学習指導要領(図画工作)と題材
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第69巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 69, No.2. 平 成 31 年 2 月 February, 2019. 学習指導要領(図画工作)と題材 阿 部 宏 行 北海道教育大学岩見沢校美術教育研究室. Course of Study for Elementary Schools on Arts and Handicrafts and Subject Matter ABE Hiroyuki Department of Art Education, Iwamizawa Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本稿では,図画工作・美術で行われる「題材」を再定義するとともに,題材の構成する要素を 指導事項や指導計画などで複層的に捉えて,題材で発揮される資質・能力1)の実相を明らかに し,指導のあり方を考察するものである。. は,どのようなものであろうか。また,題材は学. はじめに. 習において,どのような意味をもち,学習者にど. 本稿は,図画工作・美術における「題材」につ. のように働きかけるのだろうか。. いて,学習指導要領などを踏まえて,その意味や. ここでは歴史的な視座を捉えつつ,題材と指導. 意義,教育的な価値などを論考するとともに,今. の関係を授業改善の視点から論考する。. 後の「題材」の理論構築に向けて質の向上の一助 とするものである。 各教科には,学習の対象となる単元や題材があ. 1 単元と題材. る。教材として教師が準備し,授業において学習. ここでは単元と題材の違い,及び,教科の特性. 者に提示される。. から記述する。 2). 学習指導要領(平成29年告示)の解説 の第1. 「単元」は,ユニットなどと使うように統一. 章総説では,三つの柱で資質・能力を整理すると. 性・統合性を備えた「教材や経験の有機的なまと. ともに,授業改善の視点として6点挙げている。. まり」をいう3)。. その中で,「内容や時間のまとまり」である単元. 第二次大戦後,アメリカから導入された単元論. や題材で資質・能力の育成を図ることを重要視し. が制度化されカリキュラムに位置付けられた。昭. ている。この規定は,図画工作での「題材」を顕. 4) にも, 和22年(1947年)の学習指導要領(試案). 在化させることになった。そもそも単元や題材と. 子どもの「経験のまとまり」が単元とされ, 「教. 281.
(3) 阿 部 宏 行. 材単元」と対比して「経験単元」や「生活単元」 と呼ばれた。教科ごとに「生活単元方式」などが. 2 「題材」の歴史的な捉え. 取り入れられコア・カリキュラム運動なども起. 「題材」は,「為すことによって学ぶ」経験主. こったが,1950年代になると学力低下を指摘する. 義的な学習に由来する体験を伴う教科に付随して. 研究者も現われた。昭和33年(1958年)の学習指. 用いられていたこととともに,一つの題材の中で. 5). 導要領 が系統学習の立場で改訂されたこともあ. 指導内容を明確にして展開されることが分かる。. り,経験主義を踏まえた学習から,系統学習へと 移行することとなった。この背景には,数学や理. ⑴ 戦後の題材に関すること. 科など知性主義がある。6). 昭和22年(1947年)の文部省「学習指導要領図. 一方「題材」は「学習指導の内容を構成するま. 画工作編(試案)」では, 「題材」の用語はなく「単. とまり」としている。. 元」を使用している。例として「図画工作教材単. 題材を設定する際には,題材に内在する教科性. 元一覧表」(p7)のような用語で使われている。. を取り上げて具体的な学習指導を行うことが多い. ここでは各学年(この22年版は9年生まで記載). としている。題材とは「学習指導のための目標・. の第六章から第十四章の「図画工作指導」の箇所. 内容を組織付けた指導の単位」とみることができ. で「単元」の用語がある。現在の「絵に表す」な. る。. どの指導内容(「内容のまとまり」)に相当する箇. 先の戦後の時代的な流れからも, 「単元」が数. 所で「単元一 記憶・想像による描画」などとし. 学や理科など系統的な教育観に従属することが多. て使われている。. いのに対して,題材は「教科性」に付随すること. 昭和26年(1951年)の改訂版7)では,「第Ⅲ章. が多いといえる。また,「題材」は技能など体験. 各学年における指導目標と指導内容」(p15). を通して学ぶような経験主義的な学習の場合に多. に「単元や指導主題を決めて学習させる」の文言. いともいえる。そのため音楽科や図画工作・美術. で「単元」が使われている。特筆すべきは「描画」. 科では「題材」の名称が使用されるようになった. の項の終末部分に「指導内容の1は,主として題. と考えられる。. 材の系統を示したものである」として「題材」の. また,平成17年の日本文教出版の図画工作の教. 用語が使われている。. 科書の教師用指導書研究編には,単元と題材に関. ここでいう「題材の系統」は,年間指導計画な. して以下のような説明をしている。「単元は,絵. ど,年間を見通して育成することを意図して,絵. に表す,立体に表す,つくりたいものをつくるな. に「かかせる内容」を題材とし,系統的な題材配. どの複数の題材で構成され,指導内容は互いに関. 列を計画的に進めるために記述されていると考え. 連をもちながら,児童の追求を連続させいくよう. られる。. に構成されている。」としている。一方,題材は 「絵に表す,立体に表すなど一つの指導内容で構. ⑵ 明治期の題材と教材. 成されている。 」というように,指導内容が複数. 水島尚喜は,明治期の「題材と教材」8)の関係. であるか, 単数であるかを決め手としている。(下. や歴史的な意味付けを次のように論じている。. 線筆者)ここでも教科の独自性である経験主義的. 題材の名称の初出については,「学術研究・芸. な学習の立場と,複数の題材が関連し合って系統. 術作品の主題を表すために用いられる材料」(『日. 的に移行していく単元を説明している。. 本国語大辞典 第二版』小学館)としている。「教. 題材は,一つの完結性をもちながら,そこで育. 材」に関しては,教育内容と物的な資料の両面を. つ学力(資質・能力)を育成するとともに,指導. 併せもつものとして,教授の際の内容と,それを. の明確化・重点化を規定しているといえる。. 伝える媒体としている。. 282.
(4) 学習指導要領(図画工作)と題材. 先の単元との関係なども含め,芸術(音楽・美. いる。そこに大人の芸術様式など組み入れること. 術)のような固有性と主題性に重きを置く教科に. はないと言及している。また,板良敷は同著で. おいては, 「教材」という「内容と資料」の二面. 「《造形遊び》では,子どもの育ちの側に立つこ. 性を離れ「題材」としての独自性が付加された有. とで,子どもが創造的な活動の体験を味わい,自. 機的なまとまり(学習対象)と考えることができ. 己の資質や能力を醸成することを,より多く期待. るとしている。. できる。」としている。. ⑶ 子どもの文化と題材. ② 造形遊びと活動性. さらに,水島は,子どもと文化の交わりが存在. このような子どもの立場で資質・能力が発揮さ. する芸術活動において,人間のもつ根源的な表現. れる《造形遊び》の考えを踏まえて,教師側から. 欲求と,文化(自然や社会をも含む)との衝突に. 見た指導型の「題材」と,子どもの側から見た活. よって生み出される場が「題材」だとしている。. 動型の〈題材〉について改善の方向を図りたい。. 人間と文化は,並列・並走ではなく交差・交錯. 図画工作に位置付く「造形遊びをする活動」は,. するなかで生み出されるものである。創造の「創」. 材料などに働きかけて,自分の感覚や行為を通し. の字源が「傷」に由来することを考えても,つく. て捉えた形や色などからイメージをもち,思いの. るだす行為が,何より創造的な営みであることを. ままに発想や構想を繰り返し,技能を働かせてつ. 論じている。. くるものである。学習のはじめに,つくりたいも. 続けて水島は,題材は「子どもと教科という文. のの主題や内容があらかじめ決められているもの. 化が,交差し合う地点にあるインターメディア」. ではない。つくる過程そのものを楽しむ中で「つ. として位置付けられるとしている。しかし,現状. くり,つくりかえ,つくる」という学びの過程を. は「上からの題材」として,目的達成の方法論に. 経験していることになる。思ったとおりにいかな. 収斂され,学習者に与えられるだけの一方的な存. いときは,考えや方法を変えたりして,実現した. 在になっていないかと危惧している。題材を通し. い思いを大切にして活動することを大切にしてい. て,子どもは自らの感性や想像力を働かせて,外. る。. 的なイメージである形や色などを用いて,自分な. 木片などが多量にある場合,木片(材料)をつ. りの意味や価値を見出しながら, 「表現」という. なげる中で,イメージを膨らませながら,思い付. 心的なイメージを生み出すプロセスであり行為と. いたことを工夫しながら表現することになる。材. している9)。. 料に触れながらイメージをもつことに意味があ る。一方,「絵や立体,工作に表す活動」は,感. ⑷ 造形遊びと題材. じたこと,想像したことなどのイメージから,表. ① 子ども文化と造形遊び. したいことを見付けて,形や色を決めたり,表し. 図画工作では,先の創造的な行為としての「造. 方を考えたりしながら,技能の働きによって表す. 形遊び」が, 「内容のまとまり」に位置付いてい. ものである。学習のはじめには,およその表した. る。この造形遊びの全学年に拡大した元文部省教. いことの目的やテーマを基に発想や構想を繰り返. 科調査官板良敷敏は「教育の中の遊び」の項で. し,その構想に合わせて技能を働かせながら表し. 《造形遊び》を図画工作の中心の内容と位置付け. 方を工夫して思いを実現していくことになる。. て論を展開している10)。. この二つの指導の視点で見ると,子どもの活動. 「 《造形遊び》は,子どもの一人一人が自分の. 性の高い「活動型」の授業の「造形遊び」と, 「指. 感性や技能を発揮できる場として文字どおり“子. 導型」の絵や立体,工作に表す指導にも分けて区. ども主体の教育”を実践する場である。 」として. 分することができる。つまり,造形遊びは,材料. 283.
(5) 阿 部 宏 行. などの環境を整えることが中心となり,絵や立. びの視点で見直し,そこで何を育成しているのか. 体,工作に表すは,教師の説明や指示など指導手. を問う必要がある。. 続きが多くなる傾向にある。 ⑹ 活動性と題材 ⑸ 題材にみる「指導性」と「活動性」. 子どもの視点から題材を考えると,「活動型」. 題材を考え,学習の展開や材料・用具を準備す. の絵などの指導に,より多くの子どもの資質・能. るのは教師である。 「教え導く」という教授型の. 力の発揮がみて取れる。これは「造形遊び」が子. 指導観によるか,子どもの自発的で主体的な活動. どもの視点から位置付いている身体性の発揮と同. 型の指導観では,作品に至るまでの過程に違いが. じ地平にあるといえる。材料を媒介に体全体で関. 生まれる。. わることで,発想や構想など造形的で創造的な表. この「A 指導型」と「B 活動型」の指導観の. 現を体現しているからである。ここでは「活動型」. 違いによる絵の指導の特徴を記述する。. の指導が確保されているからに他ならない。. A 指導型:作品としての価値を認め教師の側に. 絵に表すことにおいても「活動型」の指導を中. 主導権があり「指導性」に基軸を置いた絵の指導. 心とすることで,子どもの資質・能力は,一層発. が多くなる。戦後も含め作品展(公募展)などで. 揮されることになる。そこにあるのは子どもの自. 作品を審査し賞を与える時流の流れにある。視覚. 発性であり,主体性である。自ら動き出すこと,. 優位の作品群(写生会・物語の絵など):「見て分. 自ら考え判断することに「学び」の原点がある。. かる」ことが優先される。同一題材で,同一対象. 子どもの側から「学び」を捉えることである。こ. であれば「優劣」 「技能差」に焦点になるなどで. のあとは,この前提に立って,授業や題材を考察. ある。. することにする。. B 活動型:過程重視の「活動性」に基軸を置い た絵の指導は,子どもの側に主導権がある。材料 などの操作や組み合せる行為など身体性に重点が. 3 題材と資質・能力. 置かれる。「造形遊び」のよさを生かした造形活. ⑴ 〈題材〉について. 動は,従来型の再現的な表現でもなく,視覚的な. ① 「題材」から〈題材〉に向けて. 作品でないことが多く「作品を見ても分からない」. 指導者側からの見た指導の「題材」と,子ども. ので,試しの活動の未完成作品として作品展では. 側から見える学びの〈題材〉に違いがある。. 扱われない。優劣や技能差などがないので「賞」. ここでは,題材を子どもの目線で考えるものと. がつけにくいなどである。. して〈題材〉と表記する。一方で,題材を教師の. Aの事例としては,従来の指導型の版画の指導. 目線で考えるものを「題材」を表記して論を進め. などが挙げられる。作品にまでに至る見通しを. る。. もっているのは,教師であり,下絵の段階から,. もちろん教材研究は教師の仕事であって,題材. 白と黒のバランスなど,これまでの参考作品など. を考えるのも教師である。そのときの視点が,ど. から得られる高度な作品性を求めることができ. こにあるかを違いとしている。指導型の授業を念. る。経験の少ない子どもの場合は,教師の指示に. 頭にして題材を考えると,完成形の作品は教師の. 従うことになる。複数枚作品をすることができる. 具体的な形としてあり,子どもは指示や説明に従. ことから,公募展などへの出品や展覧会の掲示な. うことになる。このような題材観を「題材」とし. どが可能になる。審査など,大人の目を通した評. ている。造形遊びのように完成形も含めて活動が,. 価が下される。. 子どもの主体的な行為に委ねられる活動性の高い. このようなAの指導型には子どもの側からの学. 題材観のものを〈題材〉としている。. 284.
(6) 学習指導要領(図画工作)と題材. これは,先の水島の論も含めて,授業という場. る。このことは,授業において,教師が「教える,. が子どもと教師の思いの交錯によって生み出され. 覚えさせる」という一方的な教授法に与しないも. る造形活動とすると, 〈題材〉は造形遊びのもつ. のである。. 「子どもの文化」対, 「教師(大人)の既成の概念」. 子どもが自らの状況の中にある「問題」を自分. との衝突・交錯によって,つくりだされる表現そ. だけの知識などで解決するのではなく12),友人. のものが新たな文化として築かれるのである。こ. などの知恵に触れることで,自らの「学力」とし. こに創造の原点がある。. て獲得していくというロシアの心理学者レフ・ ヴィゴツキーが提唱した最近接発達領域の考えが. ⑵ 知識(造形的な視点). 基になっている。. 学習指導要領(平成29年告示)解説では,教科. 図画工作の授業において,意欲も含めた学力の. の目標の「知識及び技能」にある造形的な見方・. 獲得は,重要なものといえる。知識や技能の獲得. 考え方の説明の中で「対象や事象を捉える造形的. は,情意との相互の乗り入れで「楽しい」 「面白い」. な視点」とある。この「造形的な視点」は,図画. などという子どもの姿として現れるのである。. 工作ならではの視点であるばかりか,育成する資 質・能力の「知識」を支えるものとしている。 捉える対象(もの)や事象(こと)には,材料. 4 〈題材〉と想像力. や作品,出来事などがあり,具体的には,形や色. ⑴ 「造形的な見方・考え方」. などの「造形的な特徴」である。表現や鑑賞の活. 「見方・考え方」については,平成28年(2016. 動において,身体化された知識といえる「造形的. 年)12月の中央教育審議会の答申「幼稚園,小学. な特徴」は,感性や想像力とともに働く基盤に. 校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指. なっている。. 導要領の改善及び必要な方策等について」におい. この知識は,身体化されたいわば「身体知」と. て,次のように記されている。(抜粋). いえるものである。この身体知は,問題に向かう. ・各教科等の学習の中で働くだけではなく,大人. とき,顕在化し技能を連動させて解決にあたると. になって生活していくに当たっても重要な働き. きの知識となる。表現は自分の思いを実現しよう. をするもの。. と知識と技能の一体的な働きによる問題解決であ る。 「より高い立体物をつくりたい」という思いは,. ・世の中の様々な物事を理解し思考し,よりよい 社会や自らの人生を創り出すこと。 ・思考や探究に必要な道具や手段として資質・能. つくるための知識を顕在化させる,土台の大き. 力の三つの柱が活用・発揮され,その過程で鍛. さ,構造,支えとなる柱の強度,そして接着・接. えられるのが「見方・考え方」。. 合の方法など, 「つくりたい」という意欲は,つ くるための知識を顕在化させる。その中には,未 知の経験もあることから,全てが身体知として体. ・教科等ごとの特質があり,各教科等を学ぶ本質 的な意義の中核をなすもの。 ・教科等の教育と社会をつなぐもの。 (筆者下線). 内に組み込まれているわけではない。新しい知識 11) という考え方である。 は, 「自分の外にもある」. そこで図画工作・美術科は上記の下線部を踏ま. それは,私たちが,知らないことに出合っても,. えて「造形的な見方・考え方」として,教科の特. これまでの経験を基に再構成などして対処した. 質を踏まえた教科の本質的な意義を示している。. り,類似のことと照らし合わせたりして行動し解. その具体的な文言は「感性や想像力を働かせ,. 決できるというものである。または,友人など他. 対象や事象を,形や色などの造形的な視点で捉え,. 者と通して,知識を共有することができるのであ. 自分のイメージをもちながら意味や価値をつくり. 285.
(7) 阿 部 宏 行. だすこと」である(中学校は下線が「自分として」. 「私の色もいいでしょう」など,子どもが造形活. となっている) 。ここでは,自分なりの「意味や. 動の中で,感じ取っている姿を見いだすことがで. 価値をつくりだす」ことに集約されている。結果. きる。 「あ!この石の形,ペンギンになる!」など,. としての作品ではなく,表現や鑑賞の活動を通し. どれも,造形活動で,感性や想像力を働かせてい. て,生成される「意味や価値」のことである。. る子どもの姿である。. 個として尊重されるのが個性であり,作品に込 めた意味や,自分なりの価値が重要であることを. ⑶ 「造形的な視点」. 示している。つくりだすという「創造」すること. 前述の「造形的な見方・考え方」の文言には「対. の価値も,そこに込められている。この意味や価. 象や事象を形や色などの造形的な視点で捉え」と. 値は,人類が文化や文明を築いてきたことと共通. ある。この「造形的な視点」は,教科の目標⑴の. するものである。授業で営まれる,子どもがつく. 「知識」に関する「理解する・分かる・気付く」. りだす行為の向こうに,人類が築く豊かな生活や. に関係している。一人一人の理解が深まって「知. 社会があり,文化や文明に通じている。. 識」になるということである。材料や作品などの 「対象」,出来事などの「事象」を捉える「視点」. ⑵ 「造形的な見方・感じ方・考え方」. のことである。その視点は,低学年で「形や色な. 平成29年(2017年)の学習指導要領は,平成5. ど」,中学年で「形や色などの感じ」,高学年で. 14). を起点として成. 「形や色などの造形的な特徴」などのことをいう。. 立している。そこでの図画工作は, 「知識・理解」. それは,感性や想像力の働きを伴うもので図画工. を,感性的な理解として説明し「鑑賞の能力」を. 作特有の知識に属するものである。授業では具体. 当てている。図画工作・美術における「鑑賞の能. 的に,形や色などをもとにした「造形的な視点」. 力」は,表現する能力とともに重要な資質・能力. を豊かにすることである。. の一つである。この能力は,単に見ることにとど. 例えば,対象となる色について,低学年では「い. まらず,全感覚を介して得られる「感じ取る・味. ろいろな色」中学年では「色の感じ,それらの組. わう」といったものである。その上で,平成20年. 合せによる感じ,色の明るさ」,高学年では「色. (2008年)には[共通事項]が新設され「形や色. の鮮やかさ」となっている。これは,単に色の名. などをとらえる」と「イメージをもつ」という,. 前を覚えたり,明度や彩度といった言葉を理解し. 表現にも鑑賞にも働く共通の能力が示された。. たりすることではない。色には,それぞれ固有の. 平成29年(2017年)の学習指導要領の改訂は,. 特徴があること,その色を活用して私たちの生活. これまでの資質・能力を「整理する」観点から. や社会に役立て豊にしている「造形的な視点」を. [共通事項]アに「知識及び技能」の「知識」が 「気付く・分かる・理解する」という文言で整理. もつことである。 ・・ また,形や色などの「など」に属する「材料」. された。また,表現及び鑑賞の活動において「思. に関する視点では,例えば「石」を例に考えてみ. 考力・判断力・表現力等」に「鑑賞の能力」が生. ると,素材としての石が,海岸にたくさんあって. きている。つまり, 「造形的な見方・考え方」は,. も,「材料」にはならない。多くの石の中から,. 図画工作が大切にしている「感じ方」が位置付い. 一つの石を拾い上げたとき,その石に,その子な. ていると考えることができる。「見方・考え方」. りの意味がもたらされたことになる。. が,認知的な一面ばかりを強調される傾向にあ. その石に描画材で,目を付けると,それは表現. る。しかし, 「感じ方」を中心に考えると,図画. であり,その石は,その子なりの価値を持つこと. 工作で大切にすべき子どもの資質・能力に焦点が. になる。その一連の鑑賞と表現が「つくりだすと. 合う。 「すてき!」 「これどうやってつくったの?」. いう行為の連続体」ということである。. 年(1993年)の新しい学力観. 286.
(8) 学習指導要領(図画工作)と題材. 学習の場合は,その素材は「教材」としての意. 「学年目標」を基に,より具体的な育成する資質・. 味をもつ「材料」として価値が付与されている。. 能力を明確することが求められる。. どんな素材を選ぶかも,それに価値を見出すのは. 題材を通して育成される形や色に関する知識. 「教師」である。. や,思いを基にイメージしたことを実現する技能. 学習は,教師からの投げかけと,材料の提供に. などをおさえることである。その上で指導計画上. よってはじまる。子どもは,自らの感性と想像力. の,どの場面でどのような指導が考えられるか,. を働かせて,知識と技能を駆使して,自らの意味. そのための支援の方法をどうするのかの具体的な. と価値をつくりだすのが造形活動である。. 指導計画を考えることになる。これが学習指導案. まず石を選ぶときに働くのが「造形的な視点」. となる。. であり,絵や立体に表す活動であれば,形や色な. 学習指導案は,自分の授業を考える上で必要と. どを基に 「この丸い形いい!」 「お気に入りの色だ」. なるばかりか,他の教師と授業を共有する重要な. 「つるつるしているから絵もかきやすそう」と選. アイテムになる。. ぶことになる。. 育成する資質・能力を可視化するばかりでなく. 造形遊びをする活動の場合には,並べたりする. 指導の意図が明確に共有することができる。この. とき,形や色などを基に,手にしたときの重さを. ことは,カリキュラム・マネジメントの観点から. 実感したり,石の並べ方を工夫したりして,自分. も,学校で育成する資質・能力を教師がチーム学. の思いを実現しようする。並べる行為そのものに. 校として共有することができる。教師の都合で行. 意味があり,並べること(事象)や並べたもの. われる題材ではない。教師間での共通理解の基に. (事物・対象)に自分なりの意味があり価値が生. 子どもに何を身に付けさせたいのかを共有するこ. まれている。. とが大切になる。授業後は,自身だけでなく,参. 「造形的な視点」は,生来より外界から形や色. 観していた人からも育成の観点で,改善点をもら. などの情報を取り入れ,行為・行動する中で「概. い省察することができる。. 念」として形づくられてきた。自らの生活や社会 を生きるための根源になっている。. ⑴ 指導事項と指導計画. 図画工作は,それら形や色などを媒介として,. ① 目標の明確化. 自らの意志や感性,想像力を働かせて,体全体の. 授業改善の鍵となるのが〈題材〉である。新学. 感覚を駆使して表現するのである。. 習指導要領の解説には「各活動において指導する. 義務教育の学習においては,題材として子ども. 10) の項目があり,題材ごとに「指導する事 事項」. に提供されることになる。. 項」(以下は〈指導事項〉と記す)を,設定する こととなっている。. 5 〈題材〉の成立条件と授業改善. 〈題材〉に育成する資質・能力を〈指導事項〉 として設定し,目標を明確にする。その上で,ど. これまでは題材を設定する際には,子どもの実. の場面で指導するかなどの時間軸に沿った〈指導. 態などを踏まえ,学習する内容から授業時間数や. 計画〉を連動して考えることになる。〈指導計画〉. 展開などの指導計画を考えることが中心であっ. には,授業の展開などのような時間に関すること. た。その上で育成する資質・能力の観点に沿った. や,空間や材料など,子どもたちの活動に,欠か. 評価規準を立てるとともに,事前の教材研究を基. すことのできない環境面の配慮事項も併せて考え. に材料や用具の準備などが行われた。. ることになる。「目標を明確にする」ことを通し. これからの題材づくりにおいては,新学習指導. て,事前に教師がおさえなければならないことが. 要領に示されている三つの柱から導き出された. 顕在化してくる。. 287.
(9) 阿 部 宏 行. 例えば,表現において発想や構想に関する「思. 学年(低・中・高学年)に必要な事項は,繰り返. 考力,判断力,表現力等」を育成する場合には,. し指導して確実に身に付けることが大切になる。. 子どもの発想や構想が広がるように,材料をどの. このような手続きによって〈指導事項〉を設定. くらいの量を準備するか,活動場所はどのくらい. した後には,実際にどのような指導を行うのかが. の広さが必要か,初めて使用する用具の安全確認. 問題となる。そこで次に〈指導計画〉について記. と説明をどうするかなど,考えることになる。. 述する。. また, 事前の教材研究では,子どもの立場になっ て,子どもと同じ用具や材料で試作するなどし. ③ 指導計画16). て, 「つまずき」を予め知ることが大切である。. このたびの学習指導要領の改訂では,目標を明. このことによって実際の授業で個別に対応するこ. 確に示すことで授業改善が図られるとしている。. とが可能になる。. 曖昧だった目標やねらいを三つの柱から導いた. 題材の内容は,学習指導要領の「学年の目標」. 資質・能力を明記した〈指導事項〉を設定する。. や「各学年の内容」から導き出された〈指導事項〉. しかし,〈指導事項〉を作成しても,実際の授業. とともに, 〈指導計画〉が設定されることになる。. に生かされなければ意味をもたない。 〈指導事項〉. つまり, 「目標」を育成する資質・能力で明確に. は,実際の授業をどのように展開するか〈指導計. するともに,授業の展開などの指導の充実を図る. 画〉と連動して,はじめて意味をもつのである。. ことになる。. 題材を通して,育成する資質・能力を明確にし,. 〈指導事項〉と〈指導計画〉は,常に連動し一. 育成に必要な材料や用具,時間配分や場の構成な. 体的に考えることになる。. どの〈指導計画〉が重要になる。 ここでは,子どもの学びを成立させる3つの要. ② 指導事項. 素で考える。第1は「時間」である。必要な授業. 例えば,造形遊びをする活動で〈指導事項〉を. 時数を考える。発達や内容,年間計画上の位置付. 設定する場合は,「A 表現」⑴⑵のアにある「思. け,そして,地域や学校などの実態によって決め. 考力,判断力,表現力等」と「技能」をおく。さ. ることになる。また,単位時間の授業での導入や. らに, [共通事項]⑴のアの「知識」とイの「思. 展開,終末などの時間配分も考慮する。第2は. 考力,判断力,表現力等」の〈指導事項〉も併せ. 「場所や環境」である。学習する場所や使用する. て設定する。. 施設の確認,座席や材料置き場などの配置である。. その題材に「鑑賞する活動」を関連付ける場合. 場所によっては,他の学年との調整や,書類等の. には, 「B 鑑賞」⑴のアと[共通事項]⑴のア,. 手続きが必要な場所もある。座席などは,授業を. イも, 〈指導事項〉として併記することになる。. 想定し,子どもたちの動線を考慮して配置する必. それらの具体的な文言は,学習指導要領の各学. 要がある。第3は「材料や用具」である。安全な. 年の目標や内容,解説などから見いだすことがで. どに考慮して,子どもの「やり切った」という充. きる。これらを考慮して,教師は各教室の実態を. 実感につながるよう材料や用具を整えることにな. 加味して〈指導事項〉を設定する。. る。事前に材料などを集める場合には家庭によび. 実態として,用具の使い方が不十分であれば,. かける文書なども必要になる。用具は,活動に必. 題材のはじめに,安全な使い方を確認し慣れるよ. 要な数や,安全性などを確認することが大切であ. うな時間を保障する必要がある。この〈指導事項〉. る。この他に,授業記録や評価,板書案なども計. は,年間を通じてバランスよく指導されることに. 画する。準備は授業を円滑に進める上で欠かすこ. なる。また,6年間を通じて,身に付けるという. とができない。想定外の事態に備えることができ. カリキュラム・マネジメントの観点からも,その. るのも,やはり事前の教材研究があってのことだ. 288.
(10) 学習指導要領(図画工作)と題材. からである。. ② 題材団子論 17) の項でチゼックや 林健造は,「造形団子論」. ⑵ 〈題材〉と育成する資質・能力. ローヴェンフェルドなどの海外の美術理論や実践. 一つの題材において,目標を明確にした授業で. から,本来日本が学ぶべきものを矮小化し,題材. 子どもたちの課題として提案することになる。子. を固定化させたと論じ, 「好きな絵」, 「年中行事」,. どもたちは,自らの資質・能力を発揮して,表し. 「思い付きのままの選択」など題材(ここではテー. たいことを実現しようと表現する。. マ)によって,何が育つのかの吟味がされていな. 例えば,低学年の造形遊びをする活動では多く. いことを憂慮している。「テーマがあって子ども. の木切れを並べたり,積んだりする, 「つくり,. があるのではなく,子どもがあってテーマがある. つくりかえ,つくる」過程を通して,思い付いた. のである。」そして,題材を団子として,栄養(教. り考えたりする「思考力,判断力,表現力等」の. 育的価値)のない団子がバラバラに与えられても,. 〈指導事項〉を設定する。表し方を示す〈技能〉,. そこからは何も育たないとしている。林は, 「基. 形や色などに気付く〈知識〉の〈指導事項〉を設. 礎能力」を団子の「くし」としている。しかし,. 定する。造形遊びをする活動においては,最後に. このくしを強調するがあまりに,子どもの発達や. 作品が残らない場合もあるので,教師は活動の過. 欲求などとの結びつきもなく訓練になってしまっ. 程での子どものよさや可能性を認めることや,子. ては,栄養ではなく害になるという。. ども同士が自然に発想を交流する場面を支援する. 新学習指導要領では,このくしが「三つの柱」. 姿勢が必要である。これらの〈知識〉 〈技能〉は,. で明確にしたといえる。題材を貫く「くし」を. 授業内において子ども同士で共有できる。新たに. 〈指導事項〉として,〈指導計画〉を考えること. 教えることもあるが,これまでに身に付けた知識. である。. や技能を授業で共有し,さらに高めて更新する過. 林は教師の役割を「子どもの造形的な発達と力. 程が「深い学び」に向かうという考え方である。. に応じて,その表現を引き出す最もよい道を捜す. つくり,つくりかえ,つくる過程で生まれる学び. こと」としている。. が, 「深い学び」に向かうことを踏まえて〈指導. これまで分野(造形遊び,絵や立体,工作,鑑. 計画〉を練ることである。. 賞など)とよばれた中から,題材を脈絡もなく実 施するのではない。まずは,「くし」となる〈指. ⑶ 題材のまとまり及び系統. 導事項〉をおさえることになる。. ① 題材の配列 一つ一つの題材で,資質・能力を育成すること. ③ 資質・能力から導く〈指導事項〉. になる。この資質・能力は,新たな課題に接して. これまでの題材の「くし」は, 「内容のまとまり」. 問題を解決することで,備えていた資質・能力を. (分野)で構成されてきた。例えば,造形遊びを. 更新して新たな資質・能力として身に付けるとい. する活動を実施した後の題材は,絵に表す活動,. う学力観である。そのためには,連続して段階的. または,立体に表す活動というように,「内容の. に身に付けるように,題材間の関連を図る必要が. まとまり」ごとに配列することである。題材間の. ある。. 関連に,共通性を見いだすことはできない。. そのためには,一つ一つの題材をどのように配. このたびの改訂で明らかになったのは,育成す. 列するかの鍵になるのはやはり育成する資質・能. る資質・能力を「くし」とすることである。. 力のバランスに留意する必要がある。. 何がこの題材で育つのかが明確に説明されるこ とで,育成された資質・能力を自明のものとして 検討できることである。. 289.
(11) 阿 部 宏 行. ④ 育成された資質・能力の検証. 可能になる。. 図画工作などの教科においては,身に付いたか. 佐伯胖は「行為の知」として,動画から子ども. どうかをペーパーテストで,理解の定着を測った. 14) の所作から読み解くことを論じている。. としても一部のことであり,将来の生きて働く力. これは,体全体の感覚や想像力を働かせて形や. を測るにはほど遠い評価である。また,技能を知. ものをつくりだす行為には,子どもが持ち合わせ. るために,職人の技能試験のように一定の課題を. ている知識や技能が活用されており,それらを駆. 与えて,誤差の程度などで判断するなども,子ど. 使して表現される「行為の知」といえる。これら. も一人一人のよさや可能性を見取る教育評価とし. は,作品を見合うのではなく,子どもの姿から,. ては意味をなさない。. 研修することに意味がある。. 活動の姿から判断し,評価するには,自己評価. 作品であれば「指導法」が,中心的課題になる. や実現状況を見取る教師の眼が重要になる。この. のに比して,行為であれば授業中の子どもの現わ. ような態度化を評価するには,担任など,子ども. れの要因を環境や教師の投げかけなど,分析・統. とともに一緒に生活して成長を見取ることのでき. 合した研究になるからである。それで「子ども理. る一定程度の時間が必要となる。. 解」が進むことと,実践者などでの「授業」のあ 18). 教育評価に「羅生門的アプローチ」 と呼ばれ. り方を論議することができるようになる。. る評価方法がある。これは,映画監督の黒澤明の 映画「羅生門」に由来し,一つの事実でも,見方 の異なる評価者の解釈によって,同一にはならな. 6 題材と年間指導計画. いということである。芸術作品の評価も,同様に. ⑴ 題材とカリキュラム・マネジメント. 一律にならないことを前提とすることが,芸術の. 年間で育成する資質・能力をもとに題材配列す. もつよさととらえるべきである。ただし,教育評. るだけでなく,学年間を超えて円滑に指導の充実. 価は,まちまちになることを求めているのではな. を図る「卒業までに育ってほしい姿」を教師間で. い。一定程度の数の解釈を合わせることで,おお. 共通理解する必要がある。これは,平成29年(2017. よその評価規準が生まれるということである。一. 年)の幼稚園教育要領の改訂20)では,義務教育. つの事例について,一人の偏った評価で決まるの. 同様に,三つの柱から導いた「知識及び技能の基. ではなく,複数の意見を聞き,その中で総合的な. 礎」や「思考力,判断力,表現力等の基礎」を示. 判断ができるということである。. している。そして,その幼稚園教育の出口で, 「5. これは作品展などの絵の審査にも活用されてい. 歳児までに育ってほしい姿」を示し教師間で共通. る。複数の審査員が,同数の付箋をもち,自身の. 理解するとともに指導の充実を図ることを求めて. 判断で絵を審査し,付箋を貼り候補作品を顕在化. いる。. させるという方法も,その一つである。. 今回の幼稚園,小学校,中学校及び高等学校の. この方法を作品ではなく活動中の子どもの姿か. 校種を超えた三つの柱による目標の整理は,改訂. ら選び評価しようとするものである。 ・・ 「この 活動に子どもの技能のあらわれがあっ. のポイントでもあり,その校種ごとの出口を示す. た」 「友だちとの交流の中で,知識を獲得してい. のような姿で育っているか,または,そのような. た場面があった」など,複数の教師の評価をもと. 資質・能力を備えて,次の校種に向かうかという. に,その妥当性や信頼性を共有しようとするもの. ことである。. である。. 小学校においては,6年生に育っている姿が反. これらは,造形活動中の子どもの行為を「動画」. 映されていることになる。形や色などの特徴的な. に記録し,一つの事例として授業研究することが. ことを捉えることや,自分なりに意味や価値をつ. 290. ことにつながったといえる。卒園・卒業時に,ど.
(12) 学習指導要領(図画工作)と題材. くりだす資質・能力を備えていることになる。こ. 用して,無限で多様な類型を許容できる自由な社. れらを学校全体で共有し,目標の実現に向けた授. 会の枠組みの中で,発展させることが,個人にとっ. 業改善の検討や研修が重要になる。. て正当な宿命であるという有能論を立場とした教 育である。. ⑵ 育成する観点での配列. 子どもを無能とした〇〇式などの指導の方法論. 年間指導計画の題材の配列にあたって,これま. だけに流されることなく,子どもの資質・能力の. では多くの場合, 「内容のまとまり」の偏りなど. 育成を踏まえた題材にする授業改善を進める必要. がないように配列するバランスが重視されていた。. がある。. 例えば,絵に表す題材のあとには,造形遊びを する活動,そのあとは工作に表す活動を配列する. 註および参考文献. という具合である。 今後は,はじめに「内容のまとまり」を考える のではなく,目標とする育成する資質・能力を顕 在化させ題材の配列に当たるようにすることであ る。. 1)国立教育政策所『国研ライブラリー 資質・能力 理論編』東洋館出版,2016,p67 「学びの始めには学習に使う手段,学びの終わりでは 学習内容も含み込んだ次の学習のための手段。したがっ て,方法知でありつつ,内容知も含み込んだもの」 「知. これは図画工作の年間指導計画の課題の一つで. 識の質向上のために必要不可欠な手段かつ目標。手段. もある「絵に表す」題材に多くの時間を費やすこ. とは,知識の質を上げるために資質・能力を使うこと. とやその指導に関しても, 「活動型」の題材を取 り入れることや,他の「内容のまとまり」とのバ ランスなども,資質・能力を育成する観点からも 改善することができる。. が不可欠であること。そして,目標とは質の上がった 知識やそれらを統合したものの見方・考え方,知識を 仲間とともに作り替えられるという態度等を含み込ん だ資質・能力が目標となることを意味する」 2)文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示) 解説 図画工作編』日本文教出版,2017) 3)安彦忠彦他編 担当:藤岡信勝『新版 現代学校教. おわりに 題材の重要性を中心に,論考を進めてきた。こ れから教職に就く教員養成系の学生にとっては, 「教材研究」における題材開発のあり方を示すこ ととなった。しかし,この論考の対象として考え るのは現職教師である。ベテランという時期の教 師に,題材のマンネリや例年踏襲など,題材の考 え方や見直しの一助としたいことが,論考の目的 にある。 戦後,学校教育の中での教科として図画工作・ 美術が担う目的は,教育基本法第1条に示す人格 の完成や社会の形成者として,資質・能力を育成 することにある。その上で美術教育における指導 は,子どもを有能とみるハーバート・リードの立 場に立脚する必要がある。それは, 「人は,その 21) と 人自身になるように教育されるべきである」. いう,生まれながらにしてもつ,潜在的能力を活. 育大事典』ぎょうせい,2002,p.558 4)文部省『学習指導要領 図画工作編』日本書籍, 1947 5)文部省『小学校図画工作指導書』日本文教出版, 1960 6)牧昌見 池沢正夫編『学校用語辞典』ぎょうせい, 1985,p691 7)文部省『小学校学習指導要領図画工作編(試案)改 訂版(昭和26年) 』中央書籍,1951 8)水島尚喜『美育文化』2013Vol63No 4「題材原論」, 美育文化協会,2013,p34 9)水島尚喜『美育文化』2013VOL63No 3,―題材原論 [共通事項] への理解を深めるために (シリーズ第1回), 美育文化協会,2013 10)辻田嘉邦・板良敷敏・服部鋼資他『造形遊びの魅力 新しい授業の展望』日本文教出版,1993,p133 11)D.Aノーマン著『誰のためのデザイン? 認知科 学者のデザイン原論』新曜社,2015 12)ジーン・レイブ エティエンヌ・ウェンガー著 佐 伯胖訳『状況に埋め込まれた学習 正統的周辺参加』 産業図書,1993 13)文部科学省『幼稚園,小学校,中学校,高等学校及. 291.
(13) 阿 部 宏 行. び特別支援学校の学習指導要領の改善及び必要な方策 等について』中央教育審議会,2016 14)文部省『小学校図画工作指導資料 新しい学力観に 立つ図画工作の学習指導の創造』日本文教出版,1993 15)文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示) 解説 図画工作編』日本文教出版,2017) 16)文部科学省『総則(平成29年告示)解説』東洋館出版, 2018,p68 17)林健造『教育美術6月号 Vol32 No 7』教育美術 振興会,1971,p49 18)田中耕治『よくわかる 教育評価』ミネルヴァ書房, 2005,p28 19)佐伯胖・刑部育子・刈宿俊文『ビデオによるリフレ クション入門 実践の多義創発性を拓く』東京大学出 版会,2018,p7 20)文部科学省『幼稚園教育要領(平成29年告示)』東山 書房,2018 21)ハーバート・リード著,宮脇理・岩崎清・直江俊雄 訳『芸術による教育』フィルムアート社,2001. 追 記 16)の指導計画:第3章 教育課程の編成及び実施から 指導計画は,各教科,道徳科,外国語活動,総合的な 学習の時間及び特別活動のそれぞれについて,学年ご とあるいは学級ごとなどに,指導目標,指導内容,指 導の順序,指導方法,使用教材,指導の時間配当等を 定めたより具体的な計画である。指導計画には,年間 指導計画や2年間にわたる長期の指導計画から,学期 ごと,月ごと,週ごと,単位時間ごと,あるいは単元, 題材,主題ごとの指導案に至るまで各種のものがある。. (岩見沢校教授). 292.
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