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授業計画と実施内容との差異に着目した授業リフレクション手法の開発

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Academic year: 2021

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授業計画と実施内容との差異に着目した授業リフレ

クション手法の開発

著者

今野 文子

1

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

教情博第12号

URL

http://hdl.handle.net/10097/59762

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学位の種類 学位記番号 学位授与年月日 学位授与の要件 研究科・専攻 学位論文題目 論文審査委員 UA7

持文

」子

博士(教育情報学) 教情博第 12 号 平成 22 年 3 月 25 日 学位規則第 4 条第 1 項該当 東北大学大学院教育情報学教育部(博士課程後期 3 年の課程) 教育情報学専攻 授業計画と実施内容との差異に着目した授業リフレクション手法の開発 (主査) 准教授 三石 大 教授北村勝朗 教授熊井正之

〈論文内容の要旨〉

本研究は、授業計画の改善・高度化、および教授スキルの向上のための取り組みを日常的、継 続的に実施可能とすることにある。そのために本研究では、教授設計プロセスの実態に即して授 業計画と実施内容の差異に着目し、これを確認することで、計画の高度化に直接的な効果をもた らす授業リフレクション手法を提案する。本論文では、高等教育機関における実授業を例にとり、 提案授業リフレクション手法の具体的な実施方法を明らかにし、また、その効率的かっ効果的な 実施を支援するためのコンビュータシステムを開発する。 これまで、教師による授業改善のための取組みとしては、実施した授業を省察・分析し、以降 の実践に有用な情報を得ようとする「授業リフレクション」が有効であるとされてきた。しかし ながら既存の授業リフレクション手法では、人的・時間的コストが膨大であるなど、その日常的 な実施を阻害する問題があるとともに、学習者理解や教育観に焦点、が当てられがちであり、具体 的な授業計画の吟味に至らない場合があること、主観と客観のバランスに配慮する必要があるこ となどが指摘されており、そのままでは日常的な実践手法として取り組むことが困難であること が指摘されている。

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そこで本研究では、自身の授業について、授業計画と実施した授業のそれぞれを見直し、その 改善を行おうとする教師が、日常の業務とともに独りで実施する自己リフレクションを対象に、 前述の問題を解決する新しい授業リフレクション手法を提案する。本手法では、授業中の対話に 重点を置いたダブルループ教授設計プロセスモデ、ルに基づき、授業中の教師による対応行動の実 施や、そのための所要時間をふり返るべきポイントと位置付け、これらを授業の全体像とともに 確認可能とする一覧性のある新しい形式のふり返り資料を作成し、提供することで、授業計画に 対する具体的な改善項目の発案を促す。このような教師による対応行動の実施は、既存研究にお いても授業改善に有用な情報源であると位置づけられているが、多くの場合、その特定は主観的 な方法に頼っていた。これに対し提案手法では、対応行動の実施場面では、もとの計画が変更さ れることに着目し、これらの場面を授業計画と実施内容との差異として特定し、確認できるよう なふり返り資料を作成する。これにより、授業中の学習者の実態や、もとの計画の不備などを想 起することを可能とし、具体的な計画の改善案が創出できると考えられる。本稿では、まず、大 学で一般的に実施されている講義形式の授業のうち、スライド提示型授業、ならびに黒板利用型 授業に対する提案手法の適用手法をそれぞれ開発し、実授業を対象とした実証実験による有効性 評価を行った。その結果、授業中の教師による対応行動の実施場面を確認するためのふり返り資 料の形式を明らかにするとともに、この利用による授業リフレクションにより具体的な授業計画 の改変が実施可能であることが確認され、実施した授業の確認にかかる教師の負担を軽減し、効 果的な授業リフレクションが実施可能であることが明らかになった。 また、提案手法の効率的かっ効果的な実現のために、教示内容の一覧と授業映像視聴の併用に よる授業リフレクション支援システムの設計、開発を行った。本システムでは、授業記録作成機 能と授業記録再生機能を実装し、リフレクションに必要な授業記録の自動的な作成、および教示 内容の一覧によって授業全体を確認しつつ、任意の授業場面や教授行動を実施した場面からの教 示内容と授業映像の選択再生を可能とする。実授業を対象とした実証実験の結果から、本システ ムにおける教示内容の提示が実施した授業の確認に有効であり、教師が独りで実施する自己リフ レクションにおいても単なる表面的な自己反省に終わることなく、詳細な確認が必要な授業場面 を効率よく焦点化しながら効果的なリフレクションを実施できることが確認された。 以上、本研究では、授業計画と実施内容との差異に着目した新しい授業リフレクション手法と、 その支援システムを開発し、リフレクションに取り組む教師の負担の軽減と、具体的な授業計画 の改変が実現可能であることを確認した。また本提案手法は、事前の授業計画に基づいて実施さ れ、授業展開が視覚的に観察可能な講義形式の授業であれば、高等教育機関のみならず、初等、 中等教育や企業内教育等にも適用可能であると予想される。すなわち、本提案手法は、多様な教 育現場において効率的かつ効果的な授業リフレクションを可能とし、これにより教師は、日常的、

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継続的な授業計画の改善・高度化と教授スキルの向上を行えるようになると考えられる。さらに、 本提案手法を利用した FD プログラムを設計することができれば、現在の高等教育機関において求 められている授業改善のための具体的な手段を提供でき、省察的実践家としての大学教員の養成 に対して大いに貢献できるものと考えられる。 しかしながら本研究では、複数の被験者による継続的な実証実験により、提案手法の有効性を 検証したわけではない。今後、他の授業科目や教師の実践においても本稿で明らかにした提案手 法の効果や特徴がみられるかを検証するとともに、これらの結果に基づき、支援システムの更な る機能拡張を行うことが必要といえる。

〈論文審査の結果の要旨〉

主査および副査により論文の内容を確認するとともに、平成 22 年 1 月 20 日に、大学院教育情 報学教育部内において 50 分の口頭発表および 30 分の質疑応答による博士論文本審査会を実施し た。 その結果、本論文では、授業計画と実施結果との差異に着目した新しい授業リフレクション手 法の開発に関し、以下に示す事項が確認された。

1

)

対話型授業のための成長型教授設計プロセスモデ、ルであるダブルループ教授設計プロセス モデ、ルに基づ、き、当モデ、ルにおける、実施した授業の結果を確認し、次回以降の授業設計 の参考とする「評価フェーズ」の具体的な実施手法として授業リフレクションを捉え、具 体的な授業改善・高度化を可能とするとともに、教師の授業スキルそのものを向上可能な 授業リフレクション手法を開発することを目的としている。

2

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従来の授業リフレクションでは、授業記録の作成や振り返り資料の作成等、その実施のた めの人的コスト、時間的コストが極めて膨大であり、日常的な業務の中で定期的、継続的 な実施を難しくしていたことに加え、客観的な視点による授業リフレクションの実施に必 要となる、振り返るべきポイントの選定基準の不明確さから、教師自身が一人でリフレク ションを行うことが難しいといった問題を解決するために、対話的な授業では教師がなん らかの対応行動を行った際に、もとの授業計画と実施結果との聞に差異が生じる事に着目 し、これを振り返るべきポイントの候補として位置づけ、この差異を確認可能な振り返り 資料を作成し、教師に提示することにより、効率的かっ効果的な振り返りを可能とする新

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しい授業リフレクション手法を提案している。

3

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本論文で提案する授業リフレクション手法の有効性確認のために、スライド提示型授業、 ならびに黒板利用型授業の 2 種類の授業形式を例にとり、振り返り資料の具体的な形式を 明らかにするとともに、これを利用し、実授業を対象とした実証実験を複数回ならびに継 続的に実施し、また、実験結果の詳細な検証を行うことで、その有効性を客観的に判断可 能な形で明らかにしている。

4

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提案リフレクション手法は、そのままでは振り返り資料作成のための人的労力を要すると いう課題を依然として有するが、この解決のために、情報技術として対話型共有電子黒板 システム IMPRESSION ならびに双方向動画通信ミドルウェア MidField を利用し、電子 黒板上への板書と教師映像を自動で記録、保存し、これを利用して本研究で提案する授業 リフレクションを実施可能とするリフレクション支援システムを設計、開発し、複数の異 なる教員による実授業を対象とした実証実験を行い、その有効性を明らかにしている。 以上の結果は、本論文が提案する授業計画と実施結果の差異に着目した授業リフレクションの 有効性を示すものであり、これは、本論文が目的とする、授業計画の具体的な改善・高度化なら びに教師の授業スキルの向上を可能とし、日常的、継続的な実施が可能な効率的かつ効果的な授 業リフレクション手法を具体的に実現しているものと判断でき、その有用性は大いに評価できる。 また、情報技術を活用した授業リフレクション支援システムを具体的に開発している点も、新規 性ならびに実用性の観点から評価できる。よって、本論文は博士(教育情報学)の学位論文として 合格と認める。 ただし、本研究では、複数の異なる教員による異なる授業形態を対象とした複数の実証実験を 実施しており、その信頼性は高いといえるが、いずれも理科系の授業科目を対象としており、被 験者である担当教員も比較的教員経験があり、かつ、自身の授業改善にも積極的な教員が対象と なっており、これらは必ずしも実験結果の正確性を示すものとは言えない。今後、提案手法の適 用可能範囲を明確にするためには、異なる被験者を対象とした更なる継続的な実験、観察が求め られると言える。また、提案手法を実際の教育現場に適用するためには、授業リフレクションが 可能な環境を単に用意するだけでなく、提案手法を利用した若手教員育成のための FD プログラム を開発し、提供するなど、より、積極的な取り組みも必要と予想され、そのための発展が期待さ れる。

参照

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