看
護 学
生
の精
神看
護 学
実
習
に
お
け
る カ
ルテ
に
頼
ら な
い情報収集
の意
義
Significance
oflnformation
Collection
withoutRelying
on
Medical
Records
in
Nursing
Students
’Psychiatric
Nursing
Practicum
酒 井
美
子
, 土肥
し
げ 子
要 約
本研究の 目的は, カ ルテ に頼らない 情 報 収 集の方 法はどの ような意義があるか を明確にするこ とで あ る
,
研 究 対 象は本 学の精 神 看護 学 実 習対 象 者 3年生79 名で ある.
カ ル テを頼ら ない情 報 収 集の方 法に対す るア ンケー
トの 内容 を,
ベ レ ル ソ ン の 内容分析の 方 法を 用い て分析し た結果,
5つ の カ テ ゴ リ が形成 さ れた.
そ して,
カル テ を頼ら な い 方法は, 1)学生の 主体性 を高め ら れ る2)先入観に とら わ れず 対 象を人 とし て向き合 える
3)
コ ミュ ニ ケー
ショ ンを駆使で きる 4 ) 自分の得た情 報の意 味づ けとし て カ ル テを活 用で きる5
)学生の緊張を高め,
不安 を与 えるな どの 意 義が示さ れ た
.
主体 性を高め ら れ ない 学生につ い て は,
学生の レディネス に応 じ た 個 別 的 指導が 必 要である ことが示 唆さ れ た.
キー
ワー
ド精 神 看 護 学 実 習
,
情 報 収 集,
カル テ の活 用,
看 護i
学生,
内 容 分 析 はじ
めに 今,
ほ とんどの看 護 教 育で は,
看 護 過 程の方 法 を 基 に臨 地 実習指 導を行っ て い る.
看護 過 程は,
知 識,
理 論 を 重 視 して,
科 学 的根 拠 に基づく援助の実 践 (EBN
) を求めて,
強 化 さ れて き た.
しか し,
ヘ ン ダー
ソンd1・
は 「看 護 過 程 が 要 求 する看護 記 録 を 綿 密 に仕 上 げる作 業は看護婦た ち に 看 護の 実質よ り は 形 式 を重 ん じ させ る よ うで ある」 とい っ て きた.
ま さに,
学 生の 多 く は,
自ら積 極的 に患 者とか かわ る以前に,
患 者の 情 報 を得な けれ ば か か わ れ ない とい う思い が先 行 し てい る ようである,
また,
学生の ほ と ん ど は,
看護過程の記 録を仕上 げる こ と に多
くの時 間を費や し, 苦 痛を感じ てい る.
その た め,
記録 を埋め る た め に,
早 く情 報を 得て看 護計 画 を 立案し な くてはい け ない と焦 り を 感 じ,
必 要 な情 報 をカル テ に 頼っ て しま う.
これで は, 日々刻々 と変化して い る対象の状 況を捉 える こ とが で きず, 形 式 的 な対 象 理 解になりか ね な い
.
また,
カ ル テ が な くて は記録が できない,
看 護 計 画の立案が さ れ てい ない と, 看護が できない と まで 思 っ てい る の で はない か と危 惧をい だく.
杉 山 氏 らコ’
は 「臨 床の知 を 学ぶ場である臨地実習 に おい て は,
学生の体験 が 学 習の 中心 に お か な くて は な ら ない.
“
関わ り働 きか けて , 感 じ, 思い巡 ら し,
考 えて,
再び働 きかける”
実 習に お ける こ の体 験 過 程こ そ 看 護 教育に おい て絶好の学びの構 築過 程である」と い う.
ま た,
持 永 氏 ら3)は ,1
臨地実習にお ける学習 効 果 を 高め るには,
役 割 意識 を持た せ,
人間 関係の技 術, 自己の 成 長 を促 す 場, 体 力の増強, そし て専門知 識の 活用がで きる ような指 導が必 要 」とい っ てい る.
さ ら に,
私たちは,
臨 地 実 習に おい て は,
学生の自ら の 心の動 きか ら, 患 者に関 心 を も ち, 患者を 知 り,
さ ら に自分 を振 り返る こと を繰 り返し,
看護の セ ンスを 高めて い くもの であると考える.
精神 看 護 学 実習に お い て は,
精 神 障 害 者に対 する誤 解 や 偏 見, 不安によっ て, 対 象とか かわるこ とに消 極 的になっ て しまう傾 向がある4’
.
さ らに,
カ ル テを 見 て の 情報 収 集の タ イ ミング に よっ て は,
対 象へ の先入 観を強め,
偏 見や,
不安を助 長させて し まうと考 える.
こ れ まで の精 神看 護学 実 習におい ての患者一
学生関 係と, 患 者理解に関する研 究は数 多く な さ れてい る が, 看 護 過程を展 開する中で,
情 報収 集に関す る研究 39 桐生短 期 大学 紀 要.
第18号.
2007は数 少ない
.
’1砺 そ こ で , 今囘, 個 と して の 自分 と 個と して の対 象との出会い を大切に し,
カ ルテ に頼 ら ない 情 報 収 集を とりいれ た実習 展 開は, 学 生 に とっ て どの ような学 習 意義があるの か検 討し た.
研 究 目的
カ ル テ に頼ら ない情 報収 集は,
学生の 学びにどの よ う な意 義があるの か を 明確にする.
操作
的用 語
の定義
情 報 収 集とは, オレ ムの看 護理 論 に基づ く看護の視 点か ら, 対象の 健康な 側 面も踏 ま えて全体を 把 握 し て
,
看 護 介入 を見 出 すた めに行われるもの である川 野 氏s’
1 の い う2つ の情 報 収 集の 方 法,患 者 を 全 体 か ら と ら える方 法 ある枠 組み か らとらえる方 法の う ち
,
対 象との かかわ りの 中で,
気づ き,
感 じたこと を 大切 に し, 枠組み か ら対象を捉える こ とで はな く,
白 紙の状態で対象を 捉 え るの方法と規定 する
.
研究方法
1.
対象 18年 度 後 期・
19年度前期に精 神 看 護 学 実 習 を 行っ た 本 学の3
年生で, 研 究の 同 意 を得ら れ た学生79
名 2.
研 究 期 間2006
年 10 月〜
2007 年9
月 3.
デー
タ収 集 カ ル テを頼らない情 報 収 集の 方法は どうで あっ た か を問うアンケー
ト を精 神看 護 学 実 習 終 J’
Hi
に実施した.
4.
デー
タ の分 析白由記 述デ
ー
タ の分析は, ベ レル ソ ンの1
勺容 分 析の 手 法を 用い て行っ た.
単 文を1記録 単 位とし,
記録 単 位の 意 味 内容の 類似 性に基づ きカテゴ リ化 を行っ た.
意味内容が捉えに くい 記述 につ いて は無 効とし,
一
内 容一
項目 を含む文 章を単位とし分類 した.
文脈 単位 は,
学生1人分の質問紙全体を単位 と し た.
また,各
カ テ ゴ リ における記 録単 位の出現頻度を数量化して集 計 した,
カ テ ゴ リ の信 頼 性は, 研 究者を含め3名に よ る 分 析 を行い,Scott
,
W .
A .
の式に基づ き一
致 率を算 出 し検 討し た.
5.
倫 理 的 配 慮 研 究の趣旨を説 明し,
アンケー
ト は個 人 名が特 定さ れ ない よ うに無記 名と し,
内 容は成績に影響 しない こ と,
お よ び,
個人的に不 利になる こ とはない こと を 説 明 する.
得たデー
タ は本 研 究の み に使用 し, 研 究後は デー
タ を破 棄す るこ と を約 束 する.
ま た,
研 究協 力は 桐生短期 大学紀 要.
第18号.
.
2007 40 自 由 意 志であるこ とを口頭と,
文面で説 明し,
署名を もっ て 同 意 を得た.
実
習 指 導 展 開
2
週 間の 病院 実習で の流 れ と指 導 方 法 1週 目 :3
日間はカ ル テ に頼 らず,
対 象とか か わり情 報 を得てい く.
対 象の か か わりを通して感じたこ と, 観察したこと, 気づ き な ど
,
得た情 報をア セ ス メン トし,
看 護の視 点 (援 助 項 囗)を考える.
さ ら に ア セス メン トした結 果, 情 報を収 集してい くが,
この段 階で,
必 要であれば根 拠を持っ て カ ル テを活 用し て も良い とし てい る.
2
週 目 :看 護過程を活 用し, 援助 を 展 開して い く.
対 象の 日々 の変 化と と もに毎口が情 報を得てい く過 程である ゆえ,
計 画を追加 修正 し てい く.
結 果
対 象 者79 名 中,
78 名が分 析対 象と なっ た.
ア ンケー
トの記 述 内容は140の記録 単 位に分 割で き た.140
の記 述単 位を意味 内容の 類似 性に基づ き分 類 した結 果,5
つ の カ テ ゴ リ に分 類 する こ とができた(
表1),
カ テ ゴ リへ の分 類の一
致率は, 再検討を行い93.
4%で あっ た.
抽 出さ れ た記 録 単位 数の多い カテゴ リか ら川頁に その 内 容 を 述べ る.
以.
ドの記 録 単 位 数は数 値の みとする.
表1.
カルテに頼 らない情 報 収 集の方 法につ い て の カ テ ゴ’
リ と 記録単 数及 び 頻度 カ テ ゴ リ 記 録 単 位 数 % 人数 %(n=
ア8) 1.
主 体 性 4330.
73747.
4 2.
看 護の姿 勢の涵 養 3927.
933一
42、
3 3.
コ ミュ
ニケー
ショ ン の効 用 2316.
42126.
9 4.
情 報 収 集に お け る自己 信 頼 22一一
.
1
15.
72025.
6 5.
努 力へ の 大儀さと実 践 力へ の不 安 … 13一一.
9.
31114.
1 合計
1
一
140100.
01)【
1.
主体 性】
こ の カ テ ゴ リは
,37
名 (47,
4%)の記 述 で, 43 (30.
7%)
か ら形 成 さ れ,
さ らに4つ のサ ブ カテ ゴ リ に 分類さ れ た.
サブカテ ゴ リ は,
「自力へ の啓 発 」 18 , 「五 感の活 用の会得 」 11,
「積極的行 動へ の足が か り」7
, 「思考力へ の自認」7
であっ た.
具 体 的 内容は“
患 者さんを知りたい,
もっ と近づ き たい とい う気持ちが 強 く なっ た”“
自 分で感 じるこ と ができ た”“
自分の観 察したこ とを大切に できる”“
患者さん をよく見よう と積 極 的 に な ること ができ た”“
自分で 考える ことが で きた”“
自分の観 察 力を知る こ とが で きた”
な どで あっ た (表2).
2 )
【
2.
看 護の 姿勢の 涵養】
これは
,33
名(
42 ,
3
%)の 記述で,39
(27.
9Cl
。)か ら 形 成 さ れ,
さ らに,3
つ のサ ブカ テ ゴ リ に分 類さ れ た.
「先 入 観の排 除」27,
「人 と して の関係 性の気づ き」9,
「あ りの ま まの 自分へ の 気づ き.
」3
であっ た,
具 体 的 な 内 容 は,
“
疾 患、
にと ら わ れずに接 す るこ と が で き た”“
最初にカル テを見てし まうと,
固定 観 念が 生 ま れて偏見に惑わさ れ,
う ま くコ ミュ ニ ケー
シ ョ ン が図れ ない の で よ かっ た ” “ カ ル テ を見ない でも看 護 はで きる と思っ た”“
素 直な気 持ちで, 人間対 人問で 向き合え た ような気がする”“
rk
患で はなくしっ か り 患 者さんを見るこ と がで きた”“
本 当の人と人との か か わ りがで きる と思っ た”“
素 直に向き合 うこ と がで き た”
な どであっ た (表2
).
3)【
3.
コ ミュ ニ ケー
ショ ンの効 用 】 こ の カ テ ゴ リ は,21
名の記述で23の (16.
4%)か ら 形 成さ れ, 5つ の サブ カ テゴ リに分 類 され た.
「コ ミュ ニ ケー
ショ ン技 法の理 解」は9,
「コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン の重要 性」は2,
「非 言語的コ.
ミュ ニ ケー
シ ョ ンの重要 性 」3,
1
.
コ ミュ ニ ケー
シ ョ ンは情 報 収 集となる」が7,
「コ ミュ ニ ケー
シ ョ ンの達成感 」は2であっ た,.
具 体的 な内容は,
‘
‘
コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン技 法を学べ た”“
何の た めにコ ミュ ニ ケー
シ ョ ンを と るの か 分 かっ た”“
信 頼 関係を築 く.
E
で最も大 切だ と思っ た”“
動 作,
表情 か ら読み取る こ とが た くさ んあるこ とが分か っ た”
“ カ ル テ を見なくてもコ ミュ ニ ケー
ショ ンを通 し て情 報 収 集が できる”
な どであっ た.
4 ) 【4.
情 報 収 集に おける 自.
己信 頼 】 この カ テ ゴリは,
20 名の記 述で,
22の (15.
7%)か ら形成 され た,
サブカ テ ゴ リは,
「カ ル テ の依 存へ の 気づ き」 4,
「カ ル テ の活 用 方 法の発 見 」 15,
「情 報 収 集の 方 法 拡.
大の 認 知 」 3に分 類さ れ た.
具体 的な内 容 は,Ct
カ ル テに頼 りす ぎてい た ことがわかっ た”“
自然 にコ ミュ ニ ケー
シ ョ ン の中で情 報が得 ら れ た”“
カル 表2,
カルテ に頼ら ない情 報 収 集 方 法に対す る 記述の 具体的内 容 カ テ ゴ リとサブカ テ ゴ リ 記録 単 位数 具 体的内容 1.
主 体性 43一 一
一 一
一一.
一
.
.
.
.一
.
.
一一
一
一
1) 自 力へ の 啓 発.
一
.
.
18 観 察能 力を高める努 力が できた慮 者さんを知りたいもっと近づきたいという気 持 ちが強く出てきた1その分が んばろ うと思った伯分 の力で情 報を見つけ ようとす るこ とが で きた 2)五感の 活 用 の会得 11 自分の 目で 見 て、
聴いて,
感じたことな の で な りよ りも確か な情 報だった/疾 患の特徴を自分 で 見つけることが で きた仂 ル テで得るこ とがで き ないこ とを感じる ことができ た伯 分 観 察した ことを大切にで きる.
3〕積 極 的 行 動への足がか り.
一
一r
.
−
7 不 明な点に つ い て は積 極 的に質 問できた慮 者さんを良 く見ようと積 極 的になる ことができた 4) 思考 力の発 揮 7 自分の観 察 力を知ることができた1自分で考 えることができた伯 分の観 察 得た情 報について理 由 付けができ …た伯 分の考 えたア セ ス メン トが できた 2.
看 護の姿勢の涵 養 1 > 先 入観の排 除 2 )人 と しての関係 性の気づ き 3)あ りの ま ま の自分への気づ き 39 先 入観 を持たずに患 者さんをあり のまま受け入れる ことがで きたtいろいろ考えずに新 鮮 な感じで伝わった∫ 27 実 際に話を しないと分からないt疾 患に とらわ れず患 者さんと接 することが で きた/本 当の意 味で患 者さんを 2知 ることが で きたと思 う.
カルテ の内容 にとらわれ ず素 直な気 持ちで人間 対 人 間で 向き合 えたような気がする’.
疾患に対 して構 えて向 き 9 合 うのではなく自分と患者さんという形で向き合えた /カ ル テを見な くても看 護ができると思った 3 素 直 に 接 す ることが で き 恕 楽 しくア セス メン トで き た陬
ヨ ミュ三ケ:弼 の癇.
23 の コミュニケ
ー
ション の技術の理 解一.
9.
一
コミュニ. 一一
ケー
ション.
一一
技 法を学べ拙一一 一
コミュニケ.
ー
ション の時 間が増 え.、.. 一 一 .
た一
.
2 )コミュ ニケー
ション の重要 性.
一.
.
.
.
ヒ
ー
.
一
.
.
.一.
.
一.
2.
何のた めに コミュ
ニケー
ショ ンをとるの か分か った.
一
3) 非 言語的コミュ ニケー
ションの 重 要性 3 動 作,
表情から読み取 ることがた くさん あることが分 かった 4)コミュ ニケー
ションは 情 報 収 集 と な る 7 コミュニケー
ションだけ でもSOが 埋 まっていくことが分かっだいろんな方 向からコミュニケー
ションが図れた厂 知 らないか ら話 せ るこ ともあった 5)コミュ
ニケー
ショ ン の達 成 感一
−
一
2.
.
一一.
コミュ ニケー
ション.
一.
を図 る一.
.
.
こ.
.
.
.
とが で きた.
一
一
一
一 一 .
.
.
.
.
.
4.
情 報 収 集 に お け る 自 己 信 頼 22 1 )カル テ の依 存への気づ き 4一
5 1 カル テ に頼 りす ぎていたことが分かった 2)カルテ の活 用方 法の発見 カ ルテからの情 報収 集が ポイントを絞って行い易かった1人物 像を先に見 ることでカ ルテ を見たときに再確認 で きる の で 良 かった 3) 情 報収 集の方法 拡 大へ の気づ き 3 自然にコミュ ニケー
シ ョン の中で情 報収 集 が得られ た偲 者の言動で情 報を得る ことがで きる ことがわ かったt 普 段 見 ている こと、
感じているこ とか ら情報収集で きる こと が 分 かった.
.
.
.
.
一
一 一
.
一 . .
.
.
.
..
5.
努 力へ の大 儀 さ と実 践へ の不 安 13一
一
.
.
.
一.
.
一
一
一
一 一
一.
.
一
.
. 一
.一.
.一 .
.
一
.
一. .
D 記録の大 変さ一 一
一.
−
4 カルテ を見る時間が 少 ないの で看護 過程の 記録が 大 変 だったノな るべく早 くゴー
ドンを書 き たいの で見 れ た ほ うがい い.
2)コミュ ニケー
ションへ の 不安・
焦 り 5 情 報 を得ようと質 問 攻め になって しまった ノ患 者さんは話した が らず焦った 3 )そ の 他 の 不安・
不満足一一..
.
4 情 報 が 取 れ ないと不 安 で あった億 者 さん が 理 解 しに くい部 分 も ある 41 桐生短 期大学 紀 要.
第18号.
2007テか らの情 報 収集 は ポ イン トを絞っ て行い やす かっ た
”“
カル テ だ け が情 報 収 集でき る もの では な く,
普 段 見て い るこ と,
感じたこ となどか ら も情 報 収 集で き るの だ と知 るこ と が 出 来 た”
な どであっ た.
5
) 【5.
努 力の大 儀さ と実 践 力へ の不 安 】 これ は11 名の記述 が あ り,
13の (9.
3%)か ら形成 され た.
サ ブカ テ ゴ リは 「記 録の大 変さ」 4,
「コ ミュ ニ ケー
ショ ンへ の 不安・
焦 り」 5,
「そ の他の不安と不 満 足 」4
に分 類で き た.
具 体 的な内容は“
カ ル テを見 る時 間 が 少 ない の で看護記 録の 記 録が大 変だっ た”
“
なるべ く早くゴー
ドンを書き たいの で,
見れ たほう が よい”“
情 報 収 集を得ようとし て,
質 問 攻め になっ てし まっ た”“
情 報が取れ ない と不安” “患 者さんが理 解し に くい部分 もある”
な どであっ た.
考 察
抽出 さ れ た5つ の カ テ ゴ リ か ら カル テ に頼 ら ない 情 報 収 集の意 義につ い て述べ る.
1.
主体 性につ い て カ テ ゴ リ の 【主体 性 】では,
半数近 くの学生は自ら 学 習 する行 動 をとっ てい た こと がわか る.2
週 間 とい う短い実 習 期間に初H
か ら3日 間カル テを見 ずに看 護 過 程 を展 開 してい くこ とに焦り, コ ミュ ニ ケー
ショ ン や 自分の観 察によっ て情 報を得なければ ならなく,
コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン の苦 手な学生に は不安が大 きかっ た とい えよう,
学生は,
不安を抱 えてい なが らも, 対 象 者に近づ くこ と を躊 躇する自分の心の動き を感じなが ら,
対 象に近づこ うと努力する.
そ んな中で,
対 象か ら声を かけられると,
安 堵と喜び を感じ徐々 に対 象に 近づける.
そ し て,
自分か ら近づ くよりも,
他 者が 自 分に近づい て くる のを待つ とい う学生の傾 向か ら,
こ れ までの 自分の対人関係パ ター
ンで は通 用し ない こ と を 知っ て,
自分のこ ころを開い てい か ない とい けない こ とに直 面してい く,
さ らに,
学牛 自ら が感じ,
考 え,
気づい たこ と を 意 味づけ なが ら実習展 開し てい く 自 分の能 力を 引 き 出 してい る,
矢凵氏ら゜’
/
は,21
世 紀 を 支 え る 看 護師像 を,
「受動的 記 憶 型では な く主体的 行 動 型の人 間であ る,
与え られ た 知 識 を受け取 り,
覚 えてい て行 動 するの では なく,
自ら対 象に向かっ て積 極的に情 報を と り,
そ れ を自分の行 動 経験や知識と統 合し,
判断し,
行 動を 生み出 す,
主体 的に行 動し てい く人 間で あ る」 とい う.
カテ ゴリ【
主体性】に示さ れ てい る,
学 生の,
対象に関 心 を示 し,
知ろうとい う内 発的 な看護の こ こ ろ の 動 きは,
矢凵氏 段 がい う 「五 感と一
体とな り行 動 力 として働 く看護の セン ス」を高 桐 生 短 期 大 学紀妾.
第18号.
2007 42 めるこ とにつ な がっ てい るこ とがい える.
2,
看護の姿 勢の涵養につ い て 学生 は,
不 安・
偏 見を抱き実 習に望むが,
素 直な あ りのま まの 自分を表 現し,
対 象とか か わっ てい くプロ セ ス で, 徐々に不安, 偏 見を緩 和し てい た.
カ ル テを 見 ず,
無の状 態で対 象と向き合 うことは,
柳川氏1・’
が い う 「学生の精 神 病・
精神 障害 者に対 する不安・
偏 見 に起 因 す る“
こ こ ろの ハー
ドル”
を低く する」こ と に,
早 期につ なが るとい える.
そ し て,
対 象を疾 患か ら見る の で はなく, 同 じ生活 者とし て の存 在である こ と を無 意 識に認 識し てい き,
生活の中か ら,
精 神症 状 や生 活の しづ ら さを理解 する こ と ができる.
また, “ 素 直に向 き合え た” とい う記 述 内容か ら, 自然 体の 自分で接 する こ とが 関 係 性 を築く上で 大 切にな ること を捉 えて い る.
素 直な自分,
自然 体の 自分 とい うの は,
宮 本 氏冂’
の 論 文 に ある,
カー
ル・
ロジャー
ズの い う 自 己一
致の概 念にあて はまる.
自 己 致 は心の動 き を白覚し,
その感 情を率 直に表現 する こ と と説 明 され て お り, 「看護 師の 自己 表 現に よっ て 引 き 出 され た患 者の 反応には,
患 者の ニー
ズ に 関する情 報が豊富に含 ま れ る.
した がっ て,
まず は自己一
致 とい う方法に よ っ て情 報 を収 集し,
アセ ス メ ン トを行い,
そ れ らの準 備作 業を 踏 まえて具 体的 な 援 助 を実 施す る」とい う.
ま さに,
あ りの ま まの 自分で接 する こ とは,
対 象の あ りの ま まの反応を引 き出 すこ とにつ な がる と考 える.
カ ル テ に頼 ら ない こ と で, 学生 は, 先 入観に と ら わ れ ず,
関係 性の中で,
人 間対人 問の 看 護を体 得して い た.
さ ら に,“
カ ル テ を 見な くて も看 護が で きる”
と い う記 述から, 生活 者とし て対 象を捉え, 看護の視 点 で 生活の 中か ら情報を得て い く.
そ して, その場で の 対 象の 反応と自分の 反応との 相互の 関係の 中に,
看 護 が存 在する こ と を実 感してい る とい える.
3.
コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン の 効 用カ ル テ に頼れ ない分 , コ ミュ ニ ケ
ー
シ ョン を 図ろう と努 力し, 不安が大きい ほ ど に図れ た ときに は達 成 感 も大きい.
何を話 して よい のか,
傷つ けは しない か,
精神症 状が出ない かと, 自分の言 動に よ る影響を気に して,
消 極 的になっ てい る学生 もい る.
し か し,
迷 い , 相 手に気を 配 りなが らコ ミュ ニ ケー
シ ョン の工夫 をこ らすこ とは,
コ ミュ ニ ケー
ショ ン スキル の 向上 に つ な が っ てい る.
カ ルテ を み な くても情 報が得ら れ, 関係 性を築く上で最も欠か せ ない コ ミュ ニ ケー
ショ ン の重要 性を学 習してい た.
“
い ろ んな方 向か らコ ミュ ニ ケー
ショ ンを図るこ とが で きる”“
知ら ない か ら話 せ るこ と もあっ た”
とい う記述 か ら は,
自然な姿 勢で言 葉だけで はな く非 言 語 的コ ミュ ニ ケ
ー
シ ョ ンを 駆 使 し,
場の雰 囲 気や,
環 境に も 日 を向け るこ と がで き,
広い視 野で対 象と向き合 うこ と につ な がっ てい ると考 える,
4.
情 報 収 集に おける自己信 頼 学生 は,
これ まで,
カ ル テ主体の 情 報収 集を行っ て い た こ とに気づ か さ れ てい る.
“
カ ル テ にとら わ れ た 情報 収 集だっ たので, 苦しい ア セス メン ト し か できな かっ た ” とい う記述か ら,
カ ル テ の読み方や,
必 要と する情 報が分か らない ま まに, カ ル テ に書か れ てい る ことがすべ て正 しい と まで思っ てい る ようである.
し か し, カ ルテ を見る前に 対象と向 き合うこ と で, 自分 の 感じた こと,
考 えた こと,
気づい た こ とを意味づけ す る 手 段として カル テを 読 むこと に 変 わっ てい た.
ま た,
自分の捉 えた こ と と,
看護 師 が 捉えた こ との違い も気づき,
そこか ら,
対象
を・
方向だ けで捉 え るので はな く,
多角 的に捉 える こ との大 切 さを学んで い る.
また,
“
普 段見て い るこ と,
感 じたこ とも 情 報 源であ る”
とい うよう
に,
情 報は自分の知識,
技 術,
感 性か ら得ら れ る もの であ るこ と を 実感してい る.
その過程 で,
観 察 力の必 要 性も感じる であろう.
5.
努 力へ の 大儀さと実践 力へ の不安 すべ て の学生 がカ ル テ に頼らない情 報 収 集を満 足と は 思っ てい ない.
“
カル テを見る時 間が少なかっ たの で,
看 護過程の記録が 大変だっ た”“
簡 単な情 報が あ る と もっ とコ ミュ ニ ケー
ショ ンが図れたか もし れ な い”
と記 述にあるように,
記録 を仕L
げるこ とに時 間 を要する ものや,
コ ミュ ニ ケー
シ ョ ンが うま く図れ な かっ た学生 は,
情報の不 足 を,
自 らの努 力を 発揮 する こ とができ な かっ た原 因と してい る.
これ は,
看 護 過 程の 記 録の方 法 と活 用 方 法の 理 解 不 足,
情 報の必 要 性 や整 理,
分 析ア セス メン ト能 力が関係する.
ま た,
技 術 面におい ても,
観 察の方 法や,
観察の視 点,
コ ミュ ニ ケー
ショ ン能 力の低 さ も関 係 す る が,
背 景には,
緩 和で き なかっ た偏見 や 不安も考え られ る.
精 神科 看護 は,
身 体 的 疾 患 と は違い,
対 象の不 足 なニー
ズは 目 に 見 える もの で も な く漠然 として い るこ とか ら,
何 を観 察 し,
何 を 問 題としてい くの か という
看護の視 点 が 分 か ら ない こと も不 安の誘因 と考え ら れ る.
そ して,
こ れ まで カル テを 見 るこ とが 当 然であっ た 学 生 は,
記 録 は 正 しい こ とを 書 か な け れ ば な ら ない と思っ てい る よ うで,
自分で は情 報 を得る こ とがで きない とい う不安 を抱い てい た.
ま さに記 録 重 視の 実 習 展 開 を 学 生は し て い る こ と が伺えた.
われわれ指 導 者は
,
カル テに頼 ら ない実 習 展 開 は,
43 学 生の緊 張に さら に重圧 をか け,
不安を与えて い る こ と を認 識 しな け れ ば な ら ない.
そ して,
そ れ らの学 生 の心情を踏ま えて,
個 別 的に学生の行 動,
情 動の動き に沿い,
過度な緊張によ る学 習へ の影響を 回 避 してい かなければ な ら ない.
無理 に対 象に近づ くとい うの で は なく,
自分の 自然なこ こ ろの動き,
感 情の変 化を感 じなが ら,
それ を表 現 する こと を助 ける.
そ し て,
言 語的コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン が でき なくて も,
自分の許容 範 囲 内で対 象との距 離 間を保ち な が ら,
気づい たこと や感じ たこ と, 観 察し たこ と を大切 に し てい くこ と を 伝 え,
学生が 自ら緊張をほぐし,
対 象に近づける こと を支え 見守る ことも大切 と考える.
柳川氏4’
,
は , 「精 神 科 以外の 科にお ける 「看護 計画」は看 護の実 施 過程 に“
前 提”
で あ り, その 立案に おい て は医学管理 上の 判 断 が 最 優 先 さ れる傾向が強い.
学 生 が他 科における 看 護 過 程と同 様 な 展 開 を考 えて精 神 科看護 実 習 に 望 む な ら ば,
場 合に よっ て は患 者 との溝 を深めて し まう」 とい う.
精 神 科 看 護で は,
看 護 計画 にい たる までの 過 程が大切で,
人として の 関係性 を築く技 術 や考 え方 が 重要であ ること を学生 が 認 識でき る ように,
関 わ りの モ デ リ ングや個 別な学習 指 導も必要であると考える.
結 論
カル テを頼ら ない 情 報 収 集の 方法を取り入 れ た実習 展 開には次のような 意義が あ る.
1.
学生の 主体 性を高め るこ と がで きる 2.
先入観にと ら わ れ ず,
対象を 人 と して向 き 合 うこ とがで き る3.
コ ミュ ニ ケー
ショ ンを 駆使す ること がで き る4.
自分の得た情 報の意味づ け と してカルテを活用で きる5.
学生の緊 張を高め,
不 安 を与え る 主 体 性 を 高めら れ ない学 生につ い て は,
学 生の レデ ィネス に応じ た 個 別 的 指導は 必 要で あ るこ とを示唆さ れた.
本
研
究
の限 界
と課
題本 研 究は
,
実 習終了時の 記 述であっ た た め,
学習効 果の意義を捉 えるの は 限界が あ る.
今 後 は, カル テに 頼 ら ない情 報 収 集で,
学生は どの ような情 報を得て い る か に 焦 点 を 当て, 情 報 収 集の 内 容 か ら学 習の効 果 を 明確に して い くこ とは課 題で ある,
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Significance
oflnformation
Collection
without
Relying
on
Medical
Records
in
Nursing
Students
’Psychiatric
Nursing
Practicum
Yoshiko
Sakai
,
Shigeko
Doi
Abstract
The purpose()
f
this research is to clarify the significance o’
f the methc 〕d
thatdoes
not rely on medical rccords.
The
researeh wasconducted with
79
studentsin
the thjrd−
yeaエof the psychiatric nursing practicum of our university.
Description
of the studentsin
interview
paper concernlng conduct.
ing the method which does not re ]y on medical records were analyzed ug.
ing theBerelson
”
s con−
tent analysis method
.
As the result of analysis , 5 categories were fonned.
The following wereindicated
as significant of the mcthod whichdoes
n〔}t rely on medical records :1
)Students
’
independence
may be increased.
2)An abi ]ity to facethe
subject as ahuman
without
prejudice
,
3
)Able tc)makefull
use of communication,
4)An ability t{〕use medical records are togather
an understand−
ing of the
information
obtained.
5
)Increasc stress and create anxiety for students.
It is suggestcd thatindividualized
instruction
,
depending
on the students ’readiness