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ドイツ法における報告義務と顛末報告義務 (3) : 他人の事務を処理する者の事後的情報提供義務の手がかりを求めて

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ドイツ法における報告義務 と顛末報告義務 (3)

一一他人の事務 を処理する者の事後的情報提供義務の手がか りを求めて一―

[目 次] I 序 言 I BGBの 規定状 況 と基礎 にあ る考 え方 1.序 論 2.BGB成 立 までの議論状況 3.小 括 (以上327号) 皿 ド イツ法 における学説 と裁判例 の展 開 1.学 説 における報告義務 と顛末報告義務 の内容 と機能の理解 (以上328号) 2.裁 判例 における報告義務 と顛末報告義務 の妥 当範囲の拡張 と要件 (1)序論 (2)広義 の 「他 人の事務 を処理 す る法律 関係」へ の顛末報告義務 の拡張 (3)報告義務 の拡張 とその要件 (以上本号) 律)報 告義務 と顛末報告義務 の具体 的要件 と存否判断の規律 (5)小括 Ⅳ ド イツ法 の まとめ と日本法へ の手がか り 田 ド イツ法における学説 と裁判例の展開 2.裁 判例 における報告義務 と顛末報告義務の妥当範囲の拡張 と要件 (1)序論 BGBに は,報 告義務 ・顛末報告義務 について走める多 くの個別規定 は置か れた ものの,こ れ らについて一般的に定める規定は置かれなかった。そのため に,具 体的な局面 において,そ れぞれの個別規定が どの ように解釈 され,報 告 義務 ・顛末報告義務の存否判断が どの ようになされるのかが問題 となるととも に,個 別規定が直接 には適用 され得ず,当 事者間に明示 ・黙示の情報提供契約

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も存在 しない場合 において,一 方 当事者 に よる他 方 当事者 に対 す る報告 ・顛末 報告 が義務 づ け られ るのか否 か, どの ような要件 の下で義務づ け られ るのかが 問題 となる。

ドイ ツの裁 判例 にお い て は,BGB施 行 後 の早 い時期 か ら, ドイ ッ法 には, あ らゆ`る法律 関係 について,あ らゆる場合 に妥 当す る ような一般 的 な報告義務

・顛末報告義務 (allgemdne Auskun■spnicht)は存在 しない との考 え方QOllが 繰 り返 し示 され なが ら も,報 告義務 ・顛末報告義務 は,個 別規定 が直接適用 さ れ る場合 を超 えて,広 く認 め られてい る。その一方 で,個 別規定が適用 され得 る場合 につ いて も,一 定 の局面 にお いて,報 告義務 ・顛末報告義務 の内容 が制 限 され た り,存 在 が否定 された りす る可能性 のあるこ とが明 らか にされている。 以下では,こ のような裁判例の展開を中心にみてい くことによって,具 体的 な局面において,報 告義務 ・顛末報告義務が,ど のような機能を果たす ものと して問題 とされ, どのような要件の下で, どのように根拠づけられているのか を明らかにし,他 人の事務を処理する法律関係における報告義務 ・顛末報告義 務の特徴 を探ることとする。 (2)広義の 「他人の事務を処理する法律関係」への顛末報告義務の拡張

① 端緒となる議論

Hで みて きた ように,既 に,BGB成 立以前の学説 において,他 人の事務 を 処理す る法律関係 を広い意味の もの と理解することをとお して,法 律 に規定が 置かれている場合 に限 らず,広 く,報 告義務 ・顛末報告義務 を認めるべ きであ る との主張がなされていた。 同様 の趣 旨の見解 は,BGB成 立後施行前 の1898年に公表 された顛末報告義 務 に関す る トライテル (Treitel)の論文dOのにおいて,よ り具体的に示 された。 す なわち, トライテルは,BGBの 規定状況 をふ まえた上で,顛 末報告義務 は, 法律 に明確 に規定 されている場合のみならず,あ る者が他人のために事務 を処 理する場合には常 に,そ して,そ のような場合に限 り課せ られるとの主張 を行 っ た。そ して,こ こでい う 「他人のために事務 を処理する場合」 には,あ る者が,

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ドイツ法における報告義務と顛末報告義務 (3) 187 不 当利得 や不法行為 に基づ いて ( 利得 の返還 や損害賠償 についての) 請 求権 の 行使 を受 け る場 合等 も広 く含 まれ る との考 え方 を示 した( ЮD 。 このような学説の見解に沿う形で,裁 判例においては,顛 末報告義務は他人 の事務を処理する者にのみ限定的に課せ られるという意味合いをも含みながら, 広義の 「他人の事務を処理する法律関係」への顛末報告義務の妥当範囲の拡張 が行われた。 ② 個別規定の総合類推による拡張 BGBに は,他 人の事務 を処理する法律関係 について,そ して,そ のような 法律関係 に限つて,顛 末報告義務に関する多 くの個別規定が置かれている。そ の総体を手がか りとして,個 別規定が直接には適用され得ない場合についても, 顛末報告義務の存在 を肯定する裁判例がある。 「他人の事務,あ るいは,同 時に自己と他人のものである事務 を処理する者 は,顛 末報告義務を負 う」 との定式は,以 下にあげる裁判例 【1】 を晴矢 とし, その後の裁判例 によっても繰 り返 し示され,顛 末報告義務の妥当範囲について の一般原則 (allgemeiner Grundsatz)として確立 したものとなった。 以下では,ま ず,こ のような定式に依拠 しつつ顛末報告義務の存否を判断す る裁判例のうちの代表的なものを,顛 末報告義務 (計算報告義務)の 存在を肯 定するものと否定するものとに分けて,そ れぞれ判決が下された時期の順に紹 介する。その上で,そ れらに考察を加えることによって,顛 末報告義務が,具 体的な局面において, どのような機能を果たす ものとして問題 とされ,ど のよ うに根拠づけられているのかを明らかにする。 (a)裁判例の紹介 [肯定例] 【1】 RG Urte v.23.4. 1910(RGZ73,286) [事実]Xは ブレーマーハーフェンで,そ の兄である訴外Aは キールで,そ れ ぞれ飲料販売店を経営 していた。1904年6月2日にAが 死亡 し,妻 Yが ,単 独で

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これを相続 した。Xは ,Xと Aと は,19ol年 に,年 3000マルクをAに 留保 した 残 りの部分 について,各 々の店の収益 と損失 とを平等 に分配 ・負担する旨の合 意 を した として,Yに 対 して,1901年 9月か ら1904年6月2日 までのキールの店 の計算 の報告 を求めて,訴 えを提起 した。OLGは ,Xに 裁判官宣誓 を課 した。 RGは ,Yの 上告 を実却 した。 [判旨]XA間 に組合関係が存在 し,Aの 死亡 によってそれが終了 したのなら ば,BGB713条 ,666条 ,721条 によって,顛 末報告請求権が基礎づけられるが, た とえそ うでなかった として も,信 義則 (BGB157条 ,242条 )に よって,そ れ は基礎づ け られる。 とい うのは,BGBは ,顛 末報告義務 の要件 を一般的な 定式では定めてお らず,多 くの個別の場合 (受任者,有 償事務処理者,事 務管 理者,業 務執行組合員等)ご とに定めているが,そ こか ら以下の ような原則 を 導 き出す ことがで きるか らである。すなわち,他 人の事務,あ るいは,同 時に 自己 と他人の ものである事務 を処理する者 は,顛 末報告義務 を負 う。 【2】 RG Urt.v.30。 4.1932(HRR1933,Nr.3) [事実]X有 限会社 は,訴 外 Aが 租税 その他の理 由か ら設立 した名 目上の もの であつた。X所 有の土地 をYが 管理 し,Yの みがAの ために当該土地を売却 ・ 譲渡す る権限 を有する旨のAY間 の契約 に基づいて,Yは 管理行為 を行 った。 Xは ,土 地の所有者 として,こ れに同意 し,Yに 代理権 を与えていた。Yの A に対する前訴 において,Yは ,AY間 の契約の無効 を理由 として敗訴 した。X は,契 約の無効 を援用 してYの 代理権 を剥奪 し,Yに 対 して,土 地の管理に関 する計算の報告 を求めて,訴 えを提起 した。LGと KGは ,Xの 請求 を認容 した。 RGは ,Yの 上告 を棄却 した。 [判旨]AY間 の契約 についてはXも 当事者であ り,X自 身が Yに 対 して土地 の管理 を委 ねていることか ら,BGB666条 と713条に基づいて,Xは ,顛 末報 告請求権 を有す る。契約が無効 な場合 にも,信 義則 に基づいて,Xに は,情 報 請求権 の最 も強い形態である顛末報告請求権が与えられる。前訴判決 までYは 善意の占有者であ り,そ れ以前 に得 た利益 の引渡義務 を負わない との主張は,

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ドイツ法における報告義務と顛末報告義務 (3) 189 他人の,あ るいは,同 時 に自己 と他人の ものである事務 を処理する者, とりわ け,収 入 と支出 とを伴 う一連の事務 を他人のために処理する管理人に課せ られ る計算報告義務 とは無関係である。計算報告義務 については,最 終的にXが Y に対 して請求権 を有す るか否か とい うことは問題 にならない。 とい うのは,そ の ような請求権の存否,及 び,額 を明 らかにするのが,求 め られている計算報 告 の 目的だか らである。 【3】 RG Urt.v.8.8。 1940(RGZ164,348メ 104) [事実]Yは ,Xに 対 す る 自己の債権 を回収す るため に,Xの 100を超 える債 権 を差 し押 さえ,転 付命令 を得 た。Xは ,Yに 対 して,第 三債務者の支払いに 関す る計 算 の報 告 と証 書 の交 付 とを求 め て ,訴 え を提 起 した。 区裁 判 所 (Kreisgericht)と上級裁判所 (Obergericht)は,Xの 請求 を棄却 した。RG は,Xの 上告 を容れ,Xの 請求 を認容 した。 [判旨]ある者が,同 時 に自己 と他人の ものである事務 を処理す る場合 には, 単 に報告義務 を負 うのみならず,顛 末報告義務 を負 う。 自己 と他人の ものであ る事務の処理 をとお して,一 種の共同の権利の行使が生 じる。転付債権者が, 債務者の代理人でない場合であつて も,債 権の回収の際 に,債 務者の財産 を処 分 している とい う事実 に基づいて,債 務者 に対 して義務 を負 い,あ たか も,債 務者 によつて,そ の ような処分 について授権 された者であるかの ように判断 さ れなければならない。 [否定例] 【4】 RG Urte v.20。12.1924(RGZl10,1) [事実]X所 有の甲山地 とY所 有の乙山地 とは隣接 してお り,Yは ,乙 から甲 に向かって延びる鉱物層から鉱物を採掘 した。Xは ,当 該鉱物層の一部につい ての採掘権はXに 帰属するとして,Yに 対 して,(1)Yが 当該部分についての 採掘権を有 しないことの確認,(il)採掘に関する計算の報告,(il)採掘によつて 得た利益の引 き渡 しと損害賠償 とを求めて,訴 えを提起 した。LGは ,Xの 請

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求のうち(111)の一部を認容 した。XY双 方が控訴 し,OLGは ,Xの 請求のうち (i Xil)と(111)の一部を認容 した。RGは ,Yの 上告を容れ,Xの 附帯上告を棄却 して,原 審判決を破美 し,事 件を原審裁判所に差 し戻 した。 [判旨]確かに,判 例 においては,関 連する個別規定に基づいて,以 下のよう な一般原則が展開されてきた。すなわち,他 人の事務,あ るいは,同 時に自己 と他人のものである事務を処理する者は,顛 末報告義務を負 う。しかしながら, この原則の本件への適用の余地はない。というのも,Yが ,本 件採掘に際 して, 他人の事務を専 ら自己の事務 として処理 しているというための手がか りがない からである。 【5】 BGH Urt.v.6.12.1978(NJW1979,1304) [事実]Xは ,帰 属するコンツェルンの母体 と建築会社である訴外Aと の合意 に基づいて,Aの 建築 した多数の住宅への遠隔暖房を業 として営んでいた。Y は,そ の住宅の一つを賃借 し居住 してお り,Aと の賃貸借契約において,Xと の暖房供給契約の締結を義務づけられていた。Xが ,暖 房用オイルの値上が り 等 を理由として暖房料 を値上げしたのに対 して,賃 借人 らは,Yを 長 とする住 民運動 を組織 し,こ れに対抗 した。Xと Yと は,先 例的訴訟 (MusterprOze鳥) によって,裁 判所の判断 を仰 ぐことで合意 した。Xは ,Yに 対 して,暖 房料 を 値上 げで きること,及 び,暖 房の創出 と供給 とに要する費用の増大 に関 して計 算報告義務 を負 わない ことの確認 を求めて,訴 えを提起 した。LGと OLGは , Xの 請求 を認容 した。BGHは ,Yの 上告 を棄却 した。 [判旨]BGBの 立法者 は,計 算報告義務の基礎 を,一 般的にではな く一定の個 別の場合 についてのみ規定 したが,そ こか ら以下の ような原則が導かれる。す なわち,他 人の事務,あ るいは,同 時 に他人 と自己の ものである事務 を処理す る者 は,顛 末報告義務 を負 う。本件当事者は,暖 房供給契約 において,売 買法 の規律 を受ける合意 をしている。交換型契約 においては,他 人の事務 を処理す るとい う要素がない ことか ら,原 則 として,計 算報告義務 は妥当 しない。売却 価格の算出に際 して,売 主は自分 自身の利益 を擁護するのである。供給契約の

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ドイツ法における報告義務と顛末報告義務 (3) 191 ように給付 と反対給付 とが長期 にわたる場合であって も,契 約の両当事者が, 相互の利益擁護 を義務づけ られない点 には何 ら変 わ りが ない。 (b)考察 他 人の事務 を処理す る法律 関係 とは,一 方当事者が他方当事者の利益 を擁護 す ることを本質的な義務内容 とする法律関係であ り,そ こでは,一 方当事者 に よる他方当事者 に対す る情報の提供が本来的に要請 されるもの と理解 されてい る(的ゆ。すなわち,他 人の事務 を処理する法律関係 において,事 務の本人は, 自己の事務が適切 に処理 されたか否かについて情報 を必要 としているにもかか わ らず,そ れを有 してお らず,こ れに対 して,他 人の事務 を処理する者は,自 己の処理 した事務 についての情報 を有 しているとい う状況 にある。そこで,事 務 の本人が,い つで も自己の判断で事務処理 に介入 し,事 務処理 をコン トロー ルす ることを可能 にす るために,他 人の事務 を処理する者 による事務の本人に 対す る情報の提供 (報告)が 要請 されるのである。 また,事 務の本人が引渡請 求権や損害賠償請求権の存否 を判断 した り,範 囲を確走 した りすることによっ て,こ れ らの行使 を準備することを可能 にするために,他 人の事務 を処理する 者 による事務の本人 に対す る事務処理の当否 をも内容 とす る情報の提供 (頗末 の報告)が 要請 されるのである。 【1】 から 【5】 は,い ずれも,権 利者の義務者に対する請求権の存否 と範 囲とを明らかにすること,す なわち,い わゆる 「主請求の準備」を目的として 顛末の報告 (計算の報告)が 求められた事案に関するものであ り (とりわけ, 【2】 は,そ の旨を明示する),【1】 から 【3】 においては,顛 末報告義務の 存在が肯定されている。裁判例において,個 別規定が直接適用 される場合を超 えて,報 告義務 ・顛末報告義務の妥当範囲が拡張されているのは,主 請求を準 備するために情報の提供が要請される場合についてであるという近時の類型化 論の認識は,こ れらの裁判例に関する限 り,正 当なものであるということがで きる。 もっとも,単 に,主 請求を準備するために情報が必要であるということのみ

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では,顛 末報告義務 は基礎づけ られず (【4】),当 事者間に,相 手方の利益 を 擁護す る関係,す なわち,他 人の事務 を処理する法律 関係のあることが必要で ある との理解が示 されている (【5】)Q00。 具体的には,【 1】 と 【2】 におい ては,当 事者間に,有 効 な組合契約 は存在 しない ものの,そ れに準 じる法律関 係 (一定期 間の損益 の催合,管 理委託関係)が ある場合 について,ま た,【 3】 においては,共 同の権利の行使がある場合 について,他 人の事務 を処理する法 律 関係 にあたるとして,顛 末報告義務の存在が肯定 されている。これ らの裁判 例 においては,主 請求を準備するために情報の提供が要請 される場合 について, 両当事者間に,一 方当事者が他方当事者の利益 を擁護すべ きであることを要素 とす る他人の事務 を処理する法律関係のあることを手がか りとして,顛 末報告 義務 の存在が実質的に基礎づけられているとい うことがで きる。 これに対 して,事 務の本人による事務処理への介入の前提 として,す なわち, 事務 の本人 による事務処理のコン トロールを目的 として報告が求め られた事案 に関す る判断例 は,み あたらない。 これには,い くつかの理由が考えられる。 まず,こ の ような報告は,適 時になされる必要があ り,時 機 を失すると,報 告 義務 その ものの履行 を求めることは意味 を失い,解 約や,義 務違反の責任 を追 及す ることへ と,問 題が移行するとい うことが考 えられる。 また,主 請求 を準 備す るために情報の提供 を求める場合 には,主 請求の存否 ・範囲については不 知である権利者 も,そ れを明 らかにするために情報 を必要 としていること自体 は認識 しているのに対 して,事 務の本人は,当 該時点での事務処理への介入の 必要性,及 び,そ の前提 としての情報の必要性その ものを認識 し得 ない場合の 多いことも考 えられる。このような問題 は,自 発的な情報提供義務 (通知義務) の履行 によって解消 される場合 はあるものの,自 発的に情報提供がなされなけ れば,同 様 の問題が残 ることとなる。 この ような問題 に対処 し,他 人の事務 を処理する者に対する事務の本人の報 告請求権 の実効性 を確保する方策は,裁 判例 において も,ま た,学 説 において も,明 らかにされてはいない。

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F I I I I I I I ドイツ法 における報告義務 と顛末報告義務 (3) 193 ③ BGB687条 2項の類推 による拡張 委任契約 における受任者 は,委 任者の委任 に基づいて事務 を処理するのに対 して,事 務管理者は,本 人の委任 な しに事務 を処理するのであるが,い ずれも, 他人 (事務の本人)の 事務 を,そ の利益 のために処理する点で共通 している。 ② でみて きた ように,こ の ような事務処理の他益性,す なわち,他 人の事務 を 処理す る者が事務の本人の利益 を擁護すべ きことを要素 とする法律関係 におい で,顛 末報告義務 は,広 く認め られている。 これに対 して,あ る者が,委 任 な しに他人の事務 を自己の利益のために処理 す る場合 には,形 式的には他人の事務の処理であるが,実 質的には他人の権利 領域 に対する違法 な侵害であ り,こ れは,他 人の利益 の擁護 を要素 とする本来 的 な意味での他 人の事務 を処理す る場合 にはあた らない(Юの。BGBは ,こ のよ うな場合 について も,侵 害者 に利得の引 き渡 しを義務づけることによって事務 の本人の利益 を保護す る必要性があるとの考 え方は00に基づいて,こ れを,事 務管理 に準 じる もの (準事務管理)と して取 り扱い,事 務の本人が,事 務管理 法上の諸権利 (報告請求権 ・顛末報告請求権,受 取物引渡請求権等)を 行使 し 得 る旨を定めている (BGB687条2項,681条 )。 BGB687条 2項 の 「他人の事務」 を広義の もの と理解 した り,過 失での侵害 の場合 について も同条 を類推 (適用)す ることによって,無 体財産権の侵害者 の権利者 に対する顛末報告義務 (計算報告義務)の 存在 を肯定する裁判例があ る(10の。 以下では,他 人の無体財 産権侵害の事案 について,BGB687条 2項 を手がか りとして計算報告義務の存否 を判断する裁判例の うちの代表的なものを,計 算 報告義務の存在 を肯定する もの と否定す るもの とに分 けて,そ れぞれ判決が下 された時期 の順 に紹介す るは10。その上で,そ れ らに考察 を加えることによっ て,顛 末報告義務 (計算報告義務)が ,具 体的な局面において,ど のような機

能を果たすものとして問題とされ,ど のように根拠づけられているのかを明ら

かにする。

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( a ) 裁判例 の紹介 [ 肯定例]

【6】 RG Urt.v.7.3.1900(RGZ46,14)

[ 事実] X の Y に 対す る本訴請求 については不明である。 Y は ,自 己が特許 を 有す る発 明に含 まれるラ ッカーやエスの製法 をX が 無断で販売 してYの 特許権 を侵害 した として,Xに 対 して,損 害の賠償 と計算の報告 とを求めて,反 訴 を 提起 した。L G は ,Yの 反訴請求 を棄却 した。OLGは ,損 害賠償 に関す る限 り で,Yの 反訴請求 を一部認容 した。RGは ,Xの 上告 を棄却 し,Yの 上告 を容 れ,Yの 反訴請求 を認容 した。 [ 判旨] X の 利得 が,(1891年 )特 許法35条に基づいて,Yが Xに 対 して賠償 請求 し得 る損害概念 に含 まれる場合 には,Yが Xの 利得の額 を知 るのに資する 補助手段 について,民 法の規定の適用は排除 されない。普通法 においては,故 意 に,他 人の財産 を自己の もの として取 り扱 った者 は,他 人の事務 を利欲 にか られて自分 自身のために処理 した事務管理者 と同様 に,違 法 に得た利益 につい て の計 算 の報 告 を義務 づ け られ てい た。BGBの 原則 に よって も,Xは , B G B 6 8 7 条2項,681条 ,666条 に基づいて計算報告義務 を負 う。 【7】 RG Urt.v.3.2.1909(RGZ70,249) [事実]事実関係 の詳細 は不 明である。特許権侵害者の特許権者 に対す る計算 報告義務 は,故 意の特許権侵害の場合 にのみ課せ られるのか否かが争点 となっ た。RGは ,重 過失での特許権侵害の場合 にも計算報告義務 を認める判断 を示 した。 [判旨]他人の特許権 を自己の営業のために違法 に利用する行為 は,い わゆる 準事務管理 に該当す る。「事務」「事務処理」 といった語 を広義の もの と理解す る と,特 許権侵害者 は,BGB687条 2項 の意味 において,他 人の事務 を自己の もの として取 り扱 っているといえる。同条の直接適用 によって計算報告義務 を 基礎づけるのならば,故 意の特許権侵害の場合 に限定 されるが,特 許権侵害 に 基づ く計算報告義務 に関 しては,い わゆる準事務管理の類推 によって基礎づけ

(11)

ドイツ法における報告義務と顛末報告義務 (3) 195 られ る特許法上 の損害賠償概念 の形成が問題 となってい る。 (1891年)特 許法35 条 は,重 過失 に よる特 許権侵害 の場合 について も侵害者 の損害賠償義務 (利得 の引渡義務 )を 肯定 してい る こ とか ら,そ れ と関連 して基礎づ け られる計算報 告 義務 につ い て,故 意 の場合 と重過失 の場合 とを区別す る理 由はない。 【8】 RG Urt.v.14.1.1914(RGZ84,49) [事実]Ylと有限会社 Xと の雇備契約 には,雇 備期 間内の発明等 は,Xの 所有 に帰す る旨の条項が含 まれていたち雇備期 間内に,Ylは ,め に対 して,二 つ の実用新案 を譲渡 し,期 間終了後 に,Ylと Y2とが設立 した会社 において,Y2 の名で 申請 し登録 を受 けた当該実用新案 を使用 した。Xは ,Ylに 対 して,当 該実用新案 によって保護 されている発明の所有権がXに あることの承認 を,Y2 に対 して,当 該実用新案の Xへ の譲渡 を,Ylと し双方 に対 して,当 該実用新 案 に基づいて作 られた装置 についての計算の報告 とXへ の利得の引 き渡 しを求 めて,訴 えを提起 した。LGは ,xの 請求 を認容 し,OLGは Yら の控訴 を棄却 した。RGは ,Yら の上告 を棄却 した。 [判旨]Yら は,Xが 権利 を有す る発明の申請事務 を,そ れについての権限が ない ことを知 りつつ,自 己の もの として取 り扱 った。BGB687条 2項の 「事務」 概念 は狭 く解 されるべ きではないので,Xの 請求は認め られなければならない (BGB687条2項2文,666条 ,667条 )。 とりわけ,当 該実用新案がその名で登 録 されているY2は,Xに それ を譲渡 しなければならず,Ylと し とは,xに 対 して計算報告義務 を負 う。

【9】 RG Urt.v. 11.2.1914(RGZ84, 146) '

[ 事実]手刺 し刺繍の図柄の著作者であるXは ,Yが ,当 該図柄 を雑誌 に掲載 した り,売 り出 した りしてXの 著作権 を侵害 した として,Yに 対 して,侵 害行 為の差 し止め,及 び,計 算の報告 と損害の賠償 とを求めて,訴 えを提起 したp L G は ,Xの 請求 を認容 し,KGは ,Yの 控訴 を棄却 した。RGは ,(差 止請求 と 損害賠償請求に関する)Yの 上告 を容れ,原 審判決 を破棄 し,事 件 を原審裁判

(12)

所 に差 し戻 した。 [判旨]BGB666条 ,687条 に基 づ いて,計 算 の報告 を義務 づ ける こ とは正 当化

されない。BcB687条

2項は,造形美術と写真の著作物に関する (1907年

)著

作権法3 1 条の意味 における故意の著作権侵害の場合 にのみ,計 算報告請求権 を 認 めるが,KGに おいて,故 意 は認定 されていない。 しか しなが ら,そ の他の 点で,同 法31条を適用するための要件が充足 されるならば,重 過失での特許権 侵害の場合 と同様の考慮 に基づいて,過 失での著作権侵害の場合にも,計 算報 告請求権が認め られ得 る。 [ 否定例]

10】RG Urt.v.30.11.1900(RGZ47,100)

[事実]Yは,Xの リキュールの印として通用 している表装を自己のリキュー

ル に付 して, こ れ を流通 に置 き販売 した。 X は ,Yに 対 して,あ らゆる侵害行 為の差 し止 め,及 び,Yが 侵害行為 によって得 た利益 についての計算の報告 を 求めて,訴 えを提起 した。LGは ,Xの 請求 を認容 した。KGは ,計 算の報告 に 関す るX の 請求 を棄却 した。RGは ,Xの 附帯上告 を棄却 した。 [ 判旨]Yは ,(1894年 )商 標保護法15条に基づいて,Xに 対 して損害 を賠償 す る義務 を負 う。特許権侵害や著作権侵害 に関する裁判例 においては,損 害賠 償請求権 は,利 得引渡請求権 を含み,そ の結果,利 得の額 についての情報 を得 るの に資す る補助手段 に関 して,BGBの 規定 を適用することによって,利 得 についての計算報告請求権が認め られている。商標保護法15条に違反する者は, 他人の財産 を無権限で使用す る者 と判断 されるわけではな く,他 人の事務 を処 理 してい るので もな く,自 分 自身のため に行動 している。BGBに よる と,損 害賠償 に妥当す る原状 回復 の原則 (BGB249条)か らは,計 算報告請求権は導 き出 されない。その他 に, とりわけ,BGB259条 に基づ く計算報告請求権 を認 め るBGB687条2項,812条 も問題 とならない。

(13)

ドイツ法 における報告義務 と顛末報告義務 ( 3 ) 1 9 7

11】RG Urt.v.24.6。 1904(RGZ58,321) 、

[事実]Yは ,Xの マークと取 り違 え られるおそれのあるマークを自己の トイ レッ トベーパーに付 し,こ れを販売 した。Xは ,Yに 対 して,侵 害行為の差 し 止 め,及 び,Yが Xの 商標権 を侵害 して得 た利益 の引渡義務 を負 うことを根拠 として,利 得 について取引台帳 を呈示 しての計算の報告 を求めて,訴 えを提起 した。LGは ,Xの 請求 を認容 した。KGは ,Yの 顛末報告義務の存在 を肯定 し, 日録の提 出 (BGB260条 )の 限度でXの 請求 を認容 した。RGは ,こ の点 に関 し て,Yの 上告 を容れ,原 審判決 を破棄 し,Xの 請求 を棄却 した。 [判旨]原審裁判所 は,Xは ,請 求 し得 る損害賠償 の額 を知 るために,BGBが 認めているあ らゆる補助手段 を用いることがで き,顛 末報告義務 と報告義務 に ついての規定が,こ れに属すると述べ る。その上で,Xの 顛末報告請求権 と報 告請求権 とを目録 の提 出 (BGB260条 ,687条 2項,681条 ,666条 )の 限度での み認めるが,こ れは,本 件 について も,特 許権の違法 な利用の場合 と同様 に, 自己にその権 限のない ことを知 りつつ,他 人の事務 を自己の事務 として処理す る者の責任 についての原則 に基づいて,侵 害者の顛末報告義務 と報告義務 とを 基礎づける点で,同 意で きない。Xの 保護権 を侵害 し,損 害賠償 を義務づけ ら れるYの 行為 の全 てが,BGB687条 2項 の意味 における他人の事務 の処理 と判 断 されるわけではない。Yに は,損 害賠償義務のみが課せ られる。 (b)考察 ドイツ法 において,無 体財産の権利者 は,そ の侵害者 に対 して,(1)自 己の 逸失利益,(11)相当実施料額,(面)侵害者の利得のいずれかを基準 として算定 し た損害の賠償 を請求することがで きるもの とされている(111)。これ らの うち(111) の算定方法は,BGB687条 2項 (681条,667条 )の 類推によって基礎づけられ(0, 権利者が,侵 害者の利得の額 を確定 し,損 害賠償 を請求することを可能にする ために,同 じく687条2項 (681条,666条 )の 類推 によって,顛 末報告義務 (計 算報告義務)が ,基 礎づけ られるC131。 ここでは,BGB687条 2項 を介 しての事務処理法 における顛末報告義務 の援

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用 は,損 害賠償 請求権 の発生 を根拠づ ける状 況 (無体財産権侵害)の あること を前提 と して,そ の範 囲 (額)を 明 らか にす ることを目的 として行 われてお り, ここでの顛 末報告義務 は,い わば,本 来的 に,主 請求 を準備す る とい う機能 を 有 す る もので あ る とい える。 【6】 から 【11】は,い ずれも,無 体財産の権利者が侵害者に対 して損害の 賠償を請求 し得ることを前提 として,侵 害者の利得の額を明らかにするために, すなわち,い わゆる 「主請求の準備」のための 「補助手段」 として (【6】 【10】, 及び,【11】の原審裁判所は,そ の旨を明示する),計 算の報告が求められた事 案に関するものであ り,【6】 から 【9】 においては,計 算報告義務の存在が 肯定されている。裁判例において,個 別規定が直接適用される場合を超えて, 報告義務 ・顛末報告義務の妥当範囲が拡張されているのは,主 請求を準備する ために情報の提供が要請される場合についてであるという近時の類型化論の認 識は,こ れらの裁判例に関 しても,正 当なものであるということができる。 もっとも,こ こでも,単 に,権 利者が主請求を準備するために情報を必要と しているということのみでは,顛 末報告義務 (計算報告義務)は 基礎づけられ ず,他 人の事務 を処理する場合にあたることが必要であるとされている (【10】 【11】)。具体的には,特 許権侵害の事案 (【6】 【7】),実 用新案権侵害の事案 (【8】),著 作権侵害の事案 (【9】)に ついて,広 義の他人の事務を処理する 場合にあたるとして,計 算報告義務が認められたのに対 して,商 標権侵害の事 案 (【10】【11】)に ついては,他 人の事務 を処理する場合にはあたらないとし て,計 算報告義務の存在が (【11】においは,報 告義務の存在までもが)否 定 されている。これらの裁判例においても,当 事者間に他人の事務を処理する法 律関係のあることを手がか りとして,顛 末報告義務 (計算報告義務)の 存在が 実質的に基礎づけられているということができる。 しか しなが ら,そ もそ も,BGB687条 2項の類推は,本 来的に,主 請求を準 備することを目的として,他 人の利益 を擁護するという要素のない形式的な他 人の事務 を処理する場合についても,事 務処理法における顛末報告義務を援用 するために行われているという事情がある。これに鑑みると,「他人の事務を

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ドイツ法における報告義務と顛末報告義務 (3) 199 処理す る法律 関係」 を広義の もの と理解 した として も,な お,こ のような法律 関係 の有無 を手がか りとして,顛 末報告義務 (計算報告義務)の 存否 を判断す ることが妥当なものであるのかが問題 となる。 商標権侵害の事案 について,他 の無体財産権侵害の事案 とは異なった取 り扱 い をし,商 標権侵害者の計算報告義務 を認めない判例の立場 に対 しては,多 く の批判が加 えられることとなったll10。 (3)報告義務の拡張 とその要件 ① 端緒 となる議論 他人の事務 を処理す る法律関係の存否 にかかわ らず,一 定の要件が充足 され る限 り報告義務 を認 めるべ きである とい う見解 は,BGB成 立後施行前の1899 年 に発行 されたデル ンブルクの体系書Q19において明 らかにされた。す なわち, デル ンブルクは,権 利者 に義務者 に対する報告請求権が与えられることによっ て,権 利追求が著 しく容易 になった り,は じめて可能 になるような場合がある との考 え方 を示 した。その上で,「その本質上,権 利者 は,帰 責性 な しに自己 の権利 の存在 と範囲 とについて知 らず,こ れに対 して,義 務者は,そ の ような 情報 を容易 に与 えることがで きる立場 にあるような法律 関係 においては,報 告 請求権が認め られる」 との主張 を行 った(1亜)。 デル ンブル クの見解 は,信 義則 (BGB242条 )に よって理論的基礎づけが与 え られ(11の,裁 判例 において受 け入 れ られる とともに,学 説 によって,信 義則 に依拠 して報告義務 の存在 を認めるための三要件 として再構成 された。すなわ ち,(1)両 当事者間の特別の法律 関係の存在,(11)権利者が帰責性 な しに情報 を 有 しない こと,(li)義務者が容易 に情報 を与 え得 ることであるQ瑚)。 これ らの うち(li)と(面)とは,具 体的な局面 において報告義務 ・顛末報告義務 の存否 を判断する際の考慮要素 として,信 義則 に依拠 しての報告義務の妥当範 囲の拡張の場面 に限 らず問題 とな り得 る ものである。そ こで,こ れ らについて は,項 を改めて(4)で考察す ることとし,こ こでは,(1)の 要件 に注 目しつつ, 裁判例 の状況 をみてい くこととす る。

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② BGB242条に依拠 しての拡張

その本質上,権 利者は,帰 責性なしに自己の権利の存在 と範囲とについて知 らず,こ れに対 して,義 務者は,そ のような情報を容易に与えることができる ような法律関係においては,信 義則に基づいて報告義務が認められるとの考え 方は,以 下にあげる裁判例 【12】を晴矢 とし,後 の裁判例によっても繰 り返 し 示 され,信 義則に依拠 して報告義務の存在 を認める裁判例の定式 として確立 し たものとなった。 以下では,ま ず,こ のような定式に基づいて報告義務の存否を判断する裁判 例のうちの代表的なものを,報 告義務の存在を肯定するものと否定するものと に分けて,そ れぞれ判決が下された時期の順に紹介する。その上で,そ れらに 考察を加えることによって,報 告義務が,具 体的な局面において,ど のような 機能を果たす ものとして問題 とされ,ど のような要件の下で,ど のように根拠 づけられているのかを明らかにする。 (a)裁判例の紹介 [肯定例] 【12】RG Urt.v.4.5.1923(RGZ108,1) [事実]化学工場や精油所 を経営す るXは ,機 械 の潤滑剤や工業用 オイル等 に ついて,六 つの図形記号 を商標 として登録 していた。Xは ,Yが ,潤 滑剤の広 告 のために,こ れ と取 り違 えられるおそれのある記号 を使用 し,Xの 商標権 を 侵害 した として,Yに 対 して,(1)当 該記号の使用の差 し止め,(11)当該記号 を 使用 した前 と後 の Yの 潤滑剤 の販売 に関す る計算 の報告,(五1)Yが損害賠償義 務 を負 うことの確認 を求めて,訴 えを提起 した。LGと OLGは Xの 請求 を棄却 した。RGは ,Xの 上告 を容れ,(1)に ついてのXの 請求 を認容 し,そ の余の請 求 については,原 審判決 を破棄 し,事 件 を原審裁判所 に差 し戻 した。 [判旨]故意かつ違法 に他 人の商標 を自己の商品の印 として利用する者 は,確 かに,不 当に他人の権利 を侵害 してはいるが,客 観的には他人の事務ではな く 自己の事務 を処理 していることか ら,BGB687条 は適用 されない とす るOLGの

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ドイツ法における報告義務と顛末報告義務 (3) 201 判 断 は正 当であ る。 しか しなが ら,義 務者 に対 す る情報請求権 が,権 利 の追求 を著 しく容易 に した り,そ もそ も,は じめて可能 にす る ような場合 には,事 務 管理 を度外 視 して も,信 義則 に基づ いて,そ の本 質上 ,権 利者 は,帰 責性 な し に 自己の権利 の存在 と範 囲 とを知 らず ,こ れ に対 して,義 務者 は,そ の ような 情報を容易に与えることができる立場にあるような法律関係においては,権 利 者に報告請求権が認められる。 【13】BGH Urt,v.13.6.1985(BGHZ95,285=NJW1986,1247) [事実]Ylは,ポ ルノ映画や ビデオを制作 し,Y2は ,こ れを販売 した。X(ド イツ音楽著作権協会 :GEMA)は ,私 的利用 と非公 開の再生 のため に制作 さ れた映画の楽曲に,自 己が擁護す る複製権,及 び,頒 布権 に対す る侵害がある として,Yら に対 して,段 階訴訟 によって,ま ず,報 告 を求めて,訴 えを提起 した。LGは ,一 部判決 によって,Xの 報告請求 を認容 した。OLGは ,Xの 報 告請求の一部 を棄却 した。BGHは ,Xの 上告 を容れ,Yら の上告 を棄却 して, 原審判決 を破棄 し,事 件 を原審裁判所 に差 し戻 した。 [判旨]原審裁判所 は,妥 当にも,以 下の ことを前提 とす る。す なわち,権 利 者 は,帰 責性 な しに自己の権利 の存在 と範囲 とについて知 らず,自 己の支払い 請求権 の準備 と実現 とに必要な情報 を,期 待可能な方法では自力で入手で きず, 義務者は,容 易 に,す なわち,不 当な負担 となることな しに,情 報 を与え得 る 場合 には,信 義則 に基づいて報告義務が認め られる。権利者 と義務者 との間に 特別の法律関係が存在す ることが要件 となるが,法 定の債権債務関係,例 えば, 不法行為 に基づ く債権債務関係 もこれ を充足す る。 【14】BGH Urt.v.8.1.1986(N」 W RR1986,874) [事実]自己所有の複数の土地からの砂利の採掘 を業 として営んでいたXは , そのうちの三つの土地に,訴 外A有 限会社のために,制 限的人益権を設定 した。 AX間 には,当 該入役権の第三者への譲渡が認められる旨の合意がなされてい た。Xは ,Aか ら制限的人役権 を譲 り受けたYが ,定 められた境界を超えて砂

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利 を採取 した として,Yに 対 して,(1)砂 利採取の範囲についての報告,(11)採 取 した砂利 を加工 し売却 した ことによって得 た利益 についての報告,(li)損害 賠償 の一部請求 として,15万 マルクの支払い を求めて,訴 えを提起 した。LG は,Xの 請求 を棄却 した。OLGは ,控 訴段 階で追加 された副位請求 (砂利 の 再顛補)の 限 りで Xの 請求 を認容 した。BGHは ,Yの 上告 とXの 附帯上告の 双方 を容れ,原 審判決 を破棄 し,事 件 を原審裁判所 に差 し戻 した。 [判旨]BGHが 繰 り返 し判示 しているように,特 別の法的根拠か ら派生す るの ではない一般的な報告義務 は認め られていない。 しか しなが ら,そ の本質上, 権利者 は,帰 責性 な しに自己の権利の存在 と範囲 とについて知 らず,こ れに対 して,義 務者 は,そ の ような情報 を容易 に与え得 る立場 にあるような法律 関係 においては,報 告請求権が認め られている。それぞれの場合 において,権 利者 と義務者 との間に既 に存在する特別の法律 関係が要件 となる。いずれにせ よ, 本件 においては,制 限的人役権 によって構成 される両当事者間の法律関係 に基 づいて,報 告請求権が認め られる。 [否定例] 【15】BGH Urt,v。 18.1.1978(N」 W1978,1002) [事実]Xは ,1974年 7月18日にYの 夫である訴外 Aの 財産 について,そ の前 日に,Aが 無限責任社員である合資会社の財産 について,そ れぞれ開始 した破 産手続 における破産管財人であった。Xの 問い合わせ に対 して,Aは ,破 産手 続時に も,そ れ以前の二年間にも,訴 外 B会 社の株主や機関ではなかった旨説 明 した。 Xは ,そ の設立 にAが 関与 したB会 社の株式の全部,ま たは,大 部分 が,Yの ところにある として,BGB1362条 ,及 び,補 助 的に破産否認 に依拠 して,Yに 対 して,Yの B会 社 における株式持 ち分 についての報告 を求めて, 訴 えを提起 した。LGは ,Xの 請求 を認容 した。OLGは ,Xの 請求 を棄却 した。 BGHは ,Xの 上告 を棄却 した。 [判旨]ある者が他人 にとって重要であ り得 る事実 についての情報 を有 してい る,あ るいは,有 し得 るとい う状況のみでは,報 告は義務づけ られない。確か

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ドイツ法における報告義務と顛末報告義務 (3) 203 に,報 告請求権 は,そ の本質上,権 利者は,帰 責性 な しに自己の権利の存在 と 範囲 とについて知 らず,こ れに対 して,義 務者 は,容 易 にそれについて情報 を 与 え得 る立場 にあるような法律 関係 において認め られている。 しか しなが ら, 権利者 と義務者 との間の,原 則 として,既 に存在す る特別の法律関係が要件 と される。種 々の契約や,法 定の債権債務関係,と りわけ,不 法行為 において, この ような要件 は満たされる。後者 においては,給 付請求権の根拠が存在 し, その内容のみが明 らかでない場合 に特別の法律 関係が認め られ,そ の結果,報 告請求権が認め られる。 【16】BGH Urt.v.8.10.1986(N」 W―RR1987,173) [事実]不動産販売 を業 とす るXと Yと は,共 同で不動産販売業 を行 うことを 検討 していた。住宅団地販売の機会のあることを知 ったXは ,こ れをYに 知 ら せ,売 主の渉外担当者である訴外 Aの 名 を教 えた。Yは ,Aと 連絡 をとり,X の事務所での会合 において,販 売 についての交渉が行 われた。Xが ;仲 立手数 料 を計算す るための必要書類 を求めたのに対 して,Yは ,報 告 を した り手数料 を支払 った りするつ もりのない旨の返答 をした。Xは ,Yに 対 して,報 告,宣 誓 に代 わる保証 ,手 数料 の支払い を求めて,訴 えを提起 した。LGは ,Xの 請 求 を棄却 した。OLGは ,Xの 請求 を,報 告請求の限 りで認容 し,そ の余 の請 求 については,LG判 決 を破美 し,LGに 差 し戻 した。BGHは ,Yの 上告 を容れ, 原審判決 を破棄 し,事 件 を原審裁判所 に差 し戻 した。 [判旨]確立 した判例 による と,当 事者 間に存在す る法律 関係が,権 利者 は, 帰責性 な しに自己の権利の存在 と範囲 とについて知 らず,そ れゆえ,義 務者の 報告 を必要 としているのに対 して,義 務者 は,容 易 に情報 を与えることがで き, それに よつて不 当な負担 を強い られない とい う状況 を伴 う場合 には,信 義則 (BGB242条)に 基づ いて報告請求権が認 め られる。 Xが ,Yの 販売結果 に依 拠す る手数料請求権 を有することによって,こ の ような報告義務 を認めた原審 裁判所の判断には,法 解釈の誤 りがある。原審裁判所 は,仲 立給付の委託 を認 定 してい るが,Xが 会合 を媒介 しYが それ に応 じただけでは,BGB653条 1項

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の意味 での仲立給付 の 「委託」 が あ った とい うには不十分 であ り,単 に媒介行 為 が利 用 され ただ けで は,仲 立契約 の締結 が あ った とはい えない。 (b)考察 判例は,顛 末報告義務については,他 人の事務 を処理する法律関係に限つて 認められるとの見解を維持 しつつ 《2)②で紹介 した 【2】 から 【5】 は,【12】 以降の裁判例である),報 告義務 については,特 定の法律関係の存在に依拠す るのではなく,信 義則に基づいて認める方向へ と転回した。その晴矢 となる裁 判例は,他 人の事務を処理する場合にはあたらないとして,顛 末報告義務 (計 算報告義務)の 存在が否定されてきた商標権侵害の事案に関するものであった (【12】)。 【12】から 【16】は,い ずれも,「主請求の準備」のために情報の提供が求 め られた事案に関するものであ り,【12】から 【14】においては,報 告義務の 存在が肯定 されている。裁判例において,個 別規定が直接適用 される場合を超 えて,報 告義務 ・顛末報告義務の妥当範囲が拡張されているのは,主 請求を準 備するために情報の提供が要請される場合についてであるという近時の類型化 論の認識は,こ れらの裁判例に関しても,正 当なものであるということができ る。

もっとも,こ こでも,単 に,権 利者が主請求を準備するために必要とする情

報を,他 人 (義務者)が 有 しているという状況があるだけでは,報 告義務は基

礎づけられず (【

15】は,そ の旨を明示する),当事者間に,そ の本質上,権 利

者は,帰 責性なしに自己の権利の存在と範囲とについて知らず,こ れに対 して,

義務者は,そ のような情報を容易に与えることができる立場にあるような法律

関係が存在することが必要であるとされている (112】

から 【

16】

)。これらの

裁判例 においては,主 請求 を準備す るために情報の提供が要請 されるとい う状 況が,両 当事者間の法律関係 の性質に出来することによって,報 告義務の存在 が実質的に基礎づけ られているとい うことがで きる。 この ような法律 関係 は,権 利者 と義務者 との間に既 に存在する特別の法律関

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ドイツ法における報告義務と顛末報告義務 (3) 205 係でなければならないとされてお り (【14】【15】),契 約のみならず法定の債権 債務関係 も,こ れに該当 し得るとの一般論が示 されている (【13】【15】)。具体 的には,商 標権侵害者 と権利者 との関係 (【12】),著 作権侵害者 と権利者 との 関係 (【13】),制 限的人益権の設定者 と権利者 との関係 (【14】)力S,報 告義務 を基礎づける特別の法律関係であるとされている。また,【16】は,報 告義務 を認めた原審判決を破棄 し,事 件を原審裁判所に差 し戻 したものであるが,仲 立契約の締結を基礎づける事実 (仲立の委託)が 認定されていないことが理由 とされてお り,仲 立契約が,報 告義務 を基礎づける特別の法律関係にあたるこ とが前提 とされていると考えられる(lЮ)。 これらの法律関係 を主請求 との関係でみてみると,両 当事者間の特別の法律 関係の存在が,主 請求 とは無関係 に認められる場合 (【14】【16】(但し,仲 立 契約の締結 を基礎づける事実が認定された場合))と ,一 定の請求権 (主請求) の発生を基礎づける事実があることによって,両 当事者間の特別の法律関係が 構成 される場合 (【12】【13】)と に分類することができる(貶0。前者の類型にお いては,法 律関係の存在が示されれば,主 請求の存否 ・範囲についての情報の 提供が義務づけられるのに対 して,後 者の類型においては,主 請求の存在を基 礎づける事実が示されて初めて,そ の範囲についての情報の提供が義務づけら れることとなる。前者の類型の代表例は,他 人の利益の擁護を要素 とする本来 的な意味での他人の事務 を処理する法律関係 ((2)②を参照)で あ り,無 体財 産権の侵害者 と権利者 との法律関係 《2)③を参照)は ,(形 式的な意味での) 他人の事務を処理する法律関係にあたるか否かにかかわらず,後 者の類型に属 するものと考えられる。判例において,特 定の法律関係の存在に依拠するので はなく,信 義則によって報告義務 を基礎づけるという立場がとられた結果,報 告義務 ・顛末報告義務の根拠 を,両 当事者間の法律関係の性質に求めるという 見解は維持 しつつ,後 者の類型についても,一 様に報告義務を認めることが可 能 となり,主 請求を準備するために必要な情報の提供を義務づけるという要請 に,広 く応え得ることとなったということができる。 具体的な局面において報告義務が認められるためには,さ らに,権 利者が情

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報 を有 して い な い こ とにつ い て帰 責 性 の な い こ と,及 び,義 務 者 が容 易 に情 報 を提 供 で きる こ とが必 要 で あ る と され て い る。律)では,こ れ ら も含 め て ,報 告 義 務 ・顛 末 報 告 義 務 の具 体 的 な要 件 と存 否 判 断 の規 律 につ い て み て い くこ と と す る 。 (101)初 期 の裁判例 においては,BGBに 一般的な報告義務 ・顛末報告義務 についての 規定 が置 かれてい ない こ とが,そ の根拠 とされていた (RG Urt.v.30。 11.1906 (Gruchot51,897,899f)RG Urt,v.3.6.1921(RGZ102,235f.))。 その後 ,顛 末 報告義務 の妥 当範 囲 を広義の 「他人の事務 を処理す る法律 関係」へ と拡張する裁判 例 の展 開 を受 けて,BGB259条 は一般的な計算報告義務 を基礎づ けない (当事者間 に一定の関係が存在す ることが必要である)と する裁判例 (RG Urt.v.6。3.1930 (HRR1930,Nr.966)),及び,信 義則 に依拠 して報告義務 の妥 当範 囲 を拡張す る裁 判例 の展 開 を受 けて,BGB242条 に基づ く一般的な報告義務 は存在 しない (当事者 間の特別の法律 関係 の存在等の要件が充足 される必要がある)と する裁判例 (BGH Urt.v。6.6.1979(BGHZ74,379f.=WW1979,1832》 が現 れ,裁 判例 において報 告義務 ・顛末報告義務 の妥 当範囲が拡張 されている状況の下で も,一 般的な報告義 務 ・顛末報告義務 は存在 しない との考 え方が維持 されることが確認 された。 さらに, 近時の裁判例 は,よ リー般的に, ドイツ法 には,特 別の法的根拠 に基づかない一般 的な報告義務 ・顛末報告義務 は存在 しない との見解 を示 した上で,あ る者が,他 の 者 に とって有意義であ り得 る事実 について知識 を有 しているとい う状況のみでは, 報告義務 は基礎づけ られず (BGH Urt,v.22.1.1957(NJW1957,66銃 たBGH Urt. v.7.5。 1980(N」W1980,2463i)),報 告義務 は,権 利者 と義務者 との間に既 に存在 す る特別 の法律 関係 を前提 とす る と述べ る (BGH Urt.v.8.4.1981(N」 W1981, 1733》。 なお,実 体法上,一 般的な情報提供義務 (報告義務 ・顛末報告義務)は 存 在せず,そ れを導入するのは訴訟法の任務で もない とした上で,民 事訴訟法上の一 般 的 な事案解 明義務 (allgemeine prozessuale Aufklarungspnicht)は存在 しない との見解 を示す裁判例 としてBGH Urt.v.11.6.1990(N」 W1990,3151)が ある。 (102)Trdtel,a.a.0.lAnm.25).

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ドイツ法における報告義務 と顛末報告義務 (3) 207 (104)こ れは, ドイツがチ ェコを占領 していた時期 に,RGが ,オ ース トリアの執行法 (Exekutionsordnung)と民法典 (ABGB),及 び,BGBを 手がか りとしてチ ェコ での事件 を扱 った裁判例 である。裁判例 【1】 を参照 しつつ,そ れ と同一の定式に 依拠 して顛末報告義務 (計算報告義務 )の 存否 の判断が な されてお り,BGBの コ ンメ ンタールにおいて も,RGの 裁判例 として何 ら留保 な しに紹介 されていること か ら (A/1unchener/Keller,a.a.0.lAnm.74), § 259 Rn.8;Staudinger/ヽValter selb, 2.Buch,13.Bearb.,1995,§259 Rn.5),ここで とりあげることとす る。

(105)Sturner,ac a.O.lAnm.76),S.287を参照。 さらに,委 任関係 の本質的要素 は,事 務本人の利益 の擁護 を顧慮 しての債務者 (事務処理者)の 誠実義務 (Treup■icht) であ り,こ の誠実義務 は,事 務本人が委任事務処理 について包括的に情報 を入手 し 得 ることが必要である とい うことの必須 の相関概念である と述べ るDrk lkels,Die Rechnungslegung gema鳥 §259 Abs.l BGB,Diss,1976,S.54を 参照。

(106)同様 の趣 旨の理解 を示す もの として,Munchener/Keller,a.a.O.lAnm.惚),§259 Rn.8を参照。 さらに,(契 約)両 当事者間に,一 方当事者が 自分 自身の利益 ととも に他方当事者の利益 をも擁護する義務 を負 うような継続的利益共同体関係のあるこ とを根拠 として,報 告義務の存在 を肯定する裁判例 (RG Urt.v。12.2.1918(RGZ 92,201,203〉BGH Urte v。2.4.1957(N」W1957,1026)[供給者の直接取引 によっ て販売者の一手販売権が侵害 された とい う事案 について,前 者の後者 に対す る報告 義務 を肯定]),及び,よ リー般的に情報提供義務 (報告義務 ・顛末報告義務)を 基 礎づ けるRGRK/Richard Alff,Bd.Il.Tell l.,12.Aufl。,1976(14.Lieferung 1974),

§§259-261 Rn.4を参照。 (107)この ような 「他人の権利領域への違法 な侵害が な された場合」 を,委 任契約 を典 型例 とす る 「一方当事者が他方当事者の利益 を擁護 した り配慮 した りすることを本 質的 な義務 内容 とす る法律 関係」 とは明確 に区別す る もの として,Sturner,a.a. 0。lAnm.76),S.289を参照。 (108)BGB687条 2項の立法過程 においては,こ の ような事務 の本 人 に,単 に不法行為 に基づ く請求権のみ を与 え,事 務管理の規定の適用 を排除する部分草案 に対 して, 事務 の本人の利益 を正当に評価 しない ものである との批判が加 えられた。そ して, 債務者 (侵害者)を 事務管理者 として取 り扱 うことを認めることによつて,債 務者

(24)

に,利 得 の引 き渡 しを義務づ けるべ きである との考 え方が示 された (PrOtokolle Ⅱ,a.a.0.lAnm.39),S.742f.)。 Munchener/seller,a.a.0.lAnm.15), § 687 Rn。21 は,こ の ような立法者の見解が,後 の実務 において実現 されていると述べ る。 ( 1 0 9 ) B G B 施 行以前 に, 事 務管理法 を援用す ることによって, 無 体財産権侵害者の権 利者 に対す る計算報告義務 を基礎づ けた裁判例 として, R O H G U r t . v . 1 3 . 9 。 1 8 7 7 ( R O H G 2 2 , 3 3 8 , 2 4 0 ば. [ 無断で脚本 を上演 し脚本家の著作権 を侵害 した とい う事案 において,普 通法,及 び,ザ クセ ン民法典 を手がか りとして,侵 害者 を事務管理者 として取 り扱い,計 算報告義務 を肯定])力Sある。なお,ザ クセ ン民法典 は,「委任

に基づいて,あ るいは,委任なしに他人の事務を処理する者,他人の物を譲渡する

者,共 有物 を共有者 として管理する者,そ の他の法律上の原因に基9‐‐いて管理 を行 う者,他 人の財産 を果実 とともに引 き渡す義務 を負 う者は,事 務の本人,他 の共有 者,あ るいは,そ の他 の権利者 に対 して,計 算 を報告する義務 を負 う」 と定める, 計算報告義務 についての一般的な規定 (1393条)を 有 していた。ザ クセ ン民法典 に て)Vヽて「は, Burgerliches Gesetzbuch fur das K6nigreich Sachsen von 1863/1865, in:Neudrucke privatrechtlicher Kodinkationen und Entwtrfe des 19,」ahrhunderts B d . 4 . , 1 9 7 3 によった。 (110)商標権侵害についての判例の立場は,後 にあげる裁判例 【12】において,大 きく 転回することとなるため,こ こでは,そ の他の無体財産権侵害の事案 も含めて,そ れ以前の裁判例のみをとりあげることとする。 (111)Staudinger/Wittmann,a.a.0。lAnm.70),S687 Rn.21を参照。 ド イツ法におけ る三つの損害算定方法に関する我が国の文献 としては,田 村善之 F知的財産権 と損 害賠償』(弘文堂 ,1993)63頁以下がある。 (112)裁判例 【7】 と 【8】 を参照。BGB施 行以前に,こ れを,事 務管理における受 取物の引 き渡 し義務 として説明 した裁判例 として,RG Urtr v.8.6。1895(RGZ35, 63,71i[無断で自動演奏器用の楽譜盤に曲を使用 して作曲者の著作権を侵害 した者 の利得の引渡義務を肯定])があるも (113)BGB687条2項の類推は,当 初は,667条 によって利得の引 き渡 しを基礎づけるた めではな く,利 得の引 き渡 しを請求するために必要な計算報告を,666条 によって 基礎づけるために行われたとの理解 を示す もの として,HOrst Heinttch」akobs,

(25)

ドイツ法 における報告義務 と顛末報告義務 (3) 209 Eingnfsen、crb und Vem6gensverschiebung in der Lehre von der ungerechtfertigt en Bereicherung, 1964,S,91を 参照 。

( 1 1 4 ) もっ とも, そ の多 くは, 後 にあげる裁判例 【1 2 】において商標権侵害者の報告義 務が認め られた ことを前提 としつつ, 商 標権侵害者 には計算報告義務 も課せ られる べ きである とす る ものである。Gerdes,Rechnungslegung bei Warenzeichen一u n d Ausstattungs― Verletzung, GRUR1924, 96f.; Alfred Hagens, Warenzeichenrecht, ャ1927, §14 Anm.19;Eduard Reimer,Wettbewerbs― und Warenzeichenrecht,3.

Aua.,1954,Kap.109 Anm.8;Adolf Baumbach/Wolfgang Hefermehl,Wettbewerbs und Warenzeichenrecht Bd.I.,9.Aufl.,1964,tlWG Einl.Rn.275を 参員R。 よ リー般 的には, Richard Salomon,Der Anspruch auf Auskunftsertellung im Privatrecht, 1929,S.30が ,判 例 は,計 算報告請求権 をで きる限 り広 く認める方向に展 開 してい る ものの,な お,計 算報告請求権が認め られる必要性があるにもかかわ らず,そ れ が認め られていない場合が多 くあるとの見解 を示す。

(115)Dernburg,a.a.0.lAnm。 40). (116)Dernburg,a.a.O.lAnm.401,S.87.

(117)Alfred Rosenthal,Der Anspruch auf Rechnungslegung,HansRZ1919,119ff.は, 他人か ら違法 に奪 った利益 を手 に入れる者 は,そ の他人に対 して,あ る意味で横領 した価額 について,故 意 に不明確 に した り,そ れによって,法 律で保護 されている 損害賠償請求権 の行使 を妨 げた り挫折 させた りしない とい うことが信義則 によって 要請 されるとの考え方に基づいて,報 告義務や計算報告義務 を基礎づける。このロー ゼ ンタールの見解は,デ ルンブルクの見解 と併せて,後 にあげる裁判例 【12】によっ て引用 され,信 義則 に依拠 しての報告義務の妥当範囲の拡張 についての理論的基礎 となった。

(118)Soerge1/woli a.a.0.lA― ,73),§260 Rn.数 ■,Rn.29,Rn3α P』andt lttrgediches Gesetzbuch(以 下では,Palandt/執 筆者名で引用),59.Aun.,20∞ ,§ §259-261 Rn,9 ff.,Rn.12,Rn.13[Helmut Heinrichsl Lorenz,a.a,0.lAnm.92),S.572■ を参照。 (119)Lorenz,a.a.0,lAnm。 92),S.573は ,報 告義務 を基礎づ ける法律 関係 は,類 型的

に,請 求権の発生 について確知で きない状況 を伴 うものでなければならない との見 解 を示 した上で,指 示仲立人の報酬請求権 は,原 則 として指示仲立人が関与 しない

(26)

(委託者 と相手方 との)主 たる契約の締結 によって発生す ることか ら,指 示仲立契 約 は,そ の好例であると述べ る。 (120)Lorenz,a.a.0.lAnm.92),S.573は ,契 約 に基づ く特別 関係 においては,法 律 関 係 の存在 (契約の成立)は 示 されなければな らないが,請 求権 (主請求)の 発生が 既 に示 されている必要は な く,報 告請求権 は,請 求権の範囲のみならず存在 につい ての情報 をも入手 させ る機能 を有するのに対 して,法 定の特別関係 においては,報 告義務 を基礎づ ける特別の関係 は,少 な くとも,請 求権の発生根拠が存在すること を前提 とすると述べて,前 者 と後者 とを区別する。このような分類は,コ ンメンター ル において も比較的一般的な ものである (Soerge1/wolf,a.a.0.lAnm.73),§ 260 m.2監 ;帥Iunchener/Keller,a,a.0.lAm.74),§ 260 Rn,11,Rn.la Palandt/Heindchs, a.a.0.lAnm.118),§ §259-261 Rn.10f.を参照)。 いずれの類型 において も,原 則 として,両 当事者間に既 に存在する特別の法律関係が必要であ り,場 合 によっては 存在 す るか も しれない法律 関係 に基づ いて報告義務 は認め られない とされている (【15】 【16】)。近時,遺 留分権利者である相続人が,共 同相続人の一人が被相続人 か ら無償処分 を受 けた として,こ れに対 して報告 を求めた事案 について,遺 留分減 殺 (補充)請 求権の発生 を基礎づける事実は確定 されている必要はない との見解 を 示す裁判例 (BGH Urt.v。 2.6。 1993(N」 W1993,2737))が 現れた。相続人ではな い遺留分権利者 の相続人 に対す る報告請求権 についてはBGB2314条 に明文の規定 が置かれていることか ら,他 の信義則 に基づ く報告義務の拡張事例 と同列 に論 じう るかが問題 となるが,こ の点 をお くとして も,こ こで も,報 告請求が,単 なる模索 (reine Ausforschung)を 目的 とす る ものであってはな らず,主 請求 (遺留分補充 請 求権 )を 基礎 づ け る事 実 (被相続 人 の無償 処分)に ついての一定 の手 がか り (gewisse Anhaltspunkte)が 示 される必要性がある (同様 の見解 を示す裁判例 と して, BGH Urt.v.15.3.1972(BGHZ58,237,239=N」 W1972,907);BGH Urt. v.27.6。 1973(BGHZ61,180,185=N」 W1973,1876た BGH Urt.v.26.2.1986 ( B G H Z 9 7 , 1 8 8 , 1 9 3 = N J W 1 9 8 6 , 1 7 5 5 ) がある。) と されていることか ら, 両 当事者 間の特別の法律 関係の存在 とい う要件 は, 緩 和 されてはいるものの,維 持 されてい る とい うことがで きる。

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