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中高連携・一貫教育の教育課程開発研究

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中高連携・一貫教育の教育課程開発研究

∼実施校調査および海外調査を通して∼

(課題番号: 12610233)

平成12年度∼13年度科学研究費補助金(基盤研究(C) (2))

研究成果報告書

00031006011

『二二二=二二二

平成14年3月

研究代表者 水原 克敏

(東北大学大学院教育学研究科教授)

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中高連携・一貫教育の教育課程開発研究

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は し が き 本稿は、平成12・ 13年度両年にわたる科学研究費補助金(C) (2) 「中高連携・一貫 教育の教育課程開発研究」の報告書である。本研究が主たる対象とするものは、 1999 (平 成11)年4月1日から施行される中高一貫校である。全国的には、どのように展開されつ つあるのか、その教育課程開発上の課題は何かを探ることが、本稿の課題である。 研究組織は、以下の5名の分担者と大学院生の研究協力者によって進めることができた。 研究代表者:水 原 克 敏(東北大学大学院教育学研究科 教授) 研究分担者:小 泉 祥 一( 同  上       教授) 研究分担者:宮 腰 英 一( 同  上       教授) 研究分担者:北 村 勝 朗( 同  上      助教授) 研究分担者:谷 口 和 也( 同  上      助教授) (研究協力者:今野政宜、関根明伸、沖田淳、五十嵐誓、小杉夏子、伊東美恵子、長岡弘 晴、庄司珠貴、鈴木渉、ジャンチプ・ガルバドラッハ)の組織である。 交付決定額は、平成12年度150万円、平成13年度170万円、合計320万円である。 研究発表は、論文では、 (1)水原克敏「中高一貫校におけるカリキュラム開発の現状と 課題」 (市川博編『教育課程の構成・基準の改革に関する総合的研究』平成13年3月)0 口頭発表では、 (2)水原克敏「中高一貫教育校のカリキュラム開発」 (日本教育学会第60 回大会、平成13年8月28日)。出版物では、 (3)水原克敏編『自分-私がわたしを創 る-』東北大学出版会 平成13年12月26日)によって、大学進学者の進路意識とア イデンティティ形成について論述した。以上を含めて、上記の研究分担者と協力者とによ って本報告書が分担執筆された。 調査した学校は、 (1)宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校、 (2)大分県立安心院高等学校、 (3)岡山市立岡山後楽館高等学校、 (4)三重県立飯南高等学校、 (5)秋田市立御所野 学院中学校・高等学校、 (6)青森県立田子高等学校、 (7)岩手県立軽米高等学校、 (8) 山形県立小国高等学校、 (9)高知県立嶺北高等学校などであるので、これらが中高一貫教 育をどのように進めているのか、海外の中等教育改編状況も視野に入れつつ、その現状と 課題について考察した。 研究代表者  水 原 克 敏 (東北大学大学院教育学研究科 教授)

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目   次 はしがき 第1華 中高一貫教育の施策 1政策の動向 2 中高一貫教育のあり方の提案 3 教育課程編成上の特例 第2章 イギリス労働党政権の教育改革と専門中等学校 1中等教育制度の改革課造 2 パートナーシップによる教育改革 3 「教育改善推進指定地域」 (EducationActionZone) 4 専門中等学校の推進 第3章 宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校における中高一貫教育 1建学の理念 2 教育課程の展開 3 入試のあり方 第4章 地域貢献する人材育成をめざす併設型中高一貫教育校の教育課程構想と課題 一高知県立安芸中学枚・安芸高等学校を事例として-1中高連携型教育の成果と併設型中高一貫教育校の設立経緯 2 安芸中学校・高等学校における教育課程の構想 3 安芸中学校・高等学校における入学者選抜方法 4 併設型中高一貫教育校のカリキュラム経営の課趨 第5章 地域教育計画に基づく特色ある「普通科系併設型」カリキュラム実践 一秋田市立御所野学院中学校・高等学校を事例として- ---・・ 1 はじめに 2 秋田県における「中高一貫教育」導入計画と秋田市における計画推進 3 御所野学院中学校・高等学校の概容と特色、及び課題 4 公立学校における中高一貫校設置の課題 第6章 公立中高一貫教育における「併設型」導入の意義と課題 一岡山市立岡山後楽館中学校・高等学校を事例として一 ---・-1併設型中高一貫教育をめぐる現状 2 岡山市における併設型中高一貫校の導入経緯 3 中等部と高等部の接続:岡山後楽館における教育課程 4 中等部と高等部の接続:岡山後楽館における入学者選抜 5 併設型中高一貫校の展開における今後の課退 32 42

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第7章 地域と連携した学校活性化の試み 一青森県立田子高等学枚における連携型中高一貫教育導入を事例として- ---- 58 ユ はじめに一東北初の連携型中高一貫教育枚 2 青森県における中高一貫教育導入の経緯 3 教育改革と地域の活性化 4 青森県田子地域:連携型中高一貫教育の特色 5 おわりに一過疎地域における小規模枚の戦略的な取組 第8章 進路選択に応じた学力の育成を重視する連携型中高一貫教育 一岩手県軽米地域(岩手県立軽米高等学校)を事例として- ---・--- 77 1はじめに- 「輪切り(横割り)」から「縦割り」--2 岩手県軽米地域(岩手県立軽米高等学校)における中高一貫教育の概要 3 岩手県軽米地域(岩手県立軽米高等学校)における地域連携型中高一貫教育の特色 4 岩手県軽米地域(岩手県立軽米高等学校)における地域連携型中高一貫教育の課題 5 おわりに-なぜ中高一貫教育なのか、何のための学力向上なのか-第9章 連携型中高一一貫教育をもとにした小中高連携カリキュラムの構想 一山形県小国地域を事例として-1 はじめに 2 山形県における中高一貫教育の現状 3 小国地域における中高一貫教育の展開 4 小中高連携カリキュラムの構想と展望 5 おわりに 第1 0章 「郷土学習」を中心とする「連携型中高一貫教育」の事例 三重県立飯南高等学校を事例として-1 はじめに 2 三重県飯南地区における中等教育の課誼と中高一貫教育構想 3 「連携型」をかたちづくる三つの施策 4 おわりに (資料)中高連携・一貫教育調査記録 1秋田県教育委員会 2 秋田市立御所野学院高等学校 3 青森県教育委員会 4 青森県立田子高等学校 5 岩手県教育委員会 6 山形県教育委員会 7 山形県立小国高等学校 8 飯南町立飯南中学校・三重県立飯南高等学校 (付録)中高連携・一貫教育関連調査収集資料一覧 執筆者・分担一覧

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第1章

中高一貫教育の施策

1 政策の動向 1998 (平成10)年6月12日、 「学校教育法の一部を改正する法律」が公布され、同年 10月30日に政令351号、 11月17日に省令第38号「学校教育法施行規則等の一部を改 正する省令」と文部省告示第154号「中等教育学校並びに併設型中学校及び併設型高等学 校の教育課程の基準を定める件」が公布され、 1999 (平成11)年4月1日から施行され ることになった。これによって中高一貫校を全国に500校設置するとした政策の方針が現 実味を帯びてきた。 1 1999 (平成11)年度の制度化に至る中高一貫の動きは、 1997 (平成9)年6月26日の 中央教育審議会第2次答申に始まるが、古くは、 1971 (昭和46)年の中央教育審議会答 申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」、 1985 (昭 和60)年の臨時教育審鼓会答申「教育改革に関する第1次答申」、そして1991 (平成3) 年の中央教育審議会答申「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」などに、 その提案や論及が見られる。このように中高一貫教育-の答申が連綿と出されながら実現 に至らなかったのは、受験型の中高一貫校や受験競争の低年齢化が懸念されたからである。 しかし、 1997年中央教育審議会第2次答申に始まる中高一貫-の施策の展開は、新た な時代-の1歩を踏み出したように思える。受験対応の中高一貫教育-の懸念が払拭され たわけではないが、それ以上に、少子化、高等学校の再編、青年期教育の被綻という問題 状況が、新たな青年期教育の再編を求めているからである。直接的には、少子化と高等学 校の統合再編問題が、具体的な圧力となっている。 この状況で、 1997年中央教育審議会第2次答申が、中高一貫教育について、従来に比 して、かなり具体的な分析と提案をしたことが、中高一貫教育を進める上で効果的であっ た。同答申では、中高一貫教育の利点と問題点を次のように分析した。 2 (利点) ① 高等学校入学者選抜の影響を受けずにゆとりある安定的な学校生活が送れること。 ② 6年間の計画的・継続的な教育指導が展開でき効果的な一貫した教育が可能とな ること。 ③ 6年間にわたり生徒を継続的に把握することにより生徒の個性を伸張したり、優 れた才能の発見がよりできること。 ④ 中学1年生から高校3年生までの異年齢集団による活動が行えることにより、社 会性や豊かな人間性をより育成できること。

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(問題点) ① 制度の適切な運用が計られない場合には、受験競争の低年齢化につながるおそれ があること。 ② 受験準備に偏した教育が行われるおそれがあること。 ③ 小学校の卒業段階での進路選択は困難なこと。 ④ 心身発達の差異の大きい生徒を対象とするため学校運営に困難が生じる場合があ ること。 ⑤ 生徒集団が長時間同一メンバーで固定されることにより学習環境になじめない生 徒が生じるおそれがあること。 などが挙げられた上で、 「『ゆとり』を与える必要性を訴えた第1次答申の理念」と「中 学校と高等学校の間のハードルを低くするという、高等学校入学者選抜の改善の方向にも 沿う」という判断によって、「中高一貫教育を導入することが適当であるとの結論に達した」 としている。 その場合、 「6・3・3制を一律に6・6制に改めるという画一的な改革を行うのではなく」、 「子供たちや保護者などの選択の幅を広げ、学校制度の複線化構造を進める観点から、中 高一貫教育の選択的導入を行うことが適当であると考えた」という。 ここで言う「複線化構造」とは、従来、教育学で扱ってきた複線型教育制度と同義では ないが、その種の観点から批判が出されることになる。エリートとノンエリートを分ける 複線型教育であり、中高一貫はエリート養成を志向することになる懸念であった。答申の では、中高一貫校が「いわゆる『受験エリート校』となり、偏差値による学校間の序列化 を助長するようなことはあってはならない」、 「我々は受験準備に偏した教育が行われるこ とは適当でなく、また、中高一貫教育を導入する本旨ではない」と明確に断っている。 答申では、 「中高一貫教育の選択的導入は、既に進みつつある中等教育全体の多様化・複 線化あるいは多線化という観点からも要請される。高等学校については、総合学科や単位 制高等学校の拡充、選択幅の広い教育課程の編成、自校以外の学習成果の単位認定の導入、 中学校については、選択履修の幅の拡大など、それぞれの学校段階で、言わば『横の多様 化・複線化』が進んできており、その流れは第1次答申を受けて更に加速していくだろう。」 「中高一貫教育の選択的導入は、言わば『縦の多様化・複線化』を実現するものであり、 中等教育全体の多様化・複線化、さらには学校生後の複線化構造を進める一環として、極 めて重要な意義を持つのである。」と説明され、教育制度と教育課程における縦と横の柔構 造化がより多くの人たちに公平に享受されるべきことが説かれている。従来は、 「専ら国私 立学校によって担われてきた中高一貫教育」であったが、これを公立でも提供できるよう にすることは、公立学校側にも生徒側にも意義があるというのである0 3

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2 中高一貫教育のあり方の提案 中教審答申は、さらに、中高一貫教育の導入について、具体的なあり方を提案する。ま ず、設置形態から、 ①同一の設置者が中学校・高等学校を併設する。 (A)独立した中学校・高等学校を併設 (B)一つの6年制の学校(いわゆる6年制中等学校)として設置・運営 ②市町村率中学校と都道府県高等学校を連携する。 という3形態である。これは後に併設型、中等教育学校、連携型と名称されることになる。 教育内容の類型では、普通科タイプ、総合学科タイプ、専門学科タイプの3類型があり うるが、それぞれに特色あるが、総合学科が「非常に有効なタイプ」と推奨されている。 総合学科は、様々な選択肢が準備できるからであろう。 特色ある教育の展開についても、 7つのあり方が提示されている。内容を省略して項目 だけ挙げておこう。 ①体験学習を重視する学校 ・ボランティア体験、社会体験、勤労体験、自然体験などを積極的に導入 ②地域に関する学習を重視する学校 ・地域の歴史や文化、自然、産業を活かした指導内容、地域の人材の活用など ③国際化に対応する教育を重視する学校 ・コミュニケーション能力の育成、国際交流活動や国際理解教育の推進など ④情報化に対応する教育を重視する学校 ・インターネット等の活用、情報リテラシーや情報モラルの育成など ⑤環境に関する学習を重視する学校 ・自然体験活動の充実、環境や自然を大切にする心の育成など ⑥伝統文化等の継承のための教育を重視する学校 ・伝統工芸や伝統産業の技術の伝承、伝統技能の技の伝授、後継者の養成など ⑦じっくり学びたい子どもたちの希望にこたえる学校 ・個別のきめ細かな教育計画を立て子どもたちを指導。学習のつまづきを的確に把 握し、基礎・基本を確実に学ばせ、じっくりと問題を克服 という7つの特色ある教育活動例が示された。 さらに入学者を定める方法についても、受験競争の低年齢化を防止することと中高-敬 育のよさを生かすために、 「特に、地方公共団体が設置する学校にあっては、学力試験は行 わないこととし、入学希望者が多く選抜が必要となった場合でも、様々な試行錯誤をした り、体験を積み重ねるなどの中高一貫校の個性や特色に応じて、抽選や面接、小学校から の推薦、調査書、実技検査など多様な方法を適切に組み合わせて入学者を定めることが適 当である」と、入学者選抜の在り方に慎重な配慮が求められた。なおかつ、高等学校段階

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に進む時点での入退学及び転学についても同様の配慮が求められた。 4 中教審答申としては、かなり具体的で踏み込んだ内容を中高一貫校について提示してい たことが明らかになったが、これを具体化するための法的な整備が前述のように翌年 (1998年)に行われ、その実施となる1999 (平成11)年4月の前の1月29日に、生活 空間倍増戦略プランが閣議決定され、その中で、学校の多様化に対応した21世紀型学校 空間の構築の一つとして、 「多様な生徒の実態に即し、個性的な学校づくりを行うため、当 面、中高一貫教育校や総合学科を設置する効率高等学校が通学範囲(約500程度)に少な くとも1校整備されることを目標とする。」と打ち出された。中高一貫校を500校設置す ることの閣議決定である。 5 これを推進するために、文部省に、 1999年6月に中高一貫教育推進会議が設置され、 中高一貫教育の現状分析とその進め方についての方策が、 2000年1月17日に『中高一貫 教育の推進について-500校の設置に向けて- (報告)』 (以下、中高一貫教育推進会 議報告書という。)としてまとめられた。 この報告書では、推進方策として、 (1)柔軟な実施形態や課程・学科等の工夫、 (2)敬 育課程の基準の特例の活用、 (3)特色ある教育活動の展開、 (4)自己の在り方や生き方や 将来の進路を考える機会の充実、 (5)入学者決定方法の工夫と小学校との連携、 (6)学校 運営の工夫、 (7)国や設置者による支援の充実、 (8)国民や幅広い関係者の理解促進の各 項目について、中央教育審議会答申をより掘り下げた内容が提示されている。 (1)柔軟な実施形態や課程・学科等の工夫では、 ①宮崎県五ヶ瀬中等教育学校のよう な6年間同一生徒集団を教育する中等教育学校タイプ、 ②岡山市立岡山後楽館中学校・高 等学校のような高等学校からの入学も可能とする併設型(高等学校は、昼夜開講型の3部 制、単位制、総合学科)、 ③秋田市立御所野学院中学校・高等学校のような同一生徒集団を 6年一貫教育する併設型、 ④三重県飯南高校と同地域の3中学校と連携して緩やかな中高 一貫教育を行う連携型(高等師範学校単位制・総合学科型)の4タイプが挙げられている。 なかでも、 「特に、連携型」については、 「都道府県と市町村が協力して学校運営や生徒 の指導等に当たるというこれまでにない取組であり、設置者間の協議が必要になるという 側面はあるが、他方、既存の中学校と高等学校を活用できる、大きな財政措置を必要とし ないなど、中等教育学校や併設型に比べて導入しやすいと考えられることから、積極的な 検討が期待される」と、位置付けられている。 6 従来、中学校と高等学校との交流が貧弱であったため、単なる交流だけでも大きな教育 的な効果をもたらすために、中高一貫教育の至らないまでも、中高連携の動きが各地で始 まっている。これを推進している背景には、いくつかの要因があるが、大きいのは少子化 問題で、高等学校側は中学校側に歩みよって定員充足を図ろうとしているのである。また、 法的にも、 1999 (平成11)年7月の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改 正によって、 2000 (平成12)年4月から、都道府県と市町村が組合を設立し、共同して 学校を設置管理することが可能となったので、その追い風も影響している。

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中高一貫教育推進会議報告書では、公立の中高一貫教育校の実施に至る経緯を分析して、 次の7項目を挙げている。 7 ①生徒減少に伴う高等学校の再編が契機となっている場合 ②当該学校を活性化することが契機となっている場合 ③県や市全体の学校教育の活性化が契機となっている場合 ④自然・地域を活用した特色ある教育の実施が契機となっている場令 ⑤既存の中学校の分離・新設が契機となっている場合 ⑥高等学校の校舎の改築が契機となっている場合 ⑦学校を核とした地域の活性化が契機となっている場合 実際は、いくつかの契機が重なって中高一貫教育校が設置されている実情にあるが、こ れらのどの契機によって設置されたかによって、中高一貫教育の実施形態と教育課程がち がってくることになる。中高一貫教育推進会議報告書によって、その実施形態を分類して おこう。なお、中高一貫校としての中高連携と単なる中高連携の交流の違いは、入学者選 抜があるかどうかである。中高一貫校は、入学者選抜試験が無いことが原則であるが、上 記の契機を背景に、その実態は様々である。 図に即して、 8 実施形態を見ておくと、 (1)一般的な実施形態は、 ①中等教育学校型 の場合、その前期課程と後期課程とがあり、中学校と高等学校に相当する教育課程とを6 年間一貫して教育する形態であるo ②併設型の場合は、独立した中学校と高等学校とが併 設され、中学校の定員がそのまま高等学校に進学する形態である。 ③連携型は、併設され ないが・独立した中学校と高等学校とが連携して一貫教育を展開する形態である。いずれ も小学校から中学校入学及び高等学校-の進学において、学力試験は無いことが原則であ る。 (1)一般的な実施形態 中高一貫教育の実施形態図 中等教育学校 兌 リナ 連携型 後期規程 俘)9乂xユ「 [二亘亘至亘コ 前期放橿` hァxユ「 I ⊂二重亘:コ l 前期PL軽の定点-後期机確の定見 hァxユィ,ノ.葵 リ)9乂xユィ,ノ.└ 1中学校(全体)とl高等学校の連携 (2)既設校の実施形態 中等教育学校 兌 ィナ 連携型 宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校 、ニニネ zx圷 ホ8ト員9(b靼( ァxユ「 -JlA立庶頼高等学校と丘Fq地牧3中学 後期決程 俥Xァxユ・メ 高等学校 前期扶穏 hァxユヲツ 中中中 学学学 校校校 前抑Zt糧の定JL-後期DL榎の定見 hァxユィ,ノ. ネリ( ァxユィ,ナ、T、ツ 秋田市立中所打学院中.高等学校 高等学校

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(2)既設校の実施形態は、図の通りであるが、生徒の定員だけ見ると、宮崎県立五ヶ瀬 中等教育学校では、前期・後期課程の生徒数が同一である。岡山市立岡山後楽館中・高等 学校は、一貫校の中学校から進学してくる生徒のほかに高等学校段階で新たに外部から入 学させることを予定している。三重県立飯南高等学校では、主として連携の3中学校から 入学してくるが、連携以外の中学校からも入学してくる。 さらに柔軟な実施形態例が図のように提案されている。併設型でも連携型と併用の形態 や、連携型の場合は、 ①複数の高等学校と複数の中学校とが連携する形態、 ②1中学校の 一部の生徒だけが1高等学校と連携する形態、 ③1高等学校の特定学科が中学校と連携す る形態、 ④複数の学科と複数の中学校とが連携する形態、などが挙げられている。今後の 展開しだいでは、いずれもありそうな連携型である。従来の学校をそのまま活かしながら 中高一貫を進めるには、このような連携型が現実的である。実際には、少子化で統廃合が 中高とも進むので、既存の中学校の通学区域とは異なる中学校が設置されて、併設とも連 携ともつかない型の実施形態も出てくるに違いない。 3 教育課程編成上の特例 それでは、教育課程編成はどうだろうか、その特例措置についてまとめておこう。中等 教育学校の教育課程は、前述の学校教育法施行規則と「中等教育学校並びに併設型中学校 及び併設型高等学校の教育課程の基準の特例を定める件」によって、準用と特例に関する 規定が設けられている。やや煩雑になるが、 1998 (平成10)年12月と1999年1月の新 学習指導要領は、中学校が2002 (平成14)年、高等学校が2003 (平成15)年実施であ るから、これ以前は、 1989 (平成元)年学習指導要領に規定される。それで掲載の2種類 の表が必要になる。 9 平成元年学習指導要領時代は、中学校について、 3件の特例がある。第1は、選択教科 による必修教科の代替についてであるが、一般の中学校は何もないが、中等教育教育学校 と併設型の特例として、 「必修教科の授業時数を、年間70単位時間の範囲内で必修教科の 内容を代替することができる内容の選択教科の授業時数を充てることができる」 (学校教育 法施行規則別表第3の2備考第5号、現行中高一貫教育特例告示第1項第1号ニ)とされ た。 第2は、各選択教科の授業時数についてで、一般の中学校は、各教科年間35単位時間 以内で、第1・2学年は1教科以上、第3学年は2教科以上と規定されているが、特例で は、 「年間3 5単位時間を超えて各学校が必要な時数を定めることができる」 (現行中高一 貫教育特例告示第1項第1号イただし書き)と規定された。

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(平成元年学習指導要領における特例) 一般の中学校 i9仆8支ァxユ「饉 リナ ノ< ①選択教科による必修 必修教科の授業時数を、年間70単位時間の 教科の代替 剩ヘ囲内で必修教科の内容を代替することがで きる内容の選択教科の授業時数に充てること ができる○〔学校教育法施行規則別表第3の2 備考第5号、現行中高一貫教育特例告示第1 項第1号ニ〕 ②各選択教科の授業時数 丿Xサ8怏D隴C3Y% 肩鳧ュH潔> 年間35単位時間を超えて各学校が必要な時 第1、2学年:1教科以上 H/ . . ,h*ィ,X*ク.薬 第3学年:2教科以上 クヒクラ9(hリ(耳ュ サ8孜< ル 麒 c リ c リh42 (ただし、選択教科には外国語を含む) 〔現行中学校学習指導要領総則第3の(3) 及び第4の(1)〕 リ+ X *ク ツ ③選択できる教科の種類 c ァyD罟、 ル ホェH+ク,ノ ネサ8怩 全学年:すべての教科 第2学年:音楽、美術、保健体育、技術. 家庭、外国語、その他教科 第3学年:すべての教科 侏クラ9(hリ(耳ュ サ8孜< ル 麒 c リ c リh6 ツ 一般の高等学校 i9仆8支ァxユ「饉 リナ ノ< ④普通科における +ク,ノ ネ,ネ怏m、ァ(+ク,ノ ノ< ,儺ケwh,綾8怺8,ネ 9; 見 H,ネ*H+ⅹ (シh,儺ケwh,咽9; 見 B その他の教科.科目の 単位数 亊ネ- . ,h*ィ,X*ク. 8フ 20単位 % 犬 〔現行高等学校学習指導要領総則第7款の4〕 クヒクラ9(hリ"リュ サ8孜< ル 麒 c リ ツ

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(平成1 0年度新学習指導要領における特例) 一般の中学校 i9仆8支ァxユ「饉 リナ ノ< ①選択教科による必修 必修教科の授業時数を、年間70単位時間の 教科の代替 剩ヘ囲内で必修教科の内容を代替することがで きる内容の選択教科の授業時数に充てること ができる○〔学校教育法施行規則別表第3の2 備考第5号、現行中高-貫教育特例告示第1 項第1号ロ〕 ②各選択教科の授業時数 c ァyD罟ヲXサ8怏D隴C3 % 肩鳧ュH潔> 年間35単位時間を超えて各学校が必要な時 第2学年:各教科年間70単位時間以内 H/ . . ,h*ィ,X*ク.薬 1教科以上 クヒクラ9(hリ(耳ュ サ8孜< ル 麒 c リ c リh42 第3学年:各教科年間70単位時間以内 2教科以上 〔現行中学校学習指導要領総則第3の3、 第3の5〕 リ+ X *ク ツ ③選択できる教科の種類 8ァyD罟+x-x,H,ネサ8怩 同左 一般の高等学校 i9仆8支ァxユ「饉 リナ ノ< ④普通科における +ク,ノ ネ,ネ怏mェ:(+ク,ノ ノ< ,儺ケwh,綾8怺8,ネ 9; 見 H,ネ*H+ⅹ (シh,儺ケwh,咽9; 犬 その他の教科. 科目の単位数 H,亊ネ- . ,h*ィ,X*ク. 8フ 20単位 % 犬 〔現行高等学校学習指導要領総則第7款の の4〕 クヒクラ9(hリ(耳ュ サ8孜< ル 麒 c リ ツ 第3は、選択できる教科の種類についてで、一般の中学校は、第1学年が、外国語とそ の他の教科、第2学年が、音楽・美術・保健体育・技術家庭・外国語・その他の教科、第 3学年が、すべての教科であるが、特例では、全学年全ての教科を選択できる」 (現行中高 一貫教育特例告示第1項第1号ハ)と規定された。 高等学校については、普通科におけるその他の教科・科目の単位数において、一般の高 等学校が20単位に比して、特例では30単位(現行中高一貫教育特例告示第1項)と規定 された。これは大きな枠で、 80単位の中で30単位まで当該学校の実態に合わせた教科・ 科目設定ができるのである。

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新学習指導要領ではどうか、まず、第1に、選択教科による必修教科の代替について、 一般中学校はやはり「なし」であるが、特例では、前述の通り、第2に、各選択教科の授 業時数では、一般の中学校が、第1学年で、各教科年間30単位時間以内、第2学年で、 各教科70単位時間以内で1教科以上、第学年で、各教科年間70単位時間以内で2教科以 上であるが、特例は前述の通り、第3は、選択教科の種類について、一般の中学校が、全 学年ですべての教科が可能であり、特例も、同様であると規定された。 高等学校では、普通科における学校設定教科・科目の単位数であるが、一般の高等学校 は20単位、特例は30単位と規定された。 なお、連携型の中学校・高等学校の教育課程は、一般の中学校・高等学校と同様で、特 に教育課程の基準の特例は設けられていない。 以上、中高一貫教育を推進するための基本的施策を分析してきたが、次章以降、これを ふまえて、各高等学校及び地域では、どのように進めつつあるのか、それぞれに即して分 析することにする。 (水原 克敏) 1文部省中高一貫教育推進会議「中高一貫教育の推進について∼500校の設置に向けて∼」 (中高一貫教育推進会議報告の要旨)平成12年1月17日 2文部省「21世紀を展望した我が国に教育の在り方について」 (中央教育審議会第2次答 申)、 『文部時報』、平成9年第1449号 58頁 3同上書 60頁 4同上書 61-68頁 5 (文部省)中高一貫教育推進会議『中高一貫教育の推進について∼500校の設置に向け て∼ (報告)』 平成12年1月17日 28頁(掲載資料 4) 6 同上書 6-7頁 7 同上書 30頁 8同上書 31頁 9 同上書 33-34頁 ※本論文は、水原克敏「中高一貫校におけるカリキュラムの開発の現状と課題」 (市川博編 「教育課程の構成・基準の改革に関する総合的研究- 『第2次報告』 -」科学研究費 補助金基盤研究B l 平成13年3月)の一部を再録し、加筆修正したものである。

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第2章

イギリス労働党政権の教育改革と専門中等学校

1 中等教育制度の改革課題 中等教育制度の基本構造は、教育目的・内容や教育対象(階層、性、能力などによる) により構成される「系統性」と、発達段階や教育水準により構成される「段階性」から成 っている。近年の我が国における中等教育制度の主要政策課題は、 「系統性」に関しては 高等学校の総合学科の設置の推進であり、 「段階性」に関しては中高一貫教育の推進であ ろう。何れも「当面、高等学校の通学範囲(全国で500程度)に少なくとも1校整備され ることを目標」 1)に整備が進められている。これらの施策は、中等教育における多様化の 推進と選択の幅の拡大、生徒の個性の重視を目指すものとされる。 一方、イギリス(ここではイングランドに限定)においては、中等教育は通常11歳から 18歳までで、そのうち16歳までが義務教育である。中等学校の種類は、総合制学校

(comprehensive school) 、中等近代学校(secondary modem school) 、中等文法学校(secondary

grammarschool) 、技術学校(technical school)等からなる。 「段階性」に関しては、 1993 年4月から、 16歳∼18歳までの第6年級カレッジ(sixth form college)は、継続教育財務 審議会(FurtherEducationFundingCouncil)の下におかれるようになった。また、初等と中 等にまたがる8歳∼14歳までの中間学校(middleschool)が少数ある。 2001年1月の統計で、これらの中等学校のうち総合制学校が、学校数で81% (2825校) 、 生徒数で87% (281万人)と大部分を占めている2)。今日の改革課題は、この総合制中等 学校を「専門中等学校」 (specialistschool) -と改組することであり、 2005年までに1500 校-と拡大を図る計画である。イギリスは、我が国と同様に中等学校の多様化、個性化を 目指しているが、制度的に見ると「系統性」における改革が課題となっていると言えよう。 以下、第2期日のブレア労働党政権の教育改革と中等学校政策について見て行きたい。 2 パートナーシップによる教育改革 昨年6月7日の総選挙で659議席中412議席を獲得し大勝したブレア労働党政権は、引 きつづき教育政策を「最優先事項」に掲げ、医療・福祉・犯罪対策などと共に公共サービ スの改革を政策綱領の中心に据えた。 9月5日、第2期日の政策方針をまとめた教育自書 『成功に導く学校』 (schoolsachievingsuccess)のなかで、中等学校の現代化、多様化、個 性化の一層の推進を提案した。中等学校の刷新に関する諸課題は、 11月22日に下院に上

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程された教育法案(EducationBill)に盛り込まれ、 2002年9月の新学期からの実施を目指 して現在審議中である。法案の趣旨は、個々の学校が独自の使命と特性を生かしつつ、生 徒一人一人の才能を開花させる教育サービスの提供を可能とする優れた教育実践の開発に 取り組めるよう、学校の自由裁量や自律性を拡大することをねらいとし、そのための障害 を除去すべく「規制緩和」を大胆に進める内容となっている。 「第3の道」を志向する新労働党政権の政策は、かつての「あれかこれか」の二分法で はなく、 「市場主義と社会民主主義の止揚」或いはあらゆる施策の包摂によって「世界ク ラスの教育システムの構築」 (T・ブレア)と水準の向上を目指している。確かに、学校の 自律性、多様化、実績の重視、選択の拡大、競争、中央集権的政策策定など、前保守党政 府の教育政策を継承している点も多いo Lかしそれらに加えて、労働党政府は協働・連携 ・協力をスローガンに公立(営)学校を地域コミュニティの中枢に据え、地方教育当局(L。。al EducationAuthority,以下LEA) 、民間セクター、ボランタリセクター、保健衛生・雇用促 進などの公共事業とネットワークをつくり、経済的社会的貧困地域の本質的課題の解決に 向けて総合的に取り組もうとしている点に特徴がある。 3 r教育改善推進指定地域」 (EducationActionZone) 1997年保守党からの政権交代後、ブレア労働党政権はいち早く独立(私立)学校の補助 学籍制度や保育バウチャーを廃止し、国庫補助学校の改編を実施すると共にLEAの活性 化、都市部の低所得層の子ども-の支援事業など新たな施策を開始した。前保守党政権の 競争原理のもとで進められた学校の階層的序列化や生徒の学力格差の拡大による失敗校 (failingschool)や劣等校(Weakschool)と称される教育困難校の改善を優先し、ボトムア ップを図ることで学校教育全体の水準向上を最大のねらいとしたのである。そうした施策 の基本に、 ①確固とした基礎学力の定着、 ②すべての学校の改善、 ③社会的差別の排除、 ④総合制中等学校の現代化-を据えている。

まず1998年の「学校の教育水準と枠組みに関する法律」 (school Standards and Framework

Act 1998, C・31、以下1998年教育法)で公費維持学校のカテゴリーを整備した(同法第20

条) 。 ①LEAの設置維持する公立公営校であるコミュニティ・スクール(community school) 、

②従来国から直接補助を受けていた国庫補助学校を廃止し、代わって地方当局から補助金 を受け法人によって管理される地方補助学校(foundationschool) 、 ③英国国教会やカトリ

ック教会などが設置し公費補助を受けている私立公営の有志立管理学校(voluntary aided school) 、並びに有志立補助学校(voluntary controlled school)である3)0

第1期日における「思索の結合」 Goinedupthinking) 、すなわち各種公共政策の協業に

よる代表的な施策が、 「教育改善推進指定地域」 (Education Action Zone、以下EAZ) の事業である。 EAZは、教育の水準・効果・環境に問題を抱える貧困地域や社会的に不利

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な条件に置かれた地域に集中的に補助金を投入し教育改善を施す事業であり、労働党政権 が標傍する「第3の道」を具現する政策として、或いは「21世紀の公共サービスの将来型 提供の先駆的試み」として注目されている。 EAZプロジェクトの機軸となるのが中等学校 であり、運営はフォーラムが当たる。 EAZについては1998年教育法の第Ⅲ章第10-13条 で、 EAZが法人格を有するフォーラムによって管理され、全国カリキュラム並びに参加校 の教員の勤務条件や待遇などに特例措置が与えられる、と規定されている。 1998年9月か ら実施され、現在73ゾーンが指定されており、各EAZは、中等学校2、 3校と初等学校 20校ほどで構成されており、政府から3-5ケ年間、年75万ポンド、民間セクターから 25万ポンド相当の補助金を受けることになっている。 EAZの特徴は、地域社会の課題に対しパートナーシップにより解決にあたるといった考 え方にある。第1に企画運営の核であるアクション・フォーラムは、公的セクター、民間 セクター、ボランタリセクターの多元的・多層的な代表から構成され、それらの連携協力 によって推進されるガバナンス(協治)の試みであること。企画立案の核であるアクショ ン・フォーラムの構成員は、参加校の理事・教師・親、教育当局者、宗教団体、企業、教 育専門家などから選出される。第2に「健康改善推進地域」や「雇用促進地域」など医療 ・福祉・労働政策と連結した統合的政策により課題解決を図るといった試みであること。 社会的包摂をスローガンに、社会資本の充実やコミュニティの共感を強め、信頼感を築く ことによって社会的経済的福利の増進をめざす。従って個別の学校単位ではなく、コミュ ニティを基盤とする学校間の連携・協働により学校改善を進める施策である。第3に国と 市民社会のそれぞれの役割を前提としつつ相互乗り入れを容認し、境界設定を不明瞭にし ていること。すなわち旧労働党の国家主導による課題解決策と、新保守主義の消費者権利 を優先する解決策に対し、 EAZの基本原則は国と市民社会との協働で事業に当たることで ある。 こうしたEAZの施策に対し課題も指摘されている。たとえば、第1に民主性の問題であ るo EAZは行政区と必ずしも一致しないので、選挙で選出されたLEAのメンバーとは異 なり、フォーラムは特別な組織であり、そのメンバーは選挙民-直接責任を負っていない ので責任の所在が不明確にならないか。またメンバーの選出に当たって人種、階層、ジェ ンダーなどにおいて偏向がみられないか、といった問題である。第2に公平性の問題であ る。ゾーン内の利益とゾーンに隣接する学校とのギャップや教師の待遇や勤務条件などに 格差が生じるのではないか、といった問題である。第3に企業が利益優先に走らないか、 あるいは恒常的・継続的な援助を受けられるか、といった利益原理優先や企業援助の問題 である。第4にフォーラムが多層化、多元化な構成員を擁し、大規模化することでメンバ ー間の意見調整が難しくならないか、といったマネジメントの問題である。 ともあれ政権1期日については、教育水準庁の査察結果の報告で、初等学校については 全体に識字能力・数理能力ともに改善が進んでいると評価され、また中等学校でも徐々に 改善が進んでいると評価されたのである。

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4 専門中等学校の推進 選挙演説中にブレア首相が再三強調してきたように、第2期日の政策の中心は中等教育 に向けられている。ブレア首相は、 「中等学校の水準を向上させつつ高等教育の拡大を図 る」 「教育においては古い総合制の議論から脱却し、多様性と選択性を提供し中等学校の 水準を向上させる」 「2010年までに高等教育進学率50%まで上げる。そのため中等教育の 改革を主眼とする。専門中等学校の成功と水準向上はめざましい。この学校は包摂と機会 の均等を原則とする。この学校のもたらす特化とダイナミズムは地域の学校全体の水準と 向上心を高める。 5年以内に1500校にする。全ての中等学校は個々の役割とエートスを際 立たせる。シティ・アカデミーを増やす」などの公約を行った。 教育白書『成功に導く学校』は、 21世紀知識社会-の対応として、知識と技能の重視、 教師・親・雇用者・ボランタリセクター・中央と地方政府すべての結束、優れた教育実践 の普及拡大、中等学校の自律化と多様化、世界的レベルの教職の確立、すべての子どもた ちに最高の教育の提供などを盛り込んでいる。その具体をみると、 ①中等教育における生 徒の成績達成目標の設定、 ②英才・才能児のアカデミーの設立、 ③特別な教育ニーズ-の 支援、民族的少数者-の支援、 ④情報コミュニケーション技術(ICT)によるカリキュラム オンラインの立ち上げ、 ⑤青年期教育の充実。 ll-14歳の生徒の基礎教科(英・数・科学 ・情報)の学力水準の向上。 14-16歳の職業準備教育の強化、中等教育修了資格試験(GCSE 試験) -の職業教科の新設、 ⑥専門中等学校と灯台学校(beacon schoolと呼ばれ、文字通 り他の学校-の「輝ける範例」あるいは「導きの灯り」であることが求められる。この学 校は教育水準庁によって「好成績」を修めている学校、 LEAの推薦を受けた学校で1998 年9月にスタートした。同校はその優れた実践を他校との連携によって普及拡大し、相互 支援的なネットワークを築くことを目的としており、とりわけ教育困難校の多い大都市部 の学校改善に向けた戦略基地として位置づけられる。 )の拡充、 ⑦私立中等学校の一種で ある「シティ・アカデミー」の設立支援、 ⑧民間セクターの参加促進、優良校-の全国カ リキュラムに関する一層の規制緩和の推進、 ⑨教職員の職場環境の整備・改善並びに研修 の充実。校長、教頭、教育指導者の研修及び管理資質向上のために「全国学校指導者カレ

ッジ」 (National College forSchooI Leadership)の支援、を盛り込んでいる。

11月22日に上程された教育法案は、生徒のニーズに応じた教育サービスを提供できる ように「規制緩和」を大胆に進める内容となっている。たとえば、法令に抵触する事例で あっても水準向上に資するアイデアであると議会が承認すれば、 3年間の実験期間が認め られる。規制緩和を進めることによって学校独自の教育方法の開発、学校間での教師の交 流、成人教育や地域保健など他のサービスの提供を可能にする。また優良校には一層の自 由を認める、との内容を盛り込んでいる。 かくして政策の実施にあたっては、第1期以来、民間セクターのマネジメントの手法を 取り入れたニュー・パートナーシップの政策手法を一般化したと言える。中等学校の改革

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を中核に据え、民間セクターの導入によって実行しようとする代表的な教育刷新プログラ ムを掲げてみよう。 (1)中等学校の専門化 専門中等学校プログラムは、既に前保守党政権が1994年9月に立ち上げている。このプ ログラムは、民間セクターの後援と協働で特定分野の専門化を図ることを目指してスター トしたが、労働党政権に代わってからは、他の学校や地域社会-の貢献が期待されるよう になった。 全ての公立(営)中等学校はLEAとの協議の上で専門中等学校の地位に申請することが できる。専門分野は、現在、テクノロジー、言語、スポーツ、芸術、ビジネス及び起業、 工学、科学、数学及びコンピューター技術の8領域に及ぶ。専門中等学校のプログラムは、 民間セクターの後援と政府の追加補助を受けて、特定分野の強化を図り、かつその専門化 を通して学校のアイデンティティを築くことを支援するものである。さらに近隣の学校や 地域社会の資源として活動し、学校とビジネスとのパートナーシップを強め、中等学校に 多様性と豊かさを与えると同時に職業に必要な技能を提供したり、高度な専門教育を期待 されている。入学者の10%まで「適性」による選抜を認められている。 申請に当たって学校は、 4年間に亘る学校と地域社会の発展に資する開発計画を作成す ること、測定可能な業績指標と定量化された業績目標を確定すること、民間セクターから 少なくとも5万ポンドの資金提供を受けかつスポンサーと継続的な連携を築くこと、が要 求される。政府からは10万ポンドの追加補助、並びに生徒一人あたり年123ポンド(特殊 学校は615ポンド)の補助金が4ケ年間与えられ、目標値を達成した場合にはさらに4年 間の更新が認められる。改府の出資によるテクノロジー・カレッジ・トラストが申請時や 加盟校に対し指導・助言・情報等を提供する。同トラスト議長のサリル卿は、専門中等学 校-のプロセスは、 「学校改善の一環として位置づけられるべきである。補助金の獲得が 目的ではなく、申請-の過程・校長の資質・学校のエートスが問われる」と述べている。 補助金を獲得しても目標値を達成できない場合、認可を取り消される。また従来の総合制 中等学校と専門中等学校との二重学校体制を目指すものではなく、1998年9月には327校、 2000年には536校であったが、 2003年までに1000校、 2005年までに1500校と可能な限 り増やす計画である。 (2)公的セクターと民間セクターのパートナーシップ 広義には、公的セクター-民間セクターを包含するスキーム、例えば、外部-の委託管 理や維持管理、 LEAの学校改善などの教育活動に契約者と共同であたる事業などを指して いる。狭義には、公立(営)学校と独立(私立)学校とのパートナーシップを指している。 この目的は、公と民の両者の経験と実践の交換による協力的活動の促進を通して、生徒の 水準の向上と教育機会の拡大をねらうものである。 「都市の学校改善」や「灯台学校」プ ログラムなど、他の教育優先策と連動して活用される。各学校は、後に自己資金で賄うこ とになるが、パートナーシップの奨励政策に申請することができる。 1998-2001年、当時

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の教育雇用省から175万ポンド、また民間のサットン教育財団からの45万ポンドが、約 120のパートナーシップ・プロジェクトに支援された。公立(営)学校と独立(私立)学 校とのパートナーシップの事例として、両校の連携による音楽、外国語、 ICT、テクノロジ ー教育の相互強化、授業に関する専門的知識技術の交換、カリキュラム教材を共有するた めの合同ウェブサイト開発などがあげられる。 (3)民間-の教育サービスの委託 教育サービスの民間委託を指す。例えばICT、物品購入、生徒輸送、学校給食、教員研 修、カリキュラムアドバイス、校舎の営繕、その他のマネジメントサービス、学校管理委 託などの教育サービスがある。このねらいは民間セクターの関与により、公立(営)学校 に対する高質の教育の提供、効率と効果の実現、教師の要求-の対応などである。地域の 雇用者、産業経済関係者とのパートナーシップの形態として、 LEAにおける新公共管理、

PFI (民間資金等活用事業)があげられる。 PFIは、 LEAが民間企業による新設校の企画、 施工、融資、維持のサービス、あるいは古くなった校舎の改装や補修・改修のサービスの 購入を認めるものである。企業は投資のために資金を調達し、 LEAはそれに対し、例えば 25年の長期契約の下で毎年手数料を支払う。この他にも民間委託の事例して、失敗学校の 再生、 EAZ-の特別措置、専門的技術や資源の提供、教科書や教材の供給、ボランティア による授業補助、コミュニケーションカの向上事業、企業での職業訓練や実習の支援、カ リキュラム・プロジェクト-の支援などの事業が挙げられる。 (4)シティ・アカデミー シティ・アカデミーは、民間セクターやボランタリセクター、あるいは宗教団体等から の後援を得て、公費で設立された独立(私立)セクターに分類される中等学校である。こ れは既設の学校に代わるものであったり、あるいは必要に応じて新設されるものである。 専門中等学校と同様にカリキュラムの特定領域に特化しており、 LEAの中等教育改革戦略 の一翼を担うものである。公益法人として登録され、学校のガバナンスと戦略的リーダー シップに責任を負う理事を有する。スポンサーは設立基金の約20%、約2百万ポンドを上 限に資金提供する。教育技能省が残りの資金を直接提供し、また専門中等学校と同様に生 徒当たりの追加補助を行う。独立(私立)学校となるが授業料の徴収は認められない。 シティ・アカデミーは、従前の失敗学校政策(学校の閉鎖と新たなリーダーの下での開 校)に代わる、あらゆる法的能力を持つ学校で11-16歳、 ll-18歳、 5-18歳などのタ イプがあり、大都市域の新たなニーズに応ずる学校である。入学条件は公立(営)学校の それに準ずる。 10%まで専門主義の観点による「適性」を考慮した選抜ができる。教員の 任命権者はLEAである。シティ・アカデミーは、 ①地域社会の中心として他校や地域全体 で施設を共有する、 ②成績の悪い生徒と一緒に活動し地域課題に取り組む自由裁量を有す る、 ③カリキュラムの特定領域を強調し、広範でバランスのとれた刷新的なカリキュラム を有する、 ④学校生活の統合的部分としてカリキュラムの充実と学習のサポートを図る、 ⑤全ての子どもが可能な進歩を遂げ、かつ将来の教育、訓練、職業について生徒が選択で

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きるように認定された資格を取得して修了できるようにする。 (5)都市の学校改善 この事業は慢性的な失敗学校を救済し、水準の低い大都市部の教育問題に取り組むため に計画された。同プログラムは個々の生徒や教師の要請と意欲に着目し、 LEAの管轄を越 えた地方のパートナーシップを通して遂行される。現在58の地方当局と7つの「卓越した クラスター」 (不利な条件に置かれた地域の学校群)を擁している。第1段階として6大 都市圏で438中等学校が指定を受けた。 6つの主要施策は、 ①必要な生徒全てに対する学 習援助者の配置、 ②学習支援ユニットの設置、 ③新都市学習センターのネットワーク作り、 ④機軸学校と専門中等学校の増設、 ⑤小規模EAZの設置、 ⑥英才・才能児-の教育機会の 提供、である。第2段階として2000年9月から313中等学校を擁する23のLEAが指定を 受けた。第3段階として10地域指定、並びに2003年度には3億ポンドの政府補助を予定 している。 おわりに 以上のようにイギリスの中等学校改革は、複合的な改革プログラムのなかで総合制学校 の専門中等学校-の改組を軸として進められている。専門中等学校はテクノロジー、言語、 スポーツ、芸術などの分野に特化した学校で、選択と多様化により教育水準の向上をめざ す労働党政権の第2期日の最優先政策であり、大都市部の教育改善プログラムの中軸とな っている。この施策は公的セクター、民間セクター、ボランタリセクターの協働事業で進 められる点に大きな特徴が認められる。 く宮腰 英一) 注 1)平成13年1月25日 文部科学省「21世紀教育新生プラン」

2) The Stationary Office, SEaぬtics ofEducationISchooLH.tl Englatld 2001

3)このほかに、コミュニティ特殊学校(community special school) 、地方補助特別学校

(foundation specialschool)がある。 (同法第20条)

〔本稿は、拙稿「民間とのパートナーシップ築く一英国の公立(営)学校に新しい動き-」

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第3章

宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校における中高一貫教育

1 建学の理念 1994 (平成6)年4月に6年一貫教育の全寮制の県立学校として創設され、 1999 (平成 ll)年に中等教育学校に校種を変更した。各学年40人学級の1クラスで全校6クラスの 編成、目下、前期課程119名、後期課程117名である。 1 建学の理念が独特で、 「森林という自然の教育をフィールドとして、自然に対する畏敬の 念を育て、若人らしい野性味や冒険心の育成と回復等に努め、豊かな人間性と創造力・協 調性を培い、主体的に生きる人間の育成を図る」というもので、いわゆる「フォレストピ ア構想」によっている。 2 この理念は、最初、フォレスピア学びの森学校建設構想協議会の最終報告書(1993年3 月)で打ち出され、次いで、宮崎県教育委員会の「フォレストピア学びの森学校構想」と してまとめられた。そこでは、次のように「人間性回復としての森林の活用」が高らかに 終われている。 「人類は来るべき21世紀において環境破壊の危機、人間性崩壊の危機等、 人類そのものの存亡にかかわる危機に直面するであろうといわれている。今こそ、このよ うな危機に対して、われわれはどのように対処するかを真剣に考えなければならない時で ある。その際、傾聴すべき提言の1つに森の文明の見直しがある。日本の文明の基礎は縄 文時代、すなわち狩猟採集時代の文明、森の文明であり、その中に人類文明を救う方向が 秘められているということである。反対に言えば、人間をそれを生み出した自然から切り 離し、人間に自然支配の権力を付与するという考えを改め、人間をもう1度、大自然の懐 に返さなければならないということである。これはまさしく『人間性回復としての森林の 活用』、本県のフォレストピア構想の理念と深くかかわるものである。言うまでもなく本県 は自然に恵まれている。森林資源の活用はもとより、自然の持つ素朴さを最大限生かした 空間の多面的利用や山村に育まれた独自の人間性・文化などの総合的活用により、森林と いう自然を教育の場として生かしてことができる。したがって、森林を媒体としたあらゆ る体験学習等の機会を通して人間としての野性味や冒険心の育成と回復に努め、豊かな人 間性と創造力の下に主体的に生きる人間の育成が期待される。つまり、人間性の喪失が社 会問題化している今日にあって、森林という自然との共生を通じて総合的に人間性を回復 ししていくことが求められていると考えるのである。」と。 3 ここには、縄文文化など日本人の起源にまで遡る文明論的思考で梅原猛氏の影響が見ら れ、失われつつある人間性回復にとって不可欠なものとして「森林文化」を引き出してい るo 「人間性回復としての森林の活用」という結論は、単なる作文とは思えない迫力があり、

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この後の同校の教育は、まさに森林を媒介にした体験的活動など「森林の活用」を基底に すえて展開することになる。 かつ、興味深いのは、この基本理念が、 1989 (平成元)年改訂の学習指導要領の理念と 合致するものと最終報告書では捉えていることである。 「学びの森学校で実現すべき具体的 な課題」として次の7点を挙げている。 4 (1)人間性、個性の尊重と能力の伸長を図る。 (2)体験的活動を中心に社会性の伸長を図る。 (3)人間としての在り方生き方の充実を図る。 (4)教育内容・方法の一貫性、関連性を図る。 (5)生涯学習の基礎を培う。 (6)地域に開かれた学校を目指す。 (7)心身ともに健康な青年の育成を図る。 という 7点を挙げて、 「学びの森学校は」、 「新しい学習指導要領のねらいを実現するのに 極めて理想的な条件を具備させることが可能である。」と位置づけている。 「建学の理念」としては、 「(1)来るべき21世紀の日本を担い国際社会で活躍する人 材を育成する。 (2)森林という自然を教育のフィールドとして、自然に対する畏敬の念を 育て若人らしい野性味や冒険心の育成と回復等に努め、豊かな人間性と創造力・協調性を 培い、主体的に生きる人間の育成を図る。 (3)主体的な学習や体験学習、体験活動等を通 し、自己教育力の育成を図る。」と謳われた。 5 「目指す生徒像」としては、次の9条が立てられた。 6 ① 基礎的な学力が身についた生徒 ② 個性や可能性を伸ばせる生徒 ③ 創意工夫の精神に富み行動力のある生徒 ④ 生活目標をもち、自己管理が確実にできる生徒 ⑤ 社会性や協調性をもち他を思いやる心のある生徒 ⑥ 心身ともに健康で忍耐力と正義感に満ちた生徒 ⑦ 将来に夢と希望をもって努力する生徒 ⑧ 自然を大切にし、自然から学ぶことのできる生徒 ⑨ 文化と伝統を理解し、国際性豊かな生徒 すべて網羅されているので、目指す生徒像はあまり特色が感じられないが、基礎学力を筆 頭に挙げることで、学力形成に力点を置くことをアピールしていることと、フォレストピ ア構想との関係で、第8条で「自然を大切にし、自然から学ぶことのできる生徒」像を掲 げていることが注目されることであろう。 同校の校長岩切正憲氏は、読売新聞のインタビューを受け、同校の理念に関することで、 次のように語っている。 「当校は形の上では中学、高校に分かれているが、校舎も一緒で実 質的な中高一貫教育を行っている。中高一貫というと、私立のそれがすぐ連想されるが、

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ここでのそれは従来の中高一貫教育とは全く違う。 1960年代の初め、生き生きした山村を つくるため、県にフォレスト(森林)とユートピアを組み合わせたフォレストピア宮崎構 想が生まれた。ここ五ヶ瀬町は学びの森ゾーンに指定され、地域の利点を生かした学校を つくろうと、県内の有識者で協議会が結成された。その中で、いま中学の指導が大変にな ったのは、同じ年代の子供が集まり、同質社会を形成してしまっていりことなどによると 指摘された。昔の5年制の旧制中学には先輩が後輩を指導し、リーダーとして育っていく 縦の異年齢集団があったことの指摘もされた。そこから中高一貫の発想がうまれた。中高 一貫のよさを最大限生かすため、全寮制を導入し、さらに森をベースにする自然体験教育 を進めていくことなった。生徒たちが多感な時期に様々な年代の友達とつながりを持ち、 主体性を持った人間に育っていくためだ。男女共学も理念とされた。」という。 7 この校長岩切氏の教育理念は、上述の建学の理念を継承したものであることがわかる。 なぜ6年制の中高一貫校でなければならないか、その理由として、旧制中学の5年制にお ける異年齢集団の教育的意味が説かれているが、同校の構想では、次のようにまとめられ ている。 8 ( 1 )優れた才能の発見や個性の伸長は、成長や変化の大きな青年期の6年間こそ極 めて重要であり、中学校と高等学校つなぐことにより指導の効果をあげること ができる。 (2)中学校教育と高等学校教育の接続を円滑にすることによって、安定的な学校生 活を過ごさせることができる。 (3) 6年間の計画的、継続的な教育指導によって、効率的、一貫的な教育を行うこ とができる。 ① 6年間にわたり、生徒を組織的、継続的に把握することができ、生徒の個性・ 適性等に応じての教育課程の編成や学習指導及び進路指導等ができる。 ② 中学校と高等学校合同の特別活動や部活動等を通して、社会性、自主性、自発 性、協調性、指導力等を幅広く育てることができる。 ③ 中学校1年生から高等学校3年生までの異学年集団による6年間の学校生活 体験を通して、社会性や人間性、指導性等を幅広く育てることができるととも に、人間としてのよりよい在り方生き方を体得させることができる。 ④ 全寮制による生活体験を通して、社会性や自己管理能力、自主性、自律性、協 調性、忍耐力、指導力等を幅広く育てることができる。 ⑤ 6年間の指導を通し、興味関心や個性等を十分把握することによって、生徒指 導も計画的継続的かつ個別的に行うことができる。 というものである。全寮制の6年制中高一貫校のありうる特色と期待を簡潔にまとめてい るが、他面、どのような生徒が入学してくるか、教師集団の体制はどうかなど、条件が悪 い場合には、逆に高校入試がないだけに、リスクの大きいものに転じかねない。同校は、 6年制中高一貫のもつ良質の可能性に賭けて挑戦することになった。

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2 教育課程の展開 さて、具体的な教育活動はどうであろうか。 「中学1年から高校3年まで各学年4 0人の 生徒は、 2人1部屋の寮で、午前6時25分に起床、中学生は午後1 1時、高校生は12 時消灯の生活を送っている。教師も多くは教職員住宅に住み、舎監として家族で寮に住み 込んで生徒とかかわっている人もいる。イギリスの寮を参考に、異学年の者で『家族』を 形成する工夫もしている。教師は教科ごとに中学、高校の両方で教えている。 6年間を見 通したカリキュラムで、中学、高校で教える内容の重複を避け、授業時間の余裕をつくり 出している。しかし、受験のために前倒しの授業をするのではなく、中学でフォレストピ アⅠ、地域基礎・高校でフォレストピアⅡ、森林文化、環境課学、天文観察などの独自の 教科・科目を取り入れている。普通の教科でも体験や実験、ディベートなどに力を入れて いる。マウンテンバイク90台を用意しており、生徒たちは土曜日に山や川に出かけて様々 な自然体験を積み、地域の人にも専門領域で教師になってもらっている。夜、舎監と近く の天文台-出掛けることもある。」という。 「小規模校であること、文部省の研究開発学校の指定を受け、学習指導要領をある程度 弾力的に運用してもよいこと、教員の配置、予算面で配慮を受けていることもある。しか しこせこせと高校入試に追われることなく、生徒の成長をじっくり待つ教育ができること の意味は大きい。普通の中学では3年で中体連の大会が終わると、部活を禁止して受験に 走って行くところが多いが、ここではそうしなくてよい。教師も中学、高校両方の事業の 研修や教材作りなので大変だが、やりがいがある。ここの高校は普通科。学力面にも力を 入れており、生徒のほとんどは大学進学を目指している。志望先はさまざまだ。数学、英 語などは高校から習熟度別のクラス編成を取り入れている。しかし受験だけの生活ではな くさまざまな体験をもとに足腰の強い生徒が育ちつつあると感じている。」という。 9 少し順を追って、教育課程の開発と展開について検討してみよう。 1994 (平成6)年度 創設であるから、全学年が揃ったのは1996 (平成8)年度で、この時までのカリキュラム 開発が第1次研究開発の時期で、次いで、第2時研究開発が、 1997-1999(平成9-ll)午 度の3年間である。全学年揃っただけでなく、中学校教育を同校で受けた生徒が高等学校 に進学して来たので、中高一貫を生かしたカリキュラム改善が必要になった段階である。 第1次研究開発の段階から、一種の総合学習である新教科を開発していて、平成9年度 の図のように、中学校1年では「フォレストピアI」、 2年と3年では「地域基礎A・B」、 高等学校では「環境と人間」という教科が設置され、 1年で「フォレストピアⅢ」、 2年と 3年で「森林文化、環境科学、天文観察」というように、森林と地域研究を柱としたカリ キュラムを編成していた。 10 これが第2次研究開発の段階になると、新教科の先行経験がある中学生が進学してくる ので、総合学習の入門的な「フォレストピアⅡ」は廃止して、高校1年から、細分化して 「森林文化、環境科学、天文観察」を課すように変更した。 1998 (平成10)年度の新教

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科編成表を見ると、高校1年と2年は番号が付してあり、 3年は番号なしであるが、 3年 生だけ中学校での新教科の学習経験がないので、第1次の段階のカリキュラムを引き継い でいるからであるo新教科のカリキュラム構造は、中学校のそれから判断すると、 1年と 2年で基礎的な個別学習をした上で、 3年で総合的にまとめるという仕方が窺われる。カ リキュラムが完成する1999 (平成11)年になると、その構造が明瞭である。 ll 「フォレストピア構想」を受けた建学の精神と教育目標によって、独特の教科が編み出 され、一種の総合学習や卒業研究のカリキュラムが開発されたと見られる。 それでは、中高一貫を見通したカリキュラムの全体構造はどのように構想されたのであ ろうかo平成10年度までのカリキュラム構想については、次のように説明されている。 「全 体を通しての新教科・科目の学習展開については、これまで通り、生徒の発達段階を考慮 して、中学1 ・ 2年では、『触れる』ことを基本とし、年間を通して直接体験に重点を置き、 郷土の自然・生活・文化の3領域を軸教材として設定した。そして、年度末に各人が体験 を通して興味・関心をもった内容について個人研究をし、研究発表会を行った。中学3年、 高校1年の学習展開も、これまで通り、 『考える』・『調べる』ことを基本とした。中学3 年での軸教材は、 『動植物・水・地質と星座・産業・信仰と民話・民謡・民具』に焦点を絞 り、生徒の興味・関心に応じて希望する講座を選択させた。年間を通して直接体験を取り 入れながら実験、調査活動等を取り入れていき、郷土の教材化の集大成として位置づけた。 そして、これらの学習で得た成果を地元の保育所や老人施設、ろう学校との交流を通して 還元していった。また、それまで3年間の軌跡として、本校教諭の指導のもと卒業課題研 究に取り組ませ、年度末に研究発表会を行い、 『研究集録』を作成した。 高校1年でも、これまで通り、これらの学習を経て生徒一人一人の興味・関心に応じて 3科目の中から1科目を選択させ、授業実践と同時に教材開発に取り組んできた。これら の3科目では、年間を通じて、高校2年での探求活動に向けての基礎的な知識や技術等を 実験・調査活動等を通して習得させてきた。 高校2年生での学習展開は、 『探る』を基本として、平成10年度より、高校1年生の終 わりに各個人で設定した研究課題を探求していく活動に1年間の全てのフォレストピアの 授業時間をかけて取り組ませ、他学年と同様に年度末に研究発表を行った。また、中学3 年時の経験を活かして、 『研究集録』を作成させた。 高校3年生は、平成9年度までの学習展開と同様に、 『広める』ことを基本とし、それ までの学習で得た体験の経験化という観点から、本校以外の地元の小学生に向けて『公開 講座』という形で広める表現活動に取り組ませた。」という。 12 触れる(中学1年2年) -考える・調べる(中学3年・高校1年) -探る(高校2年) -広める(高校3年)ということが各学年段階の位置付けである。さらにこれが第2次研 究開発の最終年度(1999年)では、すべての高校生が中学校段階から進学してきており、 カリキュラムの成果を受けているという判断で、より一整備したカリキュラム構造をとり、 最後を、 「フォレストピア学」として、研究論文をまとめ、かつ広め交流することが企図さ

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