教師と児童とが対話をとおして道徳的価値を発見す
る授業デザインの開発(IV) : 抽象命題と具象命
題の往還型対話をとおして生命尊重に関する道徳的
価値の発見を目指した小学校高学年向け授業
著者
假屋園 昭彦, 小峯 三朗, 京田 憲子, 西國原 拓也
雑誌名
鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要
巻
24
ページ
169-187
別言語のタイトル
Developmental study of lesson design for
discovering moral value through dialogue
between teacher and children (IV) : the
lesson for discovering moral value on
respecting for life through dialogue in which
utterance abstract level change between
abstract level and concrete level in the
higher classes at elementary school
BulletinoftheEducationalResearchandDevelopment,FacultyofEducation,KagoshimaUniversity 2015,Vbl24,169-187`
教 師 と児 童 とが 対 話 を と お して 道 徳 的価 値 を 発 見 す る授 業 デ ザ
イ ンの 開発(1V)1
一 抽 象 命 題 と 具 象 命 題 の 往 還 型 対 話 を と お し て 生 命 尊 重 に 関 す る 道 徳 的 価 値 の 発 見 を
目 指 した 小 学 校 高 学 年 向 け 授 業 一
假 屋 園
昭
彦[鹿 児島大学教育学部(教 育心理学)]・
小
峯
三
朗[さ つ ま 町 立 泊 野 小 学 校]2
京
田
憲
子[鹿 児 島 市 立 田 上 小 学 校]・西 國 原
拓
也[鹿 児 島 市 立 田 上 小 学 校]
Developmentalstudyoflessondesignfordiscoveringmoralvaluethroughdialogue
betweenteacherandchildren(N)
‐Thelessonfordiscoveringmoralvalueonrespectingforlifethroughdialogueinwhichutterance abstractlevelchangebetweenabstractlevelandconcretelevelinthehigherclassesatelementaryschool‐ KARIYAZONOAkihiko・KOMINESaburo・KYODANoriko・NISHIKOKUBARUTakuya キ ー ワ ー ド:対 話 、 授 業 デ ザ イ ン 、 道 徳 、 生 命 尊 重 、 小 学 校 高 学 年問題 と 目的
本 研 究 は、 小学 校 高学 年 を対 象 に、 教師 と児童
とが対 話 を とお して道 徳 的価 値 を発 見 して い くた
め の授業 デザ イ ンモデル の 開発 を 目的 と して い る。
対 話 は発 話 内容 の 抽象 度 が変 わ る こ とによ って
対話 が 展 開す る往 還 型対 話 で、 扱 う道 徳 的価 値 は
生命 尊 重 で あっ た。 以下 に本 研 究 の 目的 につ いて
詳述 す る。
目的1.小
学校 高 学 年 を対象 と した抽 象化 活 動 と
具象 化活 動の 往還 型授 業デ ザ イ ンモ デル の 開発
児 童 の対 話活 動 が 深化 す る機 序 に関 す る假 屋 園
の一 連 の研 究 か ら、以下 の よ うな知 見が 得 られた 。
第 一 に、児 童 同士 の 班別 対話 活 動 に対 す る教 師 の
指導 的参 加 法(児 童 の班 別対 話 時 に教 師が 各 班 を
巡 回 しなが ら児童 と積極 的 に対 話 を して い く対話
指導 法)の 研 究か ら、教 師 と児 童 と の対話 が 抽象
水準 の命題(以 下 、 抽象 命題 と呼 ぶ)と 具 象 水準
の命 題(以 下 、具 象 命題 と呼ぶ)と の往 還 運 動か
ら成 立 して いる こ と、そ して この往 還 運動 が 対話
の深 化 を もた らし、対 話 時 の新 命題 を生成 す る主
要機 序 で あ る ことが見 出 され た(假 屋 園 ・馬 場 ・
小峯 ・京 田、2014;假 屋 園 ・永 里 ・坂 上、2011a;
2011b)o
班 別対 話 活動 にお ける教 師 の指 導 的参 加 にお い
て見 出 され た 、抽 象命 題 と具 象命 題 との往還 によ
る対 話 の深 化 は、 一斉 指導 時 にお ける教 師 と児 童
との対 話で も同 じ現象 が見 出 され る可能性 が ある。
なぜ な ら、 指導 的参 加 は 教師 と児 童 とのや りと り
で ある。 そ して このや り と りの なか で は、教 師 の
問 いか けの 内容 と、そ の 問 いか け につ いて の児 童
の思考 体 験 が意 味 を もつ 。 こ う した や りと りの意
義 は、班 別 対話 活 動時 の教 師 と児 童 との対話 に特
有 の もので は な く、一 斉指 導 時 の教 師 と児 童 との
や りと りに もあて は める 。す なわ ち 、班 別対 話 活
動時 の教 師 の指 導 的参 加 お よび一 斉 指導 時 の教 師
と児 童 との や りと りは、 とも にや りと りそ の もの
を思考 過程 と して捉 え る ことが でき るの で ある。
もし一斉指導時の教師 と児童 との対話にお いて も、
具象 命題 か ら抽 象命 題 へ の抽 象化 活 動 と抽 象命 題
か ら具象 命 題へ の 具象 化活 動 の往 還 で対 話 を深 化
させ る ことが で きれ ば、抽 象化 活 動 と具 象化 活 動
の往 還 によ って 組 み立 て られ た授 業 デザ イ ンが 可
能 にな る。 そ して この授 業デ ザイ ンは道 徳 的価 値
の本 質 を発 見す るた めの教 師 と児 童 の対 話 に も と
1本 研 究 は 日本学 術 振興 会科 学研 究 費助 成事 業(学 術 研 究助 成基 金助 成金)に も とつ く研 究(基 盤研 究(C) 、研 究 代 表 者 假 屋 園昭 彦、 課題 番 号24530829、 平 成24年 度∼ 平 成26年 度 、研 究 課題 名 児 童 の思 考 力 を伸 ばす対 話 指導 力 を もつ 教師 育成 を 目指 した授 業デ ザイ ンの開発)の 一環 として行 われ た。 2前 鹿 児島 市立 田上 小学校つ く汎用 性 の高 い授業 モデ ル にな りうる。
抽 象化 活 動 と具 象化 活 動 を とお して概 念 の本 質
を浮 き彫 りにす る とい う授業 デ ザイ ンは、 道徳 に
限 らず 、他 教科 に も適 用 可能 で あ り、 教科 を超 え
た学 習方 法 の提 案 につな が る。 なぜ な ら、 特 定 の
概念 に迫 る活 動 はす べて の教 科 で行 わ れ る思考 過
程 だか らで ある。
この 授 業 デ ザ イ ン モデ ル の検 証 授 業 は 、 平 成
23年12月
、 平成24年1月
、平成24年3月
に 田
上 小学校 の小 学校1年 生 を対 象 に京 田教 諭 によ っ
て実 践 され た 。そ の 結果 、 小学 校低 学 年 を対 象 と
した授業デザイ ンモデル として確立 され た(假 屋 園 ・
馬膓 ・小 峯 ・京 田、2013;2014)。
(1)抽
象 化 活動 と具 象 化活 動 の 授 業 デ ザ イ ンモ
デル
本 研究 で は 、小 学校 低 学年 を対象 に開発 された
往還 型授 業 デザ イ ンモデ ル の小 学校 高 学年 用 モデ
ル を開発 し、検 証 授業 を実 施す る。
具 体 的 には 、次 の よ う授業 デ ザイ ンモデ ル を仮
説 と して 設定 す る。
①
授 業前 半 にお け る抽 象化 活 動 と道徳 的 価値 の
発見 活 動
授 業 前半 で は抽 象化 活 動 と道 徳 的価値 の発見 活
動 を行 う。 抽 象化 活 動で は複 数 の 生活 経験 の事 例
か ら共通 特 徴 を抽 出す る。次 の 道徳 的価 値 の発 見
活動 で は、 抽 出 され た共 通特 徴 に含 まれ る道徳 的
価 値 を発 見す る。
②
授 業後 半 にお け る具 象化 活 動 と道徳 的 価値 の
実感 活 動
授 業後 半 で は具 象化 活 動 と道 徳 的価値 の実感 活
動 を行 う。 具 象化 活 動で は道 徳 的価 値 か ら生活 経
験の事例 を見直す。 次の道徳的価値 の実感活動で は、
これ まで気 づ かな か った 生活 経 験 に含 まれ る道 徳
的価 値 を実感 す る。
(2)価
値 の 理解 水 準 と価 値 の実 感 水 準 と の比 例
関係
本 モ デル は 、授 業 の前 半 で価 値 を生 成 し、後 半
で価 値 を実 感す る。 ここで の留 意点 は 、価 値 の実
感 には複数 の水準 があ るとい う点 で ある。假 屋園 ・
馬膓 ・小 峯 ・京 田(2014)は
、価 値 の実感 水 準 は
それ 以 前 に到達 した価 値 の理 解 水準 に比例 す る こ
とを指摘 して い る。 すな わ ち、 授業 で 到達 した価
値 の理解 水 準が 低 い場 合 、生活 経 験 に含 まれ る価
値 の気 づ き が少 な く、 価 値 の感 じ方 も浅 くな る。
したがって後 半の価値 の実感水準 を上げるため には、
そ の前段 階 で、 で き るだ け価値 の理解 水 準 を上 げ
てお く必要 が ある 。
価値 の理解 水 準 を上 げ るた め の方 法 は、価 値 の
意 味 を児童 自らが発見 、生 成 して い く活動 で ある。
児 童 自 らが 意 味 を発 見 し、生 成す る ことが重 要 な
活 動 な ので あ り、単 に与 え られた 意 味や 定義 を使
う ので はな い。 授業 前 半 の抽 象化 活 動 は道徳 的価
値 の意 味 を発見 、 生成す る と ころ に意 義 が ある。
(3)道
徳 的価 値 を 児 童 自 らで 発 見 、生 成 す る こ
との意 義
上 述 のよ うに、道 徳 的価 値 を発 見 す る活動 は児
童 自 らで 行 うと ころ に意義 が あ る。 この活動 を実
践 す る場 合 、以 下 の点 に留 意 す る必 要が あ る。 す
なわ ち実 践 に あた り、 教 師側 に は、 自分 自身が 教
え る立場 と して 特定 の道徳 的価 値 の 正 し い定 義 を
知 ってお か な けれ ばな らな い とい う危 惧 が 生 じる
か も しれ な い。 確 か に哲学 の文献 等 で は、勇 気 や
誠実 といった道徳的価値 の定義 づけがなされてい る。
しか し、 重要 な点 は児 童 が 自分 達 で 意 味 を発 見 、
生成 す る過 程な の で あ り、他 者が 作 成 した意 味 を
そ のま ま活用 す る ことで はな い。 意 味 を発見 、 生
成 す る過 程 が あ って は じめて 、理 解 水準 が 向上 す
る ので あ る。 した が って 、教 師 は 自分達 の学 級 独
自の道 徳的価 値 の意 味を生 成す れ ばよ いので ある。
研 究 者や 学 者が 作成 した既 成 の意 味 に こだ わ る必
要 は ない と言 える 。
(4)目
的1-1と
目的1-2
上 記 の内 容 を踏 ま え、 目的1を 以 下 の2種 類 に
分 類 して検 討す る こととす る。
目的1-1
小 学校 高 学年 にお いて も、 教師 の 指導 的参 加 時
お よび一 斉 指導 時 の教 師 と児 童 との対 話 は 、抽 象
命 題 と具象命 題 の往還 で展 開す る こと を検 証す る。
目的1-2
小 学校 高 学年 にお いて も、抽 象 化活 動 と具象 化
活 動 の授 業 デザ イ ンモ デル に もとつ く授 業 が可 能
で ある こと を検 証す る。
目的2.生
命 尊 重 を とお して 生 きる原 理 と して の
道 徳 的 価 値 の 発 見 を 目指 した 授 業 デ ザ イ ン モ デ ル の 開 発 道 徳 的 価 値 と し て 本 検 証 授 業 で は 、 生 命 尊 重 を 扱 う 。 假 屋 園(2014a;2014b)は 、 生 命 尊 重 と い う価 値 を 扱 う 意 義 と し て 、 生 き る 原 理 を 発 見 す る こ との 必 要 性 を 指 摘 して い る。 假 屋 園(2014a; 2014b)の こ う した 指 摘 を 踏 まえ 、 本 検 証 授 業 で は 、 児 童 に発 見 し て も ら う 価 値 を 、 人 は い か に 生 き る べ き か 、 と い う生 き る 原 理 と し た 。 そ し て 授 業 で 発 見 を 目 指 す 生 き る 原 理 の 内 容 は 「受 動 性 と 能 動 性 」 で あ る 。 こ の 対 概 念 の 一 体 的 関 係 性 を 児 童 に 発 見 して も ら う こ と を 目指 す 。 こ こで の 一 体 的 関 係 性 と は 、 生 き る と い う こ と は 受 動1生の な か の 能 動1生を 生 き る こ と だ 、 と い う 内 容 で あ る 。 そ し て こ の 考 え 方 が 生 き る原 理 に な る 。 受 動 性 と は 、 人 間 は 自 分 の 意 志 に か か わ らず 何 らか の 事 実 が 与 え ら れ 、 そ の 事 実 の な か で 生 き て い か ざ る を え な い と い う 人 間 の 境 遇 を示 す 。 人 は 自分 が 与 え ら れ た 事 実 を 受 け 入 れ 、 受 け 取 り 、 引 き 受 け て 生 き て い か ざ る を え な い 。 こ う し た 状 況 を 受 動 性 と呼 ぶ 。 受 動1生を 具 体 例 で 示 す 。 そ も そ も 人 間 は 生 ん で くれ と親 に 頼 ん で 生 ま れ て き た わ け で は な い 。 気 が つ い た ら 自分 が 望 み も し な い 親 の も と に 生 ま れ て い た の だ 。 こ の 時 点 で す で に 人 間 の 生 は 与 え ら れ た 事 実 に な る 。 そ して 人 間 は 与 え ら れ た 生 を 受 け 入 れ て 生 き て い か ざ る を え な い 。 生 そ の も の が 自分 の 意 志 に か か わ らず 与 え ら れ た 事 実 で あ る こ と を踏 ま え る 必 要 が あ る 。 た と え ば 大 学 生 は 生 ま れ た 時 代 が 違 っ た だ け で 卒 業 時 の 世 の 中 が 好 景 気 か 不 景 気 か に 分 か れ る 。 現 在 の 学 生 は 卒 業 時 が 就 職 氷 河 期 で あ り、 長 く厳 し い 就 職 活 動 を 続 け さ せ られ た あ げ く正 規 雇 用 者 に な れ ず 、 卒 業 後 も 非 正 規 雇 用 と し て 不 安 定 な 暮 ら し を 余 儀 な く さ れ る 。 今 の 学 生 の 就 職 活 動 は 、 1990年 前 後 の バ ブ ル 絶 頂 期 の そ れ と 比 べ る と 大 き な 違 い が あ る。 しか し これ は 学 生 の 責 任 で はな い 。 そ う い う 時 代 に 自分 が 生 ま れ 育 っ た だ け な の だ 。 そ う い う時 代 が 自 分 に 与 え られ た の だ 。 そ し て 人 間 は 、 自分 が 与 え ら れ た 時 代 と 境 遇 を 自分 で 受 け 入 れ て 、 受 け 取 っ て 生 き て い か ざ る を え な い の だ 。 社 会 人 に な っ て も 同 じ 原 理 が あ て は ま る 。 人 事 異 動 で 自 分 が 希 望 す る 部 署 に配 属 さ れ る こ とは ま ず な い 。 予 想 も し な か っ た 部 署 に 配 属 さ れ 、 思 い も よ らな い 仕 事 が 天 か ら降 っ て く る の だ 。 人 間 は こ の よ う に 自 分 の 意 志 に か か わ らず 与 え られ た 事 実 を 引 き 受 け て 生 き て い か ざ る を え な い 。 そ し て 自 分 に ど ん な 事 実 が 与 え られ る の か は 自 分 の 力 で は ど う に も な ら な い 。 これ が 人 生 の 受 動 性 で あ る 。 こう した 人 間 の 受 動 性 は次 の よ う な解 釈 が で き る。 す な わ ち 自分 の 責 任 で も な い の に 、 あ る い は 自 分 で 望 ん だ わ け で も な い の に 、 天 か ら 降 っ て 来 た 事 実 を 引 き 受 け て 、 泣 く泣 く生 きて い く しか な い の か 。 こ れ は 理 不 尽 な こ と で あ る 。 しか し別 の解 釈 で 人 生 を捉 え る こと も可 能 で あ る。 す な わ ち 、 生 き る うえ で は 、 こ う い う受 動 性 の な か で い か に して 能 動 性 を 発 揮 す る か が 問 わ れ る 、 と い う解 釈 で あ る(池 田 、1999)。 そ し て この 解 釈 が 生 き る 原 理 な の で あ る 。 した が っ て 生 命 尊 重 の 授 業 の 場 合 、 「難 病 で 苦 し み な が ら も 懸 命 に 生 き て い る 人 が い る 。 だ か ら あ な た 達 も そ う い う 人 達 の こ と を考 え て 命 を 大 切 にせ よ 」 と い う 、 見 習 い な さ い 型 の 論 理 が ポ イ ン トな の で は な い 。 授 業 の な か で 病 気 や 事 故 の 物 語 に話 を 限 定 し て し ま う た め に 「健 康 な 僕 達 に は 関 係 あ り ませ ん 」 と い う 理 屈 が ま か り と お っ て し ま う 。 こ れ は 類 似 場 面 だ け を寄 せ 集 め た外 面 記 述 的 な 生 命 観 にな る。 そ して 、 授 業 で 習 得 した 道 徳 的 価 値 を そ の 後 の 生 活 に 生 か す こ と に も な ら な い 。 道 徳 の 授 業 が 、 授 業 の 中 だ け で 完 結 し て し ま う 。 難 病 と い う 天 か ら降 っ て 来 た 事 実 を 人 間 は 受 動 的 に 引 き 受 け ざ る を 得 な い 。 しか しそ の 受 動 的 な 事 態 に 対 し て 自 分 が ど れ だ け能 動 性 を 発 揮 して ゆ く の か(生 き る た め に どれ だ け 主 体 的 な 取 り組 み を 行 っ た か)と い う と こ ろ に 生 き る と い う営 み の 価 値 が あ る 。 難 病 の 罹 患 と い う受 動 性 が もつ 理 不 尽 さ の な か で 自分 が ど れ だ け 能 動 的 に(主 体 的 に) 生 き抜 い た か 。 これ が 生 き る と い う 営 み を支 え る 原 理 に な る 。 こ の 原 理 は 難 病 、 仕 事 、 学 校 の 宿 題 と い っ た す べ て の 日常 生 活 に あ て は ま る 。 こ れ が 病 気 の 人 の 日常 も、 社 会 人 の 日常 も 、 児 童 の 日 常 も 、 同 じ よ う に貫 く 原 理 に な る 。 学 校 の 宿 題(仕 事)は 好 む
と好 ま ざ る と に か か わ ら ず 天(先 生)か ら降 っ て く る 。 この 事 態 を 私 達 は 受 動 的 に 引 き 受 け ざ る を え な い 。 し か し そ の 事 態 に ど れ だ け 能 動 的 な 態 度 で 臨 む こ と が で き る か に 生 き る 価 値 が あ る 。 ど ん な 事 実 が 与 え られ た か で は な く 、 与 え られ た 事 実 に ど う向 き あ うか に 生 き る価 値 が あ る 。 生 き る 原 理 は 「受 動 性 の な か で 能 動 性 を 生 き る 」 と い う 関 係 を 示 す 命 題 で 表 現 で き る 。 これ が 生 き る 原 理 で あ り 、 生 命 の 姿 な の で あ る 。 そ し て 授 業 の な か で こ の 生 き る 原 理 に ど れ だ け 迫 る こ と が で き る か が 問 わ れ る 。 方 法 1.検 証 授 業 の 手 続 き (1)実 施 日時:平 成25年11月25日 (2)実 施 校:鹿 児 島 市 立 田 上 小 学 校 (3)指 導 者:西 國 原 拓 也 教 諭 (4)対 象 児 童:6年2組 の 児 童31名 (5)授 業 時 間:45分 (6)資 料 名:「 命 を み つ め て 」(学 研 資 料) (7)班 編 成:男 子15名 、 女 子16名 の 児 童 で あ っ た 。 これ らの 児 童 に 対 し て 、4人 班 を7つ 、3人 班 を1つ 、 合 計8班 編 成 した 。4人 班 で は 男 子2名 、 女 子2名 で あ り、3人 班 で は 男 子1名 、 女 子2名 で あ っ た 。 2.分 析 方 法 児 童 と教 師 の 発 話 は す べ て ビ デ オ カ メ ラ に 録 画 した 。 そ の う え で 児 童 と教 師 の 発 話 の 逐 語 録 を 作 成 し 、 こ れ を 分 析 の 対 象 と した 。 結 果 と 考 察 分 析1.授 業 構 造 の 分 析:抽 象 化 活 動 と 具 象 化 活 動 の 往 還 型 授 業 デ ザ イ ン モ デ ル の 開 発 1.分 析1の 目 的 小 学 校 低 学 年 を 対 象 に確 立 さ れ た 抽 象 化 活 動 と 具 象 化 活 動 の往 還 型 授 業 デ ザ イ ン モ デ ル(假 屋 園 ・ 馬 膓 ・小 峯 ・京 田 、2014)の 高 学 年 用 モ デ ル を 確 立 す る こ と を 目 的 とす る 。 そ の た め 、 本 研 究 で 仮 説 と し た 授 業 デ ザ イ ン モ デ ル に基 づ く授 業 を 検 証 授 業 で 実 施 し た 。 以 下 の 分 析 で は 、 検 証 授 業 を授 業 構 造 の 分 析 と い う か た ち で 、 往 還 型 授 業 デ ザ イ ン モ デ ル に 合 致 し て い る か ど う か を 検 証 す る 。 そ の う え で 、 高 学 年 用 授 業 デ ザ イ ンモ デ ル を 確 立 す る こ と を 目 的 と す る 。 分 析 は検 証 授 業 の 教 師 発 話 の 逐 語 録 に基 づ い て 実 施 す る 。 逐 語 録 の な か の 「*」 は教 師行 動 を 示 す 。 2.授 業 構 造 の 分 析 授 業 の 前 半 で は 複 数 の 生 活 事 例 か ら共 通 特 徴 を 抽 出 す る 活 動 を行 っ た 。 本 時 で は 前 半 で 、 資 料 の な か の 物 語 と 自 分 の 生 活 と の 共 通 特 徴 を抽 出 す る 活 動 を 行 っ た 。 以 下 に こ の 場 面 の 教 師 発 話 を 示 す 。 (1)一 斉 指 導 27:教 師:で も 実 は で す ね 、 猿 渡 瞳 さ ん(資 料 の 主 人 公)と み ん な は で す ね 。(小 黒 板 を 貼 る) 33:教 師:同 じ 人 間 で す ね 、 同 じ人 間 で す よ 、 そ うそ う 、 そ う そ う。 同 じ と こ ろ が あ る ん で す 。 37:教 師:学 年 、 な る ほ どね 。 今 日は で す ね 、 そ こ をね 、 考 え て ほ し い な あ と思 い ます 。 38:教 師:め あ て を 書 い て くだ さ い 。 猿 渡 瞳 さ ん と … 。(め あ て の 記 入)(3:28) 39:教 師:は い 、 そ れ で は 鉛 筆 を 一 回 下 げ て く だ さ い 。 今 日、 学 習 す る こ とで す 。 ち ょっ と読 ん で み ま し ょ う 、 み な さ ん で 、 さ ん は い 。 40:児 童:猿 渡 瞳 さ ん と 共 通 し て い る こ と は 何 だ ろ う 。(5:00) 41:教 師:共 通 して い る こ と は 何 で す か ね 。 そ こ を 、 今 日 み ん な で 一 生 懸 命 考 え て い き ま し ょ う 。 42:教 師:そ れ で は 、 ま ず 一 人 で5分 間 、 この 図 を 使 っ て で す ね 、 こ ち ら に 猿 渡 さ ん 、 自分 。(板 書 しな が ら) 43:教 師:猿 渡 さ ん 、 そ し て 、 自分 で す ね 。(写 真 を 貼 りな が ら) 44:教 師:さ あ 共 通 して い る こ と は 何 な の か 、 は い 、 じゃ あ考 えて くだ さい 。5分 間で す 。 (5:53) 授 業 構 造 の 分 析1
授 業 全 体 の 「め あ て 」 を 、 主 人 公 と 自 分 の 日常 の 事 例 と の 共 通 特 徴 を 抽 出 す る 活 動 と した 。 こ こ で の 「め あ て 」 は抽 象 命 題 に な っ て い る 。 「め あ て 」 に 対 して 、 最 初 に 「個 人 思 考 」 の 時 間 を設 定 し た 。 こ こ で の 児 童 の 思 考 は 帰 納 思 考 で あ る 。 (2)班 別 対 話 活 動 授 業 構 造 の 分 析2 以 下 で 班 別 対 話 活 動 に入 る 。 この 場 面 で 教 師 は 、 机 問 巡 視 の か た ち で 児 童 同 士 の 対 話 に 参 加 す る 。 こ の 指 導 方 法 は 假 屋 園 に よ っ て 提 唱 さ れ た 指 導 方 法 で 、 指 導 的 参 加 と呼 ぶ 。 授 業 構 造 の 分 析3 主 人 公 の 日常 生 活 を 帰 納 思 考 に よ っ て 抽 象 化 し、 高次 の 抽 象 命 題 で 表 現 す る と共 通 点 が 見 つ け や す い。 同 時 に 対 比 的 に 考 え や す い 。 教 師 が 具 象 命 題 で 問 い か け る と 、 児 童 は 具 象 命 題 で 回 答 す る 。 児 童 が 回 答 し た 具 象 命 題 を 教 師 が 抽 象 命 題 に ま とめ る 活 動 を以 下 で 行 っ た 。 以 下 に この 場 面 を 示 す 。 (一斉 指 導 時) 12:教 師:こ の 猿 渡 瞳 さ ん とみ ん な は 違 う と こ ろ が あ り ま す か? 17:児 童:癌 を も っ て い る と こ ろ が … 。 22:教 師:癌 ね 。 病 気 を も っ て い ま す ね 。 み ん な は? 23:児 童:健 康 。 中 略 45:教 師:猿 渡 さ ん と 自分 の 違 い っ て い う の を 書 い た ら共 通 す る こ と が 見 つ け ら れ る か も しれ ま せ ん 。 違 い 。(7:05) 47:教 師:時 間 は15分 間 で す 。15分 間 。 猿 渡 瞳 さ ん と共 通 し て い る こ と は な ん だ ろ う。 話 し合 っ て くだ さ い 。 *6班 へ の 指 導 的 参 加(12:08) 48:教 師:違 い が あ っ た?猿 渡 瞳 さ ん とみ ん な の 違 い っ て い うの は な に? 49:児 童:病 気 に な っ て な い 。 50:教 師:病 気 に な っ て な い 。 み ん な 病 気 に な ら な い の? 51:児 童:な る 。 52:教 師:な る?ど ん な 病 気 に な る? 53:児 童:風 邪 と か イ ン フ ル エ ンザ とか 。 54:教 師:ど う して 風 邪 と か イ ン フ ル エ ンザ と か に な る の か な? 55:児 童:手 洗 い 、 うが い を し な か っ た か ら 。 56:教 師:と い う こ と は 、 手 洗 い 、 うが い を し な か っ た と い う こ と は? 57:児 童:予 防? 58:教 師:予 防?そ れ が?で き な か っ た か ら? 59:児 童:病 気 にな っ た りす る 。 60:教 師:猿 渡 瞳 さ ん も 、 手 洗 い 、 うが い と か を しな か っ た か ら病 気 に な っ た の か な? 61:児 童:(首 を ふ る) 62:教 師:ん?違 う よ ね 。 猿 渡 瞳 さ ん は 自 分 が 63:児 童:な りた くな い の に … 。 65:児 童:病 気 に な っ た 。 66:教 師:み ん な は 、 イ ン フ ル エ ン ザ や 風 邪 に な りた い な 、 っ て 言 う? 67:児 童:言 わ な い 。(首 を ふ る) 68:教 師:思 わ な い で し ょ う 。 69:教 師:と い う こ と は? 70:児 童:病 気 に な りた い っ て 思 わ な い 気 持 ち が 一 緒。 71:教 師:あ っ 、 病 気 に な りた くな い と い う 気 持 ち が 一 緒 。 な る ほ ど ね 。 イ ン フ ル エ ン ザ と か 風 邪 に な る の っ て 自 分 が な り た くな い わ け で し ょ う 。 自 分 が 悪 い わ け じ ゃ な い で し ょ う 。 悪 い わ け じ ゃ な い の に そ う な っ て し ま う 。 そ う い う 経 験 とか な い?自 分 が 別 に 悪 く な い の に … 。 授 業 構 造 の 分 析4 ① 目的1-1:抽 象 命 題 と具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に よ る 対 話 の 深 化 の 検 証 発 話12か ら発 話71ま で の 論 理 展 開 は 、 抽 象 命 題 と具 象 命 題 と の往 還 運 動 と 捉 え る こ とが で き る 。 具 体 的 に は 以 下 の よ うな 論 理 展 開 に な っ て い る 。 発 話12:児 童:猿 渡 さ ん は 癌:具 象 命 題 発 話22:教 師:癌 ね 。 病 気 を も っ て い ま す ね 。 抽 象 命 題 発 話12か ら発 話22で 主 人 公 の 癌 を 病 気 と 言 い 換 え 、 主 人 公 の 日常 を抽 象 命 題 に 言 い 換 え た 。 こ こ は 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 の や り と り に な っ て い る 。 発 話50:教 師:み ん な 病 気 に な らな い の?:抽
象 命 題 発 話51:児 童:自 分 達 も病 気 にな る:抽 象 命 題(共 通 点 の 発 見) 発 話50か ら発 話51は 「抽 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 や り と りで あ る 。 共 通 点 を み つ け る た め に は 主 人 公 と 自分 と を 対 比 さ せ る必 要 が あ る 。 対 比 さ せ る た め に は 、 比 較 対 象 を 同 じ抽 象 水 準 に して お く 必 要 が あ る 。 そ の た め 教 師 は 発 話22で 癌 を 病 気 と言 い 換 え 、 抽 象 化 し た 。 癌 を 病 気 と い う 日 常 的 に 使 用 さ れ る 抽 象 命 題 に 言 い 換 え た こ とで 、 児 童 は 主 人 公 の 物 語 を 自 分 の 日常 の 出 来 事 と 同 じ 水 準 で 捉 え る こ と が で き る よ う に な っ た 。 対 比 的 思 考 を 行 う た め に は 、 こ の よ う に 命 題 の 抽 象 水 準 を 同 じ に し て お く必 要 が あ る 。 対 比 的 思 考 を 行 う た め に 命 題 の 抽 象 水 準 を 同 じ に して 行 う や り と り を 「同 一 抽 象 水 準 に よ る 対 比 思 考 」 と命 名 す る 。 発 話52:教 師:ど ん な 病 気 にな る?:具 象 命 題(抽 象 命 題 を具 象 命 題 に 降 ろ す) 発 話53:児 童:風 邪 、 イ ン フ ル エ ン ザ:具 象 命 題 発 話54:教 師:ど う して 風 邪 、 イ ン フ ル エ ン ザ に な る の?:具 象 命 題 発 話55:児 童:う が い 、 手 洗 い を しな か っ た か ら: 具 象 命 題 発 話57:児 童:予 防:抽 象 命 題 発 話58:教 師:予 防 を し な か っ た か ら?:抽 象 命 題(抽 象 命 題 に 上 げ る) 発 話52と 発 話53、 お よ び 発 話54と 発 話55は 、 「具 象 命 題 → 具 象 命 題 」 型 や り と りで あ る 。 発 話 52と 発 話53で 自 分 が 日常 的 に 経 験 す る 病 気 の 種 類 と そ の 原 因 を 考 え さ せ る 。 自 分 の 日 常 を 振 り返 る 思 考 な の で 具 象 命 題 で の や り と り に な っ て い る 。 こ こ で ま た 主 人 公 と 自 分 と を 対 比 的 に 考 え さ せ る た め に 、 発 話55を 発 話58で 「予 防 」 と い う抽 象 命 題 に 言 い 換 え た 。 発 話55か ら発 話58は 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 や り と り に な って い る 。 次 の 段 階 で も教 師 は 児 童 に 対 比 的 思 考 を 行 わ せ て い る 。 対 比 さ せ 、 「猿 渡 さ ん は 予 防 を し な か っ た か ら 病 気 に な っ た の で は な く 、 な りた くて 病 気 に な っ た の で は な い 」 と い う箇 所 で 主 人 公 と 自分 とが 共 通 す る特 徴 を もつ こ とに 気 づ か せ よ う とす る 。 そ の た め 発 話60か ら発 話68ま で は す べ て 同 一 の 抽 象 水 準 で あ る 具 象 命 題 同 士 で の や り と り に な っ て い る 。 そ の 結 果 、 対 比 的 思 考 を 行 わ せ て い る 発 話60か ら 発 話68ま で の 場 面 で は 「具 象 命 題 → 具 象 命 題 」 型 や り と り に よ る 「同 一 抽 象 水 準 に よ る 対 比 思 考 」 が 出 現 し て い る 。 以 下 の 発 話60と 発 話66の 教 師 発 話 は具 象 命 題 で あ り、 主語 と して 「猿 渡 さ ん は 」、 「み ん な は 」 と具 体 的 で 対 比 的 な 表 現 を 使 用 す る こ と に よ っ て 対 比 的 思 考 を 行 わ せ た 。 発 話60:教 師:猿 渡 瞳 さ ん も 、 手 洗 い 、 う が い と か を しな か っ た か ら病 気 に な っ た の け?:具 象 命 題 発 話66:教 師:み ん な は 、 イ ン フ ル エ ン ザ や 風 邪 に な り た い な 、 っ て 言 う?: 具 象 命 題 発 話70:児 童:病 気 に な り た い っ て 思 わ な い 気 持 ち が 一 緒:抽 象 命 題 こ の 「同 一 抽 象 水 準 に よ る 対 比 思 考 」 に よ っ て 児 童 発 話70の 「病 気 に な り た い っ て 思 わ な い 気 持 ち が 一 緒 」 と い う共 通 特 徴 に言 及 す る 抽 象 命 題 が 生 ま れ た 。 次 に 教 師 は 発 話71に お い て 、 発 話60の 「猿 渡 瞳 さ ん も 、 手 洗 い 、 う が い と か を し な か っ た か ら 病 気 に な っ た の け?」 と い う 具 象 命 題 を 、 「主 人 公 は 自分 が 悪 く な い の に病 気 に な っ た 」 と い う 抽 象 命 題 で 表 現 し た 。 こ こ は 自 ら の 発 話 の 抽 象 水 準 を 自 分 で 言 い 換 え る 型 の 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 言 い 換 え に な っ て い る 。 教 師 は さ ら に 抽 象 水 準 を 上 げ 、 「病 気 」 を 「自分 が な り た く な い(望 ん で い な い)経 験 」 と い う表 現 で 抽 象 化 し た 。 こ こ は 「抽 象 命 題 → さ ら に 上 位 の 抽 象 命 題 」 型 言 い 換 え に な っ て い る 。 こ の よ うな 抽 象 水 準 を 上 げ る 活 動 に よ っ て 、 「主 人 公 は 、 自 分 が 悪 く な い の に 、 自分 が 望 ん で も い な い 経 験 を し た 」 と い う抽 象 命 題 が 共 通 特 徴 と し て 発 見 さ れ た 。 こ れ を 共 通 特 徴 ① とす る 。 通 常 、 概 念 の 抽 象 水 準 を 上 げ る こ と に よ っ て 、 そ の概 念 が 包 含 す る 事 例 は 多 く な る 。 し た が っ て 発 話71で 現 れ た 共 通 特 徴 ① に よ っ て 扱 え る 事 例 が 拡 大 さ れ る 。 こ こで は 、 傭 轍 的 で 統 一 的 な 共 通 特 徴 ①(抽 象 命 題)が 発 見 さ れ た こ と に よ っ て 、 資 料 の 内 容 と児 童 の 生 活 の 双 方 を 日 常 生 活 に お け
る 共 通 の 出 来 事 と し て 捉 え る こ とが 可 能 に な っ た 。 発 話12か ら発 話71ま で の 論 理 展 開 は 上 記 の よ う に 考 察 す る こ と が で き る 。 そ し て こ れ らの 展 開 は 抽 象 命 題 と 具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に な っ て お り 、 目的1-1の 検 討 事 項 は 立 証 さ れ た と判 断 で き る 。 ② 目 的2:生 き る 原 理 と して の 道 徳 的 価 値 の 発 見 を 目指 した 授 業 デ ザ イ ン の 検 証 同 時 に この 共 通 特 徴 ① は 「受 動 性 と い う 生 き る 原 理 」 を 表 し て い る 。 す な わ ち 、 「望 ん で も い な い 境 遇 を 生 き ざ る を得 な い 」 と い う と こ ろ に 人 間 の 生 き る 原 理 が あ る 、 と い う道 徳 的 価 値 の 命 題 を 示 して い る 。 この こ とか ら発 話70と 発 話71に よ っ て 、 生 命 尊 重 を と お した 生 き る 原 理 と して の 道 徳 的 価 値 の 発 見 が な され た と 判 断 で き る 。 ③ 目 的1-2:抽 象 化 活 動 と 具 象 化 活 動 の 往 還 型 授 業 デ ザ イ ンモ デ ル の 検 証 教 師 は 発 話71で 、 こ の 抽 象 命 題 を 具 象 命 題 に 降 ろ し た 。 す な わ ち 、 発 話71で 「み ん な も 、 自 分 が 悪 くな い の に 、 自分 が 望 ん で も い な い 経 験 を す る こ と は あ り ま せ ん か?」 と 問 う た 。 この 発 話71が 抽 象 命 題 を 具 象 命 題 に 降 ろ し て 、 自 分 達 の 日 常 生 活 を 捉 え な お す 活 動 に 相 当 す る 。 これ は 仮 説 と して 提 示 し た 後 半 部 分 の 具 象 化 活 動 に 相 当 す る 。 発 話71の 教 師 発 問 に 対 し て 児 童 は 次 の よ う に 回 答 した 。 72:児 童:怒 ら れ る とか 。 73:教 師:怒 られ る と か 。 や っ ぱ あ る 、 そ う い う の も あ る ん だ 。 仮 説 と し て 提 唱 した 授 業 デ ザ イ ン モ デ ル で は 、 授 業 の 前 半 が 抽 象 化 活 動 、 後 半 が 具 象 化 活 動 と い う構 造 に な っ て い た 。 6班 で の 活 動 内 容 か ら、 班 内 で の 教 師 と 児 童 と の や り と り に お い て 、 抽 象 化 と 具 象 化 の 往 還 運 動 に よ る対 話 の 深 化 が み られ 、 そ の 対 話 か ら道 徳 的 価 値 の 発 見 が な され て い る こ と が 明 らか に な っ た 。 *1班 へ の 指 導 的 参 加(14:45) 授 業 構 造 の 分 析5 目 的1-1:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に よ る 対 話 の 深 化 の 検 証 1班 へ の 指 導 的 参 加 時 の 教 師 と児 童 と の 対 話 も 、 6班 と 同 じ く抽 象 命 題 と 具 象 命 題 と の 往 還 運 動 で 展 開 さ れ た 。 以 下 に や り と り を示 す 。 74:教 師:猿 渡 さ ん と み ん な の違 い っ て な に? 79:児 童:健 康 。 80:教 師:健 康 、 う ん 、 み ん な は 病 気 を し な い? (15:24) 82:児 童:小 さ な の は す る 。 83:教 師:小 さ な 病 気 、 大 き な 病 気 。 風 邪 とか イ ン フ ル エ ンザ に は な らな い? 86:教 師:そ う い う の は あ る 。 な ん で そ う い う の に な る の? 87:児 童:手 洗 い 、 う が い を し な か っ た か ら 。 88:教 師:手 洗 い 、 うが い を しな か っ た か ら。 じゃ あ 猿 渡 さ ん も 手 洗 い 、 う が い を して な か っ た の か な? 89:児 童:い や 、 そ う い う わ け で は な い 。 90:教 師:そ う い うわ け で は な い 。 結 局 、 自分 が 、 望 ん で も な い の に? 91:児 童:な っ ち ゃ っ た 。 92:教 師:な っ ち ゃ っ た わ け で し ょ う 。 自 分 が 望 ん で もな い の に 、 そ う、 な っ ち ゃ っ た 。 な ん か そ う い う こ と 経 験 な い?な い? 自分 が 望 ん で も な い の に 、(16:17) 93:児 童:係 決 め とか 。 94:教 師:係 決 め とか 。 た と え ば? 95:児 童:学 習 係 に な りた か っ た の に 。 97:児 童:給 食 係 に な っ た 。 98:教 師:そ の と き ど ん な 気 持 ち が した? 99:児 童:僕 は あ ん ま り経 験 な い ん だ け ど 、 悲 し い と 思 う 。 100:教 師:悲 し い と思 う 。 例 え ば の 話 ね 。 101:児 童:自 分 が 急 用 で 休 ん で い た と き に 、 勝 手 に 決 め られ て 、 「君 、 こ れ ね 」 っ て 言 わ れ た 時 。 104:教 師:そ の と き ど う 思 っ た? 105:児 童:休 ま な け れ ば よ か っ た 。 106:教 師:猿 渡 瞳 さ ん は ど うな の か な あ 。(17: 10)自 分 が 望 ん で もな い の に そ う い う 病 気 に な っ て 。 悔 し か っ た か な? 107:児 童:う ん 。 108:教 師:そ れ な ら さ 、 ど う い う ふ う に 生 き て い た?猿 渡 瞳 さ ん は 。 109:児 童:や りな お す 。
110:教 師:や りな お し た い と 、 つ ま り? 111:児 童:元 気 に な りた い 。 112:教 師:元 気 に な りた い 。 113:児 童:健 康 に 、 何 も病 気 も な く、 一 生 を 過 ご し た い 。 114:教 師:一 生 を 、 一 生 を 過 ご し た い 。 み ん な もそ う 思 う?そ こ、 共 通 して い る 部 分 じ ゃ な い?書 い て ご らん 。 授 業 構 造 の 分 析6 目 的1-1:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に よ る 対 話 の 深 化 の 検 証 発 話80・ 発 話83・ 発 話86:教 師:み ん な は な ん で 風 邪 と か イ ン フ ル エ ン ザ に な る の?:具 象 命 題 発 話87:児 童:手 洗 い 、 うが い を しな か っ た か ら: 具 象 命 題 発 話88:教 師:じ ゃ 、 猿 渡 さ ん も 、 手 洗 い 、 う が い を し な か っ た の か な?:具 象 命 題 発 話80か ら発 話88は 自 分 と 猿 渡 さ ん と の 対 比 的 思 考 の 場 面 で あ る 。 し た が っ て 抽 象 水 準 を 同 じ に す る必 要 が あ る 。 そ の た め 教 師 は 具 象 命 題 で の 問 い か け か ら始 め た 。 た と え ば 発 話 の 主 語 を 「み ん な は 」 と 「猿 渡 さ ん も 」 と 具 体 的 で 対 比 的 な 表 現 を 使 用 し た 。 教 師 の 具 象 命 題 で の 問 い か け(発 話80・ 発 話83・ 発 話86)に 対 す る 児 童 の 具 象 命 題 で の 回 答(発 話87)を 、 教 師 は 同 じ具 象 命 題 で 受 け た(発 話88)。 これ は 「具 象 命 題 → 具 象 命 題 」 型 の や り と り を と お した 「同 一 抽 象 水 準 に よ る 対 比 思 考 」 で あ る 。 発 話89:児 童:そ う い う わ け で は な い:具 象 命 題 発 話90:教 師:そ う い う わ け で は な い 。 結 局 、 自分 が 望 ん で も い な い の に?: 抽 象 命 題 発 話89か ら発 話90は 、 「そ う い う わ け で は な い(病 気 に な りた く な い た め に 予 防 は し て い た)。」 と い う具 象 命 題 を教 師 が 「自分 が 望 ん で も い な い」 と い う抽 象 命 題 で 抽 象 化 し た 。 これ は 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 の や り と りで あ る 。 発 話91:児 童:な っ ち ゃ っ た 。 発 話92:教 師:そ う い う 経 験 な い?自 分 が 望 ん で も い な い の に 。:具 象 命 題 発 話92は 、 自 分 が 望 ん で い な い 出 来 事(抽 象 命 題)を 経 験 し た こ と は あ る か(具 体 例 を 問 う 具 象 命 題)を 問 う て い る 。 自 ら の 発 話 の 抽 象 水 準 を 自 分 で 言 い 換 え る 型 の 「抽 象 命 題 → 具 象 命 題 」 型 言 い 換 え 発 話 で あ る 。 発 話93:児 童:係 決 め と か 。:具 象 命 題 発 話104:教 師:(あ な た は)そ の と き ど う 思 っ た?:具 象 命 題 発 話105:児 童:休 ま な け れ ば よ か っ た:具 象 命 題 発 話106:教 師:猿 渡 さ ん は ど う だ っ た の か な? 自 分 が 望 ん で も な い の に そ う い う 病 気 に な っ て 。 悔 し か っ た か な?:具 象 命 題 発 話104か ら発 話106は 自分 と猿 渡 さ ん と の 対 比 的 思 考 の 場 面 で あ る 。 こ こ で は 「あ な た は ど う 思 っ た か?」 、 「猿 渡 さ ん は ど うだ っ た か?」 と 具 体 的 心 情 を 問 い 、 同 じ 抽 象 水 準 で 主 人 公 と 自分 と を 対 比 さ せ た 。 これ は 「具 象 命 題 → 具 象 命 題 」 型 の や り と り を と お した 「同 一 抽 象 水 準 に よ る 対 比 思 考 」 で あ る 。 発 話107:児 童:う ん 。(悔 し か っ た 。):具 象 命 題 発 話108:教 師:そ れ な ら さ 、 ど う い う ふ う に 生 き て い た?猿 渡 瞳 さ ん は?:抽 象 命 題 「こ う い う 気 持 ち だ っ た 。」 と い う よ う に 、 単 に 主 人公 の 具体 的 心 情 を推 察 させ た だ け で は な く、 「ど ん な ふ う に 生 き て い た?」 と抽 象 水 準 で の 生 き 方 ま で を 考 え させ る 。 発 話107か ら発 話108は 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 の や り と りで あ る 。 発 話111:児 童:「 元 気 に な り た い 」:具 象 命 題 発 話113:児 童:「 何 も 病 気 も な く 、 一 生 を 過 ご し た い 。」:抽 象 命 題 発 話114:教 師:「 み ん な も そ う思 う?そ こ 、 共 通 して い る 部 分 じ ゃ な い?」 授 業 構 造 の 分 析7 目 的1-1:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に よ る 対 話 の 深 化 の 検 証 1班 で も 、 対 話 の 展 開 は 抽 象 命 題 と具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に な っ て お り 、 目 的1-1の 検 討 事 項
は 立 証 さ れ た と 判 断 で き る 。 見 出 さ れ た 往 還 運 動 の 型 は 、 「具 象 命 題 → 具 象 命 題 」、 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」、 「抽 象 命 題 → 具 象 命 題 」 型 言 い 換 え が み られ た 。 さ ら に 対 比 型 思 考 を 行 う際 に 、 教 師 が 発 話 の 抽 象 水 準 を 同 じ に し て か ら 比 較 させ る 「同 一 抽 象 水 準 に よ る対 比 思 考 」 と い う現 象 も見 られ た 。 *4班 へ の 指 導 的 参 加(18:40) 118:教 師:話 し合 っ て ど う な っ た の? 119:児 童:ま と め を 出 して 、 で 、 共 通 点 を だ して 、 120:教 師:強 い気 持 ち を持 っ て い て 、 努 力 を して 、 障 が い を 持 っ て い て も 、 同 じ 人 間 。 ど う し て こ う思 っ た の? 授 業 構 造 の 分 析8 目的1-1:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に よ る 対 話 の 深 化 の 検 証 発 話120は 教 師 が 、 児 童 に よ る 具 象 命 題 で の 回 答 に 対 す る 根 拠 を 問 う た 。 根 拠 を 問 う発 話 は 抽 象 命 題 で あ る 。 し た が っ て こ の 教 師 発 話 は 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 に な っ て い る 。 発 話121・ 発 話122・ 発 話124:児 童:猿 渡 瞳 さ ん も 癌 に 負 け な と い う 気 持 ち を 持 っ て い て 努 力 を す る 。 自 分 も で き な い こ と とか は 努 力 す る か ら。:具 象 命 題 128:教 師:な る ほ ど ね え 。 と い う こ と は 、 み ん な は 猿 渡 さ ん の 生 き 方 と 自 分 の 生 き 方 を考 え た わ け だ 。:抽 象 命 題 授 業 構 造 の 分 析9 目的1-1:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に よ る 対 話 の 深 化 の 検 証 発 話121・122・124は 、 主 人 公 と 自 分 と の 共 通 点 は 努 力 だ と い う 指 摘 で あ る 。 発 話120の 抽 象 命 題 に 対 し、 発 話121・122・124は 具 象 命 題 にな っ て い る。 発 話120か ら発 話121・122・124は 、 「抽 象 命 題 → 具 象 命 題 」 型 や り と りに な っ て い る 。 発 話128で 教 師 は 児 童 の 具 象 命 題(発 話121・ 122・124)を 抽 象 命 題 で 表 現 した 。 発 話121・122・ 124か ら発 話128は 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 の や り と りに な っ て い る 。 130:教 師:そ れ が ま た 具 体 的 で 分 か りや す く て い いね 。 な る ほ どね 。 猿 渡 瞳 さ ん は 、 ど う や っ て 生 き よ う と し て い る? (20:02):抽 象 命 題 131:児 童:家 族 を 大 事 に し て 、 余 命 を 告 げ ら れ て も 生 き よ う と思 う気 持 ち を も っ て 、 家 族 と頑 張 っ た 。:具 象 命 題 132:教 師:生 き よ う っ て い う気 持 ち を 持 っ て い る よ ね 。 つ ま り、 言 い 換 え る と?: 抽 象 命 題 134:児 童:死 に た くな か っ た 。:抽 象 命 題 135:教 師:死 に た く な か っ た 、 つ ま り?:抽 象 命 題 136:児 童:生 き た い 。:抽 象 命 題 137:教 師:生 き た い 。 精 一 杯 、 精 一 杯?:抽 象 命 題 138:児 童:生 き た か っ た 。:抽 象 命 題 139:教 師:生 き た か っ た 。 み ん な は 精 一 杯 生 き た くな い?:抽 象 命 題 140:児 童:生 き た い 。:抽 象 命 題 授 業 構 造 の 分 析10 目 的1-1:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に よ る 対 話 の 深 化 の 検 証 発 話130は 、 発 話121・122・124の 児 童 の 個 々 の 具 象 命 題 の 抽 象 化 を 促 す 発 話 で あ る 。 発 話121・ 122・124か ら発 話130は 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 の や り と り に な っ て い る 。 こ の や り と りで 、 対 話 は 新 し い 局 面 に 入 る 。 こ の場 面 か ら、 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 や り と りは 、 話 題 を さ らに 進 め る機 能 を も つ こ とが わ か る 。 発 話130の 抽 象 命 題 の 問 い に 対 し 、 発 話131の 児 童 発 話 は 具 象 命 題 で の 回 答 に な っ て い る 。 教 師 か ら児 童 へ の 展 開 は 「抽 象 命 題 → 具 象 命 題 」 型 や り と りに な る 場 合 が 多 い 。 教 師 発 話132は 児 童 発 話131の 具 象 命 題 の 抽 象 化 を促 す 発 話 で あ る 。 これ は 発 話121・122・124 か ら発 話130の 展 開 と 同 じ で あ る 。 発 話131か ら 発 話132は 、 「具 象 命 題 → 抽 象 命 題 」 型 や り と り に な っ て い る 。 児 童 の 発 話134は 抽 象 命 題 に な っ て い る 。 こ の 回 答 に 対 し、 発 話135で 教 師 は さ らに 抽 象 度 を 上 げ よ う と す る 働 き か け を 行 っ て い る 。 す な わ ち 発 話134か ら発 話135は 、 「抽 象 命 題 → さ ら に 上 位 の 抽 象 命 題 」 型 や り と り に な っ て い る 。 こ の や り と り は 発 話134か ら発 話140ま で 続 い た 。 こ の よ う に4班 で も対 話 の 展 開 は 抽 象 命 題 と 具
象 命 題 と の 往 還 運 動 に な っ て お り、 目 的1-1の 検 討 事 項 は 立 証 され た と判 断 で き る 。 *2班 へ の 指 導 的 参 加(21:23) 154・155:教 師:猿 渡 瞳 さ ん と 共 通 し て い る こ と は 何 で す か?例 え ば 猿 渡 さ ん は 病 気 を 持 っ て い る 。 で 、 自 分 は 元 気 。 い つ も元 気?み ん な 。 156:児 童:違 う。 157・161:教 師:い つ も 元 気 で は な い 。 病 気 や イ ン フル エ ンザ な っ た りす る?例 え ば、 ど う い う と き に な っ た りす る の? 164:児 童:う が い を し な か っ た と き 。 165:教 師:そ れ っ て?誰 の せ い? 166:児 童:自 分 。 167:教 師:自 分 。 猿 渡 瞳 さ ん も 、 手 洗 い う が い を し な か っ た か ら病 気 に な っ た の? 168:児 童:違 う。 169:教 師:そ れ と は ま た 違 う よ ね え 。 自分 が 望 ん で も な い の に 、 そ う い う 経 験 し て し ま っ た と 。 自分 達 も な い?自 分 が 望 ん で もな い の に つ ら い 経 験 を し た こ と っ て な い?(24:04) 173:教 師:猿 渡 瞳 さ ん は 自分 が望 ん で も な い の に、 つ ら い 経 験 を した わ け だ 。 174:児 童:(う な ず く) 175:教 師:み ん な も 、 望 ん で も な い の に 、 望 ん で も な い の に 、 つ ら い 経 験 と か し た こ と な い?な い? 182:教 師:そ う い う と こ ろ か ら 、 猿 渡 さ ん と 、 自分 と の 共 通 し て い る と こ 、 探 せ ら れ な い か な?(26:00) 授 業 構 造 の 分 析11 目的1-1:抽 象 命 題 と具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に よ る 対 話 の 深 化 の 検 証 2班 は 進 捗 状 況 が 遅 か っ た 。 そ の た め 教 師 が 発 話154・155、 発 話157・161、 お よ び 発 話169で 考 え る べ き 問 題 を 提 示 し た 。2班 の 教 師 と 児 童 の や り と り は6班 で の 展 開 と 同 じ で あ っ た 。 (3)一 斉 指 導 183:教 師:終 わ り ま し た ね 。 じ ゃ あ 、 貼 っ て く だ さ い 。(26:36) *班 別 対 話 活 動 が 終 了 *児 童 が 黒 板 に 意 見 カ ー ドを 貼 る 。(27:24) *意 見 カ ー ドを見 な が ら、 意 見 の 分 類 は児 童 が 行 う。 授 業 構 造 の 分 析12 抽 象 化 活 動 の 低 学 年 と 高 学 年 と の 違 い は 以 下 の 点 に あ っ た 。 低 学 年(假 屋 園 ・馬 膓 ・小 峯 ・京 田 、 2014)で は 、 抽 象 化 活 動 は 二 種 類 あ っ た 。 す な わ ち 、 第 一 の 抽 象 化 と し て 、 各 班 の 代 表 児 童 が 班 で 出 され た 意 見 を発 表 す る 。 教 師 は 代 表 児 童 と 対 話 し な が ら 具 象 命 題 と し て 班 か ら出 さ れ た 複 数 意 見 を 抽 象 化 し 、 一 つ の 意 見 と し て ま と め た 。 こ れ に 対 し6年 生 で は 、 第 一 段 階 の 抽 象 化 活 動 は 児 童 同 士 で 、 班 内 で 行 っ て い た 。 す な わ ち 児 童 は 班 の 中 で 出 さ れ た 意 見 を 自 分 達 で 抽 象 化 し た 内 容 を 、 意 見 カ ー ドに記 載 して い た 。 さ ら に 低 学 年 で は 、 第 二 の 抽 象 化 活 動 と し て 、 黒 板 に 貼 付 し た 意 見 カ ー ド を児 童 が 教 師 と対 話 し な が ら 同 種 の 意 見 ご と に 分 類 して い た 。 これ に 対 し て6年 生 で は 、 黒 板 に 貼 付 しな が ら児 童 が 分 類 を行 っ て い た 。 これ ら は 以 下 の こ と を 意 味 す る 。 す な わ ち 、 低 学 年 で 教 師 と の 主 た る 対 話 活 動 と な っ て い た 抽 象 化 活 動 は 、 高 学 年 で は も は や 児 童 が 自 分 達 で 可 能 な 活 動 に な る 。 高 学 年 で は 低 学 年 と は 別 の 活 動 が 教 師 と の 主 た る対 話 に な る 。 本 研 究 で は 、 資 料 と 自 分 達 の 暮 ら し と の 共 通 特 徴 を 抽 出 す る 活 動 が 、 教 師 と 児 童 との 対 話 活 動 の 中核 で あ っ た 。 こ の こ と は 、 教 師 と の 対 話 が 児 童 に と っ て の 最 適 な 思 考 体 験 と な る 活 動 は 児 童 の 発 達 段 階 で 異 な る こ と を 示 す 。 こ の 考 え は 、 どの よ う な 活 動 に教 師 と児 童 と の 対 話 を 取 り入 れ る と 児 童 に と っ て の 最 適 な 思 考 体 験 とな る の か が 、 授 業 に 対 話 を 導 入 す る に あ た っ て の 眼 目点 にな る こ と を 示 し て い る 。 184:教 師:は い 、 じ ゃ あ 黒 板 の 方 を見 て く だ さ い(30:21)。 あ り が と う ね 、 た く さ ん 意 見 を 。 共 通 し て い る の が あ り ます ね 。 こ こ に 出 た 中 で 、 強 い 意 志 、 強 い 、 生 き た い 。(黒 板 に 線 を ひ く) こ の 強 い 意 志 っ て い う の は 、 具 体 的 に ど う い う こ と?5班?5班 の 強 い 意 志 っ て い う の は? 185:児 童:生 き た い と思 う気 持 ち 186:教 師:生 き た い っ て い うね 。 生 き た い っ て
い う 気 持 ち 。 な る ほ ど 。 生 き た い 。 ど う生 き た い の か な?み ん な も考 え て み て 。 ど う 生 き た い? 187:児 童:元 気 よ く 。 188:教 師:元 気 よ く 。 189:児 童:歌 手 に な る 。 190:教 師:歌 手 に な りた い 。 191:児 童:夢 を 。 192:教 師:夢 を か な え る た め に ね 。 193:児 童:あ き らめ な い 。 194:教 師:生 き た い と。 強 い 意 志 。 195:教 師:強 い意 志 。 死 に た くな い と 思 っ て い る 。 生 き た い ん だ よ ね 。 生 き た い 。 196:教 師:ん? 197:児 童:生 きね ば 。 198:教 師:生 き た い 。 生 き た い(黒 板 に 「生 き た い 」 と 書 く)。 生 き た い 。 生 き た い ん だ 。 ど う生 き た い の?(34:54) 199:児 童:楽 し く。 200:教 師:楽 し く 生 き た い 。 楽 し く 生 き た い ね 。 楽 し く 生 き た い 。 み ん な は 風 邪 とか は ひ き ま せ ん か? 201:児 童:ひ く 。 202:教 師:ひ く ね 。 み ん な が 風 邪 とか 病 気 に な る 時 に は ど ん な 時 に な り ま す か? (34:58) 203:児 童:元 気 が な い 時 。 204:教 師:元 気 が な い 時 とか? 205:児 童:病 気 に な りた い 時 。 206:教 師:病 気 に な りた い 時 つ ま り? 207:児 童:弱 気 に な っ て い る 時 。 208:教 師:ち ょ っ と、 ね 、 疲 れ た 時 とか 、 あ と? 209:児 童:手 洗 い や … 210:教 師:手 洗 い や 、 う ん 、 う が い と か 、 211:児 童:予 防 。 212:教 師:う ん 予 防 を し て い な か っ た 時 ね 。 そ の 予 防 と か は 、 し な か っ た 時 っ て い う の は 誰 のせ い な の か な?(35:23) 213:児 童:自 分 。 214:教 師:自 分 の せ い 。 猿 渡 瞳 さ ん も 自 分 の せ い で 大 き な 病 気 に な っ た の か な? 215:児 童:い や 。 216:教 師:自 分 の せ い で 大 き な 病 気 に な っ た わ け で は? 217:児 童:な い 。 218:教 師:な い よね 、 つ ま り、 自分 が 。 219:児 童:な りた くな い 。 220:教 師:う ん 、 望 ん で も な い の に 。 221:児 童:な りた くて な っ た わ け で は な い 。 222:教 師:な りた く て な っ た わ け で は な い の に 、 そ う い う こ と が 起 き て し ま う と。 な ん か そ う い う こ と な い で す か?自 分 が 望 ん だ わ け で も な い の に つ ら い 思 い を した な あ とか な い で す か?(35: 51) 授 業 構 造 の 分 析13 目的1-2:抽 象 化 活 動 と 具 象 化 活 動 の 往 還 型 授 業 デ ザ イ ン モ デ ル の 検 証 目的2:生 き る 原 理 と し て の 道 徳 的 価 値 の 発 見 を 目指 した 授 業 デ ザ イ ン の 検 証 (1)資 料 の 抽 象 命 題 化 活 動 に あ た っ て:何 を 抽 出 す る の か(抽 出 化 の ね ら い と視 点) 資 料 の 物 語 を 抽 象 化 し 、 資 料 を 抽 象 命 題 で 表 現 す る過 程 で あ る 。 この 過 程 を 以 下 に記 す 。 ① 資 料 の 具 体 的 内 容 に 対 して 、 で き る だ け 高 次 の 抽 象 化 を 行 う こ と で 、 抽 象 化 され た 命 題 の 事 例 と な る 日常 の 出 来 事 が 増 え る 。 ② 資 料 に 含 ま れ て い る 道 徳 的 価 値 を 浮 き 彫 り に す る 方 法 が 資 料 の 抽 象 命 題 化 で あ る 。 ③ 資 料 の 抽 象 命 題 に は 道 徳 的 価 値 が 含 ま れ て い な け れ ば な ら な い 。 道 徳 的 価 値 と は 自 分 を 支 え て く れ る考 え 方 で あ る 。 ④ 資 料 か ら抽 象 化 さ れ る 命 題 は 、 抽 象 化 す る 人(教 師 や 児 童)が も っ て い る 価 値 体 系(ま た は 視 点) に よ っ て 異 な る 。 こ の こ と は 、 多 く の 価 値 の も の さ し を も っ て い る 人 は 、 高 次 の 価 値 を 含 む 抽 象 命 題 を 資 料 か ら抽 出 す る こ とが で き る 、 こ と を 意 味 す る 。 ⑤ 道 徳 の 時 間 の 意 義 は 、 児 童 生 徒 に 多 く の 価 値 の も の さ し を 習 得 し て も ら う と こ ろ に あ る 。 ⑥ 児 童 生 徒 が 、 今 も っ て い る価 値 の も の さ し以 外 の 価 値 の も の さ しが 世 の 中 に は あ る 。 児 童 に は 、 こ の こ と に 気 づ い て も ら い 、 児 童 が 道 徳 の 時 間 の な か で 新 た な 価 値 の も の さ し の 習 得 す る こ と を 目
指す 。
⑦ した が って 、資 料 の抽 象化 の 成否 は、教 師 が ど
れ だ け多 くの価 値 の も の さ しを もち、 どのよ うな
価 値 の視 点 か ら資 料 を読 み取 って い るか とい う教
師 の力量 に ある。
⑧ 以 下 に授 業 の展 開 に沿 っ て記 述 して み よ う。児
童 は、5分 経 過時 の個 人 思考 時 、 お よび班 別対 話
活動 時 に共通 特徴 と して の価 値 を抽 出 した。
⑨ 児 童 が個 人思 考 時 お よび班 別 対話 活 動時 に独 力
で抽出 した価値 は、後 半の一斉指導時 に提 出され た。
これが 発話184か
ら発 話199ま
で の 過程 にな る 。
ここで児童 は 「
強 い意 志」
、 「
生きたい と思 う気持 ち」
「
夢 」 と い う価 値 を資 料 か ら抽 出 した。 これ らが 、
児童 が現 時点 で持 って いる価値 の もの さ しで あ る。
すな わ ち児童 が独 力で 抽 出 した価 値 にな る。
⑩ この後 、 一斉 指 導 時 にお け る児童 との対 話 のな
か で、 児童 が独 力で抽 出 した これ らの価 値 に、新
た に どの よ うな価 値 が加 わ るか が教 師 と児 童 との
対話 の到 達 目標 にな る。
⑪ 本 検 証授 業 に あた って は 、 目的2と して 、 生命
尊重 を とお して生 き る原 理 を抽 出す るた めの授 業
デザ イ ンモ デ ル の開発 を上 げた 。そ して生 き る原
理 と して 「
受 動性 の なか の能 動 性」 を上 げた 。 こ
の な かで 能 動性 の部 分 は 、 「
強 い意 志 」
、 「
生 きた
い と思 う気 持 ち」、 「
夢」 とい う表現 で 児童 が独 力
で抽 出 した 。 この こ とは、強 い意志 や夢 に も とつ
い て生 き る とい う価値 は児童 が もって い る価値 で
あ る ことを示 す。
⑫ 授 業で は、児 童が 独 力で抽 出 した価 値 に加 えて 、
「
受 動 性 の な か の能 動 性 」 とい う価 値 を 発見 す る
ことが 一斉 指 導時 にお ける教 師 と児 童 との対 話 の
到達 目標 にな る。
(2)資
料 の抽 象命 題化 の過 程
① 抽 象化 す る道 徳 的価 値 の確 定:内 容項 目の価 値
分析
ここで は資料 か ら どのよ うな価 値 を抽 象 化 す る
か を確 定す る 。 この価 値 が 当該 の時 間 に発 見 すべ
き道 徳 的価 値 にな る。 本 検 証 授 業 で は、 「
受動 性
のな かの能 動性 」が 発見す べ き道徳 的価値 にな る。
先述 の よ う に抽 出化す る価 値 は 、事 前 の価 値分 析
で教 師側 が 確 定 して お く必要 が あ る。 こ こで は生
命尊 重 の価 値 分 析(假 屋 園 、2014a;2014b)を
とお して 「
受動 性 のな か の能 動性 」 とい う生 きる
原 理 を、抽 象化 す る価 値 として確 定 した 。
② 抽 出す べ き道 徳 的価 値 の 中で教 師 と児 童 との 対
話 を とお して発 見 する 部分 の確 定:対 話 の到 達 目
標 の確 定
資 料か ら抽 出す る道 徳 的価 値 は 「
受動 性 のな か
の能 動性 」 とい う原 理 で あ る。 この価 値 の 中で 児
童 が独 力で抽 出で き る部分 と教師 との対 話 に よっ
て抽 出す る部分 を分 ける 。最 初 に児 童が 独 力で 抽
出で き る部 分 は個 人思 考 と班別 対 話活 動 の 中で 児
童 に抽 出 して も らう。
そ の うえ で教 師 と児 童 と の対 話 を とお さな い と
児 童独 力で は抽 出 が困 難 な部 分 を確 定す る。そ し
て この部 分を教師 と児童 との対話 の到達 目標 とす る。
上 記 の 点 を本 検 証 授 業 で考 えて み よ う。 「
受 動
性 のなか の 能動 性」 のな かで 能動 性 の部 分 は、 す
でに個人思考 と班別対話活動で児童か ら 「
強い意志」
、
「
生 き た い と思 う気持 ち」、 「
夢 」 とい う表 現 で 提
出 され て い る。 能 動 性 の 部分 は資 料 の 中 に 「
夢 、
病 気 とのた たか い」 とい う表現 が 使 われ て い るの
で児 童 に も独 力で抽 出 しや す い。 したが って能 動
性 の部 分 は児童 が独 力で 抽 出で きる価 値 にな る。
児 童 に とって 困難 な 箇所 は、資 料 の 中か ら受 動
性 の部分 を読 み 取 る活 動 で ある。 な ぜな ら受 動 性
の部 分 は資 料 に明確 な 記述 が な い。 受動 性 は資 料
全 体 に暗黙 に含 まれて い る性 質 にな る。資 料 には、
「
病気 が 発見 され る」、 「
突 然、11歳 の ある 日に病
気 が発 見 され た」 とい う記 述 にな って い る。 この
記 述 か ら病気 の理不 尽 さ と不 条理 さを抽 出す る活
動 は児童 だ けで は 困難 で あ ろ う。 そ こで 教 師 と児
童 とが対 話 を とお して 発見 す る価 値 の部 分 を受 動
性 とす る。 人 間は 生 きる と い う営 み の 中で 、理 不
尽 さ と不 条 理 さ を引 き受 け ざる を得 な い受動 的 な
存 在 で ある 、 とい う部 分 を教 師 と児 童 とが対 話 を
とお して発 見す べ き到達 目標 とす る。
(3)抽
象 命 題 と して の道 徳 的 価値 の発 見:ど の
よ うに発見 す るのか?
児 童が 教 師 との対 話 を とお して 価値 を発見 す る
活 動 は、発 話200以 下 の過 程 にな る。発 話200か
ら発話222ま
で の過 程 は、基 本 的 に教 師が班 別 対
話 活動 時 に指 導 的参加 を行 った 内容 と同 じで ある。
この ことか ら班 別対 話 活動 時 の指 導 は、 一斉 指 導
時 の 指 導 に も 生 か せ る こ とが 立 証 さ れ た 。 こ れ は 目的1-2の 立 証 に 相 当 す る 。 児 童 が 教 師 と の 対 話 を とお し て 発 見 す る価 値 は 受 動 性 の 部 分 で あ る。 この価 値 を抽 出 す るた め に は 、 病 気 の 理 不 尽 さ と不 条 理 さ に 気 づ く 必 要 が あ る 。 こ の 資 料 で 癌 は 、 受 動 性 の 理 不 尽 さ と不 条 理 さ の 象 徴 と し て あ る 。 した が っ て 対 話 に あ た っ て は 、 癌 が も つ 象 徴 性 に 着 目す る 必 要 が あ る 。 こ の 過 程 が 発 話200か ら発 話222ま で に 相 当 す る 。 癌 と い う 病 気 を と お し て 、 人 生 に お け る 受 動 性 の な か の 理 不 尽 さ と不 条 理 に 気 づ い て も ら う過 程 は 、 基 本 的 に 班 別 対 話 活 動 時 の 指 導 的 参 加 と 重 な る 。 以 下 に そ の 過 程 を ま と め る 。 ① ど の よ う に発 見 す る の か?:発 見 す べ き 価 値 の 内 容 を 発 問 に して 問 い か け る 活 動 中 核 とな る 概 念 は 病 気 で あ る 。 病 気 の 象 徴 と し て の 意 味 は 、 自 分 が 望 ん で も い な い し 、 悪 い わ け で は な い の に 経 験 す る つ ら い 出 来 事 で あ る 。 こ の 意 味 に 到 達 す るた め のや り と りは 以 下 の 過 程 にな る 。 発 話200・202:教 師:み ん な は 風 邪 と か 病 気 に な る と き は ど ん な と き に な り ま す か? 発 話209:児 童:手 洗 いや … 。 発 話211:児 童:予 防 。 発 話212:教 師:予 防 を しな か っ た と き ね 。 そ の 予 防 を し な か っ た の は 誰 の せ い な の? 発 話213:児 童:自 分 。 発 話214:教 師:猿 渡 さ ん も 自分 の せ い で 大 き な 病 気 に な っ た の か な? 発 話216:児 童:い や 。 発 話216:教 師:自 分 の せ い で な っ た わ け で は? 発 話217:児 童:な い 。 発 話218:教 師:つ ま り 自分 が … 。 発 話221:児 童:な りた く て な っ た わ け で は な い 。 発 話222:教 師:な りた くて な っ た わ け で は な い の に 、 そ う い う こ とが お き て し ま う。 そ う い う こ と は な い で す か?自 分 が 望 ん だ わ け で は な い の に つ ら い 思 い を した な あ と か な い で す か? こ こ で は 病 気 を 「な りた く っ て な っ た わ け で は な い 」、 「望 ん だ わ け で は な い の に 体 験 し た つ ら い 出 来 事 」 と して 捉 え た 。 こ れ が 病 気 の 象 徴 と し て の 意 味 で あ る 。 こ の 意 味 に 到 達 す る た め に教 師 は 「誰 のせ い?」 と い う原 因 性 に 言 及 し た(発 話212)。 原 因 が 自 分 以 外 の と こ ろ に あ る と い う点 は 受 動 性 の 根 源 的 特 徴 で あ る 。 価 値 の 根 源 的 特 徴 を 問 い か け る 発 問 は 価 値 発 見 の た め の 重 大 な 過 程 とな る 。 教 師 は 病 気 を 原 因 性 と い う 視 点 か ら捉 え 、 そ の 原 因 性 を 発 問 の か た ち に して 児 童 に 問 い か け た 。 こ の 問 い に 対 す る 思 考 を 経 験 す る こ と で 児 童 は 、 世 の 中 に は 自分 以 外 の 原 因 よ っ て つ ら い 経 験 を す る こ とが あ る と い う価 値 の も の さ し を 学 ぶ 。 こ の 問 い か け へ の 思 考 か ら、 児 童 は 病 気 を 「(自 分 の せ い で は な く 、)な りた く て な っ た わ け で は な い(つ ら い経 験 が 世 の 中 に は生 じ る)」(発 話221) と し て 原 因 性 の 視 点 か ら捉 え る こ と が で き た 。 こ の 捉 え 方 が 、 児 童 が 独 力 で は 捉 え ら れ な い 、 教 師 と の 対 話 を とお して は じ め て 発 見 で き た 受 動 性 の 意 味 で あ る 。 上 記 の 考 察 は 、 価 値 の 中 核 的 内 容 を い か に し て 問 い か け の か た ち に し て 発 問 で き る か が 、 価 値 発 見 へ の 重 要 な 過 程 で あ る こ と を 示 し て い る 。 教 師 は 受 動 性 の 中 核 的 内 容 を 原 因 性 に あ る と捉 え た 。 そ し て 原 因 性 と い う 特 徴 を 「誰 の せ い?」 と い う 発 問 に 言 い 換 え た 。 そ して こ の 発 問 へ の 回 答 が す な わ ち 、 発 見 す べ き 価 値 の 内 容 に な る 。 教 師 が こ の 問 い か け を で き る か ど う か が 価 値 発 見 に 至 る か 否 か の 分 岐 点 と な る 過 程 に な る 。 授 業 構 造 の 分 析14 (4)発 見 さ れ た 道 徳 的 価 値 を 含 ん で い る 生 活 経 験 を 探 す 活 動 発 見 さ れ た 抽 象 命 題 と し て の 価 値 が 含 まれ る よ う な 生 活 経 験 を 探 す 過 程 は 、 生 活 経 験 を 道 徳 的 価 値 の 面 か ら捉 え 直 す 活 動 に な る 。 以 下 の 場 面 が こ の 活 動 に な る 。 223:児 童:あ る 。 224:教 師:た と え ば? 225:児 童:… 足 を故 障 … 。 226:教 師:今 、 バ レー して いて 、足 を 痛 め て い て 。 も う ほ ん と は バ レ ー し た い の に 、 ど う し よ う も な い と 。 そ う い う 経 験 あ る よ ね え 。 そ の 中 で 、 あ お い さ ん は