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喉頭摘出術を受けた患者の退院後の生活における問題と対処

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Academic year: 2021

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Ⅰ.序 論

頭頸部には,咀嚼,嚥下,構音,感覚器,顔貌といっ た日常生活を送るうえで欠かせないさまざまな機能が存 在する.そのため,この部位に発生したがん治療に起因 する形態・機能の変化は,患者の quality of life(QOL) に大きく影響することが予測される.なかでも,進行し た喉頭がん,下咽頭がんなどの治療として行われる喉頭 全摘術および下咽頭喉頭頸部食道摘出術では,甲状軟骨, 輪状軟骨,披裂軟骨,声帯などから構成される喉頭が一 塊として摘出され,呼吸経路の確保のために永久気管孔 が造設される1).そのため術後は,声を失う(失声)の みならず,永久気管孔が頸部に開口することによって, ボディイメージが変化し,嗅覚,味覚,嚥下などにも障 害が生じる2)3) 喉頭摘出術後の生活に関する先行研究を概観すると, ■ 原 著

喉頭摘出術を受けた患者の退院後の

生活における問題と対処

渡 邉 直 美

**1)

,鎌 倉 やよい

**2)

,深 田 順 子

**1) **1)愛知県立大学看護学部 **2)日本赤十字豊田看護大学 要 旨 【目的】喉頭全摘術および下咽頭喉頭頸部食道切除術に共通する喉頭の摘出によって生 じる形態・機能の変化から生活上の問題を導き出し,失声以外の生活上の問題を確定す ること,それらの問題の術後経過年数による問題の程度,術後経過年数による変化およ び個別に工夫された対処法を明らかにする. 【方法】喉頭摘出者の患者会に所属する喉頭摘出者 1,602 名に質問紙調査を実施した. 799名から返送され(回収率 49.9%),統計解析,内容分析を行った. 【結果】生活上の問題は,第Ⅰ因子[永久気管孔・呼吸]:②重いものが持てない,⑧ 入浴・シャワー時に気管孔に水が入りやすい,⑪気管孔から異物が入りやすい,⑫気道 が乾燥しやすい,⑬気管孔から出血しやすい,⑭痰が頻繁に出やすい,⑮気管孔周囲の 皮膚がただれやすい,第Ⅱ因子[食事・排泄]:③排泄時にいきみにくい,④熱い食べ物 をフーフーと息を吹いて冷ませない,⑤麺類や汁物をすすれない,⑥げっぷやおならが よく出る,⑦固形物が喉に詰まりやすい,⑩匂いが分かりにくい,第Ⅲ因子[運動]:① 全力で走ることが難しい,⑨水泳など運動に制限が生じる,の 3 因子 15 項目が確定され た.③④⑤⑧⑭は,術後経過年数により問題の程度が減少した.失声・永久気管孔・痰・ 食事・便秘・生活全般に関わる対処法が示された. 【考察】①⑨⑩は対処法が示されず,術後経過年数に関係なく問題が継続するため,指 導方法の確立が必要である. Key words : 喉頭全摘術,下咽頭喉頭頸部食道切除術,生活上の問題,対処法,看護 (受付日:2020 年 2 月 1 日,受理日:2020 年 5 月 29 日,公開日:2021 年 3 月 23 日) 連絡先 渡邉直美/愛知県立大学看護学部 〒 463─8502 名古屋市守山区上志段味東谷 Phone: 052─778─7120/Fax: 052─736─1415/E─mail: [email protected]

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失声による生活の変化に焦点が当てられた報告や4),失 声と永久気管孔造設によって生じる生活上の問題が混在 して調査された報告5)が散見される.さらに,術後 6 カ 月経過しても自己吸痰や食事の支度を自分ではできない 状況で生活していること6),退院後 1 年以上経過してい る喉頭摘出者は,多重問題をかかえ,苦悩し,手探りし ながら生活を立て直しているという報告7)があり,喉頭 摘出術後の生活上の問題について長期的な支援が必要と されている. これらの生活上の問題は,喉頭摘出術後の咽頭腔の構 造の変化や永久気管孔の存在によって生じる.喉頭全摘 術や下咽頭喉頭頸部食道摘出術は,切除部位や吻合・縫 合の方法などが標準化されている.前者の場合は,喉頭 を摘出して残存咽頭粘膜が舌根部付近で縫合され,後者 の場合は,下咽頭,喉頭および頸部食道を摘出して,食 道再建のために遊離空腸などが移植され,その後,両術 式ともに永久気管孔が造設される8).そのため,手術に よる形態・機能の変化から,術後に生じる生活上の問題 を推測することが可能である. これらの問題は同じ術式による手術を受けた患者に共 通すると考えられるため,手術に起因する術後の生活上 の問題と対処法が明らかになれば,患者が術後の生活を 再構築し QOL を高めるための看護に貢献することがで きる. 本研究では,喉頭摘出術による形態・機能の変化から 生活上の問題を導き出し,失声以外の生活上の問題につ いて確定すること,それらの問題について術後経過年数 による問題の程度,術後経過年数による変化および個別 に工夫された対処法を明らかにすることを目的とする.

Ⅱ.研究方法

1.研究デザイン 自記式質問紙調査法を用いた横断研究デザイン 2.対象者 喉頭摘出者の全国連合会に登録している約 7,100 名 (2012 年 11 月現在)のうち,全国 58 カ所の患者会主催 の発声教室に参加している約 2,600 名を対象とした.発 声教室の参加者は,退院後数カ月の者から食道発声を獲 得したのちに発声訓練士として指導する術後 5 年以上経 過した者までが含まれる. 3.調査方法 2013年 6 月~8 月に郵送法による無記名自記式質問紙 調査を行った.患者団体の全国組織体系に基づき,まず 団体代表者に口頭と文書で研究協力を依頼し文書による 承諾を得た後に,全国 7 ブロックのブロック長宛に文書 による依頼を行い,文書にて承認を得た.次に,各ブロッ クに所属する 58 団体会長宛に文書による研究協力依頼 を行い,文書による承諾時に調査票の配布必要部数の回 答を得た.以上の手続きを経て,承諾が得られた 43 団 体会長宛に合計 1,602 部の調査票を送付し,発声教室開 催時に対象者への配布を依頼した.調査票は郵送法によ り回収した. 本調査開始に先立ち,プレテストとして,同意が得ら れた対象者のうち 3 名に調査票の各質問項目への回答, 回答時間,回答しにくかった質問の記入を依頼し,回答 の容易性や妥当性を検討して修正した. なお,本調査は,喉頭全摘術を選択したがん患者の意 思決定に影響を与えた要因9)についての調査と同時に 行った. 4.調査内容 1)個人属性 性別,年齢,病名,病期,手術を受けてから経過した 年数の項目とした. 2)喉頭摘出術にともなう生活上の問題に関する調査 項目の選定 調査項目は,文献1)10)から喉頭摘出術にともなう形態・ 機能の変化を確認し,先行研究2)5)6)を参考に導き出した. (図 1). 喉頭全摘術および下咽頭喉頭頸部食道摘出術は,喉頭 が摘出され,永久気管孔が造設される術式である.喉頭 摘出に伴って声帯も摘出され声を失う.さらに,声門括 約筋群も摘出されるため,息をこらえることができず声 門下圧が上昇しない.そのため,生活の場面において, ①全力で走る(疾走),②重いものを持ち上げる(重い物), ③排便時に息をこらえること(排泄)に問題が生じる. さらに,口腔内に空気が流入しないため,口腔内を陽圧 あるいは陰圧にできない.そのため,④熱い食べ物を冷 ますために息を吹きかけることができず(冷ます),吸 気もできないため,⑤麺類や汁物をすすることができな い(すする). また,甲状軟骨と輪状軟骨間にある輪状咽頭筋(上部 食道括約筋)は,喉頭全摘術の場合は部分切除され,下 咽頭喉頭頸部食道摘出術の場合は全摘出される.そのた め,食事時などに空気を飲み込みやすくなり,⑥げっぷ やおならが出やすくなる(曖気・放屁).さらに,喉頭 全摘術では下咽頭前壁の切除に伴い下咽頭粘膜が縫合さ れ,下咽頭喉頭頸部食道摘出術では頸部食道の切除部位 におもに遊離空腸が移植されて吻合され,両術式ともに 舌根部付近に創部ができる.このように,食物経路が独

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立することから誤嚥はなくなるが,⑦固形物が喉に詰ま りやすい(嚥下)といった自覚症状が生じる. 一方,永久気管孔は第 2~第 3 気管輪の高さで,孔の 狭小化を防ぐように気管断端と皮膚断端が縫合され造設 される.気管孔は,左右鎖骨間よりやや上方の前頸部に 開口するため,⑧入浴,シャワー時に気管孔に水が入り やすく(入浴),⑨水泳などの運動が制限される(水泳). また,呼吸経路の変更により吸気が鼻腔を通過せず匂い 分子が嗅神経に届きにくいため,⑩匂いが分かりにくく なる(匂い).さらに,気道のフィルター機能がないため, ⑪気管孔から異物(埃など)が入りやすく(異物),加 湿されない空気が直接気道に入るため,⑫気道が乾燥し やすく(乾燥),⑬気管孔から出血しやすくなったり(出 血),痰の量が増加して⑭痰が頻繁に出やすい(痰).さ らに,気管孔を覆うプロテクターなどの装着にともなう 蒸れや痰除去時の摩擦により⑮気管孔周囲の皮膚がただ れやすくなる(ただれ). 以上の 15 項目を,喉頭摘出術に伴って生じる共通す る生活上の問題とした.なお,この 15 項目はがん専門 病院の頭頸部外科専門医として年間 80 件以上の喉頭全 摘術および下咽頭喉頭頸部食道摘出術を執刀している医 師による確認後,一部を修正し妥当性を確保した. 3)生活上の問題の程度および術後経過年数による変 化の調査 導き出した 15 項目について,現在の問題の程度を 「まったく問題はない」を 1 点,「あまり問題はない」を 2点,「やや問題がある」を 3 点,「非常に問題がある」 を 4 点とする 4 段階リッカートスケールで評価すること を依頼した. ⑥げっぷやおならが出やすい ③排便時いきみにくい ②重いものが持てない ①全力で走ることが難しい ⑤麺類や汁物をすすれない ④熱い食べ物をフーフーと息を吹いて冷ませない Ⅰ.喉頭摘出 ⑦固形物が喉に詰まりやすい ⑬気管孔から出血しやすい ⑮気管孔周囲の皮膚がただれやすい ⑪気管孔から異物(埃など)が入りやすい ⑫気道が乾燥しやすい ⑩匂いが分かりにくい ⑨水泳などの運動が制限される ⑧入浴、シャワー時に気管孔に水が入りやすい ⑭痰が頻繁に出やすい 喉頭摘出術 2. 声門括約筋摘出 3. 輪状咽頭筋  (上部食道括約筋)  の切除*,摘出** Ⅱ.永久気管孔造設 1. 声帯摘出 4. 下咽頭腔の閉創* 移植組織(おもに空腸) の吻合** 1)声を失う 2)呼吸経路の変更 3)口腔内を陰圧にできない 2)食物経路の独立 1)息をこらえることができず,  声門下圧が上昇しない 2)口腔内を陽圧にできない 1)舌根部付近に吻合部の存在 1)気管孔が前頸部に開口 (気管断端と皮膚断端の縫合) (1)匂い分子が嗅神経に届かない (3)加湿機能がない 1)食事時などに空気を飲みやすい (2)気道のフィルター機能がない 図 1 喉頭摘出術に伴う形態・機能の変化と生活上の問題喉頭全摘術の場合, **下咽頭喉頭頸部食道摘出術の場合

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4)生活上の問題への対処法に関する調査 術式および先行研究から導き出した生活上の問題への 対処法を確認するため,「現在,生活を送るうえで問題 はありますか.その問題に対してどのように対処してい らっしゃるか自由に書いてください.」の教示文に対し A4用紙 1/2 ページの空欄に自由記述を求めた. 5.分 析 1)分析対象 調査票は,799 部が回収され(回収率 49.9%),無回 答部分は欠損値として扱うこととし,回収されたすべて の調査票を分析対象とした. 2)分析方法 (1)生活上の問題項目の確定 術式から導き出した 15 項目について,中央値を算出 し,2.0 点以上の項目を生活上の問題がある項目の候補 とした.中央値が 1 点であった項目については,術後経 過年数による問題の程度の変化,問題の緊急性と重要性 を勘案し,生活上の問題候補に加えるかを検討した.次 に,生活上の問題候補の項目について,探索的因子分析 (主因子法,プロマックス回転)を行い,因子間の構造 を検討した.内的整合性は,Cronbach の α 係数を算出 した.以上の確認を経て,喉頭摘出術による形態・機能 の変化から生じる生活上の問題を確定した. (2)術後経過年数における生活上の問題の程度およ び術後経過年数による変化 術後経過年数における問題の程度を検討するために, 喉頭摘出術後の生存率に用いられる術後 1 年,3 年,5 年の分類にしたがって「1 年未満」「1 年以上 3 年未満」「3 年以上 5 年未満」および「5 年以上」の 4 期に分け,生 活上の問題項目ごとに問題の程度 1~4 点の人数分布を 示し,χ 二乗検定を行った. また,χ 二乗検定で有意差があり術後経過と関連があ ると示された生活上の問題項目について,「やや問題が ある(3 点)」「非常に問題がある(4 点)」の回答者数比 率について,術後経過年数による変化を確認した. 統計処理には,統計解析用ソフト IBMⓇ SPSS Statis-tics Version 23(Windows)を使用し,有意水準は 5%と した. (3)生活上の問題の対処法 生活上の問題の対処法に関する自由記載は,Berel-son, B.の内容分析11)の手法を用いた.まず,素データ から生活上の問題の対処法に関する記述を文脈ごと抽出 し,記録単位とした.次に,これらの記録単位を意味内 容の類似性に基づき分類してサブカテゴリ,さらにサブ カテゴリからカテゴリを生成した.そして,各カテゴリ に包含された記録単位の出現頻度を集計し数量化した. なお,カテゴリ化の信頼性・妥当性を確保するため, 全記録単位(561 記録単位)の 10%にあたる 56 記録単 位を無作為に抽出し,看護学研究者 2 名の協力を得てカ テゴリ分類の一致率を算出した.その結果,一致率はサ ブ カ テ ゴ リ 化 で は 84.5 %,81.5 %, カ テ ゴ リ 化 で は 93.8%,88.3%であり,一致しなかった項目は,結果を 見直し修正した.以上の手続きによって信頼性・妥当性 を確保した. 6.倫理的手続き 愛知県立大学研究倫理審査委員会の許可を得た(承認 番号 25 愛看大管理第 7-2 号).団体代表者に,研究目的 と方法,データ管理方法,研究の公表方法,研究協力の 自由意志と拒否権の保護,研究の不参加によって不利益 を被ることはないことについて文書を用いて説明し,同 意書に署名を得た.全国 7 ブロック長および 58 団体会 長には,上記の内容について記載した文書を郵送し,同 意書の返送にて同意を確認した.対象者には,調査票表 紙に,研究目的,方法,個人情報の保護および研究参加 の自由について記載し,返送をもって同意を確認した.

Ⅲ.結 果

1.対象者の特性 1)個人属性 対象者の属性を表 1に示した.対象者は,男性 712 名 (89.1%),女性 87 名(10.9%),平均年齢は,62.8 ± 8.7 歳であった.喉頭摘出術を受けたおもな原疾患は,喉頭 がん 514 名(64.3%),次いで下咽頭がん 224 名(28.0%) であった. 2)生活上の問題の確定および術後経過の 4 期間別に おける問題の程度 15項目の生活上の問題について,術後経過の 4 期間 別(1 年未満,1 年以上 3 年未満,3 年以上 5 年未満,5 年以上)に,問題の程度 4 段階(1~4 点)における回 答者数の分布および χ 二乗値,中央値を表 2に示した. 「まったく問題はない」を 1 点,「非常に問題がある」 を 4 点とした 4 段階スケールにおいて,全体の中央値が 「非常に問題がある(4 点)」を示した生活上の問題は, ⑨(水泳)の 1 項目であり,「1 年未満」の中央値は 3 点, 「1 年以上 3 年未満」「3 年以上 5 年未満」「5 年以上」は 4点であった. 次に,全体の中央値が「やや問題がある(3 点)」を 示したのは,①(疾走),④(冷ます),⑤(すする), ⑥(曖気・放屁),⑧(入浴),⑩(匂い),⑭(痰)の

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7項目であった.一方,全体の中央値が「あまり問題は ない(2 点)」を示したのは,②(重い物),③(排泄), ⑦(嚥下),⑪(異物),⑫(乾燥),⑮(ただれ)の 6 項目であった.そして,全体の中央値が「まったく問題 はない(1 点)」を示したのは,⑬(出血)であった. 以上から,「あまり問題はない(2 点)」は,少なから ず問題があることを包含することから,全体の中央値が 2点以上の 14 項目を生活上の問題候補とした. 全体の中央値が 1 点であった⑬(出血)は,「3 年以 上 5 年未満」「5 年以上」の中央値が 2 点を示したこと, 重篤な合併症につながる恐れがあることから,問題とし て加え,最終的に全 15 項目を生活上の問題項目の候補 として確定した. 3)生活上の問題の因子構造 生活上の問題項目の候補とした 15 項目について,探 索的因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った. 固有値と因子のスクリ―プロットにより,3 因子構造が 抽出された(表 3). 第Ⅰ因子は,⑪(異物),⑬(出血),⑮(ただれ), ⑫(乾燥),⑭(痰),⑧(入浴),②(重い物)の 7 項 目で構成されており,「永久気管孔・呼吸」と命名した. 第Ⅱ因子は,④(冷ます),⑤(すする),⑦(嚥下), ⑩(匂い),③(排泄),⑥(曖気・放屁)の 6 項目で構 成されており,「食事・排泄」と命名した.第Ⅲ因子は, ①(疾走),⑨(水泳)の 2 項目で構成されており,「運 動」と命名した. また,15 項目の信頼性を検討するために,内的整合 性について Cronbach の α 係数を算出した結果,15 項 目全体で 0.86,各因子では 0.73~0.78 であった.以上を 確認後,15 項目を生活上の問題として確定した. 4)生活上の問題の術後経過年数による変化 術後経過の 4 期間と問題の程度の 4 段階の間に有意差 を認め,術後経過に関係すると示された生活上の問題項 目は,③(排泄),④(冷ます),⑤(すする),⑧(入浴), 表 1 対象者の基本属性 n=799 項目 カテゴリ n % 平均± SD 性別 男性 712 89.1 女性 87 10.9 現在の年齢 50歳未満 47 5.9 全体 62.8 ± 8.7 (範囲 28-91 歳) 男性 62.1 ± 10.4 (範囲 28-91 歳) 女性 60.1 ± 10.4 (範囲 34-86 歳) 50~ 59 歳 207 25.9 60~ 69 歳 380 47.6 70~ 79 歳 150 18.8 80~ 89 歳 13 1.6 90歳以上 2 0.3 病名 喉頭がん 514 64.3 下咽頭がん 224 28.0 食道がん 24 3.0 甲状腺がん 9 1.1 喉頭がんと咽頭がんの 併発がん 7 0.9 舌がん 3 0.4 その他 18 2.3 病期 Ⅰ期 2 0.3 Ⅱ期 8 1.0 Ⅲ期 252 31.5 Ⅳ期 226 28.3 再発 122 15.3 不明 155 19.4 欠損値 34 4.3 手術を受けてから 経過した年数 1年未満 99 12.4 7年 6 カ月± 7 年 1 カ月 (範囲 1 カ月 -47 年 0 カ月) 1年以上~ 3 年未満 160 20.0 3年以上~ 5 年未満 122 15.3 5年以上~ 10 年未満 194 24.3 10年以上 224 28.0

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表 2 術後経過年数の 4 期別における生活上の問題の程度の変化 n=792 生活上の問題 術後経過年数 まったく 問題はない 1 あまり 問題はない 2 やや 問題がある 3 非常に 問題がある 4 合計(%) p値注) 中央値 (全体の中 央値) n(%) n(%) n(%) n(%) n(%) ①全力で走ることが難しい(疾走) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 9 (9.7) 6 (3.8) 7 (5.8) 25 (6.1) 26 (28.0) 34 (21.5) 27 (22.3) 94 (22.9) 24 (25.8) 65 (41.1) 48 (39.7) 164 (40.0) 34 (36.6) 53 (33.5) 39 (32.2) 127 (31.0) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.365 3 3 3 3 (3) 合計(%) 47 (6.0) 181 (23.1) 301 (38.5) 253 (32.4) 782 (100) ②重いものが持てない(重い物) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 16 (17.2) 35 (22.2) 24 (19.8) 110 (26.8) 31 (33.3) 52 (32.9) 50 (41.3) 158 (38.5) 34 (36.6) 56 (35.4) 35 (28.9) 113 (27.6) 12 (12.9) 15 (9.5) 12 (9.9) 29 (7.1) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.150 2 2 2 2 (2) 合計(%) 185 (23.7) 291 (37.2) 238 (30.4) 68 (8.7) 782 (100) ③排泄時にいきみにくい(排泄) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 19 (20.4) 39 (24.7) 26 (21.5) 123 (30.1) 37 (39.8) 60 (38.0) 53 (43.8) 161 (39.4) 20 (21.5) 41 (25.9) 35 (28.9) 92 (22.5) 17 (18.3) 18 (11.4) 7 (5.8) 33 (8.1) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 409 (100) 0.035 2 2 2 2 (2) 合計(%) 207 (26.5) 311 (39.8) 188 (24.1) 75 (9.6) 781 (100) ④熱い食べ物をフーフーと息を吹いて 冷ませない(冷ます) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 5 (5.4) 10 (6.3) 8 (6.6) 44 (10.7) 25 (26.9) 32 (20.3) 26 (21.5) 130 (31.7) 38 (40.9) 65 (41.1) 54 (44.6) 153 (37.3) 25 (26.9) 51 (32.3) 33 (27.3) 83 (20.2) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.012 3 3 3 2 (3) 合計(%) 67 (8.6) 213 (27.2) 310 (39.6) 192 (24.6) 782 (100) ⑤麺類や汁物をすすれない(すする) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 9 (9.7) 22 (13.9) 16 (13.2) 89 (21.7) 26 (28.0) 43 (27.2) 37 (30.6) 149 (36.3) 41 (44.1) 63 (39.9) 50 (41.3) 134 (32.7) 17 (18.3) 30 (19.0) 18 (14.9) 38 (9.3) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.001 3 3 3 2 (3) 合計(%) 136 (17.4) 255 (32.6) 288 (36.8) 103 (13.2) 782 (100) ⑥げっぷやおならがよく出る(曖気・ 放屁) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 14 (15.1) 27 (17.1) 20 (16.5) 66 (16.1) 34 (36.6) 43 (27.2) 40 (33.1) 146 (35.6) 28 (30.1) 60 (38.0) 41 (33.9) 148 (36.1) 17 (18.3) 28 (17.7) 20 (16.5) 50 (12.2) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.554 2 3 3 2 (3) 合計(%) 127 (16.2) 263 (33.6) 277 (35.4) 115 (14.7) 782 (100) ⑦固形物が喉に詰まりやすい(嚥下) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 10 (10.8) 29 (18.4) 24 (19.8) 87 (21.2) 28 (30.1) 52 (32.9) 44 (36.4) 148 (36.1) 40 (43.0) 50 (31.6) 36 (29.8) 128 (31.2) 15 (16.1) 27 (17.1) 17 (14.0) 47 (11.5) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.192 3 2 2 2 (2) 合計(%) 150 (19.2) 272 (34.8) 254 (32.5) 106 (13.6) 782 (100) ⑧入浴・シャワー時に気管孔に水が入 りやすい(入浴) 術後 1 年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 7 (7.5) 16 (10.1) 15 (12.4) 84 (20.5) 35 (37.6) 42 (26.6) 48 (39.7) 141 (34.5) 27 (29.0) 61 (38.6) 33 (27.3) 128 (31.3) 24 (25.8) 39 (24.7) 25 (20.7) 56 (13.7) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 409 (100) P<0.001 3 3 2 2 (3) 合計(%) 122 (15.6) 266 (34.1) 249 (31.9) 144 (18.4) 781 (100) ⑨水泳などの運動が制限される(水泳) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 7 (7.5) 5 (3.2) 7 (5.8) 23 (5.6) 22 (23.7) 22 (13.9) 15 (12.4) 60 (14.6) 22 (23.7) 45 (28.5) 30 (24.8) 118 (28.8) 42 (45.2) 86 (54.4) 69 (57.0) 209 (51.0) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.321 3 4 4 4 (4) 合計(%) 42 (5.4) 119 (15.2) 215 (27.5) 406 (51.9) 782 (100) ⑩匂いが分かりにくい(匂い) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 2 (2.2) 3 (1.9) 5 (4.1) 22 (5.4) 15 (16.1) 14 (8.9) 20 (16.5) 75 (18.3) 35 (37.6) 71 (44.9) 42 (34.7) 158 (38.5) 41 (44.1) 70 (44.3) 54 (44.6) 155 (37.8) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.094 3 3 3 3 (3) 合計(%) 32 (4.1) 124 (15.9) 306 (39.1) 320 (40.9) 782 (100) ⑪気管孔から異物(埃など)が入りや すい(異物) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 13 (14.0) 35 (22.2) 26 (21.5) 99 (24.1) 42 (45.2) 66 (41.8) 51 (42.1) 188 (45.9) 26 (28.0) 46 (29.1) 38 (31.4) 94 (22.9) 12 (12.9) 11 (7.0) 6 (5.0) 29 (7.1) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.182 2 2 2 2 (2) 合計(%) 173 (22.1) 347 (44.4) 204 (26.1) 58 (7.4) 782 (100) ⑫気道が乾燥しやすい(乾燥) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 28 (30.1) 40 (25.3) 18 (14.9) 87 (21.2) 34 (36.6) 59 (37.3) 65 (53.7) 177 (43.2) 27 (29.0) 48 (30.4) 32 (26.4) 130 (31.7) 4 (4.3) 11 (7.0) 6 (5.0) 16 (3.9) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.092 2 2 2 2 (2) 合計(%) 173 (22.1) 335 (42.8) 237 (30.3) 37 (4.7) 782 (100) ⑬気管孔から出血しやすい(出血) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 59 (63.4) 88 (55.7) 56 (46.3) 189 (46.1) 21 (22.6) 46 (29.1) 40 (33.1) 146 (35.6) 12 (12.9) 17 (10.8) 20 (16.5) 63 (15.4) 1 (1.1) 7 (4.4) 5 (4.1) 12 (2.9) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.083 1 1 2 2 (1) 合計(%) 382 (48.8) 253 (32.4) 112 (14.3) 25 (3.2) 782 (100) ⑭痰が頻繁に出やすい(痰) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 6 (6.5) 6 (3.8) 8 (6.6) 50 (12.2) 25 (26.9) 38 (24.1) 42 (34.7) 158 (38.6) 42 (45.2) 79 (50.0) 49 (40.5) 166 (40.6) 20 (21.5) 35 (22.2) 22 (18.2) 35 (8.6) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 409 (100) P<0.001 3 3 2 2 (3) 合計(%) 70 (9.0) 263 (33.7) 336 (43.0) 112 (14.3) 781 (100) ⑮気管孔周囲の皮膚がただれやすい (ただれ) 1年未満 1年以上 3 年未満 3年以上 5 年未満 5年以上 24 (25.8) 43 (27.2) 38 (31.4) 139 (33.9) 35 (37.6) 71 (44.9) 55 (45.5) 176 (42.9) 29 (31.2) 38 (24.1) 23 (19.0) 84 (20.5) 5 (5.4) 6 (3.8) 5 (4.1) 11 (2.7) 93 (100) 158 (100) 121 (100) 410 (100) 0.336 2 2 2 2 (2) 合計(%) 244 (31.2) 337 (43.1) 174 (22.3) 27 (3.5) 782 (100) 注)χ二乗検定の p 値を表す

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⑭(痰)であった(表 2).この 5 項目について「やや問 題がある・非常に問題がある」と回答した人数(%)の 術後経過 4 期間の変化を図 2に示した. ③(排泄)は,「1 年未満」39.8%から「5 年以上」 30.6%へと直線的に減少した.ほかの 4 項目は「1 年未満」 では 54.8~67.8%を示し,④(冷ます)・⑧(入浴)・⑭ (痰)は,「1 年以上 3 年未満」で各々73.4%,63.3%, 72.2%へ増加し,「5 年以上」で 57.5%,45.0%,49.2% へ減少した.⑤(すする)は直線的に減少し,「5 年以上」 で 42.0%と急激に減少した. 5)生活上の問題への対処法(表 4) 調査票 799 部のうち,自由記載欄に記入があったもの は 509 部(63.7%)であった.内容分析の結果,561 記 録単位が抽出され,意味内容の類似性に基づき分類し, 31サブカテゴリ,8 カテゴリとなった(表 4).各カテゴ リに包含される生活上の問題への対処法について,以下 に【 】はカテゴリとそれを形成した記録単位数および 総数に占める割合,[ ]は記録単位として示した. 永久気管孔・呼吸に関連したカテゴリとして,【失声 への対処法を獲得する:83, 14.8%】は,2 サブカテゴリ で構成され,[場所に応じて,発声補助装置,電気喉頭, 筆談を使い分ける][退院後は,発声練習を継続する] 表 3 生活上の問題の因子構造 因子名 因子 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 共通性 α 係数注1)α係数注2) 第Ⅰ因子 (永久気管孔・呼吸) ⑪気管孔から異物(埃など)が入りやすい 0.714 0.058 -0.076 0.511 0.78 0.86 ⑬気管孔から出血しやすい 0.644 -0.189 -0.012 0.304 ⑮気管孔周囲の皮膚がただれやすい 0.628 0.04 -0.011 0.419 ⑫気道が乾燥しやすい 0.625 -0.11 0.01 0.327 ⑭痰が頻繁に出やすい 0.442 0.092 0 0.251 ⑧入浴,シャワー時に気管孔に水が入りやすい 0.439 0.029 0.024 0.444 ②重いものが持てない 0.308 0.149 0.24 0.339 第Ⅱ因子 (食事・排泄) ④熱い食べ物をフーフーと息を吹いて冷ませない -0.22 0.939 -0.022 0.672 0.76 ⑤麺類や汁物をすすれない -0.008 0.776 -0.059 0.547 ⑦固形物が喉に詰まりやすい 0.206 0.413 -0.018 0.3 ⑩匂いが分かりにくい -0.014 0.381 0.311 0.364 ③排泄時にいきみにくい 0.291 0.303 0.033 0.301 ⑥げっぷやおならがよく出る 0.239 0.251 0.144 0.206 第Ⅲ因子 (運動) ①全力で走ることが難しい 0.176 0.181 0.903 0.748 0.73 ⑨水泳などの運動が制限される 0.117 0.176 0.676 0.438         因子間相関   第Ⅰ因子 − − −       第Ⅱ因子 0.584 −       第Ⅲ因子 0.479 0.562 − 累積寄与率 16.21 30.79 41.14 注) 主因子法,Kaiser の正規化をともなうプロマックス法 注1) 各因子の α 係数を示す. 注2) 全体の α 係数を示す. 術後 1 年未満 1 年以上 3 年未満 3 年以上 5 年未満 5 年以上 ③排便時にいきみにくい ④熱い食べ物をフーフーと息をふいて冷ませない ⑧入浴・シャワー時に気管孔に水が入りやすい ⑤麺類や汁物をすすれない ⑭痰が頻繁に出やすい 39.8 37.3 34.8 30.6 67.8 73.4 71.9 57.5 62.4 58.9 56.2 54.8 63.3 48.0 45.0 42.0 66.7 72.2 58.7 49.2 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100% ⑧入浴 ⑭痰 ④冷ます ⑤すする ③排泄 図 2 生活上の問題の術後経過年数の変化

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が示された.【永久気管孔に配慮した生活方法を工夫す る:135, 24.1%】は,8 サブカテゴリで構成され,[湯水 の侵入を防ぐために,気管孔の位置を手や鏡で確認して 入浴する][気管孔の乾燥を防ぐために,加湿器やネブ ライザーを使用する][入浴や洗髪時は,首にタオルを 巻く,シャワーシールドや手づくりの防護具を使用する] [気管孔周辺の皮膚を毎日濡らした脱脂綿で清拭し,軟 膏を塗る][気管孔の乾燥を防ぐために,エプロンを着 用する,エプロンを湿らせる][気管孔から異物が侵入 しないよう常にエプロンを着用する] [気管孔が周囲に 見えないよう,ハイネックや襟付きの衣服を選択する] [力が入りにくいため,重いものは無理して持たない] が示された.【痰の喀出方法を工夫する:22, 3.9%】は, 2サブカテゴリで構成され,[外出時に痰を喀出しやす い場所を確認する] [痰を喀出しやすいよう,ネブライ ザーを使用する,茶こしに濡れたガーゼをあてて気管孔 に置く]が示された. 食事・排泄に関連したカテゴリとして,【食事の内容 表 4 生活上の問題への対処法 総記録単位数 561 カテゴリ サブカテゴリ 記録数 記録単位(%) カテゴリ内記録単位数 合計(%) 失声への対処法を獲得する 場所に応じて,発声補助装置,電気喉頭,筆談を使い分ける 42 7.4 (14.8)83 退院後は,発声練習を継続する 41 7.3 永久気管孔に配慮した生活 方法を工夫する 湯水の侵入を防ぐために,気管孔の位置を手や鏡で確認して入浴する 28 5.0 135 (24.1) 気管孔の乾燥を防ぐために,加湿器やネブライザーを使用する 24 4.3 入浴や洗髪時は,首にタオルを巻く,シャワーシールドや手づくりの防 護具を使用する 23 4.1 気管孔周辺の皮膚を毎日濡らした脱脂綿で清拭し,軟膏を塗る 20 3.5 気管孔の乾燥を防ぐために,エプロンを着用する,エプロンを湿らせる 19 3.3 気管孔から異物が侵入しないよう常にエプロンを着用する 11 2.0 気管孔が周囲に見えないよう,ハイネックや襟付きの衣服を選択する 8 1.5 力が入りにくいため,重いものは無理して持たない 2 0.4 痰の喀出方法を工夫する 外出時に痰を喀出しやすい場所を確認する 15 2.7 22 (3.9) 痰を喀出しやすいよう,ネブライザーを使用する,茶こしに濡れたガー ゼをあてて気管孔に置く 7 1.2 食事の内容や摂取方法を工 夫する 食物が喉に詰まらないよう,よく噛む,汁物やお茶とともに飲み込む, 少しずつ飲み込む 24 4.3 57 (10.2) 食物が喉に詰まらないよう,食材は軟らかくなるまで煮る,小さく切る 15 2.7 口の中をやけどしないよう,卓上小型扇風機を使用する,器に何度も移 して冷ます 6 1.1 胃食道逆流しやすいため,食事中・後に頭を下げない 3 0.5 むせやすいため,香辛料,刺激物,炭酸飲料は摂取を避ける 3 0.5 すすることができないため,麺類や汁物はスプーンやフォークで食べる 3 0.5 げっぷやおならは恥ずかしがらずに出す 3 1.0 便秘の予防や排便しやすい 方法を獲得する 便秘予防のために,水分や食物繊維をとるよう心がける 12 2.1 19 (3.4) 排便しやすいよう,温水洗浄便座の温水を肛門にあてる,腹圧がかかり やすい体位をとる 4 0.7 便秘時は内服薬を使用する 3 0.5 健康や体力の維持に努める 適度な運動で筋力と体力を維持する 50 8.9 74 (13.2) 風邪予防のために,風邪の人には近寄らない,インフルエンザの流行時 期は人ごみに行かない 16 2.9 栄養バランスに気をつけ,必要時はサプリメントで補う 8 1.4 現状を受け入れ前向きに生 きる 困ったことや不安なことを相談できる人や場所をみつける 60 10.7 161 (28.7) 周囲に障害を公表して理解してもらう 51 10.2 家にこもらず積極的に外出しストレス発散する 50 8.9 事故や緊急事態に備える 匂いが分かりにくいため,ガス事故,食中毒に気を付ける 5 0.7 10 (1.8) 水難事故にあわないよう水辺に近づかない 3 0.5 事故や事件に遭遇した時の通報の手段(Fax 通報)を警察や消防署に相談・ 確認する 2 0.5

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や摂取方法を工夫する:57, 10.2%】は,7 つのサブカテ ゴリで構成され,[食物が喉に詰まらないよう,よく噛む, 汁物やお茶とともに飲み込む,少しずつ飲み込む][食 物が喉に詰まらないよう,食材は軟らかくなるまで煮る, 小さく切る][口の中をやけどしないよう,卓上小型扇 風機を使用する,器に何度も移して冷ます][胃食道逆 流しやすいため,食事中・後に頭を下げない][むせや すいため,香辛料,刺激物,炭酸飲料は摂取を避ける][す することができないため,麺類や汁物はスプーンや フォークで食べる][げっぷやおならは恥ずかしがらず に出す]が示された.【便秘の予防や排便しやすい方法 を獲得する:19, 3.4%】は,3 つのサブカテゴリで構成 され,[便秘予防のために,水分や食物繊維をとるよう 心がける][排便しやすいよう,温水洗浄便座の温水を 肛門にあてる,腹圧がかかりやすい体位をとる][便秘 時は内服薬を使用する]が示された. 生活全般に関連したカテゴリとして,【健康や体力の 維持に努める:74, 13.2%】は,3 サブカテゴリで構成さ れ,[適度な運動で筋力と体力を維持する][ 風邪予防 のために,風邪の人には近寄らない,インフルエンザの 流行時期は人ごみに行かない][栄養バランスに気をつ け,必要時はサプリメントで補う]が示された.【現状 を受け入れ前向きに生きる:161, 28.7%】は,3 サブカ テゴリで構成され,[困ったことや不安なことを相談で きる人や場所をみつける][周囲に障害を公表して理解 してもらう][家にこもらず積極的に外出しストレス発 散する]が示された.【事故や緊急事態に備える:10, 1.8%】は,3 つのサブカテゴリで構成され,[匂いが分 かりにくいため,ガス事故,食中毒に気を付ける][水 難事故にあわないよう水辺に近づかない][事故や事件 に遭遇した時の通報の手段(Fax 通報)を警察や消防署 に相談・確認する]が示された.

Ⅳ.考 察

喉頭全摘術や下咽頭喉頭頸部食道摘出術を受けた患者 に対して,喉頭の摘出に伴い声を失うことの問題は周知 されているものの,その他の生活上の問題への対応は十 分とはいえない.術後早期に生活を再構築するために, 失声のみならず,永久気管孔造設によって余儀なくされ る生活行動の変容など,患者が遭遇する生活上の問題と 対処法を明らかにすることが重要である. 1.喉頭摘出術による生活上の問題の確定 本研究では,喉頭摘出術による構造と機能の変化に基 づく病態を推論し,そこから生活上の問題 15 項目(失 声を除く)を演繹的に導き出し,問題の程度を調査した. 結果で示したように,15 項目の問題の程度は全体の中 央値 4 点(非常に問題がある)が 1 項目,3 点(やや問 題がある)が 7 項目,2 点(あまり問題はない)が 6 項目, 1点(まったく問題はない)が 1 項目であった.2 点は 少なからず問題が存在すると判断し,まず 14 項目を生 活上の問題の候補とした.加えて,1 点(まったく問題 がない)の項目は「気管孔から出血する」で,生命に関 わる重要な問題であり,術後 3 年以上で 2 点を認めるこ とから,問題の候補に加えた. この 15 項目に関する因子分析の結果は,「第Ⅰ因子. 永久気管孔・呼吸」「第Ⅱ因子.食事・排泄」「第Ⅲ因子. 運動」の 3 因子構造であり構成概念としては妥当であっ た.さらに,Cronbach の α 係数が 0.86 であり,信頼性 を確認し,生活上の問題として確定した. 2.生活上の問題の程度と術後経過による変化 生活上の問題 15 項目のうち,喉頭摘出術後の生活に おいて最も問題であったのは,全体の中央値 4 点の「第 Ⅲ因子:運動」に属する⑨水泳などの運動が制限される (水泳)であった.さらに,同因子の①全力で走ること が難しい(疾走)も 3 点を示した.これらの問題は,永 久気管孔に起因するため,術後の経過年数にかかわらず 対処法がないまま問題が継続することが示された. 次に,「第Ⅱ因子:食事・排泄」に属する 6 項目のうち, 4項目が全体の中央値 3 点であり,2 項目が 2 点であった. 前者は,④熱い食べ物をフーフーと息を吹いて冷ませな い(冷ます),⑤麺類や汁物をすすれない(すする),⑥ げっぷやおならがよく出る(曖気・放屁),および⑩匂 いが分かりにくい(匂い),後者は,③排泄時にいきみ にくい(排泄)および⑦固形物が喉に詰まりやすい(嚥 下)であった.このうち,④(冷ます)および⑤(すす る)の 2 項目は術後の経過年数とともに中央値 2 点へ減 少し,なんらかの対処法が獲得されたことが考えられた. 「第Ⅰ因子:永久気管孔・呼吸」に属する 7 項目は, 全体の中央値 3 点が 2 項目,2 点が 4 項目,1 点が 1 項 目であった.3 点の項目は,⑧入浴,シャワー時に気管 孔に水が入りやすい(入浴),⑭痰が頻繁に出やすい(痰) であったが,いずれも術後の経過年数とともに中央値 2 点へ減少した.2 点の項目は,②重いものが持てない(重 い物),⑪気管孔から異物(埃など)が入りやすい(異物), ⑫気道が乾燥しやすい(乾燥),⑮気管孔周囲の皮膚が ただれやすい(ただれ)で,1 点の項目は⑬(出血)であっ た.⑧(入浴),⑭(痰)は,入院中に永久気管孔に配 慮した入浴方法,自己吸痰12)などを看護師から指導さ れることが報告されており,実際に対処されていたと考

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える.さらに,⑪(異物),⑫(乾燥),⑮(ただれ), および⑬(出血)は,エプロンガーゼ着用の必要性,加 湿器やネブライザーの必要性,鏡をみて永久気管孔を観 察する13)なども入院中に指導されていることが報告さ れており,退院後も対処されていたと考える.指導が一 般化されている項目と考えられ,第Ⅰ因子は,ほかの 2 つの因子と比較して,問題の程度は低いことがうかがわ れた. 3.生活上の問題への対処法 第Ⅰ因子に属する問題に関しては,入院中に看護師か ら対処法を指導されていることが報告されているが,⑧ (入浴)に対して退院後 1 年間は入浴時の溺水への怖さ をかかえていること14),痰による窒息などのトラブル が多いこと6)の報告もあり,とくに術後 3 年未満の患者 には外来受診時に確認し支援する必要がある.また,② (重いもの)は生活行動に起因するが,「力が入りにくい ため,重いものは無理して持たない」との対処がなされ ていた. 第Ⅱ因子では,⑥(曖気・放屁)は,輪状咽頭筋の切 除によって,呼吸のたびに空気が食道に自然吸引され, 腹部膨満感による不快が生じる14)ため,「げっぷやおな らは恥ずかしがらずに出す」と対処されていた.社会生 活上のマナーにも抵触する可能性があり,工夫は難しい ことがうかがえた.⑩(匂い)は,喉頭摘出者の約 60%が嗅覚障害を生じる15)といわれている.しかし, 具体的な対処法は記載されなかった.国外では,口腔お よび咽頭内を陰圧にする特殊な装置を用いたリハビリ テーション方法が開発・導入されていることが報告され ている16).日本では,喉頭摘出者の患者会において, 鼻腔に空気を流入させる方法としてストローでコップ内 の水をブクブクと泡立たせる練習が実施されている.匂 いに関する問題は練習次第で再び感じることができるよ うになることを伝え,鼻腔に空気を流入させるリハビリ テーションなどを検討する必要がある. また,③(排泄)は,とくに術後 1 年以内の患者は, いきむことができず便秘によって辛い思いをしており14) 約 60%が下剤を常用している17)と報告されている.本 調査でも同様に下剤の使用や排便時の体位を工夫して対 処していることが示された.また,⑦(嚥下)は,術後 約 50%の患者に嚥下障害が生じ18),退院 1 年後は著し く体重が減少すると報告されている14).これは,舌根 部の吻合部の存在に起因するが,調理や食事摂取方法な どを工夫していることが示された. 第Ⅲ因子では,喉頭摘出者が手術前と同じ運動ができ ると実感することは心身の健康維持に有益である.国外 では永久気管孔専用のシュノーケルを装着した水泳がリ ハビリテーションの一環として導入されていることが報 告されている19).今後,日本においても水泳に関する 対処法の検討が望まれる. 一方,術式から導き出した 15 項目以外に,対処法と して胃食道逆流しやすいことへの記述(0.5%)があった. 下咽頭喉頭頸部食道摘出術の場合,輪状咽頭筋(上部食 道括約筋)が全切除されることで生じる可能性は否定で きないが,加齢による影響が考えられた. 4.看護への示唆 本研究の結果から,喉頭摘出術後に生じる生活上の問 題として 15 項目が特定された.このうち,第Ⅰ因子の 永久気管孔・呼吸の 7 項目中 4 項目が,問題の程度が全 体の中央値 2 点(ほとんど問題がない),あるいは術後 1年未満では 3 点(やや問題がある)であっても術後年 数の経過とともに低下していた.これは,入院中に看護 師から患者へ対処法などが指導されているとの報告があ り,臨床での指導は有効であると考えられた. したがって,問題の程度が中央値 3 点(やや問題があ る)以上で,術後経過年数に関係なく問題が継続してい た①(疾走),⑨(水泳),⑩(匂い)の 3 項目について は,リハビリテーションの方法を検討して指導方法を確 立し,臨床で指導を行うことで喉頭摘出後の患者が術後 早期に生活を再構築することにつながると考える. また,本研究では術式から生活上の問題を推論して研 究を進めてきたが,その方法は有効であることが示され た.今後は術式や病態から起こりうる生活上の問題を導 き出し,看護を構築していく必要があると考える.

Ⅴ.結 論

喉頭摘出者の生活上の問題と対処法を明らかにするこ とを目的に,当該患者会に所属する喉頭摘出者へ質問紙 調査を実施し,以下の結論を得た. 1.生活上の問題は,第Ⅰ因子「永久気管孔・呼吸」: ②重いものが持てない,⑧入浴・シャワー時に気管孔に 水が入りやすい,⑪気管孔から異物が入りやすい,⑫気 道が乾燥しやすい,⑬気管孔から出血しやすい,⑭痰が 頻繁に出やすい,⑮気管孔周囲の皮膚がただれやすい, 第Ⅱ因子「食事・排泄」:③排泄時にいきみにくい,④ 熱い食べ物をフーフーと息を吹いて冷ませない,⑤麺類 や汁物をすすれない,⑥げっぷやおならがよく出る,⑦ 固形物が喉に詰まりやすい,⑩匂いが分かりにくい,第 Ⅲ因子「運動」:①全力で走ることが難しい,⑨水泳な どの運動が制限される,の 3 因子 15 項目が確定された.

(11)

2.問題の程度は,「第Ⅰ因子:永久気管孔・呼吸」は, ⑧⑭(中央値 3 点:やや問題がある),②⑪⑫⑮(同 2 点: あまり問題はない),⑬(同 1 点:まったく問題はない), 「第Ⅱ因子:食事・排泄」は,④⑤⑥⑩(同 3 点),③⑦ (同 2 点),「第Ⅲ因子:運動」は,⑨(同 4 点:非常に 問題がある),①(同 3 点)を示した. 3.術後経過年数によって問題の程度が減少した項目 は,③④⑤⑧⑭であった. 4.対処法として,失声・永久気管孔・痰・食事・便秘・ 生活全般に関わるカテゴリが示された. 謝 辞 本研究に御協力頂きました患者会の皆様に感謝申し上げ る. 利益相反 本研究における利益相反は存在しない. 文 献 1) 吉野邦俊. 喉頭全摘出術. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 112(8), 634─637 (2009)

2) Fujii M, Fukazawa K, Hatta C, et al. Olfactory acuity after total laryngectomy. Chemical Senses. 27(2), 117─121(2002) 3) Ward EC, Bishop B, Frisby J, et al. Swallowing outcomes

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19) Gray RF. Swimming after laryngectomy. Laryngoscope. 92(7), 815─817 (1982)

(12)

Abstract

Difficulties and Solutions in Daily Life of Laryngectomy Patients after Discharge by

Naomi Watanabe**1), Yayoi Kamakura**2), Junko Fukada**1) from

**1) Aichi Prefectural University School of Nursing & Health **2) Japanese Red Cross Toyota College of Nursing

[Objective] To identify difficulties other than aphonia faced by patients who have undergone laryngectomy

as a surgical procedure commonly required in total laryngectomy and hypopharyngolaryngo-cervical esophagectomy, such difficulties were predicted based on morphological and functional changes related to the procedure. Furthermore, changes in the degrees of these difficulties with time after surgery and solutions in each case were examined.

[Methods] A questionnaire survey was conducted, involving 1,602 laryngectomy patients, and responses

were obtained from 799 (response rate: 49.9%). Statistical and content analyses were performed.

[Results] The difficulties faced by these patients in daily life after discharge were explained by the

follow-ing 3 factors and 15 subfactors: [Factor I: permanent tracheostomy and breathfollow-ing]: 2) difficulty carryfollow-ing heavy things, 8) frequent water in the tracheostomy when taking a bath or shower, 11) frequent foreign objects in the tracheostomy, 12) dry airways, 13) frequent bleeding from the tracheostomy, 14) frequent phlegm, and 15) skin erosion around the tracheostomy, [Factor II: meals and excretion]: 3) difficulty straining when excret-ing, 4) difficulty blowing on hot foods to cool them, 5) difficulty eating noodles and soups, 6) frequent belching and flatulence, 7) frequent choking on solid foods, and 10) hyposmia; and [Factor III: physical activities] 1) dif-ficulty running with maximal effort and 9) limitations in physical activities, such as swimming. The degrees of difficulties represented by Subfactors 3)-5), 8), and 14) decreased with time after surgery. To resolve these dif-ficulties, approaches to manage aphonia, the permanent tracheostomy, phlegm, meals, constipation, and over-all daily life were suggested.

[Discussion] The solutions to 1) 9) and 10) were not suggested. For a problem to continue irrespective of

passed years after an operation, establishment of educational method is needed.

Key words: total laryngectomy, hypopharyngolaryngo-cervical esophagectomy, difficulties in daily life, solutions,

nursing

Address reprint requests to:

Naomi Watanabe. Aichi Prefectural University School of Nursing & Health Tohgoku, Kamishidami, Moriyama-ku, Nagoya-shi, Aichi, 463─8502, JAPAN Phone: 052─778─7120/Fax: 052─736─1415/E─mail: [email protected]

表 2  術後経過年数の 4 期別における生活上の問題の程度の変化 n=792 生活上の問題 術後経過年数 問題はないまったく 1 問題はないあまり2 問題があるやや3 問題がある非常に4 合計(%) p 値 注) 中央値 (全体の中 n  (%) n  (%) n  (%) n  (%) n  (%) 央値) ①全力で走ることが難しい(疾走) 1 年未満1年以上 3 年未満3年以上5年未満 5 年以上  9  (9.7) 6 (3.8) 7 (5.8) 25 (6.1)  26  (28.0) 34 (2

参照

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