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社会認識形成過程における関心・意欲の関与およびその評価

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(1)研究題目. 社会認識形成過程における 関心・意欲の関与およびその評価. 兵庫教育大学 大学院 学校教育研究科. 教科・領域教育専攻 社会系コース. M93 5 13B. 久 保 雅 英. 1994年12月20日 主任指導教官. 岩 田 一 彦.

(2)

(3) 目. 次. 序……・…………・・………・……・…・…・……………・・…………・…・…・……1. 第1章 関心・意欲・態度の重視と社会科教育 ………………………… 3 第1節新しい学力観と関心・意欲・態度…・…………・…・………… 3 (1)関心・意欲・態度重視の背景 …・…………・…・…………・・……・ 3. (2)関心・意欲・態度の育成を重視した学習の課題 ……………… 6 第2節 関心・意欲・態度の性格 ………………・・………・………・・…・ 8. (1)関心・意欲・態度の定義 ・………………………・………・……… 8 ② 関心・意欲・態度の関連 ・………………・・…・…………・…・…… 8. ㈲子どもと関心・意欲・態度………………・………………・・……10 第3節 社会科で育てる関心・意欲・態度 ……………・…∴・…・…・…12 (1)関心・意欲・態度にかかわる主張 ……………・・…・……………12 (2>2つの態度形成 ・…一・…・・……・……………・・…・・……・…・……14. ㈲社会科としての関心・意欲・態度 …・…・…………・……………15. 第2章 社会認識形成過程における関心・意欲 …一…・………・………17 第1節 評価の観点としての関心・意欲 ……………・・…・……………17 (1)関心・意欲の評価の問題点 ・…・…・…・・……・……………・…・・…17. (2)社会科教育での評価のあり方 ・…………・……・…・…………・…・18 ’(3)関心・意欲の兆候 ………・………・・………………・・…………・…19. 第2節 社会認識形成と知識の構造 ・………………………・…………・22 (1)社会認識形成 ・……………・…・……・……・……・………・………・・22. (2)知識の構造と問いの構造 …・…・…………・…・…・…………・……23. 第3節 知識の構造を指標とした関心・意欲の位置づけ ……………26 (1)関心の育ち …・…………・…・………・……・…・……・…・………・…26. ②意欲の育ち ………・……・…・・………・………・…・…………・…・…27.

(4) 第3章 関心・意欲の評価事例の分析 …………………………・……・・…32 第1節 研究の仮説 …………・……・・……………・……………………・・32 第2節 評価実践事例の分析 ………・・……・………・…・……………・…32 (1)分析の視点 ……・……・……・・…一…・……・………・…………・…32. (2)分析の方法 ………………………………・…・・…………・・……・…33. 第3節 実践事例分析の結果と考察 ……………・…・・………・・………・36. (1)視点1の分析結果と考察 ………………………・……・……・……36 (2)視点2の分析結果と考察 …・…………・…・・……………・…・……50. ㈲ 実践事例の分析のまとめ ………………・・…………………・……54. 第4章 関心・意欲を育てる社会科学習 ……・…………・……………・…57 第1節 社会科授業設計と評価の視点 ………・………・………・………57 (1)授業内容の設計視点 ・・………………・…・………・……・…………57 (2)授業方法の設計視点 …・…・…………・……………・・…・…・・…・…58. (3)学習評価の視点 ………・……・…・………・…・……・………………58. 第2飾 関心・意欲を育てる社会科授業モデル ………・・………・……60 (1)学習指導要領の内容構成 ………………………………・・……・…60 (2)題材について …………・…・…・…………・・……・・………………・・61. (3)開発教材の構成視点 ・・………………・……………………………66 (4)知識の構造 ……………の…・・……………………………・・……・…68 (5)問いの構造 ・………………・・………………・…………・………・…73 (6)授業モデル ・…・……………・……………・・…・……………………76 (7)評価モデル …・・……………・・……・・…・…・…・…………・…・…・…97. 第3節 評価モデルのシミュレーション ……一……・…・…………104 (1)関心の評価 …・………・・…・………・……・……・……・……・……104 (2)意欲の評価 ・…………・……・…・……・…・…・…………・………・111. 結………………一・……一…………一……………・………・……・……114.

(5) 序 本章では、研究の視点・研究の目的・研究の方法を示し、研究の概要を明らか にする。. 1.研究の視点 現在、自ら学ぶ意欲をもち、社会の変化に主体的に対応できる児童の育成がも とめられている。いわゆる「新しい学力観」においては、関心や意欲、態度、思 考力や判断力などの資質や能力が、子ども一人一人のさまざまな行動をよりょく. するために働き続ける重要なものであるとされている。そのため、学習指導と評 価において、これらの育成を特に重視することがもとめられている。 関心や意欲、態度の重視は、これまでもその必要性が強調されてきた。そして、 今回の指導要録における観点別評価項目のトップに、関心・意欲・態度がおかれ、. その重要性は増している。従前の学習指導の評価は、教育する側にたって、指導 した内容や技能がどれだけ習得できたかを把握することが中心であった。. 「新しい学力観」がもとめる評価とは、子ども一人一人のよさや可能性を見い だし、さらに伸ばし、自己実現をはかるように支援していくことであるとされる。. それでは、関心・意欲・態度をどのようにとらえていけばよいのだろうか。社 会科教育においては、関心・意欲・態度はどのような位置づけをすることができ. るのだろうか。関心・意欲・態度を評価することは、なにをどのように評価をす ればよいのか明らかになっているとはいえない。その問題を克服するためには、. 関心・意欲(態度)を情意的側面としてだけとらえ、評価の対象とするのではな く、評価が具体的になっていくために、認識内容との関連でとらえていくことが 必要であち。関心・意欲を、社会認識形成過程での知識の構造のなかでとらえる ことに着目した。. そこで、本研究では、社会科教育で関心・意欲を評価するために、評価基準の 設定のための指標として知識の構造を位’置づけ、その有効性について論じていく。. 一一. P一.

(6) 2.研究の目的 本研究の目的は、以下の通りである。. (1)社会認識形成過程における関心・意欲の関与のすがたを明らかにし評価の. 対象とするときに、知識の構造を指標とすることが有効であることを明らか にする。. (2)社会科教育において、知識の構造を明確にした授業設計をおこない、その なかで関心・意欲の育ちをとらえる評価のありかたについて提案する。. 3.研究の方法 上記の研究目的を達成するために、以下の方法で研究を進める。 (1)社会科教育における関心・意欲に関する研究を整理し、課題を明らかにす る。. (2}社会認識形成過程において、関心・意欲と認識内容との関連を明らかにし、. 関心・意欲の指標として知識の構造が有効であることを示す。 (3>社会認識形成過程における関心・意欲の指標として知識の構造に着目した 分析フレームワークを設定し、これまでの実践事例を分析・考察する。 (4>以上の研究成果を基にして、関心・意欲を育成する授業モデルを提示する。. 一2一.

(7) 第1章 関心・意欲・態度の重視と 社会科教育. 序において、研究の視点・研究の目的・研究の方法を示し、本研究の概要を明 らかにした。. 本章では、まず、関心・意欲・態度と新しい学力観の関連を明らかにする。そ して、関心・意欲・態度に対する主張を整理する。. 第1節新しい学力観と関心・意欲・態度 本節では、新しい学力観のなかで関心・意欲・態度はどのように重視されてい るのかを明らかにするとともに、批判の論点から関心・意欲・態度の評価につい ての方向を探っていくことにする。 (1)関心・意欲・態度重視の背景 いわゆる新しい学力観の基本的な骨格を決めた教育課程審議会答申(1g87.12). のなかで、評価にかかわって、つぎのようにのべられている。. 学校における評価については、教育課程の基準の改善のねらいを達成するた め、児童生徒の自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの能力の育成に資 するよう一層の工夫改善が必要である。. そのためには、日常の学習指導の過程における評価については、知識理解面 の評価に偏ることなく、児童生徒の興味・関心等の側面を一層重視し、学習意 欲の向上に役立つようにするとともに、これを指導方法の改善に生かすように する必要がある。. また、指導要録における各教科の評価については、現行では原則として共通 の考え方及び方法により行われているが、教育課程の基準の改善のねらいを達 成することや各教科のねらいがより一層生かされるようにする観点から、教科 の特性に応じた評価方法等を取り入れるなどの改善を行う必要がある。 、関心・意欲・態度という情意面の評価観点が、指導要録の観点のトップに据え. 一3一.

(8) られたのぱ、この答申のなかにあるように、知識理解面の評価にかたよる傾向を 是正し、児童生徒の興味・関心等の側面を一層重視するためのひとつの方策であっ た。. 関心・意欲・態度等の情意面が重視されるこの新しい学力観が提示されてきた 背景に、有園格氏はつぎの5点をあげている。. ①国際化や情報化の進展にともなう社会の変化や生涯学習社会への移行下 における学校教育の課題. ②児童生徒の体験不足や無気力・無関心等の学ぶ意欲のなさ、人間関係の 希薄などの心身発達の課題への対応. ③知識中心の画一的教育がもたらした学校教育の改革や個性を生かす教育 への対応. ④最近の認知心理学や大脳生理学の進歩が投げかけている効力感や知的好 奇心などの情意と認知の関係をとらえた知力の形成. ⑤高等教育に学ぶ学生などの想像力、主体的学習能力の諸問題(①p.76) これらは、従来の学力観にとらわれず、今日の変化する社会への対応や学問研 究の発達、児童生徒の心身の発達の諸問題をとらえたところがら提示されてきた ところに特徴がある。このような流れの中にあって、関心・意欲・態度の重視は、. 従来の教師が主導してきた知識注入型の教育から、子どもの育成を中心にすえた 教育への転換の代表として示されてきたのである。つまり、受け,身的な教育から 子どもの主体的な学習への転換のためのひとつの方向としての意味をもっている。 北俊夫氏は、新しい学力観についてつぎのように述べている。. これまでの学校教育においては、知識・理解的な事項を覚えたり、技能的な ことが上手にできるようになったりすることを中心に据えた教育活動が行われ てきた。しかし、情報機器の発達によるさまざな情報の伝達や活用一つをとつ てみても、これまでのような知識や技能の習得を中心とした教育だけでは、こ れからの社会を生きていく子どもを育てることはできない。子ども一人一人が これからの社会において、主体的、創造的に生きていくために必要な資質や能 力は、何か。それは、将来にわたって学び続ける意欲と態度と能力である。学 習に取り組む意欲、学習についての能力、そして、生き方の問題である。これ らはいわれるところの「自己教育力」である。 (②p.10). 激しく変化する社会に対応するための力として、「自己教育力」が重要視され ている。この「自己教育力」の最も重要な要素として学習意欲があげられ、評価 の観点として関心・意欲・態度が重要視されることになった。. このようななかで、批判する立場の論評もある。有園氏は、「関心・意欲・態. 一4一.

(9) 度」の重視をめぐる批判としてつぎのようにのべている。 また、「関心・意欲・態度」の重視をめぐる批判の焦点には①「関心・意ax ・. 態度」の重視は新国家主義のイデオロギーを背景に現代の産業社会に奉仕する 人間の育成をねらったものであるというイデオロギー批判②「関心・意欲・態 度」の重視は「知識・理解」の知的学習を軽視する従来の学習指導要領の態度 主義をより強化した現れであるとの批判③客観的科学的評価が困難であるとい われる「関心・意欲・態度」の重視は従来の意欲・態度を含めた総体としての 学力論を分断し、個人差への対応という名目のもとの教育の多様化をすすめ、. 選別・差別教育を推進することになる。④「関心・意欲・態度」の評価規準に よる評価は「知育」 「徳育」を二分する教育をおしすすめることになる。 (@,pp.76−78). このなかで、①のイデオロギー的な批判はべっとして、知識面と情意面の分断 が批判の対象となっている。有園氏もあげている駒林邦男氏の情意面の重視につ いての批判をみていこう。.. 事実認識より、心情や態度を重視することは「知育と徳育の二律」化・「認 識と感情の引き離し」の学力観である。「関心・意欲・態度」を「知識・理解」. と対置し、前者を重視することは、「学力の遅れがちな子ども」の学力問題を 放置し、学力の階層化に拍車をかけることになる。 (④,pユ0). ここでは、情意面を認識面と切り放して論じることに焦点があてられ、その情 意面の重視が、認識面の育成を軽視する結果となることを批判している。そして、. 個人差への対応という名目のもとで教育の多様化をはかり、選別・差別教育を推 進することになるとの有園氏のまとめた②に対応する批判である。. また、関心・態度に意欲を加えたことに対する批判がある。中村行秀氏は意欲 を、つぎのように規定している。. 意欲は、意志活動への積極的構えであり、能動的意志活動であるから、意志 にもま.して「深い」認識と判断力と切り離して論じることはできない。 (@,p.15). そして、認識と感情、意欲の関係をつぎのように整理している。. 意欲は、認識と感情の両モメントの相互作用によって形成・発展させられる 意識である。(⑥,P.18). このように規定しながら、文部省の提示した評価観点について、つぎのように 問題点を指摘してる。. 人間の精神活動を、認知(知)、感情(情)、意志(意)に三分し、感情的・. 意志的教育の重要性を一面的に強調するという図式である。このような意識の. 一5一一.

(10) 三分説は、いわば常識として定着してきた見解ではあるが、多分に誤解に基づ く主張なのである。その誤解とは、認識・感情と意志というカテゴリーが異な るものを同じレベルで論じているということだ。(⑦,p.18). 意欲というカテゴリーが違うものを加えたことに対して、批判をしているので ある。これらの主張は、観点別評価の項目において、認識と情意を切り離すこと に対する批判である。学力は認識・感情の総体であり、そのなかの感情(情意的 側面)をことさら重視することは、認識(すなわち知識の獲得)を軽視し、いわ ゆる選別・差別教育につながるとの批判である。. これらの批判のなかからは、重視された観点として関心・意欲・態度などの情 意面が、一人歩きをするのではなく、他の観点と密接に関連させて評価していく ことの重要性を指摘している。観点のなかに、ちがうカテゴリーが混在している という中村氏の指摘は、逆に認識と感情をつなぐ位置に関心・意欲・態度という. 観点が位置することを示唆しているともいえる。つまり、関心・態度は意欲が加 えられたことによってさらに認識と感情の関連が意識されることになるというこ とを示唆しているものである。. (2)関心・意欲・態度の育成を重視した学習の課題. 関心・意欲・態度は、自己教育力の重要な側面である。しかし、評価について いえばつぎのような問題点をかかえている。. 情意的側面としての関心・意欲・態度は評価が困難である。その原因は、評価 の基準となる項目の設定が、知識・理解のように明確に規定することができない ことにある。そのため、主観的な評価にならざるをえない。関心・意欲・態度を. 子どもの内的・情意的側面として限定してとらえることによって、この評価の基 準の作成があいまいなものになる。そのような状況のなかで、評価できないもの を評価観点に位置づけることに異をとなえる主張もでてくる。. だが、評価できないものは位置づけないということと、自己教育力の重要な要 素であるということを両てんびんにかける次元のものでもない。現代の社会の要 請としての新しい学力観であり、子どもに「自己教育力」を育成することがもと められている。. 有園格氏はいう。. 関心・意欲・態度に主観が入っても、それが「生きるカ」としての知力の形 成を支えるならば、「知識・理解」との関係で具体的な「関心・意欲・態度」 に関する評価内容を明らかにしていく努力も必要になる。(⑧,p.80). 関心・意欲・態度は、子どもの情意的な状態を示す側面ではある。しかし、認. 一6一.

(11) 識内容とは不即不離の関係である。そのために、関心・意欲・態度を個別にとり あげ評価するという方向ではなく、知識面での関連からとらえる方向がそこから みえてくる。関心・意欲・態度についての性格を明らかにするとともに、評価に 位置づけるための方略を探っていくことが必要になってくる。. 〈引用文献ならびに参考文献〉 ① 有園格,新学力観をめぐる争点の整理,「現代教育科学」446,明治図書,. 1994年 ②北俊夫,「関心・意欲・態度」評価をめぐる疑問,r授業研究」401,明治図書,. 1993年 ③ 有園格,新学力観をめぐる争点の整理,r現代教育科学」446,明治図書, 1994年・. ④駒林邦男,学習指導要領の学力観r教育」553,国土社,1992年 ⑤ 中村行秀,意欲について, 「教育」566, 国土社,1993年 ⑥ 同上. ⑦ 同上 ⑧ 有園格,新学力観をめぐる争点の整理,「現代教育科学」446,明治図書,. 1994年. 一7一.

(12) 第2節 関心・意欲・態度の性格 本節では関心・意欲・態度とは、どのようなものであるのかについて先行研究 を整理し、その基本的な性格を明らかにしていく。 (1>関心・意欲・態度の定義. 関心・意欲・態度はどのような定義がなされているのであろうか。学習心理学 のなかでは、関心についてはつぎのように定義されている。. 「興味」ということばと同義的にあっかわれている。特定の事物、活動、も しくは、経験に志向された行動傾向。ある対象に対して個人が積極的・選択的 な構えをもっとき、それにともなう情緒的緊張。(①,p。204). それでは、関心と興味ははたして同じものなのであろうか。関心と興味の違い は、つぎのように規定できる。. 関心と興味は、ほとんど同じ概念で、英語ではどちらも“interest”で示さ. れる。どちらも、なんらかの内容や活動や事物に対して反応し、注意し、参与 し、傾倒する精神状態であるが、知的というよりもむしろ感情的・意志的な構 え(set)の状態である。態度の一部とみてもよい。それは、人間のすべての 活動の起点であり、それを支えているものである。 (略一久保)その心理学的 構造からはほとんど同じものであるが、若干のニュアンスの違いは認められる。 (略)つまり、関心というよりも興味の方が好き・嫌いという感情的要素が強く 関与している。. (②,pp.276.277). つまり、関心の方が興味に比べ、感情的要素に関与されない分、学習状況には 適切であると考えられる。. それでは、意欲はどのように規定されているのだろうか。 ある価値判断や意志の働きによって、目標行動を起こそうとする心の状態。. 意欲は活動としての行動の触発に対して、エネルギー源となり、行動に持続性 や方向性を与えていく。欲求(要求)、動因(動機)などの用語が使われてい る。 (③,P.18). そして、態度についてはつぎのように定義されている。 個人のまわりの事物・出来事に対する、知的・情動的作用の永続的な構え、 あるいは、準備状態。 (④,P.520). 観点別評価項目などには、関心・意欲・態度とひとつにまとめられているが、 これら3つは、上記のような違いが見いだせるのである。 (2)関心・意欲・態度の関連. 一8一.

(13) これらの3つの関連を、北尾倫彦氏は「情意的な心的過程の階層性」としてつ ぎのように示している。. 〈情意的な心的過程の段階〉. ①外界からの刺激を受容し、それに注意を向けるという段階 いろいろな事実・事象に触れ、それらに興味を感じたり、感動する段階 →興味・関心 (単に気づく → 他と区別して注意を向ける → 感動し、自ら求める). ②一定の事実・事象に積極的に近づこうとする段階 何かを求める欲求や目標達成に関わる感情が主として働く心的過程→意欲. ③第1や第2の段階を何回か経験した結果、一定の事実・事象に対して価 値付けが行われ、肯定・否定・好嫌などの一定の傾向ができあがる。 →態度. ④特定の事実・事象ではなく広い領域にわたる価値の組織化が行われ、ど の場面で自己を生かせばよいかという個性の自覚が進む段階 (@,pp .187’ 188). そして、これらの階層性が、評価や指導過程の視点として有効に働くことを、 つぎのように述べている。. 上述の情意領域に関する階層的な把握は評価の観点を決めるための参考にな るばかりでなく学習指導過程を明確にする視点ともなる。(略一久保)すなわ ち、学習の入門期にあっては、興味や関心や意欲という情意目標が主となるが、. 発展期に入れば、態度形成や個性化をねらいとする指導に重点がかかる。この ように、情意といっても、その中のどの段階に重点が置かれるかによって評価 の観点が異なるのである。(⑥,p.188). 関心・意欲・態度は、関心→意欲そして態度へと段階をおっていくものである ととらえられている。それゆえに、学習段階によって、「関心か、意欲か、態度 か」どれが評価の対象となるかが決定されるというものである。’ここで留意した. いのは乱態度形成は「関心→意欲」のようにひとつの流れのなかであるのではな く、複数の「関心→意欲」の段階を経た後に形成されるものであるとされている. 点である。したがって、すべての学習の終末段階で必ず態度形成に結びつくとは かぎらないのである。. このように、関心・意欲・態度が連続的なものであるというとらえかたは、 「関心→意欲→態度」の流れとしてとらえる。そのために、学習のなかでの関心. や意欲の変容という考え方とは少し趣を異にする。関心は意欲のための前段階で あり、態度はそれらの帰着点であるという一面的なみかたについてはもう少し検:. 一一. X一.

(14) 討をくわえなければならない。 (3)子どもと関心・意欲・態度. 授業のなかで、子どもたちが主体的に学習を進めていくことを願い、情的側面 の育成を重視した学習を展開していくことになる。このような授業においてつぎ のような問題点を指摘できる。. 久田敏彦氏は、子どもの興味を重要視する授業の問題点として、次のように述 べている。. (子どもの興味を重要視する授業は一久保)学校が子どもの生活から遠ざか り、子どもの興味を無視し、その結果、子どもに暗記中心主義の詰め込みをお こなおうとすることに対する鋭い批判を内に含み込んで主張される。しかし、. そのことから、逆に、「興味」は子どもの本能から自発的に生ずる生得的特性 とみなされ、その必然的帰結として、しばしば授業が子どもの自発的興味に従 属することがまねかれる。(⑦,P.83). 個々でいう子どもの自発的興味に従属する授業とは、拡散的な子どもの興味に 学習内容が規定されていくものである。子どもの主体的な活動と興味に従属した 授業の混同がこれらの授業の原因となると考えられる。. 活動すれば授業は成功である。楽しく学習にとりくめば、関心・意欲・態度が 育つという考えが、新しい学力観が世間に流布するなかで支配的である。しかし、 基礎的「・基本的な学習内容が保障されていない授業への危険性を含んでいるとも. いえる。さらに久田氏は興味についてつぎのようにのべている。. 興味とは対象的世界と主体との相互作用の所産である。つまり、活動の過程 において形成され、定着されるものなのである。それは、その過程のなかで形 成される人格の志向性のひとつである。(⑧,p.83). そのために、子どもの興味に従属する授業というのは、子どもの対象的世界を 広げることがむずかしくなるのである。その結果、学習内容は低次にとどまり、 「はいまわる」ことになる。興味とは対象的世界と主体との相互作用の所産であ. るということは、興味を一時的なものとしてとらえるのではなく、変容するもの であるということができる。さらに、久田氏は、学習において子どもに形成させ るべきものとして、興味とは区別して「認識興味」をあげ、つぎのように規定し ている。. 認識する主体の認識過程に限定してその対象とするという点で一般の興味と は区別されるのである。認識興味は、人類が歴史発展のなかでその本質能力を 対象化してきた知的・文化的財産、それを認識し習得する主体の行為、総じて いえば、認識の内容と行為とをその対象とするのである。(⑧,p.83). 一10一.

(15) 学習の場面におきかえてみると、科学的な成果を軸とした認識内容とその方法 を対象にした興味であるといえる。情動的、意志的そして知的な過程の相互に分 離できないものとして認識興味が位置づけられている。この認識興味も学習を通 して形成されるものである。この久田氏のいう認識興味から学ぶべきことは情動 と認識との関係をみていくときの視点である。学習といういわゆる認識活動にお. いては、関心・意欲・態度と知識・理解とは切り離して考えるのではなく、互い に関連づけてとらえ、その変容をみとることが必要なのである。 〈引用文献ならびに参考文献〉 ① 依田新監修, 「新教育心理学辞典」,金子書房,1979年. ②橋本重治,「新教育評価法総説」,金子書房,1976年 ③ 天城勲, 「現代教育用語辞典」,第一法規,1973年. ④青木一,「現代教育学辞典」,労働旬報社,1988年 ⑤北尾倫彦,「学習指導の心理学」,有斐閣,1991年 ⑥. 同上. ⑦久田敏彦,認識興味の形成とその教授学的意義教育学研究紀要第24巻 中国四国教育学会,1978年 ⑧ 吉本均編, 「講座授業の成立の技術と思想4教授行為と能動的学習の成立」. 明治図書,1984年. 一11一一.

(16) 第3節 社会科で育てる関心・意欲・態度 本節では、関心・意欲・態度がどのように社会科教育で位置づけられている のかを代表的な主張をもとに整理する。 (1)関心・意欲・態度にかかわる主張. 新しい学力観における、関心・意欲・態度については、つぎのように述べられ ている。. 中野重人氏は、関心・意欲・態度について、前回の教育課程において提示され た「関心・態度」との関連からつぎのように述べている。. では、観点のトップに躍り出た関心・意欲・態度とは何か。その趣旨は次の とおりである。小学校にあっては、「社会事象に関心をもち、それを意欲的に 調べることを通して、社会の一員として自覚をもって責任を果たそうとする」 であり(略一久保) 「関心・意欲・態度」は、従前の「関心・態度」と同じで ある。 社会科における情意的な側面の評価観点である。(①,p.88). そして、関心・意欲・態度をく図1−1>のように示している。 関心・態度を、学習意欲と社会的態度の. 公民的資質. 2つの側面からとらえようとしている。 関心・態度(1)は学習意欲、関心・態度(2). は社会的態度と規定している。(1×2)につい. て次のような説明がなされている。. 関心・. 態度②. ij・. 前者(関心・態度(1))は、社会科の学. 習対象である社会的事象に興味・関心を もち、それを意欲的に調べようとするこ と、すなわち、社会科学習に対する関心・ 態度という学習意欲・学習態度にかかわ る側面である。後者(関心・態度②)は、. 〆」、隔. E /一斗_、. ノ磐購判断 /愈諺い\、 知識・理解. 観察・資料活用. 個人の感情や価値観、また、帰属してい る集団のもつ雰囲気や価値基準などの影. 〈図1−1>. 響をうける社会的態度・社会的行動にかかわる側面である。. (@,p.58). (略一久保)社会. 科のねらいから考えるとき、関心・態度のポイントは、前者よりも、後者にあ るということができる。(③,pp.56・57). 一一. @12一.

(17) 北俊夫氏は、関心と意欲、態度の関係を連続的なものとしてとらえつぎのよう にのべている。. 子どもがもった関心は、意欲につながり、意欲は態度に発展していくものと して、一つのつながりをもった連続的なものとしてとらえることが大切である。 (@,p.12). このように連続したものであるととらえながらも、それが授業の流れのなかや 単元の流れのなかで単線的に連続するのではないことを、つぎのようにのべてい る。. 社会的事象に関心をもつことも、意欲的に調べることも、単に学習のとっか かりだけではなく、学習の全過程をを通して大切に指導し評価していかなけれ ばならないことである。(⑤,p.12). 豊富は、指導要録の小学校社会科「社会的事象への関心・意欲・態度」の観点 の趣旨についてつぎのように整理している。. 社会的事象に関心をもち、それを意欲的に調べることを通して、社会の一員と (関心). (意欲). して自覚をもって責任を果たそうとする。 (態度). 北氏も、社会的態度形成を、関心・意欲・態度のユ側面としてとらえているの である。. このような、態度形成をめざす社会科に対して、異をとなえる主張もある。. 五分孝治氏は、社会科授業の構成原理を「科学的知識を科学的探求の論理にも とづいて習得させる」とし、態度についてはつぎのように述べている。. しかし、だからといって、社会科の任務に態度形成を加え、社会科の教育内 容を規定する目標に「態度を育てる」ことを明記することには重大な問題があ るとしなければならない。社会科の目標に態度目標が設定されると、それが何 をどう教えるかを規定していくからである。(面一久保)態度目標が社会科の 目標、教育内容を規定する内容的目標に加えられるとき、授業構成は恣意的に なり教師の価値観・世界観、あるいは教室外の力によって権威づけられた価値 観・世界観の注入となっていくことになるか、あるいは前節の「子どもの直面 する具体的問題の解決としての授業」構成で考察したように、価値観・世界観 の注入を徹底して排除して授業が構成できなくなるかのいずれかになってゆか ざるをえない。社会科は理解させることで態度を形成するかもしれないが、態 度の形成を目標とすべきではない。(⑥,p.82). 一13一.

(18) 社会的な態度形成を目標とすべきでないとはいっているが、学習に対するかま えとしての態度は森分氏も否定しているわけではない。. 先に社会科の目標に、態度を含めるべきではないと述べたが、それは内容的 目標に関してのことであり、方法的目標についていえば、社会科で形成される べき態度があるといえよう。それは、社会的事象・出来事を科学的に説明でき るようになるために、身につけるべき態度である。 (⑦,pp.88・89). 岩田一彦氏は、関心・態度について、社会科学習を進めていく上での必要性を 次のように述べている。. 関心・態度は、社会科の学習を子どもが進めていく際には非常に重要な要因 となる。子どもが社会事象に無関心な場合には学習は成立しないし、社会事象 に関心をもち二二意識をもっていても、科学的に追求しようとする態度が育っ ていないと同じく社会科の学習は成立しない。(⑧,pp.83一一84). そして、関心・意欲・態度の問題の議論が、ともすると情意的側面であること が強調され、認識内容との関連が十分でないことをふまえ、つぎのように指摘し ている。. 関心・意欲・態度に重点を置く社会科が科学性を失ってしまうことがあって は問題である。基本的立場は、関心・意欲・態度の形成も、科学的認識内容と つながっていてはじめて可能であるという考えをとっている。すなわち、関心・ 意欲・態度は、認識内容との関係で育てていくものであるとの考え方である。. 豊かな認識内容に裏づけられた関心・意欲でない場合には、持続性の乏しい関 心・意欲になってしまうおそれがある。(⑨,p.161). ② 2つの態度形成 それぞれの主張を、ブルームの情意領域の目標に照らして整理してみよう。. 1.0. 受け入れ. 中野重人氏. 北俊夫氏. 学習、欲. 関心・意欲. 墨銀孝治氏. 岩田一彦氏 関心・意欲. 目標化を否定 2.0. 鵬. 3.0. 価値付け. 4.0. 組織化. 5.0. 個性化. 社会的態度. 社会的態度. 一14一一. 科学的探求. フ態度.

(19) 〈表1一一一 2>. 上記のように整理していくと、態度にかかわって、その立場が分かれているこ とがわかる。中野氏・北氏のいう態度のなかには、価値的なものが求められてい. る社会的な態度形成をふくんでいるということができる。それを方向として示す ことで、その価値は閉ざされている。. 本来、価値に関することがらは個人個人に開かれているづきである。その価値 は、規範的知識として豊富な知識のもとに形成されるべきものであり、社会科の 学習だけとりわけ情意的側面の評価のなかで論議されるものではない。. 情意的な側面を目標とする場合、関心・意欲にかかわるものは、岩田氏・北氏 は認識形成上その原動力として必要性を認めている。 (3)社会科としての関心・意欲・態度. 関心・意欲・態度は連続するものであるとする主張があるが、その性格は少し ずつ違いがみられる。この違いを目標を分析していくことによって明らかにして いく。. ①日常生活において、職業としての仕事に携わっている人々の仕事 (内 容 ) のようすに関心をもつことができる。 (目標行動). s 内容+目標行動……認識の方向を示す(関心にかかわる評価). ②宅配便のしくみやそこで働く人々の工夫や努力を意欲的に調べる。. (内容). (目標行動). e. 内容+目標行動(学習活動)……活動の姿を示す(意欲にかかわる. 評価). ③身のまわりに残る遺跡や文化財を大切にしょうとし■Vるか。. (内容) e. (目標行動). 目標行動(態度形成)…学習後の態度を示す (社会的な態度にかかわる評価). 一一. P5一一.

(20) ④これまでの学習をもとに、協力しあって、話し合いを進めようと (状態). (目標行動). する。. e 状態+目標行動…学習活動に対する態度 (学習の構え・姿勢にかかわる評価). 以上の結果から、つぎの2点を指摘することができる。 ○ 関心・意欲・態度は関連を指摘されながら別個のものとして位置づけら れている。. ○ 態度目標は、社会的な態度形成と学習活動における態度とにわけること ができる。. そして、さらに関心・意欲についてはつぎのような傾向が指摘できる。 ○ 関心は、認識内容に向けられている。. ○意欲は、認識活動での行動を問題にしている。 以上の結果から、社会科学習における関心・意欲・態度を考えたとき、次のよ うに限定した形でとらえていくことができる。. 関心. 社会認識内容に対する関心. 意欲. 認識活動における意欲. 態度. 学習態度、科学的探求の態度(社会的態度は別のものである。). 本論では、関心・意欲について焦点をあて論じることにする。 〈引用文献ならびに参考文献〉. ①大森照夫他, 「新訂社会科教育用語辞典』,教育出版,1993年 ② 同上. ③中野重人,「社会科評価の理論の方法」,明治図書,1985年 ④ 北俊夫,「関心・意欲・態度」評価をめぐる疑問,r授業研究』401,明治図書,. 1993年 ⑤ 同上. ⑥森分孝治,「社会科授業構成の理論と方法」,明治図書,1978年 ⑦ 同上. ⑧伊東亮三編著,「達成目標を明確にした社会科授業改造入門」,明治図書,. 1982年 ⑨ 岩田一彦, r小学校社会科の授業分析」,東京書i籍,1993年. 一16一一.

(21) 第2章 社会認識形成過程における 関心・意欲. 第1節 評価の観点としての関心・意欲 本節では、評価の観点としての関心・意欲にかかわる問題点を整理していく。 (1)関心・意欲の評価の問題点 関心・意欲の評価は、どのようにすれ,ばよいのか。この問題を解決するために、 まず、評価について明らかにしていくことにする。. 評価については、相対評価が過剰な競争を教育の中にもたらした反省から、子 どもひとりひとりを見つめて評価をしていこうとする考え方が一般的になってき ている。相対評価に対して絶対評価、さらに完全習得学習の理念に基づく到達度 評価、さらに達成度評価とさまざまな立場で評価が論じられている。絶対評価と 到達度評価はどのような違いがあるのだろうか。橋本重治氏はつぎのように定義 しているρ. 絶対評価は一般的・抽象的な評価の分類概念にとどまっているのに対し、到 三度評価は教育目標の習得や達成の有無や度合いを明らかにするなどの方法概 念を含んでいる。(①,p.14). 到達度評価は、教育目標の習得や達成をめざし、評価していくものであるとい える。ここで問題になるのは、どのような目標を設定するのかということである。 目標については、到達目標、向上目標、方向目標、達成目標などがある。これ らの関係を、社会科学習において、伊東亮三氏はつぎのように整理している。. 社会科で、結果を明晰に測定できる知識面だけの到達目標のみを重視するな らば、暗記物社会科に堕してしまうだろう。したがって、到達目標、向上目標、 方向目標を含めた、情意の概念として達成目標という用語を使用することが、 社会科の本質から考えて妥当であると:われわれは考える。 (②,p.28). 社会科学習では、達成目標を定め、それによって評価を行っていくということ が必要である。この達成目標でどのように評価をすすめていけばよいのだろうか。 評価のものさしというべきものを定める必要がある。これらは、クライテリオン. とスタンダードとよばれ区別されている。この2つのものさしについて、つぎの ように定義されている。. クライテリオンは、質的・絶対的な行動(目標)領域そのものであり、質的. 一17一.

(22) 基準である。こうしたクライテリオンに従って到達度評価をする段階には量的 尺度すなわちスタンダードを決定しなければならない。(③,p.21). 関心・意欲・態度などの情意的側面とされているもののスタンダードはどのよ うに決定していけばよいのだろうか。知識・理解のように明確に規定できるもの ではない。関心・意欲・態度を情意的側面としてとらえたとき、明確な到達目標 が設定できず、単に方向を示す方向目標の設定になっている。その方向目標から おろされたクライテリオンも評価の実際には十分機能しない。それゆえ、明確な スタンダードを設定することができず評価が主観的流動的なものになっている。 現在の、関心・意欲・態度をとりまく問題はこの基準(スタンダード)の設定 が大きなかぎを握っているといえる。. ②社会科教育での評価のあり方 岩田氏は関心・態度の評価がむずかしい原因をつぎのようにのべている。 関心・態度の評価については、未だ研究成果が十分なものとなりえていない。 それは、評価規準の設定の困難さ、各個人の価値観の多様性を認める必要性、 各人の中での関心・態度的側面の流動性などが原因として考えられる。 (@,p.84). 評価規準を設定することの困難さは、学習の場においての評価であるにもかか わらず、全人格的な評価を行おうとするところに原因する。このような評価に対 する姿勢は、つぎのことばに代表される。. 子どもの内面や心の奥を読みとることは、子どもの行動や発言など表面に出 される現象や結果だけで判断したりきめつけたりするのではなく、その背景や 原因を正しくとらえ、それぞれの子どもの立場に立って支援的、受容的にかか わることである。(⑤,P25). 子どもの内面や心の奥を読みとるには、子どもが表出してくる行動や発言だけ で判断をしてはいけないといっている。この姿勢が、関心・意欲・態度の評価を とらえどころのないものにしてしまっている原因である。子どもの内面を理解す るための姿勢は、この記述の理念のとおりである。しかし、見えない子どもの内 面をまるごととらえようとするあまり、評価が暗礁に乗り上げてしまうのである。 それでは、関心・意欲・態度の評価をする対象は、どのようなものがあるのだ ろうか。評価の基準作りと密接な関係にある目標設定にかかわって、佐伯肺氏は つぎのように述べている。. 命題を「教えたい」とした場合、そのめざしていることは何ですかと問われ れば、われわれは、生徒がそのことを「どこまでも深く“わかって”もらいた. 一18一.

(23) い」という以外にはない。教育の目標というのものは、もともとそのように 「開かれた」ものであるだけで、それ,を特定の行為や行動で定義してしまえる ものではない。 (略一久保)わたしはそれに対してこう答える。このようにし『. てひき出されたもの一それは当然「学習者の行動のことば」であらわされてい る一は、実は「目標」ではなく「わかっている」という一つのあらわれ「兆候」 (symptom)にすぎないのである、と。(⑥,p.14g). 評価のための基準づくりにおいて、関心・意欲の表出したものを「兆候」とし てとらえ、それを評価の対象とすることである。. 話は少し飛躍するが、病気を例にとると、その主張がより鮮明になる。 「かぜをひいた。」というのはどういう状態か。熱が出る、せきがでる、のど のいたみがあるなどさまざまな症状がでてくる。熱がでる、というのはかぜその ものではない。しかし、これらいくつかの症状をもとに、「かぜをひいた」とい うことになる。この判断は、専門家としての医者が診断を下す場合でもおなじで ある。. 子どもの内面をまるごどとらえようとすることは、関心・意欲の評価をあいま いな状態にとどめることになる。関心・意欲は直接評価できるのではなく、兆候 をとらえて内的状態を推測していくという考え方が必要なのである。これが、関 心である、これが意欲である、という考えではなく、子どもの表出をとらえるこ とが必要になってくる。. さて、子どもの表出は、感情の直接的な表現と間接的な「兆候」とにわけるこ とができる。さらに、 「兆候」は身体的表出 (表情など) ・行動的表出(積極的. な行動など)・認知的表出(問いなど)にわけて考えることができる。これらの 表出から兆候を見いだし内的な状態を推測することになる。 (3)関心・意欲の兆候 関心’・’意欲の評価をするうえで、どのような関心・意欲を対象とすることが適. 切なのか。岩田氏は、評価がむずかしいという問題について、関心・態度を限定 したかたちでとらえることが必要だとのべている。. このような困難性を、学習内容に対する関心・態度に限定して考えることに よって達成目標を明確化し、評価を可能とするように考えた。(⑦p84) 関心・態度を学習内容に限定したものにすることで、社会科としての関心・態 度の評価をすることができるのである。それでは、なにをその兆候としていく一こ とが適切なのであろうか。岩田氏はいう。. 関心については、学習対象に対してどのような問題意識をもちえたかを中心. 一19一.

(24) におき評価をする。教師が1時間あるいは1単元の始めに一定の情報提示をし、 子どもがその資料から判断し知識を得ていく。その後、ひとりひとりの子ども がどのような問題意識をもちえたかを、カードに記入させ、その問題意識を評 価していく。その他、その時間の主要な学習内容に対してどのような興味を示 すか等も関心の評価視点になりうる。. 態度については、問題意識としてもったものを、どのような態度で解決して いこうとしているかによって評価していく。たとえば、どのような方法で調べ ようとしているのか、問題点をどのように話し合いで明らかにしていこうとし ているか、問題の解決についての対立意見をどのように処理していこうとして いるか、等を視点として態度を評価していく。(⑧,p.84). 岩田氏は、関心の兆候として問題意識を位置づけている。そして、問題を解決 していく活動の中に表れる行動で態度をみている。関心・態度を学習内容と関連 させてとらえていこうとする試みは、有田和正氏ものべている。. よい教材が提示された場合、子どもは関心を示し、調べてみたいという意欲 を出し、それが態度に表れてくる。ふだんから子どもをよく観察している教師 は、この態度をみただけで関心・意欲・態度の度合いを評価できる。しかし、 子どもの態度にまどわされることが多い。いかにも意欲的に見えるのに、意味 のない行動をしたりするからである。そこで、関心・意欲・態度をどんな「は てな?」を子どもが把握したか、で評価する。「はてな?」を確かにもった子 どもは、資料活用をし、思考・判断して、その内容を「知識・理解」として身 につけていく。この「知識・理解」は、次の「関心・意欲・態度」をつくり出 していく原動力になる。したがって、知識・理解が確かにあれば「関心・意欲」 も強くなっていく。(⑨,pp,45−46). ここで、有田氏は、2つの重要な示唆を与えてくれる。一つは意欲的な行動に 意味のある行動とない行動があるという指摘である。意味のある行動とない行動 の違いは明確に示されてはいない。ここでは、有田氏の考えを推測することはや. め、2つの意欲的な行動があるということをおさえておくことにする。次に、関 心・意欲・態度は、どんな「はてな?」をもったのかというこどで評価をすると いうことである。これは、知識・理解との関連で関心・意欲・態度を評価しよう とする意図がうかがえる。それでは、有田氏の見解においては、どのような評価 になるのであろうか。. 「関心・意欲・態度」を学習過程で評価する第1段階は、子どもが「はてな?」. を把握したかどうかでみる。(略一久保)つまり、「はてな?」を確かに把握 しているということは、「関心・意欲・態度」が出てきていると評価してよい。. 一20一.

(25) (三一久保) 「資料活用」がうまくできているということは、強い「関心・意. 欲」に支えられていることだし、「知識・理解」がよければ、それだけ「関心・ 意欲」が強いと評価することもできるのである。(⑩,pp.47・48). 有田氏は、関心・意欲を直接評価するのではなく、「はてな?」をその兆候と してとらえて評価している。そして、その解決のための活動で、うまく資料活用 ができるとか、知識・理解がよいとかいうもので評価をしょうとしている。 有田氏は、 「はてな」を位置づけているが、それは問いにほかならない。その. 問いの質の違いを、有田氏は問題にしていない。それは、有田氏の授業展開が、 「なぜなんだろう」という問いをもたせる教材提示であり、働きかけであるから である。. そのために、「なぜなんだろう」という理由を求める問いが軽い疑問となるの である。有田氏の場合、兆候としての問いに着目しているが、具体的な評価の規 準については、あいまいなままであることが、指摘できる。 関心・意欲については、その兆候を問いに求めることができることが明らかに なった。いいかえれば、問いを関心・意欲の兆候としてとらえれば、認識内容と の関連でとらえることができるようになる。. 〈引用文献ならびに参考文献〉 ① 橋本重治, 「到達度評価の研究一その方法と技衛一』,図書文化,1981年 ② 伊東亮三, 「達成目標を明確にした社会科授業改造入F9」,明治図書,1g82年. ③橋本重治,「到達度評価の研究一その方法と技術一」,図書文化,1981年 ④伊東亮三編著,「達成目標を明確にした社会科授業改造入門』,明治図書,. 1982年 ⑤ 石田恒好他,「小学校社会 こうすればできる 観点別評価の手順一データ. の集φ方・判定の仕方一』,図書文化社,1994年. ⑥佐伯腓, r「学び」の構造」,東洋館出版,1975年 ⑦ 伊東亮三編著, 『達成目標を明確にした社会科授業改造入門」朋治図書,. 1982年 同上. ⑧. ⑨ 有田和正, 「「考える子ども」を育てる社会科の学習技能』,明治図書,. 1993年 春. 同上. 一21一.

(26) 第2節 社会認識形成と知識の構造 本節では、社会認識形成と知識の構造の関連を明らかにし、社会科教育におけ る関心・意欲の評価の指標として機能するための条件を提示する。 (1)社会認識形成. 社会認識とはどのようなものであろうか。伊東亮三氏はつぎのように述べてい る。. 今日では社会科を社会認識を育成する教科として捉える傾向は一般的となつ ている。しかしその社会認識という用語の内容は人により異なり、あいまいで ある。そのあいまいさが、社会科という教科の性格をわかりにくいものにして いる。(①,P.53). それでは、本論での社会認識について規定していくことにしたい。本来、人間 は自分なりに社会の事象に対する見方をもっている。これは、その人の経験(学 習をもふくむ)から導き出されたひとつの概念というべきものである。しかし、. 社会科のめざすものは、自分自身が納得するだけのものではなく、多くの人が正 しいと認めるべきものをもとめることである。そのことについて、森分孝治氏は つぎのように述べている。. 社会的事象をとらえる仕方には、それが「このわたくしにとってどんなふう であるか」という主体・自我を認識の軸とする方法と、「そもそもそれ自体が どんなふうになっているか」という客体・世界を認識の軸とする方法とがある。 (略一久保)社会科では後者の方法、すなわち客体・世界を軸とする方法による. とらえ方をすべきであり、主体・自我を軸とする認識の方法は、それへの途次 として位置づけられるべきである。(略)社会科では個人的な感情や情緒、倫 理的な判断を交えない、知的な理解をねらいとすべきであると。(②,p85) さらに、この知的な理解を、寺分氏はつぎのように述べている。. 社会科でねらいとされるべき理解を「説明」ということにしたい。とする と社会科は、社会生活を正しく説明できるようにさせることをねらいとすべ きである、ということになろう。 (③P.85). 社会科における事実認識にかかわる目標には、「正しく理解させる」の他 に、「科学的に認識させる」という言い方もみられ、しかもその場合、「認 識」はここで限定してきた理解のし方に近いものを意味するものとして用い られている。しかし、ここでは「認識」としないで「説明」としたい。(④ pp.85−86). 一一一. @2 2 一一.

(27) そして、さらに社会科のもとめるべき説明を、つぎのように述べている。 「事実と一致する」といういみでの「まちがっていない」’説明が社会科で求. められる説明である。それはまた、科学で求められている説明でもあるので、 それを科学的説明と呼ぶことにしたい。(⑤p.88). つまり、社会認識形成とは社会的事象・出来事を科学的に説明できるようにす ることである。それでは、科学とはどのようなものをさすのだろうか。. 岩田一彦氏は、科学にかかわってつぎのようにのべている。 科学の持っている納得のさせ方の基本は、原因と結果の関係の証明過程であ る。社会科が採用してきた人間的理解、あいまい性のある理解も、その基盤に はこの因果関係の証明がなければならない。(⑥p.31). この因果関係の証明過程が、社会認識の形成過程として位置づけることができ る。. (2)知識の構造と問いの構造. 科学的な社会認識とは、社会的事象・出来事を科学的に説明できるようにする ことであり、その説明とは因果関係の証明であった。それでは、これらの因果関 係を証明していくためには、知識を構造化してとらえることが必要である。 岩田氏は、知識をつぎのように分類し、構造化している。. 知識の分類. 叢:ll難. 事実関係的知識の分類 記述的知識 分析的知識 目的に関する分析的知識 手段・方法に関する分析的知識 構造に関する分析的知識 過程に関する分析的知識 相互関係に関する分析的知識 説明書知識. (@,p.44). このような知識の分類をもとに、前節における科学的な社会認識について整理 していくことにしたい。社会諸科学の成果としての知識は、概念的知識とよばれ る。そして、個々の社会事象の因果関係にかかわるものは説明的知識とよばれる。 その説明的知識をささえるものとして、分析的知識や記述的知識がある。 これらを、教材にあてはめてみるとつぎのように構造化される。. 一23一.

(28) 〈例〉. m m 分析的知識一一. 分析的知識. 下位の説明的知識一. ntHEEXJanee”. 記述的知識 記述的知識. 下位の分析的知識 (@,p.79). 子どもの学習過程は下位の知識から上位の説明的知識の習得へと向かうことに なる。記述的知識、分析的知識といった知識の習得をして、その材料を組み合わ せて説明的知識を習得することになる。. それでは、子どもが知識を習得するときの問いに着目していくことにしたい。 問いの種類によって、習得される知識の質が異なってくる。岩田氏は、問いと知 識の質の関係を次のように整理している。. 問いは大きく2つの種類に分けられる。一つは情報を求める問いであり、他 の一つは情報間の関係を求める問いである。前者は、観察・統計資料・文書資 料などから事実判断によって答えられる性質のものである。それに対して、後 者は、情報間の関係を推理という思考を働かせて答えなければならない性質の ものである。(⑨,P.38). そして、さらに岩田氏は一般に分類されている5WlHの問いとの関連をつぎ のように整理している。. When,Where,Who,Whatは、時、場所、人、個別的事象を 求める問いであり、情報を求める問いに属する。Howは、目的、手段・方法、 構造、過程、相互関係を求める問いである。この問いは、情報を求める問いと 情報間の関係を求める問いの中間に位置する。したがって、そのときの状況に よって、情報を求める問いに位置ついたり、情報間の関係を求める問いに位置. ついたりする性格をもっている。残されたWhyは、結果を示して原因を求め る問い、すなわち、因果関係を求める問いである。この問いが、情報間の関係 を求める問いに位置つく。. このような問いの質の違いは、当然のことながら、習得される知識の質の違 いを生み出している。情報を求める問いによって習得される内容は、社会事象 に対する記述的知識が中心となる。もう一方の、情報間の関係を求める問いに よって習得される内容は、法則性を組み込んだ説明的知識(概念的知識)が中. 一24一.

(29) 心になる。また、その中間に位置つく問いによって習得される内容は、社会事 象を分析して得られた分析的知識である。(⑩,pp.28−2g). このように、知識の質は問いと密接な関係にあることがわかる。そして、知識 の構造化をはかれば、問いの構造化がおのずとはかれるのである。. 学習内容を知識の構造として整理することができるならば、その問いが構造化 されることになる。この問いは質の違いによって、習得される知識の質の違いを もたらす。授業場面においては、子どもの発する問いを、その質によってみきわ め習得される知識の質を予測し、その思考活動を「事実判断」か「推理」かとい うことを明確にとらえることができるのである。つまり、知識の構造は、いわゆ る観点別評価項目のなかの「知識・理解」の内容を示すだけではなく、「思考・ 判断」の質の違いを示し、それにともなう「観察・表現・資料活用」などの技能 を規定していくことができる指標となるのである。. 〈引用文献ならびに参考文献〉. ①大森照夫他編,「新訂6社会科教育指導用語辞典」,教育出版,1993年 ②三分孝治,r社会科授業構成の理論と方法」,明治図書,1978年 ③. 同上. ④. 同上. ⑤. 同上. ⑥岩田一彦編著,「小学校社会科の授業設計」,東京書籍,1gg1年 ⑦ 同上 ⑧. 同上. ⑨. 同上. ⑩ 岩田一彦, 「小学校社会科の授業分析」,東京書籍,1993年. 一一. @25一.

(30) 第3節 知識の構造を指標とした関心・意欲の位置づけ 関心は問いとして表出し、意欲は認識活動の場面でその姿勢となって表出する. ことは第1節でのべた。これらを見取る指標として、知識の構造の機能について 論じていくことにする。 (1)関心の育ち. 関心は、問いというかたちで表出されるものを兆候としてとらえ、評価の対象 としていくことを、第1節でのべてきた。そして、その問いを構造化することに. ついて、第2節でのべてきた。ここでは、関心の育ちについて論じていくことに する。. 岩田氏は、問いについてつぎのようにのべている。. 子どもの学習過程は、問いの質を広げ、問いの質を深める過程である。社会 科授業は、生徒が自らのエネルギーで問いの幅を広げ、問いの質を深める方向 で構成されなければならない。(①p28) ここでいう幅を広げるというのは、同じようなレベルの質の問いを量的にもっ ことで、深めるというのは、概念的知識を頂点とする知識の構造においてより質 の高い知識を習得するための問いをもっということである。. 関心は、問いというかたちで表出し、それを兆候として評価の対象とすること をのべてきた。したがって、関心についても広がりと深まりとの2つの方向があ ることがわかる。. これを知識の構造にあてはめるとつぎのような構図ができる。. 分析的知識. て. 関. 下位の説明的知識一 記述的知識 記述的知識. 分謡曲一一. 心 の. 広. が 下位の分析的知識. り. <トー一一一一一一一一一一一関心の深まり. 〈図2−1>「関心の育ち」 このように見ていくと、関心は問いというかたちで表出するが、それを直接 とらえ評価の対象とするだけでなく、習得された知識の質からも関心をはかる ことが可能になってくる。つまり、子どもの認識内容との関係で見取ることが. 一一. Q6一.

(31) できるのである。 (2>意欲の育ち. 意欲の育ちとは、どのようなものであろうか。前章で社会科における意欲とは、. 認識活動において発揮されるものである、と規定した。社会科における認識活動 とは、知識を習得するための活動である。この知識の習得にあたり、思考活動が 位置尽くことになる。活動における思考の働きのちがいによって習得される知識 の質が異なってくる。岩田一彦氏は、思考と習得される知識の関係について次の ように述べている。. \. 知覚による判断によって獲得される知識は、記述的知識と分析的知識である。 また、推理という思考の働きによって獲得される知識は、説明的知識、概念的. 知識である。本稿では前者の思考の働きを「事実判断jと呼び、後者の働きを 「推理」と呼ぶ。(②,P54). つまり、どのような思考活動で意欲が発揮されるかということが問題になる。 意欲は、思考活動のなかで表出し、それを兆候として評価の対象とすることを のべてきた。したがって、意欲についても広がりと深まりとの2つの方向がある ことがわかる。. これを知識の構造にあてはめるとつぎのような構図ができる。. 記述的弓識. 意. 一説明的知識一. 概念的知識. 斗 理. 説明的知識. 推理. 欲. の 広 が り. 資料●事実. 事実判断. ェ析的知識. ェ析的知識 L述的知識. くトー意欲の深まり. 『〈図2−2>「意欲の育ち」. このように見ていくと、意欲は認識活動の姿勢というかたちで表出するが、そ れを直接とらえ評価の対象とするだけでなく、習得された知識の質からも関心を はかることが可能になってくる。つまり、関心と同じく子どもの認識内容との関 係で見取ることができる。. 意欲をもって行動しようとするとき、どのような要因がはたらいているのであ ろうか。まず、「動機づけ」の側面から、明らかにしていくことにしたい。辰野 千寿氏は学習意欲を高める方法において、つぎのような要素を示している。. 学習意欲を積極的にひき起こす動機づけの方法は、普通、内からの動機づけ. 一27一.

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