〈論文〉会計上の包括利益概念に関する一考察
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(2) 1.は. じ. め. に. 企 業 会 計 基 準 委 員 会(AccountingStandards130ardofJapan:以 6月 に 、 企 業 会 計 基 準 第25号. 下ASBJ)は. 、2010年. 「包 括 利 益 の 表 示 に 関 す る 会 計 基 準 」(以 下:包 括 利 益 基 準). を 公 表 し た 。 こ れ に よ り、2011年3月31日. 以 降 終 了 す る連 結 会 計 年 度 の年 度 末 に係 る連. 結 財 務 諸 表 か ら適 用 さ れ 、 注 記 を 除 き 、 包 括 利 益 の 表 示 が 行 わ れ る こ と に な っ たm。 国 際 的 な 動 向 に っ い て み る と、 国 際 会 計 基 準 審 議 会(lnternationalAccounting StandardsBoard:以 Standards:以. 下IASB)で ドIAS)第1号. は 、 国 際 会 計 基 準(lnternationa1Accounting 「財 務 諸 表 の 表 示(2)」 に お い て 、 包 括 利 益 概 念 を 採 択 し て. い る。 ま た 、 米 国 財 務 会 計 基 準 審 議 会(FinancialAccountingStandardsBoard:以 FASB)に. ド. お い て も ・ 米 国 財 務 会 計 基 準(StatementofFinancialAccountingStandards:. 以 一 ドSFAS)第130号. 「包 括 利 益 の 報 告(3)」で 包 括 利 益 の 表 示 を 導 入 し て い る。 こ の よ う. な 国 際 的 な 動 き に 対 応 す る た め 、ASBJは. 包 括 不L益 基 準 を 公 表 す る に 至 っ た の で あ る 。. 包括 利益 を 表 示 す る 目的 は包 括 利 益 基 準 に お い て、 ① 投 資 家 等 の 財 務 諸 表 利 用 者 の意 思 決 定 に 資 す る情 報 の 提 供 、 ② 純 資 産 と 包 括 利 益 の ク リー ン ・サ ー プ ラ ス 関 係 の 回 復 、 ⑧ 国 際 的 な 会 計 基 準 と の コ ン バ ー ジ ェ ン ス が 挙 げ られ て い る(4}。本 論 文 で は 、 ま ず 、 口 本 よ り 以 前 に 包 括 利 益 概 念 を 導 入 し て い た 、 諸 外 国 に つ い て の 検 討 を 行 う。 そ して 、ASBJよ. り. 公 表 さ れ た 包 括 利 益 基 準 が 、 包 括 利 益 の 表 示 目 的 を 果 た せ て い る か を 考 察 す る。. II.諸. 外 国 にお ける 包 括 利 益 概 念. 1.ア メ リカ に お け る包 括 利 益 概 念 FASBに FASBは. お け る包 括 利 益 の 検 討 は、 金 融 商 品 の 公 正 価 値 評 価 の 導 入 に伴 い 開 始 さ れ た. 。. ・1986年 に金 融 商 品 プ ロ ジ ェ ク トを 発 足 させ た 。 金 融 商 品 の 時 価 評 価 を行 う場 合、. 未 実 現 の評 価 損 益 の認 識 に っ な が る。FASBは. 、 金 融 商 品 の 未 実 現 損 益 を包 括 利 益 に含 め. て 認 識 す る方 法 を検 討 す る た め、1995年 に包 括 利 益 プ ロ ジ ェ ク トを 開 始 し、1997年6月 に SFAS130を (1)企. 公 表 した経 緯 が あ る(5)。 っ ま り、 包 括 利 益 は、 金 融 商 品 の 時価 評 価 にお け る未. 業 会 計 基 準 委 員 会 、 包 括 利 益 基 準 、12項. (2)IASB,IAS1,、P78sのz磁. 。. ガo〃6ゾF伽 α〃磁1S`o'6〃z61お. ,2007企 業 会計 基 準 委 員 会 、 財 務 会 計 基 準 機 構 監 訳 「国 際 財 務 報 告 基 準(IFRS)2011』 中 央 経 済 社 、 平 成21年 (3)FASB,SFAS130,Rのo漉 ノ2gCo〃z1)76加 〃∫ガ麗Z〃601解 ,1997. (4)企. 業 会 計 基 準 委 員 会 、 包 括 利 益 基 準 、21項. 。. (5)ヰ 山 栄 子 「包 括 利 益 を め ぐる議 論 の 背 景(ア メ しカ)」 包 括 利 益 研 究 委 員会 、 「包 括 利 益 を め ぐ る論 点 」 企 業 財 務 制 度 研 究 会 平 成10年 所 収 、4頁, 一94一.
(3) 実 現 評 価損 益 の 認 識 の 問 題 に伴 い、 検 討 され る こ と にな っ たの で あ る。 FASB概. 念 フ レ ー ム ワ ー ク プ ロ ジ ェ ク ト は 、1976年. に討 議 資 料. 告 の た め の 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク に 関 す る 論 点 の 分 析:財 ド:FASB討. 議 資 料)を. 公 表 し た 。FASBは. 定 に 関 して 相 対 立 す る2っ. 、FASB討. 「財 務 会 計 お よ び 財 務 報. 務 諸 表 の 要 素 と そ の 測 定6)」(以 議 資 料 に お い て、 会計 上の利 益 測. の ア プ ロ ー チ 、 す な わ ち 、 資 産 ・負 債 ア プ ロ ー チ と 収 益 ・費 用. ア プ ロ ー チ が 提 示 さ れ て い る17)。FASB討. 議 資 料 で は 、 資 産 ・負 債 ア プ ロ ー チ は 、 資 産 お. よ び 負 債 の 定 義 を 第 一 義 的 に 捉 え 、 利 益 と そ の 内 訳 要 素(収. 益 ・費 用)の. 定 義 を 導 くも の. と す る。 一 方 、 収 益 ・費 用 ア プ ロ ー チ で は 、 収 益 お よ び 費 用 の 関 連 ま た は 対 応 の 定 義 を 第 一義 的 に 捉 え 利 益 の 定 義 が 導 か れ る も の と さ れ て い る 。 資 産 ・負 債 ア プ ロ ー チ と 収 益 ・費 用 ア プ ロ ー チ の 最 も 大 き な 違 い は 、 資 産 ・負 債 ア プ ロ ー チで は貸 借 対 照 表 の項 目 が、 経 済 的 資 源 お よ び義 務 を表 す 資 産 と負 債 に限 定 され て い る点 で あ る。 この認 識 に伴 う資 産 と負 債 の 差 額 は持 分 の変 動 と して現 れ、 この差 額 が 包括 利 益 と な る 。 つ ま り、 包 括 利 益 は 資 産 ・負 債 ア プ ロ ー チ に 立 脚 し た 利 益 概 念 で あ る 。 一・ 方 、 純 利 益 は 、 収 益 ・費 用 ア プ ロ ー チ に 立 脚 し た も の で あ る。 両 ア プ ロ ー チ の ど ち ら か 一 方 を 行 う 限 り現 れ な い ギ ャ ッ プ が 、 貸 借 対 照 表 上 の 純 資 産 の 変 動 と 損 益 計 算 書 上 の 期 間 利 益 額 の 間 に 発 生 し た 。 こ れ に よ り、 貸 借 対 照 表 と 損 益 計 算 書 の 連 繋 、 っ ま り ク リ ー ン ・ サ ー プ ラ ス 関 係 が 崩 れ る こ と に な っ た 。 包 括 利 益 の 導 入 は 、 ク リ ー ン ・サ ー プ ラ ス 関 係 を 回 復 し、 情 報 の 透 明 性 を 高 め る こ と に つ な が る と さ れ る{8)。. 2.イ ギ リ ス に お け る 包 括 利 益 概 念 1974年 第6号. に 会 計 実 務 基 準 書(StatementofStandardAccountingPractice:以. 下SSAP). 「異 常 損 益 項 目 お よ び 過 年 度 修 正(9)」 に お い て 、 包 括 主 義 に 基 づ く財 務 報 告 制 度 が. 取 り 入 れ ら れ た 。 しか し、SSAP6は. 、 制 定 の 当 初 か ら、 ① 経 常 損 益 の 期 間 比 較 や 企 業 間. 比 較 が 妨 げ ら れ る 点 、 ② 情 報 の 透 明 性 が 損 な わ れ る点 の2っ の 問 題 点 が 指 摘 さ れ て い た(1① 。 こ の よ う な 問 題 に よ り、1992年 Standard:以. 下FRS)第3号. にSSAP6に. 代 わ り 財 務 報 告 基 準 書(FinancialReporting. 「財 務 業 績 の 報 告(1D」が 公 表 さ れ た 。FRS3で. 算 入 で き る 項 目 が 厳 格 に 制 限 さ れ 、 異 常 項 目 前 利 益(経 (6)FASB,Dゴ. 常 利 益)の. は、 異 常 損 益 に. 計 上 に 関 す る経 営 者 の. ∫cπ∬ゴo/zル勿 鋭07α〃ゴz〃7z,Co/zc6μ照1F7α1η6z〃07ん ノ∂7Fガ 〃α7zc∫ α1・4ccoπク 漉 〃9R61う07'"z9. 津守常弘監訳. 「FASB財. 務 会 計 の 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク 』 中 央 経 済 社 、1997年. (7)辻. 山 栄 子 、 前 掲 稿 、13-14頁. (8)辻. 山 栄 子 、 前 掲 書 、16頁. 。. (9)ASC,∬ レ4P6,Eκ'7α07伽zα 刎 ∫'ρ 〃 3α ノzゴ、P加7y加7孟 ギ リス 会 計 基 準 書 』 中 央 経 済 社 、 平 成6年 。 同 上 稿 、44-45頁. 。. 。 の π∫〃喫 ノzd974田. 中弘、原光世訳. 『イ. 。(1①. (1DASB,研S3Rρ ヵ07'加gFゴ11ωz6〆α1、P6加7〃 ωκ6,1992.田 基 準 』 中 央 経 済 社 、1994年 。 一95一. 中弘、原光世訳. 『イ ギ リ ス 財 務 報 告.
(4) 恣 意 性 の 介 入 の 余 地 が 排 除 さ れ た。 ま た、 従 来 、 積 立 金 に 直接 加 減 され て い た 項 目 の う ち 、 資 本 取 引 を 除 く、 株 主 に 帰 属 す べ き 利 得 損 失 が 、 総 認 識 利 得 損 失 計 算 書(Statement ofTotalRecognizedGainsandLosses:以 こ の よ う に してFRS3はSSAP6の. 下STRGL)に. お い て開 示 され る こ とに な った。. 問 題 点 を 克 服 す る こ と に な った。. イ ギ リ ス に お け る 財 務 業 績 報 告 の 特 徴 と して 、 ① 情 報 セ ッ トア プ ロ ー チ が 採 用 さ れ て い る こ と 、 ② リサ イ ク ル が 禁 止 さ れ て い る こ と が 挙 げ ら れ る 。 ① の 情 報 セ ッ トア プ ロ ー チ と は 、 単一 の 業 績 の み を 重 視 して 業 績 報 告 を 行 う の で は な く、 財 務 業 績 の 複 数 の 重 要 な 構 成 要 素 を 強 調 す る ア プ ロ ー チ で あ る 。 ② の リ サ イ ク ル と は 、 一 度 認 識 した 評 価 差 額 が 実 現 し た 際 、 純 利 益 に 振 り替 え る 処 理 で あ り、 イ ギ リ ス で は こ れ を 禁 止 し て い る ⑰。 イ ギ リ ス に お け る 財 務 業 績 報 告 は 、 そ の 期 に 生 じ た す べ て の 事 象 を 可 能 な 限 り そ の 期 の 業 績 と して 認 識 し、 過 去 の 業 績 と 明 確 に 区 別 す る こ と を 原 則 的 な 考 え 方 と し て い る 。 ま た 、 業 績 の 区 分 に つ い て 、 実 現/未. 実 現 と い う 視 点 で は な く、 操 業/保. 有 ま た は 営 業 取 引/資. 本取引 とい. う 視 点 に 基 づ い て 行 う こ と が 重 要 で あ る と 見 解 に 立 っ て い る(ユ3。 こ の よ う な 見 解 か ら、 イ ギ リ ス で は 、 既 認 識 実 現 利 益 の リ サ イ ク ル を 行 っ て い な い の で あ る。. 3.国 際 会 計 基 準 に お け る 包 括 利 益 概 念 IASBの. 業 績 報 告 プ ロ ジ ェ ク トで は 、 情 報 セ ッ ト ア プ ロ ー チ に 従 っ た 、 純 利 益 の 表 示 を. 排 除 す る マ ト リ ッ ク ス 形 式 を 推 進 す る 形 で プ ロ ジ ェ ク トが 進 め ら れ た 。 マ ト リ ッ ク ス 形 式 に よ る業 績 報 告 の 方 式 の も と で は 、 純 利 益 の 表 示 が 排 除 さ れ 、 リサ イ ク ル も 行 わ れ な い た め 、 包 括 利 益 が 重 視 さ れ る 。 しか し、 こ の よ う な 報 告 方 法 は 、 現 行 の 報 告 様 式 か ら乖 離 し て い る点 、 実 証 研 究 に お い て 、 包 括 利 益 が 純 利 益 よ り有 用 で あ る と の 結 果 を 得 て い な い と い う反 対 意 見 が 出 さ れ た 。 そ の た め 、 業 績 報 告 プ ロ ジ ェ ク トの 発 展 が 見 られ な くな っ た 個。 そ の 後 、IASBとFASBの FASBの. 業 績 報 告 の 統 合 の 必 要 性 が 考 え ら れ 、2004年4月. 、IASBと. 共 同 プ ロ ジ ェ ク ト 『業 績 報 告 』 が 示 さ れ た 。 こ の 共 同 プ ロ ジ ェ ク トは 、 要 求 さ れ. る 一 組 の 財 務 諸 表 の 構 築 と 比 較 情 報 を 扱 う フ ェ ー一ズA、 本 的 な 問 題 を 扱 う フ ェ ー ズB、 進 め ら れ た 。 フ ェ ー ズAは. 財 務 諸 表 の 情 報 開 示 に お け る基. 中 間 財 務 諸 表 に っ い て 扱 う フ ェ ー ズCの. 、2006年3月. に 公 表 さ れ た 「IAS第1号. 改 訂 に 関 す る 公 開 草 案 一 改 訂 さ れ た 表 示 」 を 経 て 、2007年9月 い う 形 で 、 具 体 案 の 提 示 が 行 わ れ た 。 さ ら に2010年5月 益 項 目 の 表 示 』IAS1の. 三 段 階 で検 討 が. にIASBか. 『財 務 諸 表 の 表 示 』 ら改 訂IAS1と. に は 「公 開 草 案 『そ の 他 の 包 括 利. 改 訂 」 を 公 表 し、 そ の 他 の 包 括 利 益 の 区 分 の 表 示 方 法 を 中 心 に さ. (19齊 野 純 子 『イ ギ リス会計 基 準 設 定 の 研 究 』 同 文 舘 、 平 成18年 、106頁 。 (13辻 山栄 子 、 前 掲 稿 、58頁 。 (19河 合 由佳 理 「包括 利 益 と国 際 会 計 基 準 』 同 文 舘 、 平 成22年 、1849頁 。 一96一.
(5) ら に 改 訂 を 試 み て い る 。 フ ェ ー ズBは. 、2008年10月. に討 議 資 料. 「財 務 諸 表 の 表 示 に 関 す. る予 備 的 見 解 」 が 公 表 さ れ て い る ㈲。 改 訂IAS1で. は、 純 利 益 の表 示 を 認 め、 損 益 計 算 書 様 式 に従 った 包 括 利 益 の報 告 を 提 案. し て い る 。 し か し、 フ ェ ー ズBで. は 、 業 績 報 告 を 行 う計 算 書 で 純 利 益 を 報 告 せ ず 、 活 動. ご と の 区 分 方 法 に 着 目 し た 検 討 を 行 っ た 。IASBとFASBの. 共 同 プ ロ ジ ェ ク トの 提 案 は 、. 情 報 セ ッ トア プ ロ ー チ の 観 点 を 取 り入 れ た も の で あ り、 長 期 的 な 視 点 に よ る共 同 プ ロ ジ ェ ク トで あ っ た 。 し か し、 共 同 プ ロ ジ ェ ク トに お け る 、 審 議 の 途 中 か ら、 純 利 益 の 表 示 を 認 め る 姿 勢 と な っ た(1⑤ 。 当 初 、 批 判 が 多 か っ たIASBの. 業 績 報 告 プ ロ ジ ェ ク ト は、 こ の. よ うな背 景 を経 て 国 際 的 な コ ンバ ー ジ ェ ンス に向 け て の検 討 が進 め られ る よ う にな っ た。. III.日. 2010年6月30日. に、ASBJか. 注 記 を 除 き、2011年3月31日. 本 に お ける 包 括 利 益 概 念. ら、 包 括 利 益 基 準 が 公 表 さ れ た 。 この 包 括 利 益 基 準 は、 以 降 終rす. る連 結 会 計 年 度 の 年 度 末 に係 る連 結 財 務 諸 表 か. ら適 用 され て い る(P。包 括 利 益 基 準 の 公 表 以 前 は、 包 括 利 益 お よ び そ の他 の包 括 利 益 を 財 務 諸 表 に 表示 す る会 計 基 準 は 存 在 して い なか った。 一 方 、IASBはIAS1に. お い て、 包 括 利 益 概 念 を 採 択 し、FASBもSFAS130で. 益 の表 示 を 導 入 した。ASBJは. 、包括 利. こ の よ うな 国 際 的 な動 きに 対 応 す る た め、 包 括 利 益 基 準 を. 公 表 す る に 至 っだ18}。 包 括 利 益 基 準 で は、 包 括 利 益 を次 の よ う に 定 義 して い る。 す な わ ち、 包 括 利 益 と は、 「あ る 企業 の 特 定 期 間 の 財務 諸 表 に お い て 認 識 され た 純 資 産 の 変 動 額 の うち、 当 該 企 業 の 純 資 産 に 対 す る持 分 所 有 者 との 直 接 的 な取 引 に よ らな い部 分 を い う。 当 該 企 業 の純 資産 に 対 す る持 分 所 有 者 に は、 当 該 企 業 の株 主 の ほ か 当該 企 業 の 発 行 す る新 株 予 約 権 の所 有 者 が 含 まれ 、 連 結 財 務 諸 表 に お いて は、 当 該 企 業 の 子 会 社 の 少 数 株 主 も含 まれ る(19」と定 義 さ れ て い る。 次 に、 そ の 他 の包 括 利 益 は包 括 利 益 基 準 に お い て次 の よ う に定 義 され て い る。 す な わ ち、 そ の 他 の 包 括 利 益 と は、 「包 括 利 益 の う ち 当期 純 利 益 及 び少 数 株 主 損 益 に 含 ま れ な い部 分 を い う。 そ の他 の包 括 利 益 は、 個 別 財 務 諸 表 に お い て は包括 利 益 と当 期 純 利 益 と の間 の差 額 で あ り、 連 結 財 務 諸 表 にお いて は包 括 利 益 と少 数 株 主 損 益 調 整 前 当 期 純 利 益 と の問 の差 額 で あ る。 連 結 財 務 諸 表 にお け る そ の他 の包 括 利 益 に は、 親 会 社 株 主 に係 る部 (1∂ 同 上 書 、19-20頁. 。. (1⑤ 同 上 書 、20-22頁. 。. ㈲. 企 業 会 計 基 準 委 員 会 、 包 括 利 益 基 準 、12項. ㈹. 同 上。. 。. 働. 企 業 会 計 基 準 委 員 会 、 包 括 利 益 基 準 、4項 。. 97.
(6) 分 と少 数 株 主 に係 る部 分 が 含 ま れ る剛. と され て い る。. 包 括 利 益 基 準 に お い て 、 包 括 利 益 の 表 示 目 的 は、 「期 中 に 認 識 さ れ た 取 引 及 び経 済 的 事 象(資 本 取 引 を 除 く。)に よ り生 じた純 資産 の 変 動 を報 告 す る こ とで あ る。 包 括 利 益 の 表 示 に よ って提 供 さ れ る情 報 は、 投 資 家 等 の 財 務 諸 表 利 用 者 が 企業 全体 の事 業 活 動 に っ い て 検 討 す る の に役 立 っ こ とが期 待 され る と と もに、 貸 借 対 照 表 との 連携(純. 資 産 と包 括 利 益. と の ク リー ン ・サ ー プ ラ ス関 係)を 明 示 す る こ とを通 じて、 財務 諸 表 の理 解 可能 性 と比 較 可 能 性 を 高 め、 ま た、 国 際 的 な 会 計 基 準 と の コ ンバ ー ジ ェ ンス に も資 す る もの と考 え られ る剛. と して い る。 っ ま り、 包 括 利 益 を表 示 す る 目的 は、 ① 投 資 家 等 の 財 務 諸 表 利 用者 の. 意 思 決 定 に資 す る情 報 の 提 供 、 ② 純 資 産 と包 括 利 益 の ク リー ン ・サ ー プ ラ ス関 係 の 回 復 、 ③ 国 際 的 な会 計 基 準 との コ ンバ ー ジ ェ ンスが 挙 げ られ て い る。 包 括 利 益 を 表示 す る計 算 書 の形 式 につ いて は、 当期 純 利 益 を表 示 す る損 益 計 算 書 と、 包 括 利 益 を表 示 す る包 括 利 益 計 算書 か らな る方 式(2計. 算 書 方 式)と 、 当 期純 利 益 の 表 示 と. 包 括 利 益 の 表 示 を1っ の 計 算 書(損 益 及 び包 括 利 益 計 算 書)で. 行 う形 式(1計. 算 書方 式). の いず れ か の 選 択 が 認 め られ て い るω。2計 算 書 方 式 と1計 算 書 方 式 を 比 較 す る と、 売 上 高 を ト ップ ラ イ ンと し、 包 括 利 益 を ボ トム ラ イ ン と して い る点 は、 両 方 式 と も同 じで あ る。 両 方 式 の違 い は、 上 述 した財 務 諸 表 を 当 期 純 利 益 で 区 切 る か 否 か と い う点 で あ る⑳。 そ の 他 の 包 括 利 益 と、 ボ トム ライ ンで あ る包 括 利 益 の 表 示 方 法 に関 して、 包 括 利 益 基 準 で は 「(1)個 別 財 務 諸 表 に お い て は、 当 期純 利益 にそ の 他 の 包 括 利 益 の 内訳 項 目 を加 減 し て 包 括 利 益 を 表 示 す る。(2)連. 結 財 務 諸 表 に お い て は、 少 数 株 主損 益 調 整 前 当 期 純 利 益 に. そ の 他 の包 括 利 益 の 内訳 項 目を 加 減 して 包 括 利 益 を 表 示 す る⑳」 と定 め て い る。 表3.1は、 2計 算書 方 式 と1計 算:書方 式 の 表 示 例 で あ り、 この表 示 例 は、 包 括 利益 基 準 の 表 示 例 に基 づ い て い る⑳。. ②㊥ 企 業 会 計 基 準 委 員 会 、 包 括 利 益 基 準 、5項 。 ⑳ 企 業 会 計 基 準 委 員会 、 包括 利 益 基 準 、21項 。 ⑳ 企 業 会 計 基 準 委 員会 、 包 括 利 益基 準 、11項 。 ⑳ 石 山宏 「「包 括 利 益 計 算 書 の 表 示 に関 す る 会 計 基 準 」 に か か る論 点 一基 礎 概 念 との 整 合 性 の視 点 よ り 一」 「産 業 経 理 』 第71巻 第1号78頁 。 ⑳ 企 業会 計 基 準 委 員 会 、 包 括 利 益 基 準 、6項 。 ⑳ 企業会計基準委員会、包括利益基準 一98-一.
(7) IV.日. 本 に お け る包 括 利 益概 念 の 考 察. 1.連 結 基 礎 概 念 にお け る検 討 連 結 財 務 諸 表 を作 成 す る基 本 的 な考 え 方 と して、 親 会 社 説 と経 済 的 単一 体 説 の2っ. に大. 別 す る こ とが で き る。 親 会 社 説 は、 企 業 集 団 の持 分比 率 を考 慮 し、 企 業 集 団 は最 大 持 分 を 有 して い る親 会社 の もの で あ る とす る 考 え方 で あ る。 一 方 、 経 済 的 単一 体 説 は、 親 会 社 の み な らず 、 少数 株1三も主 体 と して 連 結 財 務 諸表 を 作 成 す る考 え 方 で あ る。 親 会 社 説 と経 済 的単 一 体説 で は、 少 数 株 主 の 捉 え 方 に相 違 が あ る。 っ ま り、 少 数 株 主 を 所 有 者 に含 め るか 所 有者 に含 め な い か に よ り、 少 数 株 主 持 分 を 負 債 の 部 に表 示 す るか 純 資 産 の 部 に表 示 す る か が 異 な る⑳。 包 括 利 益 基 準 で は、 連 結 財 務 諸 表 に お け る 包括 利 益 の 計 算 の 表 示 方 法 と して次 の よ う に示 して い る。 っ ま り 「(1)当 期 純 利 益 に 、 親 会 社 株 主 に 係 る そ の 他 の 包 括 利 益 を 加 減 して親 会 社 株 主 に 係 る包 括 利 益 を 計 算 し、 これ に少 数 株 主 に 係 る包 括 利 益 を加 減 す る方 法(2)少. 数 株 主 損 益 調 整 前 当期 純 利 益 に、 そ の 他 の包 括 利 益(親 会 社 株 主 に 係 る部 分 と. 少 数 株 主 に係 る部 分 の 合計)を. 加 減 す る方 法 剛. で あ る。 さ らに 「前項 の(1)の. 表示方. 法 は、 当 期 純 利 益 の計 算 と の連 携 が よ り明 確 で あ る こ と や、 連 結 株 主 資 本 等 変動 計 算 書 や連 結 貸 借 対 照 表 の数 値 と の 関 連 づ けが しや す い と い った 利 点 が あ る。 一 方 、(2)の. 表. 示 方 法 は、 包 括 利 益 に 至 る過 程 が 明 瞭 で あ る こ とや 、 そ の他 の 包 括 利 益 の 内訳 の 表 示 に. ②⑤ 河 合 由佳 理 、 前 掲 書 、66-67頁 。 ⑳ 企業 会計 基 準 委 員 会 、 包括 利 益 基 準 、28項 。 -99.
(8) っ い て 国 際 的 な 会 計 基 準 との コ ンバ ー ジェ ンス を図 る こ とが で き る とい っ た利 点 が あ る。 両 者 を比 較 検 討 し た結 果 、 包 括 利 益 の 表 示 を 導 入 す る 目 的 と の 関 連 性 か ら は、(2)の. 利. 点 の 方 が よ り重 要 と考 え られ る こ と か ら、(2)の. と. 説 明 して い る。 包 括 利 益 基 準 で は、(1)の. 表 示 方 法 を 採 用 す る こ と と した 剛. 表 示 方 法 は、(2)の. 表 示 方 法 と比 較 す る と情. 報 量 は 多 い が 、 連 結 株 主 資 本 等 変 動 計 算:書か ら情 報 を 入 手 で き る。 そ の た め 、 包 括 利 益 導 入 の 目的 で あ る 国 際 的 な会 計 基 準 との コ ンバ ー ジ ェ ンス を測 れ る(2)の. 表 示 方 法 を採. 用 した。 包括 利 益 基 準 は、 国 際 的 な 会計 基 準 との コ ンバ ー ジェ ンス を図 る た め、 経 済 的 単一 体 説 に基 づ く連 結 包 括 利益 計 算 書 の様 式 を採 用 した 。 しか し、 連 結 損 益 計 算 書 お よ び連 結 貸 借 対 照 表 、 連 結 株 主 資 本等 変 動 計 算 書 は親 会 社説 に 基 づ い た様 式 の ま ま で あ る。 っ ま り、 連 結 損 益 計 算 書 に お け る純 利 益 に っ い て は、 親 会社 説 に 基 づ いて 親 会 社 株 主 に帰 属 す る部 分 の み か らな る。 一 方 、 包 括 利 益 に っ い て は、 経 済 的単 一 体 説 に基 づ いて 親 会 社 株 主 に係 る 部 分 と と も に少 数 株 主 に係 る部 分 も含 め る。 この よ うに 、 連 結 包 括 利 益 計 算 書 と連 結 損 益 計 算書 は異 な る連 結 基 礎 概 念 に基 づ い て い る⑳。 包括 利 益基 準 に基 づ く、 包 括 利 益 計 算 書 ま た は損 益 お よ び 包括 利 益 計 算 書 は、 ボ トム ラ イ ンに 包括 利 益 が 表 示 され て い る。 そ の ため 、 国 際 的 な 会計 基 準 と同 等 の 表 示 で あ り、 表 小 レベ ル で の コ ンバ ー ジ ェ ン ス は達 成 され て い る。 一 方 、 理 論 的 に み る と、 包括 利 益 基準 で は・ 親 会 社 説 に基 づ く純 利 益 と、経 済 的単 一 体 説 に基 づ く包 括 利 益 を採 って い るが、 日 本 に お け る連 結 基 礎 概 念 は親 会 社 説 で あ る。 一一方 の 国 際 的 な会 計 基 準 で は経 済 的単 一 体 説 を 採 って い る。 っ ま り、 親 会 社 説 に基 づ く会 計 処理 に よ り計 算 され た包 括 利 益 の数 値 を経 済 的 単 一 体 説 に よ る表 示 形 式 に従 って 示 して い る に す ぎ な い" )。した が って 、 表 示 レベ ル で の コ ンバ ー ジ ェ ンス は達 成 され て い るが 、 理 論 的 な コ ンバ ー ジ ェ ンス は達 成 され て い な い とい え る。. 2.ク. リ ー ン ・サ ー プ ラ ス 関 係 に お け る 検 討. 包 括 利 益 基 準 に お い て 、 包 括 利 益 を 表 示 す る 目 的 の1っ. に 、 純 資 産 と 包 括 利 益 の ク リー. ン ・サ ー プ ラ ス 関 係 の 回 復 が 挙 げ ら れ て い る。 ク リ ー ン ・サ ー プ ラ ス と は 一 般 に 「す べ て の 損 益 項 目が 、 損 益 計 算 書 に記 載 され る こ とに よ って 、 貸 借 対 照 表 資本 の部 の利 益 剰 余 金 の 発 生 原 因 の す べ て が 明 らか に な っ て い る こ と剛. で あ る と され て い る. 。. 囎 企 業 会 計基 準 委 員 会 、 包 括 利 益 基 準 、29項 。 ⑳ 同上 稿 、67頁 。 ⑳ 田 中讐 二、 「包括 利 益 表 示 基 準 の 批 判 的 検 討 」 「会 計 ・監 査 ジ ャー ナ ル 』 第24巻 第6号 、67頁 。 G1)佐 藤 信 彦 編 「業績 報 告 と包 括 利 益 』 白 桃 書 房 、 平 成15年 、72頁 。 一100-. 一.
(9) 包 括 利 益 は、1会 計 期 間 中 の 純 資 産 の変 動 額 の うち、 資 本取 引 を 除 い た 部 分 で あ り、 純 資産 と包括 利 益 との ク リー ン・サ ー プ ラ ス関 係 が 成 り立 っ こと に な る。 一 方 、討 議 資 料 「財 務 会 計 の 概 念 フ レー ム ワ ー ク」(以 ド:討 議 資 料)に. お い て、 純 利 益 は、 純 資産 の 変 動 額. の うち、 リス クか ら解 放 され た投 資 の成 果 で あ り、報 告 主 体 の 所 有 者 に帰 属 す る部 分 を示 し、純 資産 の うち株 主 資本 だ けを 増 減 させ る と定 義 され て い る(32。この純 利 益 の 定義 で は、 株 主 資 本 と純 利 益 との ク リー ン ・サ ー プ ラス 関 係 を 表 して い る こ と に な る。 っ ま り、 日本 で は、 包 括 利 益 基 準 にお いて 純 資産 と包括 利 益 の ク リー ン ・サ ー プ ラス関 係 、 討 議 資料 に お いて 株 主 資 本 と純 利 益 の ク リー ン ・サ ー プ ラ ス関 係 と い う二 層 の ク リー ン ・サ ー プ ラス 関 係 が み られ る ので あ る⑯。 口本 で は、 ス ト・ ソク と フ ロー の 関 係 が 、 株 主 資 本 と純 利 益 の関 係 、 純 資産 と包括 利 益 の 関 係 と い う二 層 の構 造 に な って い る。 いず れ の 利 益 計 算 に お い て も、 資本 取 引 に よ る部 分 は除 か れ るが 、 取 引 の範 囲 が 異 な る。 純 利 益 の 場 合 は、 親 会 社 株 主 との 直接 的 な取 引 の み が 資本 取 引 と さ れ る。 これ に 対 し、 包 括 利 益 の場 合 は、 親 会社 株 主 と子 会社 の 少 数 株 主 お よ び新 株 予約 権 者 の所 有 者 との 直 接 的 な取 引 も含 ま れ る。 っ ま り、株 主 資 本 と純 利 益 にお け る 資 本取 引 と、純 資 産 と包 括 利 益 に お け る資 本 取 引 と い う2種 類 の 資本 取 引 が存 在 す る。 親 会社 株 主 との 直接 的 な 取 引 は、 純 利 益 と包 括 利 益 い ず れ の 利 益 の 計 算 にお いて も資 本 取 引 と され る。 しか し、 少 数 株 主 お よ び新 株 予 約 権 の 所 有 者 との 直 接 的 な取 引 は、 純 利 益 で は損 益 取 引 と して扱 わ れ るが 、 包 括 利 益 で は 資 本取 引 と して 扱 わ れ る㈲。 包 括 利 益 基 準 で は、 企 業 の 純 資 産 に対 す る持 分 所 有 者 に は、 新 株 予 約 権 の所 有 者 も含 ま れ、 新 株 予 約 権 の 所 有 者 との 直 接 的 な取 引 は 資本 取 引 と され て い る。一・ 方 、企 業 会 計 基 準 適 用 指 針 第17号 「払 込 資 本 を増 加 させ る 可能 性 の あ る 部 分 を 含 む複 合 金 融 商 品 に 関 す る会 計 処 理 」(以F:適 用 指 針 第17号)で. は、 「自己新 株 予約 権 の取 得 は、 株 主 との 資 本取 引 で は な く、 新 株 予 約. 権 者 と の損 益 取 引 で あ る剛. と さ れ て い る。 ま た、 適 用 指 針17号. において、 自己新株 予. 約 権 消却 差 額 や 自己新 株 予 約 権 処 分 差 額 は 、 当期 の 損 益 と して 処 理 さ れ る と説 明 さ れ て い る。 包括 利 益 基 準 にお いて は、 新 株 予 約 権 の 所 有 者 と の直 接 的 な取 引 は 資本 取 引 と され る 一 方 、 適 用指 針 第17号. に お い て新 株f約 権 の所 有 者 との 直 接 的 な取 引 を 損 益 取 引 と して. 扱 って い る。 この よ うに、 包 括 利 益 基 準 と適 用指 針 第17号. で は新 株 予 約 権 の所 有 者 との. 直接 的 な取 引 の扱 い が異 な る⑯。 新 株 予 約 権 所 有 者 の 権利 が失 わ れ て 親 会社 株 主 等 の他 の持 分 権 者 の 持 分 が増 加 す る場 合、 (32. 討 議 資 料 、para.9.. G3). 田 中 建 二 、 前 掲 稿 、68頁. ㈹. 同上。. ㈹. 企 業 会 計 基 準 適 用 指 針 第17号. ㈹. 田 中 建 二、 前 掲 稿 、68頁. 。 、38項. 。. 。. 101一.
(10) 親 会 社 株 セや 少数 株 並との 直 接 的 な 取 引 に よ らず 、 親 会 社 株 主 持 分 や 少 数 株 主 持 分 が 増 加 す る た め、 資 本取 引 に は該 当 しな い と して い る6り 、,あるい は、 権 利 失 効 は、 権利 放 棄 に よ る 純 資 産 の 減 少 とい う新 株 予約 権 者 と の直 接 的 な取 引 と、 払 込 金額 が 失 効 後 も会 社 に と ど ま る こ とに よ る純 資 産 の 増 加 と い う非 直 接 的 取 引 の2っ の 要 素 で 構 成 さ れ る。 そ の た め、 純 資 産 を 構 成 す る項 目間 の 振 替 で あ って も、 純 資産 の増 加 と い う非 直 接 的 取 引 の要 素 が 直 接 的 取 引 に よ らな い部分 と して 包括 利益 お よ び純 利益 に含 め られ る と説 明 され て い る68)。 株 豆資 本 と純 利 益 の 観 点 に お け る 資 本取 引 お よ び 純 資 産 と包 括 利 益 の観 点 か らの資 本 取 引 は混 在 して い る。 そ の た め、 一 方 で は損 益取 引 とな る ものが 、 他 方 で は 資本 取 引 と して 扱 わ れ る。 っ ま り、 株 主 資本 と純 利 益 との ク リー ン ・サ ー プ ラス関 係 お よ び純 資産 と包 括 利 益 の ク リー ン ・サ ー プ ラ ス関 係 を 同 時 に 満 た す こ と は困 難 で あ る と して い る(39}。. 3.包 括 利 益 の 有 用 性 に お け る 検 討 伊 藤 の 所 説 に よ る と、 包 括 利 益 の 有 用 性 に 関 す る 最 初 の 実 証 研 究 で あ る、 Dhaliwal,SubramanyamandTrezevant(1999)に. お い て は 、1994年. か ら95年. の米国 企. 業 を サ ンプ ル と して、 包括 利 益 と純 利 益 の 有 用 性 比 較 を行 った。 この検 証 の 結 果 、 株 価 や 株 式 リ タ ー ン と の 関 連 性 の 観 点 、 将 来 業 績 の 予 測 と い う観 点 そ れ ぞ れ に お い て 、 包 括 利 益 よ り も 純 利 益 の 方 が 有 用 で あ る と し た 。O'HanlonandPope(1999)は Cahan,Courtenay,GronewollerandUpton(2000)は 倉(2008)は. イ ギ リス企 業 、. ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド企 業 、 若 林 ・八 重. 口 本 企 業 を そ れ ぞ れ サ ン プ ル に し て 、 同 様 の 検 証 結 果 を 導 い た 。 こ れ に 対 し、. 包 括 利 益 が 純 利 益 と 比 較 して 有 用 で あ る こ と を 実 証 し た 研 究 も あ る。BiddlealldChoi(2006) は 、1994年. か ら98年. の 米 国 企 業 を サ ン プ ル と して 、Biddle,SeowandSiegel(1995)に. お. い て 純 利 益 と 包 括 利 益 お よ び そ の 構 成 要 素 の 有 用 性 比 較 を 実 施 し た。 そ して 、 純 利 益 に 比 べ 包 括 利 益 が 有 用 で あ る と結 論 付 け た 。 ま た 、Kanagaretnem. ,MathieuandShehata(2009). で は 、 カ ナ ダ 企 業 を サ ン プ ル と して 、 売 却 可 能 有 価 証 券 の 価 値 変 動 額 が 純 利 益 に 対 し、 追 加 的 情 報 内 容 を 有 し て い る こ と を 明 らか に し た 。Chambers,Linsmeier,Shakespeareand Sougiannis(2007)は. 、1998年. 以 降 、SFAS130に. よ り包括 利 益 の 開 示 が 強 制 的 に求 め られ. る よ う に な っ た た め 、 価 値 関 連 性 に プ ラ ス の 影 響 を 与 え て い る こ と を 実 証 した ㈲。 以 上 の 実 証 研 究 に よ り、 包 括 利 益 は 純 利 益 と 比 較 して 、 必 ず し も有 用 と は い え な い 。 し か し、 売 却 可 能 有 価 証 券 の 評 価 損 益 が 純 利 益 に 追 加 的 情 報 内 容 を 提 供 し て い る。 さ ら に 、. Gり 辻 山栄 子、 前 掲 稿 、 斎 藤 静 樹 編 、 前 掲 書 所 収 、137頁 。 ㈱ 勝 尾 裕 子 「重 要論 点 の捕 捉 と検 討 」、斎 藤 静 樹 編 、 同 上 書 所 収 、163頁 。 G9)田 中 建 二 、 前 掲 稿 、69頁 。 ㈲ 伊 藤 邦 雄 、 「包 括 利 益 開 示 の意 義 ・影 響 ・課 題 」 「企 業 会 計 』 第63巻 第3号 、20頁 。 一102一.
(11) 包 括 利益 の 強制 開 示 に よ り、 価 値 関 連 性 を も って い る と い う実 証 研 究 もあ る。. V.む. すび. 包 括 利 益 基 準 に お い て、 包 括 利 益 を表 示 す る 目的 は、 ① 投 資家 等 の財 務 諸 表 利 用者 の意 思 決 定 に資 す る情 報 の提 供 、 ② 純 資 産 と包 括 利 益 の ク リー ン ・サ ー プ ラ ス関 係 の 回 復 、⑧ 国 際 的 な会 計 基 準 との コ ンバ ー ジ ェ ン スが 挙 げ られ て い る。 連 結 基 礎 概 念 に お け る検 討 で述 べ た よ う に、 包 括 利 益基 準 に 基 づ く計 算 書 は、1計 算 書 方 式 と2計 算 書 方 式 と もに ボ トム ラ イ ンに包 括 利 益 が 表 示 され る。 国 際 的 な 会 計 基 準 にお い て も同様 の 表 示 が 行 わ れ る た め、 表 示 レベ ル に お け る コ ンバ ー ジェ ンス は達 成 され て い る。 しか し、 理 論 的 にみ る と、 包 括 利 益 基 準 で は 親 会 社 説 に基 づ く純 利 益 と、 経 済 的 単 一 体 説 に基 づ く包 括 利 益 を採 って い るが 、 日本 の 連 結 基 礎 概 念 は 親 会 社 説 に基 づ い て い る・ 一・ 方 、 国 際 的 な会 計 基 準 の連 結 基 礎 概 念 は 、 経 済 的 単 一・ 体 説 に基 づ い て い る。 っ ま り、 表 示 レベ ル で の コ ンバ ー ジ ェ ン スは達 成 され て い るが 、 理 論 的 な コ ンバ ー ジ ェ ン スは達 成 さ れ て い な い。 ま た 、 ク リー ン ・サ ー プ ラ ス関 係 にお いて は、 包 括 利 益 基準 にお い て 、 純 資 産 と包 括利 益 との ク リー ン ・サ ープ ラ ス関 係 、 討 議 資 料 で は、 株主 資 本 と純 利 益 の ク リー ン ・サ ー プ ラ ス関 係 と い う二 層 の ク リー ン ・サ ー プ ラ ス関 係 が 求 め られ て い る。 ど ち らの利 益 計 算 も、 資 本 取 引 に よ る部 分 は除 か れ るが 、 取 引 の 範 囲 が 異 な り、 純 利 益 は、 親 会 社 株 主 と の 直 接 的 な取 引 のみ が 資 本 取 引 と さ れ る。 一ヲ∫、 包 括 利 益 は、 親 会 社 株 主 と子 会 社 の少 数 株 主 お よ び新 株 予約 権 の所 有 者 との 直接 的 な 取 引 も含 まれ る。 っ ま り、 株 主 資本 と純 利益 に お け る 資 本 取 引 、 純 資 産 と包 括 利 益 に お け る 資 本 取 引 の2種 類 の 資 本 取 引 が 存 在 して い る。 この た め、 新 株 予 約 権 の よ う に、 適 用 指 針 第17号 で は損 益 取 引 と して 扱 わ れ る一 方 で、 包括 利益 基 準 で は資 本取 引 と して 扱 わ れ る項 目が 存 在 す る。 っ ま り、 株 主 資 本 と純 利 益 との ク リー ン ・サ ー プ ラ ス関 係 と純 資 産 と包 括 利 益 の ク リー ン ・サ ー プ ラ ス関 係 を同 時 に満 たす こ と は困 難 で あ る。 有 用性 に お け る検 討 で は、 ア メ リカ は、1997年 のSFAS130の 年 か らIFRSの. 公 表 、 欧 州 諸 国 で は2005. 適 用 に よ り、 そ れ ぞ れ包 括 利 益 の 開 示 が行 わ れ て い る。 これ に よ り、 包 括. 利 益 に関 す る関 心 が高 ま り、 包括 利 益 情 報 の 実 証 研 究 が進 む こ とに な った。 包括 利 益 と純 利 益 の比 較 を行 った結 果 、純 利 益 の 方 が 有 用 で あ る と した 研 究 や 、 包 括 利 益 の 方 が 有 用 で あ る とす る研究 な ど様 々 で あ る。 っ ま り、 包 括 利 益 は純 利 益 と比 較 して 、 必 ず しも有 用 で あ る と は いえ な い。 一103一.
(12) 引. ASB[1992]:」. 覗5'3R6ヵ07'ガ7zg乃. 用. 文. 〃α〃磁1P8吻7〃zα. 献. 〃{〕6,1992.田. 中弘 、 原 光 世 訳. 「イ ギ リ ス 財 務 報. 告 基 準 書 』 中 央 経 済 社 、 平 成6年 。 ASC[1974]:∬. 跳P6Eκ'7α07ゴ1/zθ. η πρ〃 ∫ 伽4P7107y如7.46加. ∫'〃 ρ繊1974.田. 中 弘、 原 光 世 訳. 「イ ギ リ ス 会 計 基 準 書 』 中 央 経 済 社 、 平 成6年 。 FASB[1976]:Dゴ. ∫6π∬ゴ07zM8初070〃. R6ヵo漉7z息1976津. 伽 規,Co/zcψ. 守常 弘監訳. 伽 α1Fη. 『FASB財. 魏 ρz〃07々 ノ∂7Fガ 〃αノzcゴ α1/1cω. π〃,ゴ フzg. 務 会 計 の 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク 』 中 央 経 済 社 、1997. 年 FASB[1997]:SE4S136㌧. 、Pψ07'ガノzgCo〃 ψ76加 ノz∫ 加6、乃z60〃z6,1997.. 石 山 宏[2011]:「. 「包 括 利 益 計 算 書 の 表 示 に 関 す る 会 計 基 準 」 に か か る 論 点 一 基 礎 概 念 と の 整 合 性 の. 視 点 よ り 一 」 「産 業 経 理 』 第71巻 伊 藤 邦 雄[2011]:「 河 合 由 佳 理[2010]:「. 第1号(平. 成23年4月). 包 括 利 益 開 示 の 意 義 ・影 響 ・課 題 」 『企 業 会 計 』 第63巻. 第3号(平. 成23年3月). 包 括 利 益 と 国 際 会 計 基 準 」 同 文 舘 、 平 成22年. 企 業 会 計 基 準 委 員 会[2007]:「. 企 業 会 計 基 準 適 用 指 針 第17号. 払 込 資 本 を 増 加 さ せ る 可 能 性 の あ る部. 分 を 含 む 複 合 金 融 商 品 に 関 す る 会 計 処 理 」 平 成IL9年4月 企 業 会 計 基 準 委 員 会[2010]:「. 企 業 会 計 基 準 第25号. 包 括 利 益 の 表 示 に 関 す る 会 計 基 準 」 平 成22年6. 月 斎 藤 静 樹 編[2011]:「. 詳解. 「討 議 資 料. 財 務 会 計 の 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク 」(第2版)』. 中央経済社、平. 成23年 佐 藤 信 彦 編[2003]:「. 業 績 報 告 と包 括 利 益 』 白 桃 書 房 、 平 成15年. 齊 野 純 子[2006]:「. イ ギ リ ス 会 計 基 準 設 定 の 研 究 」 同 文 舘 、 平 成18年. 田 中 建 二[2012]:「. 包 括 利 益 表 示 基 準 の 批 判 的 検 討 」 『会 計 ・監 査 ジ ャ ー ナ ル 』 第24巻. 第6号(平. 成24. 年6月) 包 括 利 益 研 究 委 員 会 編[1998]:『. 包 括 利 益 を め ぐ る 論 点 』 財 団 法 人 企 業 財 務 制 度 研 究 会 、 平 成10年. 一104一.
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