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JAIST Repository: 中堅化学系企業のR&Dにおける効果的な研究テーマの探索方法 : 研究テーマ提案制度によるアプローチ (報告その2)

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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 中堅化学系企業のR&Dにおける効果的な研究テーマの 探索方法 : 研究テーマ提案制度によるアプローチ (報 告その2) Author(s) 岩崎, 之勇; 名取, 隆 Citation 年次学術大会講演要旨集, 28: 358-361 Issue Date 2013-11-02

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/11734

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

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2A03

中堅化学系企業の R&D における効果的な研究テーマの探索方法

―研究テーマ提案制度によるアプローチ(報告その2)―

○岩崎 之勇, 名取 隆(立命館大学大学院) 1. はじめに 企業における研究開発の出発点となるのが研究テーマの探索であるが、これが企業内の新規事業開拓 を司る専門部門以外に研究開発を担当する部門から広く公募の形でなされる場合がある。それを具現化 するために、いわゆる中堅規模以上の企業においては従業員からの積極的なテーマ発案を促すべく、「研 究テーマ提案制度」を社内規定等により制度化していることが多い。 しかしながら、現在の日本の製造業における新製品創出の難しさを考えると、本来大きく貢献すべき はずの研究テーマ提案制度が新規事業創出に効果的に機能していないのではないかといった問題意識を 筆者らは抱いている。営業由来の改良研究等とは異なり、新規研究はR&D部門自らが能動的とならな ければならない業務である。責任の所在が明らかになる点で、R&D組織内に専任の特別部を設置して、 そこが専権業務として研究テーマ探索をやるのが正攻法であろうが、その一方で、企業理念を理解し、 経営計画を知っており、コア技術を理解している者であれば、科学技術のバックグラウンドのある全て の者が研究テーマの発案者としての可能性を秘めている。したがって、企業の成長戦略を新規事業開拓 により達成しようと試みる企業にとっては、研究テーマ探索をR&Dの全従業員に期待することは間違 った選択とは言い切れない。 そこで本研究では、中堅化学系企業における、これを実践するに不可欠な「研究テーマ提案制度」の 可能性を明らかにすることを最終目的とし、本研究(報告その2)では既出の研究(報告その1)に引 き続き、中堅化学系企業における研究テーマ提案制度の現状を報告する。 2. 研究背景 2.1 中堅製造企業のR&D 報告者らは、中堅製造企業の関係者との面談から、会社の次の屋台骨を背負えるような新製品が出な いとの嘆きを、非公式ながらよく耳にする。一般に中堅製造企業はその規模に準ずる独立したR&D組 織を保有し、研究開発を行うに当たり、少なくとも必要最低限の研究施設と研究者を有し、そしてそれ 相当の研究開発費を投入している。 しかしながら、それにも関わらず、関係者が口を揃えて新製品が出てこないと評するのは、これら投 資の額とその成果物の価値との間に埋め難いアンバランスさを感じているからに他ならない。つまりは、 該関係者が期待するほどには新製品開発を司るR&Dがうまく機能していない現状にあると言える。 2.2 R&Dと研究テーマ提案制度 研究テーマ提案制度は言うなれば、その企業に属する全従業員の頭脳を活性化させ、互いに情報を共 有し、そして知恵を結集させることが可能となる点において、この制度をうまく機能させることができ れば、理屈の上では質・量ともに十分な研究テーマの掘り起こしが可能になるはずである。少人数から 構成される新製品開発の専門部署の人員体制の枠を超えて、人数的にはその数十倍もいる研究員の優秀 な頭脳をうまく活用するのが効率的ではなかろうか。その意味で、本報告者らは研究テーマ提案制度に 軸足を据えた本研究を展開したいと考えた。 2.3 企業風土 企業風土とは、その企業の創立から現在に至る歴史において醸成され共有化されてきた、その企業特有 の価値観念や行動様式のことをさす。近年では企業風土をうまくマネジメントし、企業内部を活性化す

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ることで経営に役立たせようとの試みがなされていると聞く。 ところで、企業風土は様々な内的および外的影響を受けて形作られる。そのような中でも経営トップが 指し示す経営姿勢のウエイトは大きい。世間一般に言われるトップダウン型経営であるか、ボトムアッ プ型経営であるかは、その後の企業風土の違いに重大な影響を与えるものと考える。 ここでトップダウンおよびボトムアップはこれらが対をなして技術経営その他の分野で種々の意味に 用いられるが、ここでは「情報・知識 imidas」に従い、トップダウン型経営とは「企業の経営計画・ 目標・方針などを首脳陣が決め、その実行を下部組織に指示する管理方式」を、またボトムアップ型経 営とは「企業の意思決定が下からの発議でなされる経営形態」を意味するものと定義づける。 トップダウン型は強いリーダーシップに率いられた統制の良くとれた組織を生み出すが、その弊害とし て上からの指示事項以外の事象に対しては自ら思考をストップする危険にある。一方、ボトムアップ型 では組織としては自由闊達であるが、ややもすれば適切なリーダーシップが発揮されず、企業の進むべ き方向性が曖昧になる危険がある。その意味ではどちらも一長一短があり、現存する企業はこの間の中 庸でうまくバランスを取っているものと考えられる。 2.4 企業風土と社内諸制度 企業誕生時点では企業運営のための必要最低限の社内規定が準備されるが、企業が成長し、組織が複雑 化するに伴い、組織運営上必要となる社内規定が順次整備されていき、各企業の企業風土が社内規定に 反映されていくものと考えられる。 2.5 企業風土と研究テーマ提案制度 企業風土はその企業の社内諸規定等と密接にリンクしている。ここで、社内規定の一つである研究テ ーマ提案制度が、従業員各自の自由闊達な行動様式であることを考慮すれば、ボトムアップ型傾向の強 い企業風土の中から誕生し易いと考えるのが自然であり、そのようにして誕生した研究テーマ提案制度 はうまく機能しているものと考えられる。一方、あまりに極端なトップダウン型の経営姿勢から培われ た企業風土の中では研究テーマ提案制度が自然発生することは考えにくく、もし該制度が存在するとし ても何らかの事情によりある時期において外部から単純導入されたケースと推測される。従って、その ような土壌では研究テーマ提案制度はうまく根付くことができず、制度自体が形骸化しているものと考 えられる。 3. 先行研究 従来の研究において、吉野・丹羽ら[1]によれば、これから将来新しく効果的な提案制度の構築が望ま れると考え、現在の提案制度の問題点把握のための全般的な第一次の調査を行い、その調査結果から企 業風土的見地から「独立の奨励」の重要性を見出している。また、松田・中島ら[2]は、①提案が多く出 るためのインセンティブ、②提案のための効果的な支援、等に関するアンケート調査を実施し、「・・は 望ましいですか」、「・・は賛成ですか反対ですか」「・・は良いと思いますか」等の質問を行い、「社内 ベンチャー等として独立することを奨励」するという研究開発の組織戦略的な側面が研究開発テーマ提 案制度の形態を大きく左右するのではないかと考察している。さらに、中村[3]は開発系の社内提案制度 は業務改善系の社内提案制度と比べると、成功事例が少ないのが一般的であり、ボトムアップ型アプロ ーチによる新規事業開発の成功の秘訣として提案制度運営のための事務局のコーディネート能力の重要 性を強調している。 上述のように先行研究から報告者らは研究テーマ提案制度がよく適合する企業風土としてボトムアッ プであることが当該研究分野において共通認識として存在するとの一応の確証を得た。そこで本研究で は研究テーマ提案制度の効果的運用のためのボトムアップの程度を図る尺度として新たに社内規定から のアプローチを行い、該制度が適合する中堅化学系企業の企業風土を検討した。 4.分析手段 4.1 説明変数 報告者らは上記 3. を含む種々の先行研究から、ボトムアップ的傾向を示すと認めうる社内規定として、 当該分野の先行文献から次の①~⑤の 5 つを抽出して統計処理上の説明変数と位置付けた。そしてボト

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ムアップの傾向は、これら 5 つの制度の存在の多寡で測るものと定義し、回答者に対し該制度の有無を 問い、その制度が当該企業に存在する場合は〇、存在しない場合は×とし、〇の数をカウントすること で、当該企業のボトムアップ指数を 1~5 ポイントの間で割り振った。 なお、パブリックコメント制度について筆者らは参考文献を見出し得なかったが行政で広く行われて いることから一つの尺度として取り入れることとした。また、次の①~⑤中カッコ書きで示した数字は 文末の参考文献番号に対応している。 ①企業家支援制度[1]、[2] ②新事業人材公募制度[4] ③ローテーション制度[4] ④15%ルール制度[5] ⑤パブリックコメント制度[-] 4.2 被説明変数 被説明変数としては、「研究テーマ提案制度の活用度とその効果」を設定した。 当該企業における研究開発テーマ提案制度の普段の活用のされ方がどの程度かについて、回答者の主 観による回答を 5 段階で評価してもらった。これは、活用による効果はともかく、とにかく制度として 生きていて、活発に提案がされているかどうかの質問である旨の注意書きを付した。 上記回答で少しでも活用がなされていると回答のあった分については、その成果としてよい研究開発 テーマの発掘に役立っているかどうかについて、回答者の主観による回答 5 段階で評価してもらった。 これは、提案された結果、将来の新規事業のもとと成りうる有効な研究開発テーマが実際に得られてい るかどうかの質問である旨の注意書きを付した。 なお、これら活用度とその効果を検討するにあたり、研究テーマ提案制度それ自体が当該企業に存在 することが前提となるため、その有無をまず先行して問うこととした。ここで該制度が存在する場合と して、社内規定として明確に存在する場合のほか、明確な規定はないが、不文の研究テーマ提案制度が 運用上確立して存在する場合についても区分して「有り[〇]」とした。これらの結果に関しては報告者 らによる既報[6]で報告済である。 4.3 具体例 上記説明変数および被説明変数について、簡単なアンケートを伴う半構造的インタビュー形式にて対 象企業である中堅以上の化学系企業十数社に回答をお願いした。本報告においてはその単純アンケート 部分に対する結果報告としての位置づけである。 具体的には次の表を作成し、表左半分には企業風土パラメータ(説明変数)としてボトムアップ風土 項目である上記①~⑤を配置した。また、表右半分には研究テーマ提案制度パラメータ(被説明変数) として活用度・効果等の値を配置した。 ボトムアップ風土項目(説明変数) 提案制度(被説明変数) 企業 ① ② ③ ④ ⑤ 指数 明文 不文 社点 活用度 効果 A × 〇 〇 △ 〇 3.5 × 〇 1 4 2 B C D E : O 5.結果 回答を求めた企業数15の分析結果は以下の通りである。 ・企業規模との関係から小規模企業はボトムアップ指数が低く、中堅企業、そして大企業に移行するほ どボトムアップ指数に増加傾向が見られる。 ・企業規模が大きくなるほど、すなわち、ボトムアップ指数が高くなるほど研究テーマ提案制度の活用

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度とその効果に増加傾向が認められる。 ・なお、研究テーマ提案制度は中堅以上の規模の企業が専ら保有しており、かつ、企業規模が大きくな るほど明文ではなく不文の提案制度を有する傾向にあることは先に挙げた既報[6]で報告者らが示した 通りである。 6.考察 報告者らはボトムアップ的企業風土の尺度として企業の社内規定に着目し、当該企業のボトムアップ の程度と、当該企業が有する研究テーマ提案制度の関係を調査分析した。 その結果、中堅化学系企業および大企業は双方共に研究テーマ提案制度を有するものの、中堅企業の ボトムアップ風土指数は大企業に比べて低く、かつ研究テーマ提案制度の活用度およびその効果は共に 低い傾向を示した。 従って、中堅化学系企業が当該制度を有効活用できない理由として、その活用の素地となりうるボト ムアップ的企業風土との関連性が示唆された。 ところで、本研究においては企業規模が大きくなるほど、ボトムアップ風土指数が増加しているが、 これは企業規模が大きくなるに従い組織が複雑化して社内規定全体が増加しているため、それに比例し てボトムアップ的な社内規定も増加していると推察することも可能であり、報告者らはそれを現時点で 否定するものではない。 そもそも企業発足当初は社長がトップダウンで少人数の従業員を指揮し、それが企業規模の拡大に伴 い社長一人の指揮能力の限界を超えて権限を部下に委譲しつつ、組織の中でボトムアップ的な要素が醸 成されていくと考えるならば、大企業になればなるほど社内規定の中にボトムアップ的規定が数多く現 れてくるのは自然である。 そうであるとすれば、中堅化学系企業が研究テーマ提案制度を成功させるためには、当然の帰結では あるが、少なくともR&D部門内部での意識したボトムアップ的組織風土づくりが重要であると考えら れる。 7.さいごに 本報告においては、企業風土と研究テーマ提案制度との関係に着目し、一定の結論を導いた。 ところで、今回取り上げた5つのボトムアップ風土項目を多く有する企業が本当に、技術経営の分野 で認めるところのボトムアップ的企業風土を色濃く有する企業なのかの確証が現時点で得られていない。 これについて報告者らはボトムアップ企業風土を測る適当な尺度を先行研究の中から探し出すことを試 みているが現在のところ見つけることに成功していない。 報告者らは、今後、最大限の努力によりこれらの関連性を導きたいと考えている。 <参考文献> [1] 吉野 毅, 丹羽 清, “日本企業の研究テーマ提案制度の実態調査”, 年次学術大会講演要旨集12, pp.51-56 (1997) [2] 松田偉太朗, 中島剛志, “研究開発テーマ提案制度”年次学術大会講演要旨集13, pp.87-92 (1998) [3] 中村千春, “社内提案制度成功の秘訣(下)~開発系提案制度のケース~”, 中小企業と組合, (7), pp. 30-33 (2005) [4] 阿部まさ子, “社内公募制度と人材開発 ソニー 「自由闊達」な企業風土を支え 社員のチャレ ンジ意欲を尊重”, 企業と人材, (8), pp.44-47 (1998) [5] 松本哲夫, “特集 ヒラメキ・アイデアを育む創造的組織の作り方 ボトムアップによる「研究開 発テーマ」創出の仕掛け”, 研究開発リーダー, 7(9), pp.16-21 (2010) [6] 岩崎之勇, 名取隆, “中堅化学系企業の R&D における効果的な研究テーマの探索方法”, 日本経 営システム学会全国発表大会講演論文集 50, pp.222-223 (2013) 以 上

参照

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