第4章 関心・意欲を育てる社会科学習
第3節 評価モデルのシミュレーション ……一
本節では、前節で示した授業モデル・評価モデルについて、具体的な子どもの 姿を想定することによって、各モデルの考察とする。
(1)関心の評価
関心の評価については、おもにワークシートの記述内容から評価を行う。ワー クシートの記述には、「調べて分かったこと」、「疑問やさらに調べたいこと」
「予想したこと」、「学習のまとめ」の4通りがある。関心は問いの構造から評 価をすることを提案してきた。これら4つの記述から、関心の評価をするために は、問いを見取っていくことが必要である。以下、その手順を、シミュレーショ ンという形で示していくことにする。
第1次御堂筋・地下鉄の計画
第1次では、御堂筋・地下鉄の概略を知り、学習問題を設定することが求めら れている。それらの、調べたことがらから、問いを抽出していく手順をのべてい く。問いを抽出し、関心の方向をさぐることができる。(ワークシートNo.1)
1.御堂筋や地下鉄について調べたことを書きましょう
o o o o o
御堂筋は梅田から難波までの道路 イチョウ並木がある。
御堂筋は昭和12年にできた。
地下鉄は昭和10年に開通している。
このころの市長は関一という人だった。
この記述からは、調べる活動のもとになる問いは、記述的知識を求める問いで あることがわかる。つまり、「どんな道路か」 「いつできたのか」 「このころの 市長はだれか」などの答としての記述である。これを、第1次の問いの構造でみ ていこう。これらは、ともに学習問題設定のための問いに位置づけられる。この
2.疑問に思ったこと、もっと調べたいことをかきましょう。
o o o o o
つ っこし...ろの っ 1 っこっこのころっ㌔
関一市長はどんな人か。
お金はいくらかかったか。
できたころの電車賃はいくらか。
なぜ、御堂筋をつくったのか。
地下鉄をつくったのはなぜか。
これらの問いを分析していくと、記述的知識をもとめるもの、分析的知識をも とめるもの、説明的知識をもとめるものが混在している。説明的知識に関心がむ いているので、その方向を進めるように援助していくことが必要である。
Bくん
2.疑問に思ったこと、もっと調べたいことをかきましょう。
o o o
御堂筋のイチョウの木は玉本あるか。
昭和のはじめはどんなようすだったのか。
地下鉄のはじめの電車はどんなだったのか。
また、Bくんは、因果関係に関心が向いていない。単なる記述的知識をもとめ ているにすぎない。
この時点では、Aくんは説明的知識へ関心をむけ、 Bくんは記述的知識に向け られてい:る。Aくんは関心を深める方向にあり、 Bくんは関心を広げる方向にあ るということができる。学習問題設定のためには、ここでは深める方向が求めら れるのでそのための援助が必要になることがここでわかる。
以下、2人のワークシートをたどりながら、関心の育ちをみていくことにした
い。
第1次第2時では、まとめの段階での記述から、関心の方向をみとっていくこ とにする。 (ワークシートNo.2)
Aくん
3.御堂筋や地下鉄が建設された理由をまとめましょう。
○御堂筋や地下鉄を建設したのは、大阪市が急に大きくなってしまったか
らだ。
○ 関市長が、大阪市の発農のために大切だと考えたからつくった。
○ 大阪市の真ん中は、むかしのままだったから発展できないからつくった。
Bくん
3.御堂筋や地下鉄が建設された理由をまとめましょう。
○ 人口が増えた
○ 大阪市が広くなった
○ 関市長が、大阪市の未来を考えてつくろうといった。
Aくんは、因果関係のなかで、社会的な事象をとらえている。因果関係に向け られた関心から、その結論を導き出している。Bくんも、理由となるものをかく ことができている。因果関係に関心をむけた結果であると考えられる。ここにき て、Bくんは御堂筋・地下鉄の建設の理由に関心をむけたということで、深まり をみせたと考えることができるのである。つまり、Aくんは、深まった関心に支 えられた調べ活動によって因果関係が明らかになって深まった関心が認識につな がったということができる。Bくんも、因果関係的な知識をえることによって、
関心が深まったといえるのである。
第2次御堂筋の建設
この学習では、計画から完成までの期間に着目させ、御堂筋・地下鉄の建設の 困難な要因をさぐらせようとするものである。したがって、関心は建設が長期間 にわたった原因に向けられる必要がある。ここでは、学習問題設定の場面と学習 のまとめの段階におけるワークシートの記述から関心の方向をさぐるようにして
2. っしてこのような時間がかかったのでしょう。
○ 地下鉄工事がむずかしかったから
○ 反対する人がたくさんいたから
3.きょうの学習で、疑問に思ったこと、調べてみたいことを書きましょう。
のつ1 つ、よ。
○ どんな人が反対したのだろうか。
○ 反対した理由はなんだろう。
Bくん
2.どうしてこの うな時間がかかったのでしょう。
○ お金がたくさんかかったから。
○ 反対する人がたくさんいたから
3.きょうの学習で、疑問に思ったこと、調べてみたいことを書きましょう。
o o o
地下鉄の工事はどうしたのかな。
道路の下のトンネルはどうしたのか。
工事はうるさくなかったのか。
Aくんほ、予想から疑問へ問いがつながっている。因果関係の理由としてあげ た内容を検:証するという方向である。関心が深まっているといえる。Bくんは、
予想とは、関連のない問いをもっている。これは、因果関係的な知識に関心が向 けられず、自分の興味を優先させたものであるととらえられる。関心が、Bくん の思考の道筋からそれた状態を示している。学習において大きくは逸脱していな いが、ここでBくんのもとめているものが、どのような位置にあるのかを、第2 次の問いの構造で確認していかなければならない。すると、予想では、資金問題・
用地買収問題に関心を向けているにもかかわらず、調べようとするときの関心は 地下鉄工事である。Bくんの予想を大切にしながら、 Bくんの調べたいことがそ の後の学習で取り組む課題となることを知らせることが必要である。
第2次 第4〜6時については、まとめの段階でのワークシートの記述から関 心をみていく。ここでのポイントは因果関係的に記述がなされているかというこ
とである。因果関係的な記述がなされているということは、説明的知識をもとめ る問いをもって調べていたということになる。以下、ワークシートNo.4〜
No.6のなかから、No.4を例にして示していく。
(ワークシートNo.4)
Aくん
2.きょうの学習をまとめましょう。
土地を手に入れるのがむずかしかったのは、
御堂筋のとおりには、たくさんの商家があったから。
この当時は、広い道は必要でないと考えるひとが多かったから。
という理があったからです。
Bくん
2.きょうの学習をまとめましょう。
土地を手に入れるのがむずかしかったのは、
反対するひとが多くいたから。
という理があったからです。
Aくんは、因果関係のなかで具体的な事実がのべられてる。これは、因果関係 に関心をもち調べることができたためである。関心が深まり、認識が深まっていっ たということができる。Bくんは、予想の確認で終わっている。具体的な記述が なされていないことは、認識内容が深まっていないことを示している。関心の深 まりには問題点がのこった状況であると判断できる。このように、他の2時間の 関心を評価することができる。
第3暗いまに生きる御堂筋・地下鉄
ちをみとることができる。以下例を示す。 (ワークシートNo.7)
Aくん
1.御堂筋ウォーキングでわかったことをかきましょう。
o o o o o
現在でも、イチョウ並木がのこっている。
たくさんの車が通っている。
たくさんの地下鉄の利用客がいる。
ビルがたちならび、仕事をしているひとがたくさんいる。
大阪の中心だ。
Bくん
1.御堂筋ウォーキングでわかったことをかきましょう。
o o o o
地下鉄が2つの川の下を通っていた。
むかしの家が、とおりにはなくなっている。
車は、一方通行になっている。
イチョウの木が太くなっている。
これをみていくと、Aくんの問いは、 「御堂筋・地下鉄のようすはどうか」と いうものである。これは、問いの構造に照らしてみると、学習問題設定のための 問いにあたる。そして、さいこの記述、「大阪の中心だ」は役割にせまっている。
つまり、 分析的知識にせまっているのである。見学によって、関心が深まってい ることがわかる。
Bくんは、学習してきたことを確認している。そして、新しい視点で御堂筋・
地下鉄をみつめている。たとえば、「地下鉄が2つの川の下を通っていた。」な ど、工事について学習したことが心に残っているのである。問いとしては、「地 下鉄はどうなっているのか。」というものであるが、この問いは、前時の学習か らの延長であり、関心の継続のあらわれであるととらえることができる。知識の 質でいえば、分析的知識(構造)をもとめるものであり、関心の継続は関心の広 がりとしてとらえることができる。