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進めることができる児童の育成のために 学習計画作りと 読みシート を活用した意見交流の設定が有効であることを 実践を通して明らかにする Ⅲ 研究の見通し学習計画作りと 読みシート を活用した意見交流の設定により 学び合いながら叙述を基に想像して読み進めることができる児童を育てることができるであろう

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Academic year: 2021

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研究主題

学び合いながら、叙述を基に想像して読み進めることができる児童の育成

-学習計画作りと「読みシート」を活用した意見交流の設定を通して- 前橋市立城南小学校 池田 美代子 Ⅰ 主題設定の理由 小学校学習指導要領では、国語科の目標と して「国語を適切に表現し正確に理解する能 力を育成し、伝え合う力を高めるとともに、 思考力や想像力及び言語感覚を養い、国語に 関する関心を深め、国語を尊重する態度を育 てる」とあり、国語を正確に理解する能力の 育成の大切さが示されている。 しかし、平成 26 年度全国学力・学習状況調 査の結果によると、群馬県の国語では「登場 人物の相互関係や情景描写の効果を捉えるこ と」や「立場や根拠を明確にして質問や意見 を述べること」に課題が残った。それらの課 題を受け、県や市では国語科の努力点として 「『目指す言語能力』(指導事項)を明確に し、児童生徒の実態や学習課題を踏まえ、そ れを確実に身に付けるために最適な言語活動 (単元のゴール)に向け、児童生徒の問題解 決的な学習となる単元を構想する」ことを示 している。具体的に読むことの指導において は、「登場人物の心情などの表現方法として、 直接的な描写だけでなく、人物相互の行動や 会話、情景などを通して暗示的に表している ものがあることを捉えさせる」「登場人物の それぞれの役割、フィクションの世界が物語 られていること、語り手の視点等、物語の基 本的な特徴を理解させる」など、叙述を基に 想像して読む力の育成を求めている。 本校の第4学年の1学期の児童の文学的な 教材の単元テストの結果を見ると、選択肢の 問題の正答率は高いが、登場人物の気持ちを 問う問題や根拠を見つける問題の正答率が低 く、無記入の児童も数名見られた。また、実 際の学習の様子では、叙述から気持ちを考え ることに苦手意識をもっている児童が見られ る。さらに、「自分だったら…」「自分も…」 と想像して読んで感想を書く児童は少ない。 一方、本校の教師からは、「どうしても色 々教えてしまって時間が足らなくなる」「一 問一答になってしまう」「登場人物の気持ち について児童の想像が深まらない」などとい う声が聞かれ、文学的な教材の指導について 課題意識をもっていることがうかがえる。 そこで、本研究では、小学校中学年におけ る文学的な教材に視点を当て、児童が学び合 いながら叙述を基に想像して読み進めること ができるための指導の方法について研究を進 める。まず、単元の導入では単元を貫く言語 活動を設定し、児童が学習の見通しをもち、 読み取りの観点を意識しながら学習していけ るよう、児童と共に学習計画を作る。また、 読み取りの観点を基に児童が進んで読み進め られるように、物語の展開と登場人物の気持 ちの変化をまとめることのできるシートと登 場人物の気持ちに対して自分の想像したこと や考えたことを表すことのできるシートを用 いる。そして、それらのシートを基に友達と 意見交流して、読みを深めたり想像を広げた りしながら読み進めるようにしていく。この ような手だてで学習を進めていけば、学び合 いながら叙述を基に想像して読み進めること ができる児童が育成できると考え、本主題を 設定した。 Ⅱ 研究のねらい 学び合いながら、叙述を基に想像して読み

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進めることができる児童の育成のために、学 習計画作りと「読みシート」を活用した意見 交流の設定が有効であることを、実践を通し て明らかにする。 Ⅲ 研究の見通し 学習計画作りと「読みシート」を活用した 意見交流の設定により、学び合いながら叙述 を基に想像して読み進めることができる児童 を育てることができるであろう。 この見通しにせまるために、以下の3つの 手だてを講じる。 1 単元の導入の場面で、魅力ある言語活動 のモデルを提示し、学習計画を児童と共に 作ることで、児童が読むことの見通しや目 的意識をもち、読みの観点を意識しながら 読み進めることができるであろう。 2 「読みシート」を活用することで、児童 が叙述から登場人物の気持ちを想像した り、自分と照らし合わせて想像したりしな がら読み進めることができるであろう。 3 意見交流を目的に合わせて設定し、根拠 を示して自分の考えを述べさせたり、友達 の考えを聞かせたりすることで、児童が学 び合いながら叙述を基に想像しながら読み 進めることができるであろう。 Ⅳ 研究の内容 1 基本的な考え方 (1) 「叙述を基に想像して読み進める」児童 とは 本研究では「叙述を基に想像して読み進め る」児童の姿を「何のために読むかという目 的意識をもち、物語の描写から情景を思い浮 かべたり、登場人物の気持ちを想像したりし、 さらに、自分を取り巻く現実や経験と結びつ けながら自分と照らし合わせて、読んでいく 姿」と捉える。 (2) 学習計画作りについて 児童が自ら読み進んでいくためには、何を どのように読んでいくかという見通しをもた せることが大切である。そこで、言語活動の モデルを単元導入時に提示し、単元のゴール を見据えさせて学習計画を児童と共に作る。 言語活動のモデルを見せたり、既習事項を想 起させたりしながら、学習計画を児童と共に 作っていくことで、児童は目的意識をもち、 課題を明確にしながら、叙述を基に読み取り を進めることができるであろうと考える。ま た、既習事項を想起させて学習計画を作るこ とで、今まで学んできた読みの観点を意識し て、読んでいくであろうと考える。 (3) 「読みシート」とは 読みシートとは、児童が叙述を基に想像し て読み進めることができるように作成した2 枚のシートである。 1枚目の「人物の気持ちシート(図1)」 とは、物語の展開と登場人物の気持ちの移り 変わりの根拠となる叙述、登場人物同士の心 の距離を一枚にまとめることができるシート である。 図1「人物の気持ちシート」 特に、登場人物の気持ちの読み取りについ ては「登場人物の気持ちを読み取るにはどん な叙述に気を付けて読んだらよいか」という 視点を与え、根拠となる「登場人物の行動」 「会話」「情景描写」を意識して、読み進め させる。そして、シートには登場人物の気持 ちが分かる根拠となる叙述も書き込み、気持 小見出し 心情曲線 根 拠 心情曲線

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ちの変化を曲線で表せるようにしてある。 2枚目の「心のまどシート(図2)」とは、 自分が一番心に残った登場人物の気持ちに焦 点を当てて書くシートである。シートには、 登場人物の気持ちとその根拠となる叙述を書 く「心に残る(登場人物)の(どのような) 気持ち」欄とその気持ちについて自分の思い を書く「私・ぼくの心」欄を設けてある。シ ートを書き進めることで、児童は叙述から登 場人物の気持ちについて想像し、さらに、「自 分と照らし合わせ想像しながら読む」ことを 意識することができると考える。 図2「心のまどシート」 (4) 意見交流の設定 意見交流では、学び合いながら叙述を基に 読み進めることができるように自分の考えを 書いた「読みシート」を活用させる。また、 効果的な意見交流ができるように、目的に合 わせて形態を変えて行う(表1)。 表1 意見交流の場面・目的・形態 目的に応じて意見交流を設定することで、 教師と児童の一問一答の授業ではなく、児童 同士での学び合いが生まれる。さらに、自分 の読みの足りない部分を補ったり、自分の読 みを振り返って深めたり、友達の読みを知っ て想像を広げたりしながら、叙述を基に読み 進めることができるであろうと考える。 2 研究構想図 Ⅴ 実践の概要とまとめ 小学校第4学年の学級(29 名)において、 単元「物語の書かれ方を話し合おう」(教材 「ごんぎつね」)の実践を行った。 実践の経過と手だては以下の表2のとおり である。 場 面 目 的 形態(理由) 登 場 人 物 の 人 柄 ・ 気 持 ち の 読 み 取 り な ど をする場面 読 み の 不 十 分 な 面 を 補 っ た り 読 み を 深 め たりする ペア (読みを深める ため) 心に残った気 持ちなどを伝 える場面 読 み や 想 像 を 広げる グループ (読みを広げる ため) 根拠となる叙述 人物と自分とを照らし 合わせて想像したこと 心に残る登場人物の気持ち

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表2 実践の経過と手だて 学習活動 (手だて) 1.言語活動のモデルを見て、学習活動の見 通しをもつ。 (手だて1) 2.学習計画を作る。 (手だて1) 教 科 書 教 材 3.登場人物とその人柄を読む。 〔人物の気持ちシート〕(手だて2・3) 4.場面毎の出来事、あらすじを読み取る。 〔人物の気持ちシート〕 (手だて2) 5.登場人物の気持ちを読み取る。 〔人物の気持ちシート〕(手だて2・3) 6.登場人物の気持ちを読み取る。 〔人物の気持ちシート〕(手だて2・3) 7.心に残る登場人物の気持ちを書く。 〔心のまどシート〕 (手だて2・3) 8.心に残る登場人物の気持ちについて意見 交流する。 〔心のまどシート〕 (手だて3) 並 行 読 書 材 9.並行読書した本についてまとめる。 〔心のまどシート〕 (手だて2) 10.「新美南吉の本を紹介しよう」で心に残っ た登場人物の気持ちを紹介する。 〔心のまどシート〕 (手だて3) 11.学習のまとめをする。 1 見通し1【学習計画作り】 (1) 実践の概要 単元導入時に、教師が作成した新美南吉の 本「牛をつないだ椿の木」の「心のまどシー ト」を提示し、新美南吉の本の魅力を紹介し た。そして、「気に入った新美南吉の本で、 心に残る登場人物の気持ちについて紹介しよ う」と単元のゴールを知らせ、表3のように 児童に投げかけ、教材文「ごんぎつね」の読 み取りの時間を中心に学習の計画を作った。 児童は、既習事項が書かれた掲示物「学びの 足あと」などを見たり、教師のモデルに書か れたことを見たりしながら必要な読みの観点 をあげさせた。その後、ねらいに合うように 児童と共に、学習計画を作った(図3)。 表3 学習計画作りの場面 図3 児童の学習計画表の一部 (2) 結果と考察 学習計画を作った後、児童は「新美南吉さ んの本を読んでみよう」「新美南吉について調 べて来よう」とつぶやいて作者について自主 的に調べるなど、関心をもって学習し始めた。 これは、教師が提示した言語活動のモデルで 児童が学習のゴールの具体的な姿をもつこと ができ、また、学習計画を児童と共に作った 教師 「皆さんは最後、新美南吉さんの本の 心に残った登場人物を『心のまどシ ート』で紹介します。そのために『ご んぎつね』で心に残った登場人物の 気持ちを紹介し合いましょう。」 児童 「うんうん、なんか楽しそう。」 教師 「それに向けてどんなことを読み取っ ていけば、まず勉強する『ごんぎつ ね』に出てくる心に残る登場人物の 気持ちについて紹介できるかな。 『白いぼうし』や、『一つの花』の 学習を思い出してあげてみよう。」 児童 「登場人物は、だれか。」 「登場人物は、どんな人か。」 「登場人物の気持ち。」 「気持ちを読むには、会話とか行動を 読み取るんだよね。」 「出来事が分からないといけない。」 教師 「では、今までの意見をまとめて計画 を立ててみると… 」 (ねらいを確認し合いながらまとめる)

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ことで、自分の学びとして学習が見通せたた めと考える。教材文「ごんぎつね」の読み取 りの学習では、学習が始まる前に「今日は、 登場人物の気持ちを読み取っていくんだ」な ど、めあてを自ら確認して学習する様子が見 られた。また児童の中には、「明日は登場人物 の気持ちを読み取るから、家で音読する時に ごんの気持ちを考えてみよう」や「気持ちを 読み取るには、人物の会話と行動に気を付け て読むといいんだよね」などと、友達と確認 し合って音読する様子が見られた。実際のア ンケートでは、29 人中 29 人が「学習計画を 自分たちと先生とで作った方が良い」と答え た。理由は表4の通りである。 表4 学習計画アンケートの結果 これらのことから、児童は学習計画を作る ことで、毎時間、そして単元全体でどのよう な学習をするかの見通しがもてることの良さ を感じていることが分かった。 さらに、児童の感想(表5)から、単元の ゴールで登場人物の気持ちを読み取るには、 どのような読み取りをしたらよいかという読 みの観点も意識して学習に臨んでいたことが、 分かった。 表5 児童の感想 また、並行読書教材の「心のまどシート」 でも、児童は教科書教材での読みの観点を生 かして自力で登場人物の気持ちを読み取った り、自分の経験に照らし合わせたりしながら 自分の思いを書いていた(図4)。 以上のことから、単元の導入の場面で言語 活動のモデルを提示し、それを基に学習計画 を児童と共に作ったことは、児童が読むこと の見通しや目的意識をもって、読みの観点を 意識しながら読み進めることに有効であった と考える。 図4 並行読書の「心のまどシート」 2 見通し2【読みシートの活用】 (1) 実践の概要 教科書の教材文の読み取りの段階では、「人 物の気持ちシート」を使い、登場人物の人柄 や出来事を読み取り、登場人物同士の心の距 離を曲線に表した。児童は教材文の叙述から ごんの兵十に対する気持ち、兵十のごんに対 する気持ちが分かる文にサイドラインを引き ながら読み取り、兵十とごんの心の距離を曲 線で表した。その際、根拠となる叙述も書き 込ませ、どの叙述から気持ちを読み取って心 が近づいたか、遠ざかったかのかが分かるよ うにした。 さらに、「心のまどシート」で心に残る登 場人物の気持ちについて想像しながら読んだ ことをまとめる活動を行った。児童は、心に 残る気持ちを「(登場人物)の(どのような) 気持ち」と表し、その根拠となる叙述と、そ こから想像した登場人物の気持ちを吹き出し に書いた。そして、その気持ちと自分とを照 ・みんなで作ると、何を学習するか考えられ ていい。 ・みんながどうやって学習したいかが分かる し、どうやって読んでいけばいいか分かる。 ・何をするかがよく分かるので、どこに気を 付けて読めばよいか考えられる。 私は今まで「登場人物の気持ちを想像して読 もう」と言われても何をどう読むか分かりま せんでした。でも、ごんぎつねの学習では計画 を立てて学習して、どのように読んだらよい かが分かりました。この学習を生かして本を 読んでいきたいです。

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らし合わせながら考えたことを「私・ぼくの 心」に書いた。 最後に、単元のゴールの活動として、新美 南吉の本の中で一番気に入った本を紹介する 活動を行った。なお、教材文の学習を生かし、 心に残る登場人物の気持ちについて自分が想 像した気持ちを書いた「心のまどシート」を 用いて紹介した。 (2) 結果と考察 教材文の登場人物の気持ちの読み取りの場 面では、登場人物の気持ちが分かる「行動」 「会話」「情景」にサイドラインを引き、そ の中で特に気持ちが分かる叙述を入れて、心 情曲線に表していた(図5)。 図5「人物の気持ちシート」の心情曲線の一部 心情曲線に表しながら、登場人物の気持ち を追うことで、児童から「神様の仕業って聞 いて、ここでごんはちょっとがっかりしたと 思う」「でも、すごい落ち込みではないよ。 だって次の日もくりを届けているから」など のやりとりが聞かれ、叙述から登場人物の気 持ちを読んで想像する姿が見られた。また、 読み取り後、「人物の気持ちシート」を見て 「ごんの気持ちはちょっとずつ変わっている けど、兵十はあまり変わっていないな。最後 にやっと近づいたんだ」などと、物語全体を 捉えて感想を書く様子が見られた。 このことから、「人物の気持ちシート」を 使ったことで、叙述を基に気持ちを読み取り、 物語全体から気持ちの変化を捉えることがで きたと考える。 さらに、「心のまどシート」に心に残る登 場人物の気持ちを書く場面で児童は、「人物 の気持ちシート」や教科書のサイドラインを 見ながら気持ちが分かる叙述を抜き出し、想 像した登場人物の気持ちを書いていた。そし て、「私・ぼくの心」の欄には、登場人物の 気持ちについて想像を広げ、「自分も、弟に いたずらをしたことがあって…」や「私は長 続きしないけど、ごんは…」などと、自分の 経験に照らし合わせて想像したことを書いて いた(図6)。 図6「心のまどシート」自分を照らし合わせての感想 自分を照らし合わせて想像して書けた理由 について、児童に尋ねたところ表6のように 回答があった。 表6 児童のアンケート「想像して書けた理由」 このことから、教師の投げかけや、シート に「私・ぼくの心」の欄を設けたことで、児 童が自分に照らし合わせて想像し、経験を入 れて書くことができたと分かった。 以上のことから、「人物の気持ちシート」と 「心のまどシート」を活用したことは、叙述 を基に登場人物の気持ちを想像しながら、読 み進めるのに有効であったと考える。 ・「自分の心で考えたことを映し出してみよ う。」と先生が言っていたから。 ・「私・ぼくの心」らんだったので。 ・友達の心のまどシートを読んで。

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3 見通し3【意見交流の設定】 (1) 実践の概要 教材文の読み取りの段階では、登場人物の 人柄・性格・気持ちを読み取る場面で、「人 物の気持ちシート」を基に、ペアで意見交流 を行い、自分の読み取りの不足を補ったり、 深められるようにしたりした。また、心に残 る登場人物の気持ちを「心のまどシート」に まとめる段階でも、ペアで意見交流を設け、 自分の読み取りの不足を補ったり、より深め たりした(図7)。 図7 ペアでの意見交流 また、教材文の「心のまどシート」で自分 の心に残る登場人物の気持ちを紹介する場面 では、想像を広げて読むことができるように、 同じ人物を選んだ児童同士を単位としてグル ープで意見交流を行った(図8)。 図8 グループでの意見交流 さらに「新美南吉の本を紹介しよう」にお いても、同様にグループで意見交流を行い、 友達の読みを知って想像を広げられるように した。 (2) 結果と考察 教材文の登場人物「ごん」の性格・人柄の 読み取りのペアでの意見交流の様子は表7の 通りである。この様子から、ペアで意見交流 したことで自分の読み取りと友達の読み取り を比べて自分の読み取りの不足部分を補って いることが分かる。 表7 意見交流の様子 また、心に残った気持ちを「心のまどシー ト」にまとめる際にも、交流を重ねるうちに 気持ちを表す言葉が表8のように変わった。 表8 読み取りの変容 この変化を見てみると、表面的なものから 深いものへと変わっていることが分かる。ま た、「心のまどシート」に自分が思ったこと を書いた後の意見交流では、友達のシートを 読んで良かったところを伝えたり、分からな いところについて質問したりした。アドバイ スをし合うことで、児童は友達の意見やシー トを参考にして、自分のシートをより良くし ようと書き足す様子が見られた(図9)。 児童1 「ごんはここに『いたずらばかりして いる。』って書いてあるからいたず ら 好 き な 悪 い き つ ね だ っ た と 思 う。」 児童2 「なるほどね。ぼくも最初そう思って いたんだけど、『兵十だな。』って 書いてあって、ごんは兵十の名前を 知っている。みんなの名前も知って いると思う。ひとりぼっちでさみし くて本当はみんなと仲良くなりたい と思っていて、本当は悪いきつねで はないと思うな。」 児童1 「そうか。気になるからいたずらした いのか。確かに『兵十』って知って いるんだもんね…」 兵十の心配する気持ち → 兵十の後悔する気持ち

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図9 書き足す児童 これらのことから、ペアで意見交流を行っ たことで、自分の読み取りを振り返り、さら に深い読みへと進めたのではないかと考え る。また、心に残る人物の気持ちを紹介し合 うことをねらいとした、「心のまどシート」 を使っての意見交流では、楽しそうに、また 興味深く友達の「心のまどシート」を読むな どし、表9のように感想を書いている。 表9 児童の意見交流後の感想 ・友達と意見交流をすると、自分が気付かなか った文を友達が根拠にしていて、なるほどと 思いました。細かく読み取れました。 ・「心のまどシート」を読んで、友達の「心」 がよく分かりました。意見交流をして同じと ころが心に残ったのに、自分とは違って「そ うか。」と思いました。 ・他の人の意見を色々聞いて、「なるほど!」 「ああ!」「そういう読み方もあるんだ」な ど、思ったことが良かったです。これから読 み取り方を変えてみようと思いました。 学習後の感想からも分かるように意見交流 をしたことで、自分では気付かなかった叙述 に気付いたり、同じ叙述でも想像したことが 違うことに気付いたりし、さらに読む意欲が 沸いたようであった。 以上のことから、「読みシート」を基に目 的に応じて、形態を変えて意見交流を設定し たことは、児童同士の学び合いが生まれ、学 び合いながら、児童が叙述を基に深く読んだ り、想像を広げて読み進めたりできるように なるのに有効であったと考える。 Ⅵ 研究のまとめ 1 研究の成果 ○単元の導入で、単元のゴールのモデルを提 示し、児童と共に学習計画を作ったことは、 児童が読むことの見通しや目的意識をも ち、読みの観点を意識しながら読み進める ことにつながった。 ○「読みシート」を活用しながら読み取りを したことは、叙述から登場人物の気持ちを 想像したり、自分と照らし合わせて想像し たりしながら、読み進めることにつながっ た。 ○意見交流の場面を目的に応じて設け、根拠 を示して自分の考えを述べたり、友達の考 えを聞いたりしたことは、学び合いながら 叙述を基に想像しながら読み進めることに つながった。 さらに、文学的教材の単元テストの平均点 が 1 学期は 82 点であったが、2 学期には 96 点となった。また、登場人物の気持ちを書く 問題で無記入の児童はいなかった。これは、 3つの手だてで実践したことで、児童に叙述 を基に登場人物の気持ちを想像しながら読む 力がついたためと言える。 2 今後の課題 ○本研究は中学年の文学的教材の「読みシー ト」であったので、他の学年においても発 達段階や、ねらいに合わせたシートを系統 立てて作成していく必要がある。 <参考文献> ・文部科学省:『小学校学習指導要領解説 国語編』東洋館出版社, 2008. ・群馬県教育委員会他:『はばたく群馬の指 導プラン~実践の手引き~』, 2014. ・前橋市教育委員会:『平成 27 年度 前橋 学校教育充実指針』, 2015.

参照

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