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田中毎実先生と学校教育センター

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Academic year: 2021

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田中毎実先生と学校教育センター

矢野 裕俊

(武庫川女子大学教育学部教授) 田中毎実先生が 2021 年3月に武庫川女子大学を去られるに当たって,思い出したことを書き連ね てみる。 先生が本学に来られたのは今から9年前の2012 年 4 月のことであった。京都大学高等教育研究開 発推進センターのセンター長を定年で退職された直後であった。本学では,教育学科の教授として教 育哲学や大学院の授業,研究指導を担当され,2015 年 4 月から新しく設置された学校教育センター のセンター長となり,以来6年間にわたってこの新しいセンターの内実を作ることに熱心に取り組ん でこられた。 学校教育センターは,かつて諸資格指導室と呼ばれた頃からの教職支援の業務を引き受ける部署と して設立された。センターの設立により全学の教職課程がクローズアップされるようになった。文学 部と家政学部の2学部のみであった時代から,本学は教員養成を重要な使命とし,近隣府県を中心に 多数の教員を送り出してきたという,地域教育への貢献の歴史がある。今日では,教職課程を持つ学 科が大学9学科,短大7学科までに広がり,文字どおり「教育の武庫川」の看板にひけをとらない実 績が築き上げられてきた。 文部科学省の教員養成政策は学部段階の教職課程を強化する方向で進められており,かつてのよう な開放免許制度のなかで専門教育を受ける傍ら教員免許状でも取っておこうといった安易な動機によ る教職課程履修が困難になっている。そうしたなかで教職課程を維持するのかどうかという判断は次 第に難しいものになってきているのである。加えて,とりわけ都市部においては教員採用「冬の時代」 を迎えることが必至の状況にある。本学の教員養成も重大な岐路に差し掛かっている。本学に学校教 育センターが設立されたのは,まさしくこのような岐路に立った地点においてであった。 田中先生は,教職課程を有する全ての学科に対してヒアリングを行い,教職課程を今後も責任をも って維持していくつもりがあるのかどうか,学科の意向をまず確かめることから始められた。教職課 程は,それを有する学科において学生たちの卒業後の進路の一つとして位置付けられていることが不 可欠だからである。そうした活動が実を結んで,各学科の先生方の教職への意識を高め,教員採用試 験の合格者数の増加に結びついた学科もあるように思う。 田中先生のもう一つの貢献は,学校教育センターに研究部門を設けたことである。大学の附置研究 所の一つとするべく,その実現の前に立ちはだかる障壁を一つ一つ取り除く粘り強い努力を惜しまず, 2019 年に研究部門を立ち上げられた。時あたかも教育学科が文学部から分離独立して教育学部とな ったのと同時であった。学校教育センター研究部門は「女子大学における教師教育」を大きなテーマ として掲げ,学外研究者の協力も得ながら,学部や大学院における教員養成だけでなく,設立時から の課題であった,卒業生を含む現職教員の再教育をも視野に入れた研究活動に取り組んでいる。小規 模ながら年に一度の「ホームカミングデー」が始められたのは,そうした研究活動と結びついてのこ とである。 このように学校教育センター立ち上げからの6年間をセンター長として奔走し,この新しい組織に 魂を入れることに尽力してこられた。その活動ぶりはせっかちに思えるほどに迅速で,時に剛腕にも 見えるが,同時に柔軟さも持ち合わせたものであった。 思えば,私が初めて田中先生に会ったのは1998 年,読売新聞に紹介された京都大学での「公開実 − 49 −

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験授業」を参観させてもらった時である。以来,「ライフサイクルと教育」と題する実験授業や,京大 を拠点として展開された共同研究,されには大学教育学会を共通の場として親しくお付き合いさせて いただいた。私が本学にお世話になったきっかけも田中先生の紹介によるものであったと理解して いる。 京大のセンターから武庫川のセンターまで,要職にあって多忙を極められたようだが,そんななか でも学問研究においても厳しく自らを律し,何冊もの単著を上梓されたのは見事という他ない。職務 の多忙で研究ができないという言い訳を決してご自身に許さなかったのである。 田中先生の退職には淋しさを禁じ得ないが,これからは少々離れた地点から学校教育センターを, 教育学部を,そして武庫川女子大学を見守っていただきたいと願っている。 − 50 −

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