期における政府支出と政府収 入の因果関係を調べることにする。表4
には,G
r
a
n
g
e
r
の因果関係の検定結果 が示されている。ここでは,先行研究を参考にして先見的にVAR
におけるラグ の長さを5
期に選択した場合,さらにAIC
およびSBIC
に基づいてラグの長さ を選択した場合について,それぞれF
検定統計量の値が報告されている。 表4
の結果から,ムG
!
とムR!,そしてムGzとムR!との聞でともに,G
r
a
n
g
e
r
の因果関係がないという帰無仮説が棄却されないことがわかる。一方,ムG と ムR
zについては,ムR
zからム GzへのG
r
a
n
g
e
r
の因果関係がないという帰無仮 説は棄却されないものの,ムG
からムRz
へのG
r
a
n
g
e
r
の因果関係がないとい う帰無仮説は,ラグ数が十分に小さくなければ,棄却されることになる。すな278 香川大学経済論叢 662 表4
G
r
a
n
g
e
r
の因果性検定 ムR,ームG
, ムG
,ームR, ラグ数 F統計量 F統計量 5 1 49634 1 63624 AIC, SBIC(1)o
30245 0.88794 ムR,ームG2
ムG
2
ームR, ラグ数 F統計量 F統計量 5o
94277 L82833 AIC, SBIC(l) 0..82431 0.81036 ムR2ームG
2
ムG
2
ムR2 ラグ数 F統計量 F統計量 5 2 39877* 1 46557 AIC(8) 5 14183***o
72622 SBIC(1) 1 67006o
64168 注:ムY
ームX
は,G
r
a
n
g
e
r
の意味でムX
からムY
へ
の 因 果 関 係 が な い と い う 帰 無 仮 説 を 意 味 す る 。 AIC(β)は,ラグ数ρがAICによって選択された場 合を示している。 SBIC(ρ)は,ラグ数ρがSBICに よって選択された場合を示している。 ***は1 %水 準 で 有 意 * は10%水準で有意である ことを示す。 わち,帰無仮説は,ラグ数が5であれば10%の有意水準で,さらにAICの基準 で選択されたラグ数では1%の有意水準で棄却されることになる。したがって, この場合には,G
r
a
n
g
e
r
の意味で,政府支出から政府収入への一方的な因果関 係が存在するといえる。 ところで,上記の結果から,ムG
からムR
2への因果性がみられるにもかかわ らず,ム GzからムRlへの因果性は確認されなかった。すなわち,租税等の政府 収入に公債発行による借り入れを含むことによって,支出から収入への因果性 がみられなくなるという結果が得られている。そのためここで,過去の政府支 出が租税等の政府収入に及ぽす影響は,同じく過去の政府支出が公債発行に及 ぽす影響によって相殺されているという可能性が考えられるかもしれない。し663 わが国における政府支出と政府収入の因果関係 279-たがって,このことは,過去の政府支出がまた公債発行による借り入れの決定 にも影響を及ぼすという関係を示唆しているといえよう。
v
.
む す び 本稿では,1
9
5
6
年度から1
9
9
9
年度までを分析期間として,わが国における政 府支出と政府収入の因果関係を検討した。また,本稿では特に,政府収入に公 債金収入を含めた場合と除いた場合,さらに政府支出に国債費を含めた場合と 除いた場合を考えて,それらの政府支出と政府収入の組み合わせによって支出 と収入の因果関係がどのように異なるかについても分析した。 まず,国債費を含めた政府の支出総額と公債金収入を含めた政府の収入総額 との聞では,共和分検定の結果から,共和分関係がないという帰無仮説を棄却 できなかった。さらに,国債費を除いた支出と公債金収入を含めた収入総額と の間でも,同様の結果が得られた。また,国債費を除いた支出と公債金収入を 除いた租税等収入との組み合わせは,共和分回帰における説明変数と被説明変 数を入れ替えることによって共和分検定の結果が異なることから, Owoye(
1
9
9
5
)
に従って,誤差修正モデルによる因果関係の分析から除外された。そこ で,これらの政府支出と政府収入の組み合わせについて, VARモデルを推定し てG
r
a
n
g
e
r
の因果関係の検定を行った。その結果,国債費を除いた政府支出と 公債金収入を除いた租税等収入との間でのみ,短期において,支出から収入へ の因果関係が認められた。ここで,国債費を除いた支出と公債金収入を含めた 収入総額との聞では,G
r
a
n
g
e
r
の意味で因果関係がみられないことを考慮する と,このことは,過去の政府支出が公債発行による借り入れの決定にも影響を 及ぼしているという関係を示唆しているといえよう。 一方,国債費を含めた政府支出と公債金収入を除いた租税等収入については, 共和分検定の結果から,両者が長期的な均衡関係にあると判断された。そこで, 誤差修正モデルを推定して,誤差修正項の有意性について検定を行うことによ り,それらの政府支出と政府収入との聞には,支出から収入への長期における 一方的な因果関係があるという結果が得られた。すなわち,政府支出の変化に-280- 香川大学経済論叢 664 よる長期均衡からの乗離は政府収入の変化を通じて修正されることになる。ま た,ラグっき変数の有意性について検定を行うことにより,短期においても支 出から収入への因果関係が認められた。このように,短期と長期において,政 府支出の動向は,政府収入の決定に重要な役割を果たすことになる。 そこで,上記の結果は,わが国のデータを使用した本稿の分析において,支 出一租税仮説が支持されることを示している。さらにこれは, Owoye (1995)が わが国について行った因果性の分析結果とは逆の結果である。そのため,本稿 の結果は,分析期聞を通じて,政府の一般会計における財政赤字の増大が主と して,政府収入の変化よりもむしろ政府支出の決定に起因していることを示唆 している。したがって,ここで導かれる政策的合意として,わが国における財 政赤字の抑制には政府支出の削減が有効な手段になりうると考えられる。 参 考 文 献
Anderson, W, M. S.. WalIace, and J T Warner, (1986),“Gov巴rnment Spending and Taxation: What Causes What ,?" Southern Economic Journal, Vol.52, pp.630-639 Baghestani, H, and R McNown, (1994),“Do Revenues or Expenditures Respond to
Budgetary Dis巴quilibria",Southern Ewnomic Journal, Vol.61, pp 311-322. Baffes, ,Jand A Shah, (1994), ‘'Causality and Comovement between Taxes and
Expenditures: Historical Evidence from Argentina, Brazil, and Mexico", Journal o} Development Ewnomics, Vol.44, pp..311“331
Barro, R J, (1974),“Are Govemment Bonds Net Wealth?", Journal0/Political Ewn-omy, Vol.82, pp 1095-1117
Barro, R
J
, (1978),“Comment from an Unreconstructed Ricardian", Journal o} Mone-tary Eじonomics,V 01 4, pp.. 569-581Blackley, P R, (1986),“Causality between Revenues and Expenditures and the Size of the Federal Budget
ぺ
PublたFinanaQuarter(y, Vo114, pp 139-156Bohn, H, (1991),“Budget Balance through Revenue or Spending Adjustments? Some Historical Evidence for the United States", Journal0/Monetary Economic$, Vo127,
pp. 333-359
Buchanan, l M, and R E. Wagner, (1977), Democrac'y in Deficit, New York:
Aca-demic Press
Buchanan, J M, and R. E. Wagner, (1978),“Dialogues Conceming Fiscal Religion",
665 わが国における政府支出と政府収入の因果関係
281-Choi, L, ロ(1992わ),“Ef丘fectsof Data Aggregation on the Power of T巴stsfor a Unit Root" Eωじono押mzμLωsLetters, Vol.40, pp 397-401
Choi, ,.Iand B S. Chung, (1995),“Sampling Frequency and the Power of Tests for a Unit Root: A Simulation Study", Eco刀omicsLetters, Vo149, pp. 131-136
Darrat, A F, (1998),“Tax and Spend, or Spend and Tax? An Inquiry into the Turk-ish Budgetary Process
ぺ
SouthernEωnomic ]ournal, Vol 64, pp.940-956DeJong, 0. N., Nankervis, J C, Savin, N E.., and C.H.. Whiteman, (1992),“The Power Problems of Unit Root Tests in Time Series with Autoregressive Errors", ]ournal 01
Eωnometηω , V 01.53, pp 323-343
Dickey, D A, and W. A Fuller, (1979),“Distribution of the Estimators for Autoregres -sive Time Series with a Unit Root
ぺ
]ournalof the American Statistical Association, Vol 74, pp.. 427-431Dickey, 0. A., and W A.Fuller, (1981),“Likelihood Ratio Statistics for Autoregressive Time Series with a Unit Root", Econometriω, Vol.49, pp. 1057-1072
Engle, R F., and C.W l Granger, (1987),“Co-Integration and Error Correction: Rep -resentation, Estimation, and Testing", Econometrica, Vol.55, pp. 251-276
Friedman, M., (1978),“The Limitations of Tax Limitation", Poliの Review,Summer, pp..7-14
Fuller, W A., (1996), Introduction to S品atistical刀meSeries (Second edition), New york: John Wiley & Sons, Inc
Granger, C.W. J , (1969),“Investigating Causal Relations by Economic Models and Cross-Spectral Methods, Econometrica, Vol.37, pp. 424-438
Haug, A A, (1996),“Tests for Cointegration A Monte Carlo Comparison
ぺ
lour:仰 l01Econometrics, VoL 71, pp.. 89-115.
Hondroyiannis, G, and E. Papapetrou, (1996),“An Examination of the Causal Relation -ship between Government Spending and Revenue: A Cointegration Analysis
ぺ
Public Choiα, Vol.89, pp..363-374Hoover, K. 0.., and S. M Sheffrin, (1992),“Causation, Spending, and Taxes: Sand in the Sandbox or Tax Collector for the Welfare State
ぺ
?
AmericanEconomたReview, VoL 82, pp 225-248.Johansen, S, (1988),“Statistical Analysis of Cointegrating Vectors
ぺ
]ournalof Eωー nomic あ 仰micsand Contγol, Vol 12, pp 231-254Johansen, S., (1991),“Estimation and Hypothesis Testing of Cointegration Vectors in Gaussian Vector Autoregressive Models
ヘ
Econometrica,V 01 59, pp. 1551-1580. Johansen, S., and K Juselius, (1990),“Maximum Likelihood Estimation and Inferenceon Cointegration-With Applications to the Demand for Money
へ
OxfordBulletin0
/
-282ー 香川大学経済論叢 666
Jones, l D, and D Joulfaian, (1991),“Federal Government Expenditures and R巴venues in the Early Years of the American R巴public:Evidence from 1792 to 1860", Jouγnal
0
/
Macroκonomiω, V 01.13, pp.. 133-155Li, X, (2001),“Government Revenue, Government Expenditure, and T emporal Causal -ity: Evidence from China", AρPlied Economiι,5, V 01.33, pp.. 485-497
Manage, N, and M. L. Marlow, (1986),“The Causal R巴lationbetween Federal Expendi -tur巴sand Receipts", Southern EwnomκJournal, Vol 52, pp.617-629
Meltzer, A H, and S. F Richard, (1981),“A Rational Theory of the Size of Govern -ment", Journal
0
/
Political Ewnomy, Vol.89, pp 914-927Miller, S.M., and F. S.. Russek, (1990),“Co-Integration and Error-Correction Models: The τemporal Causality between Government Taxes and Spending", Southern &onomic Journal, Vol 57, pp.221-229
Musgrave, R A, (1966),“Principles of Budget Determinations", in H Cameron and W Henderson (eds), Public Finance Selected Readings, New York: Random House Owoye, 0, (1995),“The Causal Relationship between Taxes and Expenditures in the G7
Countries: Cointegration and Error-Correction Models", AρPlied Ewnomics Let -ters, VoL 2, pp.19-22
Payne, J. E, (1998),“The Tax-Spend Debate: Time Series Evidence from State Budgets", PubliιChoice, V 01 95, pp.. 307-320
Peacock, A T, and J Wiseman, (1961), The Growth
0
/
Public Eゆ6四diture in theUnited Kingdom, Princeton, NJ: Princeton University Press
Peacock, A.T, and J Wiseman, (1979),“Approaches to th巴Analysisof Government
Expenditure Growth", Public Fznance Quarfer(y, Vol 7, pp.3-23
Phillips, P C.B, and P Perron, (1988),“Testing for a Unit Root in Time Series Regres -sion", Biometrika, VoL 75, pp.. 335-346
Ram, R, (1988),“Additional Evidence on Causality between Government Revenue and Government Expenditure", Southern E正 問omicJournal, Vo.l54, pp.763-769 Vamvoukas, G, (1997),“Budget Expenditures and Revenues: An Application of Error
Correction Modelling", Publ:μ Finance/Finances Publiques, VoL 52, pp 125-138
von Furstenberg, G.M., Green, R ,J and l H Jeong, (1986),“Tax and Spend or Spend and Tax ?", Review of Eヒonomicsand Statistiιs, VoL 58, pp. 179-188
Zhou, S, (2001),“The Power of Cointegration Tests Versus Data Frequency and Time Span", Southern Eιonomic Journal, Vo.l67, pp..906-921