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溶連菌感染による深部静脈血栓症に対して下大静脈フィルターを使用した1例

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Academic year: 2021

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仙台市立病院医誌 23,125−127,2003     索引用語   溶連菌敗血症   深部静脈血栓 下大静脈フィルター

溶連菌感染による深部静脈血栓症に対して

下大静脈フィルターを使用した一例

症 山 本 例

匡,柿坂庸介,遠

  櫻 井   薫*  症例:22歳,男性。主訴:発熱,腹痛,左下肢 痛。  家族歴:特記事項無し。  既往歴:2ケ月で肺炎。小児期に喘息。幼年期に 溶連菌感染症(詳細不明)による発熱あり。  現病歴:H14年2月中旬より感冒様症状(咽頭 痛,軟便)あり,2月20日ごろから頻回の下痢,左 下肢,腹部の痛みがみられたが放置していた(熱 は不明)。2月末からは頻回の水様下痢と39度台 の高熱が出現,食欲低下し経口摂取不能となった ため3月6日未明救患センターを受診。炎症反応 を伴った高熱,脱水として当院救急センターへ紹 介となった。 初診時現症  血圧,122/84mmHg,脈拍110回/分。体温39.7 ℃。意識清明,咽頭,頚部,胸部,腹部に異常所見 なし。浮腫無し。左鼠径部に圧痛あり,左大腿に 把握痛を認めたが,左下肢腫脹は明らかでなかっ た。

検査成績

 表に示した様に,蛋白尿,好中球増多による白 血球増多,軽度の貧血,低アルブミン血症とγグ ロブリンの著増,低Na血症,コレステロール低 下,肝機能異常,血沈充進およびCRP陽性を一般 検査で認め,慢性の細菌感染などが示唆された。凝 固系異常・特にFDP高値が認められ,フェリチン

藤 一 靖

の増加,ASO高値,動脈血液ガス分析異常もみら れた。自己免疫疾患や血管炎は臨床症状とも考え 合わせ否定的と考えられた。後日の凝固異常の精 査で,プロテインC,S欠損は否定され,抗リン脂 質抗体は陰性であった。 仙台市立病院内科 *同 循環器科 経 過  当初,敗血症や,感染性あるいは炎症性腸疾患 を考慮し各種培養施行後,抗生物質投与を開始し たが2病日の大腸内視鏡検査で腸疾患は否定的と 判断された。ASO著増,入院時血液培養でStr. pyogenesが検出され,溶連菌敗血症と診断され た。第3病日になり,左下肢の腫脹が高度となり, 造影CT(図1)を施行,左大腿静脈から総腸骨静 脈の下大静脈合流部までの深部静脈血栓症と診断 した。肺塞栓の明らかな症状はみられず,それを 示唆するエピソードも入院前を含めみられなかっ たが,肺塞栓症の危険を考え,第3病日抗凝固療 法の開始とともに,一時的下大静脈フィルターを 左鎖骨下静脈より挿入した(図2)。ヘパリン約 30,000単位/日,ウロキナーゼ6−36万単位/日(第 4から14病日)を投与するとともに,抗生物質

SBT/ABPC(あるいはABPC),とGMを併用し

加療,間もなく下痢は改善し,5病日頃からは微熱

となり,約2週間で解熱した。10病日のCTで

フィルター付近の下大腿静脈内に血栓が疑われた ため,同日右大腿静脈内にカテーテルを挿入しヘ パリン,ウロキナーゼ投与を同部から施行し,下 大静脈フィルターは第13病日特変なく抜去でき た。尚,第12病日から,全身に発赤疹出現し, ABPCをEMへ変更,15病日にはめまい出現し, GMも中止した。27病日以降CRPは陰1生となっ Presented by Medical*Online

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126 表.検査成績 丞 glu P「o occ. bl

WBC

(一) 104 (2+) 1月4日 mg/dl /HPF 末梢血 WBC  14,000  /μ1 (Poly 84.7, Eo O, Baso O.2,      Mo 4.9, Ly 10.2%) RBC    385×IO4  /μl Hb      11.5      g/dl Hct    34.4    % Plt     33.4×104  /μ1 動脈血ガス分析      (roonユ air)

pH

PCO2 PO2

HCO3

BE

SBC

7.523 27.5 67.6 22.5 1.3 25.4

mmHg

mmHg

生化学 TP    7.3 Alb    2.8  α1−g1  4.6  α2−gl  13.7  β一gl  9.9  γ一gl   35.2 BUN   15 Cr     l.0

Na

K

Cl Ca T−bil

GOT

GPT

ALP

LDH

mmo1/LγGTP mmol/L CK rnmol/L Tcho     BS 128  、 (U−Na8) 4.2 95 7.5 0.5 30 56 150 410 54 48 105 141 9/dl 9/dl % % % % mg/dl mg/dl mEq/L mEq/L mEq/L mg/dl mg/dl IU/L IU/L IU/L IU/L IU/L IU/L m9/dl mg/dl その他

ESR

CRP

RF

ANA

CH50

dsDNA

anti−RNP anti−Sm P−ANCA IgG Ferritin

ASO

ASK

PTINR

aPTT

Fibg

AT3

FDP

allti−PL protein C activity protein S activity 103 15.9 (一) 80 40’7 8 (一) (一) mm/hr mg/dl 倍 /ml IU/ml (一) 2,270   mg/dl 1,575 2,630 5.120 1.23 41.6 643 75 26.5 (一) 77 107 ng/ml IU/ml 倍 sec mg/dl % μ9/ml %% 雷留 ㍗3Q 212° 〆 Mal−209? }o鵠コB 月A33 4 2360 ]笹. / e8・t『at・?ao: 151057ぶ 5iMA 31 SPI 4 SP 2:00

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     )       ‖Ogm 図1.第3病日,腹部骨盤部CT。左総腸骨静脈から下大静脈合流部に血栓を認める(矢印)。 た。経過中肺塞栓症状はなく,36病日の肺血流シ ンチでも欠損はみられなかった。ヘパリンから ワーファリンへ移行し,抗凝固のコントロール後 第69病日退院となった。溶連菌が原因のため外来 でEMの長期投与をする方向とした。尚,57病日 のCTでは,左下肢静脈の部分的再開通が示唆さ Presented by Medical*Online

(3)

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図2.第3病日,下大静脈フィルター挿入。左:カテーテル先端からの逆向性下大静脈造影。右:挿入され   たフィルター。 れた。 考 察  下大静脈フィルターは1980年代から経皮カ テーテルが開発され(permanent filter),1990年 代になりtemporary filterやretrievable filterが 開発され普及しているが,その適応に関してはい まだ論議がある。本症例では感染症が主因と推定 され,また若年であったため,左鎖骨下静脈から, 一時的フィルターを挿入した。本例のフィルター 使用による問題点としては,1)穿刺に苦労(首が 短く鎖骨下も狭い患者)したこと,2)フィルター 挿入期間中に患者が身体的拘束を強いられたこ と,3)抜去時に捕捉血栓が遊離して肺塞栓を起 こす可能性などが挙げられる。1)は穿刺に時間 を要し,穿刺部位の変更を要した。挿入はできた が,処置中の患者さんの苦痛は軽度ではなかった。 2)に関しては,本症例が,理解力が高く協力的で, かつ精神的にも安定していたことでフィルター抜 去まで問題なく経過することができた。しかし,症 例によってはこの点は問題になるかもしれない。 3)に対して本例では右大腿静脈からカテーテル を挿入し,抜去前にフィルター近傍からのウロキ ナーゼ注入による捕捉血栓の溶解を試みた。また, 抜去時のフィルター部の造影にも右大腿静脈カ テーテルは有効であったことから,必要に応じて 考慮すべきと思われた。その他,敗血症に対して 異物を挿入することの是非に疑問が残った。 考 察  敗血症性深部静脈血栓症に対し肺塞栓予防の一 時的下大静脈フィルターを挿入し良好な経過を得 た症例を報告した。 Presented by Medical*Online

参照

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