平成10年9月1日
ヘリカルCT導入後に発見された小型肺癌
市立甲府病院 外科 金子和彦
内科 大木善之助 小澤克良 川口哲男 要旨:ヘリカルCT導入が肺癌手術症例に及ぼした影響について検討した。ヘリカルCT導入に よリ肺癌症例数は倍増し、長径20mm以下の症例が著増した。長径10mm以下の症例も 4例経験し、4例とも腺癌であリ、pTINOMO stage l Aであった。 TBLBでは確定診 断の得られない症例が増加しておリ、胸腔鏡下に生検を行ない、診断確定後、葉切除お よびR2aのリンパ節郭清を施行している。現時点では長径10mm以下の症例にも2群 までのリンパ節郭清は必要と考えられる。 Key words:ヘリカルCT、小型肺癌、野口分類 はじめに ヘリカルCTが当院に導入されたのは平成9年 10月であった。ヘリカルCTでは、従来のコンベ ンショナルCTでは指摘困難であった肺野の低濃度 病変の検出が可能であリ、1回の呼吸停止下で広 範囲の検査ができるため肺野の小結節の検出に有 用であリ、また、血管・気管支などの管状構造と 結節との関係が正確に把握できる利点がある。ヘ リカルCT導入後に肺癌手術症例、とくに肺野型 小型肺癌症例が増加したように思われたので検討 した。 対象と方法 平成9年1月から平成10年5月までに当院で 手術適応と診断された肺癌症例23例を対象とし た。対象症例の内訳は、男性17例、女性6例、 平均年齢65歳(48∼83歳)であった。組織型 は篇平上皮癌12例、腺癌10例、小細胞癌1例 であった。 以上の症例をヘリカルCτ導入後(平成9年10 月∼平成10年5月)の8ヵ月間とほぼ同期間の ヘリカルCT導入前(平成9年1月∼9月)とに 分けて、症例数、長径20mm以下の小型肺癌の 数、臨床病期分類について比較検討し、さらにヘ リカルCT導入後に発見された小型肺癌症例につ いて検討を加えた。 結 果 ヘリカルC1「導入前の9ヵ月間で肺癌手術症例 は8例であったが、導入後は15例と倍増してい た。また長径20mm以下の症例は導入前は8例 中2例(25%)であったが、導入後は15例中7 例(47%)を占めていた。(表1) 病理病期は、リンパ節転移のないZAtB期の 症例はヘリカルCT導入前は8例中1例(13%) しかないのに対し、導入後は15例中7例(47%) に著増していた。 (表2) ヘリカルcr導入後に発見された長径20mm 以下の肺癌症例を表に示す。 (表3)平均年齢 63歳(48∼72歳)、男性4例、女性3例、組 一51一山梨肺癌研究会会誌 11巻2号 1998
表1.手術適応と診断された肺癌症例
(平成9年1月∼平成10年5月)
肺癌症例数長径20mm以下
ヘリカルCT導入前
@(平成9年1月∼9月)8
2(25%)ヘリカルCT導入後
@(平成9年10月∼平成10年5月)15
7(47%) 表2.肺癌手術症例の臨床病期分類
IAIBlA皿B皿A皿B]V不明
計
ヘリカルCT導入前
10 2 0 1 3 1
08例
ヘリカルCT導入後
61 0 1 5 0 1
115例
表3.当院における畏径20mm以下の肺癌手術症例
(平成9年10月∼平成10年5月)
症例 年醐性 組鍵型 星癌径 発見動機 間接 直接 術前診断 v人TS鞘
野口 胸口 リンパ節 術後■床 ● ● 1. 631F凪
6×6 住民検診 十 一X
開胸肌
B
PO
nO
IA
2. 63!F Ad. 6×4 住民検診 十 一 ×o
S6B
pO
nO
IA
3.酬
Ad. 10×7 血禽胸痛 n.《1 十 × ○肌
E
PO
nO
IA
4. 61刀M Ad. 10×6 咳、痕 江.也 ■一 × ○ユ
C
PO
nO
IA
5. 69!F A輻 12×1 整形外科 江己 十砿
一血
C
Po
nO
IA
術前検査 6. 63!M ’S㏄ 17×16 喀富翻■齢 江也 一 S㏄ 一R
一PO
n2
皿A
7. 72!M S㏄ 20×15 勘浪雄症 n. 一 × ○皿
一PO
nO
1A
㎜中
織型は腺癌5例、扁平上皮癌2例で、長径10mm 以下の4例はすべて腺癌であった。 発見動機では住民検診が2例あリ、この2例は 検診の間接撮影では所見を認めたが、直接撮影で は所見が認められず、CTにて確認しなければ見 落としていたおそれがあった。また直接撮影で有 所見であったのは7例中2例(29%)であり、ヘ リカルCTの有用性が再確認された。 20mm以下末梢部発生肺癌に対する経気管支鏡 的生検(TBしB)または擦過細胞診による診断率は 一52一 7例中2例(29%)と低率であった。術前確定診 断の得られなかった5例は、4例は胸腔鏡下に、1 例は開胸にて生検し、術中迅速診断にて悪性の確定 診断を得た後、標準開胸して葉切除または区域切除 およびR2aのリンパ節郭清が行なわれた。 腺癌の場合、野ロ分類1)ではBが2例、Cが2例、 Eが1例であった。全例胸膜浸潤は認めず、リンパ 節転移は1例のみn2で、他の6例はnO、病理病期 はlAであった。平成10年9月1日
考 察 ヘリカルσ「の臨床上の特徴のひとつは時間分解 能の向上であリ、より短時間に、体動によるarti− factの少ない画像が得られる2)ため、肺野の小結節 の検出に有用であリ、ヘリカルerを肺癌一次検診 に用いることによって長径10mm以下の淡い小さ な肺癌が、今までにない高頻度で見つけられている。3) 当院ではヘリカルerが平成9年10月に導入された。 肺癌一次検診には用いられていないが、二次検診を 含め通常診療に用いられた結果、手術適応と診断さ れた肺癌症例はほぼ倍増し、手術適応症例中長径20mm以下の症例が約47%、病理病期lAlB期の
症例も約47%と著しく増加した。近年、肺野末梢 部に発生した小型肺癌の切除例の増加が外科治療 成績向上の要因となっておリ4)、当院での肺癌治療 成績の向上が予想される。 長径10mm以下の症例はヘリカルcr導入前は 皆無であったが、導入後わずか8ヵ月の短期間に 4例も発見された。いずれもC1「所見では末梢の小 腫瘤影として認められた。画像上の質的診断をさ らに深めるためthin・section CT等を行ない5)、 pleural indentation、辺縁のけばだちといった 腺癌を強く疑わせる所見が得られたため、4例と も気管支鏡検査を行なったが、確定診断はつかな かった。確定診断のためにはcrガイド下経皮的 肺生検も考えられるが、10mm以下という病変 の大きさでは困難で、確定診断を得られないこと が少なくなく6) 7)、われわれは胸腔鏡下手術にて 生検を行なう方針としている。胸腔鏡下生検を施 行する際、小腫瘤の局在を確認するのに難渋する ことがある。末梢肺小腫瘤の局在確認の手段とし て、C1「ガイド下の色素注入によるマーキングや、 一53一 フック付きワイヤー留置によるものが報告されて いるe)が、われわれは胸腔鏡下の観察により腫瘤 が確認できない場合には小開胸を追加し術者の指 による触診にて局在の確認を行なってきた。小野 ら9)は4mm以上の腫瘤は触知可能であると報告 しておリ、われわれも蔵側胸膜から15mm以内 の腫瘤については同じく触知可能と考えている。 4例中1例は他院にて開胸生検が行なわれ、他 の3例は胸腔鏡下に生検し、迅速診断にて肺癌と の報告を得た後、標準開胸に移行し、葉切除また は区域切除および2a群までのリンパ節郭清を施 行した。平井らs°)は2cm以下末梢部小型腺癌の 25%はn(+)であリ、n(+)の5年生存率は 11%であることから、リンパ節郭清を充分にお こなうべきであると報告している。また1cm以 下の肺腺癌ではリンパ節転移は少ないと報告され ている11)12)が、症例数が少ないので今後の詳細 な検討が必要である。現時点では10mm以下の 肺腺癌に対しても2群までのリンパ郭清は必要と 考えられる。12> まとめ ヘリカルCT導入によリ肺癌手術件数は増加した。長径20mm以下の症例が著増し、10mm以
下の症例も4例経験し、4例とも腺癌であった。 臨床病期1期の症例が著増しており、術後成績の 向上が期待される。文 献 1)Noguchi M, Morinaga A, Kawasaki M, et al. Small Adenocarcinoma of the Lung. Histologic Characteristics and Prognosis. Cancer 1995; 75:2844・52 2)荒木力、山口元司,ヘリカルerの原理と臨床 応用における特徴.画像診断1996;16:1319 ・22 3)松井英介、桐生拓司、川口真平、他.末梢微小 肺癌の診断法,日胸1997;561531・39 4)山口畳、木村秀樹、馬場雅行、他.肺癌手術の 治療成績とその現況 臨外1990;45:51−55 5)木戸尚治、菓山啓子、黒田知純.末梢性微小 肺癌(最大直径1.Ocm以下)をどう診断するか