第3章 関心・意欲の評価事例の分析
第3節 実践事例分析の結果と考察
本節では、前節で示した分析の方法にしたがって、実践事例を分析した結果を 示し、それを考察する。なお、分析結果の一覧をく表3−4>「分析結果一覧表」
に示す。
(1>視点1の分析結果と考察(関心・意欲の社会認識形成過程の位置づけ)
実践事例から、関心・意欲の位置づけは、大きく3つにわかれる。
a 学習の流れにそった関心・意欲の重視
(学習問題の設定に関心の喚起をおき、追求で意欲の喚起・継続をは かるという位置づけ)→導入拡大型(37事例)
(学習過程において、人物への共感が重視されているもの)
→共感型(2事例)
b 学習の中での関心・意欲の変容の重視
(一連の学習を経て、子どもの関心や意欲がどのように育ったのか を重視したもの〉→育成型(11事例)
以下、それぞれの類型を分析・考察する。
①導入拡大型
学習問題設定に関わって、知識の重視の仕方によって違いがある。
ア.学習問題へ方向づける知識重視 イ.学習問題設定の材料となる知識重視
さらに、関心と意欲の重点の置かれ方でも、違いがある。
a.関心を重視するもの b.意欲を重視するもの
これらを、類型化していくと、実践のなかではつぎのような傾向が表 れる。
<表3−4>導入拡大型の類型 白 設
d_ 定時の知識
口つ
@ア
、 、
C
関心重視 a
26事例
4事例意欲重視 b 1事例 3事例
設定なし 4事例
な関心の関与が位置づけられているといえる。
学習問題追究および発展の過程ではどのような傾向がみいだせるのだろうか。
学習問題追究においては、活動面が重視される傾向にあり、意欲に対するものが 多くなっている。
○ 学習問題追究の活動に対する意欲重視 33事例 ○ 問題解決のための知識に対する関心重視 5事例 ○ 新しい問題への関心・意欲の重視 1事例
終末の段階では次のような傾向を指摘することができる。関心の広がり・深ま りを重視するもの、表現活動の意欲を評価するものが多くなっている。
○ 新しい問題・課題に対する関心重視
○ 発展的活動に対する意欲
○ 表現活動に対する意欲
○ 社会的態度形成
○ 設定なし
9事例 1事例 6事例 5事例 18事例
設定なしが18事例もあるのは、終末段階での関心・意欲は重視されていないこ とが推測できる。導入拡大というゆえんもここにあるのである。導入拡大型とし ては、代表的なパターンとしてつぎの4種類がある。以下、代表例を示していく。
関心の喚起 ・ 学習問題 s
意欲の喚起(追究活動の姿勢)
・
表現活動の意欲 社会的な態度形成 新しい問題・ 設定なし 課題への関心
A−1 A−2 A−3 A−4
<図3−1>「導入拡大型のパターン」
以上、4つのパターンがあるが、終末段階での位置づけによって分かれている ことがわかる。つぎに、代表的な分析事例をあげていくことにする。
<資料3−1>「導入拡大型の実践例 A−1タイプ」
評価事例分;析表 No.
49
学年 実践者(学校名) 単 元 名 出 典 3年 東 俊一
i鹿児島大学附属小学校) 工場の仕事
石田恒好他編著『小学校社会 こうすればでき 驫マ点別評価の手順一データの集め方・判定の d方一』図書文化 1994年pp.46−55x
1.社会認識形成過程における位置づけ
学習過程(学習問題) 関心・意欲・態度の評価 対象となる知識く知識の質〉
つかむ
①ボンタンアメのパッケージから、
H場での1日の生産量を考えよう トいるか。
とし ボンタンアメの生産量
@く記述的知識〉
工場の人々は、あんなにたく さんのお菓子を、どのように アメづくり・販亮の工夫 作ったり、売ったりしているのだろうか 〈分析的知識(手段・方法)〉
立てる ② 自分なりの予想をもとに、
@見通しをもとうとしているか。
追究の 同 上
③観察の観点をもとに、進んで観察 や質悶や記録をしているか。
④ さまざまな原料を使っている意味 や全国から入手している理由を考え
調べる ようとしているか。
D製造工程でさまざまな工夫をして
↑
ッ 上 いる意味について考えよう としてい @↓
るか。
⑥作られたお菓子が、どこで売られ ているか考えようとしているか。
まとめる ⑦ 「お菓子工場CM」を進んで作ろ
@うとしているか。 同 上
① 学習問題設定のための方向づけとなる記述的知識に対する関心
②〜⑥ 学習問題解決のための活動における意欲
⑦ 表現活動における意欲
<重視されている関心・意欲・ 態度〉
学習問題設定のための方向づけとなる記述的知識に対する関心
備 ↓
考 習問題分 的 識
@ ↓
学習問題解決のための活動における意欲 ↓
¥現活動の意欲
〈類型〉
導入拡大型A−1
まず、学習のはじめは、関心についての評価をおこなう。そして、学習問題設定 後は、学習問題解決のための活動、ここでは見学や話し合いなどの活動における 意欲を評価する。そして、まとめる段階で、表現活動(お菓子工場CM)におけ る意欲を評価する。この流れを、図示するとつぎのようになる。
ボンタンアメの生産量への関心
・
工場の生産や販売のようすについての調べ活動における意ハ
表現活動における意欲
この流れを、知識との関連で整理していくと、関心・意欲が認識形成において どのように位置づけられているかが明らかになる。学習問題は、「工場の人々は、
あんなにたくさんのお菓子を、どのように作ったり、売ったりしているのだろう か」というものである。これは、 「どのように」ということばで表現されている ように、分析的知識(手段・方法)をもとめる問いである。これに対し、関心の 対象となるのは、ボンタンアメのパ7ケージである。そのパッケー.一ジから「ボン
タンアメの1日の生産量」を考えるのである。実物資料としてのパッケージの提 示によって、1日の生産量という記述的知識に関心を向けさせることをねらって いる。この記述的知識は分析的知識への方向づけをおこなうためのものである。
一日の生産量から生産のようすや販売のようすへと関心を向けさせるものである。
このように、A−1タイプからは、導入部分での関心の喚起が重視されている ことがわかる。そのために、実物資料の提示など子どもにインパクトのある手法 がと られることになる。
学習問題設定後は、それぞれの活動における意欲に評価の主体はうつっていく。
調べる活動・まとめの表現活動において、「進んで〜しょうとしている」「〜考 えようとしている」というように、活動への姿勢を評価しようとしている。
しかし、その関心が、「どのように育ったのか」、 「学習を経てどのような関心 を示すようになったのか」、ということには目が向いていない。そして、意欲に ついてみても、個々の活動におけるその場での意欲の把握にとどまり、学習をと おして意欲がどのように変容しているのかという視点がかけていることが問題点
として指摘できる。
<資料3−2>「導入拡大型の実践例 評価事例分析表
A−2タイプ」
No. 6
学年 実践者(学校名) 単 元 名 出 典
3年 横山準一i東京都足立区立千寿小学校) みんなのむかし博物館 北俊夫編著「社会科「関心・意欲・態度」の評 ソ技法』明治図書 1993年 pp.118−127
1.社会認議形成過程における位置づけ
学習過程(学習間題) 関心・意欲・態度の評価 対象となる知識く知識の質〉
①区内の遺跡や文化財などの昔を語
@るものに関心をもったか。
A地域の人に質問するなどして、
@んで師べようとしたか。
進
区内にある遺跡や文化財
@く記述的知識〉
謔フむかしのようす
@く記述的知識〉
区内には、むかしのことを知ることのできるどのようなも のがのこされているだろうか。 それらのものから、どのよ うなことがわかるだろうか。
@ ↓
〈分析的知識(構造)〉
調べて「むかし博物館」つくろう
③ 区の人々の生活の様子の移り変わ
@りについて、進んでしらべよう とす
区の人々の生活の移り変わり
@く分析的知識〉
る意欲をもつことができたか。
C 「むかし博物館」をつく るために 同 上 進んで調べようとしたか。
⑤ 「むかし博物館」づくりに主体的
@に参加したか。 同 上
⑥身のまわりに残る遺跡や文化財を 区に残る遺跡や文化財に対する態度 大切にしょうとしているか。 〈価値的知餓〉
① 学習問題設定のための材料となる記述的知餓に対する関心
㈱
学習問題設定のための材料となる記述的知識を求めるためのかつどうにおける意欲⑤ 学習した結果獲得した価値的な知識に基づく社会的態度 く重視されている関心・意欲・ 態度〉
学習問題設定のための材料となる記述的知識に対する関心
@ ↓
噂、習問題 識
備 ↓
考 学習問題を解決するための活動における意欲
(↓)
社会的な態度
〈類型〉.
導入拡大型A−2
まず、学習のはじめは、関心についての評価をおこなう。そして、学習問題設定 後は、学習問題解決のための活動、ここでは見学や話し合いなどの活動における 意欲を評価する。そして、まとめる段階で、社会的態度形成を評価する。この流 れを、図示するとつぎのようになる。
遺跡や文化財、地域の人の語る昔の様子への関心
むかしの生活の様子の移り変わりの調べ活動における意欲 遺跡や文化財を大切にしょうとする態度
この流れを、知識との関連で整理していくと、関心・意欲が認識形成において どのように位置づけられているかが明らかになる。学習問題は、 「区内には、む かしのことを知ることのできるどのようなものがのこされているのだろうか。そ れらのものからどのようなことがわかるだろうか→調べて「むかし博物館』をつ
くろう。」というものである。これは、 「どのようなもの。」 「どんなこと。」
ということばで表現され,ているように、分析的知識(構造)をもとめる問いであ る。これに対し、関心の対象となるのは、遺跡や文化財、地域の人の昔の話であ る。地域の人の話を聞くという体験的な活動によって、昔の生活の様子という記 述的知識に関心を向けさせることをねらっている。この記述的知識は分析的知識 への方向づけをおこなうためのものである。
このようにA−1タイプ同様に、A−2タイプは、導入部分での関心の喚起が 重視されていることがわかる。そのために、地域の人の話など子どもにインパク
トのある手法がとられることになる。
学習問題設定後は、それぞれの活動における意欲に評価の主体はうつっていく。
調べる活動・まとめの表現活動において、「進んで〜しょうとしている」「主体 的に参加したか」というように、活動への姿勢を評価しようとしている。
導入段階の関心が、「どのように育ったのか」、「学習を経てどのような関心を 示すようになったのか」、ということには目が向いていない。そして、意欲につ いてみても、個々の活動におけるその:場での意欲の把握にとどまり、学習をとお
して意欲がどのように変容しているのかという視点がかけていることが問題点と して指摘できる。さらに、態度形成では、具体的な評価の姿がでてこないのであ
る。