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日本原子力学会和文論文誌,Vol. 12, No. 2, p (2013), doi: /taesj.j 総説福島第一原子力発電所事故関連論文 福島第一原子力発電所事故に関する 5 つの事故調査報告書のレビューと技術的課題の分析 事故の進展と原因に焦点を当て

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1 日本原子力研究開発機構 安全研究センター

Corresponding author, E-mail: watanabe.norio@jaea.go.jp

福島第一原子力発電所事故関連論文

福島第一原子力発電所事故に関する 5 つの事故調査報告書の

レビューと技術的課題の分析

事故の進展と原因に焦点を当てて

渡邉 憲夫

1,

,与能本 泰介

1

,玉置 等史

1

,中村 武彦

1

,丸山

1

Review of Five Investigation Committees' Reports on the Fukushima Dai-ichi

Nuclear Power Plant Severe Accident

Focusing on Accident Progression and Causes

Norio WATANABE1,, Taisuke YONOMOTO1, Hitoshi TAMAKI1, Takehiko NAKAMURA1and Yu MARUYAMA1

1Nuclear Safety Research Center, Japan Atomic Energy Agency, 24 Shirane, Shirakata, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki 3191195, Japan (Received December 10, 2012; accepted in revised form January 21, 2013; published online March 29, 2013)

On March 11, 2011, the Tohoku District-oŠ the Paciˆc Ocean Earthquake and the subsequent tsunami resulted in the severe core damage at TEPCO's Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station Units 13, involving hydrogen explosions at Units 1, 3, and 4 and the large release of radioactive materials to the environment. Four independent committees were established by the Japanese government, the Diet of Japan, the Rebuild Japan Initiative Foundation, and TEPCO to investigate the accident and published their respective reports. Also, the Nuclear and Industrial Safety Agency carried out an analysis of accident causes to obtain the lessons learned from the accident and made its report public. This article reviews the reports and clariˆes the diŠerences in their positions, from the technological point of view, focusing on the accident progression and causes. Moreover, the undiscussed issues are identiˆed to provide insights useful for the near-term regulatory activities including accident investigation by the Nuclear Regulation Authority.

KEYWORDS: Fukushima Dai-ichi NPS, accident investigation reports, severe core damage, technical review, accident progression and causes, undiscussed issues

I. は じ め に

2011年 3 月11日に発生した東京電力株福島第一原子力 発電所の事故に関しては,東京電力株はもとより,政府, 国会,民間有識者が独立した事故調査委員会を設置しそれ ぞれの立場から独自の視点で調査・分析を行い,報告書に まとめて公表している。東京電力株は,同社内に外部有識 者を中心とした事故調査委員会を組織し,平成23年12月 に中間報告書1),翌24年 6 月に最終報告書2)を公表した。 一方,政府の「東京電力福島原子力発電所における事故調 査・検証委員会」は,平成23年12月に中間報告書3),平成 24年 7 月に最終報告書4)を公表した。国会の「東京電力福 島原子力発電所事故調査委員会」は,平成24年 6 月に最 終報告書5)を,また,民間有識者による「福島原発事故独 立検証委員会」は,平成24年 3 月に最終報告書6)を公表し た。その他,原子力安全・保安院は,今後の安全性向上に 資するために,「技術的知見」を導出することを目的に事 故原因の分析を行い,平成24年 3 月にその結果を報告書7) にまとめた。 保安院の報告書は,事故の進展や原因だけに着目した分 析の結果を示したものであるが,その他の報告書は,それ に加えて放射性物質の放出による環境および住民等の被害 状況,政府の緊急時対応や,これまでの原子力規制の問題 点など幅広い視点からの分析結果を示している。本報で は,今後の事故状況の調査や新たな規制制度の構築に役立 つ情報として整理することを目的に,特に炉心損傷とその 後の放射性物質の放出に至った 1~3 号機における事故の 進展と原因に着目し,技術的な側面から,これら 5 つの 報告書をレビューし,それぞれの調査結果における見解の

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相違等について分析,整理するとともに,これらの報告書 において十分な議論がなされていない課題等を明らかにし た。 なお,以下では,東京電力株の中間報告書と最終報告書 および添付資料を「東電事故調」,政府の東京電力福島原 子力発電所における事故調査・検証委員会の中間報告書と 最終報告書および資料を「政府事故調」,国会の東京電力 福島原子力発電所事故調査委員会の報告書および資料を 「国会事故調」,民間有識者による福島原発事故独立検証委 員会の報告書を「民間事故調」,原子力安全・保安院の技 術的知見に関する報告書を「保安院報告書」と表記するこ ととする。

II. 事故のシナリオと炉心損傷回避のための

方策に関する分析

1~3 号機では,地震と津波に起因した長期間の全交流 電源喪失(Station Blackout : SBO)により炉心損傷とその 後の放射性物質の放出に至っているが,事故の経緯は幾分 異なっている。その違いをわかりやすく表現するために, ここでは,イベントツリーにより実際の事故のシナリオを 整理するとともに,炉心損傷の回避方策に関する実際の対 応についても,このイベントツリーにより議論することと した。Figs. 1~3 に示すイベントツリーでは,1~3 号機 における実際の事故シナリオを赤のパスで示し,炉心損傷 を回避するためのシナリオを青のパスで示している。 今回の事故は,1~3 号機のいずれにおいても地震によ り原子炉がスクラムし,外部電源が喪失し,非常用ディー ゼル発電機(emergency diesel generator : EDG)が作動す るとともに,原子炉の冷却を行うための設備(1 号機の非 常用復水器(isolation condenser : IC),2, 3 号機の原子炉 隔離時冷却系(reactor core isolation cooling : RCIC))が作 動しており,ここまでは,ほぼ同じ経緯を辿っている。そ の後は,3 号機で高圧注水系(high pressure coolant injec-tion : HPCI)が作動した点を除けば,直流電源の喪失と交 流電源の復旧失敗により原子炉の減圧ができず,結果的に 代替注水も行うことができないというシナリオとなった。 仮 に, 直流電 源が 利用可 能で 交流電 源が 復旧す れば , RCIC や HPCI による炉心冷却とその後の崩壊熱除去で冷 温停止に移行できる。また,電源の復旧に失敗した場合で も,直流電源が利用できれば原子炉の減圧と代替注水およ び格納容器ベントの実施が可能となり,さらに,電源復旧 がタイムリに行われれば崩壊熱除去が機能して炉心の損傷 を回避できる。このように,直流電源の利用と電源の復旧 が行われていればいくつかの原子炉冷却手段を用いること により十分に炉心損傷を回避できる。  1 号機(Fig. 1)地震により,原子炉スクラム,外 部 電 源 喪 失 , タ ー ビ ン ト リ ッ プ , 主 蒸 気 隔 離 弁 ( main steam isolation valve : MSIV ) 閉 止 な ど が 相 次 い で 起 こ り,さらに,MSIV 閉止により原子炉圧力が上昇し,IC が自動起動した。また,EDG も自動起動し,所内の負荷 への給電が行われた。IC は約10分間の作動後に運転員に より手動で停止された。EDG は,津波の襲来までの約30 分間に渡って作動した。津波の襲来後は,電源盤の被水な どにより直流電源が喪失したため,IC や HPCI の手動起 動ができなくなるとともに,制御電源の喪失により水位計 等のパラメータ表示機能が喪失した。この時点で,1 号機 は,SBO に直流電源喪失が重なった状態となった。その 後,電源の復旧が行われることなく事故が進展し炉心損傷 に至っている。一方,この事故シナリオから炉心損傷を回 避するための方策としては,電源の復旧とその後の崩壊熱 除去,あるいは,原子炉の減圧操作と代替注水および格納 容器ベントが考えられるが,IC 停止から炉心損傷までの 時間的余裕が 2~3 時間と短いため,タイムリにこれらの 方策が成功する可能性は非常に小さい。実際,こうした 努力がなされたが成功には至らなかった。1 号機の事故進 展は,確率論的安全/リスク評価(probabilistic safety/risk assessment : PSA/PRA)における典型的な SBO シナリオ の 1 つである。

 2 号機(Fig. 2)地震により,原子炉スクラム,外 部電源喪失,タービントリップ,MSIV 閉止などが相次い で起こり,さらに,MSIV の閉止により原子炉圧力が上昇 したが,2 号機では,逃がし安全弁(safety relief valve : SRV)が作動し原子炉圧力の抑制が行われた。また,運転 員は,「事故時運転操作手順書(事象ベース)原子炉スクラ ム(B)主蒸気隔離弁閉の場合」(以後,「MSIV 閉原子炉ス クラム時手順書」と呼ぶ)」8)に従って,RCIC を手動で起 動した。幸いにも,津波の襲来により全電源が喪失する前 に RCIC を手動で起動させたため,直流電源が喪失したに も関わらず,約 70 時間にも及び RCIC は 作動を継続し た。しかし,RCIC 停止後は,電源の復旧も原子炉の減圧 もうまくいかず,1 号機と同様,SBO と直流電源喪失が 重なった状態となって炉心損傷に至った。一方,この事故 シナリオから炉心損傷を回避するためには,電源の復旧と その後の崩壊熱除去,あるいは,原子炉の減圧と代替注水 および格納容器ベントが必要となるが,RCIC が約 70 時 間も運転を継続していたことを考えると,電源の復旧や代 替注入は,1 号機に比べると,その可能性はかなり高いも のと考えられる。しかし,実際には,電源の復旧が間に合 わず,原子炉の減圧もできなかったために代替注水を行う ことはできなかった。2 号機の事故進展は,シナリオ的に は,SBO に直流電源喪失が重なったというものではある が,こうした状況下では期待されない RCIC が制御される ことなく長時間に渡って作動し水源の圧力抑制室(sup-pression chamber : SC)切替が行われるなど,現象的には 崩壊熱除去機能の喪失というシナリオに該当するといえる。  3 号機(Fig. 3)地震により,原子炉スクラム,外 部電源喪失,タービントリップ,MSIV 閉止などが相次い で起こり,さらに,MSIV 閉止により原子炉圧力が上昇し

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Fig. 1 1 号機のイベントツリーおよび事故進展 Fig. 2 2 号機のイベントツリーおよび事故進展 Fig. 3 3 号機のイベントツリーおよび事故進展 たが,3 号機では,SRV が作動し原子炉圧力の抑制が行 われた。また,運転員は,「事故時運転操作手順書(事象 ベース)原子炉スクラム事故(B)主蒸気隔離弁閉の場合」 (MSIV 閉原子炉スクラム時手順書)9)に従って,RCIC を 手動で起動した。ここまでは,2 号機と同じ経緯を辿った が,3 号機では,直流電源盤の一部が被水を免れたため, 制御電源が利用可能な状態にあり,HPCI も利用可能な状 態にあった。RCIC は約20時間に渡って作動を継続した が,弁の不調により自動的に停止した。その後,原子炉水 位の低下に伴って HPCI が自動的に起動し原子炉の水位

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a)ここでは,HPCI タービンへの蒸気供給により原子炉圧力を下 げるとともに,テストラインに冷却水を流すことにより原子炉 への注水流量を絞るという運転を指しているが,福島第一原子 力発電所の事故時運転操作手順書には,原子炉への注水を行わ ず原子炉を減圧させる1 つの方法として HPCI テストライン運 転を行うことが規定されている(手順書では,HPCI テストラ イン運転(注水不要))と記されている。 を維持するとともに,運転員の操作により HPCI のテス トライン運転a)を行って原子炉の減圧が行われた。しかし, HPCI を低圧状態で長時間運転したことにより,タービン の振動とそれに伴う配管の破損を懸念して HPCI は手動 で停止され,その後,SRV 開操作ができなかったため, 再 起動 を試み るも バッテ リの 枯渇に より 再起動 でき ず SBO と直流電源喪失が重なった状態となって炉心損傷に 至った。一方,この事故シナリオから炉心損傷を回避する ためには,電源の復旧とその後の崩壊熱除去,あるいは, 原子炉の減圧と代替注水および格納容器ベントが必要とな るが,RCIC あるいは HPCI が作動していた約35時間とい う時間的余裕があったものの 1 号機の水素爆発などの影 響もあっていずれもうまくいかなかった。特に,原子炉減 圧については,HPCI が作動していた約14時間のうちの 8 時間程度は,原子炉圧力が 1 MPa を下回っており(HPCI 手動停止時には 0.58 MPa),消防車を用いた代替注水が 直ぐにでもできる状況にあった。しかし,タイムリな減圧 操作と代替注水が行われなかった。3 号機では,直流電源 が利用可能であり RCIC や HPCI が実際に一定期間作動 したことから,典型的な SBO シナリオの 1 つであるが, これまでの PSA で想定してきた事故進展よりも長時間の 推移となっている。なお,HPCI のテストライン運転を減 圧操作とみなせば,3 号機のシナリオはイベントツリー上 の別のパスとなるが,HPCI を止めたことにより再び原子 炉圧力が上昇したためイベントツリーにおいてこの HPCI 運転を減圧操作として扱うことには無理がある。

III. 事故調査報告書のレビュー

各々の事故調による見解は必ずしも一致していない。特 に,所内電源設備(EDG の停止)や IC の手動停止など, 東電事故調や政府事故調と,国会事故調において,大きく 見解の異なる点があるため,ここでは,それらを中心に比 較検討するとともに,それぞれの見解に対して考察する。 1. 電源設備 ( 1 ) 外部電源の送電ルート 東電事故調,政府事故調,保安院報告書では,いずれ も,外部電源喪失について原因そのものに関する見解に大 きな相違点は認められない。一方,国会事故調では,7 回 線中 6 回線(2 ルート大熊 1, 2 線,大熊 3, 4 線・夜ノ 森 1, 2 号線併架)が,1 つの変電所(新福島変電所)からの 送電ルートであることに着目し,「今般の地震動により現 実化した送電鉄塔の倒壊だけでなく,台風や竜巻,豪雪と いった外部事象,意図的な破壊行為等の脅威に対して脆弱 性を有しており,新福島変電所もしくはその上流側の新い わき開閉所および東北電力富岡変電所(東電原子力線1, 2 号機に接続されている)からの送電機能を失うだけで全 号機が外部電源喪失に陥る状況であった」とし,外部電源 系が地震等の外部事象に対して多様性,独立性が確保され ていなかったことと,新福島変電所の耐震性不足を外部電 源喪失の一因と指摘している。また,保安院報告書では, 原子力発電所の安全確保を外部電源に過度に依存すること は適切でないとしながらも,交流電源確保の成否が原子力 発電所の安全確保に大きな影響を及ぼしたという事実を踏 まえ,外部電源の信頼性を向上させることが必要としてい る。しかしながら,原子力発電所に対する規制では,安全 設計審査指針において,各原子炉に対して 2 回線以上の 送電線により電力系統に接続されるよう求めているが,2 回線以上の送電線が 1 つの変電所に接続されるか否かは 規制の対象外であり電気事業者の裁量に委ねられている。 一方,米国においては,連邦規則の一般設計基準(General Design Criteria : GDC)10)により「送電網から所内電源系 統までの電力は,運転中に想定される事故状態および環境 条件下で起こる同時故障の可能性を低くするよう設計,配 置された物理的に独立した 2 回路(必ずしも別々の送電用 地を通す必要はない)によって供給されなければならない」 と規定されており,我が国の指針よりも厳しい要求を課し ているが,サイト外の変電所が規制の対象か否かは明確で はない。こうした海外の規定も参考としながら外部電源に 対する規制対象の範囲をどのように設定して外部電源の信 頼性向上を図るべきかについての検討が必要である。な お,国内には,女川原子力発電所のように,複数の独立し た変電所からの送電線に接続しているサイトもある7) ( 2 ) 所内電源設備の配置設計 東 電 事 故 調 で は , 所 内 電 源 設 備 ( 高 圧 電 源 盤 ( metal clad : MC),低圧電源盤(power center : PC),直流電源盤 および EDG)の被害状況について事実を記載しているに留 めているのに対し,政府事故調,国会事故調,保安院報告 書では,以下に示すように,これらの所内電源設備が機能 喪失に至った原因まで踏み込んでいる。 政府事故調では,所内電源設備の多くが津波による被水 が原因で機能を失ったとしており,EDG および電源盤に ついて設置場所の多重化・多様化等の措置が講じられてい なかったことを問題視している。また,SBO 対策は,隣 接する原子炉施設のいずれかが健全であることを前提とし ており,自然災害等の外的事象により複数の原子炉施設が 同時に損壊・故障する等により隣接の原子炉施設から電源 融通を受けられない事態となった場合の対処方策が検討さ れていなかったと指摘している。一方,国会事故調でも, 1 号機のすべての常用 MC と非常用 MC,常用 PC がター ビン建屋 1 階に設置されていること,3 号機においてすべ

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Table 1 非常用ディーゼル発電機等の配置設計の考え方 (BWR) 導入初期(福島第一1~5 号機)  米国BWR におけるプラント配置を踏襲した設計  地震に対する設計EDG については岩着した構造物に設置,重量物であることと振動対策のために地下階の基礎上(最地下)に 設置,電源盤(MC, PC)については基本的には電源の負荷先であるポンプ等の近傍に設置 導入中期(福島第一6 号機,福島第二 1~4 号機)  格納容器を内包する二次格納施設(原子炉建屋原子炉棟)の外側に原子炉建屋付属棟(以下,付属棟)を設置  建屋の地震時基礎浮き上り制限(接地率)を向上させ,この付属棟に耐震クラスが高い非常用電気品室およびEDG を設置  EDG については重量物であることと振動対策のために地下階の基礎上に設置 導入後期(柏崎刈羽 1~7 号機)  先行サイトに比べて岩盤レベルが深いため原子炉建屋を深く埋め込むことが必要  EDG を付属棟の整地面レベルに近い位置(地下 1 階あるいは地上 1 階)に設置して保守性を重視  振動対策は建屋の構造にて対処する配置  その後,この考え方が踏襲され,EDG の地上 1 階設置が標準的な配置 (PWR)  基本的な考え方耐震性を考慮して建屋高さや外郭を設定し,重量物は下層階に軽量物は高層階に配置  中央制御室(原子炉建屋)との接続性を考慮し,継電器,MC,蓄電池室を同建屋内の近傍に配置  多くのプラントにおいて,中央制御室の下層階に蓄電池室と継電器室,MC 室を設置  EDG については,その保守性も考慮して,ほぼ地面レベルに設置 (注PWR の場合には,BWR とは異なり,年代や原子炉型式による相違はほとんどない。) ての常用 MC と非常用 MC,常用 PC,非常用 PC, EDG が隣接するタービン建屋と制御建屋の地下 1 階に設置さ れていることを例として取り上げ,外部溢水だけでなく, 内部溢水や火災といった外部事象,意図的な破壊行為等の 脅威に対しても脆弱性を有しており,特定の 1 ヵ所にお ける被害だけで全交流電源喪失になる状況にあったと指摘 している。また,保安院報告書では,津波による水没・被 水という共通原因で同一建屋同一階に設置された機器が機 能喪失したことを重視し,所内電気設備の位置的な分散な ど独立性の強化の必要性を強調している。しかしながら, いずれの事故調においても,電源盤や EDG が,建屋の 1 階もしくは地下階に設置された背景に関して踏み込んだ分 析がなされていない。 安全設計審査指針では,非常用所内電源系に対して多重 性または多様性および独立性を求めているものの,物理的 分離に関する明確な要求はなく規制上の要求が不十分であ り,これが,根本原因の 1 つといえる。しかし,より重 要なのは,事業者がどのような考え方でこのような配置設 計にしたのかという点である。原子力安全委員会の安全設 計審査指針等検討小委において電気事業連合会から報告さ れた資料11,12)によれば,国内 BWR および PWR における 配置の考え方は,Table 1 に示すとおりであり,耐震性や 保守性,中央制御室への接続性などを考慮して配置設計が なされているが,特に標準的なガイドラインがある訳では なく,個々の事業者の裁量に委ねられている。こうした状 況も,電源盤や EDG がある特定の場所に設置されるとい う結果を招いたものと考えられる。 ( 3 ) 非常用ディーゼル発電機(EDG)の停止 東電事故調,政府事故調,民間事故調および保安院報告 書では,地震発生後に自動起動した EDG が停止した原因 を,津波により EDG や配電盤,直流電源盤が被水したこ とによるものとしているが,国会事故調は,東京電力株が 公表した津波到達時刻は,サイトへの到着時刻ではないと し,津波(第 2 波)到達時刻が非常用電源喪失時刻よりも 遅いとの推定から,少なくも 1 号機 A 系 EDG, 2 号機 B 系 EDG(空冷),4 号機 B 系 EDG(空冷)については電源喪 失時に第 2 波が到達していなければ非常用交流電源喪失 の原因は津波ではあり得ないとの見解を示している。また, 1 号 機 B 系 , 2 号 機 A 系 , 3 号 機 A 系 お よ び B 系 EDG の停止も津波によるといえるかは疑問であるとしている。 さらに,EDG の冷却用配管や燃料供給配管などの損傷が 生じて時間の経過とともに加熱や燃料切れにより停止する ケースや,地震による変形や機器,部品の移動によって軸 や軸受等のずれが生じて運転中に加熱,焼き付け等を起こ して停止する可能性などを取り上げている。 こうした国会事故調の指摘のように,地震による配管や 機械部品の損傷に起因して EDG が作動停止することも十 分あり得ると考えられるが,それはランダム性を有してお り,地震後に起動した複数の EDG がほぼ同時期に停止 (機能喪失)したという状況を踏まえると,こうした地震起 因の損傷を主たる原因とするのは現実的ではないと考えら れる。ただし,継続運転に失敗したという事例は過去にも 起こっており,また,偶発的な不具合と保守の不備などが 重なった結果として起こった可能性もあり,国会事故調の 見解を否定することはできない。

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2. 炉心冷却機能 ( 1 ) 1 号機非常用復水器(IC) 1 号機の IC に関しては,いずれの事故調においても重 要な問題として取り上げており,かなりのページを割いて いる。しかしながら,IC の手動停止,隔離弁の動作(閉止 ロジックを含む)および操作手順に関しては事故調間に見 解の相違がみられる。 (a) 手動停止の理由 地震発生後,原子炉圧力高で IC 2 系統が自動起動した が,その約10分後に手動停止している。この手動停止に ついて,東電事故調は,原子炉冷却材温度変化率が手順書 での制限値である 55°C/h を超える可能性があったことに よるものとし,政府事故調もこの理由に同意している。こ れに対し,国会事故調は,「東京電力株は IC 2 系統同時に 自動起動すれば,原子炉圧力や冷却材温度がどのように変 化するかを十分知った上で,IC の自動起動をセットして いたはずである。にも関わらず,冷却材の温度変化率を 55°C/h 以下に抑えられないので IC を手動停止したとする なら,IC は冷却能力が高すぎて実際にはうまく使うこと ができない欠陥装置であったか,IC 配管が破損したため に 55°C/h 以下の制限を守れなくなったかの,いずれかで ある。」とし,運転上の制限を遵守するために停止したと いう説明が不合理であると指摘するとともに,特に IC 配 管の破損の可能性を主張している。その根拠として,国会 事故調は,◯「原子炉圧力の降下が速いので IC 系配管や 他の配管から冷却材が漏れていないかどうかを確認するた め IC を止め,そして,原子炉圧力を手中に収め手順書に 従って最終的には冷温停止にもち込むことであった」との 運転員からの証言を得たこと,◯わずか11分の作動で, 炉圧が約 6.8 MPa(gage)から一気に約 4.5 MPa(gage)ま で落ちていること,を挙げている。この他にも,独原子力 安全基盤機構(JNES)による RELAP5 を用いた解析結果 を引用して 0.3 cm2以下の漏えい面積の場合に原子炉圧 力・水位の実測値から小破断冷却材喪失事故(SBLOCA) の発生を推測することも否定できないとしている。しかし, ◯については,圧力を手中に収めるための IC の起動停止 を行うというのは手順の規定そのものであり,実際,敦賀 1 号機での事象においても同様の操作を行っている13)。ま た,国会事故調も指摘しているように,東京電力株は, ICの使用経験もなくシミュレータ訓練も行っていないの で,IC 作動によりどの程度炉圧が低下するかについては 知識がなく,通常の停止の際の冷却速度よりも速いので, 漏えい確認も含めていろいろな可能性を考えたのは不思議 ではない。◯については,国会事故調でも引用している JNES の解析において,漏えいのない場合の解析結果と実 測値がよい一致を示していることから,炉圧の低下が大き 過ぎるという指摘は必ずしも適切ではない。また,0.3 cm2程度の漏えい面積であれば,弁のシートリークやポン プのシールリークがなんらかの原因で大きくなったと考え ても合理性を欠くものではなく,地震により配管の損傷が 起こったという決め手にはならない。 (b) 隔離弁の閉止ロジック IC 隔離弁の閉止に関して,東電事故調および政府事故 調が「フェイルセーフ機能」という表現を用いていること (民間事故調も同様)に関して国会事故調が異議を唱えてい るが,これは,同隔離弁の閉止ロジックに対してフェイル セーフの概念やこの用語の使用が適切か否かに関わる論争 であり,事故の進展や原因とは直接的に関係のない議論で ある。むしろ,IC の機能あるいは破断隔離のどちらを優 先すべきかに関する検討が行われた結果としての閉止ロジ ックなのか否かを検証すべきである。保安院報告書によれ ば,RCIC や HPCI ではタービン蒸気配管の破断検出回路 の電源喪失で隔離信号ができるようなロジックにはなって いないとのことである。また,国会事故調によれば,IC を有する米国 BWR, Oyster Creek では電源喪失で隔離弁 閉止には至らないとのことであり,同じような役割を果た す設備・系統の設計における基本的考え方が異なるのはな ぜかについての分析,検討が必要である。 なお,保安院報告書においても,弁開閉動作の制御回路 の直流電源が喪失し隔離弁作動のインターロックにより IC 機能を失う設計となっていたことが正しく認識されて いなかったことが事故の進展を早めた一因であると指摘し ている。 (c) 操作手順 政府事故調においては,「津波到達までの間,最終的な 冷温停止に向け,原子炉冷却材温度変化率 55°C/h 以下と いう運転上の制限を遵守しながら徐々に原子炉圧力を低下 させていこうと考えたとしても不自然ではない」という見 解を示している。当然のことながら,東電事故調において も,「弁の開閉操作によって原子炉圧力を制御するなど(中 略)冷温停止に向けた対応操作を行っていた」として特に 問題はなかったことを主張している。さらに,保安院報告 書においても,IC の自動起動により原子炉圧力が手順書 の規定値よりもかなり低くなったが,その後の IC による 圧力調整については敦賀 1 号機との実績と比較を通して 弁の継続的な開閉で実施したと考えるむね記載しているこ とから,明言はしていないものの手順上の問題はなかった との見解と思われる。しかしながら,IC の運転に当たっ ては,原子炉圧力を 6~7 MPa に維持するよう規定してお り,これは,MSIV の再開ができるまでの,いわば「場つ なぎ」としての役割であると考えられる。しかし,今回の 事故では,未曾有の大地震が発生し原子炉が自動スクラム し,さらに外部電源も喪失するといった事態になった上, 大きな余震がくる可能性も十分あると考え,IC による原 子炉圧力の維持を試みるのではなくできるだけ早く原子炉 を冷温停止に移行することを考えるべきであったと判断で きる。事実,1 号機の「事故時運転操作手順書(事象ベー ス ) 原 子 炉 ス ク ラ ム 事 故 ( B ) 主 蒸 気 隔 離 弁 閉 の 場 合 」

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b)前記脚注a)参照 (MSIV 閉原子炉スクラム時手順書)14)でも,IC の自動起 動は想定されておらず,SRV や HPCI テストライン運転 (注水不要)b),IC の手動操作による原子炉減圧を行うよ う規定されている。そもそも,IC は,原子炉を高温停止 状態に維持することを意図した系統であり,IC 本来の目 的を十分に理解していれば,今回のような地震による原子 炉スクラム時に IC を用いて冷温停止に移行すると考える のはむしろ不自然である。また,東電事故調では,これま で机上での訓練や弁の開閉操作しか行っていないことを認 めておきながら,「訓練と同じように冷温停止向けた操作 を行っていた」と主張しているが,この主張にも首肯でき ない。政府事故調と国会事故調が指摘しているように, 「IC の使用経験もなくシミュレータによる訓練も行われて いなかった」という事実は極めて重要なポイントであり, 過渡変化時にその機能を期待する系統について使用経験も なく十分な教育訓練も行われることなく原子炉の運転が行 われていたこと(すなわち,長年に渡ってセーフティカル チャが欠如していたこと)に注目し,他プラントにおいて こうした状況がないことを確認すべきである。なお,保安 院報告書では,敦賀 1 号機において IC の自動起動前に手 動起動操作が行われていることに言及しているものの,そ の違いに関するさらなる検討はなされていない。 こうした IC の操作を含めて,地震直後の操作に適用し た MSIV 閉原子炉スクラム時手順書の適切性に注目すべ きであるが,これについては,いずれの事故調においても 議論がなされていないため,4 章において,問題点等の整 理分析を行うこととする。 また,一時的な水位表示の値をもとに IC が作動してい ると思い込んだことに関して,政府事故調と国会事故調は, 3 月11日17時50分ごろの 1 号機原子炉建屋での高線量検 出に対する評価が不適切であったことを指摘しているが, これらの指摘のとおり,高線量が検出されたことから炉心 の損傷を疑うべきであり,IC が作動していないと考える のが自然である。 ( 2 ) 2 号機原子炉隔離時冷却系(RCIC)の継続作動と代 替注水 2 号機では,津波の襲来以降直流電源が喪失したにも関 わらず,RCIC が約70時間に渡って作動していたが,その 間(直流電源喪失後約35時間)に水源を手動で復水貯蔵タ ンク(condensate storage tank : CST)から SC に切り替え ている。この点に関し,政府事故調は,SC の圧力抑制機 能が次第に失われていき蒸気凝縮が低下したことで RCIC タ ー ビ ン か ら SC に 蒸 気 が 放 出 さ れ 難 く な っ た た め に RCICタービンの蒸気流量や回転数が低下した可能性があ るとしている。SC への水源切替時,それまでの水源であ った CST にはまだ十分な保有水量があったため,そのタ イミングで水源切替を行ったことについては疑問が残る。 また,政府事故調は,「RCIC により注水されているこ とで,2 号機の状態を実際よりも楽観視し,SC の水温, 圧力を監視して適切に評価する必要性が十分意識されてい なかった」ことを問題視し,3 号機原子炉建屋の爆発前 に,必要に応じて格納容器ベント,原子炉減圧を実施し, 消防車による原子炉への注水を実施できた可能性もあった のではないかと指摘している。こうした政府事故調の指摘 はそのとおりであるが,筆者らは,政府事故調とは異なる 視点から RCIC の継続作動と代替注水に関する東京電力株 の対応について以下のように分析している。 津波の襲来により直流電源が喪失したことから,運転員 らは,RCIC もその制御電源がなくなって利用できないと 認識していたものと思われる。事実,11日21時50分に仮 設バッテリをつなぎこむことで原子炉水位が有効燃料頂部 (top of active fuel : TAF)より上にあることを確認した後 に現場にて RCIC の作動を確認している。しかしながら, 保安院報告書が指摘しているように,RCIC は,制御電源 喪失時にタービン止め弁の状態が維持される設計となって おり,直流電源が喪失しても駆動蒸気の供給は継続される ようになっていた。また,RCIC の蒸気加減弁(制御電源 が喪失した場合,バネにより全開となるよう設計されてい る)は油圧制御であるが,RCIC タービンで油圧を昇圧す るため,運転している限り油圧は確保されるようになって いた。こうした設計仕様を十分に把握していれば,直流電 源が喪失した後の早い段階で RCIC の作動を確認すべきで あった。この確認が早期になされていれば,RCIC がどう いった状況で作動しているかを認識することも可能であ り,こうした状況の把握が適切になされ RCIC の停止が必 然的に起こることを予想し得たことから,早い機会に代替 注水手段を準備することもできたものと考えられる。渡辺 らの解析15)によれば,RCIC 停止から13,000秒(約3.6時 間)以内に原子炉の減圧と代替注水を行っていれば,2 号 機の炉心損傷を回避できた可能性が高いことが示されてお り,ある程度の時間的余裕はあったのではないかと考えら れる。 RCIC が停止した理由について,東電事故調では言及し ていないが,政府事故調では,原子炉圧力が RCIC ポンプ の吐出圧を上回った可能性を取り上げている。しかし,政 府事故調によれば,14日12時30分ごろ(RCIC ポンプの停 止を判断した時刻の約 1 時間前)に,SC の温度,圧力は それぞれ 149.3°C, 0.486 MPa(abs)であったとされ,水が ほ ぼ 飽 和 状 態 で あ る こ と か ら , SC を 水 源 と し て い た RCIC ポンプがキャビテーションを起こして停止した可能 性もあると考えられる。 ( 3 ) 3 号機原子炉隔離時冷却系(RCIC)の停止 3 号機では,直流電源の一部が被水を免れ,RCIC の起 動停止によるバッテリの消費を避けることと原子炉水位を 安定的に維持するために原子炉水位高による自動停止に至 らないよう原子炉注水ラインおよびテストラインの両ライ

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c)中間報告では「ラッチの外れ」と明言していたが,最終報告で はその可能性はあるものの不明であるむね記載されている。 ンを通水するライン構成とした上で,原子炉水位を緩やか な変化となるように流量を設定し運転した。しかしながら, RCIC は,手動起動から約20時間後に自動的に停止した。 この停止の原因について,東電事故調では,「弁の不調」 としているだけで具体的な記載はない。これに対し,政府 事故調では,ラッチが外れたことが原因であるむね記載し ているc)。この「ラッチ」とは,RCIC タービン蒸気止め 弁のラッチ機構のことと推測されるが,こうしたラッチ機 構の不具合は,2008年 7 月15日に福島第二 2 号機,2003 年 9 月23日に福島第二 1 号機において起こっており,原 因はいずれも保守不備(劣化)とされている16)。さらに, 故障モードは異なっているものの,他にもラッチのトラブ ルは起こっており,その中には,トリップ機構部の手入れ を行っていなかったことが原因となっている事例もある (2007年10月28日,福島第一 5 号機)16)。これらの事象を 受けて,ラッチ機構について十分な保守点検が行われてき たか,また,ラッチの外れに対する対処方法としてどんな ものがあるのかについて調査する必要があると考えられる。 ( 4 ) 3 号機高圧注水系(HPCI)の停止と逃がし安全弁 (SRV)による原子炉手動減圧 HPCI は,自動起動から約14時間に渡って作動したが, タービン回転数が低下し設備損傷により原子炉の蒸気が漏 れることを懸念して手動で停止された。その後,SRV 開 操作ができなかったため,RCIC と HPCI の再起動を試み たが,RCIC は弁の不調,HPCI はバッテリの枯渇により その試みは失敗に終わった。この手動停止とその後の再起 動失敗に関して,政府事故調は,「20時間近くにも渡って RCIC を運転させ,RCIC 停止後14時間以上にも渡って HPCI を運転させたことによってバッテリが消耗し,SRV の開操作に十分な電気容量が残っていない可能性も予想で きたのではないか,さらに,当直は,再起動には,バッテ リ容量を大きく消耗することを理解していたのであるから, HPCIをいったん停めてしまえば SRV 開操作に失敗した 場合に再起動できなくなる恐れも十分認識できたはずであ る」として批判的な見解を示している。また,HPCI の手 動停止に関する情報提供に遅れが生じ,発電所対策本部の 対応が後手に回り,プラント状況や作業環境を一層悪化さ せ,その後の減圧操作,代替注水をさらに困難にしたとい わざるを得ないと指摘している。さらに,HPCI を手動停 止する前に原子炉への代替注水の準備を整え SRV による 減圧操作を試みることもできたはずであるとしている。一 方,国会事故調も,「原子炉水位の維持に拘泥せず,注水 ポンプの吐出圧を下回るまで速やかに原子炉を減圧し,そ の後に間髪入れずに注水して一気に原子炉を冠水する」と いうやり方を実行することによる事故の回避の可能性があ ったと指摘しており,長時間の HPCI テストライン運転 の是非について疑問を投げかけている。両事故調による指 摘は適切であり,特に HPCI が作動して原子炉圧力が低 下していた12日午後から13日未明にかけては原子炉圧力 が 1 MPa(gage)を下回っていた時期があり(HPCI 停止時 の原子炉圧力0.58 MPa(gage)),原子炉の手動減圧と消 防車による注水を行うには絶好の機会であったと考えられ る。また,その後,格納容器ベントが何度か成功している ことから,このタイミングで冠水できていれば,著しい炉 心損傷を回避できた可能性は高いと考えられる。さらに, 政府事故調によれば,SRV の手動による開動作は,原子 炉圧力が 0.686 MPa(gage)以上で可能であるとされてお り,これについて十分な認識があったとすれば,HPCI の テストライン運転により長時間に渡って原子炉圧力を低く 維持したことに疑問が生じる。いずれにしても,バッテリ の容量が残っている間に代替注水の準備を整えて SRV に よる原子炉の減圧を行うという措置が取られなかったこと は極めて重要な点であり,その背景について詳細な調査, 分析を行う必要がある。 なお,政府事故調(最終報告)では,「13日 9 時50分頃に なって SRV の開操作を実施したことが判明した」とした 上で「9 時10分頃に原子炉圧力が0.460 MPa(gage)まで減 圧されていく過程で SRV の開状態を十分に維持できるよ うな状況にあったのか疑問が残る」としており,東電事故 調による「9 時 8 分頃に SRV が開いて減圧が開始された (その後,バッテリを制御盤につなぎこみ SRV を開いて 減圧を維持した)」という見解とは異なっている。事故進 展を理解する上で極めて重要なポイントであるため,今後 の解明が待たれる。 3. 原子炉減圧操作 ( 1 ) 1 号機主蒸気逃がし安全弁(SRV) SBO 状態となり IC が利用できなくなって以降の原子炉 圧力に関する測定データがないことから,東電事故調は, SRV の作動により原子炉圧力が制御され,それに伴って 原子炉冷却材が SC に流れ込み,徐々に原子炉水位が低下 して炉心の露出,溶融に至り,その過程で原子炉圧力容器 が極めて高い温度状況となって SRV 管台ガスケットもし くは炉内計装管が破損して原子炉が減圧されたというシナ リ オを想 定し ている 。こ れに対 し,国 会事 故調で は, SRVの開閉を記録する装置が整備されていなかったこと や,SRV の作動音を聞いた人がいないことなどから, 「SRV は,事故進展のさなか,結局一度も(あるいは,ほ とんど)作動しなかった疑いがある」と指摘し,地震動に よって原子炉圧力容器につながる配管が破損し,そこから 冷却材が流出して炉心損傷に至ったという事故シナリオも 想 定 し て い る 。 同 時 に , 国 会 事 故 調 は , JNES の REPAP5 による解析結果に基づき,0.3 cm2以下の軽微な 破損の可能性についても言及しているが,この程度の漏え いでは原子炉の圧力や水位にほとんど変化がみられないた

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め,同事故調が想定した上記シナリオとの整合が取れな い。一方,地震動により原子炉容器につながる配管に亀裂 が生じ炉心露出後の高温状態によって材料強度が低下して 亀裂が進展拡大し破損に至ったか,あるいは,SRV 管台 ガスケットに生じた漏えいが高温環境にさらされて破損に 至ったというシナリオを想定することもできるが,いずれ の場合においても,SRV が全く作動しなかったというこ とに対する確固たる根拠にはならない。なお,原子炉の減 圧については,原子炉が高圧の状態で溶融貫通が起こると 高圧溶融物放出(high pressure melt ejection : HPME)と 呼ばれる現象により格納容器直接加熱(direct containment heating : DCH)が発生し格納容器が破損する(放出され微 粒化した燃料により格納容器内気相部が直接加熱され格納 容器が破損する)可能性があるため,本事故において,こ うした現象が生じたのかどうか等について理解すること が,事故挙動に関わる知見を深める上で極めて重要であ る。したがって,SBO 発生後炉心の溶融が開始するまで の間よりも,炉心の溶融が開始してからどのような格好で 原子炉が減圧されたのかに着目した分析・調査が今後必要 と考えられる。 ( 2 ) 3 号機主蒸気逃がし安全弁(SRV)操作 3 号機において HPCI を手動停止した後の SRV による 減圧操作について,政府事故調は,SRV の機能上,原子 炉圧力 0.686 MPa(gage)以上で手動開閉は可能であり, また,原子炉圧力が 0.344 MPa(gage)となるまではその 開状態を維持できるものの,原子炉圧力が 1 MPa(gage) 未満のときに減圧操作をする訓練を受けていなかったこと から,減圧操作に失敗するリスクを考慮に入れるべきであ ったと指摘している。しかしながら,こうした設備(機器) 仕様上の制約に関する周知を含め,訓練の内容が十分なも のであったかどうかについての分析が必要であると考える。 4. 格納容器の健全性とベント操作 ( 1 ) 格納容器ベント操作 東電事故調においては,「ベント操作に必要な弁を手動 で開けることが可能かどうか,弁の型式・構造を確認する ために関連する図面の調査や協力企業への問い合わせを行 った」むね,また,政府事故調においても,「開操作を必 要とする弁の特定,弁の設置場所,手動開操作が可能な構 造か否か等について,1 つ 1 つ確認する必要があった」む ね記載している。また,国会事故調においても,「ベント 操作は電源があり中央制御室で操作することが前提となっ ており,弁のスイッチを動かすだけという最も簡単な操作 の 1 つとなっていたため,電源を失った後の手動開操作 は手順書にも記されておらず,また図面や手動操作部品の 整備不足により手動開操作は非常に困難な状況であった」 とし,また,「ベント操作等アクシデントマネジメント (accident management : AM)操作盤についてはパソコン 画面で模擬しているのみで,弁の開閉動作の訓練はマウス をクリックするだけ」というように具体的に問題点を指摘 している。各事故調における記載,指摘は,格納容器ベン ト設備の設置状況(as-built)の検査・確認を行っていない という問題を示唆するものであり,事業者自らが原子炉施 設の安全を確保するための設備に関して設置状況を正確に 把握しているか否かを精査することの必要性を示してい る 。特に ,格 納容 器ベ ントの よう な AM 設 備につ いて は,すでに,安全系が使えない場合への対応であるため, こうした現場操作を踏まえた手順と訓練を行っていなかっ たことを問題視すべきであると考える。 ( 2 ) 2 号機格納容器の健全性 (a) 圧力抑制室(SC)の圧力低下 15日 6 時14分頃に SC の圧力がダウンスケールとなった ことについて,東電事故調は,その原因を圧力計の故障と しているのに対し,国会事故調は,SC の水温が高くなっ て十分な凝縮能力がなくなり水面上に気泡が放されること で 継続的 ある いは持 続的 な振動 が生じ て大 規模な 損傷 (バースト)が起こったのではないかと推定している。しか し,その後もドライウェル(drywell : DW)の圧力上昇が認 められることから,国会事故調が指摘するようなバースト が SC で起こったとは考え難く,東電事故調のいうように SC 圧力計が故障したものと考えるのが自然である。 (b) 格納容器ベントの実施 東電事故調では,格納容器ベントを幾度か試みたものの (13日11時頃,14日16時頃,14日23時30分頃),いずれも 格納容器圧力の低下を確認できなかったとしている。ま た,政府事故調も国会事故調も同様にベント機能が果たさ れることはなかったものと考えている。これに対し,保安 院報告書では,ベントが十分に機能しなかったとしている ものの,14日21時頃の敷地内線量率の急上昇とその後の 格納容器圧力上昇から,ベント小弁開操作により格納容器 圧力に変化をもたらさない程度の少量の気体が短時間にベ ントラインを通じて環境中に放出された可能性があると述 べている。また,15日 0 時頃にもラプチャディスクの作 動による DW ベントが起こり放射性物質が大量に放出さ れた可能性があるとしている。しかしながら,ベントは, あくまでも放射性物質の放出経路の 1 つの可能性として 取り上げているものであり,格納容器からの漏えいも十分 あり得るとしている。このように,格納容器ベントが行わ れたか否かについては,若干の見解の差異がみられるもの の,この相違は事故の進展に大きく影響を及ぼすものでは ないと考えられる。なお,民間事故調においては,ベント が実施されたか否かについては明らかとなっていないとし ているが,ラプチャディスクを使わないベントラインを構 成することでより早い時期に熱を大気に放出することがで きた可能性があると指摘している。しかしながら,ラプチ ャディスクは静的機器であり,一般に動的機器よりも信頼 性は高く耐漏えい性も高いため,ベントラインの誤動作を 防止しつつ必要時に確実に作動するには適していると考え

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られる。 (c) RCIC 作動中の格納容器圧力挙動 東電事故調では,トーラス室に海水が流入し,SC の壁 面を介しての熱伝達により格納容器の除熱が行われ圧力の 上昇が緩慢になったというシナリオを推定しており,保安 院報告書もこれを支持する格好となっている。これに対 し,政府事故調は,過温により格納容器またはその周辺部 からの漏えいが相当早い段階から始まりその漏えい面積が 次第に大きくなったという説明も可能であるとしている。 また,東電事故調のトーラス室への海水侵入についても, 3 号機原子炉建屋地下 1 階の RCIC 室が水没していないこ とや 2 号機 RCIC 室がトーラス室と同程度の浸水になっ ていたとは考えられないこと(RCIC ポンプが作動してい たため)などから,2 号機と構造が類似している 4 号機 トーラス室が半分程度水没していることを理由に 2 号機 トーラス室の水没を推認することに対して異議を唱えてい る。トーラス室への海水流入,格納容器漏えいの拡大のい ずれについても,現状ではその根拠となるようなデータが ないため今後の調査・検討が必要である。 5. 水素爆発(水素の原子炉建屋流入経路) 1 号機,3 号機および 4 号機の原子炉建屋において水素 爆発が起こったとされているが,水素の同建屋への流入経 路について,東電事故調は,以下のように推定している。  1 号機炉心の損傷に伴う水ジルコニウム反応等 により発生した水素が格納容器に移行し,上蓋の結合部分 (フランジ),機器ハッチや人員ハッチの結合部分,電線貫 通部等におけるシールが高温により機能が低下したことか ら , 原 子 炉 建 屋 に 流 入 し た 。 そ れ 以 外 に は , 1 号 機 の SGTS フィルタの線量測定は行われていないものの 3 号 機と同様,格納容器ベント時のベントラインから SGTS ラインを経由して流れる経路も考えられるが,格納容器か ら直接的に原子炉建屋に漏えいしたものが主体的である。  3 号機1 号機と同様,格納容器からの直接的な漏 えいとベントラインから SGTS ラインを経由した流入の 2 つがあるが,◯SGTS 入口側のベントラインとの接続部 にある弁は通常時閉,電源喪失時閉の格納容器隔離弁であ り,その前後の線量測定結果からベント実施時に SGTS にベントガスが流入した可能性は低いと考えられること, ◯格納容器自体が長時間にわたって高圧になっていたのに 対し,ベントは短時間であり SGTS を経由してベント流 が回り込む可能性のある時間は限られていたこと,◯ベン トガスは SC でスクラビング効果により放射性物質が除去 されるが爆発後の建屋付近の線量が高かったことから,後 者については限定的であり,直接的な漏えいによるものと 評価している。  4 号機3, 4 号機のベントラインは,排気筒入口で 合流している。また,4 号機 SGTS のフィルタに関する 線量測定の結果,フィルタトレイン出口側(下流側)の線量 が高く,入口側(上流側)に行くにつれて下がっていくこと が確認され,汚染された気体が当該 SGTS ラインを下流 側から上流側に流れたことを意味している。したがって, 3 号機の格納容器ベント流が SGTS ラインを経由して 4 号機原子炉建屋に回り込んだ可能性が高い。 東京電力株による上記の推定に対し,保安院報告書も政 府事故調も同意している(政府事故調は,1 号機の水素流 入 経路と して ベント 時の 逆流も 否定で きな いとし てい る)。一方,国会事故調は,4 号機の水素爆発について,3 号機からの流入のほかに,4 号機使用済み燃料貯蔵プール の水温上昇に伴う水蒸気発生によって発生した水素の寄与 もあるのではないかと指摘している。 1 号機については,12日15時35分に水素爆発が起こっ ているが,それ以前に格納容器圧力が 0.75 MPa(abs)程 度で推移していたことから,格納容器から直接漏れでた水 素が支配的であるとする点には同意するが,爆発の起こる 約 1 時間前に格納容器ベントを行っていることから,ベ ント流が逆流して原子炉建屋に流れ込んだ水素が寄与して いる可能性を否定できない。 3 号機についても,4 回目の格納容器ベントの直後に水 素爆発が発生していることから,ベントの際の水素流入が 寄与しているものと考えられる。東電事故調は,3 号機 SGTS フィルタの線量測定結果をもとに,2 つのフィルタ トレインで線量の傾向が異なっていること,数値自体が 4 号機のフィルタ線量よりも全体的に低いこと,ベントライ ンから排気筒につながる弁(Fig. 4 の◯)の前後の線量も 下流側が十分に低く閉鎖性に問題はないと考えられること, SGTS 入口側(上流側)でベントラインとつながる弁(Fig. 4 の◯)がこの弁と同様の設計であることから,当該ライ ンからの漏えいの可能性は低いとしている。しかし,中央 部のフィルタの線量が最も高いこと,総線量からすると 4 号機よりも 3 号機の方が高いこと,上記(b)に示すように, SGTS入口側のベントラインとの接続部にある弁(Fig. 4 の◯)について線量測定を行ったとしており Fig. 4 との整 合の取れない記載がみられることから,東電事故調の推定 根拠は必ずしも十分なものではないと考えられる。政府事 故調は,3 号機から 4 号機 SGTS までの配管がかなり長 いことから,その途中での凝縮などにより放射性物質が配 管に付着,沈着したため,3 号機フィルタの線量と同程度 であっても不自然ではないとの見解を示しているが,これ も 3 号機原子炉建屋に大量の水素が逆流したことを否定 できるものではない。また,3 号機の格納容器圧力が長時 間に渡って高かったという点についても,SRV を開けた 直後に 0.8 MPa(abs)を超えていることを除くと,0.4~ 0.5 MPa(abs)で推移しており,設計圧を超えている時期 はさほど長くなく,また,ベント操作の前後で圧力の上 昇・低下が起こっており格納容器の大規模な漏えいをうか がわせるような挙動は見当たらない。こうした状況を踏ま えると,3 号機原子炉建屋への水素流入についても,ベン

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Fig. 4 3 号機および 4 号機 SGTS フィルタトレイン等に関する線量測定結果(単位mSv/h) (東電事故調記載の図を加工) トに伴う放出による寄与は無視できないものと考えられる。 なお,4 号機原子炉建屋での水素爆発の主たる原因が使 用済み燃料プールで発生した水素である可能性(国会事故 調の見解)については,同プールが建屋 5 階に位置するこ とから,建屋の 3~5 階の損傷状況(3 階および 4 階の床面 が下方に変形し 5 階の床面が損傷し鉄筋が上方に曲げら れていた等)とは符合せず,その可能性は極めて低いもの と考えられる。

IV. 事故調査報告書で取り上げられていない

問題点

( 1 ) 地震発生直後の 1 号機での操作に適用した運転手 順書の適切性 東電事故調において,2, 3 号機については,MSIV 閉 原子炉スクラム時手順書を適用したことを明記しているが, 1 号機については「手順書に則って行われている」という ように具体的な手順書を示していない。一方,東京電力株 が原子力安全・保安院に提出した資料8,9,14)では,1 号機も 同様に,MSIV 閉原子炉スクラム時手順書を対象にその適 用状況について説明しており,特に問題なく手順どおりの 操 作が 行われ たと してい る。 しかし ,同 手順書 では , 「MSIV 開不可時には,HPCI のテストライン運転により 原子炉蒸気を消費しながら SRV または IC により原子炉 減圧を行い原子炉冷温停止する」としている(具体的な操 作手順書では,当直長による原子炉減圧指示の下,操作員 は,◯SRV「手動開」,◯HPCI 系テストラインにて「手 動起動」(注水不要な場合),◯IC「使用」のいずれかの 方法により原子炉減圧実施,となっている詳細は Table 2参照)。これに対し,敦賀 1 号機の IC 使用実績に関わる 報告13)では,IC の 1 系統を手動で作動させて原子炉の減 圧を行っており,この操作を手順書どおりであるとしてい る。実際,1 号機では,IC が自動起動しているが(地震発 生から 6 分後,2 号機ではその 2 分ほど前に RCIC の手動 起動を行っており,1 号機においても手動による対応操作 は十分可能であったものと考えられる),これは,1 号機 の運転手順書に沿ったものではなく,また,敦賀 1 号機 における手順13)とも異なっている。さらに,HPCI のテス トライン運転については,3 号機において実際にみられた ように,HPCI を作動させるとタービンへの蒸気流により 原子炉は急激に減圧するはずであり(SRV を開けた場合も 同じ),IC において 6~7 MPa に維持しながら除熱を行う こととは,全く異なる状況になる。これらのいずれかの方 法を用いるとしていることに,手順書策定上の考え方に一 貫性がみられない。敦賀 1 号機の手順書との比較を通し て,当該手順書について妥当性の検証を行うべきである。 また,他の手順についても,その考え方を整理し,他プラ ントとの比較を通して検討することが必要であると考え る。なお,「大規模地震が発生した場合(自動スクラムした 場合)」および「外部電源喪失の場合」なる手順書が用意 されている14)とのことであるが,これらの手順は公開さ れておらず,また,これら 2 つの手順書については一切 言及されていないことから,使用されていないものと推定 される。今回の事故においては,地震により外部電源が喪 失しており,MSIV 閉原子炉スクラムとは対応操作が異な るものと考えられるため,MSIV 閉原子炉スクラム時手順 書を適用したことの適切性や,「大規模地震が発生した場

(12)

Table 2 「事故時運転操作手順書(原子炉スクラム(B)主蒸気隔離弁閉の場合)」の概要(一部)  「1. 事故概要」の「MSIV 開不可能時」HPCI のテスト運転により原子炉蒸気を消費しながら,SRV または IC により,原子 炉減圧を行い原子炉冷温停止する。  「2. 操作のポイント」の,MSIV 全閉によりホットウェル(HW)レベルが低下した場合,復水系を停止させることがない よう原子炉の蒸気を消費する意味からもHPCI を手動起動する(筆者注このは,外部電源喪失の際には復水系が停止すること から,明らかに異なる対応を取ることが必要になると考えられる)。MSIV 開不可能時の原子炉減圧冷却は,SRV または IC に て行う。  「4. フローチャート」「SRV による炉圧制御」と「HW 水位低下有の場合の HPCI 起動」(筆者注IC の操作に関する記載はな い)。  「6. 原子炉圧力調整」「9. 原子炉圧力上昇時は,SRV を順次「手動開」または IC 使用により,原子炉圧力を 7.06~6.27 MPa に 維持実施,報告」,「10. HW 水位が低下するようであれば HPCI 系を「手動起動」し,原子炉水位維持実施,報告」

 〈MSIV「開」操作不可能な場合〉(復水器真空度 67.4 kPa abs 以上になる場合または復水器真空破壊した場合を含む)の「12. 原 子炉減圧」「3. 下記いずれかの方法により原子炉減圧実施,報告―SRV「手動開」,HPCI 系テストラインにて「手動起動」 (注水が不要な場合),IC「使用」」。(筆者注ここには,「冷却材温度変化率 55°C/h 以下」と記載されているが,原子炉圧力を 6~7 MPa に維持するよう求めていない)。 d)SGTS 入口弁について,保安院報告書(参考資料)では空気作動 弁で fail open と記載されているが,ストレステストに関する 意見交換会に北陸電力株が提出した資料18)では電動弁でfail as is となっている。出口弁は両資料とも電動弁で fail as is と記載 している。 合(自動スクラムした場合)」や「外部電源喪失の場合」の 手順書を適用したか否かを明らかにするとともに,適用し なかった場合にはその理由についての調査,分析を行うこ とが必要である。 なお,MSIV 閉原子炉スクラム時手順書では,「MSIV 全閉確認」後に「SRV 作動確認,報告」という手順とな っており,SRV が作動することを前提としている。しか し , 実 際 の 原 子 炉 圧 力 挙 動 も JNES が 行 っ た RELAP5 コード(最適評価(BE)コード)による解析でも,MSIV 閉 止後に原子炉圧力が SRV の開設定値に達する前に IC の 自動起動に至っており,手順書で想定する挙動とは異なっ ている。一方,原子炉設置変更許可申請書の安全解析結果 (保守的評価コード(EM コード)による解析)17)によれば, MSIV 閉止後に,原子炉圧力が上昇して SRV が作動し原 子炉圧力は 78.6 kg/cm2(7.7 MPa)に抑えられ,その後の 原子炉圧力は SRV により制御されるとなっていることか ら,MSIV 閉原子炉スクラム時手順書は,EM コードによ る解析結果をもとに策定されたものと考えられる。そもそ も,EM コードによる安全解析は,過渡変化や事故時にお ける施設の安全性を確認することを目的としたものであ り,保守的なモデルと仮定を用いているため,実際の挙動 を必ずしも模擬している訳ではない。したがって,手順書 策定に当たっては,より現実的な評価が行える BE コード を用いた解析の結果を参考とすべきである。上述したよう な手順書での想定と実際の挙動の間の乖離が他の事象につ いてもあるか否かの検討が必要であると考えられる(他プ ラントにおいても検討の必要がある)。 以上述べたように,敦賀 1 号機での事象時と同様,IC 2 系統の自動起動を待つのではなく,1 系統を手動で起動さ せるべきであったものと考える。なお,敦賀 1 号機にお ける IC 手動起動は原子炉圧力 70 kg/cm2(6.8 MPa)で行 うこととなっており,自動起動の設定圧 73.8 kg/cm2(7.2 MPa)より低い13)。また,1 号機の MSIV 閉原子炉スクラ ム時手順書14)では,IC を優先的に使用するようにはなっ ておらず,ここに,敦賀 1 号機との当該設備への考え方 の相違が認められるため,こうした考え方を異にする理由 についての精査も必要である。さらに,IC のような静的 な設備については,現場巡視や OJT,弁の開閉試験だけ の定期試験で,当該設備作動時の原子炉の状態変化を把握 することは極めて困難であり,敦賀 1 号機のようにシミ ュレータを用いた訓練を行い手順書に反映させることが基 本的な考え方であると考える。なお,1 号機では,過去に, MSIV 閉を伴う原子炉自動スクラム事象が少なくとも 3 回発生し(1983年,1985年,1985年)16),IC を使用する機 会はあったと考えられるが,これらの事象発生時に IC が 使用されていないようである(事象に関する記載が少なく 断言することはできないが,国会事故調によれば,昭和 46年の運転開始以来,IC の作動は今回が初めてとされて いるむね記載されている)。 ( 2 ) 非常用ガス処理系(SGTS)の弁の駆動源喪失に対 する設計上の考え方 1~4 号機における SGTS では,その入口弁も出口弁も 空気作動弁であり,外部電源喪失時には,圧縮空気が喪失 して自動的に開く設計(fail open)となっている。しかし, これは必ずしも標準的な設計の考え方ではなく,例えば, 志賀 2 号機では,これら SGTS の弁はいずれも電動弁で あり,駆動源が喪失するとそのままの状態に維持される設 計(fail as is)となっているd)。ただし,SGTS は非常用設 備であり,その駆動源は外部電源ではなく非常用電源であ るため,外部電源喪失時に SGTS への作動信号(自動か手 動かは問わない)が入れば入口弁,出口弁ともに開き,今 回の事故のように,その後に非常用電源も喪失した場合に は,両弁とも駆動源を失い開状態となったままになる。結

Fig. 1 1 号機のイベントツリーおよび事故進展 Fig. 2 2 号機のイベントツリーおよび事故進展 Fig. 3 3 号機のイベントツリーおよび事故進展 たが,3 号機では,SRV が作動し原子炉圧力の抑制が行 われた。また,運転員は,「事故時運転操作手順書(事象 ベース)原子炉スクラム事故(B)主蒸気隔離弁閉の場合」 (MSIV 閉原子炉スクラム時手順書) 9) に従って,RCIC を 手動で起動した。ここまでは,2 号機と同じ経緯を辿った が,3 号機では,直流電源盤の一部が被水を免れたため,制
Fig. 4 3 号機および 4 号機 SGTS フィルタトレイン等に関する線量測定結果(単位mSv/h) (東電事故調記載の図を加工) トに伴う放出による寄与は無視できないものと考えられる。 なお,4 号機原子炉建屋での水素爆発の主たる原因が使 用済み燃料プールで発生した水素である可能性(国会事故 調の見解)については,同プールが建屋 5 階に位置するこ とから,建屋の 3~5 階の損傷状況(3 階および 4 階の床面 が下方に変形し 5 階の床面が損傷し鉄筋が上方に曲げら れていた等)とは符合せず,そ

参照

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