第4章 関心・意欲を育てる社会科学習
第1節 社会科授業設計と評価の視点
関心・意欲を社会認識受戒過程に位置づけ、評価していくためには、社会科授 業設計においては、その単元にでどのような社会認識を形成させるかを明確にし ていくことが大切である。その上で、子どもの関心・意欲の育成をはかっていか なければならない。以下、内容・方法・目標および学習評価の視点を明らかにし ていく。
(1)授業内容の設計視点
社会科授業設計において、どのような社会認識を形成するかを明確にすること は、その単元において子どもたちに習得させたい知識を明らかにすることである。
社会認識の形成は、概念的知識を習得することであった。しかし、概念的知識そ のものは社会科学そのものであり、子どもは具体的な社会事象における因果関係 を追究していくことによって概念的知識を習得していくことになる。このような 知識を説明的知識とし、明示することが必要である。概念的知識と説明的知識の 関係についてはつぎのように整理することができる。
説明的知識=概念的知識+特定の社会事象(①,p.78)
そして、この説明的知識の構成要素として下位の説明的知識、分析的知識、記 述的知識が位置ついていく。したがって、授業内容の設計は、説明的知識をもと にその習得に必要な知識を構造化していくことになる。
授業の構成は、この道筋とは逆の方向をたどる。つまり、見える知識から見え
ない知識へと進む形で構成されることになる。したがって、子どもの関心の対象 は見える知識から見えない知識へ変化していくことになる。
(2)授業方法の設計視点
授業内容が知識の構造によって決まると、どのように習得させるかが重要になっ てくる。習得させるために、問いの構造に着目しなければならない。
問いの種類によって習得される知識の質は異なったものになる。そのために、
習得させる知識の質と問いの質を吟味していくことになる。
知識の構造に即しながら、関心・意欲の指標とするための問いの構造化をはか る具体的手順を以下に示す。
①社会認識の根幹となる概念的知識を習得させるための説明的知識に対応す る問いを設定し、単元の中核的な問いとして位置づける。
② 中核的な問いを設定するための材料となる分析的知識、記述的知識をもと める問いを設定する。
③ 中核的な問いに答えていくための材料となる下位の説明的知識、分析的知 識、記述的知識をもとめる問いを設定する。
このなかで、中核的な説明的知識を支える下位の説明的知識、分析的知識、記 述的知識を2つにわけてとらえることが必要である。つまり、②③というように、
中核的な説明的知識を求める問い(いわゆるB.Q)をはさんで、設定するため の問いと解決するための問いにわけていくのである。このように問いを構造化す ることによって、関心の対象が明らかになり、意欲の対象となる活動場面が明ら かになる。
(3)学習評価の視点
授業のなかでの子どもの関心・意欲を見取るのには、次の点に留意していくこ とが必要である。
いつの状態をとらえるか 兆候として何をとらえるか。
どのようにしてとらえるか
とらえた兆候をどのような基準で評価するか
関心と意欲では、その表出するものすなわち兆候が違う。そのために、関心と意 欲をわけて評価することが必要である。以下、その具体的な考え方をのべていく。
兆候としては、関心は認識内容との関わりから、問いを兆候として位置づける。
意欲については、今回は行動表出を兆候としてとらえず、自己評価によってやる 気の状態を表現させる方法をとる。
兆候のとらえかたについては、関心の兆候としての問いは、それぞれの時間に おけるワークシートのなかに書かれている子どもの疑問や調べてみたいことなど を問いというかたちで整理していくようにする。意欲については、1.G. F法 による意欲の自己評価システムを、授業用に改良して使用することにする。
関心・意欲が「育つ」というのは、子どもの関心が社会の諸事象の因果関係に むくことである。そして、その探求をささえる活動での意欲の発揮である。
ここで留意しなければならないことは、関心や意欲の度合い一つまり、どれく らいの程度の関心なのか、意欲がどの程度あるのか一を問題にすることが必要な のではない。どのレベルの知識の質に向けられているものなのかを基準にして評 価をすることが必要なのである。このような評価の基準づくりに対しても、単元 の知識の構造ならびに問いの構造が指標となりうるのである。問いの構造を、学 習問題設定のための問い、学習問題、学習問題を解決するための問いの3つにわ けて構造化する。そしてそれぞれの問いの関連を明らかにしていくことが、指標 としての機能をはたす条件となる。
〈引用文献および参考文献〉
①岩田一彦,「小学校社会科の授業設計』,東京書籍,1991年
第2節 関心・意欲を育てる社会科授業モデル
前節で整理した視点をもとに、本節では「関心・意欲を育てる社会科授業モデ ルと評価モデル」を提示する。
モデルは、学習指導要領社会{第4学年・内容4)】を受けて設定する。
【第4学年・内容(4)】
地域の文化や開発などに尽くした先人の具体的な事例を調べて、先人の 働きゃ苦心を当時の人々の生活の様子や考え方、技術や道具などの面から 理解できるようにするとともに、現在にあっても地域の生活の向上と安定 のためにいろいろな努力がなされていることに気付くようにする。
以上の内容を受けて、授業モデル・評価モデルとして「大阪市の開発一御堂筋 と地下鉄の建設」を設定する。
(1)学習指導要領の内容構成
学習指導要領【第4学年・内容(4)】における内容構成を整理すると、次の ように整理できる。
a.先人の具 的な 例
①文化の面で活躍した先人の事例
②開発の面で地域の発展に尽くした先人の事例 b.現代における地域の人々の生活の向上と安定の努力
「a.先人の具体的な事例」については、2種類の事例が提示されている。そ の取り扱いについては、指導書では次のように解説をしている。
先人の具体的事例については、取り上げる対象を地域や児童の実態を十分考 慮:し、文化面か開発面の事例のどちらかを取り上げる必要がある。(①,p。35)
「b.現代における地域の人々の生活の向上と安定の努力」においては、つぎ のように解説をしている。
地域の人々の生活の向上と安定のために現在も行われているさまざまな努力 については、道路の新設や鉄道の建設、町の再開発、大規模な田畑の改修工事 や開拓事業など、高度の技術を駆使して国や地方公共団体で行われている公共
設など公共事業のなかでも、開発にその重点が置かれている。
後者の開発についての単元のなかで、大阪市における開発を地域教材として取 り扱うときには、都市の開発としての視座が必要である。そこで、現代の大阪の 基礎を築いた大正・昭和初期の大阪市の開発を位置づけ学習することによって、
都市の開発の理解を深めることができると考えた。
(2)題材について
大阪市における開発の教材化にあたり、教科書の取り扱っている素材を検討す るとともに、社会学・歴史学などの憎憎を整理し検討していくことにしたい。
①教科書における「先人のはたらきj具体的事例について
現在、教育現場で使用されている社会科教科書6社についてみていくことにし た。教科書の扱っている「先人の具体的事例」についてはつぎに示すとおりであ
る。
〈表4−1>「教科書における「先人のはたらき」具体的事例」
東京書籍 きょうどを開く 言意橋 江戸時代 開発
きょうどで新聞をつくる 信濃毎日新聞 明治時代 文化
教育出版 用水をひく 烏山用水 江戸時代 開発
学校をひらく 小笠原東陽 明治時代 文化 きょう土を開く 琵琶湖疎水 明治・大正 開発 大阪書籍
@ ≡L 丸いきにつくした先人 緒方洪庵 江戸時代 文化 日本書 謡い の発てんにつくし
ス人々
深良用 i箱根用水)
江戸時代 開発 学校図書 土地を開く 児島湾の干拓 明治時代 開発 教育・文化につくす 閑谷学校 江戸時代 文化 中教出版 郷土はこうして開かれた 那須そ永 江戸時代 開発 地いきな発展につくした人 長沢理玄 江戸時代 文化 帝国書院 教育や文化につくした人 湯山文右衛門 江戸時代 文化 開発に力をつくした人々 牧ノ原の開墾 江戸・明治 開発 開発についてみると、その多くは農業関連における開発であることがわかる。
農業用水および農地の拡大である。その中にあって、大阪書籍の「琵琶湖疎水」
については、都市型の開発教材であるといえる。今回、教材化を試みる大阪市の