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企業グループ人事と労働組合の役割(蜷木實教授追悼号)

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企業グループ人事と労働組合の役割

藤  村  博  之

1.この小論の目的  この小論の目的は,企業グループを単位とした人事管理において,労働組合 がどのような役割をはたしているかを明らかにすることである。  最近,企業グループを単位として人の配置を考える企業が増えている。一つ の企業内だけではなく,資本や取引の上で密接な関係にある企業群を単位とし て,人の配置を考えようというものである。経営資源の重要な一要素である「ヒ ト」が,従来の企業という枠を超えて移動している。  企業グループによる人事労務管理を行うことは,企業側,労働者側双方にメ リット,デメリットをもたらす。企業グループによる人の配置は,これまで以 上に人材の有効活用を可能にする。ある企業で必要となくなった技能や技術で も,グループ内の他の企業ではまだ十分役立つといった場合が考えられるから である。前向きにせよ,後ろ向きにせよ,「雇用を守る」という点では双方にと って有利に働く。  しかし,グループ内の異動によって,労働条件が異なる企業に配属される場 合がある。同一企業グループとはいえ,労働条件が同じであるとは限らない。 所定労働時間数や年間休日日数は企業ごとに少しずつ違う。労働条件が向上す る場合は問題ないが,低下する場合,その調整をどう行うかをはっきりさせて おく必要がある。ここで,労働組合の役割が重要になってくる。  労働組合の役割は,単に労働条件の低下に目を光らせるだけではない。個々 の労働者のキャリア形成という視点も必要である。関連企業に出向することが, その労働者の生涯キャリアにとってどういう意味を持つのかという観点から,

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出向問題に取り組まなければならない。  そこで,この小論では,特に次の3つの点に注目して,出向と労働組合の関 係を考えてみたい。 (1>労働条件の低下を労働組合はどのように守っているのか。  子会社に出向する場合,年間労働時間や休日日数といった基本的な労働条件 が低下する可能性がある。経営側の都合で異動させられるのであるから,組合 として何らかの措置を要求しなければならない。出向にともなう労働条件の低 下について,組合が経営側とどこまで交渉しているかを明らかにする。 (2)企業グループとしての労働条件の向上  分社や新会社設立という形で従業員の一部が子会社に移っていく。あるいは, 下請けや系列の会社に従業員が出向していく。このような企業の枠を越えた異 動に対処する方法として,グループ企業全体の組織化という方法がある。労働 組合の組織率低下が著しい現在,グループ企業の組織化は重要である。中核と なる企業の労働組合が,グループ企業の組織化にどう取り組んでいるかという 点も重要である。 (3)キャリア形成の視点  教育訓練を目的として,子会社に出向させる場合がある。本社の巨大な組織 の中にいると,ある期間に経験できる仕事は,企業経営のごく一部でしかない。 しかし,規模の小さな会社だと,ひとりであらゆる業務に対応することを要求 される。これが,本人の人材形成になるというのである。  子会社で担当する仕事は多様であり,企業経営全体を経験するよい機会であ る。これは紛れもない事実だが,すべての出向が,その従業員自身の生涯キャ リアにとってプラスになるとは限らない。本社で取り組んできた業務をあと数 年続ける方が,本人のキャリア形成上,より重要な場合もあり得る。労働組合 は,組合員のキャリア形成という視点から,出向の適切さをチェックする役割 を担っていると考えられる。この点について,組合はどこまで取り組んでいる かを明らかにしたい。

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企業グループ人事と労働組合の役割  183 2.これまでの研究 2−1 雇用職業総合研究所の調査  企業グループがどうして形成されるのか,企業グループ内の人材配置はどの ように行われているのかといった点については,すでにいくつかの研究がなさ れている。前者の研究は,わが国の財閥に関する研究に端を発し,あらためて 紹介する必要もないほど数多くの蓄積がある。  他方,後者の企業グループ内人事については,雇用職業総合研究所(以下,        1) 「職研」と略称)が1980年代半ばにおこなった3つの実態調査と,それを分析          2) した永野の一連の研究がある。これらの調査や研究は,企業グループ人事の実 態を明らかにした初めての業績であり,豊富な情報を提供してくれる。ただ, グループ人事における労働組合の役割については,後に詳しく述べるように, ほとんどふれられていない。ここでは,後の考察との関連で,親会社と系列会 社間の人事交流の現状を端的にまとめてある図一1を紹介するにとどめる。       3)  この図は,移動元企業を対象に1986年10月頃実施した調査をもとに描かれて いる。図一1から読み取れる点を簡単にまとめると,次のようになる。 (1)親会社は,平均従業員数8,303人の大企業で,関係会社を22社持っている。 (2襯会社の従業員のうち出向している者の割合は,全体では7%,管理職に限る  と17%である。 (3)関係会社には平均230人が働き,そのうち親会社からの出向者の割合は10。5  %,転籍者の割合は4.8%である。  この調査に回答した企業は,従業員数8,000人を越す巨大企業であり,20以上 の関連会社と人事交流をおこなっていることがわかる。この図は,すでに述べ たように,1980年代半ばの状況を表すものであり,この調査からすでに5年が 1)雇用職業総合研究所[1986],[1987a],[1987b]。 2)永野[1989] 3)全上場企業1,843社を対象とした調査で,有効回収数は410社,有効回収率は22.2%だっ た。

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        図一1 親会社と系列会社間の人事交流の現状 親会社 (8,303人 平均年令36才) 従業員総数対55年比4.6%増 外部 への出向者7% 〔役員の12%’①管理職の17%〕 関係会社(22社) 親会社からの出向者 親会社からの転職者

     10.5% 4.8%

・役員の47%*② ・管理職の27% ・50才未満が     70e/. ・役員の47% ・管理職の13% ・50才未満が     6se/.

(230人 平均年令37才)   対55年比6.7%増 関係会社から外部 への出向者6% (孫会社への   出向者は4%) 親会社の4分の1に 高齢者会社あり(平均2.5社) 延370人雇用

(注)①二在籍役員に占める出向中の醤油の割合である。管理職も同じ。   ②:在籍プVパー役員に占める出向役貝の割合である。管理職も同じ。 [出所]雇用職業総合研究所[1986]p.19。 経過している。この間,企業グループを単位とした人材配置の傾向は,強まり こそすれ弱まっていない。最近の状況は,この図にあらわれた以上のものであ ろう。 2−2労働組合の役割  職研の3つの調査は,企業グループ人事に労働組合がどうかかわっているか についてはまったく調べられていない。企業グループ人事と労働組合の役割に ついて論じているのは,永野[1989]と関西経営者協会[1991]くらいである。  永野[1989]の中心となる内容は,先に紹介した職研の3つの調査から,企 業グループ人事を詳細に分析することである。その中に一部,労働組合の取り

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       企業グループ人事と労働組合の役割  185 組み事例が報告されている。これは,永野自身が新聞社と都市ガス会杜の労働 組合でおこなったききとり調査に基づいている。  それによると,新聞社の労働組合は出向に対してたいした発言をしていない が,都市ガス会社の組合は,出向によって組合員が不利益を被らないように, 新会社の設立に当たって会社側と次の項目について話し合うという。①事業内 容,②その業界における同業他社の状況,③売上計画・要員計画,④出向者の 業務内容・労働環境,労働条件,福利構成等,⑤プロパー社員の就業規則,給 与規則。また,出向組合員を専門に扱う支部を設け,出向社員のニーズにあっ た活動が展開できるように配慮している。労働組合によって,取り組みに大き       4) な差があることがわかる。  もうひとつの資料,関西経営者協会の調査は,会員企業約1990社に対して出 向の実態と制度的な対応を調べたものである。調査は1990年秋に実施され,回 答企業は280社であった。この調査の中で,出向発令の手続きに際して労働組合 との関係はどのようになっているかをたずねている。その結果は,次の2点に まとめることができる。 (1)組合との関係は,通知するだけ(36.4%),事前に協議する(30.7%),同意  を得る(20.0%)の順で,「組合とは協議せず,通知もしない」という会社は  8。6%のみだった。 (2)規模別では,1000人以上の大企業で「通知のみおこなう」割合が高く(50.8  %),300人未満の企業では「事前に協議する」割合が高くなっている(41.0  %)o  これらの研究や調査は,労働組合の取り組みの一端を紹介しており,貴重で ある。しかし,労働組合が出向に対してどのような考え方を持ち,組合員の権 利をどのように守ろうとしているのか,あるいは守っていないのかは明らかに なっていない。  企業グループを単位とした人事は,これからも盛んにおこなわれると予想さ れる。出向に対する労働組合の取り組みは,今後ますます重要になってくると 4)永野[ユ989]p, 。

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思われる。 2−3事業所間配転と出向の関連性 仁田の研究  企業グループ人事は,まったく新しい問題かというと,そうではないかもし れない。出向は,事業所間配転との共通性が多いように思われるからである。 わが国の企業では,以前から,工場の新設や統廃合にともなって,従業員の事 業所間配転が行われてきた。配転は,同じ会社の中で行われるため,基本的な 労働条件の違いは問題にならない。ただ,残業の過多や昇進の可能性といった 細かい点になると,同一企業でも事業所間で少しずつ異なるのが実状である。 そこで,わが国の労働組合は,事業所間配転に際して,組合員に不利益が生じ ないように一定の発言をしてきた。  出向と事業所間配転がほとんど同じものだとすれば,出向に対する組合の取 り組みを考える際に,事業所間配転の経験が参考になるはずである。この分野 に関する研究は多いが,代表的なものとして仁田[1988]がある。仁田の研究 は,ある製鉄会社の労働組合が,どのような形で経営の意思決定に関与してい るかを丹念に明らかにした労作である。この本の第3章が,配置転換の問題を 扱っている。  仁田は,まず,経営側の事情によって労働者を動かす場合,どのような種類 があるかを整理する。掛を越える移動は,移動期間と移動範囲を基準として,          5) 次の4つに分類される。 (イ)事業所内における一時的移動(応援) (ロ)事業所間の一時的移動(出張または出張応援) (A)事業所内の恒久的移動(配置転換) (=)事業所間の恒久的移動(転勤) また,これらは,その規模の大小によっても分類される。それは,個別の移動 の場合と大量の移動の場合で,労働組合の対応が異なるからである。 5)仁田[1988]pp.165−166。

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      企業グループ人事と労働組合の役割  187  労働組合は,これらの移動に対して,①終身雇用の確保,②配置転換にとも なう犠牲を最大限排除,③効率的な労働力配置の確保という3つの原則で対応 してきた。3番目の原則は,組合員の生活向上のためには「企業の発展」が必 須条件である,という認識を表している。  配置転換に関する基本的な枠組みを紹介した後,仁田は,A製鉄所の工場間 でおこった配置転換計画に関する労使間の交渉を詳細に分析する。この仁田の 研究を読むと,日本の労働組合は,実に細部にわたって労働条件の交渉をして いることがわかる。 配転に対する組合の対応  仁田が対象としたA製鉄所の労働組合は,配置転換の交渉をおこなう際,鉄 鋼労連の「配置転換に関する統一取扱い基準」を参考にしていた。この「基準」 は,大きく5つの部分からなっており,出向に対する労働組合の役割を考える 場合にも,とても役に立つ。ここでそのすべてを紹介する余裕はないので,こ       6) の章に関連するところだけ抜粋してみよう。 〈事前協議の確立> 1.配転計画については,必ず計画変更可能な段階で,事前に組合に提案させる。 2.配転に関係する職場の要員計画や長期にわたる見通しを明らかにさせる。 3.配転に関するいっさいの苦情は,団交によって解決する。 〈確保すべき一一ee的条件> 1.本人の希望を尊重すること。 2.本人の技能・経験・身体的条件等適性について十分に尊重すること。 3.配転対象職場を見学させ新職務選択の際の知識を事前に十分に与えること。 4.基準内賃金については,水準を低下させないよう減収補償措置を確立するこ  と。 (5−7省略) 8.配転は本人の同意了解を得て行うこと。 9.条件闘争の一項目として,配転にともなう苦痛への代償という意味での配当 6)仁田[1988]p.175−176。

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 手当(一時金)など,何らかの経済的な譲歩をかちとっていくことも,条件  に応じて考慮する。  以上の点を簡単にまとめると,次のようになる。配転の決定にあたっては, 組合との事前協議を確立し,本人の意思を尊重する。また,配転によって労働 者が不利益を被らないように最大限配慮する。これは,そのまま出向者の決定 に適用されてもよさそうなものであるが,現実にはそうなっていないようであ る。  仁田も,出向・派遣をこの著書の対象からはずしている。その理由を,彼は 次のように述べている。関連会社への出向や派遣は,配置転換とは別個のもの として取り扱われており,「社外勤務協定」という独自の規則によって律されて  7) いる。実は,A労組では,ホワイトカラーの定期異動を協議対象から除外して いる。出向・派遣がもっぱらホワイトカラーに関係する事項であれば,労働組 合が特に発言していないこともうなづける。ただ,配置転換と出向がどう違う のか,出向はホワイトカラーだけのものなのか,という点は具体的に述べられ ていない。出向と配置転換の関係を明らかにする必要がある。 3.最近の企業グループ人事  職研の一連の調査が行われてから,すでに5年以上が経過し,企業グループ 人事の状況は相当変化したと考えられる。そこで,この節では,現在手に入れ ることのできる3つの全国調査と最新の制度調査1つを使って,最近のグルー プ人事の状況を描き出してみたい。  ここで利用する調査は,労働省が1987年に実施した「就業形態の多様化に関 する実態調査」(以下,「就業形態調査」と略称),「雇用動向調査」(1988年から 90年),「雇用管理調査」(1990年),それに一部をすでに紹介した関西経営者協 会の「出向に関する調査」(以下,「出向調査」と略称)である。これらのうち, 「就業形態調査」は実施時期がやや古いが,出向に関する初めての大規模調査 7)仁田[1988]p.180。

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       企業グループ入事と労働組合の役割  189       8) であり,個人調査も含んでいるのでここでとりあげることにした。 3−1 出向者数 増える出向者  全国にどれだけの出向者がいるのかという問いに直接答えてくれる統計は, 「雇用動向調査」である。ただし,「雇用動向調査」が出向者数を調べるように なったのは,1988年以降である。それ以前の状態はよくわからない。わずかに 「就業形態調査」が,1987年の常用労働者30人以上の事業所に働く出向者の数 を,男子199,000人,女子25,300人と報告しているだけである。1987年当時,男 女計で225,100人が出向者として働いていたことになる。これは,当時の30人以 上規模の就業者数の1.2%(男子は1.7%,女子は0.4%)にあたる。  「就業形態調査」によって出向者の年齢分布をみると,男子の40歳代層が最 も多く,全体の26.3%を占めている。以下,男子50歳代25.6%,男子30歳代20. 2%,男子20歳代11.2%となっている。女子で最も多いのは20歳代で,出向者全 体の5,3%を占めていた。  1980年代の終わりに,出向者数は急速に増加した。「雇用動向調査」による と,規模5人以上の企業に在籍している出向者は,1988年267,300人,89年316, 900人,90年399,700人となっている。88年から89年目かけては18.6%,89年か ら90年にかけては,実に26.1%の増加を示した。「就業形態調査」との関連で規 模30人以上に限定すると,88年233,900人,89年273,800人となる。90年につい ては,規模別の数字が掲載されていないために,残念ながらわからない。この 数値から伸び率を計算すると,87年から88年3.9%,88年から89年17.1%とな る。これだけの統計から断定的なことはいえないが,出向者の増加は,88年を 境にして急速になったと予想される。 規模別年齢別の動き 8) 「就業形態調査」は,事業所調査と個人調査の2つの部分からなっている。事業所調査 は,常用労働者規模30人以上の事業所から約8500事業所を抽出し行われた。他方,個人調 査は,事業所調査の対象となった企業から約30000人を抽出し,実施された。

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 図一2は,「雇用動向調査」の出向による男子離職者数を規模別年齢別に示し たものである。この図から,次の点を読みとることができる。 (1)企業規模別にみると,1,000人以上での出向者が最も多いが,30−99人規模で  も出向は活発に行われている。 (2)年齢別には,1990年の45−54歳層での大幅増加が目立つ。 (3)出向者の年齢は,大規模では中高年者が中心であるが,規模が小さくなるほ  ど若年層が:襲える傾向が認められる。  出向は,大企業の中高年者だけのものではなく,小規模企業や若年層にも広 くみられる現象であることがわかる。出向者が小規模企業の若年者に多いこと は,特に女子において顕著である。1990年の出向を理由とする女子の離職者は 15,800人であったが,5−99人規模での出向者が全体の69.0%を占めた。産業別 では,卸売業とサービス業がそれぞれ4,700人,製造業の中の衣服・その他繊維 製品製造業2,400人が目立って多い。  女子出向者のもうひとつの特徴は,5−99人規模の企業の20−29歳層の出向者 が大幅に増加したことである。1988年に2,500人だった出向を理由とする離職者 は,89年に1,000人に減少するが,90年には6,000人と大きく上昇した。どうい う仕事をしている女子が出向の対象となっているのかという点は,今後明らか にしていくべき課題である。 3−2 出向者の属性 出向者の職種  「就業形態調査」は,出向者がどういう部門で働いているか,どういう事業 所に勤めているか,という点を調べている。その結果をまとめたのが,今一1と 表一2である。部門別の労働者数は男女別に集計されていないので,表一1は男 女計の数値となっている。  まず,部門別では,生産部門への出向者数がもっとも多くなっていることが わかる。通常,出向というと,事務部門の管理職やある種の専門職的な人を想 像するが,実態はだいぶ違う。出向している人数でいうと,生産部門が第1位

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        企業グループ人事と労働組合の役割  191 図一2 規模別年齢別男子出向者上

川㎜

 10

0 0 0 5 0    む

人oo

 4

0 (11 ,100) 1,000入∼ (1988) (1989) (1990) 300 ∼999人 (1988) (1989) (1990> 20 30 45 55 20 30 45 55 1 s i i j s s s 29 44 54 59 29 44 54 59 歳     100∼299人 (1988) (1989) 20 3e 45 55 i s i s 29 44 54 59  (199e) 20 30 45 55 s i s s 29 44 54 59  (1988)

灘罵撫垂

30∼99人  (1989) (1990)  20 30 45 55 20 30 45 55 20 30 45 55  s s j i i s s s I s j s  29 44 54 59 29 44 54 59 29 44 54 59 (出所) 「雇用動向調査」 20 30 45 55 20 30 45 55 s s j s s s s s 29 44 54 59 29 44 54 59

:1灘霧

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       表一1 部門別出向者(男女計) 構成比 (千人,%) 出向者数 事務・管理部門 研究・開発部門 生 産 部 門 営業・販売部門 その他の部門 59.8 24.3 64.0 51.0 22.8 26.9 10.9 28.8 23.0 10.3 計 221.9 100.0 (注)1)部門別の数値は,発表されている統計表からは男女計しかとれない。   2)各部門の構成比から出向者数を計算しているので,出向者数の合計は発表    されている数値とは若干異なる。 十一2 事業所種類別出向者 男子出向者数 構成比 女子出向者数 (千人,%)  構成比 事務所 工 場 研究所 営業所 店 舗 その他 73.1 76.9 4.6 24.7 6.1 13.4 36.8 38.7 2.3 12.4 3.1 6.7 7.1 8.3 0.4 4.8 2.8 1.1 29.0 33.9 1.6 19.6 11.4 4.5 計 198.8 100.0 24.5 100.0 で,事務・管理部門は第2位である。営業・販売部門も決して少なくない。  次に,出向者が働いている事業門別の人数を三一2で見てみよう。表一1と対 応して,男女ともに工場で働いている出向者がもっとも多く,事務所がそれに 続いている。女子の場合,店舗で働いている出向者が多いことが注目される。 出向者の役職  出向者の役職は,「就業形態調査」と関西経営者協会の「出向調査」によって 知ることができる。まず,「就業形態調査」は出向者の役職構成を次のように報 告している。部長・次長17.7%,課長・課長代理22.9%,係長9.3%,主任9.8 %,その他の役職5.0%,非役付35.3%。課長以上の役職についている人を非組 合貝と考えると,組合員資格を持つ人の割合は59.4%となる。これらの数字は,

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       企業グループ人事と労働組合の役割  193 出向先での役職を表しており,出向直前の役職はこれよりも低いと予想される。 この前提を考慮にいれると,出向者のうち組合員レベルの人々が占める割合は, 優に6割を超すと考えられる。  「出向調査」は,この点をより明確に示している。出向前の役職と出向先で の役職の両者を調べているからである。まず,出向直前の役職をみると,部長 7.3%,課長14,6%,その他78.1%となっている。他方,出向先での役職は,役 員7.9%,部長9.0%,課長13.5%,その他69.6%である。出向先では,上の役 職につく割合が高いことがわかる。  これら2つの調査結果から,出向者の3分の2から4分の3は非管理職であ り,組合員資格を持つ人たちであることがわかる。出向者の多くが組合員であ る以上,労働組合は出向者の労働条件に目を光らせる必要がある。出向に対す る労働組合の役割に注目するひとつの理由が,ここにある。 出向の目的  企業は,従業貝をなぜ出向させるのだろうか。平成2年度の「雇用管理調査」 は,年齢別・規模別に出向の目的をたずねている。図一3は,その結果をまとめ たものである。企業規模と年齢によって出向の目的がどのように異なるかを整 理してみよう。 (1)29歳以下の従業員を出向させるのは,本人の能力向上のためである。  出向目的は,年齢によって大きく異なる。特に若年層の出向において重視さ れているのは,本人の能力向上である。小さな会社に行くと,大きな会社では なかなか経験できないようなことが日常的に経験できる。短期間で幅広い経験 をするには,小さな組織で働くに限ると考えられる。 (2)50歳以上の出向目的には,前向きのものが比較的多い。  前向きの出向とは,「III.出向先での経営指導・技術導入」,「IV.出向先企業 との結びつき強化」,「V.経営の多角化により新会社設立」の3つを指してい る。高齢者の出向というと,とかく「役職不足」や「余剰人貝対策」が考えら れがちだが,この調査をみる限り,企業は30−49歳の中堅層と同じような形で50 歳以上の出向を考えていることがわかる。ただし,経営の多角化による新会社

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(o/o) 50 蜷木實教:授追悼号(第276・277号)         図一3 企業規模別    1.本人の能力向上 (29歳以下)(30∼49歳) (50歳以上) O   u1 目       u1 目       a H   o  o  ω  一        〇  〇  ω 目        o o  ω  一   〇  〇  〇  〇  co     o  o  o o  ω     o o  o  o  co         む  む  む          》 l l l l  >圓 i l l l  > ∼ l l ∼   1野888  1←8眠8   1再888    §罪罪〉  馨罪罪〉  §雰甥〉    〉       〉       〉・ IIL 出向先企業での営業指導・技術導入 ・年齢別出向の目的   II.出向先企業の人手不足の補充 C29歳以.ド) (30∼49歳) (50歳以上) うむ           む            

%8 7 6 5 4 3 2

0  0 1 t[ ト昌      9[ F一      り1 P o o o −        o o らΩ 一        〇 〇 ee 一 む む む む ね      くつ む む しつ    む     む くね   む     む         む       む   > 1 ∼ l l  > l l l l  > l l l l l一“888  1←888  1倉$88  §雰i9>  §罫雰〉  馨雰雰〉  〉       〉・       > IV.出向先企業との結びつき強化 (29歳以下) (30∼49歳) (50歳以上) (29歳以下) (30∼49歳) (50歳以上) σ1 旨凶      U1 ト‘      σ1 N o o w −       o o ω 目        o o ω μ む       む ね     む  む       ゆ      ね む  む      む     む     む   む     む        〉 ∼ 1 ∼ 1  >・l i l l  》 l l l l i∫」888  1∫L…888   1吟塗88  §雪罪〉  §異罪〉  §同罪〉  〉       〉       〉・ σ1 トr己      り1 トL      91 ト占 。  o  ω  H         o  o  co −        o  o しQ H む  む  む む  ゆ     む     む  む ゆ     む  む    む  の   む む       む   む       む   む む   〉・l l l ∼  〉・l l l l  >・∼ l l l l←$旨8   1∫L888   1←888  §雰雪》  §雪雪〉  §罪雰〉  》       〉・      〉

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企業グループ人事と労働組合の役割 195 ︶凸U %7 ︵ 50 o V.経営の多角化により新会社設立 VI.役職ポスト不足解消 (29歳以下) (30∼49歳) (50歳以上) (29歳以下) (30∼49歳) (50歳以上)    ωO∼8>   同OO∼b。8>   9ΩOO∼りΦO㌔r μ’OOO一ら曜OりO>

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(o/o) 50 VII.定年以降の   雇用機会提供   (50歳以上) V皿.余剰人貝対策 (30∼49歳) (50歳以上) O    O1 一      ⊂川 同      σ1 ト▲    o o q● 回      o o  Oo −       o o co 一    む む む む ね       む む   に    む     む い    む       む       む      む      む む        〉・l l l l       >・1 1 1 1  》l l l l     l.A 888       1 e霧88        1 .“’ミ888     選ヌ罪〉     §罪雰》  §雪雰〉     〉      〉・      〉 (出所) 「平成2年度雇用管理調査」

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の設立といっても,新会社の性格や経営全体に占める位置は多様であり得るの で,内容によっては「後向きの出向」を多少含んでいるかもしれない。 (3)企業規模による差がほとんどないのは,人手不足の補充を理由とした出向で  ある。  この調査で出向理由としてあげられている項目は,人手不足の補充を除いて, 企業規模による差が大きく出ている。しかし,人手不足軽減のために従業員を 出向させる場合,年齢や規模による差がほとんどない。どうしてこのような結 果になるのか,いまのところ適当な説明が見当たらない。 簡単にまとめると  出向者の特徴を簡単にまとめると,次のようになる。 ①出向者は,ホワイトカラーばかりではない。出向者の3割は,工場を中心と  する生産部門で働いているからである。 ②出向者の中心は,非役職者である。したがって,出向者の労働条件に関する  問題は,労働組合の重要な課題となり得る。 ③若年層の出向は人材育成を目的とするものが多く,中堅から高年層にかけて  の出向は企業グループの経営基盤強化を目的とすることが多い。 2−3 出向による労働条件の変化  出向によって労働条件はどの程度かわるのだろうか。「出向調査」をもとに, この点を確かめておきたい。すでに述べたように,この調査は,出向にともな って生じると考えられるあらゆる問題を対象としている。賃金の最終的な負担 者は誰なのか,退職金算定の際に出向期間をどう計算するのか,出向者に対す る懲戒処分の:主体は誰なのかなど,実務担当者が直面するであろう問題がてい ねいに調べられている。ここではそれらの中から,特に出向期間と労働時間, 休日に関係した部分だけを取り出して,検討してみたい。 出向期間  出向を命ぜられた者がもっとも気にするのは,いつ戻ってこられるのかとい う点である。期間が定かでない片道切符のような出向は,行く者を不安にさせ

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      企業グループ人事と労働組合の役割  197 る。出向期間をどの程度明示しているのか,期間が延びる可能性はあるのかと いう2つの点について,まず見ておきたい。  出向期間が就業規則や労働協約であらかじめ決められている企業は,全体の 3割程度である。では,残りの7割は期間を決めずに出向させているかという と,そうではない。「期間は出向の都度,出向契約で決める」という企業が全体 の26.5%あり,これらの企業が「あらかじめ定められていない」部分に含まれ ているからである。したがって,従業員にまったく期間を知らせずに出向させ る企業の割合だけ取り出すと,38.8%になる。  大企業になるほど,期間をあらかじめ定めている割合が高くなる。しかし, 「期間を定めず出向させ,随時出向を終了させる」企業は,小規模企業と同じ くらいある。大企業だからといって,出向期間がきっちり決まっているわけで はないようである。この点は,出向期間の延長についてたずねた質問でより顕 著になる。すべての大企業が,「就業規則や労働協約,出向契約で出向期間を定 めてあったとしても,事情によって延長もあり得る」と答えているからである。  以上のことからわかるように,どのような形にせよ,出向期間を明示する企 業は6割弱存在する。しかし,最初に明示した期間の変更があり得ることをほ とんどの会社が認めている。明示された期間が守られない限り,期間をあらか       9) じめ定めておくことの意味はあまりないかもしれない。 所定労働時間  出向によって1日の所定労働時間が長くなる企業の割合は,82.9%である。 この数値は,出向元の規模が大きくなればなるほど高くなっている。1,000人以 上の大企業の場合,94.0%の会社で所定労働時間が長くなるのに対して,300人 9)出向期間を明示されたかどうかという点は,「就業形態調査」も個人調査において調べて  いる。文書にせよ,口頭にせよ,出向期間を明示された人の割合は,男子の場合66.6%で  あった。これは,いろいろな労働条件の中で最も低い割合になっている。また,出向した  男性がどの程度雇用不安を感じているかも,調べている。よく感じる11.9%,ときどき感  bる33.6%,めったに感じない28.2%,まったく感じない25.9%と,雇用不安を感じる人  と感じない人が相半ばしている。もちろん,出向期間を明示されていないことだけが雇用  不安の原因になっているとはいえないが,不安の大きな部分を占めているであろうことは  想像できる。

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未満の企業では73.3%になっているからである。  では,所定労働時間が長くなった場合,どのような措置を講じているのだろ うか。三一3は,措置の有無とその内容をまとめたものである。全体では約4割 の企業,大企業でも4分の1が,所定労働時間が長くなることに対して何の措 置もしていないことがわかる。この調査に回答した大企業67社のうち,65社に 労働組合がある。この回答をみる限り,労働時間の延長に対して,大企業の4 分の1の組合は何も発言していないようである。  次に,措置の内容に注目しよう。ここには,規模による差がほとんどないこ とがわかる。どの規模でも,だいたい6歳位企業が長くなった時間に相応する 時間給を支給しており,3割の会社が時間数にかかわらず定額の手当を支給し ている。その他に分類されている措置は,「職種により異なる」,「著しい差があ る場合のみ調整する」,「年間所定労働時間で調整する」などである。 休日数  出向することによって,年間の休日数が少なくなることがある。全体では8 割,大企業では91%が,出向によって休日数が減ると答えている。では,減っ た休日数をどう補償しているのだろうか。休日数減少への対応方法を示した表 一4をみよう。  休日数が減少することに対して,何らかの措置をする企業は,全体で約6割, 大企業は4分の3になっている。この比率は,所定労働時間が長くなることへ の対応とよく似ている。所定労働時間の調整をしない企業は,休日数の調整も       劃一3 所定労働時間延長への対応      (%)       計   300人未満   300−999人   1,000入以上 特別な措置はない 何らかの措置をする 37.6 62.4 45.5 54.5 ∩︶0

00

﹁05

25.4 74.6 計 100.0 100.0 100.0 100.0 延長分の時給支給 定額の手当 その他 61.4 27.3 11.4 58.3 37.5 4.2 64.7 23.5 11.8 61.7 23.4 14.9 計 100.0 100.0 100.0 100.0

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      企業グループ人事と労働組合の役割 表一4 休日数の減少への対応 計 300人未満   300−999人    199    (o/o) 1,000人以上 特別な措置はない 何らかの措置をする 40.4 59.6 52.4 47.6 54.5 45.5 24.6 75.4 計 100.0 100.0 100.0 100.0 減少分の時給支給 定額の手当 その他 53.1 25.9 21.0 55.0 40.0 5.0 66.7 13.3 20.0 47.8 23.9 28.3 計 100.0 100.0 100.0 100.0 しないと考えるのが一般的だろう。  措置の内容は,労働時間に対するよりも多様である。減少した休日の時間に 相応した賃金を払う企業が約5割,減少した休日数にかかわりなく定額の手当 を支給する企業が約25%となっている。その他の項目に含まれるのは,「少なく なる休日数に応じて手当を支給する」,「著しい差がある場合のみ調整する」,「出 向者の資格により異なる」などである。 簡単にまとめると  出向にともなう労働条件の変化について,基本的なところだけ見てきたが, ここで簡単にまとめておこう。 (1)出向期間は,約6割の企業で何らかの形で決められている。しかし,出向期  間が変更される可能性をほとんどの企業が認めており,あらかじめ定められ  ていることの意味はそれほど大きくないかもしれない。 (2)出向によって,所定労働時間が長くなったり,年間休日数が減少したりする  のが一般的である。そういった労働条件の悪化に対して,何らかの措置をし  ている会社は6割程度にすぎない。 (3)労働組合のある大企業においても,労働条件の悪化に対して何らの措置を勝  ちとっていないところが4社に1社の割合である。  以上の考察から,労働条件の悪化をそのままにしている企業が少なくないこ とが明らかになった。確かに,労働組合のないような小規模企業では,さまざ まな制約があって仕方がないかもしれない。しかし,労働組合がちゃんと組織

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されている会社においても,少なからぬ割合で労働条件悪化を認めている点は 深刻である。次の節では,ある大企業労働組合の出向に対する取り組みを紹介 する。 4.A労働組合の取り組み 4−1グループ経営の実際  A社は,わが国でも有数の電機メーカーである。その労働組合をたずね,中 央執行委員2人から話を聞いた。ききとりの時期は,1992年1月目ある。  A社は,今井[1989]が言うところの「独立型企業グループ」にあたる。「親 会社の事業部のいくつかが別会社となり,さらにそれが孫会社を持つというか        10) たちで一つの傘の下に,同じ製品分野で拡大していくグループ」である。A社 を中核とするグループは,いわゆる水平分業をおこなっている12社(A社も含 む)と垂直分業をしている28社の2つの部分からできている。  水平分業をおこなっている12社のうち8社は,その設立の経緯から相互のつ ながりが密接で,ほとんど一つの会社と変わらないような運営をおこなってい る。たとえば,労働組合は一つであり,A労働組合が8社の労働者を組織して いる。また,大卒社員の場合,A社が一括採用し,他の7社に「出向」という かたちで配属している。同一の労働組合に所属し,当然のこととして労働協約 も同じなので,8社については労働条件は変わらない。  この8社に準ずる扱いを受けているのが,残りの4社である。この4社との 人事交流は,管理職クラスに限定されている。労働組合は,それぞれの企業に あるが,労働条件はほとんど同じである。  以上述べた水平分業12社の間で異動が起こる場合は,労働条件に変わりがな いために,通常の企業内異動と同じような感覚で労働組合は対処している。問 題になるのは,垂直分業をしている会社への出向である。通常,そういった会 社では,労働時間が長く,休日日数は少ない。悪化する労働条件に対する措置 が必要になってくる。 10) 今井 [1989] p.147。

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      企業グループ人事と労働組合の役割  201  興味深い点は,A労働組合が「出向者」という場合,労働条件の異なる会社 に出向している組合員を指し,A社から水平分業グループ企業に「出向」して いる人たちは含まないことである。労働条件の異なる会社への出向者は,組合 員ベースで700名,管理職で300名程度である。 4−2 出向に関する協定,覚書 出向に際して本人の意思確認  A労組は,労働協約とは別に,「出向に関する覚書」を経営との間で取り交わ し,組合員の労働条件を守ろうとしている。この覚書には,ごく一般的なこと しか書かれていないが,中央執行委員によると,次の2点をきっちり確認する といつ。 (7)出向期間は3年をめどとし,出向に際しては本人の意思を確認する。  出向期間は3年をめどとしており,組合員を出向させる場合,必ず事前に組 合に通知があり,組合は本人の意思を確認するようにしている。出向を拒否す ることはまずないので,本人が同意しなかった場合の具体的対応については, 明確な説明がなかった。    ・ (イ)出向期間が長くなる場合や出向途中で条件が大きくかわる場合,会社は必ず  組合に通知し,本人の同意を得る。  出向期間は長くとも5年を越えないように,組合は会社側に働きかけている。 また,出向先での仕事内容が変わったり,出向先の都合で勤務地が変わったり する場合は,必ず事前に組合に通知し,本人の同意を得なければならない。  以上の2点は,文書として正式に書かれてはいないが,経営側と組合の間の 慣行として確立しているという。単に「通知する」といっても,会社や組合の 取り組み姿勢によって,内容は大きく異なる。個々の事例を観察する意味がこ こにある。 出向手当は管理職にも影響  現在,月間労働時間と年間休日日数を基準として,A社よりも条件が悪い場 合,2段階の出向手当を支給している。これは,労働時間関係の条件が悪い会

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社は,その他の労働条件,福利厚生の水準も悪いだろうという考えに基づいて いる。具体的には,月間所定労働時間が166時間以上,年間休日日数が110日未 満という2つの条件を示し,この2つともに当てはまる場合は月17,000円,ど ちらかに当てはまる場合は月7,000円を出向手当として支給している。  しかし,ここ数年,関連会社の時短が進み,出向手当の支給基準を上回る会 社が出てきた。その結果,出向手当の支給が停止される事態も起こってきた。 組合員にとって,出向手当は月7,000円か17,000円なのであまり大きな打撃には ならない。しかし,管理職の出向者は,基準を上回るか否かが大きな問題とな る。  管理職に対しては,組合との協定に準じた基準で,出向手当的なものが50万 円程度,ボーナス時に支払われている。出向先の労働時間が減って,手当の支 給基準を満たさなくなると,ボーナスから50万円減ることになり,管理職にと っては大きな打撃である。労働時間が短くなったからといって,管理職の仕事 が楽になるとは限らない。  そこで,経営側から組合に対して,出向手当支給条件の見直しを申し入れて きているという。出向管理職に手当を出すためには,組合との協定をまず変え なければならない。これは,組合の出向に対する取り組みが,非組合員である 管理職にも影響することを示す興味深い事例といえる。 4−3統一労働条件に向けた取り組み 会社側の格差政策に対抗  A社は,昭和40年半に「一郭一工場」構想によって,地方に工場を展開して いった。その際,地方の労働市場を混乱させないという配慮もあって,本社と の労働条件格差をつけて別会社として設立した。その一部が,垂直分業の28社 の中に入っている。  労働組合は,このような会社の政策に対して,「労働組合一本化政策」を展開 した。会社は違っても,従業員を同じ労働組合に組織しようとする運動である。 この組合の方針は,分社化という世の中の動きに反するものであったが,人手

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       企業グループ人事と労働組合の役割  203 不足の中で地方会社に人を集める際にプラスに働いた。  現在,垂直分業をおこなっている会社の労働組合で構成しているA労働組合 連合会では,「目標基準」や「ミニマム基準」を作り,全体としての労働条件引 き上げに取り組んでいる。こうして,グループ全:体の労働条件が上がっていけ ば,出向という事態にもより的確に対処できるようになる。 要するに  以上,A労組の出向に対する取り組みを簡単にみてきたが,最後にその特徴 をまとめておこう。 ①出向による労働条件の低下を組合がチェックしている。 ②出向にあたって,本人の同意を得ることを条件としている。 ③出向にあたって組合員の労働条件を守ることは,管理職の出向者の労働条件  にも影響を与える。 ④企業グループとしての労働条件を引き上げる努力をしている。 ⑤組合員のキャリア形成という視点は薄い。  5番目の組合貝のキャリア形成という視点は,組合役員にほとんど意識され ていなかった。人をどう動かすかという問題は,経営の人事権に属する事柄だ という認識が根底にあるからかもしれない。 5.今後の課題  今回は時間の制約もあって,十分なききとり調査ができなかった。A労働組 合は,出向問題に対して,確かにしっかり発言している。ただ,A社はずっと 成長を続けており,その意味で深刻な人員整理を経験したことはない。企業業 績が好調な中での出向への対応,と整理できるかもしれない。  深刻な人員整理の中で出向問題に取り組んできたのは,鉄鋼の労働組合であ る。鉄鋼労組は,A社とは異なった対応をしているかもしれない。今後,きき とり調査の範囲を徐々に広げて,さまざまな事例を観察していきたい。

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      〈参 考 文 献〉 関西経営者協会[1991]『出向に関する調査』 今井賢一[1989]「企業グループ」(今井・小宮編『日本の企業』東大出版会) 雇用職業総合研究所[1986]『系列会社に対する出向・転籍等に関する調査結果報告書』 雇用職業総合研究所[1987a]『企業グループ内人材活用に関する調査研究報告書』 雇用職業総合研究所[1987b]『広域人事管理と雇用調整に関する実態調査報告書』 雇用職業総合研究所[1989]『出向・転籍の現状と課題』 永野 仁[1989]『企業グループ内人材移動の研究一出向を中心とした実証分析』多賀出版. 労働省[1987]『多様化する企業労働者』(昭和62年「就業形態の多様化に関する実態調査」結   果リポート),大蔵省印刷局。 労働省[1988−90]『雇用動向調査』 労働省[1990]『平成2年雇用管理調査』

参照

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