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債 務 の 変 動 による 後 発 債 務 として 基 金 発 足 直 後 から 5 年 ごとの 厚 生 年 金 保 険 本 体 の 改 正 による 死 亡 率 の 改 正 が 課 題 とされていたが これは 厚 生 年 金 基 金 持 ちとされ 利 差 益 など で 埋 め 合 わせるべきものとさ

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1 厚生年金基金の免除保険料率に関する一考察 三井住友信託銀行 ペンション・リサーチ・センター研究理事 杉田 健 【要旨】 厚生年金基金の免除保険料は将来部分の均衡のみによって計算されており、予定利率の 引下げ等の後発債務の償却を反映していないが、本稿では後発債務の償却分を免除保険料 率に反映させる新たな方式(以下「新免除保険料方式」と略称する)を検討する。新免除 保険料方式のメリットとしてはキャッシュフローが安定することがあげられる。後発債務 の償却を直ちに始めることなく事後的に給付現価負担金を交付する現行の方式では、キャ ッシュフローがマイナスとなる可能性が増え、厚生年金基金の運営が難しくなるかもしれ ないからである。一方で厚生年金基金の運用責任は従来よりも増し、国の利回りに長期間 劣後すると従来の方式よりも事業主の追加負担が増大する。新免除保険料方式は免除保険 料の増加により、厚生年金保険本体から厚生年金基金へのキャッシュフローが増えるよう に思えるかもしれないが、シミュレーションしてみると長期間の現金ベースで新免除保険 料方式の方がキャッシュフローは少ない。現価で考えると多いことも少ないこともある。 なお、新免除保険料方式で給付現価負担金を全廃してしまうと、免除保険料率計算に用い る予定利率が長期間にわたり国の運用実績を上回った場合に年金資産が枯渇する可能性が あり、新免除保険料方式においても給付現価負担金の併用が必要である。 【キーワード】 年金、厚生年金基金、免除保険料率、給付現価負担金 1.本論文の主張と構成 厚生年金基金の免除保険料は将来部分の均衡のみによって計算されており、予定利率 の引下げ等の後発債務の償却を反映していないが、本稿では後発債務の永久償却のために 後発債務の利息分を免除保険料率に反映させる方式を検討する。以下本稿では、この方式 を「新免除保険料方式」と称する。厚生年金基金には死亡率の改定および国の予定利率引 き下げ等、様々な後発債務が発生するが、この償却の先送りは代行部分以外の企業年金の 一般の財政運営では行われていない。なぜなら企業年金の財政では将来部分の均衡のため の標準掛金(通常掛金とも言う)のみならず特別掛金によって後発債務(利差損などの事 後的に発生した債務)も償却することを義務付けられているからである。厚生年金基金の

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2 債務の変動による後発債務として、基金発足直後から5 年ごとの厚生年金保険本体の改正 による死亡率の改正が課題とされていたが、これは厚生年金基金持ちとされ、利差益など で埋め合わせるべきものとされてきた。その後予定利率の5.5%から 3.2%への引き下げによ り大きな後発債務(概略債務が3 割増しとなった)が発生したが、この償却には従来の後 発債務同様手が付けられず、事後的に給付現価負担金の交付によって処理されることとな った。しかしこの方式では、厚生年金基金のキャッシュフローがマイナスとなる程度が増 大し厚生年金基金の運営が厳しくなる懸念がある。なぜなら掛金よりも給付が多い状況が 早く到来し、次のパラグラフで説明するように、資産運用が悪いときのリカバリーが困難 になるのみならず、キャッシュアウトフローが多いため掛金を有価証券で運用する割合を 落とさざるを得ない。極端な場合、給付現価負担金が出たらそれを原資に左から右へと年 金を支払うような「支払い代行」の状況になる。 厚生年金基金のキャッシュフローがマイナスとなる程度の増大により、厚生年金基金の 運営が厳しくなる可能性を、Kocken[2011]を参考に 100 億円の年金資産を 10 年間複利運 用する3 通りのケース(図 1-1 から図 1-3)の比較により示す。3 つのケースの相違は元本 増減の程度である。3 つのケースのいずれにおいても、二つのシナリオにおける年金資産の 推移を比較する。シナリオ1 は当初 5 年間は利回り 5%だったが次の 5 年間は利回りが 0% の場合である。シナリオ2 は当初 5 年間は利回りが 0%だったが、次の 5 年間は利回りが 5% の場合である。 図1-1 は期中の元本の増減を 0 としたケースである。シナリオ 1 のほうがシナリオ 2 より も当初利回りが良いので年金資産は大きい値で推移するが、最終年度末には同一の金額128 億円となる。 図1-2 は、元本が毎年 3 億円ずつ減少するケースである。キャッシュフローがマイナス 3 億円ということは、掛金よりも給付が3 億円多い、若干成熟が進んだ基金がイメージされる。 この場合10 年後に 2 つのシナリオで金額は一致しない。これは元本が減少するので最初に 高い利回りで運用できたシナリオ1 の方が 95 億円と、シナリオ 2 の 91 億円よりも 4 億円金 額が多くなるからである。 図1-3 は、元本が毎年 6 億円ずつ減少するケースである。キャッシュフローがマイナス 6 億円ということは、掛金よりも給付が6 億円多い年金基金に対応し、成熟が進んだ基金がイ メージされる。この場合10 年後に 2 つのシナリオによる金額の乖離は 63 億円と 55 億円の 差額である8 億円となり、図 1-2 の場合の 4 億円より大きくなる。この理由は、元本が減少 するので最初に高い利回りで運用できたシナリオ1 のほうがシナリオ 2 よりも金額が一層 多くなるからである。 現在、代行部分の財政運営において、代行部分の後発債務の償却を先送りしているが、 厚生年金基金は図1-3 のようになっていないか、すなわち一旦利回りが落ち込んだ場合のリ カバリーが難しい状況になっていないか懸念されるのである。

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3 0 20 40 60 80 100 120 140 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 年 金 資 産 ( 億 円 ) 年度 図1-1 年金資産の推移(元本増減なし) シナリオ1 シナリオ2 0 20 40 60 80 100 120 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 年 金 資 産 ( 億 円 ) 年度 図1-2 年金資産の推移(元本増減年△3億円) シナリオ1 シナリオ2 0 20 40 60 80 100 120 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 年 金 資 産 ( 億 円 ) 年度 図1-3 年金資産の推移(元本増減年△6億円) シナリオ1 シナリオ2

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4 償却の先送りによって発生する給付現価負担金の将来の総額は、後述するように新免除 保険料方式により免除保険料に加算された後発債務償却のための掛金(後発債務の利息分) 総額よりも大きい。すなわち、免除保険料率に後発債務の償却を含めないことにより、結 果として厚生年金保険本体の厚生年金基金へのキャッシュフローは当初は少ないものの長 期間で集計すると多くなっているのである。 本稿の構成は以下のとおりである。まず第2節では厚生年金基金代行部分の財政運営を 概観し、第3節では決定論的なシミュレーションを実施して新免除保険料方式の特徴を考 察し、第4節では確率論的なシミュレーションを実施して新免除保険料方式の特徴を考察 し、第5節で以上の考察をまとめる。 厚生年金基金については、「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保 険法等の一部を改正する法律」により一定の基準を満たした厚生年金基金を除いて制度廃 止の方向であるが、本稿は後発債務償却の先送りについて考察するという点で、理論的な 意味を有すると考える。なお、本稿に記載した考えは、著者の個人的見解であり、必ずし も著者の所属する会社の見解とは一致しない可能性がある。 2.厚生年金基金代行部分の財政運営 この節では厚生年金基金代行部分の財政運営および、それに果たす免除保険料および給 付現価負担金の役割を解説する。まず厚生年金基金の制度の概要を免除保険料も含めて解 説し、その次に代行部分の債務評価の変遷を述べ、最後に給付現価負担金の解説をする。 厚生年金基金の実務にたずさわっている方には周知のことなので、この節は飛ばしてもか まわない。 2.1 厚生年金基金の概要 厚生年金基金とは、厚生年金保険法に規定される企業年金の一形態であり、厚生年金保 険の給付(おもに年金)の一部を代行してさらに企業独自の上乗せ給付を加算して給付する 制度である(図2参照)。

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5 図2 厚生年金基金と他の年金制度 厚生年金基金の給付のうち、厚生年金保険の給付を代行する部分を「代行給付」と呼ぶ。 また、母体企業が厚生年金基金を設立した後は、厚生年金保険の保険料を一部免除され同 額以上の額を厚生年金基金に拠出する。この免除された保険料のことを「免除保険料」と よぶ。厚生年金基金にしてみれば免除保険料相当額が代行給付の原資として母体企業から 拠出されるわけであるので、免除保険料は収入であり、代行給付は支出である(図3 参照)。 (注) 1.厚生年金基金、確定給付企業年金および私学共済年金の加入者は、確定拠出年金(企業型)にも加入できる。 2.国民年金基金の加入員は、確定拠出年金(個人型)にも加入できる。 3.適格退職年金については、平成23年度末までに他の企業年金等に移行済。 4.第2号被保険者等とは、被用者年金被保険者のことを言う(第2号被保険者のほか、65歳以上で老齢または 退職を支給事由とする年金給付の受給権を有するものを含む。) 5.数値は注釈のない限り平成24年3月末 【出典:H24.10.24厚生労働省「厚生年金基金制度をめぐる状況について」第13回社会保障審議会年金部会資料1-1】 個人年金       3,893万人 1,904万人    978万人 国民年金(基礎年金) 6,775万人 国民 年金 基金 52 万人 確定拠 出年金 (個人 型) 13万人 厚生年金保険 3,451万人 厚生年 金 基金 437万 人 確定給付 企業年金 801 万人 確定拠 出年金 (企業 型421 万人 共済 年金 442 万人 (H23. 3.末) 第3号被保険者 第1号被保険者 第2号被保険者等 自営業者等 民間被用者 公務員 第2号被保険者 の被扶養配偶者

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6 図3 代行部分の財政運営 2.2 代行部分の債務評価の変遷 厚生年金基金は厚生年金本体の給付の一部を代行しているのであるから、常に代行の債 務の評価額を把握する必要がある。この評価額を最低責任準備金といい、基金が解散(又 は代行返上)する場合に国に移換すべき積立金になっている。この変遷は以下のとおりで ある(厚生労働省[2012])。 (1)制度創設~平成11 年 9 月(「将来法」による計算) 最低責任準備金の計算方法は、創設から平成 11 年 9 月までは、将来法(「給付現価方式」) で行われていた。(この場合に用いる予定利率は、当時の厚年本体の長期の予定運用利回り である5.5%を用いていた。) (2)平成11 年 9 月~平成 17 年 3 月(「過去法」を加味した計算(暫定措置)) 平成 11 年改正による免除保険料の凍結により、最低責任準備金の計算方法について、 暫定的な措置として変更が行われた。すなわち、将来法で計算された平成11 年 9 月時点で の最低責任準備金をベースに毎年度の代行部分の収支差を加減し、これに厚年本体の実績 運用利回りを乗じていくという過去法(いわゆる「コロガシ方式」)を加味した計算方法に 変更された。この結果、厚生年金保険本体の実績運用利回りは5.5%に達していないため、 最低責任準備金は5.5%の現価以下の数値となった。 (3)平成17 年 4 月~現在(暫定措置の恒久化と厚年本体との財政中立化) 平成16 年改正で免除保険料の凍結が解除されたことに伴い、暫定措置であった最低責任 準備金の計算方法が恒久化された。同時に、厚年本体との財政中立化の観点から、「給付現 価負担金」制度が設けられた。給付現価負担金については以下に述べる。 2.3 給付現価負担金 給付現価負担金制度の趣旨は以下のとおりである。代行部分の給付債務は、厚年本体に

代行部分の資産

(以下「代行資産」

と呼ぶ)

免除保険料

代行給付

運用益

将来分

の給付

に対応

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7 おける死亡率や長期の予定運用利回りの見直しにより変化するが、給付債務が増大した場 合、将来期間分については免除保険料率に反映される一方、過去期間分については反映さ れない。このため、過去期間代行給付現価が、基金が保有すべき最低責任準備金の一定割 合を超えた場合には、一定のルールに基づき厚年本体から給付現価負担金を交付する。 給付現価負担金は過去期間代行給付現価と最低責任準備金という負債の差額を調整する ものであり、最低責任準備金と保有資産の差額(=積立不足)の方は、基金において掛金 の引上げ等により対応する必要がある。最低責任準備金が過去期間代行給付現価の1/2 を下回った場合、下回った額(A)の1/5を厚生年金保険本体が交付する。②最低責任準備 金が過去期間代行給付現価の1/4を下回った場合は、上記(A)の全額を厚生年金保険本体 が交付する(図4 参照)。 図4 給付現価負担金 具体的には死亡率の他に、厚年本体の予定運用利回りが 5.5%から 3.2%さらに 4.1%と変 遷しており、過去期間部分については5.5%の現価よりも少ない額であり、不足している状 態にある(図5 参照)。給付現価負担金が交付されない場合は、資産が枯渇する。なぜなら、 将来部分は免除保険料率が予定利率3.2%ベースで計算されているので収支バランスするが、 過去部分すなわち基金設立時から計算時点まで営々と積み立てられてきた資産については ほとんどが5.5%ベースの低い保険料率に基づく水準以下であり、低い予定利率に基づく本 来の高い水準に達していないからである。過去分の積立不足があるにもかかわらず給付現 価負担金が交付されないと、例え資産が予定利率である3.2%または 4.1%で運用できたとし   ① 最低責任準備金が過去期間代行給付現価の1/4以上で1/2以下       ⇒ 過去期間代行給付現価の1/2と最低責任準備金の差額のうち1/5が         給付現価負担金として、基金に交付される。 過去期間代行給付 給付現価負担金 現価の1/2との差額 過去期間代行給付現価 最低責任準備金   ② 最低責任準備金が過去期間代行給付現価の1/4を下回った場合      ⇒ 過去期間代行給付現価の1/2と最低責任準備金との差額を全額一括して        給付現価負担金として、基金に交付される。 給付現価負担金 過去期間代行給付現価 最低責任準備金 1/2 1/2 1/4

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8 ても、いずれ年金資産も枯渇するのである。そこで上記の給付現価負担金による調整が行 われるのである。 図5 最低責任準備金と過去期間代行給付現価 2.4 免除保険料による調整 事業年度末の最低責任準備金が過去期間代行給付現価の1.5 倍を上回った場合、その事業 年度末日において代行保険料率の算定を行う。その際に、代行給付費の予想額の現価から、 この上回っている額を差し引いて代行保険料率を算定し、この代行保険料率に基づいて免 除保険料率を決定する。この場合の免除保険料率の下限は2.4%ではなくゼロである。 3.決定論的シミレーション 厚生年金基金代行部分の財政の推移を簡単なモデルで解説した後に、代替策を提案し、 シミュレーションを使用して比較する。この節では運用利率に、確率的要素を含まないこ ととする。その意味で「決定論的シミュレーション」である。運用利率に確率的要素を含 む考察は次節で行う。 3.1 給付現価負担金の必要性 国の予定利率は5.5%から 3.2%に下がった後は 4.1%に上昇しているが、経過措置により 免除保険料率計算は3.2%ベースであり、以下では単純化して、予定利率は 3.2%として議論 を進める。代行給付が毎年20、資産が 100、最低責任準備金 100 であるとすると、以下のよう に免除保険料は16.85 となる。 20 −100 × 0.032 1.03212 = 16.85 シミュレーションを実施すると均衡していることがわかる(図6)。実際には、厚生年金 基金は事前積立に必要な額(過去期間代行給付現価)を保持していない。これをモデル化 して例えば、過去期間代行給付現価100 に対して資産 70、最低責任準備金 70 の状態である

かつての最低責任

準備金(予定利率5.

5%の現価)

予定利率3.2%の

過去期間代行給付

現価

予定利率4.1%の

過去期間代行給付

現価

未償却

厚生年金保険の運

用利回りで付利

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9 とする。本来は100 と 70 の差を償却すべきであるが、それを放棄すると国も基金も予定利率 3.2%で運用できたとしても 39 年目に最低責任準備金も資産も 0 を割り込む(図7)。 実務 には給付現価負担金制度があり、最低責任準備金が過去期間代行給付現価の半分を割り込 んだ場合に、割り込んだ部分の5 分の 1 が給付現価負担金として交付される。これを実施 すると、過去期間代行給付現価の半分をやや下回る水準まで純資産額と最低責任準備金が 減少していき、均衡する(図8-1、なお本論文末尾付表1左側に各年度の数値を示した)。 代行資産及び最低責任準備金のグラフはぴったりくっついている。 図6 過去期間代行給付分だけ最低責任準備金があった場合 0 50 100 10 20 30 40 50 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価

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10 図7 最低責任準備金が過去期間代行給付現価の 7 割であれば、免除保険料率算定の予定 利率で運用できたとしても、給付現価負担金がなければ資産は枯渇する。 図8-1 給付現価負担金で何とか資産規模を維持する。 0.00 50.00 100.00 10 20 30 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価

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11 3.2 新免除保険料方式 ここで提示する代替案は、債務の増加を永久償却する、すなわち債務から発生する利息だ けを償却することである。こうすることにより、代行部分の資産の落ち込みは抑制され、 給付現価負担金は発生しない(図 8-2、なお本論文末尾付表1右側に各年度の数値を示した)。 以下、従来の免除保険料に代行債務に係る後発債務の利息相当を加えたものを「新免除保 険料」と称する。 現在の場合、定常状態にあり現行の免除保険料と給付が一定であるので、 以下のとおりとなる。 新免除保険料=単年度給付額―前年度末最低責任準備金×予定利率/(1+予定利率)1/2 =20 – 70×0.032/1.0321/2 =17.795 であり、従来の免除保険料率16.85 よりも 0.945 高くなる。この 0.945 は後発債務 30 を永 久償却した場合の掛金である。 図8-2 新免除保険料の場合 さらに、新免除保険料と従来の免除保険料の差は100 年間で 96 となるが、これは現行制度 における100 年間の給付現価負担金の額 148.24 よりも少ないので厚生年金保険本体からの キャッシュフローも少なく済ませることができる。キャッシュフローの差が生じる要因を 概念的に表したのが図9である。新免除保険料のもとでは、後発債務から発生する利息、 この場合は過去期間代行給付現価と最低責任準備金の差額の利息を償却するために償却対 象の債務額は一定である。ところが、現行の方式は、当初は後発債務から発生する利息を 償却しないために、利息分だけ債務が膨らんでいく。そして、最低責任準備金が過去期間

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12 代行給付現価の 1/2 の水準になって初めて給付現価負担金の交付で後発債務の増加が止ま るのである。あとは、後発債務の増加を抑制すべく給付現価負担金が交付されるのだが、 これは償却の先送りによって増大した後発債務に対して利息分を償却することと同等にな る。この結果長期的にみると新免除保険料で運営する方が、現行の方式よりも厚生年金保 険本体からのキャッシュフローが少なくて済むのである。 図9 現行方式と新免除保険料方式の償却対象の違い なお、厚生年金保険本体からのキャッシュフローであるが、実額ベースでは新免除保険 料方式の方が少ないが、現価計算すると必ずしもそうとはならない(表1)。特に3.2%の現 価の場合は同じになっても良いはずであるが給付現価負担金の現価の方が少ない。これは、 給付現価負担金による方法の場合は、給付を賄うために最低責任準備金の減少も充ててい るからと考えられる。いわば元本を削って給付に充当しているのである。 表1 給付現価負担金と免除保険料の改定の比較 3.3 様々な利率前提での新免除保険料の効果の検証 国も基金も常に3.2%で運用できるとは限らないので、仮に国も基金も 2%の利回りが続 くとしたのが図10-1、10-2 である。国の利回りが予定利率 3.2%よりも少ないために、新免 除保険料を採用した場合でも最低責任準備金が減少する。国の利回りが2%でずっと推移し た場合には予定利率が3.2%から変更されるはずであるが、何かの理由で変更されないと、 債務額 本稿の提 言する償 現行制度の 却対象 償却対象 給付現価負担金によって最低責任準備金の減少が止まる 時間 過 去 期 間 代 行 給 付 現 価 最 低 責 任 準 備 金 後 発 債 務 後発債務からの利息分、債務が増大 給付現価負担金 新免除保険料と現行免除保険料の差 実額 148.24 94.500 現価(2%) 49.07 41.13 現価(3.2%) 27.88 28.71 現価(5.5%) 11.08 17.56 100年間の集計

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13 このようなことになる。念のために給付現価負担金も併用するということも考えられる(図 10-3)。この場合でも現行方式よりは厚生年金保険本体からのキャッシュフローは実額ベ ースでは軽くなる(表2 参照)。 図10-1 国も基金も 2%の利回り(現行の給付現価負担金方式) 図10-2 国も基金も 2%の利回り(新免除保険料方式) 0.00 50.00 100.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価 0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価

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14 図10-3 国も基金も 2%の利回り(新免除保険料方式でさらに給付現価負担金制度も併用) 表2 給付現価負担金と免除保険料の改定の比較 次に国も基金も4%で運用できて予定利率 3.2%を上回った場合を図 11-1,11-2に示 す。後発債務30 から発生する利息は年間 30×3.2%=0.96 であるのに対して、国や基金の 運用が予定利率3.2%を上回る額は 70×(4% - 3.2%)=0.56(<0.96)であるから、現行方式では 図11-1 に掲げるように資産は減少していく。後発債務の償却を免除保険料率に反映させれ ば0.56 ずつ、図 11-2 のように毎年最低責任準備金と資産は増加していく。最低責任準備金 が過去期間代行給付現価の1.5 倍になると免除保険料率が削減されるので、最低責任準備金 及び年金資産の伸びは過去期間代行給付現価の1.5 倍で頭打ちとなる。新免除保険料方式の 場合に、最低責任準備金が過去期間代行給付現価の1.5 倍になるのを待たず、過去期間代行 給付現価を上まわれば、すぐに免除保険料率の削減を開始するという考え方もあろう。そ うすると図11-3 のように最低責任準備金は過去期間代行給付現価とほとんど同じ水準で推 移する。 0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価 図10-1のケース 図10-2のケース 図10-3のケース 給付現価負担金 新免除保険料と現 行免除保険料との 差 新免除保険料と現 行免除保険料との 差、および給付現価 実額 204.11 185.223 191.994 現価(2%) 73.06 70.05 73.73 現価(3.2%) 44.04 45.26 47.63 現価(5.5%) 19.84 24.70 25.69 100年間の集計

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15 図11-1 国も基金も 4%の利回り(現行の給付現価負担金方式) 図11-2 国も基金も 4%の利回り(新免除保険料方式) 0.00 50.00 100.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価 0.00 50.00 100.00 150.00 200.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価

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16 図 11-3 国も基金も 4%の利回りの場合(新免除保険料方式、かつ最低責任準備金が過去 期間代行給付現価を上回った場合に、上回った分を翌々事業年度の免除保険料から削減す る) 利回りがもっと高い場合は図11-1 のような落ち込みは現行制度でも発生しない。 例えば、利回りが 5%とすると、後発債務 30 から発生する利息は年間 30×3.2%=0.96 で あ る の に 対 し て 、 国 や 基 金 の 運 用 が 予 定 利 率 3.2% を 上 回 る 額 は 70 × (5% - 3.2%)=1.26(>0.96)であるから、現行方式でも図 12-1 に掲げるように資産は増加して過去期 間代行給付現価の1.5 倍水準で頭打ちとなる。 図12-1 国も基金も 5%の利回り(現行の給付現価負担金方式) 0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価 0.00 50.00 100.00 150.00 200.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価

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17 1.5 倍水準で頭打ちとなるのは、この水準で免除保険料率の削減が発生するからである。 グラフが波打っているのは、免除保険料率の削減が基準となる時点からタイミングが遅れ ることによって振動が発生するからである。後発債務の償却を免除保険料率に反映させれ ば、図12-2 のように毎年最低責任準備金と資産は増加していく。最低責任準備金が過去期 間代行給付現価の1.5 倍になると免除保険料率が削減されるので、最低責任準備金及び年金 資産の伸びは過去期間代行給付現価の1.5 倍で頭打ちとなる。最低責任準備金が過去期間代 行給付現価の1.5 倍になるのを待たず、過去期間代行給付現価を上回れば、すぐに免除保険 料率の削減を開始すると図12-3 のようになり、最低責任準備金は過去期間代行給付現価と ほとんど同じ水準で推移することになる。 図12-2 国も基金の 5%の利回り(新免除保険料方式) 図12-3 国も基金も 5%の利回り(新免除保険料方式、最低責任準備金が過去期間代行給 付現価を上回れば、すぐに免除保険料率の削減を開始する場合) 0.00 50.00 100.00 150.00 200.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価 0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価

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18 次に、国と基金の間で利回りの格差がある場合を考える。国は予定通り3.2%で運用でき るが、基金が0.5%少ない 2.7%だったとする。この場合、利差損(予定運用利率 3.2%と実 績運用利率2.7%の差により生じる損失)を償却しなければ、給付現価負担金があっても(図 13-1)、新免除保険料に改定しても(図 13-2)、年金資産が枯渇する。新免除保険料がない 場合64 年度で年金資産が0となり、新免除保険料方式では、71 年度で年金資産が0となる。 図12 までは代行資産と最低責任準備金は同額であったのでグラフ上最低責任準備金は代行 資産の陰に隠れていたが、図13-1、図 13-2 からは差が明示されている。 図 13-1 国の運用利回り3.2%、基金の運用利回り2.7%(現行の給付現価負担金方 式) 図13-2 国の運用利回り3.2%、基金の運用利回り2.7%(新免除保険料方式) 0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00 10 20 30 40 50 60 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価 0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00 10 20 30 40 50 60 70 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価

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19 実際には資産が負債よりも少ない場合は、厚生年金基金の財政運営基準により遅くとも5 年に1 度の財政再計算では償却開始をする必要があるので、ここでは簡単のため例えば資 産が負債より少ない場合、特例掛金で5 分の 1 償却すると仮定すると、純資産額は、最低 責任準備金水準近くを維持できる(図14-1)。償却の開始が不足額を認識してから 2 年後な ので、タイミングのずれにより最低責任準備金よりも若干代行資産の方が少ない(図14-1 では、最低責任準備金40.48 に対して代行資産 39.37、図 14-2 では、最低責任準備金 70 に 対して代行資産68.04 となっている)。国の負担については国の利回りのみに関係するので 図8-1、8-2 と変わらない。すなわち図 14-1 のケースでは給付現価負担金の 100 年間の合 計は148.24 であり、図 14-2 のケースにおける新免除保険料と現行免除保険料の差額の 100 年間の合計は94.50 である。特例掛金をみると給付現価負担金のみ(図 14-1、100 年間の 特例掛合計23.19)のほうが、新免除保険料があった場合(図 14-2、100 年間の特例掛金合 計37.05)よりも少ない。これは恒常的に国の利回りが基金の利回りを上回っている場合、 資産規模が大きい方が不足金額が膨らむからである。 図 14-1 国の運用利回り 3.2%、基金の運用利回り 2.7%(現行の給付現価負担金方式)不足 金は特例掛金で償却

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20 図14-2 国の運用利回り 3.2%、基金の運用利回り 2.7%(新免除保険料方式) 不足金は特例掛金で償却 逆に今度は国の運用利回りが 3.2%で基金の運用利回り 3.7%よりも低い場合を考える。 この場合は、利差益が発生するので新たに発生する後発債務はない。給付現価負担金及び 新免除保険料は、あくまでも過去期間代行給付現価と最低責任準備金の関係によってのみ 実施されるため、基金の利回りに関係なく給付現価負担金及び新免除保険料が行われる。 すなわち、図8-1、図 8-2 と同様、図 15-1 のケースでは給付現価負担金の 100 年間の総額 は148.24、図 15-2 のケースにおける新免除保険料と現行免除保険料の 100 年間にわたる差 額の合計は94.50 である。

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21 図15-1 国の運用利回り 3.2%、基金の運用利回り 3.7%((現行の給付現価負担金方式) 図15-2 国の運用利回り 3.2%、基金の運用利回り 3.7%(新免除保険料あり) 結論としては、新免除保険料を併用するようにすると、長期的な国の負担は減るが、基金 の利回りが恒常的に国の利回りを下回る場合は、母体企業が拠出すべき特例掛金額は増え る。

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22 4. 確率的シミュレーション 運用利回りは実際には一定でなくて変動するので、確率的シミュレーションを行う。こ のために厚生年金基金の利回りと国の利回りのモデルを作成する必要がある。 国の利回りについては、過去は財投運用・財投債があったが、今後はそのウエイトは少 なくなると考えられるので、市場運用部分のヒストリーのみを用いる。平成24 年 8 月厚生 労働省が公表した「平成23 年度年金積立金運用報告書」により、以下のとおりとなってい る。これは運用手数料控除前の修正総合収益率である。 表3 厚生年金本体市場運用修正総合収益率推移 平均は1.84%、標準偏差は 8.28%である。 次に厚生年金基金の利回りを企業年金連合会の資産運用実態調査から集計したものは、以 下のとおりである。将来返上基金が分離してある年度は、将来返上以外の基金の平均を掲 載した。 表4 厚生年金基金修正総合収益率 平成・年度 修正総合利回り 13 -2.48% 14 -8.46% 15 12.48% 16 4.60% 17 14.37% 18 4.75% 19 -6.41% 20 -10.03% 21 9.55% 22 -0.57% 23 2.47% 平成・年度 修正総合利回り 13 -4.16% 14 -12.46% 15 17.61% 16 5.10% 17 21.08% 18 4.62% 19 -12.03% 20 -19.84% 21 15.48% 22 -1.00% 23 1.33%

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23 平均は1.43%、標準偏差は 13.16%である。 表3 と表 4 を散布図にすると図 16 のようであり、強い相関がある。 図16 厚生年金基金と厚生年金保険の利回りの相関 回帰分析をすると、 厚生年金基金の利回り=厚生年金保険本体の利回り×1.57898 - 0.0148 が成り立つ。 国の利回りが正規分布に従うとして、正規乱数を発生させモンテカルロシミュレーション をする。基金の利回りは上の式により算出し、報酬も考慮する。 モンテカルロシミュレーションなので数多くのシミュレーションを実施するが、例えばそ の一つは図17-1、図 17-2、図 17-3 のようである: -25.00% -20.00% -15.00% -10.00% -5.00% 0.00% 5.00% 10.00% 15.00% 20.00% 25.00% -15.00% -10.00% -5.00% 0.00% 5.00% 10.00% 15.00% 20.00% 厚生年金基金

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24 図17-1 現行給付現価負担金制度における一例 図17-2 新免除保険料方式 0 20 40 60 80 100 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価 0 20 40 60 80 100 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価

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25 図17-3 新免除保険料方式と給付現価負担金の併用 このような確率的シミュレーションを1000 通り実施して集計すると表 5 のとおりとなる。 表5 確率的シミュレーションの集計(1000 ケースの平均値) これからは、以下のことが言える。 (1)過去期間代行給付現価と最低責任準備金の差額の償却を後発債務として、免除保険 料額に後発債務の償却分(後発債務額に予定利率を乗じて得た額)を加算した新免除保険 料額を基金に交付することによって、厚生年金保険本体からのキャッシュフローを軽減で きる。ただし、この軽減は実額ベースであり、現価ベースだと必ずしも軽減にならない。 また、平均は表のとおりであるが、個々のケースを見てみると現行の方式の方が新免除保 険料と給付現価負担金の併用よりも厚生年金保険本体の負担が軽いケースもある(上記の 例では1000 ケース中 244 ケース)。これは、新免除保険料率方式のほうが当初の最低責任 0 20 40 60 80 100 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 代行資産 最低責任準備金 過去期間代行給付現価 現行 新免除保険料方式 新免除保険料方式+給付現価負担金 給付現価負担金 新免除保険料と現 行免除保険料との 差 新免除保険料と現 行免除保険料との 差、および給付現価 負担金 実額 213 199 202 現価(2%) 78 75 81 現価(3..2%) 48 48 53 現価(5.5%) 23 26 30 厚生年金基金の特例掛金 33 29 43 厚生年金 保険本体 からの キャッシュ フロー

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26 準備金の水準が高いので、利差損(予定利率3.2%と実際の運用利回り 1.8%との差)が相対 的に大きくなるからと考えられる。 (2)新免除保険料と給付現価負担金を併用することで資産規模は拡大するが、基金の利 回りが国の利回りを下回ったことによる不足額は大きくなり、掛金負担の上昇につながる。 なお、モンテカルロシミュレーションの安定性であるが、上記と独立に1000 ケース実施し た結果は以下のとおりであり、大幅な差は見られない。この場合の、現行の方式の方が新 免除保険料と給付現価負担金の併用よりも厚生年金保険本体の負担が軽いケースの数は、 1000 ケース中 236 ケースであった。 表6 確率的シミュレーションの集計(別の 1000 ケース) 新免除保険料方式でも給付現価負担金が発生した主因は、国の利回りの平均値を 1.84%と おいてシミュレーションを実施しており、予定利率の3.2%との乖離が大きいからである。 平均値を3.2%と置き換えてシミュレーション 1000 ケースを 2 回実施すると以下のとおり となる。 表7 確率的シミュレーションの集計(国の利回りの平均 3.2%) 現行の方式の方が新免除保険料と給付現価負担金の併用よりも厚生年金保険本体の負担が 現行 新免除保険料方式 新免除保険料方式+給付現価負担金 給付現価負担金 新免除保険料と現 行免除保険料との 差 新免除保険料と現 行免除保険料との 差、および給付現価 負担金 実額 210 196 200 現価(2%) 77 73 79 現価(3..2%) 47 47 52 現価(5.5%) 22 25 29 厚生年金基金の特例掛金 32 29 43 厚生年金 保険本体 からの キャッシュ フロー 現行 新免除保険料方式 新免除保険料方式+給付現価負担金 給付現価負担金 新免除保険料と現 行免除保険料との 差 新免除保険料と現 行免除保険料との 差、および給付現価 負担金 実額 141 110 104 現価(2%) 50 45 46 現価(3..2%) 30 31 32 現価(5.5%) 14 18 19 厚生年金基金の特例掛金 13 16 18 厚生年金 保険本体 からの キャッシュ フロー

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27 軽いケースの数は、1000 ケース中 33 ケースであった。 表8 確率的シミュレーションの集計(国の利回りの平均 3.2%、別の 1000 ケース) 現行の方式の方が新免除保険料と給付現価負担金の併用よりも厚生年金保険本体の負担が 軽いケースの数は、1000 ケース中 37 ケースであった。 6.結論 本稿では、免除保険料率の算定に債務増加の利息分も反映させる手法を提案し、厚生年 金基金代行部分の定常状態のモデルによる理論的考察およびシミュレーションで検証した。 この結果以下が示された。 (1)現行の給付現価負担金方式では一定期間、負債額の減少と同時に資産額の減少を招 く可能性がある。 (2)過去期間代行給付現価と最低責任準備金の差額の償却を後発債務として、免除保険 料額に後発債務の償却分(後発債務額に予定利率を乗じて得た額)を加算した新免除保険 料額を基金に交付することによって、国の負担は増えない。 (3)ただし、資産規模の拡大に伴い、基金の利回りが国の利回りを下回ったことによる 不足額は大きくなり、掛金負担の上昇につながる。 なお、今回は債務増加の永久償却分を加算する新免除保険料のみを研究対象としたが、 これ以上の額を交付するという選択肢もあり研究対象となろう。例えば、後発債務を20 年 で償却するという選択肢もあろう。ただし、新免除保険料以上のものをもらうと、金利上 昇期では厚生年金基金から国に返還する額が大きくなるか免除保険料の削減が大きくなる であろう。なぜなら、後発債務の償却を20 年とした場合は後発債務がプラスでもマイナス でも20 年にしないと辻褄が合わないからである。例えば国の予定利率が7%になった場合 にはそのようなことが発生するであろう。したがって本稿では免除保険料率の変動を抑制 する観点から後発債務の償却を永久償却(すなわち後発債務から発生する利息だけを償却 する)としたのである。 現行 新免除保険料方式 新免除保険料方式+給付現価負担金 給付現価負担金 新免除保険料と現 行免除保険料との 差 新免除保険料と現 行免除保険料との 差、および給付現価 負担金 実額 143 113 106 現価(2%) 50 46 46 現価(3..2%) 30 31 32 現価(5.5%) 14 19 20 厚生年金基金の特例掛金 14 16 19 厚生年金 保険本体 からの キャッシュ フロー

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28 [文献]

厚生労働省[2012]「厚生年金基金等の現状について」第1 回 厚生年金基金等の資産運用・ 財政運営に関する有識者会議 配付資料2 2012 年 4 月 13 日

Kocken,Theo[2011]”Why the Design of Maturing Defined Benefit Plans Needs Rethinking” Rotman International Journal of Pension Management Volume 4 Issue 1 Spring

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29 付表1 現行の給付現価負担金方式の場合(左表)と新免除保険料方式(右表)のシミュレーション((基金の利回り3.2%、厚年本体の利回り3.2%) 利率: 3.20% 3.20% 3.20% 3.20% 年度 免除保険 代行給付給付現価負担金 代行資産最低責任準備金 過去期間代行給付 現価 資産/最 低責任準 備金 年度 旧免除保 険料 新免除保険 料と旧免除 保険料の差 代行給 付 代行資産最低責任準備金 過去期間 代行給付 現価 資産/最 低責任準 備金 70.00 70.00 100.00 1.00 70.00 70.00 100.00 1.00 1 16.85 20 0.00 69.04 69.04 100.00 1.00 1 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 2 16.85 20 0.00 68.05 68.05 100.00 1.00 2 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 3 16.85 20 0.00 67.03 67.03 100.00 1.00 3 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 4 16.85 20 0.00 65.97 65.97 100.00 1.00 4 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 5 16.85 20 0.00 64.88 64.88 100.00 1.00 5 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 6 16.85 20 0.00 63.76 63.76 100.00 1.00 6 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 7 16.85 20 0.00 62.60 62.60 100.00 1.00 7 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 8 16.85 20 0.00 61.40 61.40 100.00 1.00 8 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 9 16.85 20 0.00 60.17 60.17 100.00 1.00 9 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 10 16.85 20 0.00 58.89 58.89 100.00 1.00 10 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 11 16.85 20 0.00 57.58 57.58 100.00 1.00 11 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 12 16.85 20 0.00 56.22 56.22 100.00 1.00 12 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 13 16.85 20 0.00 54.82 54.82 100.00 1.00 13 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 14 16.85 20 0.00 53.37 53.37 100.00 1.00 14 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 15 16.85 20 0.00 51.88 51.88 100.00 1.00 15 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 16 16.85 20 0.00 50.34 50.34 100.00 1.00 16 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 17 16.85 20 0.00 48.75 48.75 100.00 1.00 17 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 18 16.85 20 0.25 47.36 47.36 100.00 1.00 18 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 19 16.85 20 0.53 46.20 46.20 100.00 1.00 19 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 20 16.85 20 0.76 45.24 45.24 100.00 1.00 20 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 21 16.85 20 0.95 44.44 44.44 100.00 1.00 21 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 22 16.85 20 1.11 43.78 43.78 100.00 1.00 22 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 23 16.85 20 1.24 43.22 43.22 100.00 1.00 23 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 24 16.85 20 1.36 42.76 42.76 100.00 1.00 24 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 25 16.85 20 1.45 42.38 42.38 100.00 1.00 25 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 26 16.85 20 1.52 42.06 42.06 100.00 1.00 26 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 27 16.85 20 1.59 41.79 41.79 100.00 1.00 27 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 28 16.85 20 1.64 41.57 41.57 100.00 1.00 28 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 29 16.85 20 1.69 41.39 41.39 100.00 1.00 29 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 30 16.85 20 1.72 41.23 41.23 100.00 1.00 30 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 31 16.85 20 1.75 41.11 41.11 100.00 1.00 31 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 32 16.85 20 1.78 41.00 41.00 100.00 1.00 32 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 33 16.85 20 1.80 40.91 40.91 100.00 1.00 33 16.85 0.945 20 70.00 70.00 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100.00 1.00 82 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 82 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 83 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 83 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 84 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 84 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 85 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 85 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 86 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 86 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 87 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 87 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 88 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 88 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 89 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 89 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 90 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 90 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 91 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 91 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 92 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 92 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 93 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 93 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 94 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 94 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 95 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 95 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 96 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 96 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 97 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 97 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 98 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 98 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 99 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 99 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 100 16.85 20 1.90 40.48 40.48 100.00 1.00 100 16.85 0.945 20 70.00 70.00 100.00 1.00 total 148.24 94.500

参照

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解約することができるものとします。 6

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