教育実践研究4.3−00 1998
みんなの誕生パーティーAETとのティームティーチング
による小学校における国際理解教育の改善
Everyone's Birthday Party! KAMISHIBAI
Improving Team-teaching with an AET (Assistant English Teacher) for International Understanding in Primary Schools
ジョセブアダムス 青柳小百合 澤本和子
ADAMSJoseph AOYAGISayuri SAWAMOTOKazuko
概要:本稿では,筆者らがAET(Assistant English Teacher)と担任 教師とがティーム・ティーチングにより実践することを前提に開発し てきた,小学校のための国際理解教育,英語教育及び歴史教育に関わ る総合学習カリキュラムの概要を紹介し,そのうちのひとつ「みんな の誕生パーティー」の実践について報告する。 キーワード:AET,ティーム・ティーチング,国際理解教育,英語教育, 歴史教育,総合学習 1.はじめに 文部省が実施している国際教育プログラムJET(Japan Exchange and Teaching)では、現在海 外から5000人以上のAET(Assistant English Teacher)を招き,その内の半分以上は子ども たちに国際理解や簡単で基礎的な英語の紹介をするために、中学校と小学校の両方を訪れてい ます。大変素晴らしく思われる計画ですが、1998年度のJETプログラムのアンケートに よると、半分以上のAETは仕事が少なく、仕事をしても、自分の能力を発揮できなかったり、 仕事の目的を達成できなかったりしていることが示されています。しかし、現在の学校現場では、 しばしば、その目的が受け入れられない状況が多く、その理由として少なくとも以下の2つが 考えられます。(1)現在の教育課程の中に国際理解の時間が具体的に位置づけられていないこ と。(2)子どもたちとうまくコミュニケーションをとるためのAETの日本語の話す力が十分 ではないこと。 これら2つの理由により、子どもたちもAETと同様に、学習する意欲ややる気が少なくな る傾向があると思われます。また,中学校においても似たような問題が,AETが英語の授業 以外の教育活動に参加できる活動は少ないと思われます。 この問題を解決するために、筆者らは,小学校のためのカリキュラムと小中学校のための総 合的なプロジェクトを開発してきました。本稿では,そのうちのひとつ「みんなの誕生パー ティー」のカリキュラムについて報告します。 これらのカリキュラムは,筆者の一人であるアダムスがAETとして勤務した,山梨県中道 町、豊富村の小学校3校と中学校1校における3年間(1995−98年)の経験をもとに,中道南小 学校の青柳とともに開発したものです。また,ここで開発した小学校カリキュラム「みんなの 誕生パーティー」を改善するにあたり、筆者の一人である澤本が企画し,愛知教育大学の有田 教授らを講師として開いた1997年夏の山梨大学公開講座「教員リフレッシュ研修「ベテラ ンに学ぶ」」に多くを負っており,感謝いたします。 71
教育実践学研究4.3−00 1998 2.広い見方から交換活動まで:AETと一緒に小中学校で、世界の印象を育てる 小学校においては、AETがクラスに慣れたり役に立ったりするために、いろいろな教科の 中でAETも参加していけるような、よく考えられた総合的なカリキュラムを取り入れていけ ばよいだろうと考えます。しかし、今までは、そのようなAETをサポートするカリキュラム (教育課程)が開発されていませんので、AET自身が一人で授業をしなければならない状況が 多く見られます。ほとんどのAETが子どもたちに地図などで自分の国の紹介をみせたり、英 語の歌やゲームを続けたりしています。このようなやり方がうまく続けば悪くはないのですが、 10−12回位授業をしていくと、外国人が来ているという事がめずらしくなくなり、子ども たちも慣れてくるので、子どもたちはもっと深い内容がほしくなってきます。例えば、アダム スは授業中、子どもたちから次のような質問を受けました。 ・「外国人は、日本人と同じ地球から来たの?」 ・「なぜ、たくさんの言葉があるの?」 ・「どうして英語の勉強をしなくてはいけないの?」 これらの質問はかわいいと思うかもしれませんが、もっとよく見てみると、子どもたちが深い 印象を受ける時期にもかかわらず、よく考えられた正しい世界紹介をしてもらっていなっかった り、曖昧に教えてもらっていたりしている事が考えられます。これらの子どもたちの質問によい 答えが出きる事は、子どもたちに広い夢をもつ自信やグローバル社会に参加する力の基礎となる と考えます。アダムスはハワイ大学院の歴史の修士をもち、日本語もいく分できますので、地理 や世界史の基礎を子どもたちに教えるカリキュラムを作ってみようと思いました。できれば、子 どもたちが地球上の生命や人間の同じ起源に感謝できること、英語はコミュニケーションの1つ の道具として気付く事をのぞんでいます。以下のリストの1∼4は,小学校低学年や高学年向け の,いろいろな教科と組み合わせ、ティームティーチングでも使えるカリキュラムです。 これら以外のクラスやクラブ活動においては、子どもにとって英語を使う目的がなければ、英 語学習をあきらめたくなるというのは当然です。AETと会話するために英語を使う必要があ る,という理由もなり立ちますが,それだけでは十分ではないと思います。子どもには違う理 由も必要だ思います。マルチメディアと他の教科を組み合わせる事がひとつの解決法です。イ ンターネットを使うと,外国の学校と簡単に連絡できるので、子どもが英語を使う機会は広が ります。使いやすい先生の電子メールサービス(メーリングリスト)で、交換プロジェクトを 発表する事ができるし、海外の先生とうまく予定を取り合うこともできます。リストの5には、 小中学校で行ったいくつかの例をのせました。 子どもに行ったアンケートを見ると、国際理解の基礎になったと思います。これはアダムス 自身の考えですが、子どもたちの反応は、1年後でも、大変良かったです。宇宙にある地球の 分かりやすい話、世界史の中の地球上の生命と人間のつながり、民話、現在の世界の楽しい話 はこの基礎になっていると思います。このような背景があると、前より、子どもたちは外国人 とつながっている気持ちを持つことができ、そして英語は、もっと世界を知るための道具の1 つになって来たと思います。AETの仕事も面白くなり、自分の能力を発揮出来る場面が増え、 仕事の目的を達成しているという気持ちを持つ事ができます。このカリキュラムはまだ開発中 ですので、近い将来、大学の教育学部の指導の元で、附属小中学校などで開発を続ける希望を 持っています。
ジョセブ・アダムス・青柳小百合・澤本和子’みんなの誕生パーティーAETとのティームティーチングによる小学校における国際理解教育の改善 カリキュラムリスト 1,「スクールバスロケット」(紙芝居で簡単な地球や宇宙の地理の紹介)(1学期、4時間) 2.「みんなの誕生パーティー」(やさしく宇宙や地球の生命の歴史を紹介)(2学期、4時間) 3.「亀の島」(人間と自然環境のつながりから作られている東南アメリカのチェロキーインディア ンの民話)(3学期、1時間) 4.「イングリッシュ・エクスプローラーズ」(英語がどうして世界中に広がったか、世界地理を 楽しむ。)(3学期、2∼5時間) 5,「小中学校での交換活動や他の教科との関係」 ・小学校低学年(1年生)、ボストンUSAの小学校1年生との交換活動 ・高学年フランスとの交換活動 ・中学校の英語と社会科、USAと韓国との交換活動 ・小中学校のクラブやボランティア活動 3.「みんなの誕生パーティー」Everyone’s Birthday Partyの概要 (やさしく宇宙や地球の生命の歴史を紹介) みんなの誕生パーティーは、上記リスト1.の「スクールバスロケット」よりもっとオリジナ ルでつながっている誕生のシリーズとして、宇宙の歴史や地球上の生命を簡単な見方で教えて います。物語は誕生パーティーをむかえた6歳の男の子の日記を通して話されています。少年 は、パーティーに来ていた友達がちょうど彼の年齢と同じ数だと気づき、一人一人を1歳とし て数えます。部屋の中にいる人の数で年齢を分けるという方法は、この後、一番輝いているお 星様が誕生冒険で子ども達をビッグバースデールームに連れていった時に再び使われます。こ こでお星様は、みんなの誕生がどのようにつながっているか説明するために、誕生パーティー にきていた6人の子どもたちを含めた30人で自分の年を分けてみます。そして、最後の1人、 5億年を表している人をもっと詳しく見ます。上半身の各部を1億年ずつに分けてみたり、地 上の生命の物語を調べてみたりします。人間の誕生は、最後の手首の1cmのところで登場しま す。さらに、50万年前から現在まで、世界各地に移住した人間の物語を見るために1cmを拡 大してみます。物語は、特に、人々が移住した先の新しい環境によって、肌の色や目の形が変 わってきたことにふれています。この物語は3部で構成されており、3∼4時間で教えること ができます。 4.授業の目的と指導計画 1.自分の誕生は、宇宙の誕生、地球上の生命の誕生とつながっている事を知る。 2.人間の誕生と、人間が世界に移住して来たことを知る。 3.自然環境により、人々の肌の色、目の色、形などが変わって来た事を知る。 第1次(紙芝居1、2、3)ABirthday Party:だれでも誕生日があり、星にも誕生日があること を知る。 ・ 「How old are you?」/「I am 」の質問と答えの練習。紙芝居に入りやすくするため、導 入時に行う。誕生日をむかえた時の喜びや「何歳になったのか?」聞いたり答えたりする内容。 ・年の数え方を人の数で分けてみることに気づく。(1人を1歳としたら、6人で6歳という数 え方。1人2歳としたら6人で12歳。第2次の宇宙の誕生から自分の誕生までの長い時間を 73
教育実践学研究4.3−OO l998 想像させるための前段階として簡単に扱う。) ・自分の誕生日が星の誕生日とつながっていること、どのようにつながっているのか知りたく なる。(バースデーケーキを食べた後、皆で流れ星を見つけにいくと、男の子が星から自分にも 誕生日があることを教えてもらい驚く。星の誕生日に興味をもつこと。) ・紙芝居1、2、3に出てくる7つの言葉(Everyone, Birthday, Party, How, old, are, you)を覚え るためにカルタゲームをする。 第2次(紙芝居4、5)Big Birthday Room:宇宙の誕生、地球上の生命の誕生のつながりの冒険。 ・星が子どもたちを宇宙にある「ビッグバースデーズルーム」に連れていく。みんなの誕生日 のつながりを理解できるために、150億歳という星の年を1人5億年として、30人で分けて 表している。(学年に応じて、こどもたちが、この分けかたを黒板で調べる。) ・1番目の人(宇宙の誕生、ビッグバーン)… 。英語の勉強はBig Bang, First. ・21番目の人(太陽系や地球の誕生、スーパーノバ)… 。英語の勉強はSecond, Third, Fourth, . . .Twenty−first, Super−Nova) ・28番目の人(オゾン層の誕生)… 。英語の勉強はTwenty−second, Twenty−third,,,.Twent)J− eighth, Ozone, Land Life) ・30番目の人(紙芝居5ページ)が大きく登場する。学級の子どもたちは立って五億年が自分 の体のどの部分で5つに分けられているのか知り、5億年の中の大事な誕生をみる。手首から ひじ(魚の誕生)、ひじから肩(木や虫の誕生)、肩から肩(恐竜の誕生)、肩からひじ(花や哺 乳類の誕生)、ひじから手首(霊長類、人類の誕生)。英語の勉強はWrist, Elbow, Shoulder, Flsh, Trees, Bugs, Dinosaurs, Flowers, Monkeys, Dogs, Cats, Bears, Humans) 第3次(紙芝居6、7、8、9、10、11)Human Birthday Adventure(人間の誕生の冒険): 簡単に人間の家系図と世界中に広がった人類の移住の話。 ・地球上での人類の歴史全体を見るために、人類が誕生した部分の1cmを更に拡大してみる (紙芝居6)。 ・氷河期の間の寒冷な気候のため、人類の歴史のほとんどはアフリカに住んでいたことを知る (紙芝居7)。 ・子どもたちは、もっと詳しくアフリカに早くから住んでいた人間の事やその時起こる世界中 に広がっていく家族の移住の物語を見る:ホモニド(ひいじいちゃん、ひいばあちゃん)、ホモ ハビリス(祖父母)、ホモエレクトス(両親)、ホモサピエンス(子どもたち)(紙芝居8)。 ・氷河期の終わり頃、兄のジャワとペキン、赤ちゃんのネアンダはアジアやヨーロッパへいき、 アフリカに戻ってこなかった(紙芝居9)。 ・サピちゃんがお母さんになり、たくさんの子どもを持った頃、彼女は兄弟たちの行方を知り たくて、子どもたちをあちこちに送った。この頃までには、氷河期が終わり、サピちゃんの子 どもたちは世界中を旅する事ができた。時がたち、子どもたちの目、肌、髪は彼らがいった先 の新しい環境に合うように変わってきた。これらの変化は、今日の私たちの違った顔、違った 肌の色の価値を説明しやすい(紙芝居10)。 ・子どもたちがみんなの誕生日がどのようにつながっているか分かった時、ミスタースターは 来年また来ると約束しながら別れをつげる(紙芝居11)。 第4次物語の復習:子ども自身の言葉でもう1度物語を思い出し物語でいくつかのゲームをす る(カルタとビンゴ)。
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