体 力 と リズム感につい ての一考察
北 澤 房 子 は じ め に どんな環境にある人でも,健康です ぐれた体力を持つ ことがたいせつである。 体力診断 テス トは,それぞれ各個人の体力の現状を把握 し,その結果を基に,す く・れてい る能力,不足 している能力を知 り, よりい っそ う健康的な日常生活が送れ るようするもので ある。 現在子供達の体格は,生活環境様式の変化に より著 しく伸びている。 山岡誠一博士は,
「身長, 体重では現在児がす ぐれているが背筋力や握力, 肺活量では昭 和初期 とほぼ同程度であ り走,跳などの運動能 力については,ほぼ同等であるか現在児がむ り) しろ劣 っている」 と述べている。 このことは,身長に対する他の諸株能 の発達が劣 っている ことにもなる。 この事実を如何に対処 し解決 してい くか大 きな課題 である。 技術文明の功罪に より生活環境が変化 し,それな りに適応 してきてはいるが,大 きな課題 をかかえ込む結果 となった。 この課題 を解決すべ く新 しい環境づ くりに努 力しなければならない。 これにかかわ って く るのが,いわゆる "感覚"である。 体力のす ぐれた者,特に調整力 (敏捷性,巧敵性,平衡性などの要素を含 んだ複合能力) のす く小れた著 との関係,又,筋の柔軟性等体力 と感覚 とのかかわ りを兄い出すために,清泉 女学院短期大学幼児教育科59年度入学生 (以下本学学生 と略す)116名の体力診断 テス トを 行 ない,体力 と1)ズム感 との共通運動因子をさく中り, 1)ズム教育の手懸 りを得たい. Ⅰ 体力診断テス ト 方法 ・手順 本研究では,本学学生116名の運動能 力の現状を確かめる為に,昭和59年 (1984)11月下 旬∼12月上旬にかけ,文部省が標準化 している体力診断 テス トを方法,記録等文部省スポー ツテス ト実施要頃に準 じて本学体育館な らびに リズム室において実施 した。 テス ト種 目として (1)敏捷性テス ト 反復横 とび (2) 瞬発力テス ト 垂直 とび (3)筋力 テス ト 背筋力 ・握力 (4) 持久力テス ト 踏 み台昇降50 研究紀要 (第3号) (5) 柔軟性 テス ト 伏臥上体そ らし ・立位体前屈 (2) を と り上げ,その結果 をそれぞれの判定表に よって
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段階に判定 し, 尚5
種 目の総合点 を出 し,それに よって体力の総合判定 をす る。 手順については,被検者に対 し,正 しい体力診断 テス トが行 なわれ る為に,ね らい, テス ト種 目,方法,記録,実施上 の留意点の説明を した。 テス ト実施にあた っては, 2人 1組に な りお互いに判定,記録す ることを原則 とし,各種 日毎に 4人の責任者を決め,それぞれの 場所 に配置 させテス トの公正に努 めた。 結 果 表1 本学学生の体力診断テス ト結果 と全国平均 図 1 昭和59年度本学入学生の体力プロフィールと全国平均 反復横 とび 踏 み 台 昇 降 上記表1,図 1に より背筋力が全国平均 よ りす ぐれ てお り,立位体前屈においてほ,劣 る とい う結果であ った。 考 察 体力診断 テス トは筋力,瞬発力,待久力,敏捷性 とい う基礎的運動要因,を とらえること北洋 :体力とリズム感についての一考察 51 を,ね らいに している。それ らは, また運動に必要 な生理的機能に対応 してお り,基礎体力 の機能面 を包括的に知 ることがで きるよう配慮 されている。 次にテス ト種 目の一般的 な概観説明 と考察を してみたい. (1)反復横 とびは敏捷性を測定す る頃 日である。敏捷性 とは,身体をできるだけ速 く,身体 の位置や方 向を変える能 力であ り,動作の反復速度 と反応の速 さに よって とらえ られ るO速 いス ピー ドが要求 され る運動,その他ほ とんどのスポーツで大 きな役割を果 している。 (2)垂直 とびは,瞬発 力を測定す る頃 日であ り,脚筋 のパ ワーを測定 した ものであるo瞬発 力は,パ ワ-とも呼ばれ,力 とス ピー ドが同時に作用 し,短時間に最大の力を発揮す る力の 大 きさを意味 してい る。 (3)背筋力,握力は,人体における等尺性最大筋力を測定す る頃 日である。 これは体力要素 の中核をなす ものであ り,筋力がある程度 までない と人間の行動は不可能 になる。 背筋は,広背筋,僧帽筋,脊柱起立筋,最長筋 な どか ら成 り立 ち,身体 の中心 部にあ り, 姿勢の統御 (運動 中 も含む)に重要 な働 きを してい る筋 の強 さの ことである。背筋力は,筋 持 久力 とも関係が深 く,筋持久力のある子供は,同一姿勢を維持す る能 力が高 く,疲労が少 ない。 したが って同 じ仕事が与 え られて も最大筋の大 きい方が余裕があ り,筋 力を高めてお くことが持久力を高 める結果に もつなが る。 握 力は,手指の屈筋 の強 さを測定 している。 この背筋 力 と握 力をみることに よ り身体全体 の筋力を評価す る手懸 りが得 られ る。 (4)踏み台昇降は,全身の持久力を測定す る頃 日である。 これは,一般的にスタ ミナ とも呼 ばれ身体全体 を動かす作業 を長時間続ける能力で有酸素的作業能力 とも呼ばれている。全身 持 久力の中心になるのが,心臓 と肺で,踏み台昇降運動は, 自己の体重 を負荷 として運動 を 行 ない,その運動に対 す る心臓の反応,脈拍をみ ることに より,全身 の持久力をみ よ うとし ている。全身持久力のす く、、れた者は,劣 った著 より運動中の脈拍数 の増加が少な く,運動後 もすみやかに,運動前の状態に戻 る。 (5)伏臥上体 そ らし,立位体前屈は,身体 の柔 らか さを測定す る頃 日である。柔軟性には, 関節の可動範囲,筋 の伸縮性が大 き く関与 し, ともに単一関節の柔軟性だけでな く,背中, 腰を中心 とす るほぼ全身的 な柔 らか さの 目安になるものである。 次に背筋力にす く小れ,立位体前屈に劣 るとい う結果 の吟味に移 りたい. 背筋力にす ぐれていることは,背骨が しっか りしていて姿勢が良い とい うことであ り,幼 児を抱いた り,背負 った り,瞬時に力を出す場面が多い保母を志す者 に とっては,喜 ろ こぶ べ き結果である。 機械化れた 日常生活の中で も手を使い,力を出す とい う生活場面 が多 く残 されてい ること の現れであろ う。幼児教育科の学生 として, ピア ノの練習を した り,正 しい姿勢で歌 を歌 う 機会が多 く, 日常生活の中で無理 をせず, ごくあた り前の こととして,継続 しているか らで あろ う。 伏臥上体そ らし,立位体前屈は, ともに,ほぼ全身的 な柔軟性を測 っているが,立位体前
52 研究紀要 (第3号) 屈が劣 るとい うことは,前屈時における,骨 と骨 との結合部位,関節の構造,靭帯,筋膜弾 性,伸展性 な どが微妙に影響 し,可動範囲を小 さ くしているのであろ う。本学学 生 に し て ち,今 までに柔軟性を養 な う機会が,かな り少 ない ように思われ る。保育の場面 では,立 っ た り,座 った り幼児の 目の高 さ (中腰)での動作が多 く,腰 を中心 と し た 全身的 な 柔軟性 は,たえず要求 され る。ふだん生活の中で楽 しみなが ら,又 ご くあた りまえの こととしてで きる環境を与 えてや りたい。 Ⅱ 体力と リズム感 リズ ムは,人間が本来持 っている深 く広 い本性である。 リズムは生命 その もので身休的, 自然的,風土的,民族的条件に支 え られ存在す るものである。 この よ り具体的 な リズム紘, 又筆者に とってほ リズム感の悪 さで もあ り, この リズム感の悪 さを ど う克服 し指導 してい く かが よ り身近 で重要 な問題 にな って くる。 さて ])ズム感 については,概略的には感覚的な もので,それぞれ個人の持つ感度 は,定量 的に とらえに くい ものである。我 々の生活 と密着 しなが ら定量的に とらえに くい, とい う問 題 をかかえなが ら,体 力診断 テス トを基に,体力 と リズム感の関係を調べ てみたい。 方法 ・手順 本学学生116名の リズ ム感 を知 る為に,昭和59年 (1984) 9月中旬本学 リズム室において (3) "ア どこ ョソの橋で 'の曲を用 い,課題 として,進行方 向だけを限定 し自分が感 じた ように歩 く,走 る,跳ぶの3つの動 きを入れ,手の表現,顔 の表情 な ど自由に 1人ずつ表現す る。評 価内容 としては,曲をいかに 自分の もの として表現 しているのかを中心に,大変良い3点, よい2点,やや不足1点の3段階評価を したO体力については前結果を利用 し, I)ズム感 と の相関を調べた。 結 果 表2 体力とリズム感との相関
北洋 :体力とリズム感についての一考察 前記表2に より反復横 とび,背筋力に正の相関があるとい う結果であ った。 53 考 察 本学学生 の体力 プロフ ィールは,前に述べ て きたが,体力 とリズム感 との相関を考 えてい く上 で体力の背後にあってそれを支えている能 力に も目を向けて,考案 を進 めたい. まず体力 と 1)ズ ム感 との対比において,正 の相関を示 した反復横 とび,背筋 力について述 べ てみたいO反復横 とびにおける重要 な運動能 力因子は,敏捷性であるが,その他筋力,瞬 発 力な どの因子 とも密接 に関係 している。 この ことか らも単 に "反復横 とび,背筋力のす く -れている者 が リズ ム感に富 んでいる" と単純 に結論づけることは,むずか しい。 リズ ム感の良い人は,身体的機能がす ぐれているだけでな く,精神的 な面 もす く、、れ てい る ことを も見逃す ことがで きない。その一例 として,事 に対 しての順応適応の早 さ。積極的 で 気 力があ り自信 にあふれ,集中力に富み粘 り強い。又柔軟性のある考え方 がで き,社交性 が ある。等の特徴を上げ ることがで きる。 お わ り に 本研究は,本学学生を対象 とし体力診断 テス ト, リズム感 テス トを行 ないその結果 を統計 的 に処理 し,考察を加えた。それ に よ り次の ことが判明 した。 体力診断 テス トでは,全 国平均 と比べ る と背筋力にす ぐれ立位体前屈に低い値 を示 し,そ の他は,はば全 国平均並 み とい う結果であ った。 体力 と リズム感 との対比においてほ,反復横 とび,背筋力に正の相関あ りとい う結果が出 た。 体力を体力発達 曲線か ら単純 に解釈す る と良い成績は,10歳後半か ら20歳 にかけて現われ る。 この ことか ら考 えると,学生達の体力はすでに ピークにかかろ うとしているわけである が, 日常生活の中で身体活動が十分なされている と,体 力充実期を もっと先にのばす ことが で きる.今 この時期に運動不足にならない よ う日常生活において も,不足 している体力を習 慣的に養成す るよ う努 めなければな らない。 今後の課題 として, "歩 くことは体力づ くりの基本である" とい うことをモ ッ ト-に, 日 常生活の中で積極的に歩かせ,強い力を出せば筋力がつ き,速い動作をすればス ピー ドがつ き,運動時間が長ければ,持久力が増す ことを よく理解 させ,巧敵性 (協応性)等 の運動国 子が リズム感 とどうかかわ っているのか研究を してみたい。 往 く1)猪飼道夫 ・須藤春- 『教育生理学』第一法規 昭和43年248貢。 (2)一橋 出版保健体育編集部他 『GraphicSports<女子版
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』-橋 出版 昭和55年301-302貢O (3日 NHKみ ん な の うた」よ。第 4集,
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フランス民謡 歌 NHK東京放送児童 合唱 乱54 研究紀要 (第3号) 参 考 文 献 1 猪飼道夫 ・須藤春-著 『教育生理学』 第一法規 昭和43年 2 小野三嗣著 『健康 と体力の科学』 大修館書店 昭和49年 3 加藤橘夫著 『体力科学か らみた健康問題』 杏林書院 昭和51年 4 藤 田竜生著 『リズ ム』 風滞祉 昭和55年 5 東京都立大学身体適性学研究室著 『日本人の体力標準値第三版』 不味堂 昭和55年 6 松井三雄他著 『体育測定法』 体育の科学社 昭和43年 7 野 口義之編著 『教師のための体育測定』 第一法規 昭和44年 8 7 リ-マン ・Fェルゼ-著 『統計学入門』 学習研究社 昭和53年 9 文部省体育局スポーツ課社会体育研究全編 『スポーツテス ト(児童生徒編)』 第一法規 昭和57年