張力記録からみた二そう曳網の動態について
著者
不破 茂
雑誌名
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of
Fisheries Kagoshima University
巻
30
ページ
47-55
別言語のタイトル
On the Behabiour of Bull Trawl Net Estimated
by the Tension-records on Net
Mem・Fac・Fish.,KagoshimaUniv・ VoL30 pp、47∼55(1981)
張 力 記 録 か ら み た 二 そ う 曳 網 の 動 態 に つ い て
不 破 茂*OntheBehabiourofBullTrawlNetEstimatedbythe
Tension-recordsonNet ShigeruFuwA* AbStract Therearenumberofunclearfiedpointsregardingbehaviourofbulltrawlnet・Thepresent reporttherefbreaimsatpresentingbasicdataonthis・Authorreportsresultsofsomemeasure− mentonthetensiononbulltrawlnetanddiscusstheminthispaper・Resultsobtainedcanbe asfbllows; (1)Inordinarytowingcondition,tensiononthelacinglineofheadropesidewere400-700kg,thatonlacinglineofgroundropesidewere680-l200kgrespectively. (2)Inthecaseoftrawling,boatswereaHbctedbywindandcurrentfi・omsideway,tensionof leesidewasl、5-2.3timesofthatofweatherside.Andthennetshapeseemedtobeunbalanced andthismighta碇ctthefishingeHiciency. (3)Theplaneshapeoftowingropewasmadeanapproximationwithanequationofca‐ ternarywithweightasthenetresistanceonitstop・Theresultofcalculationshowedtheplane viewoftowingropewasalmoststraightline.東シナ海,黄海を漁場とする二そう曳底曳網漁具の操業中における動態については,自記
式計測器によって直接に測定されたことがあるが'),漁船,漁具の規模が大型化して大陸棚
の平担な漁場から陸棚斜面域へと操業水域を拡大しつつある現在ではその漁具に関してよく
知られてないようである.著者はこの二そう曳漁船に乗船して漁具にかかる張力を計測する
機会を得たので,その測定結果と二,三の考察を報告する.
方 法計測は二そう曳漁船(195トン,600馬力)において,船尾における曳索にかかる張力を10
トン用ロードセルで,また網各部の張力を自記式張力計(2トン)で測定した.曳網速力は
舷側より波浪の影響のない水深までノットメーターを垂下曳航して測定し,両船間隔はレー
ダーにより適宜測定した.漁場は東シナ海の64∼164m底質は砂,泥又は砂泥であった.
*鹿児島大学水産学部漁具学研究室(LaboratoryofFishingGear,FacultyofFisheries,Kagoshima
University,Kagoshima,Japan)26oN 48 / 34PN 132oE Fig.2.Netplanorthebulltrawlnetcmployedinthisstudy. 32.N q SOCOTORA 、ミラ 、ミラ 、ミラ ロHINA ロHINA ロHINA EASTERNCHINASEA 。 曽
賃
?
,
30.N 答 28 N 〆 〆 鹿児島大学水産学部紀要第30巻(1981) 畠 一oいく﹄ロロ毎.寸▽。□。︾宮叫びD︾“せ○・蜂 1 2 4 P E 1 2 6 . E 1 2 8 o E 1 3 0 . E Mapshowingtheexperimentalfishingground. 120QE122。E Fig.1. ロ。の囚 。﹄﹄ nJ層
霊
︺。﹄ロ 房。.○和I
輿』不 破 : 二 そ う 曳 網 の 動 態 Table1.Summaryorexperimentalfish-inggear. Headropelength(、) Groundropelength(、) Floattotalbuoyancy(kg) Groundropcweightinwatcr(kg) 93.8 105,9 769.31 966.80 Table2.Specificationofexper1mental fishingboat. Length(○・A.) Breadth Depth Grosstonnage Mainengine 34.00m 7.30m 3.40m 194.30ton 4cycleDiesel600ps 49 結 果 網各部に装着した張力計の記録例をFig.3に示す.記録より綱を海中に投下終了した時 点で網は十分展開して大きな張力がかかるが,曳索の仲出開始と同時に0に下降し3∼4分 間継続した後に急増して1∼2分後に略一定の値をとって安定する.投網時には船速(4.4∼ (2) 〈kg) 2000. 1000. 0. 。 、 稀 G ・ 茸 j 可 m U p ⑨ . ③ 盤 g l e t 瀞 魯 ぞ 駒 愚 の 総 勢 ② ④ 約 ⑤ 客 ⑤ 。 ⑤ ④ , ⑧ ③ 鱈 : ② ③ 。 C e ● - 倉 ⑨ ⑨ ● 町 か?鞍』 ¥負訂 ソ S− 10min. T 雌縦 Y H ( 3 ) 、 議 匂 ‘ ⑬ " ‘ ② 墨 . ⑨ 綜 命 ‘ ③ ゆ ③ ○ 総 こ め . 、 駒 急 魚 § 9 6 , . 翰 豊 ⑨ , : 鋤 、 ④ @ ・ 蝉 ③ 。 講 ⑤ ⑥ " ⑨ (kg) 20007 1000, 0
I
ト
ル
,
趣
1
ilMi'雛…認識殿御#淵 S = . 10min. T Y H (4) (kg) 2000. 1000. 0. ⑨ . ② - ⑨ ⑬ 。 鰯 ⑥ ⑤ 鋪 ③ の ぎ 律 . ⑫ ③ 5 , ③ ③ @ さ ⑧ ⑨ ⑨ 富 。 ● F ‘ 、 - ⑨ ③ 津 令 . ② _ ⑥ ‘ ⑨ 条 爾 ② 9 ⑨ - 1卜
;
(
織
岬
I
S , . 10min. T Y H Fig.3-1.Recordingsoftensionmeterattachedtothelacinglineofbulltrawlnet.(1),(2); tensionoflacinglineofheadropeside.(3),(4);tensionoflacinglineofgroundropc side.S:Shootingofnet,T:Trawlingofnet,Y:Yose,Approachingoftwoboats。 H:Haulingofnet.50 (5) (kg)
'
:
:
I
(7) (kg) 2000 1000 0 鹿児島大学水産学部紀要第30巻(1981) 、 。 . ⑥ ⑨ ④ 、 ⑤ . 。 ‐ 。 ② ③ 園 マ ● 6 5 . 台 、 ⑧ ④ ・ 喉 ⑨ ③ . @ 占 一 。 ② ③ ⑥ 砂 ⑨ 。 ④ の ⑨ ② ② ① , 、 ⑨ 10mm. !#.律:t・砲.、鋸喫ぞ今.⑤‘;、⑥.、●の酢、.。●;の誤い.⑨..②⑨。。③・今●.⑨..③:⑤⑲。。@,、今 蕊 湯 ‘ ? . . …:蝋f蝋i溌室
S 、 . T Y H 10min. (8)‐ (kg)‘..③畠嬢海驚。..。::、。】⑪噂=⑨‐⑨-.噂も.。榊篭圏③妹⑨・瀞③.-。⑪.。no⑨。.④ccや。..。。 Fig.3-2.Recordingsoftensionmeterattachedtothelacmglineofbulltrawlnet・Tension oflacinglincofhcadropeside(5)andthatofgroundropeside(6)atnormaltowing condition・Tensionoflacinglineofheadropeside(7)andthatofgroundropeside (8)whenthenetgotmuddy、SimbolsareequaltoFi9.3-1. 4.6m/s)よりも早くロープが伸出されるために(4.8∼6.0m/s)綱はたるんだ状態で沈降す ると考えられ3∼4分後に大きなピークが認められる.これは静止状態から曳綱状態へ移行 する時の衝撃力であり,この時点から曳綱開始をみることができる.この時から安定状態に なるまでに綱の張力は上昇してゆく場合とF降してゆく場合があり,後者の場合綱がまだ蒜 底していない状態から曳網されていると考えられる. 曳綱状態における褒網筋細ヘッドロープ付き及びグランドロープ付きに装着した張力計の 記録からは,曳綱中80∼100kgの振巾をもって略一定の値を示しているが風潮流による圧 流偏位が大きい場合では振巾及び変動周期も大きくなっている.船尾のバイコロを舷側にス トッパーにより固定する(パイをとる)と振巾は小さく張力も安定してくる.(記録例(7)) これは曳航による作用点を船尾隅に移動し偶力により船の針路安定性がよくなったためと考 えられる. 曳網中に大量の入泥(約4トン)があった場合には,網には通常の2∼2.5倍の大張力が かかる(記録例(7),(8)).記録からはグランドロープが泥にのめりこみ前進速度が低下し,、 不破:こそう曳網の動態 ▲ d L (9) (kg) 2000.i 1000. 0. 1 A A 4 : AOrdinaryATroubled 明 ▲ △ △ordinary△Trouble。
50
0 亡O一︶①ここ。こ]u心一EO亡○一、この﹄ 5 O EC↑︶の匡二ロ匡一um−匡。ご◎−,厘山﹄ ▲ a 凸 ;:‘§§‘ 2 2 凸 △ △ & ハ ム 凸 51 4 噂 ム ムム凸 ヘ ッ ド ロ ー プ 側 に 大 張 力 が 加 わ る . し か し 数 分 後 に は 泥 を す く い 上 げ る よ う に し て グ ラ ン ド ロープが前進をはじめて泥は襲綱内へ押しやられてゆく.通常の曳綱状態ではヘッドロープ 側に400∼700kg,グランドロープ側に680∼1200kgであるが入泥したような場合には夫々 300∼700kg,1200∼1660kgとなりグランドロープ側にかかる張力はヘッドロープ側の2∼ 3.2倍となる. 揚網時における記録は「寄せ」の初期にはその張力が約20%減じるが終期には曳網中と同 程度に増加し,曳索捲き上げ開始により曳綱時の約30%増となるが2∼3分後には0に急減 2 3 曲 (knot) (m/s) Towingspeed Fig、4・Rclationshipbetweenthetowmgspeed andthetensiononlacinglineorheadrope sidG. 、 0 , 4(knot) 2 u 1 2 ( m ノ s ) Towingspeed Fig、5,Relationshipbetweenthetowingspeed andthetenslononlacinglineofground ropeside.Planeview 鹿児島大学水産学部紀要第30巻(1981) 0 1 .④U匡珂一m一mの﹄一m↑O﹄
する.これは葉室の測定結果')'2)と同様に「寄せ」の初期には両船だけが急速に接近してゆ
き曳索接地点及び袖先の内縮移動は少なく張力は低下してゆくが,後半には船速は増し網の
張力は増加する・捲き上げ開始と同時に機関停止するが船の前進楕力が残存しているため捲
上げ初期に短時間ではあるが張力の増加が認められる.しかし船は急速に後退するために
(1.8∼2.0m/s)張力は0となる.捲き上げに従い曳索の接地部分が短くなると200∼300kg
の張力がかかり網はゆるやかに前進していると思われ600∼700m捲き取った段階で離底し
て張力は800∼1000kgに達する. 漁具の全抵抗R(kg)と曳網速力V(m/s)との関係は下式で表わされる. R=12286.4'0.18 xlOOOkg 15.
:
:
二
:
〉
/
R
雲
,
2
岬
蒜
:
.
.
:
.
『
聖
黙
Sideview ﹄、①⑥ロ色一二明 h 、 S − X 52 0 1 2(mノs) TowingSpeed Fig,6.Relationshipbetweenthetowingspeedand thetotalresitanceoffishinggear. knot) (2)』溌診
考 察 曳 索 の と る 形 状 は 懸 垂 曲 線 を な し て い る も の と 考 え ら れ る の で 近 似 的 に そ の 形 状 を 求 め て みる.船尾から接地点までの曳索のなす形状は懸垂曲線で近似できるものとすればその接地 点までの水平距離を死,水深をh,曲線の長さSは次式で表わされる3). Fig.7.Arrangementoftowingropeonthe bulltrawlnet.T:Tension,h: depthS:Lengthofwireropeinwater, x:horizontallengthofwirerope,2X: Distanceoftwoboats,L/2:Lengthof towingropeandhalflengthofground rope. S=αsinh2L a"
=
.
'
n
(
号
十
へ
/
芸
十
'
)
=
山
(
舎
十
'
+
、
/
(
舎
十
'
)
2
-
'
)
(
1
)
不破:二そう曳網の動態 53
α=Tb/”,Tb:船尾における水平張力(6300∼6700kg),W:曳索の単位水中重量(1.93kg/
、)これよりS=690.2m,z=685.5mとなる. また水平面での曳索形状について考えると接地部分の単位長さに作用する力は流水抵抗, 接地摩擦抵抗及び重力であるが平面的には流水抵抗と接地摩擦抵抗が作用していると考えら れる.流水抵抗は接地摩擦抵抗に比べて十分に小さいと考えられるので接地摩擦抵抗が主と して作用することになる.即ち曳索のなす形状はその頂点に網抵抗という重量物を付加した 懸垂曲線で近似できるものと考えられる.網の両端は固定されその中央に網があるから明ら か に 左 右 対 称 で あ り 右 側 の 曲 線 はγ
=
金
c
o
s
h
(
半
錨
十
.
)
+
‘
(3) 左 側 の 曲 線 はy
=
金
c
・
s
h
(
-
半
輪
十
回
)
+
‘
(4) z=Xのときy=0から金
c
・
亀
h
(
¥
X
+
・
)
+
‘
=
。
(5) 又 曲 線 の 長 さ は号
=
I
:
c
o
s
h
"
(
半
鰯
十
。
)
d
”
=
孟
仙
"
(
半
"
+
・
)
-
s
i
n
h
a
(6)s
i
n
h
(
半
…
)
-
s
i
n
h
‘
=
mgL 2ル 中 央 部 で の 釣 り 合 い か ら sinhaル
c
・
s
h
a
×
、
/
,
+
(
s
i
n
W
=
告
M
g
oinho=等(7)
(5),(6),(7)式よりだ,α'6は決まり曳索のなす形状は求められる.その結果をFig.8に 示 す が 網 抵 抗 が 曳 索 の 接 地 摩 擦 抵 抗 に 対 し て か な り 大 き い の で 曳 索 の と る 形 状 は 直 線 に 近 い ものとなっている. 張力計記録例(1),(2)に見られるように風潮流を側方より受けて曳網する場合,風上又 は潮上側の張力は風下又は潮下側の張力よりも約40∼60%少なくなる.これは風潮流による 圧流偏位が大きく,網は船の進行方向ベクトルと圧流ベクトルとの合成方向に進行してゆく. そ の 時 風 下 又 は 潮 下 側 の 曳 索 長 は み か け 上 乱 の 長 さ だ け 短 く な っ た の と 同 じ 結 果 と な り 風 下 又 は 潮 下 側 に 過 大 な 張 力 が か か る . こ こ で 曳 索 の 形 状 は ほ ぼ 直 線 と し て 近 似 で き る の で 曳 索長さを/とすれば,みかけ上の短縮距離dは下式で表わされる.54 鹿児島大学水産学部紀要第30巻(1981) Distanceoftwob◎at − 6 0 0 m − − 4 0 0 m − ソ 2−290(、) Fig.8.Schematicdrawingoftowingropeobtainedbycalculation. Windandcurrent ご チ ー
二
識
’
つど)且
Fig.9.Schematicdrawingoftheoperationoftwoboattrawling afbctedbywindandcurrent.。=j(COS62-COS6,)・1/COS6,
漁場における測定結果からZ=900,,6,=8.,82=14°よってd=16.5mとなる. 使用漁具のヘッドロープ長は93.8mであるから左右の袖先における差は17.6」 使用漁具のヘッドロープ長は93.8mであるから左右の袖先における差は17.6%にも達する. 著者は底曳網の模型実験から袖先における差がヘッドロープ長の5%をこえると明らかな網 の歪みを生じることを確認しており,このような状態での曳網は漁獲にも影響していると考 えられる.現在の曳網法は常に両船が並行して曳網しているが,本漁法では曳索長の調整は 船尾ストッパーの構造上不可能であり状況に応じて風下側の曳船が後退して網成りを維持す ることが漁獲‘性能の向上につながると考えられる.不破:二そう曳網の動態 55 要 約 二そう曳網の漁具にかかる張力を測定してその動態について検討し次のような結果を得た. (1)筋縄にかかる張力は通常ヘッドロープ側で400∼700kg,グランドロープ側で680∼