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高齢期の身体活動と健康長寿

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Academic year: 2021

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高齢期の身体活動と健康長寿

名古屋大学医学部保健学科 教授 榊原 久孝 1.高齢者の日常生活での心配ごとは「病気や介護」 平成18 年内閣府「世帯類型に応じた高齢者の生活実態等に関する意識調査結果」による と、日常生活での心配ごと(高齢者夫婦世帯)は、「自分が病気がちであったり介護を必要 としている」(36.4%)が最も多く、将来の不安な点でも「自分が病気になったり介護が必 要となること」(76.5%)が最多で、次いで「配偶者が病気になったり介護が必要になるこ と」(63.6%)と、「健康や介護」に関する心配ごとが多くみられます。 2.介護が必要になった原因 平成19 年厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、要介護者にみた介護が必要となっ た理由は、(1)脳血管疾患(脳卒中)23.3%、(2)認知症 14.0%、(3)高齢による衰弱 13.6%、(4)関節疾患 12.2%、(5)骨折転倒 9.3%でした。要介護にならないためには、 ①「脳血管疾患」の予防(生活習慣病予防)と②「高齢による衰弱」「関節疾患」「骨折転 倒」予防につながる体力強化が大切になります。 3.身体は脚から弱る 筋力は25~30 歳くらいに最大となり、その後徐々に低下し、50・60 歳以降には低下が大 きくなります。下肢筋力は、上肢筋力より大きく低下します。高齢者の下肢筋力は、バラ ンス能力、移動(歩行)能力、起居能力に関係し、高齢者の日常生活動作(ADL)や生活の質 (QOL)に大きく影響します。最悪の場合、要介護状態になる危険性があります。身体機 能と脳機能との関連も指摘されており、身体虚弱者では認知症の発症が多くみられ、下肢 機能低下者では2 倍以上の発症率になるとの報告もあります。 4.運動器不安定症候群(WHO)とロコモティブシンドローム(日本整形外科学会) 世界保健機構(WHO)は、「高齢化により、バランス能力および移動歩行能力の低下が 生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態」を「運動器不安定症候群」と名付けまし た(2006 年)。運動機能評価基準として、「開眼片脚起立時間で 15 秒未満」、または「3m立 ち歩きテストで11 秒以上」としています。 日本整形外科学会では、「運動器の障害による要介護の状態や要介護リスクの高い状態」 を「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」としています(2007 年)。 いずれも高齢期の体力低下を課題として取り上げています。

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5.高齢者の筋力低下の原因

高齢期の筋肉量低下・筋力低下(サルコペニア:sarcopenia)は、「加齢による末梢神経

や筋蛋白質合成などの減少などの機能低下」、「日常生活の不活発などによる廃用性筋委縮」、

「不十分な栄養」などが合わさった混合原因によるとされています。本年(2010 年)欧州の 作業グループがサルコペニアの定義と診断について報告書をだしました(Age and Ageing, 2010)。それによると、まず歩行速度が毎秒 0.8m 未満、または握力が男性 30kg 未満、女 性20kg 未満で、筋肉量の低下がみられる場合をサルコペニアの診断基準(案)として提案 しています。なおサルコペニアは、60・70 歳代では 5-13%に、80 歳以上では 11-50%にみ られると報告されています。 6.体力強化が健康長寿に役立つ 現在、肥満やメタボリックシンドローム(内臓肥満症候群)が注目されていますが、高 齢期には体力強化にも注意する必要があります。高齢者では、肥満よりも体力の方が寿命 に影響しているとの報告もあります(JAMA, 2007)。「1 回 20-30 分程度の運動を週 2-3 回 以上」行っている人では、死亡率や認知症(アルツハイマー病など)発症が30~50%低いと の報告もあります。 運動には、有酸素運動と無酸素運動の 2 種類があります。有酸素運動は、脂肪燃焼、循 環機能向上等の効果があり、無酸素運動は、レジスタンス運動(いわゆる筋トレ的運動) ともいわれ、筋力・筋肉量の維持向上、基礎代謝向上に効果があるとされます。肥満予防 の点から有酸素運動が推奨されていますが、高齢期には軽い筋トレ的なレジスタンス運動 も意識して、筋力アップに努めることが大切です。同時に、栄養にも気をつけて、身体機 能維持に努めることが必要です。 7.サクセスフル・エイジング(健康長寿)の3 条件

Rowe & Kahn (1997,1998)は、サクセスフル・エイジング(健康長寿)の条件として、次の 3 つをあげています。 1)健康状態の維持:病気になる危険因子の少ない生活(生活習慣病の予防) 2)高齢期でも身体・認知能力の維持向上をはかること 3)人生への積極的参加:社会的関係や生産的活動の維持 高齢社会の進展の中で、世界各国で、高齢者の体力低下・筋力低下が、日常生活や生活 の質に大きく影響して、さらに要介護の危険性も高まることから、注目を集めています。 日本においても、介護予防事業として、「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能の向上」 などが取り組まれています。体を動かして、体力の維持向上を図り、健康長寿を目指しま しょう。

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