平成25年度PBLユニット8運動・感覚器MEQ試験問題(症例)本試 眼科症例 65歳男性。右眼視力障害を主訴に外来を受診した。「今朝から急に右眼が見えなくなった。左眼はこ れまで通り良く見える。」と述べた。 問1. この患者の右眼の眼底検査で黄斑部に出血がみられた場合にはどの様な疾患が考えられるか。 2つ挙げなさい。 黄斑部に出血が見られるので網膜系の疾患が、急に片方だけの目が見えなくなったので血管性の疾患が疑われる。 ■網膜動脈閉塞症 網膜血管の動脈硬化性変化、心疾患、内頚動脈狭窄由来の塞栓子、膠原病による全身性の血管炎などが誘因とな る。痛みが伴わない急激な視力低下(中心動脈閉塞)、あるいは視野欠損(分子動脈閉塞)が生じる。閉塞した 網膜動脈の支配領域に相当した動脈の狭細化、網膜の乳白色混濁などが認められる。中心動脈の閉塞では黄斑部 の乳白色変化に対し、中心窩のみ赤みがかって桜実紅斑が認められる。 検査は視力検査、視野検査、眼底検査、内頚動脈エコーなど。治療はなるべく早期の眼圧下降、血管拡張などを 行う。 ■網膜中心静脈閉塞症 網膜静脈が閉塞により末梢側に破綻性出血を起こす病態である。動静脈交差部で閉塞したものを網膜静脈分枝閉 塞症、篩状板付近で閉塞したものを網膜中心静脈閉塞という。 黄斑に出血が及んだり、黄斑浮腫を伴う場合、視力低下、歪視がある。特徴的な眼底所見は閉塞部位より周辺側 の網膜内層を中心にした出血である。黄斑浮腫の評価には光干渉断層計(OCT)が有用である。 治療は黄斑浮腫に対しステロイドのテノン嚢下、硝子体注射、抗VEGF役の硝子体注射、硝子体手術など。毛細血 管の閉塞部位が広範囲に存在する場合は新生血管発生予防のための網膜光凝固を行う。 問2.この患者の眼底検査で右眼の視神経乳頭の境界が不鮮明な場合にはどの様な疾患が考えられる か。1つ挙げなさい 視神経乳頭の境界が不明瞭ということは、視神経乳頭の陥凹があるということなので緑内障が疑われる。 緑内障は視神経乳頭部での視神経線維の障害が原因で視野異常、視力低下をきたす疾患である。隅角検査にて開 放隅角と閉塞隅角にわけられ、眼圧上昇・頭痛・吐き気・眼痛・瞳孔散大などをきたすのは閉塞隅角による緑内 障である。昔は眼圧の上昇がありこれらの症状があらわれるものを緑内障と考えていたが、現在では緑内障の定 義は視神経乳頭の陥凹、異常である。 緑内障を起こすような他の眼疾患・要因がないものを原発性、あるものを続発性と呼ぶ。疫学的には原発性で、 眼圧が正常なもの(正常眼圧緑内障)が最も多い。 この患者は緑内障となる他の眼疾患(問1のもの)があるため、続発緑内障である。 問2. この患者では右眼黄斑部が乳白色に混濁し、中心窩が赤色の斑状に見えた。急いで行うべき治 療法を3つ挙げなさい。 網膜中心動脈閉塞症で2時間以上が経過すると黄斑部の乳白色変化に対し、中心窩のみ赤みがかって桜実紅斑が 認められる。動物実験によると、4時間以上の網膜虚血では、視細胞の不可逆的損傷が起こる。そのためすぐに 血流回復のため眼圧下降、血管拡張などの治療を行う必要がある。
■眼圧下降目的 眼球マッサージ、前房穿刺、眼圧下降薬(ピロカルビンなど)の静注や内服。 ■血管拡張目的 血管拡張薬の内服、血栓溶解薬の点滴など。 耳鼻咽喉科症例:75歳、男性 13日前から右の難聴が高度増悪し、回転性のめまいと軽度の頭痛を認め、外来受診。耳痛・耳漏はみ られない。外リンパ瘻を疑うエピソードはない。小児期から右耳漏を繰り返しており、難聴を自覚し ていた。 画像がないので、問題文と選択肢から想像する。かなりこじつけなので注意。 眩暈をきたす疾患には ■回転性めまい(前庭神経や三半規管、内耳の異常) 静止しているのに自分があたかも実際に回転しているように錯覚する状態のことを指す。遊園地のコー ヒーカップでお手軽に体験できる。 ・中耳炎から続発する内耳炎 ・メニエール病 ・眩暈を伴う突発性難聴 ・外リンパ瘻 ・前庭神経炎 ・良性発作性頭位眩暈症 ■浮動性、動揺性めまい(脳神経、全身、循環系の異常) ふらつきをおこす。脳虚血や精神的ストレスなど。 ・聴神経腫瘍 ・椎骨脳底動脈循環不全 ・頸性めまい などがある。 設問から推測すると、この患者にある二つの疾患とは慢性中耳炎(もしくは真珠腫性中耳炎)と聴神経 腫瘍、あるいは慢性中耳炎(もしくは真珠腫性中耳炎)と老人性難聴ではないかと疑われる。 頭痛をきたす(中枢神経症状がでる)、聴力が低下する(蝸牛症状)疾患はメニエール病や外リンパ瘻 だが、外リンパ瘻は問題文で否定されているしメニエール病は激しい眩暈が長く続くのでそれを訴えな いのはおかしい。またのちの問題で鼓膜や半規管や中頭蓋窩の所見をとる意味が分からないので二つと も少々考えにくい。 以前から難聴があるので突発性難聴は考えにくい。 前庭神経炎は後迷路に病態を持つ疾患で、突発的に数時間続く強い回転性めまい感が1回だけ出現する。 こんなん出たら間違いなく問診で挙がるはずなので、前庭神経炎も考えにくい。
眩暈の強さを論点に話を進めているが良性発作性頭位眩暈症はどうかというと、この疾患だと(ほかの 疾患でもいえるが)鼓膜所見をわざわざ問題にする意味が分からない。鼓膜所見が無ければ十分候補に 挙がるが、とりあえずパス。 問1:初診時の鼓膜写真を別紙図1に示す。所見を記述せよ。 とりあえず各中耳炎の所見を貼っとく。 ■急性中耳炎 ■慢性中耳炎 ■滲出性中耳炎 ■真珠腫性中耳炎
■好酸球性中耳炎
■伝音性難聴 音の伝わる経路に問題があるため、骨導の閾値は下がっていないが聴力レベルが低下している。 ■感音性難聴 音を感知する器官や神経に問題があるため、骨導の閾値の低下に応じて聴力レベルが低下している。 ■混合性難聴 経路・感知器の両方に問題があるので骨導の閾値の低下と、それを上回る聴力レベルの低下が見られる。 問3・4:CT所見を別紙図3に示す。「外側半規管」と支持された部位の所見と、それがどんな症状 に関係するか。「中頭蓋窩」と支持された部位の病変が進行するとどんな合併症が起こるか。 外側半規管は頭を左右に回転するときの回転覚に関係する。そのため回転性めまいに関係する。 聴神経腫瘍の症状は感音性難聴、耳鳴、耳閉塞感などの聴覚症状と浮動性めまい、不安定感などの前庭 症状がある。腫瘍が増大すると髄液の流れを阻害し、頭蓋内圧亢進症(頭痛や吐気、意識障害など)を きたす。さらに進行すると顔面神経麻痺をきたす。 真珠腫性中耳炎は進行すると真珠腫が進展をし、様々な合併症をきたす。進展の程度で顔面神経麻痺、 めまいが起きる。外側半規管に進展して壊した場合は瘻孔症状を示すことがある。また頭蓋内に進展す ると髄膜炎が起こることもある。 問5・6:この患者の診断を述べよ。2つある。 正直画像がないとわからん。 問7:この患者は入院させ、外科的処置・薬物治療を行った。具体的な治療法を述べよ。 真珠腫なら手術による真珠腫摘出と壊れた耳小骨の再建とを行う鼓室形成術を施行する。
形成外科症例※平成18(2006)年度MEQ本試とほぼ同じです。 40歳男性。オートバイ運転中の乗用車との交通事故により受傷。受傷後約2時間で佐賀大学医学部救急 部に搬送された。目立った外傷は四肢の擦過傷のみで、後頭部に圧痛と自発痛あり。血圧・体温・脈 拍正常。呼吸数15回/分で軽度の息苦しさを自覚。意識清明、逆行性健忘なし。 感覚:肩から上腕部は痛覚・触覚7/10、前腕V顆・体幹から両下肢は痛覚0/10、触覚はわずかに足 部で1/10わかる程度。 筋力:徒手筋力テスト三角筋4level、上腕二頭筋2level、腕橈骨筋以下は0level 深部腱反射:上腕二頭筋(±)、腕橈骨筋(-)、上腕三頭筋(-)、下肢の反射はすべて(-)、 病的反射なし、肛門反射(-) 問1Frankel分類は何にあたるか。 この患者は損傷高位以下の筋力完全麻痺(腕橈骨筋以下が0level)だが触覚がわずかに足部で1/10ある ため、分類はBとなる。 a. Frankel A b. Frankel B c. Frankel C d. Frankel D e. Frabkel E 問2腕橈骨筋を支配する主要な頸神経根はどれか。 腕橈骨筋を支配する脊髄神経はC5~C8があり、特に主要なのはC6。 a. C3 b. C4 c. C5 d. C6 e. C7 問4中指の間隔を支配する主要な頸神経根はどれか 中指の感覚は正中神経(C6~T1)により支配されている。特に主要なのはC7。 a. C3 b. C4 c. C5
d. C6 e. C7 問5MRIT2強調像での高信号は何を表すか。 頚椎損傷が起きると脳脊髄液がその部位に貯留することがある。T2強調画像ではその脳脊髄液が高信号 となり白く写る(出血はT2では高信号とならない)。 問6ステロイド大量投与の合併症で長期的に見て生命予後と最も関係するのはどれか。 a. 消化管出血 b. 血糖上昇 c. 皮膚障害 d. 副腎抑制 e. 易感染性 一説によると、消化管出血や消化管穿孔が最も重篤で、死亡者もでるらしい。というわけでa。 問7脊髄損傷後の合併症で長期的に見て生命予後と最も関係するのはどれか。 一番面倒なのって褥瘡じゃないの?生命予後に関与するものなら呼吸器感染かな。