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建築における長寿命化・省資源化に係る構造技術に関する研究

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Academic year: 2021

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論文題目:建築における長寿命化・省資源化に係る構造技術に関する研究

著 者:西 村 勝 尚 研 究 科 、 専 攻 名:環境科学研究科、環境計画学専攻 学 位 記 番 号:環課第5号 博士号授与年月日:2006年3月23日 論文の要旨 持続可能な建築の創造に関して、構造面ではリサイクル材の使用や鉄骨造における高力ボルト接合 によるリユースが一部提案されていが広範囲での実用化には至らず、建築構造技術の立場からの持続 可能な建物の創造に係わる積極的な提案や実用化は少ない。 本研究は、持続可能な建物を実現するための長寿命化・省資源化に係わる構造技術に関して考察す るとともに、長寿命化・省資源化を推進するために有効利用できる構造技術の提案を行なうものであ る。さらに、提案技術を実用化するため、実験や解析により有効性あるいは性能を明らかにすること を目的とする。 第1章 建物の長寿命化・省資源化を実現するための構造技術の課題と計画手法 建物の長寿命化・省資源化を図るための一般的な課題に関して考察し、課題は高耐久・高耐震性能、 可変可能な空間、省資源・省エネルギーであるとした。 建物の長寿命化・省資源化を図る計画に際し、建物全体の目標耐用年数を設定しライフサイクルコ ストが最小になるよう維持保全計画を収斂させる建物の長寿命化を図る耐久設計の概要フローを示 した。さらに、ライフサイクルコスト算出のための確率論に基づく限界状態設計法を利用した構造性 能評価法および構造性能提示方法を示した。 建物の長寿命化・省資源化の方策である長寿命化・再利用・再生に関して構造種別ごとに考察し、 コンクリート系は長寿命化・再生、鉄骨系は長寿命・再利用・再生、木質系は長寿命・再利用・再生 を長寿命化・省資源化の方向性とした。さらに、構造種別ごとの方向性と構造上の技術的課題の関連 について考察し、コンクリート系は耐久性能・構造性能の向上および機能性の高い架構形式、省資源・ 省力化構工法を、鉄骨系は耐久性・構造性能の向上、機能性の高い架構形式および再利用が容易な構 工法を、木質系は材料面での耐久性能の向上および構造性能の向上を重要課題とした。また、これら の重要課題と次章以降の個別課題に対する提案・検証・考察の位置付けを示した。 第2章 長寿命化・省資源を目的としたプレキャスト化構工法 コンクリートの本来の耐久性能に関して考察し、スケルトンの長寿命化を図るためには、単に材料 の観点だけではなく構工法の観点から収縮に伴うひび割れ低減を図る必要があることを指摘した。さ らに、PCa化構工法による二つの事例を検証し、耐久性能・省資源・生産性・建設環境・コストの 観点から有効性を明らかにした。 以下に示すような新たな提案を含む実用化した種々の部位別のPCa部材、架構システムとしての PCa化構工法に関して概要・特徴・メリットを考察した。 ・梁PCa部材の梁主筋を柱梁接合部内で接続する構工法(図1参照) ・下端主筋およびせん断補強筋を打込んだU字型PCa部材を用いた縦重ね継手工法(図2参照) ・壁筋を打込んだ薄肉両面PCa板(ダブルウォール)による合成壁

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図3 付着割裂強度の実験値と 提案評価法による計算値との対応 図4 提案構工法概要 下部プレート 角形鋼管柱 H形鋼梁 上水平ダイアフラム 下水平ダイアフラム 下部プレート 鉛直ダイアフラム 接続L形鋼 ウェブ取付け ガッセトプレート (b) 外柱タイプ 下部プレート 角形鋼管柱 下部プレート 接続山形鋼 H 形鋼梁 部分溶け込み溶接 水平ダイアフラム H 形鋼梁 接続山形鋼 鉛直スチフナ 鉛直スチフナ (a) 内柱タイプ H 形鋼ウェブおよび下部プレート 取付けガセットプレート 提案構工法の「梁PCa部材の梁主筋を柱梁接合部 内での接続する構工法」の柱梁接合部構造性能実験を 実施し、従来構工法と同等以上の構造性能を有するこ とを確認し、現場打設により一体化された鉄筋コンク リート造の設計法が適用可能であることを示した。 さらに、提案構工法の「下端主筋およびせん断補強 筋を打込んだU字型PCa部材を用いた縦重ね継手 工法」の構造性能実験を実施し、実用化可能な性能を 有することを確認した。また、付着割裂強度は付着力 とコンクリートの圧縮ストラットによる力の釣合い から求まる継手筋の付着力伝達に必要な鉛直方向拘束力に依存すると仮定し、単独の鉄筋に関する既 往の付着割裂強度式に縦重ね継手の有無による鉛直方向拘束力の比を乗じた縦重ね継手の付着割裂 強度評価法を提案し、提案評価法の妥当性を示した(図3参照)。 図1 梁PCa部材の梁主筋を柱梁接合部内で接続する構工法 図2 U字型PCa部材を用いた縦重ね継手構工法概要 0 2 4 6 8 10 0 2 4 6 8 10 計算値(MPa) 実験 値 (M P a) 純曲げ:付着割裂破壊 曲げせん断:曲げ破壊他 曲げせん断:付着割裂破壊 本実験:曲げ破壊 本実験:付着割裂破壊 柱梁接合部 機械式継手 継手筋 下端主筋 上端主筋 上端二段筋 下端二段筋 プレキャスト部分 第3章 鉄骨造における再利用容易性向上および構造性能向上を目的とした構造技術 鉄骨造建物を対象とした再利用するための既存技術の問題点を考察し、最も重要な課題として解 体・組立が容易な接合方法を掲げ、耐震性能を向上させ、解体・組立てが容易で再利用可能な外ダイ アフラムを用いた簡易な溶接による柱・梁架構システムを提案した。

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提案架構システムは、性能が溶接技能に左右されない簡易な溶接である部分溶け込み溶接により柱 とダイアフラムとを接合した柱材にH形鋼梁端部の下フランジに鉛直プレートを簡易な溶接により 取付けた梁を挿入し、上ダイアフラムとH形鋼梁上フランジは直接、下ダイアフラムと下部プレート とは接続L形鋼を介して高力ボルト接合し、柱梁架構を構築する柱・梁架構システムである(図4参 照)。 Qb θsd θsu Bsu Bsd x1 x2 θmd θmu bM1/H’ bM1/H’ Bmu Bmd この提案架構システムを実用化するために構造実験を行い、性能を確認するとともに実験結果を基 に剛性評価法、曲げモーメントとせん断力に対するトラスモデル(図5参照)による梁鉛直ハンチ部 の耐力評価法、下部プレート接合部耐力評価、側柱タイプの鉛直ダイアフラムの耐力評価、変形性能 を明らかにした(図6参照)。 1,375 1,375 2,780 ~ 2,830 M3 6 :右ネジ 粘弾性体 :120×120×4 φ60.5×5.5 カプラー M3 6 :左ネジ 150 130 190 150 130 190 150 190 150 図7 鉛直支持部材詳細図 (a)鋼管タイプ (b)粘弾性体付与鋼管タイプ 第4章 建物のコンバージョンを可能にする構造技術 コンバージョンを実現するために必要な構造技術として、耐震診断・補強技術、鉛直荷重に対する 補強技術、振動・遮音性能向上技術を提示し、事務所建物から住宅へコンバージョンに際し、床の振 動性能および遮音性能の居住性能を向上させる必要があることを示した。さらに、既往の実測結果よ り伝達インピーダンスレベルと衝撃音レベルとの相関関係に関して考察し、遮音性能に関する既往の 実測結果より伝達インピーダンスレベルと音圧レベル(床衝撃音レベル)とは31.5、63Hz 帯域で相 関性が認められ、伝達インピーダンスレベルにより床衝撃音 レベルを推定できる可能性を示した。 床の鉛直振動性能向上技術として上下階の床を鉛直剛性の 高い鉛直支持部材あるいは減衰性能を有する鉛直支持部材で 接続する技術(図7参照)、遮音性能向上技術として既存スラ ブの上に鉄骨大引を配し既存スラブと大引との接続部に粘弾 性体を取付けた二重床形式のシステムを提案した。図8に鉄 骨大引取り付け詳細を示す。 これらの提案技術に関して、床の鉛直振動性能向上技術に関する実建物によるインパルスハンマー 打撃試験によるインピーダンスレベル実測、および事務所建物から住宅へのコンバージョンモデルを (a)せん断力に対する トラスモデル (b)曲げモーメントに対するトラスモデル 図5 せん断力と曲げモーメントに対するトラスモデル 図6 下部プレートトラス応力度の 計算値と実験値の比較 0 50 100 150 200 250 300 350 0 50 100 150 200 250 300 350 トラ ス応力度計算値 (N/mm2) 相当応力度実験値 (N /m m 2) I-1 I-2 I-3 I-4 I-5 E-1 E-2 E-3 E-4 E-5 平均=1.0046 分散=0.0046 標準偏差=0.0678 変動係数=0.0675 鉄骨大引 床コンクリートスラブ 床コンクリートスラブ 鉄骨大引 粘弾性材 粘弾性材 コンクリートスラブ 取り付けプレート 鉄骨大引 取り付け金物 鉄骨大引 取り付けプレート アンカーボルト アンカーボルト 取付けボルト 取付けボルト (a)粘弾性体の圧縮・引張変形により 減衰効果を発揮させる場合 (b)粘弾性体のせん断変形により 減衰効果を発揮させる場合 図8 鉄骨大引取り付け詳細

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用いた床の鉛直振動性能あるいは遮音性能向上技術に関する解析的検証を行ない、以下の提案技術に 関する知見を得た。 ・鉛直振動性能向上技術に関する実建物による実測結果と解析結果がよく対応していることより、解 析的によりインピーダンスレベルを推定することが可能である。 ・提案する鉛直振動性能向上技術は、最大振幅あるいは加速度を低減する効果が顕著であり、鉛直振 動性能の向上に有効である(図9参照)。また、粘弾性体を取付けた鉛直支持部材を敷設した方が 歩行階と連結階へ及ぼす影響は小さい(図10参照)。 ・提案の遮音性能向上技術の大引あるいは大引+鉛直支持部材を敷設することにより伝達インピーダ ンスレベルが増加し遮音性能の向上が期待できることが推察される。 図9 鉛直支持部材の有無による 1/3 オクターブバンド加速度の比較 V-50 V-90 V-10 0.01 0.10 1.00 10.00 1 10 100 1/3オクターブバンド中心周波数(Hz) 1/3オ ク タ ー フ ゙ハ ゙ン ト ゙加速度( cm /s ec 現状 鉛直支持部材 粘弾性体付き鉛直支持部材 図10 歩行階直下階の鉛直支持部材の粘弾性体の 有無による1/3 オクターブバンド加速度の比較 0.01 0.10 1.00 10.00 1 10 100 1/3オクターブバンド中心周波数(Hz) 1/3オ ク タ ー ブハ ゙ン ド加速度( cm /s ec 粘弾性体無 粘弾性体有 V-50 V-90 V-10 第5章 長寿命化建物への構造計画からのアプローチ ―― 空間の可変性・対応性と高い耐震性能を図る構造計画 ―― 可変性・対応性を有する空間、および高い耐震性能の保有に関しての構造計画の観点からアプロー チし、以下に示すような提案を行った。 ・長寿命化に対応するフレキシビリティに優れた構造システムの考え方は、「建築計画と構造計画の ユニットを一致させる」ことと、スケルトンへの「入力地震動の軽減による構造要素の付加の軽減」 である。 ・ワイドスパンSI住宅の構造計画に関して詳細に考察し、住戸規模を変化させることが可能な集合 住宅のスケルトン計画の提案を行った。 ・耐震性能の向上およびフレキシブルな空間の創造を目的とした建物の中に独立した二つのストラ クチャーを構成し両者の変形差を利用し大きな制震効果を期待する分離ストラクチャーによる連 結制振(震)システムを提案し、概略地震応答解析により有効性・実現性の検証を行った。 ・建物を階層にユニット化し、各ユニットごとに時代あるいは社会のニーズに対応して建替える考え によるメガストラクチャーによる積層制振(震)構造を提案し、地震応答解析によりこの構造シス テムの有効性および実現性を検証した。

参照

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