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若者の食生活の実態と生涯健康を見据えた食教育について

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(1)Title. 若者の食生活の実態と生涯健康を見据えた食教育について. Author(s). 佐々木, 胤則; 矢崎, 裕子. Citation. 北海道生涯学習研究 : 北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要, 創刊号: 7-15. Issue Date. 2001-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2771. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) “北海道生涯学習研究”北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要 創刊号. 平成13年3月. ReportoftheResearchandEducationCenterforLifelongLeamlng−HokkaidoUniversltyOfEducationNo・1 March. 2001. 若者の食生活の実態と生涯健康を見据えた食教育について 佐々木胤則・矢崎 裕子* 北海道教育大学札幌校教育保健研究室 *北海道教育大学保健管理センター. Foodeducationthatconsideredlifehealthfrom PreSentCOnditionofeatinghabitsinyouth TanenoriSASAKI,HirokoYAZAKI DepartmentofHealthEducation,SapporoCampus,. HokkaidoUniversltyOfEducation. Abstract Actualconditionofeatlnghabitswasobtainedffomaquestionnairesurveyabout foodknowledge,behaviorsandcustomsin549universltyStudents.Theyouthwhotake. amealinirregulartimeeatlnghabitswasbad.Manystudentshopedtheimprovementof healtheducation.Itisimportanttoacqulrethecapabilitythatcangetthehealthyliftin thefuture,bydeveloplngfoodeducationthatbasedonexperiencestudyinJuniororhigh SChool.. Keywords:若者の食習慣(eatinghabitsinyouth),食教育(foodeducation),生涯健康(lifthealth). 1.はじめに. 近年,我が国の生活水準は向上し,ライフスタイルの多様化・個別化が進み,生活の基盤で あった「食べる」ことの重要性が,特に若者層で薄れてきている。平成9年度の国民栄養調査で. は,朝食の欠食,栄養の過剰摂取,若者のカルシウム不足,食事時間の不規則化等の現状が報告 されている1)。同様に札幌市がまとめた食生活調査でも外食の増加,加工食品の多用,脂質・タ ンパク質の過剰摂取傾向等の問題点を指摘している2)。 以前,成人病とよばれていた一連の疾患は,1996年に子どもの頃から積みかさねられた生活習 慣と環境および遺伝的因子に起因するとされ,生活習慣痛という名に改められた。同時に,多く の生活習慣病は子どもの頃から正しい習慣を身につけることで予防できる疾患であるとされた。 生活習慣には飲酒や喫煙,ストレス,運動習慣などが挙げられるが,生活習慣病は食習慣と強い 関連を持っている。また,食習慣は身体的な健康の他に,こころの健康にも関連しているとされ ている。因果関係は明確にされていないが,問題を起こした少年の生活要素として,劣悪な食生. 活がしばしば取り上げられている。1997年9月の保健体育審議会答申においても,生涯にわたっ て心身共に健康な生活の基礎を養う健康教育の一環として,食に関する指導の果たす役割は非常 に大きいものであると指摘している。しかし,食生活が心身に及ぼす影響,重要さが気づかれず. −7−.

(3) 佐々木胤則・矢崎裕子. に,事態が悪化しているケースが多い。. 食生活上の問題点,その間題に村する改善策や見解は多くの場で国民に提言されているものの 日常の生活から将来,自分に起こる可能性のある変化や影響について自覚し,危険性を感じ, 偏った食生活から抜け出し積極的に改善していこうとするものは少ない。食生活は生きる基盤で あり,望ましい食習慣を身につけることが,体はもとより精神的な健康を保つものと考える。 以上の現状や報告を踏まえ,近年における若者の食生活の実態とその生活の基盤になっている と思われる食に関する知識,行動,受けた教育等との関連について様々な視点から検討すること とした。今回は大学生を対象に調査することで現状・過去の実態・基盤になっているものを捉え. るとともに,生涯教育として食教育に何が必要であるか考察することとした。. 2.食に関する調査の対象と方法 1)対象と調査時期. 北海道内の札幌,江別,北見の4年制大学に在籍する大学生を村象として1999年の10月から 11月にかけて質問紙法による調査を実施した。調査票の配布は担当教授の協力を得て,講義の前 又は終了後に行い,その場で記入,剛又した。 2)解析方法. 調査結果は,項目ごとに基礎的な集計を行った後,特性ごとにいくつかのグループに分け,そ. れらの関連性を比較・検討することとした。統計処理および解析には一般的統計手法を用いた。 3)調査票の概要と解析法 ●食と健康に関する事項. 食に関する健康への興味・意識として「食事への関心」,「栄養に関する知識」,「食生活状況」,. 「健康食品の利用」,「食に関する情報源」の5分野27項目を設けた。「栄養に関する知識」と「食 生活状況」の分野では,正しい知識,望ましい行動を高得点として点数化し,それぞれについて 食知識得点と食行動得点を算出した。 ●若者の食行動とその背景に関する事項. 現在の食習慣として朝食,外食,食事時間,インスタント加工食品,単品のみの食事等につ いて,その現状と習慣性を尋ねる5事項35項目,また「偏食に関して」として偏った食習慣の 危険性の有無,改善へのきっかけ等に関する2事項9項目を質問した。食習慣では,すべての項 目で健全とされる回答を選択したものを「健全タイプ」,不健康とされる回答を選択したものを. 「不健全タイプ」とした。偏食に関しては,その現状と習慣性,危険性の有無,改善へのきっか け,さらに偏食の捉え方を尋ねた。偏食が重複しているものを「偏食重複者」とした。 ●食に関わる健康教育の実態に関する事項. 食に関わる「健康教育の授業経験の有無」,「記憶に残る授業の有無」,「食に関する授業への興 味関心と必要性」について質問した。. 3.調査結果 本研究の対象者は,北海道の四年制大学の在学生554人であった。このうち回答に不備があっ. た6人を除く549名を有効回答(男子286人,女子263人)とし,解析対象とした。回収率は98.9 %で,住居形態は自宅生が243名,一人暮らしが306名であった。. −8−.

(4) 若者の食生活の実態と生涯健康を見据えた食教育について. 1)食と健康に関する事項. (1)健康への興味,心がけ. 健康への興味の有無,健康生活等への心がけについての成績を表1に示した。また同時にこの 2群間においての食行動得点の平均点を算出し,比較した。健康に興味が「ある」と回答したも のは全体で479人(87.2%)であった。男女別には,女性が有意に高かったが,住居別には有意な 差は認められなかった。食事の際の心がけが「ある」と回答したものは全体で221人であった。 男女別には有意な差が認められたが,住居別には両群間に有意な差は認められなかった。 表1健康への興味・心がけの有無と食行動得点の比較(得点) 健康への興味. 健康への心がけ. 有意差. あり 479(87.2)なし 70(12.8). あり 418(76.1)なし131(23.9). 234(81.8) 52(18.2) …. 男子. 女子. 245(93.2). 18(6.8). 自宅. 312(87.7). 30(12.3). 有意差. 197(68.9). 89(31・1). 221(84.0). 42(16.0). 178(73.3). 65(26.7). ・単位:人数(%) ★p<0.05 …pく0.01 (2)健康に興味を持った時期. 健康への興味を持った時期について男女別,住居別に表2に示した。また興味を持った時期と 食行動得点の関係を図1に示した。食行動得点は低い順から3つのグループに分類し,低い順に 「低得点群」,「平均点群」,「高得点群」とした。健康に興味を持った時期は男女別,住居別共に 「高校」が最も多かった。しかし,食行動得点別に見ると,低得点群と高得点群の間には,健康 に興味を持った時期に有意な差が認められ,高得点群では,「中学校」とした者が有意に多く,低 得点群では,「大学」とした者が多かった。 表2健康に興味を持った時期. 自宅 一人暮らし. 女子. 男子. 小学高学年 41(8.7). 住居別. 男女別. 全体. 23(9.8) 18(7.5) 19(9.0) 22(8・4). 中学校. 106(22.4) 51(21.8) 55(23.0) 54(25.7) 52(19・8). 高校. 202(42.7) 88(37.6)114(47.7)94(44・8)108(41・1). 大学. 108(22.8) 62(26.5) 46(19.2) 35(16・7) 73(27t8). その他. 16(3.4). 10(4.3). 6(2.5). 8(3.8). 8(3.0). 単位:人数(%). 田低得点群 ℡高得点群. 3 2 1 0. 0. 大学. 小学校 中学校 高校. その他. 図1食行動得点別の健康に興味を持った時期の割合. 0 0. ー9−. ...

(5) 佐々木胤則・矢崎裕子. (3)食に関する知識と行動. 食知識と食行動の関係をみるために横軸に知識得点,縦軸に行動得点を取り,散布図を作成し たところ相関係数は0.277の正相関を示した。食行動得点と食知識得点を3つにグループ化した ものの平均点を比較すると,食行動では「低得点群」が7.9点,「平均点群」が12.8点,「高得点 群」が17.0点であった。食知識では「低得点群」が5.0点,「平均点群」が5.6点,「高得点群」が 6.3点であった。食行動・食知識とも「低得点群」と「高得点群」の間に有意な差が認められた。 (4)食に関する健康情報. 健康情報への関心では,「ある」と回答したものは436人(79.6%)で「なし」と回答したもの. は112(20.4%)あった。男女別では女性が有意に関心が高かった。よく活用する情報源を表3 に示した。最も多かったのは「テレビ」で310人(71.1%),ついで「一般雑誌」,「新聞」であっ た。またその他には「インターネット」と回答しているものが多かった。男女別では「一般雑誌」,. 「親・親戚」の項目において有意に女性が高かった。住居別では有意な差は認められなかった。. 表3 よく活用する情報源 有意差. 男女別. 全体 男性. …. 女性. 住居別 自宅. 一人暮らし. 新聞. 118(27.1). 61(29.3) 57(24.9). 64(33.0). 54(22.3). 一般雑誌. 187(42.9). 56(26.9)131(57.2). 93(47.9). 94(38.8). 専門誌・本 79(18.1). 38(18.3) 41(17.9). 35(18.0). 44(18.2). 医学専門誌 13(3.0). 5(2.4). 6(3.1). 7(2.9). 8(3.5). 店頭. 42(9.6). 20(9.6) 22(9.6). 16(8.2). 26(10.7). 学校. 52(11.9). 28(13.5) 24(10.5). 20(10.3). 32(13.2). テレビ. 310(71.1). 158(76.0)152(66.4). 128(66.0) 182(75.2). 25(12.0) 32(14.0). 27(13.9). 30(12.4). 広告・チラシ 57(13.1) 親・親戚. 94(21.6). 33(15.9) 61(26.6). 43(22.2). 51(21.1). 友人. 64(14.7). 32(15.4) 32(14.0). 24(12・4). 40(16.5). その他. 16(3.7). 7(3.4). 9(4・6). 7(2.9). 9(3.9). ・単位:人数(%). ★p<0.05★★p<0.01. 学校での授業の影響を調べるため,健康への興味を持ったきっかけの項目において「保健の授 業」,「家庭科の授業」のどちらかに回答したものを抽出して,この集団と全体との比較分析を 行った。食生活に関する興味,食知識・食行動得点,健康情報の活用,どの項目においても全体 との回答の傾向は一致しており,有意な差は認められなかった。 2)若者の食行動とその背景に関する事項 (1)食生活の実態と男女別・住居別比較. 食生活の実態について男女別・住居別に比較するとほとんどの項目で男性より女性が,一人暮 らしより自宅生が好ましい食生活をしていた。食事の時間の規則性と単品のみの食事に関しては, 男性に好ましい回答をしているものが多かった。. −10−.

(6) 若者の食生活の実態と生涯健康を見据えた食教育について. (2)食生活についての質問項目間の関連. 食生活についての質問項目間の関係を検討すると「外食の利用」と「単品のみの食事」,「食事 の規則性」と「インスタント食品・加工食品の未利用」,「朝食の摂取」と「外食の未利用」に高 い関連が示された。また,「食事の時間の不規則性」と「単品のみの食事」,「インスタント食品・ 加工食品の過度の利用」と「単品のみの食事」,「食事の時間の不規則性」と「インスタント食品 加工食品の過度の利用」にも関連が示され,食事の時間が不規則なものはどの項目でも不健全な 傾向が認められた。 (3)不規則な食生活の背景. 不規則な食生活の背景となっている原因を検討するために,まず危険性を感じないものにその 理由を質問したところ,どの項目でも「病気になる不安がない」と回答したものの割合が高く,. ついで「栄養が偏っているとは思わない」,「食べない生活になれている」であった。また不規則 な食生活を改善するには,どの項目でも「納得いく説明」と回答したものが多かった。 食習慣と危険性についてズ2検定を行ったところ,不規則な食事習慣と単品のみの食事習慣の 時期の違いにおける危険性の有無に有意な差が認められた。(p<0.01)不規則な食事習慣は「/ト 学校」からのものは「あまり感じない」,「感じない」で全体の75%以上を占めており,特に「感 じない」は他の時期に比べて10%以上も高かった。また単品のみの食事についてはレト学校」か らと回答したものが他の時期より10%以上高かった。 (4)偏った食生活と改善の可能性との関連. 偏った食生活の危険性の有無と改善の可能性の程度について,各項目ごとに散布図を作成し, 相関係数を算出した。朝食の摂取はー=0.473,外食の利用はr=0.358,食事の時間はー=0.455,イン スタント食品・加工食品の利用はー=0.509,単品のみの食事はー=0.397,偏食はr=0.510であり,偏 食に村する危険性の実感と改善の可能性に高い相関を示した。また,その他のどの項目でも相関 は高く,危険性を感じているものほど改善できると感じているものが多かった。 (5)特徴的な集団. 偏食の種類は多いものから果物,魚介類,肉類,野菜,乳製品,穀類であった。食生活に関す るすべての項目で偏食を2種類以上している者とそうでない者を比較すると,食知識得点・食行. 動得点においてすべての項目で両群に有意な差が認められた。偏食重複者は全体と比べ,不健全 な回答しているものが多かった。偏食重複者は全体に比べ平均点が低く,低得点域に偏食重複者 が多く分布していた。とくに食行動得点では14点以上に分布しているものは1人もいなかった。 健全タイプと不健全タイプにおいて食知識得点と食行動得点を比較するとどちらの得点におい. ても不健全タイプの平均点が低く,明らかに不健全タイプが,低得点域に分布していた。また, 「食と健康生活」に関する授業の有無について比較すると,不健全タイプでは,「中学」における 授業を「覚えていない」と回答したものが半数以上であった。 3)食に関わる健康教育に関する事項. 栄養と健康に関する授業を受けた経験は「中学校」,「高校」に集中していた。しかし「経験な し」と回答したものはどの校種でも半数以上を占めていた。また最も記憶に残っている授業形態. は「教科書を使用したもの」が大半であり,「体験する授業」と回答したものは全体の約7%にす ぎなかった。授業経験のある者の中で現在の生活に「効果あり」と回答したものは171人(58%). で,「効果なし」と回答したものは122人(42%)であった。また授業の形態においては「教科. −11−.

(7) 佐々木胤則・矢崎裕子. 書を使った授業」,「専門家等の講演」は半々であったものの,「ビデオ等の教材を使ったもの」,. 「体験授業」では「効果あり」としたものが70%であった。「保健科」の授業に関しては「教科書 を使った授業」と答えたものが多く,「効果なし」と回答したものが「効果あり」と回答したも のの2倍であった。. どの項目も「学校で習う必要性」は感じているが,あらためて興味・関心があるかどうかを問. うと特定の項目に片寄っていた。興味のある項目はダイエットや栄養不足,偏食に関する事項と 回答したものが多く,「問題行動と食の関連」や「健康全体に関すること」と答える者は少数で あった。しかし,学校での健康教育の充実については,充実の必要性があると「思う」,「少し思 う」回答したものがどの校種でも高い割合であった。. 4.考察 1)食と健康に関する事項について. 健康に興味を持っている者は,辰巳ら3)の調査結果と一致して男女共に8割以上存在し,健康 への関心はかなり高いことが伺えた。また,食事の際に心がけていることがあるとした者も7割. 以上にのぼった。食行動に何らかの意識を持っている者が多いが,知識得点・行動得点では,男 性に有意に低い項目が多いことから,東條ら4)の調査結果と同様に,男性は食に関する関心が希 薄であると捉えられた。. 現在の食生活は男女とも住居形態の影響が大きかった。男性よりも女性が,一人暮らしよりも 自宅生が望ましい食生活であった。これは針谷ら5)の研究結果と一致していた。一人暮らしは経 済的な理由,生活時間の自由度,自分で調理する煩わしさ等の要因が重なっていると指摘されて いる。特に,男性においては食べたいときに食べたいものを食べる傾向が強く,食と健康への関 連意識が低いことが感じられた。. 食知識と食行動の得点は弱いが正相関を示していた。食行動得点の高い集団と低い集団では明 らかに食知識得点に差がみられた。このことから,食行動に食知識の有無が関連していることが 示された。しかし,正相関はきわめて弱いもので,知識と行動が相関していないケースが個々に. は存在していた。たとえ知識があってもそれが食行動に生かされていない場合も多く,食行動に は食知識の他に煩わしさ等様々な要因が絡み,大きく影響しているものと考えられた。 健康への興味,食事時の心がけの有無は食行動に影響を与えていた。しかし,興味や関心,こ ころがけをもっているからと言って誰しもが望ましい食生活を送れるとは言えなかった。食行動 の高得点群と低得点群の比較では,健康に興味を持った時期に違いがあることが示された。高得 点群では「中学」,「高校」と早い時期から健康に興味を持ったものが多いのに対して,低得点群 では最近になって興味を持ったものが多かった。このことから,早期からの健康意識の定着の重 要性が示唆された。. 食に関する健康情報源では「テレビ」が顕著に高かった。健康志向の高まりと同時にテレビ番組. にも健康に関するものが多くなり,内容も分かり易くおもしろいものが増えた。しかし,テレビ番 組は大げさな表現や科学的立証が不十分な内容も数多く存在する。高橋ら6)が指摘するようにあら ゆる健康情報の中から自分で正しく必要な情報を選択していく能力が必要になってくる。食行動に おける高得点群と低得点群では情報源に同様の傾向がみられたが,高得点群の方が新聞や専門誌の 活用が多く,信頼性の高い情報源を活用し,広い視野で健康情報をとらえていることが示された。. −12−.

(8) 若者の食生活の実態と生涯健康を見据えた食教育について. 2)若者の食行動とその背景について. 朝食を週3回以上欠食しているものは全体で35%であった。また男女別にみると男子は45%, 女子は24%であった。札幌市の食生活調査では,外食の利用は女子より男子の方が多く,同じ傾 向であった。食事の時間が不規則なものは全体で62%であり,すべての項目の中で最も高かっ た。伊海7)8)の研究によると食事の摂取時間の幅には個人差があり,特に夕食については約4−6 時間の開きがあり,1日の活動サイクルに朝型,夜型等の多様化が進行していると推測されると 報告している。また平成9年国民栄養調査では夕食の時間が12年前と比較して,遅い時間に移 行しており,特に20歳代の男性は4人に1人が9時以降という現状を報告している。本調査でも 先行研究や調査と同様,食事の時間が不規則なものが6割を越えるという現状が明らかになった。 食事の内容では,インスタント食品・加工食品を女子より男子が,自宅生より一人暮らしが多 く利用していた。女子が男子より好ましい食行動をする中で,「単品のみの食事」をする割合は, 男子より女子が高く,女子が男子に比べ小食であることヤフアーストフードを利用する機会が多 いことが考えられた。多くの項月に認められる男女の食生活の違いについて藤沢ら9)は,大学生. までの男女の食に対する役割の違いや意識の違いによって,食に関する習慣の違いが顕れ,食行 動の違いに顕れると述べており,同様な因子が反映していると考えられた。また住居形態では一 人暮らしの者が多くの項目で好ましくない回答をしていた。一人暮らしという形態が不規則,簡 便な生活につながり,食生活全般に不健全な影響を与えていると考えられた。. 質問項目間の関連をみると,不規則な食事時間は,偏食を除くすべての項目で高い関連を示し, 食生活全体に不健全な影響を与えていた。食事の時間の不規則さは食事内容に偏りをもたらし, 簡便な食事形態を容易に選択してしまう可能性を感じさせた。食事の時間が不規則なことが悪循 環を起こし,朝食の欠食や食事内容の悪化につながっている現状がうかがえた。. 偏食にあげられた果物,魚介類,肉類,野菜には重要な栄養素を含むものが多く,栄養の偏り が懸念される。中には,エネルギー源として望ましい食品を全く食べないものも存在していた。. 偏食の危険性を感じないものの背景を検討すると,どの項目でも「病気になる不安がない」と回 答したものの割合が高く,ついで「栄養が偏っているとは思わない」,「食べない生活になれてい る」となり,渡辺ら10)が指摘するように,食と健康との関連についての認識の欠如,習慣性の危. 険性,食・栄養に関する知識の乏しさを感じさせる回答が多かった。また不健全な生活の改善の 背景になっているものは,「納得できる説明」としているものが多く,自分自身が実感として食 生活が健康な生活と密接に関連していることが理解できれば改善できる可能性を残している。し. かし,実際に行っている不健全な食生活の簡便さ,習慣性から向け出せずあきらめている消極的 姿勢が見受けられた。. 不規則な食事習慣の始まった時期と偏食の危険性の実感には高い関連がみられた。学年が上がる につれて危険性の実感も上がっていた。また,この傾向は単品のみの食事にも認められ,偏食の習 慣化は危機感を薄れさせていた。偏食予防に関する富岡11),細谷12)の研究では,偏食の予防には離 乳期・幼児期に適切な指導が大切であると述べている。極端な偏食は栄養障害などの様々な健康障. 害を引き起こす危険性があるが,多くの場合は成長するに従って矯正される場合が多い。しかし, 形成された偏食は家庭環境によっては,成長過程において根強くなる場合もあるとしている。今 回の調査でも偏食習慣が「小学校入学前から」のものが多く,家庭の影響が強いことがうかがえ. た。このことから,食生活改善のためには家庭に村しても啓蒙の必要性が示めされた。. 「健全タイプ」と「不健全タイプ」を比較すると食知識・食行動得点では,「健全タイプ」が高. −13−.

(9) 佐々木胤則・矢崎裕子. い平均点得点となり,健全な生活をする要因として食への豊富な知識も良い影響を与えることが. 示された。「食と健康」に関する授業の有無と授業の充実の必要性について比較すると,両群間 に有意な差は認められなかった。「健全タイプ」が「不健全タイプ」より知識が多く,食行動も 健全であったという結果から考えると,健全タイプが得た知識や行動の基礎は学校より家庭から 得られたものと推測される。教育の充実の必要性をみると,両群とも授業の必要性を感じており, 自分の食生活向上の知識や技術,認識,スキルの獲得を学校に期待している姿勢がうかがえ,西 尾13)が指摘するように学校における充実した食と健康教育の必要性が示めされた。 5.調査のまとめと食健康教育について 4年制の大学生を村象とした若者の食生活の実態調査結果をまとめると次のように要約される。 ①健康への興味は繕け以上の学生が持っていた。②食行動得点と食知識得点には関連が認められ, 食知識の充実が食行動にプラスの影響を与える。③行動の高得点群では早い時期から健康意識が 養われており,早期からの健康教育の必要性が認められた。④健康情報源は「テレビ」をあげた ものが最も多く,活用にあたっての正しい判断力と選択力が必要であると思われた。⑤食事の時 間が不規則なものは食生活全体に悪循環を与えている。⑥現在の不健全な食生活に危険性を感じ ない背景には,長い期間の習慣と食生活が健康に及ぼす影響の認識不足がうかがえた。⑦不健全 な食生活への危険性と改善意欲には関連があったが,これらは漠然とした不安感からくるもの だった。⑧偏食が重複しているものは生活全体が不健全な傾向があった。また食に関する知識不 足・認識が偏食改善に悪影響を与えていた。⑨学校での食教育は栄養に関するものが多く,将来 の健康生活つながるスキルの形成に至っていない。⑲効果のある授業は実感として残る体験学習 や聴覚・視覚に訴えるものが望ましい。. 飽食の時代における食教育の目標は,自己実現の基盤となる生涯健康であり,そのためのスキ ルの形成である。. 多くの学生が健康教育の充実を希望していた。本研究では,学校において効果的な授業を行う ことで,将来的に自分で食習慣を中心とした健康生活を形成していける能力を,高等学校までに 養うことが重要であるとされた。教科書のページ数から考えると授業時数は家庭科に偏っている ようであるが,生涯健康へのスキルの獲得という面から学校における食に関する授業を様々な時 間に実施可能な内容に変えていく必要がある。 食に関する授業では,効果のあった授業形態として「ビデオ等の教材を使ったもの」,「体験す る授業」と回答したものが多く,授業で先生,または講演等で講師から耳で聞いただけでは成果 は得られていなかった。特に,不健康予備軍ととらえられる簡便志向,偏食者には,実体験に近. い教材,または自分なりに納得のいく教材が提示されることが健全な食行動・健康認識のきっか けになると思われる。. 今回の調査では,問題行動と食の関連や不必要なダイエットが及ぼす不健康への関心は低く, 食が心身共に生活全体また将来の健康生活につながっていること,例えば,明るい楽しい食事は. 問題行動,生活習慣病の予防につながるという関連性の認識不足が示された。「食べる」ことと 生活全般,心身の健康との関係を認識できる能力の育成として食教育を位置づけていくことも重 要と考える。. −14−.

(10) 若者の食生活の実態と生涯健康を見据えた食教育について. 参考文献. 1)平成9年国民栄養調査,厚生省保健医療局健康増進栄養課監修,1997 2)札幌市民の食生活調査結果,札幌市,1997 3)辰巳真紀他,女子大生の健康観と食生活について,武庫川女子大紀要(自然科学),Vol.46,93−99, 1998. 4)東催仁美,高校生と大学生の食生活と健康意識に関する調査,神奈川栄養短期大学紀要,Vol.31,25− 33,1999. 5)針谷順子,大学生の食生活の問題ヲー少ない食事,高知大学教育学部研究報告,第二部56号,63−71, 1997. 6)高橋久仁子,食生活への態度と食物・栄養情報に村する見解,群馬大学教育学部紀要 芸術・体育・生 活学科編,第34巻,1999 7)伊海公子,下宿女子大学生の生活環境と食生活型,栄養学雑誌,Vol.55No.5,239−251,1997 8)伊海公子,下宿女子大学生の食生活と生活要因との関連,栄養学雑誌,Vol.57No.1,11−24,1999. 9)藤沢邦彦他,大学生における生涯健康教育の試み−某大学における食生活の教育−,筑波大学体育学系 紀要6,73−71,1993 10)渡辺雄二他,女子学生の不定愁訴の評価と食行動との関連,栄養学雑誌,Vol.55No.4,197−204,1997 11)富岡文枝,幼児の食教育と両親の食意識及び食行動との関わり,栄養学雑誌,Vol.157No.1,25−36, 1999 12)細谷圭介他,小学生の野菜摂取の関係する食習慣と食行動との関連,栄養学雑誌,Vol.54No.4,251−. 257,1996 13)西尾素子ら,高校生の栄養成分表示の利用に影響を及ぼす食知識・食態度・食行動,栄養学雑誌,Vol.57 No.3,145−156,1999. 参考図書. 大沢博,食原性症候群一食事で決まる体と心,ブレーン出版,1986 大沢博,栄養と犯罪行動,ブレーン出版,1990 厚生省保健医療局健康増進栄養諌監修,平成7年国民栄養調査,1995. ベターホーム協会,中学生の食事調査,1999. ー15−.

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参照

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